JP2016137462A - 酸性ガス分離用スパイラル型モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】促進輸送膜に効率的に水分を供給することができ、原料ガスの処理効率すなわち酸性ガスの分離性能を向上できる酸性ガス分離用スパイラル型モジュールを提供する。【解決手段】中心筒、供給ガス流路用部材、酸性ガスと反応するキャリアおよびキャリアを担持するための親水性化合物を含有する促進輸送膜と促進輸送膜を支持する多孔質支持体とを有する酸性ガス分離層、ならびに、透過ガス流路用部材を有し、供給ガス流路用部材、酸性ガス分離層および透過ガス流路用部材を有する積層体を、中心筒に巻回してなる酸性ガス分離用スパイラル型モジュールにおいて、中心筒の中心軸に平行な断面において、少なくとも1つの促進輸送膜の供給ガス流路用部材側の面が、中心筒の軸方向の両端部の間で、中心軸に対して、傾斜しており、促進輸送膜の供給ガス流路用部材側の面の傾斜量が、0.02mm〜30mmであることにより、前記課題を解決する。【選択図】図3

Description

本発明は、原料ガスから酸性ガスを選択的に分離する、酸性ガス分離用スパイラル型モジュールに関する。
近年、原料ガス(被処理ガス)から、炭酸ガスなどの酸性ガスを選択的に分離する技術の開発が進んでいる。例えば、酸性ガスを選択的に透過する酸性ガス分離膜を用いて、原料ガスから酸性ガスを分離する酸性ガス分離モジュールが開発されている。
一例として、特許文献1には、管壁に貫通孔が形成された、分離した酸性ガスを収集するための中心筒(中心透過物収集管)に、酸性ガス分離膜を含む積層体を多重に巻き付けてなる酸性ガス分離モジュールが開示されている。
この特許文献1に開示される酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜として、いわゆる溶解拡散膜を用いる、溶解拡散型の酸性ガス分離モジュールである。この溶解拡散膜は、膜に対する酸性ガスと分離対象物質との溶解性、および、膜中の拡散性の差を利用して、原料ガスから酸性ガスを分離する。
また、特許文献2には、空間を酸性ガス分離膜で原料室と透過室とに分けて、原料室に原料ガス(CO2、H2およびH2Oからなる混合ガス)を供給し、酸性ガス分離膜で選択的に分離(透過)した酸性ガスを、透過室から取り出す酸性ガス分離モジュール(実験装置)が開示されている。
この特許文献2に開示される酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜として、いわゆる促進輸送膜を用いる、促進輸送型の酸性ガス分離モジュールである。この促進輸送膜は、膜中に酸性ガスと反応するキャリアを有し、このキャリアによって酸性ガスを膜の反対側に輸送することで、原料ガスから酸性ガスを分離する。
このような酸性ガス分離モジュールにおいて、特許文献1に示されるような、酸性ガス分離膜を有する積層体を、分離した酸性ガスを収集する中心筒に巻回してなる(中心筒に巻き付けた)、いわゆるスパイラル型の酸性ガス分離モジュールが知られている。スパイラル型の酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜の面積を大きくできる。そのため、スパイラル型の酸性ガス分離モジュールは、効率の良い処理が可能である。
特開平4−215824号公報 特許第4621295号公報
特許文献1にも示されるように、このようなスパイラル型の酸性ガス分離モジュールは、一般的に、その内部が原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材(供給物スペーサ)、および、その内部が分離した酸性ガスの流路となる透過ガス流路用部材(透過物スペーサ)を用いる場合が多い。このような流路用部材は、通常、メッシュ状のシート状物で構成される。
この場合には、一例として、特許文献1にも示されるように、酸性ガス分離モジュールは、供給ガス流路用部材を酸性ガス分離膜で挟持し、その両面を透過ガス流路用部材で挟持してなる積層体を、中心筒に巻き回して、構成される。
ところで、促進輸送膜では、キャリアを十分に機能させるために、膜中に多量の水分を保持させる必要がある。すなわち、膜中に保持する水分が多いほど、キャリアの膜中への溶解性が高くなり、酸性ガスの透過度が高くなる。そのため、原料ガスに水蒸気を含有させて促進輸送膜に水分を供給することが行われる。
このような促進輸送膜を一般的なバッチ式の平膜として評価する場合には、膜面積全体に水蒸気を供給できる。そのため、理想的な分離性能を得ることができる。
しかしながら、本願発明者の検討によれば、このような促進輸送膜をスパイラル型の分離モジュールとして用いた場合には、平膜として促進輸送膜を評価した場合よりも分離性能が低くなるという問題があることがわかった。
この主要因の一つとして、スパイラル型の分離モジュールでは、原料ガスを側面から供給する構成であり、水蒸気を含む原料ガスは、促進輸送膜の膜面に平行な方向に流れるため、促進輸送膜に効率的に水分を供給できないことがわかった。すなわち、促進輸送膜をスパイラル型の分離モジュールとして利用する場合には、促進輸送膜に効率的に水分が供給されず、本来発現できる性能を十分に発揮できないという問題があることがわかった。
そこで本発明は、促進輸送膜に効率的に水分を供給することができ、原料ガスの処理効率すなわち酸性ガスの分離性能を向上できる酸性ガス分離用スパイラル型モジュールを提供することに有る。
本願発明者は、上記課題を達成すべく鋭意研究した結果、中心筒、供給ガス流路用部材、酸性ガスと反応するキャリアおよびキャリアを担持するための親水性化合物を含有する促進輸送膜と促進輸送膜を支持する多孔質支持体とを有する酸性ガス分離層、ならびに、透過ガス流路用部材を有し、供給ガス流路用部材、酸性ガス分離層および透過ガス流路用部材を有する積層体を、中心筒に巻回してなる酸性ガス分離用スパイラル型モジュールにおいて、中心筒の中心軸に平行な断面において、少なくとも1つの促進輸送膜の供給ガス流路用部材側の面が、中心筒の軸方向の両端部の間で、中心軸に対して、傾斜しており、前記促進輸送膜の前記供給ガス流路用部材側の面の傾斜量が、0.02mm〜30mmである構成とすることにより、促進輸送膜に効率的に水分を供給することができ、原料ガスの処理効率すなわち酸性ガスの分離性能を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールを提供する。
(1) 管壁に貫通孔が形成された中心筒、
原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材、
供給ガス流路用部材を流れる原料ガスから酸性ガスを分離する、酸性ガスと反応するキャリアおよびキャリアを担持するための親水性化合物を含有する促進輸送膜と、促進輸送膜を支持し、促進輸送膜が分離した酸性ガスを通過させる多孔質支持体とを有する酸性ガス分離層、ならびに、
促進輸送膜を透過した酸性ガスが中心筒まで流れる流路となる透過ガス流路用部材を有し、
供給ガス流路用部材、酸性ガス分離層および透過ガス流路用部材を有する積層体を、少なくとも1つ、中心筒に巻回してなる酸性ガス分離用スパイラル型モジュールにおいて、
中心筒の中心軸に平行な断面において、少なくとも1つの促進輸送膜の供給ガス流路用部材側の面が、中心筒の軸方向の両端部の間で、中心軸に対して、傾斜しており、促進輸送膜の供給ガス流路用部材側の面の傾斜量が、0.02mm〜30mmである酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
(2) 供給ガス流路用部材および透過ガス流路用部材は、中心筒の軸方向において、厚さが連続的に変化しており、かつ、供給ガス流路用部材および透過ガス流路用部材の厚さの変化方向が互いに異なる(1)に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
(3) 供給ガス流路用部材および酸性ガス分離層は、中心筒の軸方向において、厚さが連続的に変化しており、かつ、供給ガス流路用部材および酸性ガス分離層の厚さの変化方向が互いに異なる(1)に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
(4) 酸性ガス分離用スパイラル型モジュールは、両端面の外径の比率が、一方を1とした場合に他方が1.03〜1.3であるテーパー形状である(1)に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
(5) 供給ガス流路用部材の厚みが、中心筒の軸方向に連続的に変化しており、一方の端部の厚みと、他方の端部の厚みの差が20μm〜800μmである(2)〜(4)のいずれかに記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
(6) 透過ガス流路用部材の厚みが、中心筒の軸方向に連続的に変化しており、一方の端部の厚みと、他方の端部の厚みの差が20μm〜800μmである(2)、(4)および(5)のいずれかに記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
(7) 酸性ガス分離層の厚みが、中心筒の軸方向に連続的に変化しており、一方の端部の厚みと、他方の端部の厚みの差が10μm〜400μmである(3)〜(6)のいずれかに記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
(8) 多孔質支持体と促進輸送膜との間に中間層を有する(1)〜(7)のいずれかに記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
(9) 中間層がシリコーン樹脂である(8)に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
本発明によれば酸性ガス分離膜に効率的に水分を供給することができ、原料ガスの処理効率すなわち酸性ガスの分離性能を向上できる。
本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの一例を一部切り欠いて示す概略斜視図である。 図1に示す酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの積層体の概略断面図である。 図1に示す酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの積層体の概略断面図である。 図4(A)および図4(B)はそれぞれ、本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの他の一例の積層体の概略断面図である。 図5(A)および図5(B)はそれぞれ、本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの一例の概観図である。 図6(A)および図6(B)はそれぞれ、図5(B)に示す酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの積層体の構成の一例を示す概略断面図である。 図7(A)および図7(B)はそれぞれ、図5(B)に示す酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの積層体の構成の他の一例を示す概略断面図である。 酸性ガス分離層の他の一例の一部を示す概略断面図である。 図9(A)および図9(B)は、酸性ガス分離層の別の一例を説明するための概念図である。 図10(A)および図10(B)はそれぞれ、酸性ガス分離層の別の一例を説明するための概念図である。 図11(A)および図11(B)はそれぞれ、酸性ガス分離層の別の一例を説明するための概念図である。 図12(A)および図12(B)は、図1に示す酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図14(A)および図14(B)は、図1に示す酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの作製方法を説明するための概念図である。 図1に示す酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの作製方法を説明するための概念図である。
以下、本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールについて、添付の図面に示される好適実施形態を基に、詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
図1に本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの一例の一部切欠き概略斜視図を示す。なお、以下の説明では、酸性ガス分離用スパイラル型モジュールを、単に、分離モジュールとも言う。
図1に示すように、酸性ガス分離用スパイラル型モジュール10は、基本的に、中心筒12と、酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)を有する積層体14と、テレスコープ防止板16とを有して構成される。また、積層体14は、酸性ガス分離層20と、供給ガス流路用部材24と、透過ガス流路用部材26とからなる積層体である。
分離モジュール10は、例えば、一酸化炭素、炭酸ガス(CO2)、水(水蒸気)および水素を含有する原料ガスGから、酸性ガスGcとして炭酸ガスを分離するものである。
本発明の分離モジュール10は、いわゆるスパイラル型の分離モジュールである。すなわち、分離モジュール10は、シート状の積層体14を、1層、もしくは、複数積層して、この積層体14を中心筒12に巻回して積層体14の巻回物を形成し、積層体14の巻回物の両端面に、中心筒12を挿通してテレスコープ防止板16を設けてなる構成を有する。すなわち、積層体14の巻回物は、略円筒状物である。また、巻回した積層体14の最外周面は、ガス非透過性の被覆層18で覆われている。
なお、以下の説明では、中心筒12に巻回された、複数の積層体14を積層した物の巻回物(すなわち、積層されて巻回された積層体14による略円筒状物)を、便宜的に、スパイラル積層体14aとも言う。
図1に示す分離モジュール10において、酸性ガスを分離される原料ガスGは、例えば図1中奥手側のテレスコープ防止板16(その開口部16d)を通って、スパイラル積層体14aの端面に供給され、端面から積層体14に流入して、積層体14内を流れつつ、酸性ガスGcを分離される。
また、積層体14によって原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、中心筒12から排出される。他方、酸性ガスを分離された原料ガスG(以下、便宜的に残余ガスGrとする)は、スパイラル積層体14a(積層体14)の供給側とは逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16(同前)を通って分離モジュール10の外部に排出される。
中心筒(透過ガス集合管)12は、原料ガスG供給側の端面が閉塞する円筒状の管で、周面(管壁)には複数の貫通孔12aが形成される。
原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、後述する透過ガス流路用部材26を通って、貫通孔12aから中心筒12内に至り、中心筒12の開放端12bから排出される。
中心筒12において、開口率は、1〜80%が好ましく、1〜75%がより好ましく、5〜70%がさらに好ましい。中でも、実用的な観点から、中心筒12の開口率は、5〜25%が、特に好ましい。なお、中心筒12の開口率とは、具体的には、中心筒12の長さ方向の貫通孔12aの形成領域における、中心筒12の外周面に占める貫通孔12aの面積率である。
中心筒12の開口率を上記範囲とすることにより、効率的に酸性ガスGcを収集することができ、また、中心筒12の強度を高め、加工適性を十分に確保できる。
また、貫通孔12aは、直径0.5〜20mmの円形の孔であるのが好ましい。さらに、貫通孔12aは、中心筒12の周壁に、均一に形成されるのが好ましい。
なお、中心筒12には、必要に応じて、分離した酸性ガスGcを開放端12b側に流すためのガス(スイープガス)を供給する供給口(供給部)を設けてもよい。
さらに、中心筒12の管壁には、軸方向に沿ってスリット(図示省略)が設けられているのが好ましい。このスリットに関しては、後に詳述する。
積層体14は、酸性ガス分離層20と、供給ガス流路用部材24と、透過ガス流路用部材26とを積層してなるものである。
なお、図1において、符号30は、酸性ガス分離層20と透過ガス流路用部材26とを接着し、かつ、積層体14同士を接着すると共に、透過ガス流路用部材26における酸性ガスGcの流路を、中心筒12側が開口するエンベロープ状にする接着剤層30である。
前述のように、図示例の分離モジュール10は、この積層体14を、複数、積層して、中心筒12に巻き付けて、略円筒状のスパイラル積層体14aを形成してなる構成を有する。
ここで、本発明においては、便宜的に、原料ガスGの供給方向、すなわち、中心筒12の軸方向をx方向、x方向と直交する方向をy方向とする。スパイラル型である図示例の分離モジュール10においては、この積層体14の巻回方向はy方向と一致し、従って、積層体14の巻回方向と直交する方向は、原料ガスGの供給方向であるx方向と一致する。
分離モジュール10において、スパイラル積層体14aを構成する積層体14は1層でもよい。しかしながら、図示例のように、複数の積層体14を積層して巻回することにより、酸性ガス分離層20の膜面積を大きくして、1つのモジュールで分離する酸性ガスGcの量を向上できる。
積層体14の積層数は、分離モジュール10に要求される処理速度や処理量、分離モジュール10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。ここで、積層する積層体14の数は、50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下が特に好ましい。積層体14の積層数を、この数とすることで、中心筒12への積層体14の巻回が容易になり、加工性を向上できる。
図2に、積層体14の部分断面図を示す。前述のように、矢印xは原料ガスGの供給方向であり、x方向と直交するy方向は積層体14の巻回方向(以下、巻回方向とも言う)と一致する。
図示例において、積層体14は、後述する図13に示すように、二つ折りにした酸性ガス分離層20の間に供給ガス流路用部材24を挟み込んで挟持体36とし、この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層してなる構成を有する。この構成については、後に詳述する。
前述のとおり、分離モジュール10において、原料ガスGは、テレスコープ防止板16の開口部16dを通って、スパイラル積層体14aの一方の端面から供給される。すなわち、原料ガスGは、各積層体14のx方向の端部(端面)に供給される。
図2に概念的に示すように、積層体14の幅方向の端面に供給された原料ガスGは、供給ガス流路用部材24を幅方向(x方向)に流れる。供給ガス流路用部材24内における流れの中で、酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)に接触した酸性ガスGcは、原料ガスGから分離されて、酸性ガス分離層20を積層体14の積層方向に通過して(促進輸送膜20aのキャリアによって積層方向に輸送されて)、透過ガス流路用部材26に流入する。
透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、透過ガス流路用部材26を巻回方向(矢印y方向)に流れて、中心筒12に至り、中心筒12の貫通孔12aから中心筒12内に流入する。中心筒12内に流入した酸性ガスGcは、中心筒12をx方向に流れて、開放端12bから排出される。
また、酸性ガスGcを除去された残余ガスGrは、供給ガス流路用部材24をx方向に流れて、スパイラル積層体14aの逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16(その開口部16d)を通って、分離モジュール10の外部に排出される。
ここで、本発明の分離モジュール10は、このようなスパイラル型の分離モジュールにおいて、少なくとも1つの酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの供給ガス流路用部材24側の面が、中心筒12の中心軸に平行な断面において、中心筒12の軸方向の両端部の間で、中心軸に対して、傾斜しており、その傾斜量が、0.02mm〜30mmである構成を有する。
