JP2016141821A - 冷間鍛造性及び耐結晶粒粗大化特性に優れた鋼材の軟化熱処理方法 - Google Patents

冷間鍛造性及び耐結晶粒粗大化特性に優れた鋼材の軟化熱処理方法 Download PDF

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康明 酒井
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Abstract

【課題】ベイナイト組織を有しても、冷間鍛造性及び耐結晶粒粗大化特性に優れた鋼材の軟化熱処理方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.10-0.30%,Si:0.30%以下,Mn:0.40-1.20%,P:0.03%以下,S:0.03%以下,Cu:0.50%以下,Ni:0.50%以下,Cr:1.60%以下,Mo:0.10-0.50%, B:0.0005-0.0050%,N:0.002-0.020%と、Al:0.01-0.05%,Nb:0.02-0.10%,Ti:0.01-0.05%の何れか1種又は2種以上とを含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼材を軟化させる軟化熱処理方法であって、軟化熱処理前のベイナイト組織の比率が10%以上の鋼材に対し、(A3変態点+10℃)-(A3変態点+200℃)で加熱した後、(A1変態点℃)-(A1変態点-50℃)までの冷却速度を13℃/h以下に設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は冷間鍛造性及び耐結晶粒粗大化特性に優れた鋼材の軟化熱処理方法に関する。
鋼の焼鈍方法としては、(A1変態点+10℃)〜(A1変態点+50℃)の温度域を加熱温度とする球状化焼鈍(Spheroidizing Annealing、以下SAという)が広く知られている。他方、例えば下記特許文献1には、冷間加工前に840〜930℃に加熱し、730〜650℃の温度区間を徐冷温度域として15〜50℃/hの冷却速度で冷却することにより、比較的粗いフェライト+パーライトの2相組織を形成する肌焼鋼の製造方法が記載されている。この特許文献1では、球状化組織の鋼に浸炭処理を行うと球状化炭化物を核としてオーステナイト化(以下、γ化という)が進行・オーステナイト結晶粒(以下、γ粒という)が微細化し、混粒が生じやすくなることから、炭化物の球状化が抑制されるように熱処理条件の最適化を図ることによって、冷間加工性及び結晶粒度特性に優れた肌焼鋼を得るようにしている。
また、例えば下記特許文献2には、冷間加工前に830〜900℃に加熱し、700〜550℃の温度区間を徐冷温度域として35℃/h以下の冷却速度で冷却することにより、残留オーステナイトの生成を避け、フェライト+パーライトの2相組織を形成する肌焼鋼の製造方法が記載されている。この特許文献2では、Ni含有の肌焼鋼の場合、フェライト+オーステナイトの2相域からの徐冷では残留オーステナイトが残り、このため加工性が著しく阻害されることから、残留オーステナイトの生成が抑制されるように熱処理条件の最適化を図ることによって、加工性に優れたNi含有の肌焼鋼を得るようにしている。
また、例えば下記特許文献3には、熱間仕上げ圧延又は熱間仕上げ鍛造を行なった後、600℃までの冷却を0.5℃/sec以下の冷却速度で行い、引き続いて室温まで放冷し、その後に行う伸線の減面率を20%未満に抑える肌焼鋼の製造方法が記載されている。
特開2002−146438号公報 特開平11−236616号公報 特許第4393344号公報
ところで、上記特許文献1〜3に記載の肌焼鋼では、Mo,Mn,Cr,Cu,Niなどの元素の添加量が所定量以上に達すると、ベイナイトの生成が促進されるようになる。一般に、ベイナイト組織を有する鋼に対して、軟化熱処理なしで900℃以上の浸炭等の熱処理を施した場合には、フェライト+パーライト組織の鋼に比べて、異常粒成長が発生(結晶粒が粗大化)しやすいことが知られている。初期γ粒の微細化が混粒度(Z)の増加につながり、結晶粒粗大化特性の低下をもたらすものと考えられている。
軟化熱処理を施した場合も、軟化熱処理前の組織にベイナイトが含まれていると、軟化熱処理をしない場合と同様、浸炭等の熱処理を施した場合に異常粒成長が発生しやすい。上記のように異常粒成長が発生するのは、通常の軟化熱処理での保持温度はフェライト+オーステナイトの2相域中であるため、微細なフェライトとセメンタイトの集合体であるベイナイト組織は分解されにくいこと、SA後も元ベイナイト部分には容易にγ化しにくい微細な組織領域が残存していることが多いことから、浸炭等の熱処理をする場合に初期γ粒が微細化するためであると推定される。
