JP2016128444A - トランスサイレチン解離阻害剤の固体形態 - Google Patents

トランスサイレチン解離阻害剤の固体形態 Download PDF

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Abstract

【課題】蛋白質トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスに関与するTTRを安定化して、トランスサイレチンアミロイド疾患の治療に用いる、6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールのN−メチル−D−グルカミン(メグルミン)塩の新たな固体形態及びそれらの調製方法の提供。
【解決手段】前記化合物塩の結晶形であって、112.6±0.2、133.9±0.2、及び171.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形有し、1625±2にラマンスシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトルを有し、10.7±0.2、11.8±0.2及び13.3±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線パターン有し、1547±2、1264±2、936±2、861±2及び632±2に赤外シフトピーク(cm−1)を含む赤外ペクトルを有する結晶形。
【選択図】なし

Description

本発明は、6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールのN−メチル−D−グルカミン(メグルミン)塩の固体形態およびそれらの調製方法に関する。本発明はまた、少なくとも1種の固体形態を含有する医薬組成物、ならびにこのような固体形態および組成物の治療的または予防的な使用を対象とする。
本発明は、哺乳動物における老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)、および家族性アミロイド心筋症(FAC)などのトランスサイレチンアミロイド疾患の治療に有用な6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールメグルミン(「化合物1」とも称す)の固体形態に関する。本発明はまた、このような固体形態を包含する組成物、および哺乳動物、特にヒトのトランスサイレチンアミロイド疾患の治療においてこのような組成物を使用する方法に関する。
6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールなどのカルボキシ−2−フェニル−ベンゾオキサゾールおよびそれらの塩が、米国特許第7,214,695号および同第7,214,696号、ならびに米国特許出願公開第2010/0120919号に記載されている(これらはすべて、その全体を参照により本明細書に援用する)。カルボキシ−2−フェニル−ベンゾオキサゾールならびにそれを含む医薬組成物を作製する方法もそこに記載されている。
化合物1は、その解離がTTRアミロイドーシスに関与するタンパク質トランスサイレチン(TTR)を安定化するものであり(すなわち、化合物1は、天然TTR四量体の単量体への解離を阻止し、それによって、TTRアミロイドフィブリル形成が阻害される)、トランスサイレチンアミロイド疾患の治療で使用するために開発されている。
固体形態は、医薬品業界にとって、特に適切な剤形の開発に関わるものにとって興味深い。臨床または安定性の研究中に固体形態が一定に保持されない場合、使用または研究した正確な剤形がロットごとに比較できない可能性がある。また、化合物を臨床研究または市販製品に使用する場合、存在する不純物が望ましくない毒性効果を生じる可能性があるため、選択した固体形態を有する化合物を高純度で生成するプロセスがあることが望ましい。ある種の固体形態はまた、増強された熱力学的安定性を示すことができ、またはより容易に高純度で多量に製造することができ、したがって、医薬製剤中に包含するのにより適している。ある種の固体形態は、様々な格子エネルギーに起因する、吸湿性傾向の欠如、ろ過性、溶解性の向上、および溶解速度の増進など、他の好都合な物理的特性を示すことがある。
本明細書には、本発明の背景の考察を、本発明の状況を説明するために含める。これは、言及した材料のいずれかが、特許請求の範囲のいずれかの優先日の時点で任意の国において公開されていたか、公知であったか、または共通の一般的知識の一部となっていたことを承認するとみなされるべきものではない。
化合物1の複数の固体形態が同定されているが、各固体形態は、粉末X線回折パターンピークもしくは2個以上のピークの組合せ;固体NMR13C化学シフトもしくは2個以上の化学シフトの組合せ;ラマンシフトピークもしくは2個以上のラマンシフトピークの組合せ;および赤外シフトピークもしくは2個以上の赤外シフトピークの組合せ、またはそれらの組合せなど、これらだけに限らないいくつかの異なる分析的なパラメータによって単独でまたは組合せで独自に同定することができる。
本発明の一態様は、化合物1として表す6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールメグルミンの結晶形であって、10.7±0.2、11.8±0.2、および13.3±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶形を提供する。別の一実施形態では、化合物1の結晶形は、10.7±0.2、11.8±0.2、13.3±0.2、および14.8±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。別の一実施形態では、化合物1の結晶形は、10.7±0.2、11.8±0.2、13.3±0.2、14.8±0.2、および21.7±0.2の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する。
本発明の別の一態様は、化合物1の結晶形であって、図1Aに示したのと本質的に同一の回折角(2θ)にピークを含む粉末X線回折パターンを有する結晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の液晶形であって、図2Aに示したのと本質的に同一の粉末X線回折ピーク位置を有する液晶形を提供する。本発明の別の一態様は、化合物1の液晶形であって、図2Bに示したのと本質的に同一の粉末X線回折ピーク位置を有する液晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の非晶形であって、図3Aに示したのと本質的に同一の粉末X線回折ピーク位置を有する非晶形を提供する。本発明の別の一態様は、化合物1の非晶形であって、図3Bに示したのと本質的に同一の粉末X線回折ピーク位置を有する非晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の結晶形であって、1625±2、1596±2、および1548±2にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトルを有する結晶形を提供する。別の一実施形態では、化合物1の結晶形は、1625±2、1616±2、1596±2、および1548±2にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトルを有する。別の一実施形態では、化合物1の結晶形は、1625±2、1616±2、1596±2、1574±2、および1548±2にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトルを有する。