図3に、中心筒12の中心軸(x方向)を通り、中心軸に平行な方向の、スパイラル積層体14aの断面の一部を示す概略図を示す。
図3に示す実施態様は、本発明における、供給ガス流路用部材および酸性ガス分離層は、中心筒の軸方向において、厚さが連続的に変化しており、かつ、供給ガス流路用部材および酸性ガス分離層の厚さの変化方向が互いに異なる構成を有するものである。
図3に示すスパイラル積層体14aでは、供給ガス流路用部材24の厚さが、中心筒12の軸方向(以下、「軸方向」ともいう)の原料ガスGの入口側端部(以下、「入口側端部」という)から、残余ガスGrの出口側端部(以下「出口側端部」という)に向かって、薄くなるように連続的に変化している。また、酸性ガス分離層20の厚さが、入口側端部から出口側端部に向かって、厚くなるように連続的に変化している。
また、スパイラル積層体14aは、供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26との間に、酸性ガス分離層20を挟んで順次、積層した構成を有し、供給ガス流路用部材24と酸性ガス分離層20とは、厚さの変化方向を異ならせて積層される。なお、図示例においては、酸性ガス分離層20の促進輸送膜20a側に供給ガス流路用部材24が積層される。
従って、供給ガス流路用部材24の両面に積層される酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面はそれぞれ、入口側端部から出口側端部に向かうにしたがって供給ガス流路用部材24を挟んで互いに近づく方向に傾斜している。本発明のおいては、酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面が、中心筒12の軸方向の両端部の間で、すなわち、入口側端部と出口側端部との間で、中心筒12の中心軸(以下、「中心軸」ともいう)に対して、0.02mm〜30mm傾斜した構成である。
また、各部材の入口側端部での厚さと出口側端部での厚さの差の絶対値を厚さの変化量とすると、酸性ガス分離層20の厚さの変化量と、供給ガス流路用部材24の厚さの変化量との比は、約1:2である。図に示すように、スパイラル積層体14aでは、2層の酸性ガス分離層20の間に供給ガス流路用部材24が配置された積層物が、透過ガス流路用部材26を挟んで、繰り返し積層される構成を有する。すなわち、酸性ガス分離層20と供給ガス流路用部材24との積層数の比は、2:1であり、酸性ガス分離層20の厚さの変化量と、供給ガス流路用部材24の厚さの変化量との比は1:2であるので、中心筒12の軸方向における、スパイラル積層体14aの全体の厚さは均一である(図5(A)参照)。
前述のとおり、酸性ガスを分離する分離膜として、促進輸送膜を用いる場合には、キャリアを十分に機能させるために、膜中に多量の水分を保持させる必要がある。
しかしながら、スパイラル型の分離モジュールは、水蒸気を含む原料ガスGを分離モジュールの側面から供給する構成であるため、原料ガスGは促進輸送膜の膜面に平行な方向に流れるので、従来のスパイラル型の分離モジュールでは、原料ガスG中の水蒸気の一部は、促進輸送膜に接触することなく排出されてしまい、促進輸送膜に効率的に水分を供給できないことがわかった。
これに対して本発明においては、酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面が、中心筒12の軸方向の両端部の間で、中心軸に対して、0.02mm〜30mm傾斜した構成とすることで、言い換えると、原料ガスGの流れ方向(x方向)と、促進輸送膜の膜面の面方向とが交差する構成とすることで、側面から流入する原料ガスGが、傾斜した促進輸送膜20aの膜面にぶつかるので、原料ガスG中の水蒸気を促進輸送膜20aに効率的に接触させて供給することができる。また、原料ガスGが、傾斜した促進輸送膜20aの膜面にぶつかることで原料ガスGが攪拌される効果によっても、原料ガスG中の水蒸気を促進輸送膜20aに効率的に供給することができる。これにより、促進輸送膜20aに効率的に水分を供給することができ、原料ガスGの処理効率すなわち酸性ガスの分離性能を向上できる。
ここで、本発明においては、少なくとも1つの促進輸送膜20aの膜面の、中心軸に対する傾斜量は、中心筒12の軸方向の両端部の間で、すなわち、入口側端部と出口側端部との間で、0.02mm〜30mmである。
促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量を、0.02mm以上とすることで、流入した原料ガスGが促進輸送膜の膜面ぶつかり、また、原料ガスGが攪拌されて、促進輸送膜20aに効率的に水分を供給することができる。
また、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量を、30mm以下とすることで、原料ガスGの流路抵抗が増大するのを防止でき、傾斜量が大きすぎることで促進輸送膜20aが破損するのを防止でき、また、各部材の厚さが増大して装置が大型化するのを防止できる。
上記観点から、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.05mm〜25mmが好ましく、0.1mm〜15mmがより好ましい。
また、図3に示す例では、中心軸に平行な断面において、促進輸送膜20aの膜面は、平坦に形成される構成としたが、これに限定はされず、供給ガス流路用部材24側に凸状に形成されてもよく、あるいは、凹状に形成されてもよい。
また、図3に示す例では、供給ガス流路用部材および酸性ガス分離層の厚さが連続的に変化しており、これらの厚さの変化方向が互いに異なる構成としたが、本発明はこれに限定はされず、供給ガス流路用部材および透過ガス流路用部材の厚さが連続的に変化して、かつ、互いに厚さの変化方向が異なる構成として、促進輸送膜20aの膜面が中心軸に対して傾斜する構成としてもよい。
図4(A)に、本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの他の一例のスパイラル積層体の概略断面図を示す。
図4(A)に示す実施態様は、本発明における、供給ガス流路用部材および透過ガス流路用部材は、中心筒の軸方向において、厚さが連続的に変化しており、かつ、供給ガス流路用部材および透過ガス流路用部材の厚さの変化方向が互いに異なる構成を有するものである。
図4(A)に示すスパイラル積層体14aでは、供給ガス流路用部材24の厚さが、入口側端部から、出口側端部に向かって、薄くなるように連続的に変化している。また、供給ガス流路用部材24は、両面が中心筒12の中心軸に対して傾斜するように配置される。すなわち、供給ガス流路用部材24のそれぞれの面の傾斜量は、供給ガス流路用部材24の厚さの変化量の半分である。
また、透過ガス流路用部材26の厚さが、入口側端部から出口側端部に向かって、厚くなるように連続的に変化している。また、透過ガス流路用部材26は、両面が中心筒12の中心軸に対して傾斜するように配置される。すなわち、透過ガス流路用部材26のそれぞれの面の傾斜量は、透過ガス流路用部材26の厚さの変化量の半分である。
また、供給ガス流路用部材24の厚さの変化方向と、透過ガス流路用部材26の厚さの変化方向とが異なるので、供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26との、互いに対面する面同士の傾斜方向は一致する。従って、供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26との、傾斜した面の間に配置される酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)も、全体が中心筒12の中心軸に対して傾斜して配置される。
このように、中心筒12の軸方向において、厚さが連続的に変化する供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26とを用いて、互いの厚さの変化方向を異ならせて積層することで、供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26の間に積層される酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面を、入口側端部から出口側端部に向かうにしたがって、供給ガス流路用部材24を挟む2つの酸性ガス分離層20が互いに近づく方向に傾斜させて、酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面が、中心筒12の軸方向の両端部の間で、中心軸に対して、0.02mm〜30mm傾斜した構成としてもよい。
なお、供給ガス流路用部材24の厚さの変化量と、透過ガス流路用部材26の厚さの変化量との比は約1:1である。また、供給ガス流路用部材24の積層数と、透過ガス流路用部材26の積層数の比は、1:1である。従って、中心筒12の軸方向における、スパイラル積層体14aの全体の厚さは均一である。
なお、図4(A)に示す例では、供給ガス流路用部材24の両面に積層される酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)の両方が傾斜する構成としたが、これに限定はされず、供給ガス流路用部材24のいずれか一方の面に積層される酸性ガス分離層20が傾斜する構成としてもよい。
図4(B)に、本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの他の一例のスパイラル積層体の概略断面図を示す。
図4(B)に示すスパイラル積層体14aでは、供給ガス流路用部材24の厚さが、入口側端部から、出口側端部に向かって、薄くなるように連続的に変化している。また、供給ガス流路用部材24は、図中下側の面が中心筒12の中心軸に対して傾斜し、図中上側の面は中心軸に平行に配置される。すなわち、供給ガス流路用部材24の下側の面の傾斜量は、供給ガス流路用部材24の厚さの変化量である。
また、透過ガス流路用部材26の厚さが、入口側端部から出口側端部に向かって、厚くなるように連続的に変化している。また、透過ガス流路用部材26は、図中上側の面が中心筒12の中心軸に対して傾斜し、図中下側の面が中心軸に平行に配置される。すなわち、透過ガス流路用部材26の上側の面の傾斜量は、透過ガス流路用部材26の厚さの変化量である。
また、供給ガス流路用部材24の厚さの変化方向と、透過ガス流路用部材26の厚さの変化方向とが異なるので、供給ガス流路用部材24の下側の面と、透過ガス流路用部材26の上側の面の傾斜方向は一致する。従って、供給ガス流路用部材24の下側の面と透過ガス流路用部材26の上側の面とに配置される酸性ガス分離層20も、全体が傾斜して配置される。
このように、中心筒12の軸方向において、厚さが連続的に変化する供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26とを用いて、互いの厚さの変化方向を異ならせて積層する構成において、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26それぞれの片面のみが傾斜するように配置して、供給ガス流路用部材24の両面に配置される酸性ガス分離層20のうちの一方のみを傾斜させる構成としてもよい。
なお、図4(B)に示す例では、供給ガス流路用部材24の下側の面、および、透過ガス流路用部材26の上側の面が中心軸に対して傾斜して配置される構成とし、供給ガス流路用部材24の下側の面と透過ガス流路用部材26の上側の面との間に積層される酸性ガス分離層20が中心軸に対して傾斜する構成としたが、これに限定はされず、供給ガス流路用部材24の上側の面、および、透過ガス流路用部材26の下側の面が中心軸に対して傾斜して配置される構成とし、供給ガス流路用部材24の上側の面と透過ガス流路用部材26の下側の面との間に積層される酸性ガス分離層20が中心軸に対して傾斜する構成、すなわち、促進輸送膜20aの膜面が中心軸に対して傾斜する構成としてもよい。
また、図3〜図4(B)に示す例では、スパイラル積層体14aを構成する層のうち、2つの層の厚さが連続的に変化しており、2つの層の厚さの変化方向が互いに異なる構成として、促進輸送膜20aの膜面が中心軸に対して傾斜する構成としたが、これに限定はされず、酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26の3つの層の厚さがそれぞれ連続的に変化する構成として、これらを組み合わせて、促進輸送膜20aの膜面が中心軸に対して傾斜する構成としてもよい。例えば、酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26それぞれの厚さの変化量を同じにして、酸性ガス分離層20の厚さの変化方向と、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26の厚さの変化方向とを異ならせる構成としてもよい。
また、図3〜図4(B)に示す例では、各層の厚さの変化方向を異ならせる構成として、軸方向における、スパイラル積層体14aの全体の厚さを均一にした。従って、このようなスパイラル積層体14aを有する分離モジュール10は、図5(A)に示すように、積層体14を巻き回した領域(被覆層18で覆われた領域)の外径が、軸方向において均一である。しかしながら、本発明はこれに限定はされず、図5(B)に示す分離モジュール100ように、積層体14を巻き回した領域の外径が、軸方向において変化する構成、すなわち、テーパー形状としてもよい。
なお、積層体14の巻きやすさ(製造容易性)や設置性、強度等の観点から、各層の厚さの変化方向を異ならせる構成として分離モジュールの外径を均一にするのが好ましい。また、各層の厚さの変化方向を異ならせる構成は、スパイラル積層体14aの積層方向において、各促進輸送膜20aの傾斜量を同じにすることができる、供給ガス流路用部材24の両面に積層される促進輸送膜20aの両方に原料ガスGがぶつかる構成とすることができる(図3、図4(A)参照)、等の点でも好適である。
分離モジュールを図5(B)に示すようなテーパー形状とする場合には、分離モジュール100(スパイラル積層体14a)の両端面の外径の比率を、一方を1とした場合に他方を1.03〜1.3とするのが好ましい。
一方の端面の外径に対する他方の端面の外径の比率を1.03以上とすることで、より確実に促進輸送膜20aの表面を傾斜させることができる、膜面近傍での混合性が向上できる等の点で好ましい。また、他方の端面の外径の比率を1.3以下とすることで、製造容易性や設置性をより高くすることができる等の点で好ましい。
なお、原料ガスGの入口側端部の外径が、出口側端部の外径よりも大きいテーパー形状としても良いし、入口側端部の外径が、出口側端部の外径よりも小さいテーパー形状としても良い。
以下、分離モジュール100のように外径をテーパー形状とする場合の、スパイラル積層体14aの層構成について、図6(A)〜図7(B)を用いて説明する。
図6(A)〜図7(B)はそれぞれ、本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールの他の一例のスパイラル積層体の概略断面図である。
図6(A)に示すスパイラル積層体14aでは、各酸性ガス分離層20の厚さが、入口側端部から出口側端部に向かって、薄くなるように連続的に変化している。また、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26の厚さは、入口側端部から出口側端部に向かって、均一である。
図6(A)に示すスパイラル積層体14aでは、このような酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26を、供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26との間に、酸性ガス分離層20を挟んで順次、積層した構成を有する。
従って、図6(A)に示すように、酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面は、入口側端部から出口側端部に向かって、中心軸に対して、図中下方に傾斜した構成を有する。これにより、供給ガス流路用部材24に流入した原料ガスGは、供給ガス流路用部材24の図中上側に積層される酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面にぶつかるので、原料ガスG中の水蒸気を促進輸送膜20aに効率的に供給することができる。
また、入口側端部から出口側端部に向かって厚さが変化する酸性ガス分離層20が複数積層されているので、外周部(被覆層18側)側に向かうにしたがって、厚さの変化量が加算される。従って、促進輸送膜20aの膜面の傾斜量は、外周部(被覆層18側)側に積層された促進輸送膜20aほど大きい。すなわち、各促進輸送膜20aの傾斜量は互いに異なっている。このように、各促進輸送膜20aの傾斜量は互いに異なっている場合でも、少なくとも1つの促進輸送膜20aの傾斜量が、0.02mm〜30mmの範囲であればよい。なお、全ての促進輸送膜20aの傾斜量が、0.02mm〜30mmの範囲にあるのが好ましい。
ここで、図6(A)に示す例では、酸性ガス分離層20の厚さが、入口側端部から出口側端部に向かって、薄くなるように連続的に変化する構成とした。すなわち、分離モジュールの入口側端部の外径が、出口側端部の外径よりも大きいテーパー形状となる構成としたが、本発明はこれに限定はされず、酸性ガス分離層20の厚さが、入口側端部から出口側端部に向かって、厚くなるように連続的に変化する構成とし、分離モジュールの入口側端部の外径が、出口側端部の外径よりも小さいテーパー形状となる構成としてもよい。
図6(B)に示すスパイラル積層体14aでは、各酸性ガス分離層20の厚さが、入口側端部から出口側端部に向かって、厚くなるように連続的に変化している。また、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26は、入口側端部から出口側端部に向かって、均一である。
図6(B)に示すスパイラル積層体14aでは、このような酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26を、供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26との間に、酸性ガス分離層20を挟んで順次、積層した構成を有する。
従って、図6(B)に示すように、酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面は、入口側端部から出口側端部に向かって、中心軸に対して、図中上方に傾斜した構成を有する。これにより、供給ガス流路用部材24に流入した原料ガスGは、供給ガス流路用部材24の図中下側に積層される酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面にぶつかるので、原料ガスG中の水蒸気を促進輸送膜20aに効率的に供給することができる。
また、図6(A)および図6(B)に示す例では、酸性ガス分離層20の厚さが連続的に変化する構成としたが、これに限定はされず、供給ガス流路用部材24あるいは透過ガス流路用部材26の厚さが連続的に変化する構成としてもよい。
図7(A)に示すスパイラル積層体14aは、各供給ガス流路用部材24の厚さが、入口側端部から出口側端部に向かって、薄くなるように連続的に変化している。また、酸性ガス分離層20および透過ガス流路用部材26の厚さは、入口側端部から出口側端部に向かって、均一である。
図7(A)に示すスパイラル積層体14aでは、このような酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26を、供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26との間に、酸性ガス分離層20を挟んで順次、積層した構成を有する。
従って、図7(A)に示すように、酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面は、入口側端部から出口側端部に向かって、中心軸に対して、図中下方に傾斜した構成を有する。これにより、供給ガス流路用部材24に流入した原料ガスGは、供給ガス流路用部材24の図中上側に積層される酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面にぶつかるので、原料ガスG中の水蒸気を促進輸送膜20aに効率的に供給することができる。