鋼材の焼入性や疲労強度を確保するためには、Mo,Mn,Cr,Cu,Niなどの元素を添加することは必須であり、部品の大きさや必要強度によっては大量にこれらの元素を添加せねばならず、ベイナイト生成が避けられない状況であり、そのために耐結晶粒粗大化特性を確保することが困難であった。
上記特許文献1〜3に記載の肌焼鋼においても、添加元素によっては熱処理前の組織にベイナイトが生成されていると考えられるところ、これら特許文献1〜3にはベイナイトが生成していた場合において、結晶粒の粗大化を積極的に防止するという技術思想は開示されておらず、そのような示唆も一切ない。
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、ベイナイト組織を有する鋼材であっても、冷間鍛造性及び耐結晶粒粗大化特性に優れた鋼材の軟化熱処理方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
上記目的を達成するために本発明の冷間鍛造性及び耐結晶粒粗大化特性に優れた鋼材の軟化熱処理方法は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.30%以下、Mn:0.40〜1.20%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cu:0.50%以下、Ni:0.50%以下、Cr:1.60%以下、Mo:0.10〜0.50%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.002〜0.020%、を含有し、さらにAl:0.01〜0.05%、Nb:0.02〜0.10%、Ti:0.01〜0.05%、の何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼材を軟化させる軟化熱処理方法であって、軟化熱処理前のベイナイト組織の比率が10%以上の鋼材に対し、(A3変態点+10℃)〜(A3変態点+200℃)で加熱した後、(A1変態点℃)〜(A1変態点−50℃)までの冷却速度を13℃/h以下に設定することを特徴とする。
本発明の軟化熱処理方法の対象となる鋼材は、Mo,Mn,Cr,Cu,Niなどの元素が所定量以上添加されることより、軟化熱処理前においてベイナイト組織の比率が10%以上(残部はフェライト+パーライト組織)に設定されている。そして、ベイナイト組織を十分に分解するためには、所定温度以上での保持が必要であると考え、(A3変態点+10℃)〜(A3変態点+200℃)で加熱する。これにより、組織中のベイナイトを消滅させて完全にγ化することができる。その後、(A1変態点℃)〜(A1変態点−50℃)までの冷却速度を13℃/h以下で冷却する。これにより、炭化物を十分に球状化することができる。このように本発明の鋼材の軟化熱処理方法によれば、ベイナイト組織を消滅させて完全にγ化することで耐結晶粒粗大化特性の向上を図りつつ、炭化物を十分に球状化することで冷間鍛造性の向上を図ることができる。
(a)〜(d)は、それぞれ比較例1、実施例1,2、比較例2に対応し、軟化熱処理後の組織を示す写真。 比較例1、実施例1,2、比較例2に対応した試験片の浸炭処理後に結晶粒径調査を行ったときの観察位置を示す説明図。 (a)〜(d)は、それぞれ比較例1、実施例1,2、比較例2に対応し、浸炭温度が1025℃のときの組織を示す写真。
以下、本発明の軟化熱処理方法において使用の前提となる鋼材の組成限定理由及び限定条件について説明する。
(1)C:0.10〜0.30%
Cは鋼の強度を確保するための元素である。この効果を得るには、0.10%以上の含有が必要である。他方、過度に含有させると、硬さが高くなり過ぎ変形抵抗が大きくなって冷間鍛造性を著しく損なうため、0.30%を上限とする。好ましくは0.15〜0.25%である。
(2)Si:0.30%以下
Siは溶製時の脱酸剤として添加される。過剰な含有はCの場合と同様、冷間鍛造性を著しく損なうため、0.30%以下の含有とする。製造コストを考慮に入れると、0.05〜0.15%とするのが好ましい。
(3)Mn:0.40〜1.20%
