JP2016132426A - ハイブリッド車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の始動後の要求駆動力に対する応答性が高められたハイブリッド車両を提供する。【解決手段】制御装置は、エンジンを停止した状態で第2モータジェネレータを用いて走行するEV走行中にエンジンの始動要求が発生した場合には、エンジンに要求されるパワーに基づいて第2の値φAを決定するとともに、第2の値φAと最遅角との間において、第1の値φBを第2の値φAに応じて変化させる。そして制御装置は、可変動弁機構の進角量φを第1の値φBに設定して第1モータジェネレータを用いてエンジンのクランキングを実行し、エンジンのクランキングが完了した後に可変動弁機構の進角量φを第2の値φAに設定してエンジンの運転を継続する。【選択図】図5
Description
本発明は、吸気バルブの開弁タイミングが変更可能なエンジンと回転電機と駆動輪とが連結される動力分割装置を備えたハイブリッド車両の制御に関する。
従来、ハイブリッド車両として、エンジンと、第1モータジェネレータと、エンジンと第1モータジェネレータと駆動輪とに連結される遊星歯車機構と、駆動輪に連結される第2モータジェネレータとを備えるものが公知である。
このようなハイブリッド車両として、たとえば、特開2010−132015号公報(特許文献1)には、内燃機関の吸気弁バルブタイミング可変機構(VVT)を備えたハイブリッド車両が開示されている。この車両では、内燃機関の始動時において、車両駆動要求動力が供給可能動力よりも大きく、車両駆動要求能力の変化量が所定量以下の場合に、車両駆動要求動力の変化量に応じ、内燃機関の始動時に最遅角位置から進角側へ吸気弁の開閉タイミングが変更される。
上記の文献に開示されたバルブタイミング可変機構は、内燃機関の停止時にクランクシャフトの回転対する吸気弁の開閉タイミングをもっとも遅くすべく、クランクシャフトに対する吸気カムシャフトの回転位相(以下、進角量ともいう)を最遅角位相に設定する。この吸気弁の開閉タイミングを内燃機関の始動時にも維持し、吸気の圧縮比を下げ、高めのクランキング回転速度にすることにより、低振動で静かに内燃機関を始動させる。
しかし、内燃機関の始動時において、ある程度の大きなエンジン出力が求められる場合、エンジン始動直後にバルブタイミング可変機構の進角量を最遅角位置から進角位置に変更するが、進角量を変更するまでに時間を要し、内燃機関の要求駆動力に対する応答性を損なうおそれがある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、内燃機関の始動後の要求駆動力に対する応答性が高められたハイブリッド車両を提供することである。
この発明は、要約すると、ハイブリッド車両であって、吸気バルブの開閉タイミングを可変動弁機構によって変更可能なエンジンと、第1モータジェネレータと、第2モータジェネレータと、動力分割装置と、駆動輪と、制御装置とを備える。
動力分割装置は、エンジンの回転軸と第1モータジェネレータの回転軸と第2モータジェネレータの回転軸とにそれぞれ連結される3つの回転要素を有する。駆動輪は、第2モータジェネレータの回転軸に連結される。制御装置は、エンジンと第1モータジェネレータと第2モータジェネレータとを制御する。
制御装置は、可変動弁機構の進角量を第1の値と、第1の値よりも大きい第2の値とに設定することが可能である。
制御装置は、エンジンを停止した状態で第2モータジェネレータを用いて走行するEV走行中にエンジンの始動要求が発生した場合には、エンジンに要求されるパワーに基づいて第2の値を決定するとともに、第2の値と最遅角の値との間において、第1の値を第2の値に応じて変化させる。そして、制御装置は、可変動弁機構の進角量を第1の値に設定して第1モータジェネレータを用いてエンジンの始動処理を実行し、始動処理の後に可変動弁機構の進角量を第2の値に設定してエンジンの運転を継続する。
このように、エンジンの始動時の進角量をそのときにエンジンに要求されるパワーに基づいて決定するので、エンジンの始動後の目標進角量に可変動弁機構を速やかに進角させることができ、要求駆動力に対する応答性が向上する。また、要求駆動力が小さい場合には、エンジン始動時に最遅角位置付近で始動がされるため、従来と同様に車両の静粛性を保つことができる。
