JP2016139091A - 定着装置、画像形成装置及び定着方法 - Google Patents
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Abstract
Description
トナーは、離型剤を含み、前記離型剤の融点をTa(℃)、トナーの弾性率が1×104Paになる温度をTb(℃)とすると、Ta<Tbであり、
上記定着装置は、記録媒体の搬送方向に沿って、第1定着部及び第2定着部を順に備え、
第1定着部は、記録媒体の表面の最高温度T13(℃)が、Ta≦T13<Tbとなるようにトナー像を加圧加熱し、
第2定着部は、記録媒体の表面の最高温度T23(℃)が、T23≧Tbとなるようにトナー像を加圧加熱する。
上記第2定着部は、記録媒体の表面側に配置された第2定着部材と、記録媒体の裏面側に配置された第2加圧部材とを備え、第2定着部材と第2加圧部材とで記録媒体を挟持して搬送する。
また本発明は、トナーにより記録媒体上に形成されたトナー像を定着させる定着方法であって、
記録媒体が第1定着工程及び第2定着工程の順に搬送されることによってトナー像が定着され、
トナーは、離型剤を含み、前記離型剤の融点をTa(℃)、トナーの弾性率が1×104Paになる温度をTb(℃)とすると、Ta<Tbであり、
第1定着工程は、記録媒体の表面の最高温度T13(℃)が、Ta≦T13<Tbとなるようにトナー像を加圧加熱し、
第2定着工程は、前記記録媒体の表面の最高温度T23(℃)が、T23≧Tbとなるように前記トナー像を加圧加熱する。
上記第2定着工程において、記録媒体は、記録媒体の表面側に配置された第2定着部材と、記録媒体の裏面側に配置された第2加圧部材とで挟持されて搬送される。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の定着装置の概略構成を示す断面図である。定着装置1は、記録媒体10の搬送方向Aに沿って、第1定着部20及び第2定着部30を順に備える。第1定着部20は、記録媒体10の表面側に配置された加熱ローラ(第1定着部材)21と、記録媒体10の裏面側に加熱ローラ21と対向するように配置された加圧ローラ(第1加圧部材)22とを備える。第1定着部20において、記録媒体10は、加熱ローラ21と加圧ローラ22とにより挟持搬送される。第2定着部30は、記録媒体10の表面側に配置された加熱ローラ(第2定着部材)31と、記録媒体10の裏面側に加熱ローラ31と対向するように配置された加圧ローラ(第2加圧部材)32とを備える。第2定着部30において、記録媒体10は、加熱ローラ31と加圧ローラ32とにより挟持搬送される。記録媒体10の表面は、トナーによりトナー像が形成されている面とする。
トナーの粘弾性特性は、粘弾性測定装置(レオメーター)「RDA−II型」(レオメトリックス社製)を用いて測定を行なった。
測定治具:直径10mmのパラレルプレートを使用した。
測定試料:トナーを加熱・溶融後に直径約10mm,高さ1.5〜2.0mmの円柱状試料に成型して使用した。
測定歪の設定:初期値を0.1%に設定し、自動測定モードにて測定を行なった。
試料の伸長補正:自動測定モードにて調整した。
測定周波数:6.28ラジアン/秒、
測定開始温度:30℃、
測定終了温度:200℃、
昇温条件:2℃/min、とした。
図2は、第2実施形態の定着装置の概略構成を示す断面図である。定着装置2は、図1に示す第1実施形態の定着装置1とは、加熱ローラ21と加熱ローラ31とに接触している介在部材である、無端状のベルト41を備える点が異なる。
図3は、第3実施形態の定着装置の概略構成を示す断面図である。定着装置3は、図1に示す第1実施形態の定着装置1とは、加熱ローラ(第1定着部材)21と加熱ローラ(第2定着部材)31とに接触している介在部材である、ワックス搬送ローラ42を備える点が異なる。ワックス搬送ローラ42は、加熱ローラ21と加熱ローラ31とに適度に圧接するように構成されており、不図示の圧力付与機構及び圧力調整機構が設けられている。
図4は、第4実施形態の定着装置の概略構成を示す断面図である。定着装置4は、記録媒体10の搬送方向Aに沿って、第1定着部50及び第2定着部60を順に備える。第1定着部50において、加熱ローラ(第1定着部材)51と加圧ローラ(第1加圧部材)71とが対向して配置されている。第2定着部60において、加熱ローラ(第2定着部材)61と加圧ローラ(第2加圧部材)71とが対向して配置されている。また、加熱ローラ51と加熱ローラ71とに架け渡されている無端状のベルト43を備える。
図5は、第5実施形態の定着装置の概略構成を示す断面図である。定着装置5は、記録媒体10の搬送方向Aに沿って、第1定着部50及び第2定着部60を順に備える。第4実施形態の定着装置4とは、第1定着部材として加熱ローラ51の代わりに加熱パッド52が配置され、第2定着部材として加熱ローラ61の代わりに加熱パッド62が配置されている点と、無端状のベルト43が駆動により回動可能に構成されている点とが異なる。ベルト43は、加熱パッド52,62に接触した状態を維持して回動する。