本発明の別の一態様は、化合物1の結晶形であって、図4Aに示したのと本質的に同一の位置にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトルを有する結晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の液晶形であって、図5Aに示したのと本質的に同一の位置にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトルを有する液晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の非晶形であって、図6Aに示したのと本質的に同一の位置にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトルを有する非晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の結晶形であって、1581±2、1273±2、1010±2、906±2、および873±2に赤外シフトピーク(cm−1)を含む赤外スペクトルを有する結晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の結晶形であって、図7Aに示したのと本質的に同一の赤外シフトピーク(cm−1)を含む赤外スペクトルを有する結晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の液晶形であって、1547±2、1264±2、936±2、861±2、および632±2に赤外シフトピーク(cm−1)を含む赤外スペクトルを有する液晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の液晶形であって、図8Aに示したのと本質的に同一の赤外シフトピーク(cm−1)を含む赤外スペクトルを有する液晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の非晶形であって、1547±2、1262±2、935±2、862±2、および802±2に赤外シフトピーク(cm−1)を含む赤外スペクトルを有する非晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の非晶形であって、図9Aに示したのと本質的に同一の赤外シフトピーク(cm−1)を含む赤外スペクトルを有する非晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の結晶形であって、112.6±0.2、133.9±0.2、および171.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の結晶形であって、図10Aに示したのと本質的に同一の位置に13C化学シフトを含む固体NMRスペクトルを有する結晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の液晶形であって、118.5±0.5、136.3±0.5、および159.9±0.5に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する液晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の液晶形であって、図11Aに示したのと本質的に同一の位置に13C化学シフトを含む固体NMRスペクトルを有する液晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の非晶形であって、135.4±0.5、143.4±0.5、および161.0±0.5に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する非晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の非晶形であって、図12Aに示したのと本質的に同一の位置に13C化学シフトを含む固体NMRスペクトルを有する非晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の結晶形であって、1625cm±2にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトル;および133.9±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の結晶形であって、1625cm±2にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトル;および171.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の液晶形であって、1573cm±2にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトル;および136.3±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形を提供する。
本発明の別の一態様は、化合物1の非晶形であって、1573cm±2にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトル;および143.4±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形を提供する。
ある種の実施形態では、本発明は、非吸湿性かつ無水である、化合物1の前述の結晶形のいずれかに関する。
ある種の実施形態では、本発明は、化合物1の複数の小さなクリスタリットを含む、化合物1の前述の結晶形のいずれかに関する。
ある種の実施形態では、本発明は、化合物1の複数の針形結晶を含む、化合物1の前述の結晶形のいずれかに関する。
別の一態様では、本発明は、本明細書に記載の化合物1の固体形態のいずれか1種が、その固体形態の他のいずれかまたはそれらの混合物の存在下に存在できることを企図している。したがって、一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の化合物1の結晶形、液晶形、または非晶形であって、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または1重量%未満の化合物1の他のいずれかの物理的形態を包含する固体形態で存在する結晶形、液晶形、または非晶形を提供する。例えば、一実施形態では、上述の粉末X線回折パターン、ラマンスペクトル、IRスペクトル、および/またはNMRスペクトルのいずれか1種を有する化合物1の結晶形を含む化合物1の固体形態であり、前記固体形態は、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、60重量%未満、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、3重量%未満、または1重量%未満の化合物1の他のいずれかの物理的形態を包含する。
ある種の実施形態では、本発明は、実質的に純粋である、化合物1の前述の形態のいずれか(すなわち、実質的に純粋な結晶形、実質的に純粋な液晶形、または実質的に純粋な非晶形)に関する。
本発明の別の一態様は、本明細書に記載の化合物1の結晶形、液晶形、または非晶形を含む医薬組成物を提供する。別の一態様では、本発明は、本明細書に記載の化合物1の結晶形、液晶形、もしくは非晶形、または医薬組成物を含む経口剤形を提供する。例えば、一実施形態では、経口剤形は、錠剤、丸剤、またはカプセル剤である。例えば、一実施形態では、経口剤形は、錠剤またはカプセル剤である。
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の化合物1の固体形態のいずれかまたは医薬組成物を含む錠剤を提供する。例えば、一実施形態では、錠剤は、約1〜約10mgの化合物1の結晶形を含む。さらに、例えば、錠剤は、約1〜約5mgの化合物1の結晶形を含む。さらに、例えば、錠剤は、約1mgの化合物1の結晶形を含む。さらに、例えば、錠剤は、約2mg、約3mg、約4mg、または約5mgの化合物1の結晶形を含む。
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の化合物1の固体形態のいずれかまたは医薬組成物を含む軟ゼラチンカプセル剤を提供する。例えば、一実施形態では、軟ゼラチンカプセル剤は、約1〜約10mgの化合物1の結晶形を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約1〜約5mgの化合物1の結晶形を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約1mgの化合物1の結晶形を含む。さらに、例えば、軟ゼラチンカプセル剤は、約2mg、約3mg、約4mg、または約5mgの化合物1の結晶形を含む。
本発明の別の一態様は、結晶形の化合物1を調製する方法であって、6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールを加熱するステップと、N−メチル−D−ガルカミン(gulcamine)水溶液を滴下添加するステップとを含む方法を提供する。例えば、一実施形態では、前記加熱するステップを適当な溶媒の存在下で実施する。一実施形態では、溶媒は、2−プロパノールおよび水を含む。
本発明の別の一態様は、液晶形の化合物1を調製する方法であって、結晶質の化合物1を水に溶解させるステップと、得られた溶液を凍結させるステップと、得られた凍結溶液をフリーズドライさせるステップとを含む方法を提供する。
