JP6037965B2 - 酸性ガス分離モジュール - Google Patents
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Description
この特許文献1に開示される酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜として、いわゆる溶解拡散膜を用いる、溶解拡散型の酸性ガス分離モジュールである。この溶解拡散膜は、膜に対する酸性ガスと分離対象物質との溶解性、および、膜中の拡散性の差を利用して、原料ガスから酸性ガスを分離する。
この特許文献2に開示される酸性ガス分離モジュールは、酸性ガス分離膜として、いわゆる促進輸送膜を用いる、促進輸送型の酸性ガス分離モジュールである。この促進輸送膜は、膜中に酸性ガスと反応するキャリアを有し、このキャリアによって酸性ガスを膜の反対側に輸送することで、原料ガスから酸性ガスを分離する。
そのため、スパイラル型の酸性ガス分離モジュールでは、このテレスコープ現象を防止するため、特許文献3に示されるように、巻回された積層体の端面に、ガスの通過口を有する円盤状のテレスコープ防止板(テレスコープ防止部材)を設けている。
そのため、スパイラル型の酸性ガス分離モジュールでは、テレスコープ防止板を設けることでテレスコープ現象は抑制できるが、熱収縮によって、積層体の巻回物の端面が、中心筒の延在方向に凹凸が生じる、クビレ現象が生じてしまう場合が有る。中でも、促進輸送膜を用いる促進輸送型の酸性ガス分離モジュールは、高温かつ高湿度での条件が必須であるため、積層体を構成する部材の熱収縮が大きく、クビレ現象も顕著に生じる。
また、酸性ガス分離膜は、原料ガス中の酸性ガスと反応するキャリア、および、このキャリアを担持する親水性化合物を含有する促進輸送膜であるのが好ましい。
また、接着部材のガラス転移温度が80℃以上であるのが好ましい。
また、積層体は、酸性ガス分離膜を内側にして二つ折りにした酸性ガス分離層で、供給ガス流路用部材を挟んでなる挟持体に、透過ガス流路用部材を積層してなる構成を有するのが好ましい。
また、テレスコープ防止板のガス通過部は、テレスコープ防止板の幅方向に30%〜95%の開口率を有し、かつ、接着部材は、テレスコープ防止板の非ガス通過部の端面における30%以上の領域で、テレスコープ防止板と中心筒に巻き付けられた積層体巻回物の端面とを接着するのが好ましい。
さらに、テレスコープ防止板が、外環部、この外環部内に配置される、中心筒を挿通する内環部、および、外環部と内環部とを連結するリブを有するのが好ましい。
また、テレスコープ防止板の非ガス通過部であり、このリブの中心筒に巻き付けられた積層体巻回物の端面と対面する部分の全領域に、接着部材が設けられるのが好ましい。
さらに、および内環部は、テレスコープ防止板の非ガス通過部であり、このリブおよび内環部の中心筒に巻き付けられた積層体巻回物の端面と対面する部分の全領域に、接着部材が設けられるのが好ましい。
そのため、本発明によれば、高温かつ高湿度での使用が必要条件となる促進輸送型の酸性ガス分離モジュールであっても、クビレ現象に起因して酸性ガス分離膜の膜欠陥が生じることを防止して、長期に渡って所定の性能を発現できる。
図1に示すように、酸性ガス分離モジュール10は、基本的に、中心筒12と、酸性ガス分離膜(促進輸送膜20a)を有する積層体14と、テレスコープ防止板16とを有して構成される。なお、以下の説明では、酸性ガス分離モジュールを、単に、分離モジュールとも言う。
分離モジュール10は、例えば、一酸化炭素、炭酸ガス(CO2)、水(水蒸気)および水素を含有する原料ガスGから、酸性ガスGcとして炭酸ガスを分離するものである。
ここで、後に詳述するが、本発明の分離モジュール10においては、テレスコープ防止板16の非ガス通過部と、中心筒12に巻回された積層体14の巻回物の端面とは、接着部材40によって接着されている。
また、積層体14によって原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、中心筒12から排出され、酸性ガスを分離された原料ガスG(以下、便宜的に残余ガスGrとする)は、スパイラル積層体14aの供給側とは逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16(同前)を通って分離モジュール10の外部に排出される。
原料ガスGから分離された酸性ガスGcは、後述する透過ガス流路用部材26を通って、貫通孔12aから中心筒12内に至り、中心筒12の開放端12bから排出される。
中心筒12の開口率を上記範囲とすることにより、効率的に酸性ガスGcを収集することができ、また、中心筒12の強度を高め、加工適性を十分に確保できる。
なお、図1において、符号30は、酸性ガス分離層20と透過ガス流路用部材26とを接着し、かつ、積層体14同士を接着すると共に、透過ガス流路用部材26における酸性ガスGcの流路を、中心筒12側が開口するエンベロープ状にする接着剤層30である。
以下、便宜的に、この積層体14の巻回に対応する方向を周方向(矢印y方向)、周方向と直交する方向を幅方向(矢印x方向)とする。なお、積層体14は、一般的に、矩形のシート状物であるが、周方向は、通常、積層体14(酸性ガス分離層20、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26)の長手方向になる。
積層体14の積層数は、分離モジュール10に要求される処理速度や処理量、分離モジュール10の大きさ等に応じて、適宜、設定すればよい。ここで、積層する積層体14の数は、50以下が好ましく、45以下がより好ましく、40以下が特に好ましい。積層体14の積層数を、この数とすることで、中心筒12への積層体14の巻回が容易になり、加工性を向上できる。