本実施形態の定着方法は、トナーにより記録媒体上に形成されたトナー像を定着させる定着方法である。トナー像を形成するトナーとしては、離型剤を含み、前記離型剤の融点をTa(℃)、トナーの弾性率が1×104Paになる温度をTb(℃)とすると、Ta<Tbであるものを用いる。本実施形態の定着方法においては、記録媒体が第1定着工程及び第2定着工程の順に搬送されることによってトナー像が記録媒体の表面上に定着される。第1定着工程は、記録媒体の表面の最高温度T13(℃)が、Ta≦T13<Tbとなるようにトナー像を加圧加熱し、第2定着工程は、記録媒体の表面の最高温度T23(℃)が、T23≧Tbとなるようにトナー像を加圧加熱する。本実施形態の定着方法を実現する定着装置として、上記で説明した定着装置を用いることができる。
本実施形態の画像形成装置は、上記で説明したいずれかの定着装置を備えたものであり、このような定着装置を備える限り、その他の構成は従来公知の構成を特に制限することなく採用することができる。以下、図6に基づき本実施形態の画像形成装置について説明する。図6は、本実施形態の画像形成装置の一例の概略構成を示す断面図である。
上記定着装置及び画像形成装置で記録媒体の表面にトナー像を形成するために用いられるトナーは、少なくとも、結着樹脂と離型剤を含むものであり、離型剤の融点をTa(℃)、トナーの弾性率が1×104Paになる温度をTb(℃)とした場合にTa<Tbの関係を満たすトナーであれば特に限定されない。
トナーを構成する結着樹脂としては、特に限定されず、公知の種々のものを用いることができ、例えば、スチレン樹脂やアクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂またはエポキシ樹脂などが挙げられる。結着樹脂としては、トナー粒径および形状制御性と帯電性との観点から、スチレン−アクリル系樹脂を含有していることが好ましい。また、スチレン−アクリル系樹脂を得るための重合性単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、などの(メタ)アクリレートエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸などのカルボン酸系単量体などを使用することができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、30〜50℃であることが好ましく、より好ましくは35〜48℃である。結着樹脂のガラス転移点が上記範囲にあることにより、低温定着性および耐熱保管性が両立して得られる。
トナーに含有される離型剤は、公知のワックスを用いることができ、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、光沢ムラを抑制する観点から、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックスが特に好ましい。
トナーに着色剤が含有される場合において、着色剤としては、一般に知られている染料および顔料を用いることができる。黒色のトナーを得るための着色剤としては、ファーネスブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、マグネタイト、フェライトなどの磁性体、染料、非磁性酸化鉄を含む無機顔料などの公知の種々のものを任意に使用することができる。
トナーに荷電制御剤が含有される場合においては、公知の正帯電制御剤または負帯電制御剤を用いることができる。具体的には、正帯電制御剤としては、例えば「ニグロシンベースEX」(オリエント化学工業社製)などのニグロシン系染料、「第4級アンモニウム塩P−51」(オリエント化学工業社製)、「コピーチャージPX VP435」(ヘキストジャパン社製)等の第4級アンモニウム塩、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料、および「PLZ1001」(四国化成工業社製)等のイミダゾール化合物などが挙げられる。
トナーは、そのままで用いることができるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、外添剤が添加されてなるものであってもよい。外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子等の無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいはチタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛等の無機チタン酸化合物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。これら無機微粒子は、耐熱保管性および環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
トナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄等の強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛等の合金、フェライトおよびマグネタイト等の強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散したバインダー型キャリアなどを用いることもできる。コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