本発明によれば、必要に応じてエンジン始動時の応答性を向上させるとともに、必要でないときにはエンジン始動時の車両の静粛性を保つことができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本実施の形態に係るハイブリッド車両の基本構成を示した図である。
図1を参照して、ハイブリッド車両(以下、単に車両と記載する)1は、エンジン100と、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割装置4と、減速機5と、駆動輪6と、蓄電装置10と、PCU(Power Control Unit)20と、油圧ブレーキ450と、制御装置200とを備える。
図1を参照して、ハイブリッド車両(以下、単に車両と記載する)1は、エンジン100と、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割装置4と、減速機5と、駆動輪6と、蓄電装置10と、PCU(Power Control Unit)20と、油圧ブレーキ450と、制御装置200とを備える。
車両1は、エンジン100およびモータジェネレータMG2の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行可能である。エンジン100は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。エンジン100は、動力分割装置4を介して駆動輪6および発電機として作動可能なモータジェネレータMG1のうちの少なくともいずれかに動力を供給する。
エンジン100は、モータジェネレータMG1によりクランキングされて始動し得る。このエンジン100は、吸気バルブの作動特性を変更するための電動VVT(Variable Valve Timing)装置400を有する。車両の走行状況やエンジン100の始動性に応じて、制御装置200によって電動VVT装置400が制御される。
動力分割装置4は、エンジン100が発生する駆動力を、減速機5を介して駆動輪6を駆動するための動力と、モータジェネレータMG1を駆動するための動力とに分割可能に構成される。動力分割装置4は、たとえば遊星歯車機構によって構成される。この場合において、たとえば、遊星歯車機構のサンギヤには、モータジェネレータMG1が連結され、遊星歯車機構のキャリアには、エンジン100が連結され、遊星歯車機構のリングギヤには、モータジェネレータMG2および減速機5を経由して駆動輪6が連結される。
モータジェネレータMG1,MG2は、交流回転電機であり、たとえば、三相交流同期電動発電機である。モータジェネレータMG1は、動力分割装置4を介して受けるエンジン100の動力を用いて発電し得る。たとえば、蓄電装置10のSOC(State Of Charge)が下限管理値に達すると、エンジン100が始動してモータジェネレータMG1により発電が行なわれる。モータジェネレータMG1によって発電された電力は、PCU20により電圧変換され、蓄電装置10に一時的に蓄えられたり、モータジェネレータMG2に直接供給されたりする。
モータジェネレータMG2は、蓄電装置10に蓄えられた電力、およびモータジェネレータMG1によって発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動力を発生する。モータジェネレータMG2の駆動力は、減速機5を介して駆動輪6に伝達される。
なお、車両の制動時には、減速機5を介して駆動輪6によりモータジェネレータMG2が駆動され、モータジェネレータMG2が発電機として作動する。これにより、モータジェネレータMG2は、制動エネルギーを電力に変換する回生ブレーキとして作動する。モータジェネレータMG2により発電された電力は、蓄電装置10に蓄えられる。モータジェネレータMG2の回生ブレーキを超える制動力が要求された場合には、油圧ブレーキ450が併用される。なお、図1では図示の簡単のため、油圧ブレーキ450は後輪側に設けられているが、前輪側にも設けられている。
PCU20は、モータジェネレータMG1,MG2を駆動するための駆動装置である。PCU20は、モータジェネレータMG1,MG2を駆動するためのインバータを含み、さらに、インバータと蓄電装置10との間で電圧変換するためのコンバータを含んでもよい。
