JP2016120647A - 繊維強化複合材料成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平板部と、前記平板部の側縁部から外周曲率半径が5mm以下となるように立ち上がる側板部とを備える繊維強化複合材料成形体の製造方法であって、シート状のプリプレグ基材12を積層してプリプレグ積層体10を得る積層工程と、プリプレグ積層体10における前記側板部を形成する端部10aを切断し、端部10aの先端面10bを特定の方向に傾斜させる切断工程と、前記切断工程後のプリプレグ積層体10を、端部10aを折り曲げつつ加熱加圧して成形して繊維強化複合材料成形体を得る成形工程と、を有する方法。
【選択図】図3
Description
前記平板部及び側板部の厚さは、各々0.5〜2.0mmであることが好ましい。
また、前記切断工程において、枠状のトムソン刃を備えるトムソン型により、前記プリプレグ積層体を前記側板部の内側面を形成する側の面から打ち抜いて、該プリプレグ積層体における前記側板部を形成する端部の先端面を傾斜させることが好ましい。
[繊維強化複合材料成形体]
本発明の製造方法により製造する繊維強化複合材料成形体は、強化繊維基材にマトリクス樹脂組成物を含浸させたシート状のプリプレグ基材を積層したプリプレグ積層体を、その端部を折り曲げつつ加熱加圧して成形することで、平板部の側縁部から立ち上がる側板部が形成された成形体である。
成形体1は、平板部2と、平板部2の対向する側縁部の両側から、外周曲率半径5mm以下で垂直に立ち上がる一対の側板部3,3とを備える。このように、成形体1では、側板部3,3の立ち上がり部の、外周曲率半径が5mm以下になっている。
強化繊維基材を構成する強化繊維としては、特に限定されず、例えば、無機繊維、有機繊維、金属繊維、又はこれらを組み合わせたハイブリッド構成の強化繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、炭化珪素繊維、アルミナ繊維、タングステンカーバイド繊維、ボロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。有機繊維としては、アラミド繊維、高密度ポリエチレン繊維、その他一般のナイロン繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。金属繊維としては、ステンレス、鉄等の繊維が挙げられ、また金属を被覆した炭素繊維でもよい。
強化繊維としては、軽量で剛性に優れる点から、炭素繊維が好ましい。
強化繊維は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
複数のUDシートを用いる場合は、剛性に優れる点から、厚み方向に隣り合うUDシートにおける強化繊維が互いに直交するように積層されることが好ましい。
マトリクス樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物を用いてもよく、熱可塑性樹脂組成物を用いてもよい。なかでも、剛性の点から、マトリクス樹脂は熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。補強繊維として炭素繊維を用いる場合は、炭素繊維との接着性の点から、エポキシ樹脂又はビニルエステル樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)樹脂等が挙げられる。
マトリクス樹脂組成物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
難燃性材料としては、例えば、臭素系化合物、リン及び窒素を含む化合物、リン系化合物、金属水酸化物、シリコーン系化合物、及びヒンダードアミン化合物等が挙げられる。
以下、本発明の繊維強化複合材料成形体の製造方法の一例を示して説明する。
本実施形態の繊維強化複合材料成形体の製造方法は、下記の積層工程、切断工程及び成形工程を有する。
積層工程:強化繊維基材にマトリクス樹脂組成物が含浸されたプリプレグ基材を積層してプリプレグ積層体を得る工程。
切断工程:前記プリプレグ積層体における繊維強化複合材料成形体の側板部を形成する端部を切断し、前記端部の先端面を、当該端部における前記側板部の外側面を形成する面が、前記側板部の内側面を形成する面に対して面方向に外方に長くなるように傾斜させる工程。
成形工程:前記切断工程後のプリプレグ積層体を、前記側板部を形成する端部を折り曲げつつ加熱加圧して成形して繊維強化複合材料成形体を得る工程。
積層工程では、強化繊維基材にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ基材を積層してプリプレグ積層体を形成する。
一例を示すと、成形体1を製造する場合、例えば、図2に示すように、強化繊維基材にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状の3枚のプリプレグ基材12を積層してプリプレグ積層体10を形成する。
なお、一方向プリプレグを用いる場合、該一方向プリプレグの強化繊維の繊維軸方向は特に限定されない。
