JP2016135830A - 摩擦材 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境への負荷が少なく、摩擦特性、特に耐フェード性と耐摩耗性が向上された摩擦材を提供する。
【解決手段】繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含む摩擦材であって、銅の含有量が銅元素換算で0.5質量%以下であり、炭酸リチウムを含む摩擦材。前記炭酸リチウムの含有量が0.1〜10質量%であり、前記炭酸リチウムの平均粒子径が0.1〜300μmである摩擦材。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車、鉄道車両、産業機械等に用いられるブレーキ用摩擦材に関する。
自動車等に使用されるディスクブレーキやドラムブレーキなどのブレーキ、またはクラッチなどに使用される摩擦材は、一般的に、摩擦作用を与え且つその摩擦性能を調整する摩擦調整材、補強作用を担う繊維基材、これらを一体化し強度を与える結合材等の材料からなっている。摩擦材は、その相手材と摩擦係合し、運動エネルギーを熱エネルギーに変える役割を担うため、優れた耐熱性、耐摩耗性、高い摩擦係数、摩擦係数の安定性、さらには鳴きが発生しにくいこと(鳴き特性)などが要求される。
また、摩擦材の機械的強度や耐熱性を向上させるため、摩擦材に金属繊維や金属粒子を配合することが行われている。その一方で、環境に悪影響を与えないために重金属である銅成分を実質的に含まない摩擦材が求められている。
特許文献1には、銅成分を含まないNAO材の摩擦材として、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムから選択される1種以上を摩擦材組成物全量に対し0.2〜5.0重量%含有した摩擦材が記載されている。
特許文献2には、アルカリ金属塩として、炭酸ナトリウム塩又は炭酸カリウム塩を0.2〜5重量%含有する摩擦材組成物が記載されている。
また、特許文献3には、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム等から選ばれる補助材を含むセミメタリック摩擦材が記載されている。
特開2014−25014号公報 特開2001−107027号公報 特開昭59−24778号公報
しかしながら特許文献1の摩擦材では、耐フェード性は向上するが耐摩耗性は向上しない。さらに、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムは潮解性を有するため、空気中の水分を吸収して液体になる可能性がある。また特許文献2の摩擦材では、銅繊維等の銅成分を含み、炭酸ナトリウム塩や炭酸カリウム塩を含有することにより防錆効果が得られるが、効き(摩擦係数)や耐摩耗性は向上しない。特許文献3には、実施例で開示されたのは補助材として炭酸亜鉛と炭酸マグネシウムを含有した摩擦材のみであり、また、これらを含有した摩擦材では耐フェード性や耐摩耗性が不十分であった。
したがって本発明は、環境への負荷が少なく、摩擦特性、特に耐フェード性と耐摩耗性が向上した摩擦材を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討の結果、炭酸リチウムを配合した摩擦材によって、銅成分を含まなくても、摩擦材の耐フェード性と耐摩耗性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の摩擦材に関するものである。
(1) 繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含む摩擦材であって、銅の含有量が銅元素換算で0.5質量%以下であり、炭酸リチウムを含む摩擦材。
(2) 前記炭酸リチウムの含有量が0.1〜10質量%である上記(1)に記載の摩擦材。
(3) 前記炭酸リチウムの平均粒子径が0.1〜300μmである、上記(1)または(2)に記載の摩擦材。
本発明に係る摩擦材は、環境に悪影響を与える可能性のある銅成分の配合を実質的に必要とせず、摩擦材の耐フェード性と耐摩耗性を向上させることができる。
本発明に係る摩擦材は炭酸リチウムを含有する。このことにより、摩擦材の耐フェード性と耐摩耗性を向上させることができる。
炭酸リチウムの含有量は、摩擦材全体において好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは1〜8質量%である。炭酸リチウムの含有量がかかる範囲であることにより、摩擦材の成形性を損なうことなく摩擦性能を向上させることができる。
炭酸リチウムの粒径としては、平均粒子径が好ましくは0.1〜300μm、より好ましくは1〜150μmである。平均粒子径がかかる範囲であることで、材料の分散性や摩擦材の成形性を損なうことなく、摩擦性能を向上させることができる。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される体積平均粒径(メジアン径)である。
本発明に係る摩擦材には、上記成分の他、繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含む。
ただし本発明の摩擦材は銅の含有量が銅元素換算で0.5質量%以下であり、銅を含有しないことが好ましい。なお、銅を含有しないとは、銅成分を、耐摩耗性などの機能を発現させるための有効成分としては含有しないという意味であり、例えば、摩擦材中に不可避的にわずかに含まれる不純物等としての銅成分をも含まないことまでを意味するものではない。銅成分には、銅単独、銅と、亜鉛、ニッケル、マンガン、アルミニウム、スズ等の他金属との銅合金、銅酸化物、銅硫化物等の銅化合物も含む。
本発明に係る摩擦材に含まれる繊維基材には、通常用いられる繊維基材を通常用いられる含有量で使用することができ、具体的には、有機繊維、無機繊維、金属繊維等が使用される。
有機繊維としては、例えば芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、耐炎性アクリル繊維、セルロース繊維等が使用される。無機繊維としては、例えばチタン酸カリウム繊維やアルミナ繊維等のセラミック繊維、生体溶解性無機繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、ロックウール等が使用される。また、金属繊維としては、例えばアルミニウム繊維、亜鉛繊維、スチール繊維等が使用される。ただし銅成分を含む銅繊維、青銅繊維、黄銅繊維は使用しない。これらは各々単独、または2種以上組み合わせて用いられる。また、摩擦材における繊維基材は摩擦材全体中、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは、5〜35質量%用いられる。