蓄電装置10は、再充電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池を含んで構成される。蓄電装置10は、モータジェネレータMG1,MG2によって発電された電力を蓄える。なお、蓄電装置10として、大容量のキャパシタも採用可能であり、蓄電装置10は、モータジェネレータMG1,MG2による発電電力を一時的に蓄え、その蓄えた電力をモータジェネレータMG2へ供給可能な電力バッファであれば如何なるものでもよい。また、蓄電装置10には、蓄電装置10の温度、電圧および電流を検出するためのセンサが設けられ、センサによる検出値が制御装置200へ出力される。
図2は、制御装置200の構成を示したブロック図である。図2を参照して、制御装置200は、HV−ECU(ハイブリッド電子制御ユニット)210と、電池監視ユニット220と、MG−ECU(モータ用電子制御ユニット)と、ECB−ECU(ブレーキ用電子制御ユニット)240と、EFI−ECU(エンジン用電子制御ユニット)250とを含む。HV−ECU210は、電池制御部212と、システム制御部214と、走行制御部216とを含む。PCU20は、昇圧コンバータ20と、インバータ24とを含む。
電池監視ユニット220は、蓄電装置10の電流、電圧、温度を監視し、これらの監視結果をHV−ECU210の電池制御部212に送信する。
MG−ECU230は、HV−ECU210からモータジェネレータMG1,MG2に対するトルク指令値を受信し、トルク指令値に基づいて、昇圧コンバータ22のスイッチングを制御するとともに、インバータ24のスイッチングを制御する。MG−ECU230は、モータジェネレータMG1,MG2の回転速度を検出し、HV−ECU210に送信する。
ECB−ECU240は、ブレーキペダル264からブレーキ踏力を検出し、制動トルクおよび回生要求トルクをHV−ECU210に送信し、HV−ECU210から回生実行トルクを受信してこれに基づいて油圧ブレーキ450を制御する。
EFI−ECU250は、エンジン100に設けられた各種センサから、吸気の空気量、冷却水の水温などの検出値を受信し、HV−ECU210に水温およびエンジン100の暖機要求を送信する。そして、EFI−ECU250は、エンジン出力指令値およびエンジン目標回転速度をHV−ECU210から受信する。
制御装置200に含まれる各ECUは、CPU(Central Processing Unit)や、記憶装置、入出力バッファ等(いずれも図示せず)を含んで構成される。なお、制御装置200は、必ずしも図2のように分割されたECUで構成されていなくても良く、図2とは異なるように分割された複数のECUで構成されていても良い。
次に、電動VVT装置400を有するエンジン100の構成について説明する。図3は、図1に示されたエンジン100の構成を示す図である。
図3を参照して、エンジン100への吸入空気量は、スロットルモータ312により駆動されるスロットルバルブ104により調整される。インジェクタ108は、吸気ポートに燃料を噴射する。吸気ポートにおいて、燃料と空気とが混合される。混合気は、吸気バルブ118が開くことによって、シリンダ106内へ導入される。なお、インジェクタ108は、シリンダ106内に直接燃料を噴射する直噴インジェクタとして設けられてもよい。あるいは、インジェクタ108は、ポート噴射用と直噴用との両方が設けられてもよい。
シリンダ106内の混合気は、点火プラグ110により着火されて燃焼する。燃焼後の混合気すなわち排気ガスは、排気通路に排出される。排気通路には、触媒を用いて排気ガスを浄化する排気浄化装置が設けられる。排気浄化装置は、触媒112S(以下「S/C(スタートキャット)触媒」とも称する。)と、S/C触媒112Sよりも下流側に配置される触媒112U(以下「U/F(アンダーフロア)触媒」とも称する。)とを含んで構成される。排気ガスは、S/C触媒112SおよびU/F触媒112Uにより浄化された後、車外に排出される。混合気の燃焼によりピストン114が押し下げられ、クランクシャフト116が回転する。