図示例において、積層体14は、二つ折りにした酸性ガス分離層20の間に透過ガス流路用部材24を挟み込んで挟持体36とし(図4参照)、この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層してなる構成を有する。この構成については、後に詳述する。
図2に概念的に示すように、積層体14の幅方向の端面に供給された原料ガスGは、供給ガス流路用部材24を幅方向に流れる。この流れの中で、酸性ガス分離層20(促進輸送膜20a)に接触した酸性ガスGcは、原料ガスGから分離されて、酸性ガス分離層20を積層体14の積層方向に通過して(促進輸送膜20aのキャリアによって積層方向に輸送されて)、透過ガス流路用部材26に流入する。
透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、透過ガス流路用部材26を周方向(矢印y方向)に流れて、中心筒12に至り、中心通12の貫通孔12aから中心筒12内に流入する。中心筒12内に流入した酸性ガスGcは、中心筒12を幅方向に流れて、開放端12bから排出される。
また、酸性ガスGcを除去された残余ガスGrは、供給ガス流路用部材24を幅方向に流れて、スパイラル積層体14aの逆側の端面から排出され、テレスコープ防止板16(その開口部16d)を通って、分離モジュール10の外部に排出される。
このような供給ガス流路用部材24は、前述のように二つ折りされた酸性ガス分離層20のスペーサとして機能して、原料ガスGの流路を構成する。また、供給ガス流路用部材24は、原料ガスGを乱流にするのが好ましい。この点を考慮すると、供給ガス流路用部材24は、ネット状(メッシュ状)の部材が好ましい。
一例として、紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙、合成紙などの紙材料、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、アラミド、ポリカーボネートなどの樹脂材料、金属、ガラス、セラミックスなどの無機材料等が、好適に例示される。
樹脂材料としては、具体的には、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリプロピレン(PP)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフッ化ビニリデン等が、好適に例示される。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
しかしながら、本発明の分離モジュール10は、積層体14の構成部材の熱収縮に起因してスパイラル積層体14aの端面に凹凸が生じる、クビレ現象を好適に抑制できる。そのため本発明の分離モジュール10は、高温かつ高湿度での使用が必要条件であり、クビレ現象が生じ易い促進輸送型には、より好適に利用される。
促進輸送型の分離モジュールは、高温かつ高湿での使用が必要条件である。従って、促進輸送膜20aは、高温下(例えば、100〜200℃)でも、酸性ガスGcを選択的に透過させる機能を有する。また、原料ガスGが水蒸気を含んでも、水蒸気を親水性化合物が吸湿して促進輸送膜20aが水分を保持することで、さらにキャリアが酸性ガスGcを輸送し易くなるので、溶解拡散膜を用いる場合に比べて分離効率が高まる。
促進輸送膜20aの膜面積を上記範囲とすることにより、膜面積に対して効率よく酸性ガスGcを分離でき、また、加工性も良好になる。
促進輸送膜20aの周方向の長さを、上記範囲とすることにより、膜面積に対して効率よく酸性ガスGcを分離することができ、さらに、積層体14を巻回する際の巻きずれの発生が抑制され、加工性が容易となる。
なお、促進輸送膜の幅も、分離モジュール10の幅方向のサイズに応じて、適宜、設定すれば良い。
促進輸送膜20aの厚さを、上記範囲にすることにより、十分なガス透過性と分離選択性とを実現できる。
このような親水性化合物としては、親水性ポリマーが例示される。
具体的には、親水性化合物は、生理食塩液の吸水量が0.5g/g以上の親水性を有することが好ましく、同1g/g以上の親水性を有することがより好ましく、同5g/g以上の親水性を有することがさらに好ましく、同10g/g以上の親水性を有することが特に好ましく、さらには、同20g/g以上の親水性を有することが最も好ましい。
親水性化合物の重量平均分子量を20,000以上とすることで、安定して十分な膜強度を有する促進輸送膜20aを得ることができる。
特に、親水性化合物が架橋可能基として−OHを有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が30,000以上であるのが好ましい。この際には、重量平均分子量は更に好ましくは40,000以上であり、より好ましくは、50,000以上である。また、親水性化合物が架橋可能基として−OHを有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、6,000,000以下であることが好ましい。
また、架橋可能基として−NH2を有する場合には、親水性化合物は、重量平均分子量が10,000以上であるものが好ましい。この際には、親水性化合物の重量平均分子量は、15,000以上であるのがより好ましく、20,000以上であるのが特に好ましい。また、親水性化合物が、架橋可能基として−NH2を有する場合には、製造適性の観点から、重量平均分子量は、1,000,000以下であるのが好ましい。