中でも無機繊維としては生体溶解性無機繊維が人体への影響が少ない点から好ましい。このような生体溶解性無機繊維は、SiO−CaO−MgO系繊維やSiO−CaO−MgO−Al系繊維、SiO−MgO−SrO系繊維等の生体溶解性セラミック繊維や生体溶解性ロックウール等が挙げられる。
金属繊維として、スチール繊維等を使用することができるが、耐摩耗性の悪化などの観点から、35質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、30質量%以下用いられる。
本発明の摩擦材に含まれる摩擦調整材には、無機充填材、有機充填材、研削材、固体潤滑材などを適宜混合することができる。
無機充填材としては、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、バーミキュライト、マイカ等の無機材料や、アルミニウム、スズ、亜鉛等の金属粉末が挙げられる。これらは各々単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
本発明において、無機充填材は、摩擦材全体中、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは、1〜50質量%用いられる。
有機充填材としては各種ゴム粉末(生ゴム粉末、タイヤ粉末等)、カシューダスト、メラミンダスト等が挙げられる。これらは各々単独、または2種以上組み合わせて用いられる。
本発明において、有機充填材は、摩擦材全体中、好ましくは1〜15質量%、より好ましくは、1〜10質量%用いられる。
研削材としてはアルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、酸化クロム、四三酸化鉄(Fe)、クロマイト等が挙げられる。これらは各々単独、または2種以上組み合わせて用いられる。
本発明において、研削材は、摩擦材全体中、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは、10〜30質量%用いられる。
固体潤滑材としては、黒鉛(グラファイト)、三硫化アンチモン、二硫化モリブデン、硫化スズ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。また、黒鉛の粒径は1〜1000μmが好ましい。これらは各々単独、または2種以上組み合わせて用いられる。
本発明において、固体潤滑材は、摩擦材全体中、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは、3〜15質量%用いられる。
本発明に係る摩擦材に含まれる結合材としては、通常用いられる種々の結合材を用いることができる。具体的にはストレートフェノール樹脂、エラストマー等による各種変性フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。エラストマー変性フェノール樹脂としては、アクリルゴム変性フェノール樹脂やシリコーンゴム変性フェノール樹脂、NBRゴム変性フェノール樹脂等が挙げられる。なお、これらの結合材は単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、摩擦材における結合材は摩擦材全体中、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは、5〜15質量%用いられる。
本発明に係る摩擦材の製造方法の具体的な態様としては、周知の製造工程により行うことができ、例えば、上記各成分を配合し、その配合物を通常の製法に従って予備成形、熱成形、加熱、研摩等の工程を経て摩擦材を作製することができる。
摩擦材を備えたブレーキパッドの製造における一般的な工程を以下に示す。
(a)板金プレスによりプレッシャプレートを所定の形状に成形する工程、
(b)上記プレッシャプレートに脱脂処理、化成処理及びプライマー処理を施す工程、
(c)繊維基材、摩擦調整材、及び結合材等の原料を配合し、撹拌により十分に均質化して、常温にて所定の圧力で成形して予備成形体を作製する工程、
(d)上記予備成形体と接着剤が塗布されたプレッシャプレートとを、所定の温度及び圧力を加えて両部材を一体に固着する熱成形工程(成形温度130〜180℃、成形圧力30〜80MPa、成形時間2〜10分間)、
(e)アフタキュア(150〜300℃、1〜5時間)を行って、最終的に研摩、表面焼き、及び塗装等の仕上げ処理を施す工程。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
〔実施例1〕
(摩擦材の作製)
表1に記載の原料を、表1に示す配合割合でミキサーを用いて混合した後、原料混合物を熱成形型に投入し、150℃、50MPaで5分間の加熱加圧成形を行った。得られた加熱加圧成形体に対して250℃で3時間の熱処理を行い、摩擦材を作製した。
なお炭酸リチウムは(株)高純度化学研究所製のものを使用した(平均粒子径138μm)。
(評価)
JASO−C406に準拠した摩擦特性試験をブレーキダイナモメータで行った。第1フェードにおける最低摩擦係数、試験終了後の摩擦材摩耗量を表1に示す。
〔実施例2〜14、比較例1〜5〕
原料の種類と配合量を表1または表2に示すものとした以外は実施例1と同様に摩擦材を作製し、評価した。結果を表1及び表2に示す。
なお炭酸リチウムは(株)高純度化学研究所製のものを使用した(各平均粒子径138μm、2μm、8μm)。炭酸ナトリウム(平均粒子径550μm)、炭酸カリウム(平均粒子径340μm)、炭酸マグネシウム(平均粒子径14μm)、炭酸亜鉛(平均粒子径13μm)は、和光純薬(株)製のものを使用した。
Figure 2016135830
Figure 2016135830
表1及び表2の結果より、炭酸リチウムを含有する実施例の摩擦材は、炭酸リチウムを含まない又は炭酸リチウム以外の他の炭酸塩を含む比較例の摩擦材に比べて、第1フェードにおける摩擦係数の最低値が大きく、かつ、試験終了後の摩擦材摩耗量が少ないことが分かる。したがって、炭酸リチウムを配合することで、摩擦材の耐フェード性及び耐摩耗性を向上することができると言える。

Claims (3)

  1. 繊維基材、摩擦調整材及び結合材を含む摩擦材であって、銅の含有量が銅元素換算で0.5質量%以下であり、炭酸リチウムを含む摩擦材。
  2. 前記炭酸リチウムの含有量が0.1〜10質量%である請求項1に記載の摩擦材。
  3. 前記炭酸リチウムの平均粒子径が0.1〜300μmである、請求項1または2に記載の摩擦材。
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