トナー粒子は、平均粒径が、例えば体積基準のメジアン径で3〜9μmであることが好ましく、より好ましくは3〜8μmとされる。この粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
トナー粒子は、転写効率の向上の観点から、平均円形度が0.930〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950〜0.995である。トナー粒子の平均円形度は、「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて測定されるものである。具体的には、試料(トナー粒子)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T):
円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
にしたがって円形度を算出し、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
トナーは、温度170℃における貯蔵弾性率(G’170)が1×102〜1×103(Pa)であることが、光沢度安定性や耐高温オフセット性の観点で好ましい。G’170の値が1×102Paより小さいと、温度変化に対する光沢度の変化が鋭敏で、画像の先端と後端で光沢度変化が生じやすく安定した画像が得られず、高温オフセットが起こりやすい。また、G’170の値は、1×103Paより大きいとトナーが十分に溶けきれず光沢度不足となる。トナーの貯蔵弾性率(G’170)は、上記した粘弾性測定の結果に基づく値とする。
トナーの軟化点(Tsp)は、90〜110℃であることが好ましい。軟化点(Tsp)が上記範囲であることにより着色剤に負担をかけずに画像形成が行なえるので、より広く安定した色再現性を発現させることが期待される。トナーの軟化点(Tsp)は、たとえば、以下の方法を単独で、または、組み合わせることにより制御することができる。すなわち、
(1)結着樹脂を形成すべき重合性単量体の種類や組成比を調整する、
(2)連鎖移動剤の種類や添加量により結着樹脂の分子量を調整する、
(3)離型剤等の種類や添加量を調整する。
トナーを製造する方法としては、混練・粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、ミニエマルジョン重合凝集法、カプセル化法、その他の公知の方法などを挙げることができるが、画像の高画質化を達成するために小粒径化されたトナーを得る必要があることを考慮して、製造コスト及び製造安定性の観点から、乳化重合凝集法を用いることが好ましい。乳化重合凝集法は、乳化重合法によって製造された結着樹脂よりなる微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう。)の分散液を、着色剤よりなる微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう。)の分散液と混合し、pH調整による微粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させ、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナーを製造する方法である。
(1)着色剤が微粒子状に分散された着色剤微粒子の分散液を調製する着色剤微粒子分散液調製工程、
(2−1)主ワックスおよび内添剤などを含有したコア用の結着樹脂よりなるコア用結着樹脂微粒子を得て、この分散液を調製するコア用結着樹脂微粒子重合工程、
(2−2)シェル用の結着樹脂よりなるシェル用結着樹脂微粒子を得て、この分散液を調製するシェル用結着樹脂微粒子重合工程、
(3)コア用結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とを水系媒体中で凝集、融着させてコア粒子となるべき会合粒子を形成する凝集・融着工程、
(4)会合粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御し、コア粒子を得る第1の熟成工程、
(5)コア粒子の分散液中に、シェル層を形成すべきシェル用結着樹脂微粒子を添加してコア粒子の表面に当該シェル用結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア−シェル構造の粒子を形成するシェル層形成工程、
(6)コア−シェル構造の粒子を熱エネルギーにより熟成させて形状を制御し、コア−シェル構造のトナー粒子を得る第2の熟成工程、
(7)冷却されたトナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を固液分離し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去するろ過、洗浄工程、
(8)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程から構成され、必要に応じて乾燥工程の後に、
(9)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤処理工程を加えてもよい。