なお、親水性化合物の重量平均分子量は、例えば、親水性化合物としてPVAを用いる場合には、JIS K 6726に準じて測定した値を用いればよい。また、市販品を用いる場合には、カタログ、仕様書などで公称される分子量を用いればよい。
具体的には、ヒドロキシ基(−OH)、アミノ基(−NH2)、塩素原子(−Cl)、シアノ基(−CN)、カルボキシ基(−COOH)、および、エポキシ基等が例示される。これらの中でも、アミノ基およびヒドロキシ基が好ましく例示される。さらに、最も好ましくは、キャリアとの親和性およびキャリア担持効果の観点から、ヒドロキシ基が例示される。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体におけるポリアクリル酸の含有率は、例えば1〜95モル%、好ましくは2〜70モル%、より好ましくは3〜60モル%、特に好ましくは5〜50モル%である。
なお、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体において、ポリアクリル酸は、塩であってもよい。この際におけるポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩や有機アンモニウム塩等が例示される。
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(ナトリウム塩)も、市販品として入手可能である。例えば、クラストマーAP20(クラレ社製)が例示される。
具体的には、0.5〜50質量%が好ましく、0.75〜30質量%がより好ましく、1〜15質量%が特に好ましい。親水性化合物の含有量を、この範囲とすることにより、上述のバインダとしての機能および水分保持機能を、安定して、好適に発現できる。
好ましくは光架橋もしくは熱架橋であり、最も好ましくは熱架橋である。
架橋剤としては、親水性化合物と反応し、熱架橋や光架橋等の架橋をし得る官能基を2以上有する架橋剤を含むものが選択される。また、形成された架橋構造は、耐加水分解性の架橋構造となるのが好ましい。
このような観点から、促進輸送膜20aの形成に利用される架橋剤としては、エポキシ架橋剤、多価グリシジルエーテル、多価アルコール、多価イソシアネート、多価アジリジン、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒド、多価アミン、有機金属系架橋剤などが好適に例示される。より好ましくは多価アルデヒド、有機金属系架橋剤およびエポキシ架橋剤であり、中でも、アルデヒド基を2以上有するグルタルアルデヒドやホルムアルデヒドなどの多価アルデヒドが好ましい。
また、エポキシ架橋剤に類似する化合物として、環状エーテルを有するオキセタン化合物も、また、好ましく使用される。オキセタン化合物としては、官能基を2以上有する多価グリシジルエーテルが好ましく、市販品としては、例えばナガセケムテックス社製EX−411、EX−313、EX−614B、EX−810、EX−811、EX−821、EX−830、などが例示される。
多価アジリジンとしては、例えば、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アシリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等が例示される。
多価アルデヒドとしては、例えば、グルタルアルデヒド、グリオキサール等が例示される。
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等が例示される。
さらに、有機金属系架橋剤としては、例えば、有機チタン架橋剤、有機ジルコニア架橋剤等が例示される。
また、親水性化合物として、ポリビニールアルコール−ポリアクリル酸共重合体を用いる場合は、エポキシ架橋剤やグルタルアルデヒドが好ましく利用される。
また、親水性化合物として、重量平均分子量が10,000以上のポリアリルアミンを用いる場合には、この親水性化合物と反応性が良好で、加水分解耐性も優れている架橋構造が形成可能である点から、エポキシ架橋剤、グルタルアルデヒド、および、有機金属架橋剤が好ましく利用される。
さらに、親水性化合物として、ポリエチレンイミンやポリアリルアミンを用いる場合には、エポキシ架橋剤が好ましく利用される。
具体的には、親水性化合物が有する架橋可能基量100質量部に対して0.001〜80質量部が好ましく、0.01〜60質量部がより好ましく、0.1〜50質量部が特に好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲とすることにより、架橋構造の形成性が良好であり、かつ、形状維持性に優れる促進輸送膜を得ることができる。
また、親水性化合物が有する架橋可能基に着目すれば、架橋構造は、親水性化合物が有する架橋可能基100molに対し、架橋剤0.001〜80molを反応させて形成されたものであるのが好ましい。
キャリアは、酸性ガス(例えば、炭酸ガス)と親和性を有し、かつ、塩基性を示す各種の水溶性の化合物である。具体的には、アルカリ金属化合物、窒素含有化合物および硫黄酸化物等が例示される。
なお、キャリアは、間接的に酸性ガスと反応するものでも、キャリア自体が、直接、酸性ガスと反応するものでもよい。
前者は、供給ガス中に含まれる他のガスと反応し、塩基性を示し、その塩基性化合物と酸性ガスが反応するものなどが例示される。より具体的には、スチーム(水分)と反応してOH-を放出し、そのOH-がCO2と反応することで、促進輸送膜20a中に選択的にCO2を取り込むことができる化合物であり、例えば、アルカリ金属化合物である。
後者は、キャリア自体が塩基性であるようなもので、例えば、窒素含有化合物や硫黄酸化物である。