図7(B)に示すスパイラル積層体14aは、各透過ガス流路用部材26の厚さが、入口側端部から出口側端部に向かって、薄くなるように連続的に変化している。また、酸性ガス分離層20および供給ガス流路用部材24の厚さは、入口側端部から出口側端部に向かって、均一である。
図7(B)に示すスパイラル積層体14aでは、このような酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26を、供給ガス流路用部材24と透過ガス流路用部材26との間に、酸性ガス分離層20を挟んで順次、積層した構成を有する。
従って、図7(B)に示すように、酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面は、入口側端部から出口側端部に向かって、中心軸に対して、図中下方に傾斜した構成を有する。これにより、供給ガス流路用部材24に流入した原料ガスGは、供給ガス流路用部材24の図中上側に積層される酸性ガス分離層20の促進輸送膜20aの膜面にぶつかるので、原料ガスG中の水蒸気を促進輸送膜20aに効率的に供給することができる。
なお、図7(A)、図7(B)に示す例では、分離モジュール10の入口側端部の外径が出口側端部の外径よりも大きくなる構成としたが、供給ガス流路用部材24または透過ガス流路用部材26の厚さが入口側端部から出口側端部に向かって、厚くなるように連続的に変化する構成とし、分離モジュール10の入口側端部の外径が出口側端部の外径よりも小さくなる構成としてもよい。
また、図6(A)〜図7(B)に示す例では、スパイラル積層体14aを構成する酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26のうち、1つの層の厚さが連続的に変化する構成としたが、これに限定はされず、3つの層のうちの2以上の層の厚さがそれぞれ連続的に変化する構成としてもよい。その際、各層の厚さの変化方向は同じであっても異なっていてもよい。
また、前述のとおり、スパイラル型の分離モジュールは、シート状の積層体14を、1層、もしくは、複数積層して、中心筒12に巻回してなる構成を有する。複数の積層体14を有する場合には、各積層体14において異なる層の厚さが変化する構成としてもよい。また、複数の積層体14を有する場合には、各積層体14において、厚さが変化する層の、厚さの変化量は互いに異なっていてもよい。
また、図3に示す例では、中心筒12の中心軸に平行な断面において、積層された全ての促進輸送膜20aの供給ガス流路用部材24側の膜面が、中心軸に対して傾斜する構成としたが、これに限定はされず、少なくとも1つの促進輸送膜20aの膜面が、0.02〜30mmの傾斜量で傾斜していればよく、膜面の傾斜量が0.02mm未満の促進輸送膜20aを有していてもよく、あるいは、膜面の傾斜量が30mm超の促進輸送膜20aを有していてもよい。しかしながら、全ての促進輸送膜20aに効率的に水分を供給することができる、促進輸送膜20aの破損を防止できる等の点で、全ての促進輸送膜20aの膜面が、0.02〜30mmの傾斜量で傾斜するのが好ましい。
次に、供給ガス流路用部材24、酸性ガス分離層20および透過ガス流路用部材26について詳細に説明する。
供給ガス流路用部材24は、x方向の端部から、原料ガスGを供給され、部材内を流れる原料ガスGと、酸性ガス分離層20とを接触させる、シート状の部材である。図示例においては、供給ガス流路用部材24は、一例として、長方形である。
このような供給ガス流路用部材24は、前述のように二つ折りされた酸性ガス分離層20のスペーサとして機能して、原料ガスGの流路を構成する。また、供給ガス流路用部材24は、原料ガスGを乱流にするのが好ましい。この点を考慮すると、供給ガス流路用部材24は、メッシュ状(ネット状/網目構造)を有する部材が好ましい。
このような供給ガス流路用部材24の形成材料としては、十分な耐熱性および耐湿性を有するものであれば、各種の材料が利用可能である。
一例として、紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙、合成紙などの紙材料、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、アラミド、ポリカーボネートなどの樹脂材料、金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が、好適に例示される。
樹脂材料としては、具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデン等が、好適に例示される。
供給ガス流路用部材24の厚さは、原料ガスGの供給量や要求される処理能力等に応じて、適宜、決定すれば良い。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
ここで、前述の図3、図4(A)、図4(B)および図7(A)のように、中心筒12の軸方向において、供給ガス流路用部材24の厚さが連続的に変化する構成の場合にも、供給ガス流路用部材24の厚さは、全領域で、上記範囲を満たすのが好ましい。
また、供給ガス流路用部材24の厚さが連続的に変化する構成の場合には、軸方向における一方の端部での厚さと他方の端部での厚さの差は、20〜800μmであるのが好ましく、40〜500μmであるのがより好ましい。
一方の端部と他方の端部での厚さの差を上記範囲とすることで、促進輸送膜20aの膜面の傾斜量を、中心軸に対して0.02mm〜30mmに好適に調整することができる。
また、軸方向(幅方向)において厚さが連続的に変化する供給ガス流路用部材24の作製方法には特に限定はない。例えば、供給ガス流路用部材24となる不織布等の表面をヤスリ等で削って傾斜させて、幅方向に厚さが変化する供給ガス流路用部材24を作製してもよい。あるいは、幅方向の位置に応じて、異なる太さの繊維を用いて、一方の端部側で細い繊維を用い、他方の端部側で太い繊維を用い、他方の端部側に向かうにしたがって幅方向に順次太い繊維を用いて、幅方向に厚さが変化する供給ガス流路用部材24となる不織布または織布を作製してもよい。あるいは、幅方向の長さの異なる複数の不織布または織布を、幅方向の一方の端面の位置を合わせて積層して、幅方向に厚さが変化する供給ガス流路用部材24を作製してもよい。あるいは、幅方向の位置に応じて、不織布の繊維の目付け量(単位面積あたりの質量)を異ならせ、一方の端部側で目付け量を小さくし、他方の端部側で目付け量を大きくし、他方の端部側に向かうにしたがって幅方向に目付け量が大きくなるようにすることで、幅方向に厚さが変化する供給ガス流路用部材24を作製してもよい。
このような供給ガス流路用部材24は、酸性ガス分離層20に挟持される。図示例においては、酸性ガス分離層20は、一例として、長方形のシート状物である。
図示例の分離モジュール10は促進輸送型である。そのため、酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aと、多孔質支持体20bとから構成される。
促進輸送膜20aは、少なくとも、供給ガス流路用部材24を流れる原料ガスGに含有される酸性ガスGcと反応するキャリア、および、このキャリアを担持する親水性化合物を含有する。このような促進輸送膜20aは、原料ガスGから酸性ガスGcを選択的に透過させる機能(酸性ガスGcを選択的に輸送する機能)を有している。
促進輸送型の分離モジュールは、高温かつ高湿での使用が必要条件である。従って、促進輸送膜20aは、高温下(例えば、100〜200℃)でも、酸性ガスGcを選択的に透過させる機能を有する。また、原料ガスGが水蒸気を含んでも、水蒸気を親水性化合物が吸湿して促進輸送膜20aが水分を保持することで、さらにキャリアが酸性ガスGcを輸送し易くなるので、溶解拡散膜を用いる場合に比べて分離効率が高まる。
促進輸送膜20aの膜面積は、分離モジュール10の大きさ、分離モジュール10に要求される処理能力等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、0.01〜1000m2が好ましく、0.02〜750m2がより好ましく、0.025〜500m2がさらに好ましい。中でも、促進輸送膜20aの膜面積は、実用的な観点から、1〜100m2が、特に好ましい。
促進輸送膜20aの膜面積を上記範囲とすることにより、膜面積に対して効率よく酸性ガスGcを分離でき、また、加工性も良好になる。
促進輸送膜20aの巻回方向の長さ(二つ折りする前の全長)も、分離モジュール10の大きさや分離モジュール10に要求される処理能力等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、100〜10000mmが好ましく、150〜9000mmがより好ましく、200〜8000mmがさらにより好ましい。中でも、促進輸送膜20aの長さは、実用的な観点から、800〜4000mmが、特に好ましい。
促進輸送膜20aの巻回方向の長さを、上記範囲とすることにより、膜面積に対して効率よく酸性ガスGcを分離することができ、さらに、積層体14を巻回する際の巻きずれの発生が抑制され、加工性が容易となる。
なお、促進輸送膜の幅も、分離モジュール10のx方向のサイズに応じて、適宜、設定すれば良い。
促進輸送膜20aの厚さも、分離モジュール10の大きさや分離モジュール10に要求される処理能力等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、3〜1000μmが好ましく、5〜500μmがより好ましく、5〜100μmが特に好ましい。
促進輸送膜20aの厚さを、上記範囲にすることにより、ガス透過性能を向上できる、欠陥の発生を抑制できる等の点で好ましい。なお、促進輸送膜20aの膜厚は、促進輸送膜20aの凍結活段等を行って、電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡等で断面を観察することによって測定できる。
親水性化合物はバインダとして機能するものであり、促進輸送膜20aにおいて、水分を保持して、キャリアによる二酸化炭素等のガスの分離機能を発揮させる。また、親水性化合物は、耐熱性の観点から、架橋構造を有するのが好ましい。
このような親水性化合物としては、親水性ポリマーが例示される。
親水性化合物は、水に溶けて塗布液を形成できると共に、促進輸送膜20aが高い親水性(保湿性)を有するのが好ましいという観点から、親水性が高いものが好ましい。
具体的には、親水性化合物は、生理食塩液の吸水量が0.5g/g以上の親水性を有することが好ましく、同1g/g以上の親水性を有することがより好ましく、同5g/g以上の親水性を有することがさらに好ましく、同10g/g以上の親水性を有することが特に好ましく、さらには、同20g/g以上の親水性を有することが最も好ましい。
親水性化合物の重量平均分子量は、安定な膜を形成し得る範囲で、適宜、選択すればよい。具体的には、20,000〜2,000,000が好ましく、25,000〜2,000,000がより好ましく、30,000〜2,000,000が特に好ましい。
親水性化合物の重量平均分子量を20,000以上とすることで、安定して十分な膜強度を有する促進輸送膜20aを得ることができる。
特に、親水性化合物が架橋可能基として−OHを有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が30,000以上であるのが好ましい。この際には、重量平均分子量は更に好ましくは40,000以上であり、より好ましくは、50,000以上である。また、親水性化合物が架橋可能基として−OHを有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、6,000,000以下であることが好ましい。
また、架橋可能基として−NH2を有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が10,000以上であるものが好ましい。この際には、親水性化合物の重量平均分子量は、15,000以上であるのがより好ましく、20,000以上であるのが特に好ましい。また、親水性化合物が、架橋可能基として−NH2を有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、1,000,000以下であるのが好ましい。
なお、本発明において、各種の高分子材料の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)によってPS換算の分子量として測定すればよい。
また、親水性化合物は、市販品も利用可能であり、市販品を用いる場合には、カタログ、仕様書などで公称される分子量を用いればよい。
親水性化合物を形成する架橋可能基としては、耐加水分解性の架橋構造を形成し得るものが、好ましく選択される。
具体的には、ヒドロキシ基(−OH)、アミノ基(−NH2)、塩素原子(−Cl)、シアノ基(−CN)、カルボキシ基(−COOH)、および、エポキシ基等が例示される。これらの中でも、アミノ基およびヒドロキシ基が好ましく例示される。さらに、最も好ましくは、キャリアとの親和性およびキャリア担持効果の観点から、ヒドロキシ基が例示される。
親水性化合物としては、具体的には、単一の架橋可能基を有するものとしては、ポリアリルアミン、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリオルニチン、ポリリジン、ポリエチレンオキサイド、水溶性セルロース、デンプン、アルギン酸、キチン、ポリスルホン酸、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリ−N−ビニルアセトアミドなどが例示される。最も好ましくはポリビニルアルコールである。また、親水性化合物としては、これらの共重合体も例示される。
また、複数の架橋可能基を有する親水性化合物としては、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体が例示される。ポリビニルアルコール−ポリアクリル塩共重合体は、吸水能が高い上に、高吸水時においてもハイドロゲルの強度が大きいため好ましい。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体におけるポリアクリル酸の含有率は、例えば1〜95モル%、好ましくは2〜70モル%、より好ましくは3〜60モル%、特に好ましくは5〜50モル%である。なお、アクリル酸の含有率は、公知の合成方法で制御することができる。
なお、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体において、ポリアクリル酸は、塩であってもよい。この際におけるポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩や有機アンモニウム塩等が例示される。
ポリビニルアルコールは市販品としても入手可能である。具体的には、PVA117(株式会社クラレ製)、ポバール(株式会社クラレ製)、ポリビニルアルコール(アルドリッチ社製)、J−ポバール(日本酢ビ・ポバール株式会社製)等が例示される。分子量のグレードは種々存在するが、重量平均分子量が130,000〜300,000のものが好ましい。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩)も、市販品として入手可能である。例えば、クラストマーAP20(株式会社クラレ製)が例示される。
なお、本発明の分離モジュール10の促進輸送膜20aにおいて、親水性化合物は、2種以上を混合して使用してもよい。
促進輸送膜20aにおける親水性化合物の含有量は、促進輸送膜20aを形成するためのバインダーとして機能し、かつ、水分を十分に保持できる量を、親水性組成物やキャリアの種類等に応じて、適宜、設定すればよい。
具体的には、促進輸送膜20aにおける親水性化合物の含有量は、0.5〜50質量%が好ましく、0.75〜30質量%がより好ましく、1〜15質量%が特に好ましい。親水性化合物の含有量を、この範囲とすることにより、上述のバインダとしての機能および水分保持機能を、安定して、好適に発現できる。
親水性化合物における架橋構造は、熱架橋、紫外線架橋、電子線架橋、放射線架橋、光架橋等、従来公知の手法により形成できる。
好ましくは光架橋もしくは熱架橋であり、最も好ましくは熱架橋である。
また、促進輸送膜20aの形成には、親水性化合物と共に、架橋剤を用いるのが好ましい。すなわち、促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物は、架橋剤を含有するのが好ましい。
架橋剤としては、親水性化合物と反応し、熱架橋や光架橋等の架橋をし得る官能基を2以上有する架橋剤を含むものが選択される。また、形成された架橋構造は、耐加水分解性の架橋構造となるのが好ましい。
このような観点から、促進輸送膜20aの形成に利用される架橋剤としては、エポキシ架橋剤、多価グリシジルエーテル、多価アルコール、多価イソシアネート、多価アジリジン、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒド、多価アミン、有機金属系架橋剤などが好適に例示される。より好ましくは多価アルデヒド、有機金属系架橋剤およびエポキシ架橋剤であり、中でも、アルデヒド基を2以上有するグルタルアルデヒドやホルムアルデヒドなどの多価アルデヒドが好ましい。
エポキシ架橋剤としては、エポキシ基を2以上有する化合物であり、4以上有する化合物も好ましい。エポキシ架橋剤は市販品としても入手可能であり、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(共栄社化学株式会社製、エポライト100MF等)、ナガセケムテックス社製EX−411、EX−313、EX−614B、EX−810、EX−811、EX−821、EX−830、日油株式会社製エピオールE400などが例示される。
また、エポキシ架橋剤に類似する化合物として、環状エーテルを有するオキセタン化合物も、また、好ましく使用される。オキセタン化合物としては、官能基を2以上有する多価グリシジルエーテルが好ましく、市販品としては、例えばナガセケムテックス社製EX−411、EX−313、EX−614B、EX−810、EX−811、EX−821、EX−830、などが例示される。
多価グリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が例示される。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピル、オキシエチエンオキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソビトール等が例示される。
多価イソシアネートとしては、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
多価アジリジンとしては、例えば、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アシリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等が例示される。
ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリン、α−メチルクロルヒドリン等が例示される。
多価アルデヒドとしては、例えば、グルタルアルデヒド、グリオキサール等が例示される。
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等が例示される。
さらに、有機金属系架橋剤としては、例えば、有機チタン架橋剤、有機ジルコニア架橋剤等が例示される。
例えば、親水性化合物として、重量平均分子量が130,000以上のポリビニルアルコールを用いる場合には、この親水性化合物と反応性が良好で、加水分解耐性も優れている架橋構造が形成可能である点から、架橋剤として、エポキシ架橋剤やグルタルアルデヒドが好ましく利用される。
また、親水性化合物として、ポリビニールアルコール−ポリアクリル酸共重合体を用いる場合は、エポキシ架橋剤やグルタルアルデヒドが好ましく利用される。
また、親水性化合物として、重量平均分子量が10,000以上のポリアリルアミンを用いる場合には、この親水性化合物と反応性が良好で、加水分解耐性も優れている架橋構造が形成可能である点から、エポキシ架橋剤、グルタルアルデヒド、および、有機金属架橋剤が好ましく利用される。