この工程においては、水系媒体中に着色剤を添加して分散機によって分散処理することにより、着色剤が微粒子状に分散された着色剤微粒子の分散液を調製する処理が行われる。具体的には、着色剤の分散処理は界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態の水系媒体中で行われる。分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは、超音波分散機、機械式ホモジナイザ、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザ等の加圧分散機、サンドグラインダ、ゲッツマンミルやダイヤモンドファインミルなどの媒体型分散機が挙げられる。この着色剤微粒子分散液における着色剤微粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で40〜200nmであることが好ましい。この着色剤微粒子の体積基準のメジアン径は、「MICROTRAC UPA−150(HONEYWELL社製)」を用い、下記測定条件下により測定されるものである。
サンプル屈折率:1.59、
サンプル比重:1.05(球状粒子換算)、
溶媒屈折率:1.33、
溶媒粘度:0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整:測定セルにイオン交換水を投入し調整した。
この工程においては、重合処理を行って主ワックスおよび内添剤などを含有したコア用の結着樹脂よりなるコア用結着樹脂微粒子の分散液を調製する処理が行われる。この工程における重合処理の好適な一例においては、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体中に、必要に応じて主ワックスおよび内添剤などが含有された重合性単量体溶液を添加し、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させ、次いで水溶性の重合開始剤を添加し、当該液滴中において重合反応を進行させる。なお、前記液滴中に油溶性重合開始剤が含有されていてもよい。この様な工程においては、機械的エネルギーを付与して強制的な乳化(液滴の形成)を行う処理が必須となる。かかる機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサ、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌または超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
ここで、上記着色剤微粒子分散液やコア用結着樹脂微粒子の重合時に使用する水系媒体に用いられる界面活性剤について説明する。界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなど)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなど)などのイオン性界面活性剤を好適なものとして例示することができる。また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドとのエステル、ソルビタンエステルなどのノニオン性界面活性剤も使用することができる。以下、コア用結着樹脂微粒子重合工程で使用される重合開始剤および連鎖移動剤について説明する。
水溶性の重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素などを挙げることができる。また、油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などが挙げられる。
得られるコア用の結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではなく、例えばn−オクチルメルカプタン、n−デシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、および、α−メチルスチレンダイマー等が使用される。
この工程においては、上記(2−1)のコア用結着樹脂微粒子重合工程と同様に重合処理を行って、シェル用の結着樹脂よりなるシェル用結着樹脂微粒子の分散液を調製する処理が行われる。
この工程においては、コア用結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とを水系媒体中で凝集、融着させてコア粒子となるべき会合粒子を形成する処理が行われる。この工程における凝集、融着の方法としては、(1)の着色剤微粒子分散液調製工程により得られた着色剤微粒子、及び、(2−1)のコア用結着樹脂微粒子重合工程により得られたコア用結着樹脂微粒子を用いた塩析/融着法が好ましい。また、当該凝集・融着工程においては、コア用結着樹脂微粒子や着色剤微粒子とともにワックス微粒子や荷電制御剤などの内添剤微粒子を凝集、融着させることができる。
この工程においては、会合粒子を熱エネルギーにより熟成させる処理が行われる。そして、凝集・融着工程(3)の加熱温度や特に第1の熟成工程(4)の加熱温度と時間を制御することにより、粒径が一定で分布が狭く形成されたコア粒子表面が平滑だが均一的な形状を有するものになる様に制御することができる。具体的には、凝集・融着工程(3)で加熱温度を低めにしてコア用結着樹脂微粒子同士の融着の進行を抑制させて均一化を促進させ、第1の熟成工程で加熱温度を低めに、かつ、時間を長くしてコア粒子の表面が均一な形状のものに制御する。