シリンダ106の頭頂部には、吸気バルブ118および排気バルブ120が設けられる。シリンダ106に導入される空気の量および時期は、吸気バルブ118により制御される。シリンダ106から排出される排気ガスの量および排出時期は、排気バルブ120により制御される。吸気バルブ118はカム122により駆動され、排気バルブ120はカム124により駆動される。
吸気バルブ118の作動特性は、電動VVT装置400によって変化する。電動VVT装置400は、カムシャフトと、カムスプロケットと、電動アクチュエータとを含む(いずれも図示せず)。カムシャフトは、回転軸の方向がクランクシャフトの回転軸と平行になるようにエンジン100のシリンダヘッドに回転自在に設けられる。カムシャフトは、カムによって各気筒に設けられる排気バルブを開閉する排気側カムシャフトと、カムによって各気筒に設けられる吸気バルブを開閉する吸気側カムシャフトとを含む。排気側カムシャフトには、複数のカム124が所定の間隔で固定される。吸気側カムシャフトには、複数のカム122が所定の間隔で固定される。
吸気側および排気側のカムシャフトの各々の一方端には、カムスプロケットが設けられる。双方のカムスプロケットには同じタイミングチェーンが巻き掛けられる。タイミングチェーンは、クランクシャフト116に設けられるタイミングロータ(図示せず)にも巻き掛けられる。そのため、クランクシャフトとカムシャフトとはタイミングチェーンによって同期して回転する。
カムシャフトとカムスプロケットとの間には電動アクチュエータが設けられる。電動アクチュエータは、吸気側のカムシャフトとカムスプロケットとの間の回転位相を変化させる。電動アクチュエータは、制御装置200から送信される制御信号VVTに基づいてその動作が制御される。電動アクチュエータが吸気側のカムシャフトとカムスプロケットとの回転位相を変化させると、吸気バルブ118においては、開弁期間が維持されるとともに、開弁タイミングおよび開弁タイミングに連動して閉弁タイミングが変化されることとなる。
電動VVT装置400による吸気バルブ118の開弁タイミングの変化の態様については後述する。なお、電動VVT装置400は、吸気バルブ118に代えてまたは加えて排気バルブ120の開弁タイミングを変化させるようにしてもよい。
EFI−ECU250は、アクセル開度ACCや車速VSSを示す信号のほか、カム角センサ300、クランク角センサ302およびスロットル開度センサ306の各センサから信号を受信する。
カム角センサ300は、カムの位置を表す信号を出力する。クランク角センサ302は、クランクシャフト116の回転数(エンジン回転数)およびクランクシャフト116の回転角度を表す信号を出力する。スロットル開度センサ306は、スロットル開度θthを表す信号を出力する。制御装置200は、これらの各センサからの信号に基づいてエンジン100を制御する。
EFI−ECU250は、設定された要求出力を発生するための動作点(エンジン回転数およびエンジントルクの組み合わせ)でエンジン100が動作するように、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度などのパラメータ群を制御する。
図4は、電動VVT装置400において実現されるバルブ変位量とクランク角の関係を示す図である。図4において、縦軸はバルブ変位量を示し、横軸はクランク角を示す。
図4に示すように、排気バルブ120は、排気行程において開いて変位量がピークとなった後に閉じ、吸気バルブ118は、その後の吸気行程において開いて変位量がピークとなった後に閉じる。排気バルブ120のバルブ変位量が波形EXに示されており、これに対して、吸気バルブ118のバルブ変位量が波形INに示されている。
なお、バルブ変位量とは、吸気バルブ118(あるいは、排気バルブ120)が閉じた状態からの吸気バルブ118の変位量を意味する。吸気バルブ118の開度がピークに達したときのバルブ変位量をリフト量といい、吸気バルブ118が開いてから閉じるまでのクランク角を作用角という。
電動VVT装置400は、リフト量および作用角を維持した状態で吸気バルブ118を開弁タイミングおよび閉弁タイミングを変更する。すなわち、電動VVT装置400は、波形INの実線波形と破線波形との間で波形を維持した状態で開弁タイミングを変化させる。本実施の形態においては、クランク角CA(0)が波形IN(実線)でバルブ変位量を変化させる場合の吸気バルブ118の開弁タイミングに対応し、クランク角CA(1)が波形IN(破線)でバルブ変位量を変化させる場合の吸気バルブ118の開弁タイミングに対応する。