Mnは焼入れ性の確保、強度向上、及び被削性の向上(MnSの晶出)のために有効な元素であり、0.40%以上が必要である。ただし、1.20%を超えて過剰に含有させると、ベイナイト生成の必要以上の促進を招くため、1.20%を上限とする。好ましくは1.00%未満である。
(4)P:0.03%以下
Pはその含有量が0.03%を超えると、衝撃疲労強度を著しく低下させて冷間鍛造時に割れを引き起こすため、0.03%以下の含有とする。Pは不純物元素であるので、できるだけ含有量を0%に近づけることが好ましい。
(5)S:0.03%以下
Sも、Pと同様にその含有量が0.03%を超えると、冷間鍛造時に割れを引き起こすため、0.03%以下の含有とする。好ましくは0.02%以下である。一方、Sは鋼中のMnと反応してMnSを生成し、被削性を向上させるため、生成されるMnSの体積率とのバランスを考慮に入れて添加してもよい。冷間鍛造性を重視する場合は0.015%以下、被削性を重視する場合は0.010%以上とするのが好ましい。
(6)Cu:0.50%以下
Cuは焼入れ性の確保、及び強度向上のために含有させる。ただし、0.50%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらし、冷間鍛造性悪化の要因となるため、0.50%を上限とする。好ましくは0.05〜0.30%である。
(7)Ni:0.50%以下
Niは焼入れ性の確保、及び靭性上のために含有させる。ただし、0.50%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらし、冷間鍛造性悪化の要因となるため、0.50%を上限とする。好ましくは0.10〜0.30%である。
(8)Cr:1.60%以下
Crは焼入れ性の確保、及び強度向上のために含有させる。ただし、1.60%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらし、圧延時の組織においてベイナイト生成を必要以上に促進させてしまうため、1.60%を上限とする。好ましくは0.50%超、更に好ましくは1.00%以上の含有とする。
(9)Mo:0.10〜0.50%
MoもCrと同様、焼入れ性の確保、及び強度向上のために含有させる。この効果を得るには、0.10%以上の含有が必要である。ただし、0.50%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらし、圧延時の組織においてベイナイト生成を必要以上に促進させてしまうため、0.50%を上限とする。好ましくは0.15〜0.30%である。
(10)B:0.0005〜0.0050%
B(固溶B)は焼入れ性を向上させる。この効果を得るには、0.0005%以上含有させる。ただし、0.0050%を超えて過剰に含有させると、Feとの化合物を生成して焼入れ性の悪化を招くため、0.0050%を上限とする。
(11)N:0.002〜0.020%
Nは鋼中のNbやAlと反応して炭窒化物や窒化物を形成する。ただし、0.020%を超えると上記したγ粒の粗大化を防止する効果も飽和するため、0.002〜0.020%の含有とする。好ましくは0.005〜0.010%である。
本発明では、更に以下の化学成分の何れか1種又は2種以上を添加することができる。
(12)Al:0.01〜0.05%
Al(固溶Al)は、溶製時の脱酸剤として添加され、また浸炭時のγ粒の粗大化を防止するのに有効な元素である。製造コストを考慮に入れつつこれらの効果を得るために、0.01〜0.05%の含有とする。
(13)Nb:0.02〜0.10%
Nbは鋼中のCやNと反応して炭窒化物を形成し、浸炭時のγ粒の粗大化を防止するのに有効な元素である。ただし、0.02%未満では所定の浸炭処理時におけるγ粒の粗大化を防止する効果が得られにくいため、0.02%を下限とする。一方、0.10%を超えるとその効果が飽和する一方で、硬さが高くなり過ぎて冷間鍛造性を著しく損なうため、0.10%を上限とする。
(14)Ti:0.01〜0.05%
TiもNbと同様、CやNと反応して炭窒化物を形成し、浸炭時のγ粒の粗大化を防止する。また、Tiは鋼中のNと結合してTiNを生成することにより、NがBと結合することを防止し、Bによる焼入れ性効果を確保するために添加する。ただし、0.05%を超えて過剰に含有させると、冷間鍛造性の悪化を招くため、0.05%を上限とする。
(15)残部:Fe及び不可避不純物
なお、表1ではFeの記載を省略してある。また、Oは不可避不純物である。
(16)軟化熱処理前のベイナイト組織の比率が10%以上(残部はフェライト+パーライト組織)