さらに、親水性化合物として、ポリエチレンイミンやポリアリルアミンを用いる場合には、エポキシ架橋剤が好ましく利用される。
架橋剤の量は、促進輸送膜20aの形成に使用する親水性化合物や架橋剤の種類に応じて、適宜、設定すればよい。
具体的には、親水性化合物が有する架橋可能基量100質量部に対して0.001〜80質量部が好ましく、0.01〜60質量部がより好ましく、0.1〜50質量部が特に好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、架橋構造の形成性が良好であり、かつ、形状維持性に優れる促進輸送膜を得ることができる。
また、親水性化合物が有する架橋可能基に着目すれば、架橋構造は、親水性化合物が有する架橋可能基100molに対し、架橋剤0.001〜80molを反応させて形成されたものであるのが好ましい。
促進輸送膜20aは、金属元素を含有するのが好ましい。促進輸送膜20aの好適態様の一つとしては、促進輸送膜が、Ti、Zr、Al、Si、およびZnからなる群から選択される少なくとも1種以上の金属元素を含有する態様が挙げられる。このような金属元素が含まれることにより、促進輸送膜20aの強度が向上する。特に、後述するように、上記金属元素を含む架橋構造が形成されることにより、促進輸送膜20aの強度がより向上し、結果として、例えばスパイラル状に巻回する際における促進輸送膜20aの劣化がより抑制される。
このような金属元素を含む促進輸送膜20aの形態は、特に制限はされないが、以下の式(1)で表される構造単位を含む促進輸送膜が好ましい。なお、以下式(1)中、*は結合位置を表す。
式(1) M−(O−*)
上記式中、Mは、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Al(アルミニウム)、Si(珪素)、およびZn(亜鉛)からなる群から選択される金属元素を表す。
mは、Mで表される金属元素の価数を表す。例えば、以下に示すように、MがZnの場合にはmは2を表し、MがAlの場合にはmは3を表し、MがTi、ZrおよびSiの場合にはmは4を表す。
より具体的に、以下にmが2〜4の場合の構造式(式(2)〜式(4))を示す。
上記式(1)で表される構造単位は、例えば、後述するように、加水分解性の化合物と、上述した架橋可能基(例えば、ヒドロキシ基)を有する親水性化合物とを併用することにより、促進輸送膜20a中に導入することができる。その場合、上記構造単位は、いわゆる架橋部位(架橋構造)として機能する。
なお、促進輸送膜20a中における上記式(1)で表される構造単位の検出方法としては、例えば、IR(赤外分光法)測定により特定のピークを検出することにより確認できる。必要に応じて、促進輸送膜20a中のキャリアを除去した後、残存する膜に対してIR測定を実施してもよい。
促進輸送膜20a中における上記金属元素の合計質量は特に制限されないが、促進輸送膜20aの強度がより優れる点で、親水性化合物全質量に対して、上記金属元素の含有量が0.1〜50質量%であることが好ましく、0.3〜20質量%であることがより好ましく、0.5〜10質量%であることがさらに好ましい。
上記金属元素の含有量の測定方法は特に制限されないが、例えば、蛍光X線分析法によって測定可能である。
上述したように、上記式(1)で表される構造単位を促進輸送膜20a中に導入する際には、上述した金属元素を含む加水分解性の化合物を使用することが好ましい。具体的には、式(5)で表される加水分解性金属化合物が挙げられる。これら化合物は、いわゆる有機金属系架橋剤として機能する。
式(5) M(X)
式(5)中、Mは、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Al(アルミニウム)、Si(珪素)、およびZn(亜鉛)からなる群から選択される金属元素を表す。
Xは、加水分解性基を表す。加水分解性基としては、アルコキシル基、イソシアネート基、塩素原子などのハロゲン原子、オキシハロゲン基、アセチルアセトネート基、ヒドロキシ基などが挙げられる。複数のXは、同一であっても、異なっていてもよい。
mは、Mで表される金属元素の価数を表す。
前述のように、分離モジュール10の酸性ガス分離層20において、促進輸送膜20aは、このような親水性化合物に加え、キャリアを含有する。
キャリアは、酸性ガス(例えば、炭酸ガス)と親和性を有し、かつ、塩基性を示す各種の水溶性の化合物である。具体的には、アルカリ金属化合物、窒素含有化合物および硫黄酸化物等が例示される。
なお、キャリアは、間接的に酸性ガスと反応するものでも、キャリア自体が、直接、酸性ガスと反応するものでもよい。
前者は、供給ガス中に含まれる他のガスと反応し、塩基性を示し、その塩基性化合物と酸性ガスが反応するものなどが例示される。より具体的には、スチーム(水分)と反応してOH-を放出し、そのOH-がCO2と反応することで、促進輸送膜20a中に選択的にCO2を取り込むことができる化合物であり、例えば、アルカリ金属化合物である。
後者は、キャリア自体が塩基性であるようなもので、例えば、窒素含有化合物や硫黄酸化物である。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、および、アルカリ金属水酸化物等が例示される。ここで、アルカリ金属としては、セシウム、ルビジウム、カリウム、リチウム、および、ナトリウムから選ばれたアルカリ金属元素が好ましく用いられる。なお、本発明において、アルカリ金属化合物とは、アルカリ金属そのもののほか、その塩およびそのイオンも含む。
アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、および、炭酸セシウム等が例示される。
アルカリ金属重炭酸塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、および、炭酸水素セシウム等が例示される。
さらに、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および、水酸化セシウム等が例示される。
これらの中でも、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、また、酸性ガスとの親和性が良いという観点から、水に対する溶解度の高いカリウム、ルビジウム、および、セシウムを含む化合物が好ましい。
また、キャリアとしてアルカリ金属化合物を用いる際には、2種以上のキャリアを併用してもよい。
促進輸送膜20a中に2種以上のキャリアが存在することにより、膜中で異なるキャリアを距離的に離間させることができる。これにより、複数のキャリアの潮解性の違いによって、促進輸送膜20aの吸湿性に起因して、製造時等に促進輸送膜20a同士や、促進輸送膜20aと他の部材とが貼着すること(ブロッキング)を、好適に抑制できる。
また、ブロッキングの抑制効果を、より好適に得られる等の点で、2種以上のアルカリ金属化合物をキャリアとして用いる場合には、潮解性を有する第1化合物と、第1化合物よりも潮解性が低く比重が小さい第2化合物を含むのが好ましい。一例として、第1化合物としては炭酸セシウムが、第2化合物としては炭酸カリウムが、例示される。
窒素含有化合物としては、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、ヒスチジン、タウリン、ジアミノプロピオン酸などのアミノ酸類、ピリジン、ヒスチジン、ピペラジン、イミダゾール、トリアジンなどのヘテロ化合物類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類、クリプタンド[2.1]、クリプタンド[2.2]などの環状ポリエーテルアミン類、クリプタンド[2.2.1]、クリプタンド[2.2.2]などの双環式ポリエーテルアミン類,ポルフィリン、フタロシアニン、エチレンジアミン四酢酸等が例示される。
さらに、硫黄化合物としては、シスチン、システインなどのアミノ酸類、ポリチオフェン、ドデシルチオール等が例示される。
促進輸送膜20aにおけるキャリアの含有量は、キャリアや親水性化合物の種類等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、促進輸送膜20aにおけるキャリアの量が、0.3〜30質量%となる量が好ましく、0.5〜25質量%となる量がより好ましく、1〜20質量%となる量が特に好ましい。
促進輸送膜20aにおけるキャリアの含有量を、上記範囲とすることにより、促進輸送膜20aを形成するための組成物(塗料)において、塗布前の塩析を好適に防ぐことができ、さらに、促進輸送膜20aが、酸性ガスの分離機能を確実に発揮できる。
塗布組成物における親水性化合物とキャリアとの量比は、親水性化合物:キャリアの質量比で1:9〜2:3以下が好ましく、1:4〜2:3以下がより好ましく、3:7〜2:3が特に好ましい。
促進輸送膜20aは、必要に応じて、増粘剤を含有してもよい。すなわち、促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物は、必要に応じて、増粘剤を含有してもよい。
増粘剤としては、例えば、寒天、カルボキシメチルセルロース、カラギナン、キタンサンガム、グァーガム、ペクチン等の増粘多糖類が好ましい。中でも、製膜性、入手の容易性、コストの点から、カルボキシメチセルロースが好ましい。
カルボキシメチルセルロースを用いることにより、少量の含有量で、所望粘度の塗布組成物が容易に得られるうえ、塗布組成物に含まれる溶媒以外の成分の少なくとも一部が塗布組成物中で溶解できずに析出してしまう恐れも少ない。
増粘剤の含有量は、目的とする粘度に調節可能であれば、できるだけ少ないほうが好ましい。
一般的な指標としては、10質量%以下が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜2質量%以下がより好ましい。
促進輸送膜20a(促進輸送膜20aを形成するための組成物)は、このような親水性化合物、架橋剤およびキャリア、あるいはさらに増粘剤に加え、必要に応じて、各種の成分を含有してもよい。
このような成分としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤、炭素数3〜20のアルキル基または炭素数3〜20のフッ化アルキル基と親水性基とを有する化合物やシロキサン構造を有する化合物等の特定化合物、オクタン酸ナトリウムや1−ヘキサスルホン酸ナトリウム等の界面活性剤、ポリオレフィン粒子やポリメタクリル酸メチル粒子等のポリマー粒子等が例示される。
その他、必要に応じて、触媒、保湿剤、吸湿剤、補助溶剤、膜強度調節剤、欠陥検出剤等を用いてもよい。
促進輸送膜20aは、単層構成でも、複数層から構成されるものでもよい。
ここで、促進輸送膜20aが複数層から構成される場合には、同じ膜を積層してもよく、組成、含有する成分の種類や数、pH、含有する各成分の濃度等が異なる膜を積層してもよい。
酸性ガス分離層20は、このような促進輸送膜20aと、多孔質支持体20bとから構成される。
多孔質支持体20bは、炭酸ガス等の酸性ガス透過性を有し、かつ、促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物の塗布が可能(塗膜の支持が可能)であり、さらに、形成された促進輸送膜20aを支持するものである。
多孔質支持体20bの形成材料は、上記機能を発現できる物であれば、公知の各種の物が利用可能である。
ここで、本発明の分離モジュール10において、酸性ガス分離層20を構成する多孔質支持体20bは、単層であってもよいが、多孔質膜と補助支持膜とからなる2層構成であるのが好ましい。このような2構成を有することにより、多孔質支持体20bは、上記酸性ガス透過性、促進輸送膜20aとなる塗布組成物の塗布および促進輸送膜20aの支持という機能を、より確実に発現する。
なお、多孔質支持体20bが単層である場合には、形成材料としては、以下に多孔質膜および補助支持膜で例示する各種の材料が利用可能である。
この2層構成の多孔質支持体20bでは、多孔質膜が促進輸送膜20a側となる。
多孔質膜は、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない材料からなることが好ましい。このような多孔質膜としては、具体的には、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン(PP)、セルロースなどのメンブレンフィルター膜、ポリアミドやポリイミドの界面重合薄膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜等が例示される。
中でも、PTFE等の含フッ素ポリマー、PPおよびPSFから選択される1以上の材料を含む多孔質膜は好ましく例示される。その中でも、PTFEや高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜は、高い空隙率を有し、酸性ガス(特に炭酸ガス)の拡散阻害が小さく、さらに、強度、製造適性などの観点から好ましい。特に、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない等の点で、PTFEの延伸多孔膜が、好適に利用される。
多孔質膜としては、このような有機系の材料以外にも、無機系の材料あるいは有機−無機ハイブリッド材料を用いてもよい。
無機系の多孔質支持体としては、セラミックスを主成分とする多孔質基体が挙げられる。セラミックスを主成分とすることにより、耐熱性、耐食性等に優れ、機械的強度を高めることができる。セラミックスの種類には、特に限定は無く、一般的に使用されるセラミックスが、各種、利用可能である。セラミックとしては、一例として、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ムライト、コージェライト、ジルコニア等が例示される。
また、2種類以上のセラミックスの併用、セラミックスと金属との複合化、セラミックスと有機化合物とを複合化した構成でもよい。
多孔質膜は、使用環境下において、水分を含有した促進輸送膜20aが多孔部分に浸み込み易くなり、かつ、膜厚分布や経時での性能劣化を引き起こさないために、疎水性であるのが好ましい。
また、多孔質膜は、孔の最大孔径が5μm以下であるのが好ましく、1μm以下がより好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。なお、多孔質膜の最大孔径は、例えば、パームポロメータで測定すればよい。
さらに、多孔質膜の孔の平均孔径は、0.001〜10μmが好ましく、0.001〜0.3μmがより好ましい。
多孔質膜の最大径および平均孔径を上記範囲とすることにより、後述する接着剤の塗布領域は接着剤を十分に染み込ませ、かつ、多孔質膜が酸性ガスの通過の妨げとなることを好適に防止できる。
多孔質支持体20bにおいて、補助支持膜は、多孔質膜の補強用に備えられるものである。
補助支持膜は、要求される強度、耐延伸性および気体透過性を満たすものであれば、各種の物が利用可能である。例えば、不織布、織布、ネット、および、メッシュなどを、適宜、選択して用いることができる。
補助支持膜も、前述の多孔質膜と同様、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない素材からなることが好ましい。
この点を考慮すると、不織布、織布、編布を構成する繊維としては、耐久性や耐熱性に優れる、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、アラミド(商品名)などの改質ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂などからなる繊維が好ましい。メッシュを構成する樹脂材料も同様の素材を用いるのが好ましい。これらの材料のうち、安価で力学的強度の強いPPからなる不織布は、特に好適に例示される。
多孔質支持体20bが補助支持膜を有することにより、力学的強度を向上させることができる。そのため、例えば、後述するロール・トゥ・ロール(以下、RtoRとも言う)によって酸性ガス分離層20を形成する場合でも、多孔質支持体20bに皺がよることを防止でき、生産性を高めることもできる。
多孔質支持体20bは、薄すぎると強度に難がある。この点を考慮すると、多孔質膜の膜厚は5〜100μm、補助支持膜の膜厚は50〜300μmが好ましい。
補助支持膜の厚さを50μm以上とすることにより、補助支持膜を有することの効果を十分に得られる等の点で好ましい。また、補助支持膜の厚さを300μm以下とすることにより、酸性ガス分離層が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
また、多孔質膜の厚さを5μm以上とすることにより、多孔質膜を有することの効果を好適に得られる等の点で好ましい。多孔質膜の厚さを100μm以下とすることにより、多孔質膜が酸性ガスの通過の妨げとなることを防止できる、酸性ガス分離層が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
また、多孔質支持体20bを単層にする場合には、多孔質支持体20bの厚さは、30〜500μmが好ましい。
ここで、前述の図3、図6(A)および図6(B)のように、中心筒12の軸方向において、酸性ガス分離層20の厚さが連続的に変化する構成の場合には、促進輸送膜20aおよび多孔質支持体20bのいずれか一方の厚さが変化する構成であっても、両方の厚さが変化する構成であってもよい。しかしながら、促進輸送膜20aは、厚すぎるとガス透過性が低下する点、ゲル膜であるため厚さが変化する形状を維持しづらい点等から、基本的に、多孔質支持体20bの厚さが連続的に変化する構成とするのが好ましい。
軸方向において、多孔質支持体20bの厚さが連続的に変化する構成とする場合には、多孔質支持体20bの厚さは、全領域で、上記範囲を満たすのが好ましい。
また、多孔質支持体20bの厚さが連続的に変化する構成の場合には、軸方向における一方の端部での厚さと他方の端部での厚さの差は、10〜400μmであるのが好ましく、20〜250μmであるのがより好ましい。
一方の端部と他方の端部での厚さの差を上記範囲とすることで、促進輸送膜20aの膜面の傾斜量を、好適に調整することができる。
また、軸方向(幅方向)において厚さが連続的に変化する多孔質支持体20bの作製方法には特に限定はない。例えば、多孔質支持体20bとなる部材の表面をヤスリ等で削って傾斜させて、幅方向に厚さが変化する多孔質支持体20bを作製してもよい。あるいは、多孔質支持体20bとして不織布、織布等を用いる場合には、幅方向の位置に応じて、異なる太さの繊維を用いて、一方の端部側で細い繊維を用い、他方の端部側で太い繊維を用い、他方の端部側に向かうにしたがって幅方向に順次太い繊維を用いて、幅方向に厚さが変化する多孔質支持体20bを作製してもよい。あるいは、幅方向の長さの異なる複数の部材を、幅方向の一方の端面の位置を合わせて積層して、幅方向に厚さが変化する多孔質支持体20bを作製してもよい。あるいは、幅方向の位置に応じて、不織布の繊維の目付け量(単位面積あたりの質量)を異ならせ、一方の端部側で目付け量を小さくし、他方の端部側で目付け量を大きくし、他方の端部側に向かうにしたがって幅方向に目付け量が大きくなるようにすることで、幅方向に厚さが変化する多孔質支持体20bを作製してもよい。
このような酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aとなる成分を含む液体状の塗布組成物(塗料/塗布液)を調製して、多孔質支持体20bに塗布して、乾燥する、いわゆる塗布法で作製できる。
前述のように、促進輸送膜20aは、親水性ポリマー等の親水性化合物、酸性ガスと反応するキャリアおよび水等を含有する。
従って、このような促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物(塗布液/塗料)は、前述の親水性化合物、キャリアおよび水、あるいはさらに、架橋剤等の必要となる成分を含む塗布組成物である。水は、常温水でも加温水でもよい。
親水性化合物は、架橋、一部架橋および未架橋のいずれでも良く、また、これらが混合されたものでもよい。この塗布組成物も、公知の方法で調製すればよい。
この塗布組成物の調製では、必要に応じて、攪拌しつつ加熱することで、各成分の溶解を促進させてもよい。また、親水性化合物を水に加えて溶解した後、キャリアを徐々に加えて攪拌することで、親水性化合物の析出(塩析)を効果的に防ぐことができる。
この組成物を多孔質支持体20bに塗布して、乾燥することで、酸性ガス分離層20を作製する。