以下の説明においてクランク角CA(0)からクランク角CA(1)への方向に開弁タイミングを変更することを開弁タイミングを「遅角する」といい、クランク角CA(1)からクランク角CA(0)への方向に開弁タイミングを変更することを開弁タイミングを「進角する」という。また、本実施の形態においてクランク角CA(0)が最進角の開弁タイミングであり、クランク角CA(1)が最遅角の開弁タイミングであるものとする。そして、最遅角の開弁タイミングCA(1)からの吸気弁の開弁タイミングの移動量に相当するクランク角を進角量φという。
なお、本実施の形態においては、図4に最進角の吸気バルブ118のバルブ変位量の波形IN(実線)と、最遅角の吸気バルブ118のバルブ変位量の波形IN(破線)とを例示したが、特に、電動VVT装置400の開弁タイミングの変更範囲は、図4に示すCA(0)とCA(1)との間に限定されるものではなく、最遅角と最進角との間の幅をもっと大きくすることもできる。
[EV走行時のエンジン始動の説明]
以上の構成を有するハイブリッド車両において、エンジン100を停止した状態の走行中(EV走行中)にドライバーがアクセルペダルを踏み増したり、蓄電装置のSOCが低下したりすると、エンジン始動要求が発生する。このエンジン始動時に、燃費の向上および静粛性と駆動力応答性およびエンジン始動性とをどのようにバランスをとるかが問題である。
以上の構成を有するハイブリッド車両において、エンジン100を停止した状態の走行中(EV走行中)にドライバーがアクセルペダルを踏み増したり、蓄電装置のSOCが低下したりすると、エンジン始動要求が発生する。このエンジン始動時に、燃費の向上および静粛性と駆動力応答性およびエンジン始動性とをどのようにバランスをとるかが問題である。
本実施の形態では、駆動力応答性およびエンジン始動性を確保するため、エンジン始動制御中に電動VVT機構を進角させた場合に、その進角量に応じてクランキングトルクを増加させる。
図5は、EV走行時にエンジンを運転させる際の始動処理を説明するための動作波形図である。図5を参照して、時刻t0〜t1は車両はエンジンを停止してEV走行で走行している期間である。時刻t1〜t2は、エンジン始動処理が実行される期間であり、時刻t2以降は、車両はエンジンが運転された状態で走行する期間である。
まず、時刻t0〜t1のEV走行時について共線図を示して説明する。時刻t0〜t1のEV走行時には、モータジェネレータMG2が車両要求トルクを出力している。図6は、EV走行時の動力分割機構の各回転要素の回転速度を示した共線図である。図6に示すように、EV走行時には、モータジェネレータMG2の回転速度は車速に比例した回転速度となる。そして、エンジンの回転速度はゼロであり、モータジェネレータMG1の回転速度は、負の回転速度となる。
次に、時刻t1〜t2のエンジン始動処理時について共線図を示して説明する。図5の時刻t1〜t2のエンジン始動処理では、モータジェネレータMG1がエンジンを回転させるためのクランキングトルクを出力する。図7は、エンジン始動処理中の動力分割機構の各回転要素の回転速度を示した共線図である。図7に示すように、モータジェネレータMG1がエンジンを回転させるためのクランキングトルクを出力する。このときには、エンジンには、主としてシリンダのフリクションに起因する負のトルクが発生する。そしてモータジェネレータMG2は、図6で出力していた車両要求トルクに加えて、モータジェネレータMG1のクランキングトルクがモータジェネレータMG2の回転軸に与える影響をキャンセルするための反力トルクを出力する。
ここで、図5において破線で示した波形は、電動VVT機構の進角量φを始動処理中にゼロ(最遅角位置)に設定した場合の波形である。この場合は、吸気の圧縮比が下がるため、従来制御と同様に、小さいクランキングトルクTg(base)で始動でき低振動で静粛に内燃機関を始動させることができる。なお、時刻t1〜t2のエンジン始動処理の後半部分でクランキングトルクが低下しているのは、エンジンの初爆が完了するとエンジンが自立してアイドル回転速度を維持できるようになるため、その移行過程としてクランキングトルクを徐々に減少させているからである。