アルカリ金属重炭酸塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、および、炭酸水素セシウム等が例示される。
さらに、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、および、水酸化セシウム等が例示される。
これらの中でも、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、また、酸性ガスとの親和性が良いという観点から、水に対する溶解度の高いカリウム、ルビジウム、および、セシウムを含む化合物が好ましい。
促進輸送膜20a中に2種以上のキャリアが存在することにより、膜中で異なるキャリアを距離的に離間させることができる。これにより、複数のキャリアの潮解性の違いによって、促進輸送膜20aの吸湿性に起因して、製造時等に促進輸送膜20a同士や、促進輸送膜20aと他の部材とが貼着すること(ブロッキング)を、好適に抑制できる。
また、ブロッキングの抑制効果を、より好適に得られる等の点で、2種以上のアルカリ金属化合物をキャリアとして用いる場合には、潮解性を有する第1化合物と、第1化合物よりも潮解性が低く比重が小さい第2化合物を含むのが好ましい。一例として、第1化合物としては炭酸セシウムが、第2化合物としては炭酸カリウムが、例示される。
さらに、硫黄化合物としては、シスチン、システインなどのアミノ酸類、ポリチオフェン、ドデシルチオール等が例示される。
促進輸送膜20aにおけるキャリアの含有量を、上記範囲とすることにより、促進輸送膜20aを形成するための組成物(塗料)において、塗布前の塩析を好適に防ぐことができ、さらに、促進輸送膜20aが、酸性ガスの分離機能を確実に発揮できる。
その他、必要に応じて、触媒、保湿(吸湿)剤、補助溶剤、膜強度調整剤、欠陥検出剤等を用いてもよい。
多孔質支持体20bは、酸性ガス透過性を有し、かつ、促進輸送膜20aを形成するための塗布組成物の塗布が可能(塗膜の支持が可能)であり、さらに、形成された促進輸送膜20aを支持するものである。
多孔質支持体20bの形成材料は、上記機能を発現できる物であれば、公知の各種の物が利用可能である。
なお、多孔質支持体20bが単層である場合には、形成材料としては、以下に多孔質膜および補助支持膜で例示する各種の材料が利用可能である。
多孔質膜は、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない材料からなることが好ましい。このような多孔質膜としては、具体的には、ポリスルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、セルロースなどのメンブレンフィルター膜、ポリアミドやポリイミドの界面重合薄膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜等が例示される。
中でも、PTFEや高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜は、高い空隙率を有し、酸性ガス(特に炭酸ガス)の拡散阻害が小さく、さらに、強度、製造適性などの観点から好ましい。その中でも、耐熱性を有し、また加水分解性の少ない等の点で、PTFEの延伸多孔膜が、好適に利用される。
また、多孔質膜は、孔の最大孔径が1μm以下であるのが好ましい。
さらに、多孔質膜の孔の平均孔径は、0.001〜10μmが好ましく、0.002〜5μmがより好ましく、0.005〜1μmが特に好ましい。多孔質膜の平均孔径をこの範囲とすることにより、後述する接着剤の塗布領域は接着剤を十分に染み込ませ、かつ、多孔質膜が酸性ガスの通過の妨げとなることを好適に防止できる。
この支持膜は、要求される強度、耐延伸性および気体透過性を満たすものであれば、各種の物が利用可能である。例えば、不織布、織布、ネット、および、平均孔径が0.001〜10μmのメッシュなどを、適宜、選択して用いることができる。
不織布、織布、編布を構成する繊維としては、耐久性や耐熱性に優れる、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、アラミド(商品名)などの改質ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素含有樹脂などからなる繊維が好ましい。メッシュを構成する樹脂材料も同様の素材を用いるのが好ましい。これらの材料のうち、安価で力学的強度の強いPPからなる不織布は、特に好適に例示される。
また、多孔質支持体20bを単層にする場合には、多孔質支持体20bの厚さは、30〜500μmが好ましい。
なお、多孔質支持体20bが、前述の多孔質膜と補助支持膜との積層体のように、積層体構造を有する場合には、熱収縮率は、個々の構成部材ではなく、多孔質支持体20bを全体で見た場合の熱収縮率である。
さらに、本発明によれば、酸性ガス分離層20(促進輸送膜20aおよび多孔質支持体20)と、透過ガス流路用部材26とを含めた全体(酸性ガス分離層20と透過ガス流路用部材26との積層体)を見た際に、130℃における熱収縮が2%以上あるものに対しても、特に好適に利用可能である。
すなわち、本発明の分離モジュール10は、高温かつ高湿度での使用が必要条件である促進輸送型の分離モジュールであっても、130℃における熱収縮が2%以上である、熱収縮の大きな材料も、多孔質支持体20b(多孔質膜および/または補助支持体)として、好適に利用可能であり、多孔質支持体20bの材料選択の自由度が高い。
すなわち、まず、親水性化合物、キャリア、および、必要に応じて添加するその他の成分を、それぞれ適量で水(常温水または加温水)に添加して、十分、攪拌することで、促進輸送膜20aとなる塗布組成物を調製する。