本発明の別の一態様は、非晶形の化合物1を調製する方法であって、容器中で結晶質の化合物1が融解するまで加熱するステップと、次いで、容器を液体窒素中に置くステップとを含む方法を提供する。例えば、一実施形態では、前記容器はアルミパンであり、前記加熱するステップは200℃のホットプレートで実施する。
本発明の別の一態様は、哺乳動物における老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)、および家族性アミロイド心筋症(FAC)などのトランスサイレチンアミロイド疾患を治療する方法であって、前記哺乳動物に治療有効量の本明細書に記載の化合物1の固体形態のいずれかまたは医薬組成物のいずれかを投与するステップを含む方法を提供する。ある種の実施形態では、投与される固体形態は結晶形である。ある種の実施形態では、投与される固体形態は液晶形である。ある種の実施形態では、投与される固体形態は非晶形である。
(a)Bruker D8回折計で実施した結晶質の化合物1のXRPDパターン、および(b)対応するピークリストを示す図である。 (a)Bruker D8回折計で実施した液晶質の化合物1のXRPDパターン、および(b)それの処理バージョンを示す図である。 (a)Bruker D8回折計で実施した非晶質の化合物1のXRPDパターン、および(b)それの処理バージョンを示す図である。 (a)1064nmのNd:YVOレーザーと液体冷却ゲルマニウム検出器とを備えたNicolet NXR FT−ラマン分光計で実施した結晶質の化合物1のラマンスペクトル、および(b)対応するピークリストを示す図である。 (a)1064nmのNd:YVOレーザーと液体冷却ゲルマニウム検出器とを備えたNicolet NXR FT−ラマン分光計で実施した液晶質の化合物1のラマンスペクトル、および(b)対応するピークリストを示す図である。 (a)1064nmのNd:YVOレーザーと液体冷却ゲルマニウム検出器とを備えたNicolet NXR FT−ラマン分光計で実施した非晶質の化合物1のラマンスペクトル、および(b)対応するピークリストを示す図である。 (a)KBrビームスプリッタとd−TGS KBR検出器とを備えたNicolet 6700 FTIR分光計で実施した結晶質の化合物1の赤外スペクトル、および(b)対応するピークリストを示す図である。 (a)KBrビームスプリッタとd−TGS KBR検出器とを備えたNicolet 6700 FTIR分光計で実施した液晶質の化合物1の赤外スペクトル、および(b)対応するピークリストを示す図である。 (a)KBrビームスプリッタとd−TGS KBR検出器とを備えたNicolet 6700 FTIR分光計で実施した非晶質の化合物1の赤外スペクトル、および(b)対応するピークリストを示す図である。 (a)大口径Bruker−Biospin Avance III 500MHz NMR分光計内に配置したBruker−Biospin 4mm CPMASプローブで実施した結晶質の化合物1の13C固体NMRスペクトル、および(b)対応するピークリストを示す図である。化学シフトは、29.5ppmの外試料の固相アダマンタンを基準とする。 (a)大口径Bruker−Biospin Avance III 500MHz NMR分光計内に配置したBruker−Biospin 4mm CPMASプローブで実施した液晶質の化合物1の13C固体NMRスペクトル、および(b)対応するピークリストを示す図である。化学シフトは、29.5ppmの外試料の固相アダマンタンを基準とする。 (a)大口径Bruker−Biospin Avance III 500MHz NMR分光計内に配置したBruker−Biospin 4mm CPMASプローブで実施した非晶質の化合物1の13C固体NMRスペクトル、および(b)対応するピークリストを示す図である。化学シフトは、29.5ppmの外試料の固相アダマンタンを基準とする。
化合物1は、結晶形、二次元規則性液晶形、または非晶形で存在し得ることが分かっている。これらの形態は、トランスサイレチンアミロイド疾患を治療するための製剤製品において使用することができる。各形態は、生物学的利用能、安定性、および製造性などの特性に関して他を上回る利点を有し得る。本発明の一態様では、その液晶形または非晶形よりも大量調製および取扱いに適している可能性が高い化合物1の結晶形を発見した。化合物1の結晶形を高純度で生成するプロセスを本明細書に記載している。本発明の別の一目的は、化合物1の各固体形態を、化合物1の他の固体形態を実質的に含ませずに調製するプロセスを提供することである。さらに、本発明の一目的は、上述のような様々な固体形態の化合物1を含む医薬製剤、およびこのような医薬製剤を投与することによってトランスサイレチンアミロイド疾患を治療する方法を提供することである。
定義
本明細書で使用する用語「治療する」は、別段の指示がない限り、このような用語が当てはまる障害もしくは状態、またはこのような障害もしくは状態の1種もしくは複数の症状を回復させ、軽減し、その進行を阻害し、またはそれを阻止することを意味する。本明細書で使用する用語「治療」は、別段の指示がない限り、直前で定義した「治療する」行為を指す。
本明細書では、トランスサイレチンまたはTTRは、2,2,2対称を特徴とする55kDaのホモ四量体であり、二量体−二量体界面に2個の同一のろう斗状結合部位を有し、これらの部位において、甲状腺ホルモン(T4)は血漿およびCSF中で結合することができる。TTRは、1当量未満のホロレチノール結合タンパク質に一般に結合する。TTRは、生理学的条件下で四量体化する127番の残基タンパク質である。TTRは、血清中ではチロキシンの第3の輸送体として、脳脊髄液中では第1の担体として働く。TTRはまた、レチノール結合タンパク質との会合によってレチノールを輸送する。TTRは、低pHでアミロイドを形成する。
本明細書では、「6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾール」は、以下の化学構造で表すことができる。
Figure 2016128444
本明細書では、「メグルミン」は、以下の化学構造で表すことができる。
Figure 2016128444
本明細書では、特定の結晶形、液晶形、または非晶形に関連する用語「実質的に純粋な」は、その結晶形または非晶形が、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満、好ましくは1重量%未満のその化合物の他のいずれかの物理的形態を包含することを意味する。
本明細書では、X線回折のピーク位置に関連する用語「本質的に同一の」は、典型的なピーク位置および強度ばらつきが考慮されていることを意味する。例えば、ピーク位置(2θ)が、回折を測定するために使用する装置においても同様に、いくらかのばらつき、一般に0.1〜0.2度程度を示すであろうことを当業者なら理解するであろう。さらに、相対ピーク強度が、装置間ばらつき、ならびに結晶化度、好ましい配向、調製した試料表面、および当業者に公知の他の因子に起因するばらつきを示し、これを単に定性的な尺度とみなすべきであることを当業者なら理解するであろう。同様に、本明細書では、固体NMRスペクトルおよびラマンスペクトルに関連する「本質的に同一の」は、当業者に公知のこれらの分析技術に関連するばらつきも内包することを意図している。例えば、固体NMRで測定される13C化学シフトは、非常に明確なピークでは最大で0.2ppmのばらつき、幅広いラインではさらに大きなばらつきを一般に有し、一方、ラマンおよび赤外シフトは、約2cm−1のばらつきを一般に有する。
用語「多形」は、同一の化合物の様々な結晶形を指しており、それには、同一の化合物の水和物(例えば、結晶構造中に結合水が存在)および溶媒和物(例えば、水以外の結合溶媒)を包含する他の固体状態の分子形態が包含されるが、それらだけに限らない。
用語「液晶」は、二次元の規則性を有するあらゆる固体物質を指す。場合によっては、非晶質固体は、X線粉末回折(XRPD)結晶学、固体核磁気共鳴(ssNMR)分光法、示差走査熱量測定法(DSC)、またはこれらの技術のいくつかの組合せを包含する既知の技術により特性決定することができる。下記で説明するように、液晶質固体は、1個または2個のブロードなピーク(すなわち、約5度2θ以上のベース幅を有するピーク)から一般に構成される広汎なXRPDパターンを示す。