一方、図5において、実線で示した波形は、電動VVT機構の進角量φを始動処理中にφBに設定した場合の波形である。この場合は、吸気の圧縮比が上がるため、クランキングトルクTg(base)もよりも大きいクランキングトルクTgBで始動処理を実施する必要がある。このときには、エンジン運転中において進角量φAに進角量を増加させるのには時間Tdだけ時間が短縮できる。したがって、エンジンの出力が速やかに増加するので、要求駆動力の増加に対する良好な応答性を得ることができる。
これらの特性を生かして、本実施の形態では、始動処理中(時刻t1〜t2)のMG1トルクの最大値(クランキングトルク)の大きさを、Tg(base)から要求駆動力の大きさに応じて増加させる。こうすることにより、要求駆動力が小さい場合には、静粛にエンジン始動が行なわれる一方で、要求駆動力が大きい場合には、速やかにエンジンから駆動力が得られる。
図8は、本実施の形態におけるモータジェネレータMG1が出力するクランキングトルクの補正量算出制御について説明するためのフローチャートである。図8のフローチャートの処理は、一定時間ごとまたは所定の条件が成立するごとにメインルーチンから呼び出され、実行される。フローチャートの各処理は、図2で示した制御装置200の各ECUが連携しながら実行している。
図8を参照して、まずステップS1において、制御装置200は、エンジンを始動するためのクランキング中であり、かつモータジェネレータMG1の回転速度が負であり、かつVVTの進角要求あり、という条件が成立しているか否かを判断する。
ここで、図5の時刻t1〜t2の始動処理中であれば、クランキング中という条件は成立している。また、直前までエンジン回転速度がゼロでEV走行しておれば、図6、図7で説明したように、モータジェネレータMG1の回転速度が負であるという条件は成立している。そして、VVT進角要求ありという条件については、たとえば、電池状態、アクセルペダル、車速などに基づいて、エンジン始動直後からエンジンに要求されるパワーが所定値以上であった場合に成立する。
ステップS1における条件が成立した場合には、ステップS2〜S4の処理が順次実行される一方、条件が成立しない場合には、ステップS2〜S4は実行されずにステップS5において処理はメインルーチンに戻される。
ステップS2では、制御装置200は、目標エンジンパワーを算出する。図9は、図8のステップS2における目標エンジンパワーの算出について説明するためのフローチャートである。このフローチャートは、目標エンジンパワーの算出に至る一連の流れを示している。図9を参照して、まず、ステップS11において、アクセルペダルの操作量からアクセル開度が取得され、シフトレバー位置からシフトレンジが取得され、モータジェネレータMG2の回転数などから駆動軸回転速度Np(車速に相当)が取得される。
続いて、ステップS12においてステップS11で得られた情報から要求駆動力が算出され、ステップS13において要求駆動力に基づいて走行パワーが算出され、これと蓄電装置10への充電電力とを合算してステップS14においてシステムパワーが算出される。
また、ステップS15においてエンジンの始動および停止についての判断が実行される。基本的には、蓄電装置10のSOCが低下しておらず、モータジェネレータMG2のみで要求駆動力を出力できる場合には、エンジンは停止される。逆に、蓄電装置10のSOCが低下して充電が必要になった場合や、要求駆動力がモータジェネレータMG2のみでは出力できない場合には、エンジンが始動される。
ステップS16では目標エンジンパワーが算出される。目標エンジンパワーPeは、車両の走行に必要とされるパワーに対して、蓄電装置10に対する充放電要求を実現できるように補正処理を行なった上で算出される。走行制御におけるパワー収支の考え方は次式に示される。
Pe=PV+PI+PL−PB
ここで、Peは目標エンジンパワーを示し、PVは走行パワーを示し、PIはイナーシャパワーを示し、PLは損失分のパワーを示し、PBはバッテリパワーを示す。
ここで、Peは目標エンジンパワーを示し、PVは走行パワーを示し、PIはイナーシャパワーを示し、PLは損失分のパワーを示し、PBはバッテリパワーを示す。
ステップS16で算出された目標エンジンパワーに基づいて、エンジンに対するパワー指令値が決定される。