この組成物の調製では、必要に応じて、攪拌しつつ加熱することで、各成分の溶解を促進させてもよい。また、親水性化合物を水に加えて溶解した後、キャリアを徐々に加えて攪拌することで、親水性化合物の析出(塩析)を効果的に防ぐことができる。
ここで、組成物の塗布および乾燥は、所定のサイズに切断されたカットシート状の多孔質支持体20bに行う、いわゆる枚葉式で行ってもよい。
好ましくは、酸性ガス分離層20の作製は、いわゆるロール・トゥ・ロール(以下、RtoRとも言う)によって行う。すなわち、長尺な多孔質支持体20bを巻回してなる送り出しロールから、多孔質支持体20bを送り出して、長手方向に搬送しつつ、調製した塗布組成物を塗布し、次いで、塗布した塗布組成物(塗膜)を乾燥して、多孔質支持体20bの表面に促進輸送膜20aを形成してなる酸性ガス分離層20を作製し、作製した酸性ガス分離層20を巻き取る。
ここで、多孔質支持体20bの搬送速度が速すぎると、塗布組成物の塗膜の膜厚均一性が低下するおそれがあり、遅過ぎると生産性が低下する。この点を考慮すると、多孔質支持体20bの搬送速度は、0.5m/分以上が好ましく、0.75〜200m/分がより好ましく、1〜200m/分が特に好ましい。
具体的には、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等が例示される。
温風の風速は、ゲル膜反を迅速に乾燥させることができるともにゲル膜反が崩れない速度を、適宜、設定すればよい。具体的には、0.5〜200m/分が好ましく、0.75〜200m/分がより好ましく、1〜200m/分が特に好ましい。
温風の温度は、多孔質支持体20bの変形などが生じず、かつ、ゲル膜反を迅速に乾燥させることができる温度を、適宜、設定すればよい。具体的には、膜面温度で、1〜120℃が好ましく、2〜115℃がより好ましく、3〜110℃が特に好ましい。
また、塗膜の乾燥には、必要に応じて、多孔質支持体20bの加熱を併用してもよい。
前述のように、図示例において、積層体14は、酸性ガス分離層20を促進輸送膜20aを内側にして二つ折りにして、供給ガス流路用部材24を挟み込んだ挟持体36を有する。この挟持体36に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着剤層30で接着することにより、1つの積層体14が構成される。
透過ガス流路用部材26は、積層体14間でスペーサとして機能して、積層体14の巻回中心(内側)に向かって中心筒12の貫通孔12aに至る、原料ガスGから分離した酸性ガスGcの流路を構成する。また、この酸性ガスGcの流路を適正に形成するために、後述する接着剤層30が浸透する必要が有る。この点を考慮すると、透過ガス流路用部材26は、供給ガス流路用部材24と同様、ネット状(メッシュ状)の部材が好ましい。
具体的には、100〜1000μmが好ましく、150〜950μmがより好ましく、200〜900μmが特に好ましい。
そのため、透過ガス流路用部材26は、流れるガスに対しての抵抗が少ないのが好ましい。具体的には、空隙率が高く、圧をかけたときの変形が少なく、かつ、圧損が少ないのが好ましい。
また、圧をかけたときの変形は、引張試験を行ったときの伸度で近似できる。具体的には、10N/10mm幅の荷重をかけたときの伸度が5%以内であることが好ましく、4%以内であることがより好ましい。
さらに、圧損は、一定の流量で流した圧縮空気の流量損失で近似できる。具体的には、15cm角の透過ガス流路用部材26に、室温で15L/分の空気を流した際に、流量損失が7.5L/分以内であるのが好ましく、7L/分以内であるのがより好ましい。
また、供給ガス流路用部材24による促進輸送膜20aの損傷を防止するために、酸性ガス分離層20を二つ折りにした谷部に、二つ折りにしたシート状の保護部材(例えば、カプトンテープなど)を配置するのが好ましい。
ここで、接着剤30a(すなわち、接着剤層30)は、図4に示すように、幅方向(矢印x方向)の両端部近傍で、周方向(矢印y方向)の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に塗布する。
図5に示すように、この面の接着剤30aも、先と同様、幅方向の両端部近傍で、周方向の全域に延在して帯状に塗布し、さらに、折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に塗布する。
さらに、先と同様、積層した挟持体36の上面に、図5に示すように接着剤30aを塗布して、次いで、図6に示すように、その上に、透過ガス流路用部材26を積層して、接着し、2層目の積層体14を積層する。
なお、この際においては、図7に示すように、積層体14は、上方に行くにしたがって、次第に、周方向に中心筒12から離間するように積層するのが好ましい。これにより、中心筒12への積層体14の巻回(巻き付け)を容易に行い、かつ、各透過ガス流路用部材26の中心筒12側の端部もしくは端部近傍が、好適に中心筒12に当接できる。
次いで、図7に矢印ywで示すように、積層した積層体14を巻き込むようにして、積層体14を中心筒12に巻回する(巻き付ける)。
巻き終わったら、最外周(すなわち、最初に中心筒12に固定した最下層)の透過ガス流路用部材26に、ひき出す方向(巻き絞める方向)の張力を掛けた状態で、所定時間、維持して、接着剤30a等を乾燥させる。
所定時間が経過したら、最外周の透過ガス流路用部材26を1周した位置で超音波融着等によって固定し、固定位置よりも外方の余分な透過ガス流路用部材26を切断して、積層した積層体14を中心筒に巻回してなるスパイラル積層体14aを完成する。