ここで、組成物の塗布および乾燥は、所定のサイズに切断されたカットシート状の多孔質支持体20bに行う、いわゆる枚葉式で行ってもよい。
好ましくは、酸性ガス分離層20の作製は、いわゆるRtoRによって行う。すなわち、長尺な多孔質支持体20bを巻回してなる送り出しロールから、多孔質支持体20bを送り出して、長手方向に搬送しつつ、調製した塗布組成物を塗布し、次いで、塗布した塗布組成物(塗膜)を乾燥して、多孔質支持体20bの表面に促進輸送膜20aを形成してなる酸性ガス分離層20を作製し、作製した酸性ガス分離層20を巻き取る。
RtoRにおける多孔質支持体20bの搬送速度は、多孔質支持体20bの種類や塗布液の粘度等に応じて、適宜、設定すればよい。
ここで、多孔質支持体20bの搬送速度が速すぎると、塗布組成物の塗膜の膜厚均一性が低下するおそれがあり、遅過ぎると生産性が低下する。この点を考慮すると、多孔質支持体20bの搬送速度は、0.5m/分以上が好ましく、0.75〜200m/分がより好ましく、1〜200m/分が特に好ましい。
促進輸送膜20aとなる塗布組成物は、25℃における粘度が100cp以上であるのが好ましい。
塗布組成物の25℃における粘度を、100cp以上とすることにより、塗布組成物を塗布する際のハジキを抑制できる、塗布組成物の塗布の均一性を良くできる等の点で好ましい。
なお、粘度は、JIS Z8803に準じて、B型粘度計による回転数60rpmにおける粘度を、25℃で測定すればよい。
塗布組成物の塗布方法は、公知の方法が、各種、利用可能である。
具体的には、ロールコーター、正回転ロールコーター、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等が例示される。また、促進輸送膜20aとなる塗布組成物の好ましい粘度や塗布組成物の塗布量等を考慮すると、ロールコータ、バーコータ、正回転ロールコータ、ナイフコータ等は好適に利用される。
促進輸送膜20aとなる塗布組成物を塗布したら、次いで、この塗布組成物を乾燥して、促進輸送膜20aを形成する。
乾燥方法は、温風乾燥や多孔質支持体20bの加熱による乾燥方法等、水の除去による乾燥を行う公知の方法が、各種、利用可能である。
温風乾燥を行う場合には、温風の風速は、塗布組成物を迅速に乾燥できると共に、塗布組成物の塗膜(ゲル膜)が崩れない速度を、適宜、設定すればよい。具体的には、0.5〜200m/minが好ましく、0.75〜200m/minがより好ましく、1〜200m/minが特に好ましい。
また、温風の温度は、多孔質支持体20bの変形などが生じず、かつ、塗布組成物を迅速に乾燥できる温度を、適宜、設定すればよい。具体的には、膜面温度で、1〜120℃が好ましく、2〜115℃がより好ましく、3〜110℃が特に好ましい。
多孔質支持体20bの加熱による促進輸送膜20aの乾燥を行う場合には、多孔質支持体20bの変形などが生じず、かつ、塗布組成物を迅速に乾燥できる温度を、適宜、設定すればよい。また、多孔質支持体20bの加熱に、乾燥風の吹き付けを併用してもよい。
具体的には、多孔質支持体20bの加熱による促進輸送膜20aの乾燥は、多孔質支持体20bの温度を60〜120℃として行うのが好ましく、60〜90℃として行うのがより好ましく、70〜80℃として行うのが特に好ましい。また、この際において、膜面温度は、15〜80℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。
塗布組成物を乾燥して、促進輸送膜20aすなわち酸性ガス分離層20を作製したら、酸性ガス分離層20をロール状に巻き取って、次の工程に供するようにしてもよい。
ここで、図3等に示す例では、酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aと多孔質支持体20bとからなる構成としたが、これに限定はされず、促進輸送膜20aと多孔質支持体20bとの間に、促進輸送膜20aのキャリアが、促進輸送膜20aから排出されて、多孔質支持体20bを透過してしまうことを防止するための中間層を有していてもよい。
図8に、酸性ガス分離層20の他の一例を示す。
図8に示す酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aと多孔質支持体20bとの間に、一部が多孔質支持体20b内に位置する、中間層20cを有する。言い換えると、中間層20cは、一部が多孔質支持体20b内に染み込んだ状態になっている。
酸性ガス分離層20が、このような中間層20cを有することにより、促進輸送膜20aから流出したキャリアが、多孔質支持体20bを透過することを防止して、耐久性の良好な分離モジュールを得ることができる。
このような中間層20cは、多孔質支持体上の領域(以下、支持体上領域という)の厚さTaと、染み込んだ領域(以下、染み込み領域という)の厚さTbとの比『Tb/Ta』が、0.1〜100であるのが好ましい。
中間層20cの支持体上領域と染み込み領域との厚さの比『Tb/Ta』は0.1〜100である。厚さの比『Tb/Ta』が0.1未満では、中間層20cと多孔質支持体20bとの密着性が低下し、高圧プロセスにおける耐久性の低下を招く等の不都合が生じる。
逆に、厚さの比『Tb/Ta』が100を超えると、事実上、中間層20cの膜厚が増加し、酸性ガスの透過性低下を招く等の不都合が生じる。
上記不都合をより確実に回避できる等の点で、厚さの比『Tb/Ta』は0.1〜50が好ましく、0.1〜10がより好ましい。
中間層20cの支持体上領域の厚さTaは、0.1〜10μmが好ましい。
厚さTaを上記範囲とすることにより、所望の酸性ガス分離性能を維持した状態で、キャリアの拡散を好適に抑制できる等の点で好ましい。
この点を考慮すると、支持体上領域の厚さTaは、0.1〜7μmがより好ましく、0.1〜4μmが特に好ましい。
他方、中間層20cの染み込み領域の厚さTbは、0.2〜10μmが好ましい。
厚さTbを上記範囲とすることにより、酸性ガス透過性の低下を抑制しつつ、所望の耐久性を確保できる等の点で好ましい。
この点を考慮すると、染み込み領域の厚さTbは、0.2〜5μmがより好ましく、0.2〜3μmが特に好ましい。
中間層20cの厚さ(すなわち、Ta+Tb)は、0.5〜15μmが好ましい。
中間層20cの厚さ上記範囲とすることにより、後述する分離モジュール10の作製プロセスでの欠陥発生を抑制でき、さらに、酸性ガス透過性の低下を抑えながら所望の分離性能を得られる等の点で好ましい。
この点を考慮すると、中間層20cの厚さは、0.5〜10μmがより好ましく、0.5〜5μmが特に好ましい。
また、前述の促進輸送膜20aの厚さTcと、この中間層20cの厚さTa+Tbとの比『Tc/(Ta+Tb)』は、0.3〜500であるのが好ましい。
前述のように、促進輸送膜20aの厚さTcは、好ましくは3〜1000μmである。
後述するが、分離モジュール10は、促進輸送膜20aを内側にして二つ折りにした酸性ガス分離層20で供給ガス流路用部材24を挟持した挟持体36を作製し、この挟持体36と透過ガス流路用部材26とを積層した積層体14を巻回して作製する。この巻回の際に、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24とが摺接して、促進輸送膜20aが損傷する場合がある。ここで、この摺接による損傷は、促進輸送膜20aの下地となる中間層20cの硬さの影響が出やすい。これに対して、中間層20cに対して、促進輸送膜20aを、ある程度以上の厚さとすることにより、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との摺接に起因する促進輸送膜20aの損傷を、抑制できる。具体的には、厚さの比『Tc/(Ta+Tb)』を0.3以上とすることにより、この促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との摺接に起因する促進輸送膜20aの損傷を、抑制できる。
その反面、中間層20cに対して促進輸送膜20aの厚さが厚くなると、透過性能の低下や膜厚増加による、1つのモジュールに対する有効膜面積が低下する傾向にある。これに対して、厚さの比『Tc/(Ta+Tb)』を500以下とすることにより、有効膜面積の低下を抑制して、促進輸送膜20aを有効に利用して、酸性ガスの分離効率が良好な分離モジュールを得られる。
以上の点を考慮すると、促進輸送膜20aの厚さTcと、中間層20cの厚さTa+Tbとの比『Tc/(Ta+Tb)』は、1〜500がより好ましく、2〜200が特に好ましい。
中間層20cは、各種の材料で形成可能である。
具体的には、中間層20cは、水酸基および/またはカルボキシル基と反応する官能基を有するのが好ましい。より具体的には、中間層20cは、エポキシ基、アミノ基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシル基、および、カルボキシル基の少なくとも1つを有する化合物を主成分とするのが好ましい。
中間層20cの一例として、シリコーン結合を有する化合物やシリコーン含有化合物からなる層が例示される。具体的には、オルガノポリシロキサン(シリコーン樹脂)やポリトリメチルシリルプロピンなどシリコーン含有ポリアセチレン等が利用できる。オルガノポリシロキサンの具体例としては、下記の一般式で示されるものが例示される。
なお、上記一般式中、nは1以上の整数を表す。ここで、入手容易性、揮発性、粘度等の観点から、nの平均値は10〜1000000の範囲が好ましく、100〜100000の範囲がより好ましい。
また、R1n、R2n、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、アルキル基、ビニル基、アラルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基からなる群より選択されるいずれかを示す。なお、n個存在するR1nおよびR2nは、それぞれ、同じであっても異なっても良い。また、アルキル基、アラルキル基およびアリール基は環構造を有していても良い。さらに、前記アルキル基、ビニル基、アラルキル基およびアリール基は置換基を有していても良く、この際における置換基は、例えば、アルキル基、ビニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基およびフッ素原子から選ばれる。これらの置換基は、可能であれば、さらに置換基を有することもできる。
1n、R2n、R3およびR4に選択されるアルキル基、ビニル基、アラルキル基およびアリール基は、入手容易性などの観点から、炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基がより好ましい。
1n、R2n、R3およびR4は、メチル基またはエポキシ置換アルキル基が好ましく、例えば、エポキシ変性のポリジメチルシロキサン(PDMS)など、PDMS誘導体が好適に利用できる。
また、中間層20cとしては、上記のオルガノポリシロキサン以外にも、ポリ[1−(トリメチルシリル)−1−プロピン](PTMSP)等のシリコーン材料、ブタジエン系・イソプレン系ゴム材料、低密度なポリメチルペンテン等からなる層も利用可能である。
さらに、中間層20cは、ガス透過性が500Barrer以上であるのが好ましい。
中間層20cのガス透過性が500Barrer(1Barrer=1×10-10cm3(STP)・cm/(sec・cm2・cmHg))未満では、酸性ガスの透過性が低下して所望の分離性能が得られない等の不都合が生じる。
上記不都合をより確実に回避できる等の点で、中間層20cのガス透過性は、700Barrer以上が好ましく、1000Barrer以上がより好ましい。
なお、中間層20cのガス透過性は、多孔質支持体20bに中間層20cを形成した状態で測定すればよい。
中間層20cは、公知の各種の方法で形成すればよい。好ましくは、RtoRを利用する塗布法によって形成する。
中間層cを形成する際には、長尺な多孔質支持体20bを巻回してなるロールを、中間層20cの形成装置に装填して、このロールから支持体を送り出して、多孔質支持体20bを長手方向に搬送しつつ、中間層20cとなる塗布組成物を塗布する。
ここで、中間層20cを形成する際の多孔質支持体20bの搬送速度は、生産性の観点から速い方が好ましい。しかしながら、塗布組成物を均一に塗布するために、3〜200m/minが好ましく、5〜150m/minがより好ましく、10〜120m/minが特に好ましい。
中間層20cとなる塗布組成物は、前述のPDMS誘導体等の中間層20cとなる化合物のモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、プレポリマー、および、これらの混合物や、硬化剤、硬化促進剤、架橋剤、増粘剤、補強剤、および、フィラー等を、有機溶剤に溶解および/または分散してなる、塗布法によって樹脂層(樹脂製の膜)等を形成する際に用いられる、一般的な塗布組成物(塗布液/塗料)である。このような塗布組成物は、公知の方法で調製すればよい。
前述のように多孔質支持体20bは、多孔質体である。従って、中間層20cとなる塗布組成物を多孔質支持体20bに塗布すると、塗布組成物は、次第に多孔質支持体20b(多孔質膜)に染み込む。これにより、多孔質支持体20b内の染み込み領域と、多孔質支持体20bの上の支持体上領域とを有する中間層20cが形成できる。
また、中間層20cとなる塗布組成物の粘度、多孔質支持体20b(多孔質膜)の最大孔径や平均孔径、塗布組成物を塗布してから硬化するまでの時間、塗布組成物の塗布量等を、適宜、制御することにより、支持体上領域と染み込み領域との厚さの比『Tb/Ta』が0.1〜100を満たす中間層20cを形成できる。
中間層20cとなる塗布組成物の塗布量は、多孔質支持体20bの特性(最大孔径など)、多孔質支持体20bの搬送速度、中間層20cの厚さ、塗布組成物の粘度の濃度等に応じて、シミュレーションや実験等を行って、支持体上領域の厚さTaや染み込み領域の厚さTb等が、目的とする値となる量を、適宜、設定すればよい。
ここで、中間層20cとなる塗布組成物は、25℃における粘度が100cp以上であるのが好ましい。
中間層20cとなる塗布組成物の25℃における粘度を100cp以上とすることにより、多孔質支持体20bへの塗布組成物の染み込み量を適正に制御して、支持体上領域の厚さTaと、染み込み領域の厚さTbとの比『Tb/Ta』が、0.1〜100である中間層20cを、安定して形成できる。
この点を考慮すると、中間層20cとなる塗布組成物の25℃における粘度は、400cp以上がより好ましく、500cp以上が特に好ましい。
従って、中間層20cとなる塗布組成物は、室温で塗布するのが好ましく、もしくは、粘度が100cp以上となる温度に制御して塗布を行うのが好ましい。
他方、中間層20cとなる塗布組成物の25℃における粘度の上限は、使用する塗布装置における限界粘度に応じて設定すればよい。具体的には、中間層20cとなる塗布組成物の25℃における粘度の上限は、中間層20cの厚さ、および、多孔質支持体20bへの染み込み量の制御が好適に行える等の点で、1,000,000cp以下が好ましい。
なお、中間層20cとなる塗布組成物の粘度は、JIS Z8803に準じて、B型粘度計による回転数60rpmにおける粘度を、25℃で測定すればよい。
中間層20cとなる塗布組成物の塗布装置は、シリコーン塗布組成物に応じた公知のものが、各種、利用可能である。特に、ロールコータ、ダイレクトグラビアコータ、オフセットグラビアコータ、1本ロールキスコータ、3本リバースロールコータ、正回転ロールコータ、スクイズコータ、リバースロールコータ等は、好適に例示される。
中間層20cとなる塗布組成物を塗布したら、次いで、この塗布組成物を乾燥する。乾燥も、温風乾燥やヒータによる乾燥等、公知の方法で行えばよい。
中間層20cとなる塗布組成物を乾燥したら、次いで、塗布組成物を硬化して、中間層20cを形成する。
硬化は、加熱硬化、紫外線照射、電子線照射等、中間層20cの形成材料に応じて、硬化が可能な方法を、適宜、選択すればよい。ここで、多孔質支持体20bのカールや変形を抑制できる、多孔質支持体20bを構成する樹脂などの劣化を防止できる等の理由により、紫外線照射や短時間の加熱による塗布組成物の硬化は、好適に利用される。特に、紫外線照射による硬化は、最も好ましく利用される。すなわち、本発明においては、紫外線の照射による硬化が可能なモノマー等を用いた塗布組成物によって、中間層20cを形成するのが好ましい。
中間層20cとなる塗布組成物の硬化は、塗布組成物を塗布した後、7秒以内に行うのが好ましい。
多孔質支持体20bに中間層20cとなる塗布組成物を塗布すると、次第に、塗布組成物が多孔質支持体20bに染み込んで行く。すなわち、染み込み領域の厚さTbが厚くなる。
これに対して、中間層20cとなる塗布組成物の硬化を、塗布組成物を塗布した後、7秒以内に行うことにより、多孔質支持体20bへの塗布組成物の染み込み量を適正に制御して、支持体上領域の厚さTaと、染み込み領域の厚さTbとの比『Tb/Ta』が、0.1〜100である中間層20cを、安定して形成できる。
中間層20cとなる塗布組成物の組成によっては、塗布組成物の乾燥および硬化を、同時に行ってもよい。
また、塗布組成物の乾燥および/または硬化は、必要に応じて、窒素雰囲気等の不活性雰囲気で行ってもよい。
このようにして多孔質支持体20bに中間層20cを形成したら、中間層20cを形成した多孔質支持体20bをロール状に巻き取る。
なお、促進輸送膜20aの上に形成する保護層も、基本的に、中間層20cと同様に形成できる。
次いで、中間層20cを形成した多孔質支持体20bのロールを促進輸送膜20aの形成装置に装填して、前述の方法により促進輸送膜20aを形成すればよい。
なお、中間層20cを形成した多孔質支持体20bを、一旦、巻取り、このロールから、中間層20cを形成した多孔質支持体20bを送り出して、促進輸送膜20aを形成する構成に限定はされず、中間層20cを形成した多孔質支持体20bを巻き取らず、そのまま長手方向に搬送して、促進輸送膜20aを形成して酸性ガス分離層20を作製して、巻き取ってもよい。
また、本発明の分離モジュール10において酸性ガス分離層20は、表面すなわち促進輸送膜20aの上に、保護層を有するのが好ましい。
前述のように、分離モジュール10は、酸性ガス分離層20および供給ガス流路用部材24による挟持体36と、透過ガス流路用部材26とを積層した積層体14を巻回する際に、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との摺接によって、促進輸送膜20aが損傷する場合がある。
これに対し、酸性ガス分離層20の表面に、保護層を有することにより、この促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24との摺接による促進輸送膜20aの損傷を防止できる。
保護層の形成材料としては、各種のものが利用可能であるが、前述の中間層20cにおいて例示した各種の化合物が、好適に利用される。特に、中間層20cと同様に、PDMS誘導体は、好適に例示される。
保護層の厚さは、促進輸送膜20aの特性や、供給ガス流路用部材24の特性等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、0.1〜500μmが好ましく、0.5〜100μmがより好ましい。
保護層の厚さを、上記範囲とすることにより、保護層を有することによるガス透過性の低下を抑制しながら、促進輸送膜20aを好適に保護できる等の点で好ましい。
また、本発明においては、このようにして作製した酸性ガス分離層20は、そのまま用いて、後述するように、分離モジュール10(積層体14およびスパイラル積層体14a)を作製してもよい。
あるいは、2枚の酸性ガス分離層20を作製して、2枚の酸性ガス分離層20を、図9(A)に示すように、促進輸送膜20aを対面した状態で、積層および貼着して、分離膜貼着体20Aを作製し、この分離膜貼着体20Aを用いて、酸性ガス分離層20と同様に、分離モジュール10(積層体14およびスパイラル積層体14a)を作製してもよい。
前述のように促進輸送膜20aはゲル状の膜であり、また、粘着性を有するため、2枚の酸性ガス分離層20は、十分な貼着力で貼着される。これにより、後述する積層体14の巻回を行う際にも、促進輸送膜20a同士が擦れることはない。さらに、このように2枚の酸性ガス分離層20を貼着した分離膜貼着体20Aでは、促進輸送膜20aが接触するのは、他方の促進輸送膜20aと多孔質支持体20bのみである。