用語「非晶質」は、三次元の規則性を欠いているあらゆる固体物質を指す。場合によっては、非晶質固体は、X線粉末回折(XRPD)結晶学、固体状態核磁気共鳴(ssNMR)分光法、示差走査熱量測定法(DSC)、またはこれらの技術のいくつかの組合せを包含する既知の技術により特性決定することができる。下記で説明するように、非晶質固体は、1個または2個のブロードなピーク(すなわち、約5度2θ以上のベース幅を有するピーク)から一般に構成される広汎なXRPDパターンを示す。
用語「結晶質」は、三次元の規則性を示すあらゆる固体物質を指し、これは、非晶質固体物質とは対照的に、鋭く明確なピークを有する特殊なXRPDパターンを生じる。
用語「溶媒和物」は、原薬および化学量論量または非化学量論量の1種または複数の溶媒分子(例えばエタノール)を含む分子複合体を述べている。溶媒が、薬物に緊密に結合している場合、得られた複合体は十分に規定された、湿度と無関係な化学量論を有する。しかし、チャネル溶媒和物および吸湿性化合物のように、溶媒が弱く結合している場合、溶媒含有量は、湿度および乾燥状態に依存するであろう。このような場合、複合体は、大抵の場合、非化学量論的である。
用語「水和物」は、原薬および化学量論量または非化学量論量の水を含む溶媒和物を述べている。
用語「粉末X線回折パターン」または「PXRDパターン」は、実験で観察されたディフラクトグラムまたはそれに由来するパラメータを指している。粉末X線回折パターンは、ピーク位置(横座標)およびピーク強度(縦座標)により特徴づけられる。
用語「2シータ値」または「2θ」は、X線回折実験の実験設定に基づいて、度で示したピーク位置を指しており、回折パターンにおける共通の横座標単位である。実験設定は、入射光束が一定の格子面と角度シータ(θ)を形成するときに反射が回折される場合に、反射された光束が、角度2シータ(2θ)で記録されることを必要とする。特定の固体形態に関する特定の2θ値に対する本明細書の言及は、本明細書に記載のX線回折実験条件を使用して測定した2θ値(度)を意味することを意図していることを理解すべきである。例えば、本明細書に記載されているように、CuKα(波長1.54056Å)を、放射線の源として使用した。
用語「医薬組成物」は、本明細書に記載の化合物1の固体形態の1種または複数と、生理学的/薬学的に許容できる担体、希釈剤、媒体、および/または賦形剤などの他の化学成分とを含む組成物を指している。医薬組成物の目的は、ヒトまたは他の哺乳動物などの生物への化合物の投与を容易にすることである。
用語「薬学的に許容できる」「担体」、「希釈剤」、「媒体」、または「賦形剤」は、医薬組成物を形成するために特定の医薬剤と共に包含されてよく、固体でも液体でもよい1種の材料(または複数の材料)を指している。固体担体の例は、ラクトース、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体担体の例は、シロップ、ラッカセイ油、オリーブ油、水などである。同様に、担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野で公知の時間遅延性または時間放出性の材料を単独で、またはワックス、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸メチルなどと共に包含することができる。
化合物1の固体形態
化合物1の固体形態は、次の1種または複数により特性決定することができる:粉末X線回折パターン(すなわち、様々な回折角度(2θ)でのX線回折ピーク)、固体状態核磁気共鳴(NMR)スペクトルパターン、ラマンスペクトルダイアグラムパターン、赤外スペクトルパターン、水溶性、ハーモナイゼーション国際会議(ICH)の高強度光条件下での光安定性、ならびに物理的および化学的貯蔵安定性。例えば、化合物1の結晶形、二次元規則性液晶形、および非晶形(下記で考察)を、その粉末X線回折パターンにおけるピークの位置および相対強度によりそれぞれ特性決定した。
化合物1の固体形態の粉末X線回折パターンは、Cu放射線源と、固定スリット(発散=1.0mm、抗散乱=0.6mm、および受光=0.6mm)と、シンチレーションカウンタ検出器とを備えたBruker D8回折計を使用して収集した。データは、ステップサイズ0.040度およびステップ時間2.0秒を使用して、Cu波長Kα=1.54056Åで3.0〜40.0度2シータまでシータ−シータゴニオメータで収集した。X線管電圧およびアンペア数は、それぞれ40kVおよび40mAで設定した。試料は、Nickel Disk(Gasser & Sons,Inc.Commack、NY)内に置いて調製し、データ収集中は回転させた。Bruker DIFFRAC Plusソフトウェア(バージョン2.6)を使用して、データを収集し、分析した。PXRDデータファイル(.raw)は、ピーク探索前には処理しなかった。通常、1の閾値および0.3の幅値を使用して、予備的にピークの帰属を作製した。自動帰属のアウトプットを視覚的に確認して、有効性を保証し、必要に応じて、調整を手動で行った。さらに、適当な場合、ピークをスペクトル内に手動で割り当てた。
本明細書に報告した測定で使用したBrukerシステムと同様のBragg−Brentano機器でX線回折測定を行うには、試料を一般には、空隙を有するホルダー内に入れる。試料粉末をガラススライドまたは同等物によりプレスして、ランダムな表面および適正な試料高さを保証する。次いで、試料ホルダーを機器に入れる。入射X線光束を、最初はホルダーの平面に対して小さい角度で試料に向け、次いで、入射光束とホルダーの平面との角度を連続的に高める弧を介して動かす。このようなX線粉末分析に関連する測定差は、(a)試料調製での誤差(例えば、試料高さ);(b)機器誤差(例えば、平坦試料の誤差);(c)較正誤差;(d)操作者の誤差(ピーク位置を決定する際に存在する誤差を包含する);および(e)材料の性質(例えば、好ましい配向および透過性の誤差)を包含する様々な因子から生じている。較正誤差および試料高さ誤差は、大抵の場合、すべてのピークを同じ方向にシフトさせる。平坦なホルダーを使用する場合の試料高さにおける僅かな差は、PXRDピーク位置において大きな変位をもたらすであろう。系統的な研究により、Shimadzu XRD−6000を典型的なBragg−Brentano配置で使用すると、1mmの試料高さの差が、1度(2θほどのピークシフトをもたらすことが示された(Chenら、J Pharmaceutical and Biomedical Analysis 26:63(2001))。これらのシフトは、X線ディフラクトグラムから同定することができ、シフトを補償する(系統的補正係数をすべてのピーク位置値に適用する)か、または機器を再較正することにより除去することができる。前述のように、系統的補正係数を適用してピーク位置を一致させることにより、様々な機械からの測定を調整することが可能である。通常、この補正係数により、Brukerから測定されたピーク位置を、予測されたピーク位置と一致させるが、それは0〜0.2度(2θ)の範囲内であればよい。
ピーク位置(2θ)が一般に0.1〜0.2度(2θ)程度のいくらかの装置間ばらつきを示すであろうことを当業者なら理解するであろう。したがって、ピーク位置(2θ)が報告されている場合、こうした数が、このような装置間ばらつきを内包することを意図していることを当業者なら認識するであろう。さらに、本発明の結晶形が、所与の図面に示したのと本質的に同一の粉末X線回折ピーク位置を有すると記載されている場合、用語「本質的に同一の」はまた、回折ピーク位置におけるこのような装置間ばらつきを内包することを意図している。さらに、相対ピーク強度が、装置間ばらつき、ならびに結晶化度、好ましい配向、調製した試料表面、および当業者に公知の他の因子に起因するばらつきを示し、これを単に定性的な尺度とみなすべきであることを当業者なら理解するであろう。
本発明の固体形態はまた、ラマン分光法により特性決定することができる。ラマンスペクトルは、FT−IRベンチに取り付けられたNicolet NXR FT−ラマンアクセサリーを使用して、収集した。分光計に、1064nmのNd:YVO4レーザーおよび液体窒素冷却ゲルマニウム検出器を備え付ける。データ取得の前に、ポリスチレンを使用して、機器性能および較正検証を行った。試料をガラスNMRチューブ内で分析し、スペクトル収集中、このチューブを回転させた。スペクトルは、0.5Wのレーザー出力および400回の同時加算スキャンを使用して、収集した。収集範囲は、3700〜50cm−1とした。スペクトルは、2cm−1の解像度およびHapp−Genzelアポダイゼイションを使用して、記録した。ピークは、Thermo Nicolet Omnic7.4ソフトウェアを使用して、手動で同定した。ピーク位置は、ピークの最大でピッキングした。相対強度値は、次の基準:強(1.00〜0.50)、中(0.49〜0.10)、および弱(0.09以下)を使用して、強(S)、中(M)、および弱(W)に分類した。