また、接着剤層30(接着剤30a)は、前述のように、幅方向の両端部近傍で、周方向の全域に延在して帯状に形成される。さらに、接着剤層30は、この幅方向両端部近傍の接着剤30を幅方向に横切るように、中心筒12側となる折り返し部と逆側の端部近傍で幅方向の全域に延在して帯状に形成される。すなわち、接着剤層30は、中心筒12側を開放して、透過ガス流路用部材26および多孔質支持体20bの外周を囲むように形成される。
これにより、積層体14の透過ガス流路用部材26には、中心筒12側が開放するエンベロープ状の流路が形成される。従って、酸性ガス分離層20を透過して透過ガス流路用部材26に流入した酸性ガスGcは、外部に流出することなく、透過ガス流路用部材26内を中心筒12に向かって流れ、貫通孔12aから中心筒12内に流入する。
一例として、エポキシ樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が好適に例示される。
前述のように、テレスコープ防止板16は、スパイラル積層体14aが原料ガスGによって押圧されて、供給側の端面が入れ子状に押し込まれ、逆側の端面が入れ子状に突出する、いわゆるテレスコープ現象を防止するための部材である。
図示例において、テレスコープ防止板は、円環状の外環部16aと、外環部16aの中に中心を一致して配置される円環状の内環部16bと、外環部16aおよび内環部16bを連結して固定するリブ(スポーク)16cとを有して構成される。前述のように、積層体14が巻回される中心筒12は、内環部16bを挿通する。
図示例において、リブ16cは、外環部16aおよび内環部16bの中心から、等角度間隔で放射状に設けられおり、外環部16aと内環部16bとの間で、かつ、各リブ16cの間隙が、原料ガスGもしくは残余ガスGrが通過する開口部16dとなっている。
これに対し、本発明の分離モジュール10は、図8に概念的に示すように、テレスコープ防止板16の非ガス通過部とスパイラル積層体14aの端面とを、接着部材40によって接着してなる構成を有する。本発明の分離モジュール10は、このような構成を有することにより、積層体14の構成部材の熱収縮に起因するクビレ現象の発生を抑制できる。
テレスコープ防止板16は、このテレスコープ現象を抑制するために設けられる部材であり、テレスコープ防止板16を有することにより、吐出しようとする積層体14を押さえ込んで、テレスコープ現象を抑制できる。
しかしながら、原料ガスGの処理を進めるにしたがって、積層体14を構成する部材の熱収縮によって、積層体14を積層して巻回してなるスパイラル積層体の端面に、部分的に幅方向の凹凸が生じる、クビレ現象が発生してしまう場合が有る。特に、図示例の分離モジュール10のように、促進輸送型の分離モジュールは、高温かつ高湿度での使用が必要条件となるため、積層体14を構成する促進輸送膜20a、多孔質支持体20b、供給ガス流路用部材24および透過ガス流路用部材26の熱収縮によって、クビレ現象が顕著に発生してしまう。
そのため、スパイラル型の分離モジュール、中でも特に促進輸送型の分離モジュールでは、このクビレ現象に起因する促進輸送膜の膜欠陥によって、分離モジュールの性能が短期間で低下してしまうという問題が有る。
そのため、本発明の分離モジュール10では、積層体14の構成部材が加熱されても、接着部材40で接着されたテレスコープ防止板16が、積層体14を幅方向に支えるので(固定しているので)、積層体14の熱収縮を抑制できる。
従って、本発明によれば、たとえ高温かつ高湿度での使用が必要条件である促進輸送型の分離モジュール10であっても、クビレ現象の発生抑制することができ、クビレ現象に起因する促進輸送膜20aの膜欠陥の発生を抑制して、長期に渡って所定の性能を発揮する分離モジュールが実現できる。
好ましくは、スパイラル積層体14aの両端部において、スパイラル積層体14aを構成する全ての積層体14で、少なくとも1箇所をテレスコープ防止板16に接着する。これにより、全ての積層体14に対応して、クビレ現象を抑制できる。
例えば、図示例の分離モジュール10であれば、図8に概念的に示すように、全てのリブ16c(あるいはさらに内環部16b)において、スパイラル積層体14aの端面と対面する全領域を、接着部材40によって接着するのが好ましい。
また、テレスコープ防止板16とスパイラル積層体14aの端面とを接着する接着部材40が、中心筒12とテレスコープ防止板16とを接着する接着手段を兼ねてもよい。
ここで、テレスコープ防止板16とスパイラル積層体14aとの接着面積が大きいほど、クビレ現象の抑制効果が大きくなる。その反面、この接着面積を大きくすると、接着のためにテレスコープ防止板16の開口率が低くなってしまい、分離モジュール10の処理能力が低下してしまう可能性も有る。
さらに、テレスコープ防止板16の開口率を30〜95%として、かつ、テレスコープ防止板16の非ガス通過部の30%以上の領域で、テレスコープ防止板16とスパイラル積層体14aの端面とを接着するのが、より好ましい。
このような構成とすることにより、原料ガスGの導入面積および残余ガスGrの排出面積を十分に確保して分離モジュールとして十分な性能を発揮でき、かつ、熱収縮によるクビレ現象を好適に抑制して、促進輸送膜20aの膜損傷を防止できる。言い換えれば、この構成を有することにより、分離モジュール10の性能と、促進輸送膜20aの膜損傷の防止すなわち分離モジュールの長寿命化とを、バランス良く実現できる。
ここで、接着部材40は、Tg(ガラス転移点)が40℃以上、特に、60℃以上であるのが好ましい。接着部材40のTgを40℃以上とすることにより、高温かつ高湿度な原料ガスを処理する場合でも好適にクビレ現象を抑制できる等の点で好ましい。
従って、テレスコープ防止板16の幅方向の形状は、図示例のように、外環部16aおよび内環部16bと、両者を連結するリブ16cを8本、等角度間隔で設けた形状(幅方向の面形状)以外にも、スパイラル型の分離モジュールに用いられる、各種の形状が利用可能である。