そのため、この構成によれば、分離膜貼着体20A、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26からなる積層体14をスパイラル状に巻回する際に、促進輸送膜20aが損傷することを、好適に防止できる。
このような分離膜貼着体20Aにおいては、中間層20cは、両方の酸性ガス分離層20が有してもよい。
しかしながら、圧力が多孔質支持体20b側から掛かる場合には、加圧による多孔質支持体20bへのキャリアの抜けを防止する中間層20cは、不要である。従って、圧力損失等を考慮すると、2枚の酸性ガス分離層20を貼着してなる分離膜貼着体20Aにおいては、中間層20cは、積層体14とした際に、供給ガス流路用部材24と離間する側の酸性ガス分離層20のみに設けるのが好ましい。
2枚の酸性ガス分離層20を貼着してなる分離膜貼着体20Aは、公知のシート状物の積層および貼着方法を用いて作製すればよい。
例えば、前述のようにRtoRによって酸性ガス分離層20を作製した場合には、同様に、RtoRによって公知の方法で分離膜貼着体20Aを作製すればよい。具体的には、前述のようして2個の分離膜ロール20Rを作製する。この2個の分離膜ロール20Rを、図9(B)に概念的に示すように、公知の貼り合わせ装置の所定位置に装着する。この分離膜ロール20Rの装着は、各分離膜ロール20Rから送り出した酸性ガス分離層20の、互いの促進輸送膜20aが対面するように行う。
次いで、各分離膜ロール20Rから、酸性ガス分離層20を送り出し、ガイドローラ50、積層ローラ対52、搬送ローラ対54を経る所定の経路で挿通し、2枚の酸性ガス分離層20の先端を、巻取り軸56に巻回する。
以上の準備を終了したら、各分離膜ロール20Rから酸性ガス分離層20を送り出して、ガイドローラ50等によって所定の搬送経路に案内して長手方向に搬送しつつ、積層ローラ対52によって促進輸送膜20aを対面させて2枚の酸性ガス分離層20を積層および貼着して分離膜貼着体20Aとする。
さらに、作製した分離膜貼着体20Aを、搬送ローラ対54によって所定の搬送経路に案内して、巻取り軸56によって巻取り、分離膜貼着体20Aをロール状に巻回してなる貼着体ロール20ARとする。
この際において、酸性ガス分離層20等の搬送速度は、速い方が生産性等の点で好ましいが、酸性ガス分離層20の強度等に応じて、適宜、設定すればよい。
また、前述のように、促進輸送膜20aは粘着性を有するので、この酸性ガス分離層20の貼着では、基本的に、接着剤や粘着剤等の接着部材を用いる必要はない。
ここで、本発明の製造方法において、分離膜貼着体20Aを作製する際には、貼り合わせた2枚の酸性ガス分離層20を加圧するのが好ましい。これにより、2枚の酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)の貼着力を、より向上できる。
加圧力は、促進輸送膜20aの種類や厚さ等に応じて、適宜、設定すればよい。具体的には、加圧力は10〜500kPaが好ましく、100〜300kPaがより好ましい。
加圧力を、この範囲とすることにより、2枚の酸性ガス分離層20の粘着力を向上して、後述する巻回の際の促進輸送膜20a同士のズレをより好適に防止できる等の点で好ましい。
貼り合わせた酸性ガス分離層20(分離膜貼着体20A)の加圧は、加圧ローラやプレス装置等を用いる公知の方法で行えばよい。
例えば、前述のようなRtoRによって、分離膜貼着体20Aを作製する場合には、積層ローラ対52によって2枚の酸性ガス分離層20を貼着する際に加圧を行ってもよい。あるいは、搬送ローラ対54を加圧ローラ対にする等、分離膜貼着体20Aの搬送経路中に1個以上の加圧ローラを設けてもよい。あるいは、積層ローラ対52による加圧と加圧ローラによる加圧とを、併用してもよい。
また、この加圧を行う際に、必要に応じて、酸性ガス分離層20および/または分離膜貼着体20Aの加熱や加湿等を行ってもよい。これらの処理は、積層ローラ対52を加熱する方法等、公知の方法で行えばよい。
分離膜貼着体20Aにおいて、2枚の酸性ガス分離層20による二つの促進輸送膜20aの合計膜厚は、促進輸送膜20aの組成等に応じて、目的とする性能を得られる膜厚を、適宜、設定すればよい。
具体的には、5〜1000μmが好ましく、10〜500μmがより好ましい。
また、分離膜貼着体20Aを構成する2枚の酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aの厚さが同じでも異なってもよい。また、2枚の酸性ガス分離層20は、多孔質支持体20bの厚さおよび/または構成が同じでも異なってもよい。
さらに、分離膜貼着体20Aを構成する2枚の酸性ガス分離層20は、促進輸送膜20aが、同じでも互いに異なってもよい。
また、図9(A)に示す例では、促進輸送膜20aと多孔質支持体20bとの間に、中間層20cを有する酸性ガス分離層20を2枚貼着する構成としたが、これに限定はされず、各種構成の酸性ガス分離層20を2枚貼着する構成としてもよい。例えば、中間層20cを有さない、促進輸送膜20aと多孔質支持体20bからなる酸性ガス分離層20を2枚貼着する構成としてもよい。
また、酸性ガス分離層20が中間層を有さない構成の場合には、厚さ方向において、促進輸送膜20aの少なくとも一部が、多孔質支持体20bである不織布中に形成されてもよい。
あるいは、促進輸送膜20a全体が不織布中に形成されてもよい。その際には、厚さ方向において、不織布の一部に促進輸送膜20aが形成される構成でもよく、不織布内に満たされるように、促進輸送膜20aが形成される構成であってもよい。
また、促進輸送膜20aが不織布中に形成される構成の場合には、酸性ガス分離層20は、不織布の一方の面側に、促進輸送膜のキャリアが拡散することを抑制するキャリア拡散抑制層を有するのが好ましい。酸性ガス分離層20がキャリア拡散抑制層を有する場合には、供給ガス流路用部材24が、不織布のキャリア拡散抑制層とは逆の面側に積層されるのが好ましい。
不織布の一方の面にキャリア拡散抑制層を有することで、促進輸送膜20a中のキャリアや促進輸送膜20a自体が不織布から抜けることを防止して、促進輸送膜20aを不織布中に確実に保持できる。
なお、キャリア拡散抑制層は、上記中間層と同様の材料で形成可能である。
例えば、図10(A)に示す酸性ガス分離層20のように、酸性ガス分離層20を構成する促進輸送膜20aは、不織布20bの中に形成される。さらに、キャリア拡散抑制層20dは、不織布20bの供給ガス流路用部材24とは逆側の面に積層される。
キャリア拡散抑制層20dは、酸性ガスGcの分離時における圧力によって促進輸送膜20aが不織布20bから排出されてしまうことを防止すると共に、促進輸送膜20aのキャリアが、促進輸送膜20aから排出されて、透過ガス流路用部材26を透過してしまうことを防止するための層である。
また、図10に示す例では、酸性ガス分離層20は、不織布20bが促進輸送膜20aよりも厚く、促進輸送膜20aは、完全に不織布20bの中に収容された状態で層状に形成され、不織布20bの中には、厚さ方向に促進輸送膜20aが無い領域を有するが、これに限定はされない。例えば、不織布20bの中が促進輸送膜20aによって完全に満たされていてもよい。あるいは、図4(A)に概念的に示すように、促進輸送膜20aを不織布20bよりも厚くして、不織布20bの中を促進輸送膜20aで満たした上に、促進輸送膜20aを不織布20bから突出させてもよい。
このように、促進輸送膜20aが不織布中に形成されることにより、ゲル状である促進輸送膜20aの力学的強度不足を担保して、耐久性を高くでき、酸性ガスの分離に必要な十分な圧力を掛けることができる。また、積層体14の巻回時に、促進輸送膜20aと供給ガス流路用部材24とが摺接することが無いので、促進輸送膜20aの損傷を防止して欠陥の発生を抑制できるので、原料ガスGが促進輸送膜20aを抜けてしまうことを防止できる。
ここで、本発明において、不織布とは、JIS L 0222の規定に準拠するものである。すなわち、本発明において、不織布とは、「繊維シート、ウェブまたはバットで、繊維が一方向またはランダムに配向しており、交絡、および/または融着、および/または接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編物、タフト及び縮絨を除く。」ものである。
また、キャリア拡散抑制層20dの膜厚は、キャリア拡散抑制層20dの形成材料等に応じて、促進輸送膜20aからのキャリアの流出を防止でき、かつ、不織布20bと共に促進輸送膜20aを支持できる厚さを、適宜、設定すればよい。
本発明者らの検討によれば、キャリア拡散抑制層20dの厚さは、0.5〜15μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、0.5〜5μmが特に好ましい。
キャリア拡散抑制層20dの厚さを0.5μm以上とすることにより、促進輸送膜20aからのキャリアの流出を好適に防止できる、促進輸送膜20aを好適に支持できる等の点で好ましい。
キャリア拡散抑制層20dの厚さを15μm以下とすることにより、酸性ガス分離層20が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
このようなキャリア拡散抑制層20dは、上述の中間層20cと同様の材料からなるものであるので、同様の方法で形成することができる。
なお、キャリア拡散抑制層20dは、促進輸送膜20aを形成した後に、形成してもよく、逆に、キャリア拡散抑制層20dを形成した後に、促進輸送膜20aを形成してもよい。
また、キャリア拡散抑制層20dの形成にRtoRを利用する場合には、キャリア拡散抑制層20dを形成した不織布20bを、一旦、巻取り、このロールから、キャリア拡散抑制層20dを形成した不織布20bを送り出して、促進輸送膜20aを形成してもよく、キャリア拡散抑制層20dを形成した不織布20bを巻き取らず、そのまま長手方向に搬送して、促進輸送膜20aを形成して酸性ガス分離層20を作製して、巻き取ってもよい。
キャリア拡散抑制層20dとなる塗布組成物の塗布量は、不織布20bの特性(ISO透気度、繊維径、目付量等)、不織布20bの搬送速度、キャリア拡散抑制層20dの厚さ、塗布組成物の粘度の濃度等に応じて、シミュレーションや実験等を行って、目的とする厚さのキャリア拡散抑制層20dが形成できる量を、適宜、設定すればよい。
キャリア拡散抑制層20dとなる塗布組成物は、25℃における粘度が100cp以上であるのが好ましく、400cp以上がより好ましく、500cp以上が特に好ましい。
キャリア拡散抑制層20dとなる塗布組成物の25℃における粘度を100cp以上とすることにより、不織布20bの表面にキャリア拡散抑制層20dを安定して形成できる等の点で好ましい。
他方、キャリア拡散抑制層20dとなる塗布組成物の25℃における粘度の上限は、使用する塗布装置における限界粘度に応じて設定すればよい。具体的には、キャリア拡散抑制層20dとなる塗布組成物の25℃における粘度の上限は、キャリア拡散抑制層20dの厚さ、および、不織布20bへの染み込み量の制御が好適に行える等の点で、1,000,000cp以下が好ましい。
また、酸性ガス分離層20は、不織布20bのキャリア拡散抑制層20dが形成される面側、すなわち不織布20bの供給ガス流路用部材24とは逆の面側に、多孔質層20eを有してもよい。
この際においては、多孔質層20eは、図11(A)に示すように、多孔質層20eを不織布20bとキャリア拡散抑制層20dとの間に配置してもよい。あるいは、図11(B)に示すように、多孔質層20eと不織布20bとの間に、キャリア拡散抑制層20dを配置してもよい。
あるいは、促進輸送膜20aおよびキャリア拡散抑制層20dを不織布等に支持させて、これを、多孔質の支持体で支持する等の構成であってもよい。
このような多孔質層20eを有することにより、酸性ガス分離層20の強度を向上して耐久性に優れる分離モジュールが得られる、より確実に促進輸送膜20aを不織布の内部に保持できる等の点で好ましい。
なお、多孔質層20eとしては、上述した多孔質支持体20bの多孔質膜と同様の構成を有することが好ましい。
また、多孔質層20eの厚さは、多孔質層20eの積層方向の位置、多孔質層20eの形成材料、多孔質層20eの最大孔径や平均孔径等に応じて、適宜、設定すればよい。
本発明者らの検討によれば、多孔質層20eの厚さは、1〜100μmが好ましく、10〜80μmがより好ましく、20〜50μmが特に好ましい。
多孔質層20eの厚さを1μm以上とすることにより、多孔質層20eを有することの効果を好適に得られる等の点で好ましい。
多孔質層20eの厚さを100μm以下とすることにより、多孔質層20eが酸性ガスの通過の妨げとなることを防止できる、酸性ガス分離層20が不要に厚くなることを防止できる等の点で好ましい。
このような多孔質層20eを有する酸性ガス分離層において、図11(A)に示す構成の場合には、不織布20bの一面に多孔質層20eを貼着したものを基板として、同様に、促進輸送膜20aおよびキャリア拡散抑制層20dを形成すればよい。もしくは、キャリア拡散抑制層20dを形成した多孔質層20eと、促進輸送膜20aを形成した不織布20bとを、貼着することで酸性ガス分離層20を作製してもよい。
また、図11(B)に示す構成の場合には、先と同様にして酸性ガス分離層20を作製した後に、公知の方法で多孔質層20eをキャリア拡散抑制層20dに貼着すればよい。もしくは、同様に、キャリア拡散抑制層20dを形成した多孔質層20eと、促進輸送膜20aを形成した不織布20bとを、貼着することで酸性ガス分離層20を作製してもよい。
また、酸性ガス分離層が多孔質層20eを有する場合には、さらに、多孔質層20eを支持する補助支持膜を有してもよい。すなわち、酸性ガス分離層は、多孔質層20eと補助支持膜との積層体を用いてもよい。言い換えると、促進輸送膜20aを含浸させた不織布と、多孔質膜および補助支持膜からなる多孔質支持体20bとを積層した構成としてもよい。
多孔質層20eと補助支持膜との積層体を用いることにより、酸性ガス分離層の強度を向上できる、キャリア拡散抑制層の形成を容易に行える、RtoRによる製造への対応性を向上できる等の点で好ましい。
なお、多孔質層20eと補助支持膜との積層体を用いる場合には、酸性ガス分離層は、通常、多孔質層20eがキャリア拡散抑制層20dと対面するように形成される。
補助支持膜としては、上述の多孔質支持体20bの補助支持膜と同様のものが利用可能である。
このような多孔質層20eを有する構成であっても、不織布20bを促進輸送膜20aで満たす構成や、図10(B)に示すような促進輸送膜20aを不織布20bよりも厚くする構成も利用可能である。
積層体14には、さらに、透過ガス流路用部材26が積層される。図示例において、透過ガス流路用部材26は、一例として長方形のシート状物である。
透過ガス流路用部材26は、キャリアと反応して酸性ガス分離層20を透過した酸性ガスGcを、中心筒12の貫通孔12aに流すための部材である。
前述のように、図示例において、積層体14は、酸性ガス分離層20を促進輸送膜20aを内側にして二つ折りにして、供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を有する。この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着剤層30で接着することにより、1つの積層体14が構成される。
透過ガス流路用部材26は、積層体14間でスペーサとして機能して、積層体14の巻回中心(内側)に向かって中心筒12の貫通孔12aに至る、原料ガスGから分離した酸性ガスGcの流路を構成する。また、この酸性ガスGcの流路を適正に形成するために、後述する接着剤層30が浸透する必要が有る。この点を考慮すると、透過ガス流路用部材26は、供給ガス流路用部材24と同様、網目構造(ネット状/メッシュ状)の部材が好ましい。
透過ガス流路用部材26の形成材料は、十分な強度や耐熱性を有するものであれば、各種の材料が利用可能である。具体的には、エポキシ含浸ポリエステルなどポリエステル系の材料、ポリプロピレンなどポリオレフィン系材料、ポリテトラフルオロエチレンなどフッ素系の材料、金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が、好適に例示される。このような透過ガス流路用部材26の形成材料は、複数の材料を併用してもよい。また、同一材料のものを、複数、重ねて用いてもよい。
透過ガス流路用部材26の厚さは、原料ガスGの供給量や要求される処理能力等に応じて、適宜、決定すれば良い。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
ここで、前述の図4(A)、図4(B)および図7(B)のように、中心筒12の軸方向において、透過ガス流路用部材26の厚さが連続的に変化する構成の場合にも、透過ガス流路用部材26の厚さは、全領域で、上記範囲を満たすのが好ましい。
また、透過ガス流路用部材26の厚さが連続的に変化する構成の場合には、軸方向における一方の端部での厚さと他方の端部での厚さの差は、20〜800μmであるのが好ましく、40〜500μmであるのがより好ましい。
一方の端部と他方の端部での厚さの差を上記範囲とすることで、促進輸送膜20aの膜面の傾斜量を、好適に調整することができる。
また、軸方向(幅方向)において厚さが連続的に変化する透過ガス流路用部材26の作製方法には特に限定はない。例えば、透過ガス流路用部材26となる不織布等の部材の表面をヤスリ等で削って傾斜させて、幅方向に厚さが変化する透過ガス流路用部材26を作製してもよい。あるいは、幅方向の位置に応じて、異なる太さの繊維を用いて、一方の端部側で細い繊維を用い、他方の端部側で太い繊維を用い、他方の端部側に向かうにしたがって幅方向に順次太い繊維を用いて、幅方向に厚さが変化する透過ガス流路用部材26となる不織布または織布を作製してもよい。あるいは、幅方向の長さの異なる複数の不織布または織布を、幅方向の一方の端面の位置を合わせて積層して、幅方向に厚さが変化する透過ガス流路用部材26を作製してもよい。あるいは、幅方向の位置に応じて、不織布の繊維の目付け量(単位面積あたりの質量)を異ならせ、一方の端部側で目付け量を小さくし、他方の端部側で目付け量を大きくし、他方の端部側に向かうにしたがって幅方向に目付け量が大きくなるようにすることで、幅方向に厚さが変化する透過ガス流路用部材26を作製してもよい。
前述のように、透過ガス流路用部材26は、原料ガスGから分離されて酸性ガス分離層20を透過した酸性ガスGcの流路となる。
そのため、透過ガス流路用部材26は、流れるガスに対しての抵抗が少ないのが好ましい。具体的には、空隙率が高く、圧をかけたときの変形が少なく、かつ、圧損が少ないのが好ましい。
透過ガス流路用部材26の空隙率は、30〜99%が好ましく、35〜97.5%がより好ましく、40〜95%が特に好ましい。
また、圧をかけたときの変形は、引張試験を行ったときの伸度で近似できる。具体的には、10N/10mm幅の荷重をかけたときの伸度が5%以内であることが好ましく、4%以内であることがより好ましい。
さらに、圧損は、一定の流量で流した圧縮空気の流量損失で近似できる。具体的には、15cm角の透過ガス流路用部材26に、室温で15L/分の空気を流した際に、流量損失が7.5L/分以内であるのが好ましく、7L/分以内であるのがより好ましい。
以下、分離モジュール10における、酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26からなる積層体14の作製方法、および、積層した積層体14の巻回方法すなわちスパイラル積層体14aの作製方法を説明する。
なお、酸性ガス分離層20に変えて、前述の分離膜貼着体20Aを用いる場合にも、同様に、積層体14を作製し、さらに、スパイラル積層体14aを作製すればよい。
以下の説明に用いる図12(A)〜図15では、図面を簡潔にして構成を明確に示すために、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26は、端面(端部)のみをネット状で示す。また、各層の軸方向における厚みの変化量の図示は省略する。
まず、図12(A)および図12(B)に概念的に示すように、中心筒12の延在方向と透過ガス流路用部材26の短手方向とを一致させて、中心筒12に、カプトンテープや接着剤等の固定手段34を用いて、透過ガス流路用部材26の端部を固定する。
ここで、前述のように、中心筒12の管壁には、軸方向に沿ってスリット(図示省略)が設けられているのが好ましい。この場合、スリットに、透過ガス流路用部材26の先端部を入れ込み、中心筒12の内周面に固定手段で固定するようにする。この構成によれば、透過ガス流路用部材26を含んだ積層体を中心筒12に巻き付ける際に、テンションをかけながら巻き付けるようにしても、中心筒12の内周面と透過ガス流路用部材26との摩擦で、透過ガス流路用部材26がスリットから抜けることを防止でき、すなわち、透過ガス流路用部材26の固定が維持される。