また、目標エンジンパワーと最適燃費ラインとに基づいて、ステップS17において目標エンジン回転速度が決定される。そして、ステップS18において、モータジェネレータMG1の目標トルクが算出され、これに基づいてモータジェネレータMG1が運転される。さらに、ステップS19において、エンジントルクのうち直接走行トルクとして車軸に伝達される成分(エンジン直行トルク)が算出される。そして、ステップS20において、車輪を駆動するトルクに対してエンジン直行トルクで不足するトルクがモータジェネレータMG2の目標トルクとして算出される。ステップS20で算出された目標トルクに基づいてモータジェネレータMG2が運転される。
再び図8に戻って、ステップS2において目標エンジンパワーが算出された後には、ステップS3において目標VVT進角量の算出が実行される。
図10は、エンジン始動時における、VVT進角量の決定の詳細について説明するための動作波形図である。図10の波形図では、図5と同様に、時刻t0〜t1では車両はEV走行しており、時刻t1〜t2においてエンジン始動処理が実行されている。
時刻t1においてアクセルペダルが踏み増しされたことに応じて、エンジンが始動するように指令が発せられる。アクセル開度および車速によって要求される指令駆動力F0、指令エンジンパワーP0、VVT進角量H0が、図10においていずれも破線で示されている。
しかし、エンジン初爆前に、吸気弁のVVT進角量を進角させると、エンジンの気筒内圧が上がるため、エンジンの始動性が悪化する。これは混合気がリーンとなって着火できないためである。
したがって、実際には、指令駆動力F0、指令エンジンパワーP0、VVT進角量H0を緩変化処理した、実線で示される指令駆動力F1、指令エンジンパワーP1、目標進角量H1に基づいてエンジンが制御される。
ここで、時刻t2以降の進角量φAまで増加させる進角量の増加率を一定と仮定すると、時刻t1〜t2における進角量φBをある程度大きくしておけば、時刻t2でエンジンが自立運転した後に進角量φAに到達する時間が短縮できる。
そこで、進角量φBを進角量φAに応じて決定する。たとえば、進角量φAは、現在の要求駆動力または要求エンジンパワーと進角量ゼロの場合の駆動力またはエンジンパワーとの差に基づいて決定することができる。またたとえば、進角量φBは、進角量φAとともにエンジン油温、冷却水温、吸気温、吸気側負圧、吸気圧などを入力パラメータとして含むマップによって決定することができる。
再び、図8に戻って、ステップS3で目標VVT進角量が算出されると、ステップS4においてクランキングトルク補正量ΔTgが算出される。クランキングトルク補正量ΔTgは、図5の時刻t1〜t2における基本クランキングトルクT(base)からの増加量である。基本クランキングトルクT(base)は、エンジンが自立運転できる(初爆できる)回転速度までエンジン回転を引き上げることが可能なトルクである。これに対する補正量ΔTgは、VVT進角量φBに応じて定める。
図11は、クランキングトルク補正量ΔTgとVVT進角量φBとの関係の一例を示した図である。図11に示すように、VVT進角量φBが最遅角位置である場合にはΔTg=0であり、最遅角位置から進角量φBが増加するにしたがって補正量ΔTgも増加している。なお、図11に示すように補正量ΔTgを規定しても良いが、基本クランキングトルクよりも大きくなるようにすれば、特に限定されない。たとえば、基本クランキングトルクT(base)に1よりも大きな係数を掛けて算出するようにし、この係数をVVT進角量φBに応じて規定しても良い。
なお、基本クランキングトルクT(base)はどのように決定されても良いが、たとえば、エンジンのフリクションに打ち勝って、エンジンの回転速度をエンジンが初爆できる回転速度まで引き上げることが可能なトルクとすることができる。なお、懸架系、駆動系の共振周波数帯を通過する時間の短縮、車両の加速応答性の要求度合などを考慮して基本クランキングトルクT(base)を変更しても良い。
再び図8に戻って、ステップS4のクランキングトルク補正量ΔTgが算出されたら、ステップS5に処理が進められる。この時には、算出されたクランキングトルク補正量ΔTgによって、進角量φBでエンジン始動処理が実行され、その後、進角量φAでエンジンが運転される。