例えば、外環部16aと内環部16bとを連結するリブを3本あるいは5本、放射状に等角度間隔で設けた形状、同リブを格子状に設けた形状、パンチングメタルのように貫通孔を多数有する形状なども、好適に利用可能である。
例えば、内環部16bが、スパイラル積層体14aと逆側に突出して筒部を有し、この筒部に、中心筒12を挿入(嵌入)する構成であってもよい。また、この筒部に、分離モジュール10の固定や連結等に用いられるリブやフランジを設けてもよい。
さらに、外環部16aに、スパイラル積層体14a側に突出する円筒部を設け、この筒部にスパイラル積層体14aを挿入する構成であってもよい。この際には、後述する被覆層18は、この円筒部を含んで、スパイラル積層体14aを被覆するのが好ましい。
具体的には、金属材料(例えば、ステンレス(SUS)、アルミニウム、アルミニウム合金、錫、錫合金等)、樹脂材料(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ナイロン12、ナイロン66、ポリサルフィン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル・ブタジエン・スチレン樹脂、アクリル・エチレン・スチレン樹脂、エポキシ樹脂、ニトリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等)、およびこれら樹脂の繊維強化プラスチック(例えば繊維としては、ガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、アラミド繊維などで、特に長繊維が好ましい。具体例としては、例えばガラス長繊維強化ポリプロピレン、ガラス長繊維強化ポリフェニレンサルファイドなど)、並びに、セラミックス(例えばゼオライト、アルミナなど)等が好適に例示される。
なお、樹脂を用いる際には、ガラス繊維等で強化した樹脂を用いてもよい。
一例として、FRP製の線材に、前述の接着部材40や接着剤層30に利用される接着剤を含浸して、接着剤を含浸した線材を、隙間無く、必要に応じて多重に、スパイラル積層体14aに巻き付けてなる被覆層18が例示される。
なお、この際においては、必要に応じて、被覆層18とスパイラル積層体14aとの間に、スパイラル積層体14aへの接着剤の染み込みを防止するためのカプトンテープ等のシート状部材を設けてもよい。
<酸性ガス分離層の作製>
ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体(クラレ社製 クラストマーAP-20)を2.4質量%、架橋剤(和光純薬社製 25質量%グルタルアルデヒド水溶液)を0.01質量%、含む水溶液を調製した。この水溶液に、1M塩酸をpH1.7になるまで添加して、架橋させた。
架橋後、キャリアとしての、40%炭酸セシウム水溶液(稀産金属社製)を炭酸セシウム濃度が6.0重量%になるように添加した。すなわち、本例では、炭酸セシウムが促進輸送膜20aのキャリアとなる。
さらに、界面活性剤(日油社製 1質量%ラピゾールA−90)を0.003質量%、添加して、塗布組成物を調製した。
まず、図3に示すように、SUS製の中心筒12に、透過ガス流路用部材26(厚さ0.5mmのトリコット編みのエポキシ含浸ポリエステル)を固定した。固定手段34は、SUSと樹脂を接着可能な接着剤を用いた。
次いで、二つ折りした酸性ガス分離層20に、供給ガス流路用部材24(厚さ0.5mmのポリプロピレン製ネット)を挟み込んで、挟持体36を作製した。
次いで、接着剤30aを塗布した側を下方に向けて、図5に示すように、挟持体36と中心筒12に固定した透過ガス流路用部材26とを積層し、接着した。
次いで、透過ガス流路用部材26に積層した挟持体36の酸性ガス分離層20の上面に、図5に示すように、幅方向の両端部近傍に、周方向の全域に延在し、かつ、周方向の折り返し部と逆側の端部近傍に、幅方向の全域に延在して、接着剤30aを塗布した。さらに、接着剤30aを塗布した酸性ガス分離層20の上に、図6に示すように、透過ガス流路用部材26を積層して、接着することにより、1層目の積層体14を形成した。
さらに、上記2層目と同様にして、2層目の積層体14の上に、3層目の積層体14を形成した。
次いで、図7の矢印yx方向に中心筒12を回転することで、積層した3層の積層体14を巻き込むようにして中心筒12に多重に巻き付け、スパイラル積層体14aとした。
その際、テレスコープ防止板16のリブ16cのスパイラル積層体14a側に、エポキシ系樹脂からなる接着剤(ヘンケルジャパン社製 E120HP)を塗布し、テレスコープ防止板16の非ガス通過部とスパイラル積層体14aの端面とが対面する領域の全域(両者が対面する領域の100%)で、テレスコープ防止板16とスパイラル積層体14aの端面とを接着部材40によって接着した。
さらに、テレスコープ防止板16の周面およびスパイラル積層体14aの周面に、FPR樹脂テープを巻き付けて、封止することにより、被覆層18を形成して、直径4cm、幅30cmの図1に示されるような分離モジュール10を作成した。なお、被覆層18の厚さは5mmとした。
テレスコープ防止板16のリブ16cとスパイラル積層体14aとを接着する接着剤を、別のエポキシ系樹脂からなる接着剤(スリーボンド社製 TB2270C)に変更した以外(実施例2);
同接着剤を、別のエポキシ系樹脂からなる接着剤(上海雄潤樹脂有限公司製 327,328)に変更した以外(実施例3);
同接着剤を、別のエポキシ系樹脂からなる接着剤(ダイゾー社製 NB3000)に変更した以外(実施例4); は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。