一方で、図13に概念的に示すように、前述のようにして作製した酸性ガス分離層20を、促進輸送膜20aを内側にして二つ折りにし、間に供給ガス流路用部材24を挟み込む。すなわち、供給ガス流路用部材24を、二つ折りにした酸性ガス分離層20(あるいは、分離膜貼着体20A)で挟持した挟持体36を作製する。なお、この際には、酸性ガス分離層20は均等に二つ折りにするのではなく、図13に示すように、一方が、若干、長くなるように、二つ折りする。
また、供給ガス流路用部材24による促進輸送膜20aの損傷を防止するために、酸性ガス分離層20を二つ折りにした谷部に、二つ折りにしたシート状の保護部材(例えば、カプトンテープやPTFEテープなど)を配置するのが好ましい。
なお、2枚の酸性ガス分離層20を貼着した分離膜貼着体20Aを利用する場合には、前述のように、中間層20cは、一方の酸性ガス分離層20のみに形成するのが好ましい。
この際においては、中間層20cを有する酸性ガス分離層20が、中間層20cを有さない酸性ガス分離層20よりも、供給ガス流路用部材24から離間するように、分離膜貼着体20Aを二つ折りにして、間に供給ガス流路用部材24を挟み込むのが好ましい。
さらに、二つ折りにした酸性ガス分離層20の短い方の表面(多孔質支持体20bの表面)に、接着剤層30となる接着剤30aを塗布する。
ここで、接着剤30a(すなわち、接着剤層30)は、図13に示すように、x方向の両端部近傍で、y方向の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍でx方向の全域に延在して帯状に塗布する。
以下、x方向(原料ガス供給方向)を、幅方向とも言う。また、前述のように、x方向と直交するy方向は、積層体14の巻回方向と一致する。
次いで、図14(A)および図14(B)に概念的に示すように、接着剤30aを塗布した面を透過ガス流路用部材26に向け、かつ、折り返し側を中心筒12に向けて、挟持体36を、中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26に積層し、透過ガス流路用部材26と酸性ガス分離層20(多孔質支持体20b)とを接着する。
さらに、図14(A)に示すように、積層した挟持体36の上面(長い側の多孔質支持体20bの表面)に、接着剤層30となる接着剤30aを塗布する。なお、以下の説明では、最初に固定手段34で中心筒12に固定された透過ガス流路用部材26と逆側の方向を、上側とも言う。
図14(A)に示すように、この面の接着剤30aも、先と同様、幅方向の両端部近傍で、巻回方向の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に塗布する。
次いで、図15に概念的に示すように、接着剤30aを塗布した挟持体36の上に、透過ガス流路用部材26を積層し、酸性ガス分離層20(多孔質支持体20b)と透過ガス流路用部材26とを接着し、積層体14が形成される。
なお、透過ガス流路用部材26は、必要に応じて、複数枚を重ねて用いてもよい。
次いで、先と同様、図13に示すように、酸性ガス分離層20で供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を作製して、接着剤層30となる接着剤30aを塗布して、接着剤を塗布した側を下に向けて、最後に積層した透過ガス流路用部材26と挟持体36とを積層して、接着する。
さらに、先と同様、積層した挟持体36の上面に、図14(A)に示すように接着剤30aを塗布して、次いで、図15に示すように、その上に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着し、2層目の積層体14を積層する。
以下、図13(A)〜図15の工程を繰り返して、図16に概念的に示すように、所定数の積層体14を積層する。
なお、この際においては、図16に示すように、積層体14は、上方に行くにしたがって、次第に、巻回方向に中心筒12から離間するように積層するのが好ましい。これにより、中心筒12への積層体14の巻き付けを容易に行い、かつ、各透過ガス流路用部材26の中心筒12側の端部もしくは端部近傍が、好適に中心筒12に当接できる。
所定数の積層体14を積層したら、図16に示すように、中心筒12の外周面に接着剤38aを、最初に中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26の上面の中心筒12と挟持体36との間に接着剤38bを、それぞれ、塗布する。
次いで、図16に矢印ywで示すように、積層した積層体14を巻き込むようにして、積層体14を中心筒12に巻き付ける。
巻き終わったら、最外周の透過ガス流路用部材26に、ひき出す方向すなわち巻き絞める方向の張力を掛けた状態で、所定時間、維持して、接着剤30a等を乾燥させる。最外周の透過ガス流路用部材26とは、最初に中心筒12に固定した最下層の透過ガス流路用部材26である。
所定時間が経過したら、最外周の透過ガス流路用部材26を1周した位置で超音波融着等によって固定し、固定位置よりも外方の余分な透過ガス流路用部材26を切断して、積層した積層体14を中心筒12に巻回してなるスパイラル積層体14aを完成する。
前述のように、原料ガスGは、供給ガス流路用部材24の端部から供給され、酸性ガスGcは、酸性ガス分離層20を積層方向に輸送されて通過することで、透過ガス流路用部材26に流入し、透過ガス流路用部材26内を流れて、中心筒12に至る。
ここで、接着剤30aを塗布されるのは、多孔質支持体20bであり、また、接着剤30aによって接着されるのは、ネット状の透過ガス流路用部材26である。従って、接着剤30aは、多孔質支持体20bおよび透過ガス流路用部材26内に浸透(含浸)し、両者の内部に接着剤層30が形成される。
また、接着剤層30(接着剤30a)は、前述のように、幅方向(x方向)の両端部近傍で、巻回方向(y方向)の全域に延在して帯状に形成される。さらに、接着剤層30は、この幅方向両端部近傍の接着剤層30を幅方向に横切るように、中心筒12側となる折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に形成される。すなわち、接着剤層30は、中心筒12側を開放して、透過ガス流路用部材26および多孔質支持体20bの外周を囲むように形成される。また、透過ガス流路用部材26は、促進輸送膜20aによって挟まれた状態となっている。
これにより、積層体14の透過ガス流路用部材26には、中心筒12側が開放するエンベロープ状の流路が形成される。従って、酸性ガス分離層20を透過して透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、外部に流出することなく、透過ガス流路用部材26内を中心筒12に向かって流れ、貫通孔12aから中心筒12内に流入する。
すなわち、接着剤層30は、接着のみならず、透過ガス流路用部材26等において、酸性ガスGcを所定の流路に封止するための封止部としても作用する。
本発明の分離モジュール10において、接着剤層30(接着剤30a)は、十分な接着力、耐熱性および耐湿性を有するものであれば、各種の公知の接着剤が利用可能である。
一例として、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が好適に例示される。
なお、接着剤層30となる接着剤30aは、一度塗りでもよいが、好ましくは、最初はアセトン等の有機溶剤で希釈した接着剤を塗布し、その上に、接着剤のみを塗布するのが好ましい。また、この際には、有機溶剤で希釈した接着剤は幅広に塗布し、接着剤は、これよりも狭い幅で塗布するのが好ましい。
これにより、多孔質支持体20bおよび透過ガス流路用部材26に、好適に接着剤層30(接着剤30a)を浸透させることができる。
また、本発明において、積層体14は、折り返した酸性ガス分離層20に供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を用いる構成に限定はされない。例えば、酸性ガス分離層20の表面に供給ガス流路用部材24を貼着したものを用いて、挟持体36と同様に積層体を構成してもよい。
さらに、分離モジュール10において、多孔質支持体20bが、前述の多孔質膜と補助支持膜との積層体である場合には、周縁部すなわち接着剤層30の形成部に、多孔質支持体20bの積層方向において、多孔質膜中に10%以上の染み込み率で接着剤が染み込んでおり、かつ、補助支持膜における接着剤の染み込み率が多孔質膜中への染み込み率よりも小さい膜保護部を備えるのが好ましい。
このような膜保護部を有することにより、酸性ガス分離層20が分離モジュール10に組み込まれて使用に供される際に、応力集中が生じて促進輸送膜20aに欠陥が生じ易い部分を保護して欠陥の発生を抑制すると共に、欠陥が生じた場合には,供給ガスの透過を抑制できるため、分離モジュール10の分離性能の低下を抑制できる。
膜保護部は、耐熱性および耐湿性を有するものであれば、各種の公知の接着剤で形成可能である。具体的には、前述の接着剤層30で例示したものが、各種、例示される。
膜保護部は、一例として、接着剤層30の形成に先立ち、溶剤の添加等によって低粘度にした接着剤を、多孔質支持体20bの多孔質支持膜に塗布することで、形成すればよい。
膜保護部の幅は、分離モジュール10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよいが、20mm以上あるのが好ましく、40mm以上がより好ましい。
本発明の分離モジュール10において、このようにして作製されるスパイラル積層体14aの両端部には、テレスコープ防止板(テレスコープ防止部材)16が配置される。
前述のように、テレスコープ防止板16は、スパイラル積層体14aが原料ガスGによって押圧されて、供給側の端面が入れ子状に押し込まれ、逆側の端面が入れ子状に突出する、いわゆるテレスコープ現象を防止するための部材である。
本発明において、テレスコープ防止板16は、スパイラル型の分離モジュールに用いられる公知のものが、各種、利用可能である。
図示例において、テレスコープ防止板は、円環状の外環部16aと、外環部16aの中に中心を一致して配置される円環状の内環部16bと、外環部16aおよび内環部16bを連結して固定するリブ(スポーク)16cとを有して構成される。前述のように、積層体14が巻回される中心筒12は、内環部16bを挿通する。
図示例において、リブ16cは、外環部16aおよび内環部16bの中心から、等角度間隔で放射状に設けられおり、外環部16aと内環部16bとの間で、かつ、各リブ16cの間隙が、原料ガスGもしくは残余ガスGrが通過する開口部16dとなっている。
また、テレスコープ防止板16は、スパイラル積層体14aの端面に接触して配置しても良い。しかしながら、一般的には、スパイラル積層体14aの端面全域を原料ガスの供給や残余ガスGrの排出に使用するために、テレスコープ防止板16とスパイラル積層体14aの端面とは、若干の間隙を有して配置される。
テレスコープ防止板16の形成材料は、十分な強度と、耐熱性および耐湿性を有する、各種の材料が利用可能である。
具体的には、金属材料、樹脂材料、セラミックス等が好適に例示される。
金属材料としては、ステンレス(SUS)、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、錫合金等が例示される。
樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ナイロン12、ナイロン66、ポリサルフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル・エチレン・スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ニトリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が例示される。樹脂材料としては、これら樹脂の繊維強化プラスチックも例示される。繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維などが例示され、特に長繊維が好ましい。繊維強化プラスチックとしては、より具体的には、ガラス長繊維強化ポリプロピレン、ガラス長繊維強化ポリフェニレンサルファイドなどが例示される。
セラミックスとしては、ゼオライト、アルミナなどが好適に例示される。
被覆層18は、スパイラル積層体14aの周面を覆って、この周面すなわちスパイラル積層体14aの端面以外から外部への原料ガスGや残余ガスGrの排出を遮断するためのものである。
被覆層18は、スパイラル積層体14aの周面のみならず、必要に応じて、さらに、テレスコープ防止板16を覆って設けてもよい。
被覆層18は、原料ガスG等を遮蔽できる物が、各種、利用可能である。また、被覆層18は、筒状の部材であってもよく、線材やシート状の部材を巻回して構成してもよい。
一例として、FRP(繊維強化プラスチック)製の線材に、前述の接着剤層30に利用される接着剤を含浸して、接着剤を含浸した線材を、隙間無く、必要に応じて多重に、スパイラル積層体14aに巻き付けてなる被覆層18が例示される。FRPで使用するファイバーやマトリックス樹脂には、限定は無い。一例として、ファイバーとしては、ガラスファイバー、炭素繊維、ケブラー、ダイニーマなどが例示されるが、この中でもガラスファイバーが特に好ましい。また、マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが例示されるが、耐熱性、耐加水分解性の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
なお、この際においては、必要に応じて、被覆層18とスパイラル積層体14aとの間に、スパイラル積層体14aへの接着剤の染み込みを防止するためのカプトンテープ等のシート状部材を設けてもよい。
また、図6(A)〜図7(B)に示すように、スパイラル積層体14aの入口側端部の外径と出口側端部の外径とが異なる径となり外周部が傾斜する構成の場合には、被覆層18の厚さを、軸方向に変化させて、スパイラル積層体14aの両端部の外径差を軽減して、分離モジュールの外径を均一にしてもよい。すなわち、スパイラル積層体14aの外径が小さい側の端部の被覆層18の厚さを厚くし、大きい側の端部の被覆層18の厚さを薄くしてもよい。
以上、本発明の分離モジュール(酸性ガス分離用スパイラル型モジュール)について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明の酸性ガス分離用スパイラル型モジュールについて、より詳細に説明する。
[実施例1]
<酸性ガス分離層の作製>
酸性ガス分離層20として、図8に示すような、多孔質支持体20b上に中間層20cが積層され、さらに、中間層20cの上に促進輸送膜20aが積層された酸性ガス分離層を作製した。
〔促進輸送膜となる塗布組成物Aの調製〕
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体(株式会社クラレ社製、クラストマーAP-20)を3.3質量%、キャリアとしての炭酸セシウムを6.0質量%を含む水溶液を調製した。なお、炭酸セシウムは、40%炭酸セシウム水溶液(稀産金属株式会社製)を用いて、炭酸セシウム濃度が6.0質量%になるように添加した。
さらに、1%ラピゾールA−90(日油株式会社製)を0.004質量%になるように添加し、撹拌後、脱泡して、促進輸送膜20aとなる塗布組成物Aとした。
〔中間層となる塗布組成物の調製〕
重合性ポリジメチルシロキサン(UV9300、モメンティブパフォーマンス社製)20質量%、および、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(I0591、東京化成工業株式会社製)0.1質量%を含むヘプタン溶液を調製して、中間層20cとなる塗布組成物とした。
なお、この塗布組成物の25℃での粘度は、300cPであった。
〔多孔質支持体の準備〕
一方、厚さ50μmのPTFE製の多孔質膜(GE製)と厚さ410μmのPP製の不織布(タピルス株式会社製)を熱圧着させ積層したものを用意し、片面をヤスリで削って傾斜させて、幅方向に厚さが260μm〜460μmに連続的に変化する多孔質支持体20bを作製した。
〔中間層の形成〕
塗布装置(ロールコータ)、乾燥装置および紫外線照射装置を有する、RtoRによって塗布法で成膜を行う一般的な成膜装置に、上記多孔質支持体20bをロール状に巻回した支持体ロールを装填し、所定の搬送経路に多孔質支持体20bを挿通(通紙)して、先端を巻取り軸に巻回した。また、先に調製した、中間層20cとなる塗布組成物を、塗布手段の材料槽に充填した。
この成膜装置によって、多孔質支持体20bを長手方向に搬送しつつ、塗布装置によって中間層20cとなる塗布組成物を塗布し、乾燥装置によって塗布組成物を乾燥し、紫外線照射装置によって塗布組成物を硬化して、多孔質支持体20bに中間層20cを形成して、ロール状に巻回した。
塗布組成物の塗布は、常温で行った。紫外線の照射は、塗布組成物を塗布した後、2秒で塗布組成物が硬化するように行った。塗布組成物の硬化時間と紫外線照射条件(照射時間および紫外線強度)との関係は、予め、実験によって調べておいた。
このようにして形成した中間層20cは、支持体上領域の厚さTaが0.5μm、染み込み領域の厚さTbが2μmで、厚さの比『Tb/Ta』は4であった。
なお、中間層20cとなる塗布組成物の粘度や塗布組成物の塗布から硬化までの時間と、支持体上領域の厚さTaおよび染み込み領域の厚さTbとの関係、および、塗布組成物の塗布量と中間層20cの厚さとの関係は、予め、実験によって調べておいた。
〔促進輸送膜の形成〕
多孔質支持体20bに中間層20cを形成した成膜装置から、支持体ロール、および、中間層20cを形成した多孔質支持体20bを巻回してなるロールを取り外した。
塗布装置(ロールコータ)および乾燥装置を有する、RtoRによって塗布法で成膜を行う一般的な成膜装置に、この中間層20cを形成した多孔質支持体20bを巻回してなるロールを装填して、所定の搬送経路に中間層20cを形成した多孔質支持体20bを挿通して、先端を巻取り軸に巻回した。また、先に調製した、促進輸送膜20aとなる塗布組成物を、塗布装置の材料槽に充填した。
次いで、この成膜装置によって、多孔質支持体20bを長手方向に搬送しつつ、塗布装置によって促進輸送膜20aとなる塗布組成物を塗布し、乾燥装置によって塗布組成物を乾燥することで、中間層20cの上に促進輸送膜20aを形成して、図8に示すような、支持体20b、中間層20cおよび促進輸送膜20aを有する酸性ガス分離層20を作製して、ロール状に巻回した。
促進輸送膜20aとなる塗布組成物の塗布は、乾燥によって形成される促進輸送膜20aの厚さが20μmとなるように行った(Tc=20μm)。従って、厚さの比『Tc/(Ta+Tb)』は、8である。なお、塗布組成物の塗布量(塗膜厚)と、形成される促進輸送膜20aの厚さとの関係は、予め、実験によって調べておいた。
<分離モジュールの作製>
次に、作製した酸性ガス分離層20を用いて分離モジュール10を作製した。
まず、厚さ630μm、大きさ(x方向×y方向)500mm×800mmのPP製のネット(大日本プラスチクス製)を用意し、両面をヤスリで削って傾斜させて、幅方向に厚さが230μm〜630μmに連続的に変化する供給ガス流路用部材24を作製した。
上記酸性ガス分離層20を促進輸送膜20aを内側にして二つ折りした。二つ折りは、図13に示すように、一方の酸性ガス分離層20が、若干、長くなるように行った。二つ折りした酸性ガス分離層20の谷部にカプトンテープを貼り、供給ガス流路用部材24の端部が促進輸送膜20aの谷部を傷つけないように補強した。
次いで、二つ折りした酸性ガス分離層20に、供給ガス流路用部材24を挟み込んで、挟持体36を作製した。ここで、図3に示すように、軸方向における、酸性ガス分離層20の厚さの変化方向と、供給ガス流路用部材の厚さの変化方向とが異なる方向となるように、酸性ガス分離層20に、供給ガス流路用部材24を挟み込んだ。
一方、側面に中心線方向に延在するスリットを有する、SUS製の中心筒12を用意した。この中心筒12のスリットに、透過ガス流路用部材26を挟み込むようにして固定して、図12(A)に示すような状態とした。
透過ガス流路用部材26は、100メッシュのステンレス製の金網(線径0.1mm、目開き0.154mm)を用いた。