この工程においては、コア粒子の分散液中にシェル用結着樹脂微粒子の分散液を添加してコア粒子の表面にシェル用結着樹脂微粒子を凝集、融着させ、コア粒子の表面にシェル用結着樹脂微粒子を被覆させてコア−シェル構造の粒子を形成するシェル化処理が行われる。この工程は、低温定着性と耐熱保存性の両方の性能を付与するための好ましい製造条件である。また、カラー画像を形成する場合に、二次色について高い色再現性を得るために、このシェル層形成を行うことが好ましい。
この工程においては、シェル層形成工程(5)によりコア−シェル構造の粒子が所定の粒径になった段階で塩化ナトリウムなどの停止剤を添加して粒子成長を停止させ、その後もコア粒子に付着させたシェル用結着樹脂微粒子を融着させるために数時間加熱撹拌を継続する。そして、コア粒子の表面を被覆するシェル用結着樹脂微粒子による層の厚さを100〜300nmとする。このようにして、コア粒子の表面にシェル用結着樹脂微粒子を固着させてシェル層を形成し、丸みを帯び、しかも形状の揃ったコア−シェル構造のトナー粒子が形成される。
この工程においては、先ず、トナー粒子の分散液を冷却する処理が行われる。冷却処理条件としては、1〜20℃/minの冷却速度で冷却することが好ましい。冷却処理方法としては特に限定されるものではなく、反応容器の外部より冷媒を導入して冷却する方法や、冷水を直接反応系に投入して冷却する方法を例示することができる。次いで、所定温度まで冷却されたトナー粒子の分散液からトナー粒子を固液分離し、その後、固液分離されたトナーケーキ(ウエット状態にあるトナー粒子をケーキ状に凝集させた集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理が行われる。ここで、ろ過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧ろ過法、フィルタープレス等を使用して行うろ過法など特に限定されるものではない。
この工程においては、洗浄処理されたトナーケーキを乾燥する処理が行われる。この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などを使用することが好ましい。乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2質量%以下とされる。なお、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
この工程においては、乾燥工程(8)で乾燥処理されたトナー粒子に対して外添剤を添加する処理が行われる。外添剤の添加方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を用いて添加することができる。
[実施例1〜14、比較例1〜4]
画像形成装置(商品名:bizhub PRESS C1060、コニカミノルタ社製)の定着ユニットを取り外した改造機で、ソリッドパターン(紙上付着量は8.0g/m2)をコート紙(商品名:OKトップコート+、王子製紙社製)上に形成させた。なお、画像形成装置において、コート紙の搬送速度は200mm/secとした。トナーとして、トナーA(上記のトナー製造方法により作製したスチレン−アクリル系トナー)またはトナーB(上記のトナー製造方法により作製したスチレン−アクリル系トナー)を用いた。各実施例で用いたトナーの種類は表1に示した通りである。トナーAに含まれている離型剤は、ポリエステルワックスであり、その融点Taは70℃であった。また、かかるトナーAの弾性率が1×104Paになる温度をTbは110℃であった。トナーBに含まれている離型剤は、ポリエステルワックスであり、その融点Taは80℃であった。また、かかるトナーBの弾性率が1×104Paになる温度をTbは124℃であった。なお、Tbは上記した粘弾性測定により求めた。
(温度測定)
図1に示す定着装置1を用いた実施例1〜10及び比較例2〜4について、赤外線温度センサーにより第1定着部の通過時のコート紙の表面の最高温度T13(℃)と、第2定着部の通過時のコート紙の表面の最高温度T23(℃)を取得した。これらは、予め最高温度に到達する位置を特定し、その位置での温度を赤外線センサーにより検出することにより取得した。また、実施例11〜14及び比較例1については、赤外線温度センサーにより第2定着部を通過したコート紙の表面の最高温度T23(℃)を取得した。これは、予め最高温度に到達する位置を特定し、その位置での温度を赤外線センサーにより検出することにより取得した。その結果を表1に示す。なお、図2〜図5に示す定着装置を用いた場合の第1定着部を通過したコート紙の表面の温度は、第1定着部におけるT11及びT12が同じ場合、図1に示す定着装置1を用いた場合の第1定着部を通過したコート紙の表面の温度とほぼ同じ温度となり、その違いは±2℃の範囲に入ることを予め確認した。したがって、実施例1〜10の温度T13に基づいて、実施例11〜14について第1定着部を通過したコート紙の表面の温度T13を予測値として表1に記載した。
実施例1〜14及び比較例1〜4において、コート紙が定着装置から排紙されるときの様子を観察し、以下の3段階で評価を行なった。表1に評価結果を示す。