上述したとおり、Mo,Mn,Cr,Cu,Niなどの元素を所定量以上添加すると、軟化熱処理前においてベイナイトが生成しやすくなる。ここで、軟化熱処理前のベイナイト組織の比率が10%以上であったとしても、冷間鍛造性が特に難となるわけではないが、耐結晶粒粗大化特性が大幅に減少することは分かっている。本発明は、軟化熱処理前のベイナイト組織の比率が10%以上であったとしても、耐結晶粒粗大化特性を十分に確保し得るものである。
(17)(A3変態点+10℃)〜(A3変態点+200℃)で加熱
軟化熱処理における加熱温度の下限が低すぎると、ベイナイト組織由来の微細組織を完全にγ化することができない。その結果、初期γ粒の微細化、混粒度(Z)の増加につながり、耐結晶粒粗大化特性の低下をもたらす。他方、軟化熱処理における加熱温度の上限が高すぎると、軟化熱処理によりγ粒が粗大となり、組織の不均一化をもたらすばかりでなく、結晶粒界からの炭化物の球状化が促進されにくくなる。その結果、全体がパーライト組織となって、限界割れ特性が悪化することとなる。好ましくは、(A3変態点+30℃)〜(A3変態点+100℃)である。
(18)(A1変態点℃)〜(A1変態点−50℃)までの冷却速度を13℃/h以下
冷却速度が13℃/h(1時間につき13℃)を上回ると、炭化物が球状化されずにパーライトを主体とするフェライト+パーライト組織となる。この組織では限界割れ特性が悪化してしまう。そこで、炭化物をほぼ確実に球状化するために、(A1変態点℃)〜(A1変態点−50℃)までの冷却速度を13℃/h以下に設定した。一方、冷却速度が5℃/hを下回ると処理に時間がかかりすぎるので、冷却速度の下限を5℃/hに設定した。
以下、本発明の実施例について説明する。
まず、表1に示す化学組成(残部はFe及び不可避不純物)の鋼材を150kg真空誘導炉で溶製し、インゴットにした。次に、鋳片を1250℃以上に加熱し、900℃以上の仕上げ温度でφ25mmの丸棒に加工した。この丸棒を900℃に加熱後、空冷し供試材とした。この供試材において、ミクロ組織観察を行った。ミクロ組織観察では、ナイタール腐食後、光学顕微鏡(倍率400倍)にて観察し、ベイナイト組織の面積率(以下、ベイナイト面積率という)を測定し、これよりベイナイト組織の比率を算出した。上記供試材におけるベイナイト組織の比率は13.5%であった。
上記供試材からφ20mm、高さ30mmの複数の丸棒試験片を作成した。そして、各試験片に対して表2中の(a)〜(d)に示す条件で軟化熱処理を行った。具体的に、(a)は790℃に1時間保持した後、冷却速度10℃/hで室温まで冷却する熱処理であり(比較例1)、(b)は850℃に1時間保持した後、740℃まで冷却速度150℃/hで冷却し、さらに740℃に3時間保持した後、冷却速度10℃/hで室温まで冷却する熱処理であり(実施例1)、(c)は950℃に1時間保持した後、740℃まで冷却速度150℃/hで冷却し、さらに740℃に3時間保持した後、冷却速度10℃/hで室温まで冷却する熱処理であり(実施例2)、(d)は900℃に1時間保持した後、冷却速度15℃/hで室温まで冷却する熱処理である(比較例2)。
軟化熱処理後、各試験片の横断面を鏡面状に研磨した後、1%ナイタール腐食液でエッチングした腐食面の外周部(表面近傍)を光学顕微鏡で倍率400倍で写真撮影し、画像処理により炭化物の球状化組織を識別するようにした。結果を図1に示す。図1(a)〜(c)に示すように、比較例1と実施例1,2では大部分の炭化物11が球状化され、ラメラ状のパーライト組織はほとんど認められない(10%以下)。これに対し、図1(d)に示すように、比較例2ではラメラ状のパーライト組織12が多く認められた(30%以上)。
また、各試験片において、「JIS Z2245」に規定されたロックウェル硬さ試験法に従ってロックウェル硬さ(=HRB)を測定した。結果を表2に示す。実施例1,2の硬さはいずれも低かった(それぞれ71.9,70.1)。これに対し比較例1は炭化物が球状化組織であるにもかかわらず、硬さは高かった(75.6)。
次に、各試験片において、厚さ9mm(圧縮率70%)まで室温で圧縮(据込)加工を行い応力−ひずみデータを取得した。各試験片の変形抵抗(公称歪み量が0.4となる公称応力)を表2に示す。表2から試験片の硬さが72HRB以下である場合に、700MPa未満の変形抵抗が得られることが分かる。
また、各試験片と同じ軟化熱処理を施した別の試験片を用いて圧縮率62.5%から2.5%間隔で80%まで、各圧縮率で端面拘束圧縮試験を室温で行い、割れの発生しない上限の圧縮率を限界割れ圧縮率とした。表2に示すように、比較例1と実施例1,2では、圧縮率が80%のときも割れは発生しなかった。これに対し比較例2では、圧縮率が77.5%のときに割れが発生した。