本発明の固体形態はまた、赤外(IR)分光法を使用して、特性決定することができる。IRスペクトルは、KBrビームスプリッタとd−TGS KBr検出器とを備えたNicolet 6700 FTIR分光計を使用して、取得した。サンプリングには、Specac Golden Gate Mk II単一反射ダイヤモンドATRアクセサリーを使用した。IRベンチならびにATRアクセサリーに窒素パージを接続した。空気バックグラウンドを収集するとき、Golden Gate ATRアンビルはアップポジションであった。Golden Gateアンビルによって、粉末試料をダイヤモンド窓に対して圧縮した。アンビルが試料を完全に圧縮したとき、約50cN・mのトルクを試料に加えた。スペクトルは、256回の同時加算スキャンと共に2cm−1の解像度で収集した。収集範囲は、4000〜525cm−1とした。Happ−Genzelアポダイゼイションを使用した。ATR技術では、追加で試料を調製する必要はない。ピークは、Thermo Nicolet Omnic7.4ソフトウェアを使用して、手動で同定した。ピーク位置は、ピークの最大でピッキングした。強度値は、次の基準:強(1.00〜0.50)、中(0.49〜0.40)、および弱(0.39以下)を使用して、強(S)、中(M)、および弱(W)に分類した。2400〜1900cm−1の領域の特徴は、Golden Gate d−ATRで実行した全スペクトルに存在し、したがって、この領域のピークは、固体形態の同定には使用せず、ピークリストに含めなかった(Ferrer,N.;Nogues−Carulla,J.M.、Diamond and Related Materials、1996、5、598〜602。Thongnopkun,P;Ekgasit,S.、Diamond and Related Materials、2005、14、1592〜1599。Pike Technologies Technical Note:Pike Reflections,Winter2002、Vol.7/1;www.piketech.com)。
本発明の様々な形態はまた、固体NMR分光法を使用して、特性決定することができる。
結晶形および非晶形に関する13C固体状態スペクトルは、次のように収集することができる。試料約80mgを4mmのZrOローターに緊密に充填した。スペクトルは、大口径Bruker−Biospin Avance III 500MHz(H周波数)NMR分光計内に配置したBruker−Biospin 4mm CPMASプローブで収集した。充填したローターをマジック角に配向させ、15.0kHzで回転させた。窒素流を直接あてて、試料を25.0℃に冷却した。13C固体状態スペクトルは、プロトンデカップリング交差分極マジック角回転法(CPMAS)実験を使用して、収集した。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。取得中、約100kHzのプロトンデカップリング界を適用した。2048スキャンを6.5秒のリサイクル遅延で収集した。外標準の結晶アダマンタンを使用し、そのアップフィールド共鳴を29.5ppmに設定して、そのスペクトルを基準とした。Bruker−BioSpin TopSpinバージョン3.0ソフトウェアを使用して、自動ピークピッキングを行った。通常、10の閾値を使用して、ピークを予備選択した。自動ピークピッキングのアウトプットを視覚的に確認して、有効性を保証し、必要に応じて、調整を手動で行った。
液晶形に関する13C固体状態スペクトルは、次のように収集することができる。試料約10mgを4mmのZrOローターの中心に配置した。スペクトルは、大口径Bruker−Biospin Avance III 500MHz(H周波数)NMR分光計内に配置したBruker−Biospin 4mm CPMASプローブで収集した。充填したローターをマジック角に配向させ、6.0kHzで回転させた。窒素流を直接あてて、試料を25.0℃に冷却した。13C固体状態スペクトルは、回転サイドバンドの全抑制(TOSS)を用いたプロトンデカップリング交差分極マジック角回転法(CPMAS)実験を使用して、収集した。交差分極接触時間を2.0ミリ秒に設定した。取得中、約85kHzのプロトンデカップリング界を適用した。10240スキャンを3秒のリサイクル遅延で収集した。外標準の結晶アダマンタンを使用し、そのアップフィールド共鳴を29.5ppmに設定して、そのスペクトルを基準とした。Bruker−BioSpin TopSpinバージョン3.0ソフトウェアを使用して、自動ピークピッキングを行った。通常、10の閾値を使用して、ピークを予備選択した。自動ピークピッキングのアウトプットを視覚的に確認して、有効性を保証し、必要に応じて、調整を手動で行った。
所与の化合物の結晶形が、単一多形の実質的に純粋な形態で存在し得るが、2種以上の異なる多形または非晶形を含む結晶形でも存在し得ることも当業者なら認識するであろう。固体形態が2種以上の多形を含む場合、X線回折パターンは、本発明の個々の多形それぞれに特徴的なピークを有するであろう。例えば、2種の多形を含む固体形態は、実質的に純粋な固体形態に対応する2種のX線回折パターンの重畳である粉末X線回折パターンを有するであろう。例えば、化合物1の固体形態は、第1および第2固体形態を含有することができ、ここでは、固体形態は、少なくとも10重量%の第1多形を含有する。他の例では、固体形態は、少なくとも20重量%の第1多形を含有する。さらに他の例は、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、または少なくとも50重量%の第1多形を含有する。様々な量におけるいくつかの個々の多形および非晶形の多くのこのような組合せが可能であることを当業者なら認識するであろう。
結晶形
化合物1の結晶形は、実施例1に記載した通りに生成することができる完全な結晶質、非吸湿性、無水性のモノ−メグルミン塩形態である。重要なことに、この形態は、化合物1の遊離酸および他の固体形態よりも利点を有する。例えば、結晶形は、遊離酸(非緩衝水では<11ug/mLと比較して、溶解性(非緩衝水では>3.4mg/mL)が向上した。さらに、本明細書に記載の他の固体形態と比較して、結晶形は、非吸湿性であるという理由から、取扱い適性が向上した。
化合物1の結晶形を、Cu放射線源と、固定スリット(発散=1.0mm、抗散乱=0.6mm、および受光=0.6mm)と、シンチレーションカウンタ検出器とを備えたBruker D8回折計で測定した、図1Aに示すPXRDパターンにより特性決定した。度(2θ)および≧10.0%の相対強度を伴う相対強度で表された結晶形のPXRDパターンを図1Bに示している。相対強度は、結晶サイズおよび形態に応じて変化する可能性がある。
また、化合物1の結晶形を、1064nmのNd:YVOレーザーと液体冷却ゲルマニウム検出器とを備えたNicolet NXR FT−ラマン分光計で実施した、図4Aに示すラマンスペクトルパターンにより特性決定した。化合物1の結晶形のラマンスペクトルピークを図4Bに示している。
また、化合物1の結晶形を、KBrビームスプリッタとd−TGS KBR検出器とを備えたNicolet 6700 FTIR分光計で実施した、図7Aに示す赤外スペクトルパターンにより特性決定した。化合物1の結晶形の赤外スペクトルピークを図7Bに示している。
また、化合物1の結晶形を、大口径Bruker−Biospin Avance III 500MHz NMR分光計内に配置したBruker−Biospin 4mm CPMASプローブで実施した、図10Aに示す固体NMRスペクトルパターンにより特性決定した。化合物1の結晶形の13C化学シフトを図10Bに示している。
液晶形
化合物1の液晶形は、実施例2に記載の通りに生成することができる。
化合物1の液晶形を、Cu放射線源と、固定スリット(発散=1.0mm、抗散乱=0.6mm、および受光=0.6mm)と、シンチレーションカウンタ検出器とを備えたBruker D8回折計で測定した、図2Aおよび2Bに示すPXRDパターンにより特性決定した。
また、化合物1の液晶形を、1064nmのNd:YVOレーザーと液体冷却ゲルマニウム検出器とを備えたNicolet NXR FT−ラマン分光計で実施した、図5Aに示すラマンスペクトルパターンにより特性決定した。化合物1の液晶形のラマンスペクトルピークを図5Bに示している。
また、化合物1の液晶形を、KBrビームスプリッタとd−TGS KBR検出器とを備えたNicolet 6700 FTIR分光計で実施した、図8Aに示す赤外スペクトルパターンにより特性決定した。化合物1の液晶形の赤外スペクトルピークを図8Bに示している。