A:画像面が第2定着部材(または第2定着部材に架け渡されたベルト)に巻き付かず、分離時にジャムも生じない、
B:画像面が第2定着部材(または第2定着部材に架け渡されたベルト)にわずかに巻き付くものの、分離時にジャムは発生しない、
C:画像面が第2定着部材(または第2定着部材に架け渡されたベルト)に巻き付き、分離時にジャムが発生する。
実施例1〜14及び比較例1〜4で得られたコート紙上の画像について、その画像部を消しゴム(砂消し「LION26111」、ライオン事務機社製)を押圧荷重1kgfで2回擦り、画像濃度の残存率を反射濃度計(製品名:X−Rite model 404、X−Rite社製)により測定し、以下の3段階で評価を行なった。表1に評価結果を示す。
A:画像濃度残存率が90%以上、
B:画像濃度残存率が80%以上90%未満、
C:画像濃度残存率が80%未満。
実施例1〜14においては、第1定着部において「Ta≦T13<Tb」の関係を満たし、第2定着部において「T23≧Tb」の関係を満たし、良好な定着分離性、良好な定着強度が得有れている。一方、第1定着部を有しない比較例1、及び第1定着部において「Ta≦T13<Tb」の関係満たさない比較例1〜3は定着分離性が劣る結果となっている。
Claims (14)
- トナーにより記録媒体の表面上に形成されたトナー像を定着させる定着装置であって、
前記トナーは、離型剤を含み、前記離型剤の融点をTa(℃)、トナーの弾性率が1×104Paになる温度をTb(℃)とすると、Ta<Tbであり、
前記定着装置は、前記記録媒体の搬送方向に沿って、第1定着部及び第2定着部を順に備え、
前記第1定着部は、前記記録媒体の表面の最高温度T1(℃)が、Ta≦T1<Tbとなるように前記トナー像を加圧加熱し、
前記第2定着部は、前記記録媒体の表面の最高温度T23(℃)が、T23≧Tbとなるように前記トナー像を加圧加熱する、定着装置。 - 前記第1定着部において、前記記録媒体にかかる圧力は300kPa〜1000kPaである、請求項1に記載の定着装置。
- 前記第1定着部は、前記記録媒体の表面側に配置された第1定着部材と、前記記録媒体の裏面側に配置された第1加圧部材とを備え、前記第1定着部材と前記第1加圧部材とで前記記録媒体を挟持して搬送し、
前記第2定着部は、前記記録媒体の表面側に配置された第2定着部材と、前記記録媒体の裏面側に配置された第2加圧部材とを備え、前記第2定着部材と前記第2加圧部材とで前記記録媒体を挟持して搬送する、請求項1または2に記載の定着装置。 - 前記第1定着部材及び前記第1加圧部材の温度が調節可能であり、前記第1定着部材の温度T11(℃)と前記第1加圧部材の温度T12(℃)とが、T11>T12となるように温度を調節する、請求項3に記載の定着装置。
- 前記第2定着部材の温度が調節可能であり、前記第2定着部材の温度T21(℃)が、T21≧Tbとなるように温度を調節する、請求項3または4に記載の定着装置。
- 前記第1定着部材及び前記第2定着部材に接触している介在部材を備える、請求項3〜5のいずれか1項に記載の定着装置。
- 前記介在部材は無端状のベルトであり、
前記第1定着部及び前記第2定着部において、前記介在部材が前記記録媒体の前記表面に当接して前記記録媒体が搬送される、請求項6に記載の定着装置。 - 前記第1定着部、前記第2定着部及び前記介在部材は、それぞれローラである、請求項6に記載の定着装置。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
- トナーにより記録媒体上に形成されたトナー像を定着させる定着方法であって、
前記記録媒体が第1定着工程及び第2定着工程の順に搬送されることによって前記トナー像が定着され、
前記トナーは、離型剤を含み、前記離型剤の融点をTa(℃)、トナーの弾性率が1×104Paになる温度をTb(℃)とすると、Ta<Tbであり、
前記第1定着工程は、前記記録媒体の表面の最高温度T13(℃)が、Ta≦T13<Tbとなるように前記トナー像を加圧加熱し、
前記第2定着工程は、前記記録媒体の表面の最高温度T23(℃)が、T23≧Tbとなるように前記トナー像を加圧加熱する、定着方法。 - 前記第1定着工程において、前記記録媒体にかかる圧力は300kPa〜1000kPaである、請求項10に記載の定着方法。
- 前記第1定着工程において、前記記録媒体は、前記記録媒体の表面側に配置された第1定着部材と、前記記録媒体の裏面側に配置された第1加圧部材とで挟持されて搬送され、
前記第2定着工程において、前記記録媒体は、前記記録媒体の表面側に配置された第2定着部材と、前記記録媒体の裏面側に配置された第2加圧部材とで挟持されて搬送される、請求項11に記載の定着方法。 - 前記第1定着部材及び前記第1加圧部材の温度が調節可能であり、
前記第1定着工程は、前記第1定着部材の温度T11(℃)と前記第1加圧部材の温度T12(℃)とが、T11>T12となるように温度を調節する、請求項12に記載の定着方法。 - 前記第2定着部材の温度が調節可能であり、
前記第2定着工程は、前記第2定着部材の温度T21(℃)が、T21>Tbとなるように温度を調節する、請求項12または13に記載の定着方法。
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