次に、圧縮率70%まで圧縮加工後の上記(a)〜(d)の軟化熱処理を行った各試験片を半分に切断した後、それぞれ980℃、1000℃、1025℃、1050℃の浸炭温度でガス浸炭処理を施した。そして、図2に示される縦断面の観察位置Aにて結晶粒径調査を行った。結晶粒は、試験片の縦断面全面を鏡面研磨後、界面活性剤とピクリン酸および塩酸を混合した腐食液により結晶粒界を腐食し、粗大化温度を判定した。この粗大化温度の判定に際しては、980℃、1000℃、1025℃、1050℃の各加熱温度で結晶粒を測定し、JISのオーステナイト粒度番号で2番以下の粗大粒が観察されない最高加熱温度を粗大化温度とした。その結果を表2に示す。また、1025℃でガス浸炭処理を施したときの表2の(a)〜(d)における各観察位置Aでの組織写真を図3に示す。
表2の(b)実施例1に示すように、軟化熱処理において850℃(=A3変態点:820℃+30℃)で加熱した後、740℃(=A1変態点)〜690℃(=A1変態点:740℃−50℃)までの冷却速度を10℃/h(<13℃/h)に設定した場合や、(c)実施例2に示すように、軟化熱処理において950℃(=A3変態点:820℃+130℃)で加熱した後、740℃(=A1変態点)〜690℃(=A1変態点:740℃−50℃)までの冷却速度を10℃/h(<13℃/h)に設定した場合には、変形抵抗がいずれも700MPa未満となり(実施例1:691MPa、実施例2:690MPa)、しかも限界割れ圧縮率がいずれも80%を超えることが分かる。また、実施例1,2においては、粗大化温度が1050℃以上となることが分かる。
他方、表2の(a)比較例1に示すように、軟化熱処理において790℃(=A3変態点:820℃−30℃)で加熱した後、740℃(=A1変態点)〜690℃(=A1変態点:740℃−50℃)までの冷却速度を10℃/h(<13℃/h)に設定した場合には、ベイナイト組織由来の微細組織を完全にγ化することができないため、変形抵抗が高くなり(709MPa)、初期γ粒の微細化、混粒度(Z)の増加等に起因して、浸炭温度が980℃の段階で結晶粒が粗大化することとなった(図3(a)参照)。
また、表2の(d)比較例2の場合、加熱温度は900℃であるため、ベイナイト組織は完全にγ化され、結晶粒粗大化要因となる微細組織の形成は認められないが、その後の冷却速度が15℃/hと速いため球状化組織が得られにくくなり、変形能の劣るラメラ状組織が生成された。その結果、変形抵抗が高くなるとともに限界割れ圧縮率も低下した。
以上の説明からも明らかなように、本発明の鋼材の軟化熱処理方法によれば、(A3変態点+10℃)〜(A3変態点+200℃)の条件で軟化熱処理するようにしたので、ベイナイト組織を消滅させて完全にγ化することができ、耐結晶粒粗大化特性を向上させることができる。また、(A1変態点℃)〜(A1変態点−50℃)までの冷却速度を13℃/h以下で冷却するようにしたので、炭化物を十分に球状化することができ、冷間鍛造性を向上させることができる。
11 炭化物(球状化セメンタイト)
12 ラメラ状のパーライト組織

Claims (1)

  1. 質量%で、
    C:0.10〜0.30%、
    Si:0.30%以下、
    Mn:0.40〜1.20%、
    P:0.03%以下、
    S:0.03%以下、
    Cu:0.50%以下、
    Ni:0.50%以下、
    Cr:1.60%以下、
    Mo:0.10〜0.50%、
    B:0.0005〜0.0050%、
    N:0.002〜0.020%、
    を含有し、さらに
    Al:0.01〜0.05%、
    Nb:0.02〜0.10%、
    Ti:0.01〜0.05%、
    の何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼材を軟化させる軟化熱処理方法であって、
    軟化熱処理前のベイナイト組織の比率が10%以上の鋼材に対し、(A3変態点+10℃)〜(A3変態点+200℃)で加熱した後、(A1変態点℃)〜(A1変態点−50℃)までの冷却速度を13℃/h以下に設定することを特徴とする冷間鍛造性及び耐結晶粒粗大化特性に優れた鋼材の軟化熱処理方法。
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