また、化合物1の液晶形を、大口径Bruker−Biospin Avance III 500MHz NMR分光計内に配置したBruker−Biospin 4mm CPMASプローブで実施した、図11Aに示す固体NMRスペクトルパターンにより特性決定した。化合物1の液晶形の13C化学シフトを図11Bに示している。
非晶形
化合物1の非晶形は、実施例3に記載の通りに生成することができる。
化合物1の非晶形を、Cu放射線源と、固定スリット(発散=1.0mm、抗散乱=0.6mm、および受光=0.6mm)と、シンチレーションカウンタ検出器とを備えたBruker D8回折計で測定した、図3Aおよび3Bに示すPXRDパターンにより特性決定した。
また、化合物1の非晶形を、1064nmのNd:YVOレーザーと液体冷却ゲルマニウム検出器とを備えたNicolet NXR FT−ラマン分光計で実施した、図6Aに示すラマンスペクトルパターンにより特性決定した。化合物1の非晶形のラマンスペクトルピークを図6Bに示している。
また、化合物1の非晶形を、KBrビームスプリッタとd−TGS KBR検出器とを備えたNicolet 6700 FTIR分光計で実施した、図9Aに示す赤外スペクトルパターンにより特性決定した。化合物1の非晶形の赤外スペクトルピークを図9Bに示している。
また、化合物1の非晶形を、大口径Bruker−Biospin Avance III 500MHz NMR分光計内に配置したBruker−Biospin 4mm CPMASプローブで実施した、図12Aに示す固体NMRスペクトルパターンにより特性決定した。化合物1の非晶形の13C化学シフトを図12Bに示している。
医薬組成物
本発明の活性剤(すなわち、本明細書に記載の化合物1の固体形態)は、哺乳動物の医学的使用に適した医薬組成物に製剤化することができる。任意の適切な投与経路を使用して、患者に有効投与量の化合物1の固体形態のいずれかを提供することができる。例えば、経口または非経口製剤などを使用することができる。剤形には、カプセル剤、錠剤、分散剤、懸濁剤など、例えば、腸溶コーティングされたカプセル剤および/または錠剤、化合物1の腸溶コーティングされたペレットを含有するカプセル剤および/または錠剤が包含される。すべての剤形において、化合物1の固体形態を他の適切な構成物質と混合することができる。組成物は、単位剤形で好都合に提供され、医薬分野で公知の任意の方法により調製することができる。本発明の医薬組成物は、治療有効量の活性剤および1種または複数の不活性な薬学的に許容できる担体、および場合により他の任意の治療成分、安定化剤などを含む。担体(複数可)は、製剤の他の成分と相容性であり、かつそのレシピエントに対して過度に有害でないという意味において薬学的に許容できなければならない。組成物は、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、滑沢剤、防腐剤(抗酸化剤を包含する)、フレーバリング剤、風味マスキング剤、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、甘味剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20(商標)」および「TWEEN80(商標)」などのポリソルベート、ならびにBASFから入手可能なPluronic(登録商標)F68およびF88)、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリンなどのリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸および脂肪酸エステル、ステロイド(例えば、コレステロール))、ならびにキレート化剤(例えば、EDTA、亜鉛、および他のこのような適切なカチオン)をさらに包含することができる。本発明による組成物での使用に適した他の医薬賦形剤および/または添加剤は、Remington:The Science & Practice of Pharmacy、19版、Williams & Williams、(1995)、および「Physician’s Desk Reference」、52版、Medical Economics、Montvale、NJ(1998)、および「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、3版、A.H.Kibbe編、Pharmaceutical Press、2000に列挙されている。本発明の活性剤は、経口、直腸、局所、鼻、眼、または非経口(腹腔内、静脈内、皮下、または筋肉内注射を包含する)投与に適したものを包含する組成物に製剤化することができる。
製剤中の活性剤の量は、剤形、治療される状態、標的患者集団、および他の考慮事項を包含する様々な因子に応じて変動し、通常、当業者によって容易に決定される。治療有効量は、トランスサイレチン(TTR)解離を阻害(すなわち、天然TTR四量体の単量体への解離を阻止)するのに必要な量である。組成物は、約0.001重量%〜約99重量%の範囲の活性剤、好ましくは約0.01重量%〜約5重量%の活性剤、より好ましくは約0.01重量%〜2重量%の活性剤を通常含有し、組成物中に含有される賦形剤/添加剤の相対量にも左右される。
本発明の医薬組成物は、有効成分としての治療有効量の活性剤と1種または複数の適当な医薬担体とを従来の手順に従って組み合わせることにより調製した従来の剤形で投与する。これらの手順は、所望の調製物に適しているような成分の混合、顆粒化、および圧縮、または溶解を必要とし得る。
使用する医薬担体(複数可)は、固体でも液体でもよい。例示的な固体担体には、ラクトース、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム(magnesiun)、ステアリン酸などが包含される。例示的な液体担体には、シロップ、ラッカセイ油 オリーブ油、水などが包含される。同様に、担体(複数可)は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの当技術分野で公知の時間遅延性または時間放出性の材料を単独で、またはワックス、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸メチル(methylmethacrylatt)などと共に包含することができる。
様々な医薬形態を使用することができる。したがって、固体担体を使用する場合、調製物は、錠剤化するか、粉末もしくはペレット形態で硬ゼラチンカプセル剤に入れるか、またはトローチ剤もしくはロゼンジ剤の形態とすることができる。固体担体の量は、変動してよいが、通常、約25mg〜約1gである。液体担体を使用する場合、調製物は、シロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤、アンプルもしくはバイアル中の無菌注射液剤もしくは懸濁剤、または非水性液体懸濁剤の形態とすることができる。
安定な水溶性投与形態を得るために、活性剤の薬学的に許容できる塩を、メグルミンの0.3M溶液などの有機または無機塩基の水溶液に溶解させることができる。可溶性塩形態を利用することができない場合、活性剤を適切な共溶媒または共溶媒の組合せに溶解させることができる。適切な共溶媒の例には、全体積の0〜60%の範囲の濃度のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリソルベート80、グリセリン(gylcerin)などが包含されるが、それらだけに限らない。組成物はまた、水もしくは等張性生理食塩水などの適当な水性媒体中またはデキストロース溶液中の活性剤の塩形態の溶液の形態とすることができる。
本発明の組成物中で使用する化合物1の実際の投与量は、使用する特定の固体形態、製剤化する特定の組成物、投与方式、ならびに治療する特定の部位、ホスト、および疾患によって変動することは理解されるであろう。薬剤に関する実験データを考慮して、従来の投与量決定試験を使用すれば、当業者は、所与の一連の状態に関して最適な投与量を確定することができる。経口投与では、通常使用される例示的な1日用量は、適当な間隔で繰り返される治療経過に伴い約0.001〜約1000mg/体重kg、より好ましくは約0.001〜約50mg/体重kgである。プロドラッグの投与は、十分に有効な形態の重量レベルと化学的に同等である重量レベルで一般に投与される。本発明の実施では、最も適切な投与経路、ならびに治療用量の規模は、治療すべき疾患の性質および重症度に依存するであろう。用量および投与頻度はまた、個々の患者の年齢、体重、および応答に応じて変動し得る。通常、適切な経口剤形は、1単回用量または等分に分けられた用量で投与される有効成分の1日の全用量0.5mg〜100mgの用量範囲をカバーし得る。このような製剤における化合物1の好ましい量は、約0.5mg〜約20mg、例えば、約1mg〜約10mgまたは約1mg〜約5mgなどである。