挟持体36の酸性ガス分離層20が短い方の多孔質支持体20b側に、一面の周縁のうち4辺に比較的粘度の低い接着剤を刷毛にて塗布して、膜保護部を形成した。比較的粘度の低い接着剤は、エポキシ系樹脂からなる接着剤(ヘンケルジャパン株式会社製 E120HP)50質量部にアセトン50質量部を混合させたものを用いた。
次いで、図13に示すように、幅方向(x方向)の両端部近傍に、巻回方向(y方向)の全域に延在し、かつ、巻回方向の折り返し部と逆側の端部近傍に、幅方向の全域に延在して、高粘度(約40Pa・s)のエポキシ系樹脂からなる接着剤30a(ヘンケルジャパン株式会社製 E120HP)を塗布した。
次いで、接着剤30aを塗布した側を下方に向けて、図14(A)に示すように、挟持体36と中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26とを積層し、接着した。
次いで、透過ガス流路用部材26に積層した挟持体36の酸性ガス分離層20の上面に、一面の周縁のうち4辺に比較的粘度の低い接着剤を刷毛にて塗布して、膜保護部を形成した。さらに、図14(A)に示すように、幅方向の両端部近傍に、巻回方向の全域に延在し、かつ、巻回方向の折り返し部と逆側の端部近傍に、幅方向の全域に延在して、接着剤30aを塗布した。さらに、接着剤30aを塗布した酸性ガス分離層20の上に、図15に示すように、透過ガス流路用部材26を積層して、接着することにより、1層目の積層体14を形成した。
先と同様にして、図13に示す挟持体36を、もう一つ作製し、同様に、短い側の酸性ガス分離層20の多孔質支持体20b側に、同様に接着剤30aを塗布した。次いで、図14(A)と同様に、接着剤30aを塗布した側を先に形成した1層目の積層体14(その透過ガス流路用部材26)に向けて、挟持体36を、1層目の積層体14(透過ガス流路用部材26)の上に積層し、接着した。さらに、この挟持体36の上面に、図14(A)と同様に接着剤30aを塗布し、その上に、図15と同様に透過ガス流路用部材26を積層して、接着することにより、2層目の積層体14を形成した。
さらに、上記2層目と同様にして、2層目の積層体14の上に、3層目の積層体14を形成し、以下、同様にして、20層の積層体14aを積層した積層物を形成した。
中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26の上に、20層の積層体14を積層した後、図16に示すように、中心筒12の周面に接着剤38aを塗布し、さらに、中心筒12と最下層の積層体14との間の透過ガス流路用部材26上に、接着剤38bを塗布した。接着剤38aおよび38bは、接着剤30aと同じ物を用いた。
次いで、図16の矢印yw方向に中心筒12を回転することで、積層した20層の積層体14を巻き込むようにして中心筒12に多重に巻き付け、積層体14を牽引する方向に張力を掛けてスパイラル積層体14aとした。
さらに、積層体巻回物14の端面を切断して両端を揃えた後、スパイラル積層体14aの両端部に、内環部16bに中心筒12を挿通して、図16に示される形状で厚さ2cmのテレスコープ防止板16を取り付けた。テレスコープ防止板16は、ガラス繊維が40質量%入った、PPS製のものを用いた。
さらに、テレスコープ防止板16の周面およびスパイラル積層体14aの周面に、FRP樹脂テープを巻き付けて封止することで、被覆層18を形成して、図1に示されるような分離モジュール10を作製した。
また、作製した分離モジュール10の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.2mm(設計値)である。
また、分離モジュール10の外径は均一な形状である(図5(A)参照)。
[実施例2]
多孔質支持体20bの厚さを均一な厚さ(460μm)とし、透過ガス流路用部材26の厚さを、幅方向に150μm〜550μmに連続的に変化する厚さとし、供給ガス流路用部材24の厚さの変化方向と、透過ガス流路用部材26の厚さの変化方向とが異なる方向となるように、各層が積層される構成(図4(B)参照)とした以外は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。
なお、作製した分離モジュール10の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.4mm(設計値)である。
[実施例3]
多孔質支持体20bの厚さを、幅方向に440μm〜460μmに連続的に変化する厚さとし、供給ガス流路用部材24の厚さを、幅方向に400μm〜440μmに連続的に変化する厚さとした以外は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。
なお、作製した分離モジュール10の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.02mm(設計値)である。
[実施例4]
供給ガス流路用部材24の厚さを、幅方向に410μm〜440μmに連続的に変化する厚さとし、透過ガス流路用部材26の厚さを、幅方向に430μm〜460μmに連続的に変化する厚さとした以外は、実施例2と同様にして分離モジュール10を作製した。
なお、作製した分離モジュール10の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.03mm(設計値)である。
[実施例5]
多孔質支持体20bの厚さを、幅方向に460μm〜560μmに連続的に変化する厚さとし、供給ガス流路用部材24の厚さを均一な厚さ(630μm)とし、厚さが変化する酸性ガス分離層20と、厚さが均一な供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26とが積層される構成(図6(A)参照)とした以外は、実施例1と同様にして分離モジュール100を作製した。すなわち、図5(B)に示すように両端面における外径が変化するテーパー形状の分離モジュール100を作製した。
なお、作製した分離モジュール100の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.1〜12.5mm(設計値)である。
また、分離モジュール100の両端面間の外径の比率は1:1.13であった。
[実施例6]
透過ガス流路用部材26の厚さを、幅方向に420μm〜650μmに連続的に変化する厚さとし、多孔質支持体20bの厚さを均一な厚さ(460μm)とし、厚さが変化する透過ガス流路用部材26と、厚さが均一な供給ガス流路用部材24および酸性ガス分離層20とが積層される構成(図7(B)参照)とした以外は、実施例5と同様にして分離モジュール100を作製した。
なお、作製した分離モジュール100の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.23mm〜11.5mm(設計値)である。
また、分離モジュール100の両端面間の外径の比率は1:1.12であった。
[実施例7]
供給ガス流路用部材24の厚さを、幅方向に440μm〜700μmに連続的に変化する厚さとし、多孔質支持体20bの厚さを均一な厚さ(460μm)とし、厚さが変化する供給ガス流路用部材24と、厚さが均一な透過ガス流路用部材26および酸性ガス分離層20とが積層される構成(図7(A)参照)とした以外は、実施例5と同様にして分離モジュール100を作製した。
なお、作製した分離モジュール100の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.26mm〜12.0mm(設計値)である。
また、分離モジュール100の両端面間の外径の比率は1:1.13であった。
[実施例8]
多孔質支持体20bの厚さを、幅方向に460μm〜750μmに連続的に変化する厚さとした以外は、実施例5と同様にして分離モジュール100を作製した。
なお、作製した分離モジュール100の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.29mm〜28.5mm(設計値)である。
また、分離モジュール100の両端面間の外径の比率は1:1.28であった。
[実施例9]
透過ガス流路用部材26の厚さを、幅方向に420μm〜950μmに連続的に変化する厚さとした以外は、実施例6と同様にして分離モジュール100を作製した。
なお、作製した分離モジュール100の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.53mm〜26.0mm(設計値)である。
また、分離モジュール100の両端面間の外径の比率は1:1.27であった。
[実施例10]
供給ガス流路用部材24の厚さを、幅方向に440μm〜1000μmに連続的に変化する厚さとした以外は、実施例7と同様にして分離モジュール100を作製した。
なお、作製した分離モジュール100の中心軸に平行な断面における、促進輸送膜20aの膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.56mm〜25.5mm(設計値)である。
また、分離モジュール100の両端面間の外径の比率は1:1.27であった。
[実施例11]
多孔質支持体の厚さを、幅方向に230μm〜600μmに連続的に変化する厚さとした以外は、実施例5と同様にして分離モジュールを作製した。
なお、作製した分離モジュールの中心軸に平行な断面における、促進輸送膜の膜面の中心軸に対する傾斜量は、0.48mm〜30.9mm(設計値)である。
また、分離モジュール100の両端面間の外径の比率は1:1.32であった。
[実施例12]
以下のようにして作製した酸性ガス分離層20を用いた以外は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。
〔促進輸送膜となる塗布組成物Bの調整〕
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体(株式会社クラレ製、クラストマーAP-2)を3.3質量%、キャリアとしての炭酸セシウムを6.0質量%を含む水溶液を調製した。なお、炭酸セシウムは、40%炭酸セシウム水溶液(稀産金属社製)を用いて、炭酸セシウム濃度が6.0質量%になるように添加した。
さらに、1%ラピゾールA−90(日油社製)を0.004質量%になるように添加し、撹拌後、脱泡して、促進輸送膜20aとなる塗布組成物Bとした。
〔キャリア拡散抑制層となる塗布組成物の調製〕
重合性ポリジメチルシロキサン(UV9300、モメンティブパフォーマンス社製)20質量%、および、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(I0591、東京化成工業社製)0.1質量%を含むヘプタン溶液を調製して、キャリア拡散抑制層20dとなる塗布組成物とした。
<酸性ガス分離層の作製>
〔促進輸送膜の形成〕
不織布20bとして、厚さ80μm、繊維径30μm、目付量50g/m2、ISO透気度3.5μm/(Pa・sec)のPP製の不織布(タピルス社製)を用意した。
塗布装置(ロールコータ)および乾燥装置を有する、RtoRによって塗布法で成膜を行う一般的な成膜装置に、この不織布20bを巻回してなるロールを装填して、所定の搬送経路に不織布20bを挿通して、先端を巻取り軸に巻回した。また、先に調製した促進輸送膜20aとなる塗布組成物Bを、塗布装置の材料槽に充填した。
次いで、この成膜装置によって、不織布20bを長手方向に搬送しつつ、塗布装置によって塗布組成物Bを塗布し、乾燥装置によって塗布組成物Bを乾燥することで、促進輸送膜20aを形成して、ロール状に巻回した。
塗布組成物Bの塗布は、乾燥によって形成される促進輸送膜20aの厚さが30μmとなるように行った。塗布組成物Bの塗布量(塗膜厚)と、形成される促進輸送膜20aの厚さとの関係は、予め、実験によって調べておいた。
電子顕微鏡の断面観察像によって確認したところ、促進輸送膜20aは、面方向の全域において、不織布20bの中に層状に形成されていた。
〔キャリア拡散抑制層の形成〕
長尺な支持体をロール状に巻回してなる支持体ロールを用意した。この支持体は、厚さ410μmのPP不織布(補助支持膜)の表面に、厚さ50μmの多孔質層20eを積層してなるものである。また、この多孔質層20eは、多孔質のPTFEである。
この支持体のPP不織布側をヤスリで削って傾斜させて、幅方向に厚さが260μm〜460μmに連続的に変化する構成とした。
塗布装置(ロールコータ)、乾燥装置および紫外線照射装置を有する、RtoRによって塗布法で成膜を行う一般的な成膜装置に、この支持体ロールを装填し、所定の搬送経路に支持体を挿通(通紙)して、先端を巻取り軸に巻回した。支持体ロールは、多孔質層20eが被塗布面となるように装填した。さらに、先に調製した、キャリア拡散抑制層20dとなる塗布組成物を、塗布手段の材料槽に充填した。
この成膜装置によって、支持体を長手方向に搬送しつつ、塗布装置によってキャリア拡散抑制層20dとなる塗布組成物を塗布し、乾燥装置によって塗布組成物を乾燥し、紫外線照射装置によって塗布組成物を硬化して、支持体にキャリア拡散抑制層20dを形成して、ロール状に巻回した。
塗布組成物の塗布は、常温で行った。塗布組成物の塗布は、作製したキャリア拡散抑制層20dの膜厚が5μmとなるように行った。塗布組成物の塗布量とキャリア拡散抑制層20dの厚さとの関係は、予め、実験によって調べておいた。
〔酸性ガス分離層の形成〕
促進輸送膜20aを形成した不織布20bと、キャリア拡散抑制層20dを形成した支持体とを、所定の長さに切断して貼り合わせ、酸性ガス分離層20を作製した。
不織布20bと支持体との貼り合わせは、キャリア拡散抑制層20dと、不織布20bの促進輸送膜20aの形成面(塗布面)とを対面させて行った。また、貼着は、ゲル状である促進輸送膜20aの粘性を利用して行った。
[比較例1]
多孔質支持体の厚さを均一な厚さ(460μm)とし、供給ガス流路用部材の厚さを均一な厚さ(630μm)とした以外は、実施例1と同様にして分離モジュールを作製した。すなわち、中心軸に平行な断面において、促進輸送膜の膜面が、中心軸に平行な形状の分離モジュールを作製した。
[評価]
以上のようにして作製した分離モジュールについて、初期リーク試験(歩留まり)およびCO2選択性(分離性能)の測定を行った。
<初期リーク試験>
作製した各分離モジュールを、中心筒の開放端のみが外部に出た状態として、筒型の密閉容器に収容した。この密閉容器内に、25℃50%RHでヘリウムガスを導入し、0.8MPaの圧力を掛けた状態で、中心筒の開放端から排出されるヘリウムガスの流量を測定し、以下の基準で評価した。
中心筒の開放端から排出されるヘリウムガスの流量が100mL/min未満である場合を「A」;
中心筒の開放端から排出されるヘリウムガスの流量が100mL/min以上200mL/min未満である場合を「B」;
中心筒の開放端から排出されるヘリウムガスの流量が200mL/min以上である場合を「C」; と評価した。
<CO2選択性>
作製したスパイラルモジュールに対し、テストガスとしてCO2/H2=10/90の割合で混合した混合ガスを用い、これを飽和水蒸気下で、圧力0.91MPa、温度130℃で膜に供給し、透過してきたガスをガスクロマトグラフで分析し、CO2/H2分離係数(α:H2の透過量に対するCO2の透過量の割合)を算出し、以下の基準で評価した。
A:αが70以上
B:αが60以上70未満
C:αが50以上60未満
D:αが50未満
結果を下記表1に示す。
なお、表1において、酸性ガス分離層を分離層、供給ガス流路用部材をFS、透過ガス流路用部材をPS、多孔質支持体を支持体という。
上記表1に示されるように、促進輸送膜の膜面が中心軸に対して、0.04mm〜30mm傾斜している本発明の分離モジュールである実施例1〜12は、比較例の分離モジュールよりも高いCO2選択性を示しており、優れた分離性能を有していることがわかる。
また、実施例1、2、5〜7と、実施例3、4、8〜10の対比から、膜面の傾斜量は、0.1mm〜15mmであるのが好ましいことがわかる。
また、実施例8と実施例5、11との対比から、全ての促進輸送膜の膜面の傾斜量が0.04mm〜30mmの範囲にあるのが好ましいことがわかる。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
水素ガスの製造や天然ガスの精製等に好適に利用可能である。
10 分離モジュール
12 中心筒
12a 貫通孔
12b 開放端
14 積層体
14a スパイラル積層体
16 テレスコープ防止板
16a 外環部
16b 内環部
16c リブ
16d 開口部
18 被覆層
20 酸性ガス分離層
20R 分離層ロール
20A 分離層貼着体
20a 促進輸送膜
20b 多孔質支持体
20c 中間層
20d キャリア拡散抑制層
20e 多孔質層
24 供給ガス流路用部材
26 透過ガス流路用部材
30 接着剤層
30a、38a、38b 接着剤
34 固定手段
36 挟持体
50 ガイドローラ
52 積層ローラ対
54 搬送ローラ対
56 巻取り軸

Claims (9)

  1. 管壁に貫通孔が形成された中心筒、
    原料ガスの流路となる供給ガス流路用部材、
    前記供給ガス流路用部材を流れる原料ガスから酸性ガスを分離する、酸性ガスと反応するキャリアおよび前記キャリアを担持するための親水性化合物を含有する促進輸送膜と、前記促進輸送膜を支持し、前記促進輸送膜が分離した酸性ガスを通過させる多孔質支持体とを有する酸性ガス分離層、ならびに、
    前記促進輸送膜を透過した酸性ガスが前記中心筒まで流れる流路となる透過ガス流路用部材を有し、
    前記供給ガス流路用部材、前記酸性ガス分離層および前記透過ガス流路用部材を有する積層体を、少なくとも1つ、前記中心筒に巻回してなる酸性ガス分離用スパイラル型モジュールにおいて、
    前記中心筒の中心軸に平行な断面において、少なくとも1つの前記促進輸送膜の前記供給ガス流路用部材側の面が、前記中心筒の軸方向の両端部の間で、前記中心軸に対して、傾斜しており、前記促進輸送膜の前記供給ガス流路用部材側の面の傾斜量が、0.02mm〜30mmである酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  2. 前記供給ガス流路用部材および前記透過ガス流路用部材は、前記中心筒の軸方向において、厚さが連続的に変化しており、かつ、前記供給ガス流路用部材および前記透過ガス流路用部材の厚さの変化方向が互いに異なる請求項1に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  3. 前記供給ガス流路用部材および前記酸性ガス分離層は、前記中心筒の軸方向において、厚さが連続的に変化しており、かつ、前記供給ガス流路用部材および前記酸性ガス分離層の厚さの変化方向が互いに異なる請求項1に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  4. 前記酸性ガス分離用スパイラル型モジュールは、両端面の外径の比率が、一方を1とした場合に他方が1.03〜1.3であるテーパー形状である請求項1に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  5. 前記供給ガス流路用部材の厚みが、前記中心筒の軸方向に連続的に変化しており、一方の端部の厚みと、他方の端部の厚みの差が20μm〜800μmである請求項2〜4のいずれか1項に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  6. 前記透過ガス流路用部材の厚みが、前記中心筒の軸方向に連続的に変化しており、一方の端部の厚みと、他方の端部の厚みの差が20μm〜800μmである請求項2、4および5のいずれか1項に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  7. 前記酸性ガス分離層の厚みが、前記中心筒の軸方向に連続的に変化しており、一方の端部の厚みと、他方の端部の厚みの差が10μm〜400μmである請求項3〜6のいずれか1項に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  8. 前記多孔質支持体と前記促進輸送膜との間に中間層を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
  9. 前記中間層がシリコーン樹脂である請求項8に記載の酸性ガス分離用スパイラル型モジュール。
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