テレスコープ防止板16とスパイラル積層体14aの端面との接着を、テレスコープ防止板16の非ガス通過部とスパイラル積層体14aの端面とが対面する領域の80%にした以外(実施例5);
テレスコープ防止板16とスパイラル積層体14aの端面との接着を、テレスコープ防止板16の非ガス通過部とスパイラル積層体14aの端面とが対面する領域の70%にした以外(実施例6); は、実施例1と同様にして分離モジュール10を作製した。
テレスコープ防止板16のリブ16cとスパイラル積層体14aとの接着を行わない以外は、実施例1と同様にして分離モジュールを作製した。
このようにして作製した実施例1〜6および比較例の各分離モジュールに、原料ガスGとして、H2:CO2:H2O=45:5:50(分圧比)の混合ガスを、流量2.2L/min、温度130℃、全圧301.3kPaの条件で供給した。また、中心筒12の原料ガス供給側の端部に、スイープガス供給用の貫通孔を形成して、ここから、スイープガスとして、流量0.6L/minのArガスを供給した。
原料ガスの供給を開始して、1時間経過した時点と、50時間経過した時点とで、分離モジュールを透過してきたガス(酸性ガスGcおよび残余ガスGr)をガスクロマトグラフで分析し、CO2透過速度(P(CO2))およびCO2/H2分離係数(α)の変化率を算出した(変化率=[(1時間経過時点の値−50時間経過時点の値)/1時間経過時点の値]×100)。
1時間経過後と50時間経過後とにおける変化率が5%未満の場合をA;
1時間経過後と50時間経過後とにおける変化率が5%以上10%未満の場合をB;
1時間経過後と50時間経過後とにおける変化率が10%以上の場合をC; と評価した。
結果を、下記表に示す。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
12 中心筒
14 積層体
14a スパイラル積層体
16 テレスコープ防止板
16a 外環部
16b 内環部
16c リブ
16d 開口部
18 被覆層
20 酸性ガス分離層
20a 促進輸送膜
20b 多孔質支持体
24 供給ガス流路用部材
26 透過ガス流路用部材
30 接着剤層
30a 接着剤
34 固定手段
36 挟持体
40 接着部材
Claims (9)
- 管壁に貫通孔が形成された中心筒、
原料ガスから酸性ガスを分離して輸送する酸性ガス分離膜を有し、前記中心筒に巻き付けられる、少なくとも1つの積層体、
前記中心筒の延在方向の両端部において、前記中心筒に巻き付けられた積層体の端面に設けられた、ガス通過部および非ガス通過部を有するテレスコープ防止板、および、
前記中心筒に巻き付けられた積層体巻回物の端面の少なくとも一部と、前記テレスコープ防止板の非ガス通過部の少なくとも一部とを接着する接着部材を有し、
前記テレスコープ防止板のガス通過部は、前記テレスコープ防止板の前記中心筒の延在方向に平行な幅方向に20%〜95%の開口率を有し、かつ、前記接着部材は、前記テレスコープ防止板の非ガス通過部の端面における20%以上の領域で、前記テレスコープ防止板と前記中心筒に巻き付けられた前記積層体巻回物の端面とを接着することを特徴とする酸性ガス分離モジュール。 - 前記積層体は、前記酸性ガス分離膜を多孔質支持体で支持してなる酸性ガス分離層、前記酸性ガス分離膜に原料ガスを供給する供給ガス流路用部材、および、前記酸性ガス分離膜と多孔質支持体とを透過した酸性ガスが前記中心筒に向かって流れる透過ガス流路用部材を積層してなるものである請求項1に記載の酸性ガス分離モジュール。
- 前記酸性ガス分離膜は、前記原料ガス中の酸性ガスと反応するキャリア、および、このキャリアを担持する親水性化合物を含有する促進輸送膜である請求項1または2に記載の酸性ガス分離モジュール。
- 前記接着部材のガラス転移温度が80℃以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
- 前記積層体は、前記酸性ガス分離膜を内側にして二つ折りにした酸性ガス分離層で、前記供給ガス流路用部材を挟んでなる挟持体に、前記透過ガス流路用部材を積層してなる構成を有する請求項2〜4のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
- 前記テレスコープ防止板のガス通過部は、前記テレスコープ防止板の前記幅方向に30%〜95%の開口率を有し、かつ、前記接着部材は、前記テレスコープ防止板の非ガス通過部の端面における30%以上の領域で、前記テレスコープ防止板と前記中心筒に巻き付けられた前記積層体巻回物の端面とを接着する請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
- 前記テレスコープ防止板が、外環部、この外環部内に配置される、前記中心筒を挿通する内環部、および、前記外環部と内環部とを連結するリブを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸性ガス分離モジュール。
- 前記リブは、前記テレスコープ防止板の非ガス通過部であり、このリブの前記中心筒に巻き付けられた前記積層体巻回物の端面と対面する部分の全領域に、前記接着部材が設けられる請求項7に記載の酸性ガス分離モジュール。
- 前記リブおよび前記内環部は、前記テレスコープ防止板の非ガス通過部であり、このリブおよび内環部の前記中心筒に巻き付けられた前記積層体巻回物の端面と対面する部分の全領域に、前記接着部材が設けられる請求項7に記載の酸性ガス分離モジュール。
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