本発明の組成物は、医薬組成物を調製するために通常知られている様式で、例えば、混合、溶解、顆粒化、乳化、カプセル封入、閉じ込め、または凍結乾燥などの従来技術を使用して製造することができる。活性化合物の薬学的に使用することができる調製物への加工を容易にする賦形剤および佐剤から選択することができる1種または複数の生理学的に許容できる担体を使用する従来の様式で、医薬組成物を製剤化することができる。
経口投与では、化合物1の固体形態は、当技術分野で公知の薬学的に許容できる担体と活性剤を組み合わせることにより製剤化することができる。このような担体により、本発明の化合物を、治療される患者が経口摂取するための錠剤、丸剤、カプセル剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することができる。活性剤と混合して固体賦形剤を使用し、場合により、生じた混合物を粉砕し、適切な佐剤を添加した後に顆粒の混合物を加工して、経口用途用の医薬調製物を得ることができる。適切な賦形剤には、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを包含する糖などの充填剤;およびセルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、またはポリビニルピロリドン(PVP)が包含される。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加することができる。
経口で使用することができる医薬調製物には、ゼラチン製のプッシュ−フィットカプセル剤、ならびにゼラチンとグリセリンまたはソルビトールなどの可塑剤とから製造された軟質密閉カプセル剤が包含される。プッシュ−フィットカプセル剤は、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および場合により安定化剤と混合されている有効成分を含有することができる。軟質カプセル剤では、活性剤を、脂肪油、流動パラフィン、または液状ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を添加することができる。経口投与のための製剤はいずれも、このような投与に適した投与量とすべきである。頬側投与では、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤またはロゼンジの形態をとってよい。
眼への投与では、化合物が、例えば、前房、後房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜、および強膜を包含する眼の角膜および内部領域に浸透し得る十分な期間、化合物が眼表面と接触し続けられるような薬学的に許容できる眼用媒体中で、活性剤を送達する。薬学的に許容できる眼用媒体は、例えば、軟膏、植物油、またはカプセル封入材料であり得る。本発明の活性剤はまた、硝子体液、房水、またはサブテノンに直接注入することができる。
あるいは、有効成分は、使用前に適切な媒体、例えば無菌発熱物質不含水で構成するための散剤形態とすることができる。化合物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐剤または停留浣腸剤などの直腸または膣組成物に製剤化することができる。
前記の製剤に加えて、固体形態はまた、デポ調製物として製剤化することができる。このような長時間作用性製剤は、埋込み(例えば、皮下または筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、固体形態は、適切なポリマーもしくは疎水性材料(例えば、許容できる油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂と共に、またはやや難溶の誘導体として、例えば、やや難溶の塩として製剤化することができる。
さらに、化合物1の固体形態は、治療剤を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出系を使用して、送達することができる。様々な持続放出材料が確立されており、当業者に知られている。
医薬組成物はまた、適切な固相またはゲル相担体または賦形剤を含むことができる。このような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが包含される。
本出願人らは、6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールが単独で、水、リン酸緩衝液、および塩酸などの水性媒体と接触して、ゲルを形成することができることを発見した。理論に拘泥するものではないが、このようなゲル形成が、経口投与時に、このような化合物の溶解および/または生物学的利用能を妨害する可能性があり、それによって、例えば、胃圧縮、および投与用量と比較して比例しない対象の薬物血漿中レベルが生じるようである。本出願人らは、驚くべきことに、ゲル形成および胃圧縮に比較的耐性を示すことができ、比較的より大きな溶解性および生物学的利用能を有することができ、投与用量に比例する薬物レベルを送達することができる、化合物1(6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールメグルミン)の固体形態の医薬組成物を発見した。さらに、ある種の実施形態では、化合物1の医薬組成物は、高温および湿度などの加速劣化条件に安定であり得る。したがって、本明細書の医薬組成物はまた、任意の従来の製剤もしくは経路もしくは投与方法において、またはそれらをさらに組み合わせて使用することが企図されており、この場合、水または他の水性媒体との接触、例えば、非経口投与の様々な形態でのような血液または他の体液との接触(例えば、静脈内投与、埋込みなどでの血液との接触)、粘膜との接触(例えば、膣または直腸投与による坐剤、経肺投与用の乾燥粉末エアロゾル剤、粘膜に施用する経皮パッチ剤またはロゼンジ剤など)が起こる可能性がある。このような投与経路では、ゲル形成耐性、より大きな溶解性および生物学的利用能、用量比例性、貯蔵安定性などの、ある種の医薬組成物の利益が有益である可能性がある。
例えば、ある種の実施形態では、医薬組成物は、その医薬組成物中の固体形態が、固体形態だけの場合と比較して、水中でのより大きな分散性または水と接触した際のより大きなゲル形成耐性を有することを特徴とする、化合物1の固体形態と、約100〜約1000の平均分子量を有するポリエチレングリコールとを含む。ある種の実施形態では、ポリエチレングリコールの分子量は、約400である。
ある種の実施形態では、本発明は、PEG400、Span(商標)80、および/またはポリソルベート80を含む、前述の医薬組成物のいずれかに関する。
ある種の実施形態では、本発明は、化合物1の前記固体形態が結晶形である、前述の医薬組成物のいずれかに関する。ある種の実施形態では、本発明は、化合物1の前記固体形態が液晶形である、前述の医薬組成物のいずれかに関する。ある種の実施形態では、本発明は、化合物1の前記固体形態が非晶形である、前述の医薬組成物のいずれかに関する。
物品
化合物1の固体形態は、包装材料と、包装材料中にある、TTRフォールディングをモジュレートするために、またはTTR介在性疾患もしくは障害、またはTTRミスフォールディングが関与する疾患もしくは障害の1種または複数の症状を治療、阻止、または改善するために有効である、本発明において提供する化合物1の固体形態と、化合物1の固体形態が、TTRフォールディングをモジュレートするために、またはTTR介在性疾患もしくは障害、またはTTRミスフォールディングが関与する疾患もしくは障害の1種または複数の症状を治療、阻止、または改善するために使用されることを示すラベルとを含有する物品として包装することができる。
本発明において提供する物品は、包装材料を含有する。医薬用製品の包装で使用される包装材料は、当業者に周知である。例えば、米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号、および同第5,033,252号を参照されたい。医薬用包装材料の例には、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、袋、バイアル、容器、シリンジ、瓶、ならびに選択された製剤および意図した投与と治療の方式に適した任意の包装材料が包含されるが、それらだけに限らない。TTRミスフォールディングが介在物または誘因物として症状または原因に関与する、任意の疾患または障害のための様々な治療。