最後に、再び図1を参照して本実施の形態について総括する。本実施の形態に係るハイブリッド車両1は、吸気バルブの開閉タイミングを可変動弁機構400によって変更可能なエンジン100と、第1モータジェネレータMG1と、第2モータジェネレータMG2と、エンジン100の回転軸と第1モータジェネレータMG1の回転軸と第2モータジェネレータMG2の回転軸とにそれぞれ連結される3つの回転要素を有する動力分割装置4と、第2モータジェネレータMG2の回転軸に連結される駆動輪6と、エンジン100と第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2とを制御する制御装置200とを備える。制御装置200は、可変動弁機構400の進角量φを第1の値φBと、第1の値φBよりも大きい第2の値φAとに設定することが可能である。図5に示すように、制御装置200は、エンジン100を停止した状態で第2モータジェネレータMG2を用いて走行するEV走行中にエンジン100の始動要求が発生した場合には、エンジン100に要求されるパワーに基づいて第2の値φAを決定するとともに、第2の値φAと最遅角に相当する値との間において、第1の値φBを第2の値φAに応じて変化させる。そして制御装置200は、可変動弁機構400の進角量を第1の値φBに設定して第1モータジェネレータMG1を用いてエンジン100の始動処理を実行し、エンジン100の始動処理の後に可変動弁機構400の進角量φを第2の値φAに設定してエンジンの運転を継続する。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、4 動力分割装置、5 減速機、6 駆動輪、10 蓄電装置、20,22 昇圧コンバータ、24 インバータ、100 エンジン、104 スロットルバルブ、106 シリンダ、108 インジェクタ、110 点火プラグ、112S,112U 触媒、114 ピストン、116 クランクシャフト、118 吸気バルブ、120 排気バルブ、122,124 カム、200 制御装置、212 電池制御部、214 システム制御部、216 走行制御部、220 電池監視ユニット、264 ブレーキペダル、300 カム角センサ、302 クランク角センサ、306 スロットル開度センサ、312 スロットルモータ、400 電動VVT装置、450 油圧ブレーキ、MG1,MG2 モータジェネレータ。
Claims (1)
- 吸気バルブの開閉タイミングを可変動弁機構によって変更可能なエンジンと、
第1モータジェネレータと、
第2モータジェネレータと、
前記エンジンの回転軸と前記第1モータジェネレータの回転軸と前記第2モータジェネレータの回転軸とにそれぞれ連結される3つの回転要素を有する動力分割装置と、
前記第2モータジェネレータの回転軸に連結される駆動輪と、
前記エンジンと前記第1モータジェネレータと前記第2モータジェネレータとを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記可変動弁機構の進角量を第1の値と、前記第1の値よりも大きい第2の値とに設定することが可能であり、
前記制御装置は、前記エンジンを停止した状態で前記第2モータジェネレータを用いて走行するEV走行中に前記エンジンの始動要求が発生した場合には、前記エンジンに要求されるパワーに基づいて前記第2の値を決定するとともに、前記第2の値と最遅角の値との間において、前記第1の値を前記第2の値に応じて変化させ、前記可変動弁機構の進角量を前記第1の値に設定して前記第1モータジェネレータを用いて前記エンジンの始動処理を実行し、前記始動処理の後に前記可変動弁機構の進角量を前記第2の値に設定して前記エンジンの運転を継続する、ハイブリッド車両。
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CN108016279A (zh) * | 2016-10-28 | 2018-05-11 | 铃木株式会社 | 车辆的发电控制装置 |
-
2015
- 2015-01-22 JP JP2015010142A patent/JP2016132426A/ja active Pending
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