ある種の実施形態では、本発明は、化合物1の前記固体形態が結晶形である、前述の物品のいずれかに関する。ある種の実施形態では、本発明は、化合物1の前記固体形態が液晶形である、前述の物品のいずれかに関する。ある種の実施形態では、本発明は、化合物1の前記固体形態が非晶形である、前述の物品のいずれかに関する。
in vitro生物学的試験
いくつかのin vitro試験を使用して、固体形態を、トランスサイレチン四量体を安定化する能力、またはフィブリル形成を阻止する能力に関して評価することができる。これらの試験には、フィブリル形成アッセイ、血漿選択性アッセイ、トランスサイレチン化合物複合体の三次元構造の決定(例えば、X線結晶学による)、トランスサイレチン四量体解離またはフィブリル形成の動力学、ならびに、例えば遠心分離または熱量測定によるトランスサイレチン化合物相互作用の化学量論およびエネルギーの決定が包含され得る。例示的なin vitroアッセイの詳細は、米国特許第7,214,695号および同第7,214,696号;ならびに米国特許出願公開第2010/0120919号に提供されている(これらはすべて、その全体を参照により本明細書に援用する)。
本発明の固体形態を使用する方法
化合物1の固体形態は、その解離がTTRアミロイドーシスに関与するタンパク質トランスサイレチン(TTR)の安定化に有用であり(すなわち、天然TTR四量体の単量体への解離を阻止し、それによって、TTRアミロイドフィブリル形成が阻害される)、したがって、ヒトを含めた哺乳動物におけるトランスサイレチンアミロイド疾患の治療が提供される。
少なくともいくつかのアミロイド疾患は、20種を超える非相同タンパク質またはタンパク質断片のいずれか1種の沈着によって引き起こされるようであり、最終的には原繊維性のクロス−β−シート四次構造が生じる。トランスサイレチンのように正常にフォールディングされたタンパク質からのアミロイドフィブリルの形成は、アセンブリ−コンピテント中間体を生成するタンパク質ミスフォールディングを必要とする。トランスサイレチン(TTR)アミロイド形成のプロセスは、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)、および家族性アミロイド心筋症(FAC)を引き起こすようである。SSAは野生型TTRの沈着に関連するが、FAPおよびFACは80種超のTTR変異体のうちの1種のアミロイド形成により引き起こされる。例えば、Colon,W.;Kelly,J.W.、Biochemistry、1992、31、8654〜60;Kelly,J.W.、Curr.Opin.Struct.Biol.、1996、6、11〜7;Liu,K.ら、Nat.Struct.Biol.、2000、7、754〜7;Westermark,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、1990、87、2843〜5;Saraiva,M.J.ら、J.Clin.Invest.、1985、76、2171〜7;Jacobson,D.R.ら、N.Engl.J.Med.、1997、336、466〜73;Buxbaum,J.N.、Tagoe,C.E.、Ann.Rev.Med.、2000、51、543〜569;およびSaraiva,M.J.、Hum.Mutat.、1995、5、191〜6を参照されたく、これらは各々、その全体を参照により援用する。別のTTRアミロイド疾患には、肝移植後の心アミロイドーシス、肝移植後の末梢神経アミロイドーシス、軟髄膜アミロイドーシス、トランスサイレチン突然変異体に関連する手根管症候群、硝子体沈着、およびトランスサイレチン突然変異体に関連する皮膚アミロイドーシスが包含される。
化合物1の治療有効量を、一般には医薬組成物の形態で投与して、TTR解離のモジュレートまたは調節により介在される疾患を治療することができる。「有効量」とは、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与したとき、TTR解離により介在される疾患の治療を実施するのに十分な薬剤の量を意味することを意図している。したがって、化合物1の治療有効量は、TTRの解離をモジュレート、調節、または阻害して、その活性により介在される疾患状態を低減または軽減するのに十分な量である。「治療する」は、ヒトなどの哺乳動物における疾患状態の緩和を少なくとも意味することを意図しており、それには、特にその哺乳動物が疾患状態を有しやすいことが判明しているが、まだ疾患状態を有するとは診断されていないとき、その哺乳動物において疾患状態が生じることを阻止すること;疾患状態をモジュレートおよび/もしくは阻害すること;ならびに/または疾患状態を軽減することが包含される。例示的な疾患状態には、老人性全身性アミロイドーシス(SSA)、家族性アミロイド多発ニューロパチー(FAP)、家族性アミロイド心筋症(FAC)、肝移植後の心アミロイドーシス、肝移植後の末梢神経アミロイドーシス、軟髄膜アミロイドーシス、トランスサイレチン突然変異体に関連する手根管症候群、硝子体沈着、およびトランスサイレチン突然変異体に関連する皮膚アミロイドーシスが包含される。
次の実施例は、本発明の異なる形態、すなわち、結晶形、二次元規則性液晶形、および非晶形の調製をさらに説明するが、これは、本明細書に定義しているか、または下記で特許請求している本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1)
結晶質の化合物1の調製
6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾール遊離酸(2.5g、8.1mmol)および2−プロパノール(49mL)を、100mL容のジャケット付き二つ口丸底フラスコにマグネティックスターラーと共に入れた。得られたスラリーを撹拌しながら70℃に加温した。次いで、水(8.8mL)を入れた。別の15mL容の丸底フラスコにおいて、N−メチル−D−グルカミン(1.58g、8.1mmol)を含む水5mLの溶液を調製し、撹拌しながら溶解させた。次いで、N−メチル−D−グルカミン水溶液を反応フラスコに2分かけて移した。この添加の最後までに、固体のほとんど(全部ではないが)を溶解させた。5分の撹拌および79℃への加温を行った後、透明な淡黄色溶液が生じた。溶液をCelite(商標)のベッドを通してろ過し、60℃に冷却し、次いで、2時間かけて10℃に冷却した。得られた固体をろ過で収集し、2−プロパノール10mLで洗浄した。生成物3.35gが得られた(収率82%)。
(実施例2)
液晶の化合物1の調製
結晶質の化合物1(505mg)を水60mLに室温で溶解させた。溶液を凍結乾燥容器に移し、アセトン/ドライアイスバス中で回転させながら凍結させた。容器をベンチトップ凍結乾燥機に移し、真空下で約19時間乾燥させて、白色固体を得た。
(実施例3)
非晶質の化合物1の調製
結晶質の化合物1(約500mg)をアルミパンに移し、200℃のホットプレート上に置いた。1分以内に融解が起こり、その時点でパンをホットプレートから外し、直ちに液体窒素中に置いた。ガラス質の固体が生じた。

Claims (5)

  1. 6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールメグルミンの結晶形であって、112.6±0.2、133.9±0.2、および171.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形。
  2. 6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールメグルミンの結晶形であって、1625±2にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトル;および133.9±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形。
  3. 6−カルボキシ−2−(3,5−ジクロロフェニル)−ベンゾオキサゾールメグルミンの結晶形であって、1625±2にラマンシフトピーク(cm−1)を含むラマンスペクトル;および171.5±0.2に13C化学シフト(ppm)を含む固体NMRスペクトルを有する結晶形。
  4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の結晶形を含む医薬組成物。
  5. トランスサイレチンアミロイド疾患を治療するための、請求項4に記載の医薬組成物。
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