また、一方向プリプレグ同士が接合された接合シートを用いる場合、接合シートにおいては、接合される互いのプリプレグ基材の強化繊維の繊維軸方向を直交させることが好ましい。これにより、繊維強化複合材料成形体の外観がより良好になる。
切断工程では、積層工程で得たプリプレグ積層体における、繊維強化複合材料成形体の側板部を形成する端部を切断する。このとき、プリプレグ積層体の端部における切断により形成される先端面(切断面)を、当該端部における繊維強化複合材料成形体の側板部の外側面を形成する面が、該側板部の内側面を形成する面に対して面方向に外方に長くなるように傾斜させる。該切断工程で形成される傾斜した先端面は、傾斜した平面からなる。
一例を示すと、例えば、図3及び図4に示すように、プリプレグ積層体10の両方の端部10aを切断して、端部10aにおける成形体1の側板部3の外側面3aを形成する面10cが、側板部3の内側面3bを形成する面10dに対して面方向に外方に長くなるように傾斜した先端面10bを形成する。
プリプレグ積層体10であれば、端部10aにおける先端面10bと、成形体1における側板部3の外側面3aを形成する面10cとのなす角度θ(図4)を前記範囲内とすることが好ましい。
トムソン型によりプリプレグ積層体を打ち抜く際には、枠状のトムソン刃がプリプレグ積層体に食い込むにつれて、先端が外側に広がるようにトムソン刃が撓むため、プリプレグ積層体における端部の先端面を容易に傾斜させることができる。
プリプレグ積層体の端部を切断して傾斜した先端面を形成する方法は、トムソン型を用いる方法には限定されない。
成形工程では、切断工程で得たプリプレグ積層体を、端部を折り曲げながら加熱加圧して成形し、側板部を備える繊維強化複合材料成形体を得る。例えば、端部10aを切断後のプリプレグ積層体10を、端部10aを面10d側に折り曲げながら加熱加圧して成形し、側板部3を備える成形体1を得る。
プリプレグ積層体を加熱加圧して成形する方法は、特に限定されず、例えば、目的の繊維強化複合材料成形体の形状と相補的な形状のキャビティを形成する上型及び下型からなる金型を用いたプレス成形等が挙げられる。
前述したように、従来の製造方法では、平板部と、該平板部の側縁部から立ち上がる側板部とを備える繊維強化複合材料成形体を製造する際に、側板部の強度が低下することがある。これは、得られる繊維強化複合材料成形体の側板部の先端部において、外側の強化繊維の密度が内側の強化繊維の密度に比べて低くなるためである。
具体例として、例えば、図2及び図6に示すように、一方の端部10aから他方の端部10aに向かって強化繊維11が一方向に揃えられているプリプレグ積層体10の場合について説明する。この場合、プリプレグ積層体10の端部10aに傾斜した先端面を形成せずに、端部10aを面10d側に折り曲げながら成形すると、図7に示すように、得られる成形体101では、マトリクス樹脂は金型内で流動するために側板部3が先端部まで形成される。しかし、側板部3の基端部近傍では内側面3b側に比べて外側面3a側の方が大回りであるため、側板部3の先端部において外側面3aに近いほど強化繊維11が先端まで届かなくなる。これにより、側板部3の先端部において外側の強化繊維11の密度が内側の強化繊維11の密度に比べて低くなるため、側板部3の強度が低下する。
具体的には、図3及び図4に示すように、プリプレグ積層体10の端部10aに、端部10aにおける成形体1の側板部3の外側面3aを形成する面10cが、側板部3の内側面3bを形成する面10dに対して面方向に外方に長くなるように傾斜した先端面10bを形成する。このように、プリプレグ積層体10の端部10aにおいて、成形において曲げられる際に大回りとなる側の面10dが、面10cに比べて面方向に外方に長いことで、端部10aを面10d側に折り曲げながら成形したときに、図5に示すように、側板部3の外側面3a側においても強化繊維11が先端まで届きやすくなる。そのため、側板部3の強度が充分に高くなる。
例えば、本発明の繊維強化複合材料成形体の製造方法は、積層工程において、プリプレグ基材をその端部の先端が徐々にずれるように積層して、プリプレグ積層体の端部の先端面を階段状に傾斜させる方法であってもよい。具体的には、例えば図8に示すように、複数のプリプレグ基材12を、それら各々の端部の先端が下方に向かうにつれて面方向に外方にずれるように積層して、端部10aの先端面10bを、側板部3の外側面3aを形成する面10cが、側板部3の内側面3bを形成する面10dに対して面方向に外方に長くなるように階段状に傾斜させたプリプレグ積層体10Aを得る方法であってもよい。
このように積層工程においてプリプレグ積層体の端部の先端面を傾斜させる場合は、前記した切断工程は必要ない。
また、本発明の繊維強化複合材料成形体の製造方法は、平板部から側板部が垂直に立ち上がる繊維強化複合材料成形体の製造には限定されない。
[プリプレグ基材]
本実施例においては、以下のプリプレグ基材を用いた。
プリプレグ基材A:一方向に揃えられた炭素繊維(三菱レイヨン(株)製、製品名:TR50S)に熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂#352、三菱レイヨン(株)製)が含浸された一方向プリプレグ(厚さ100μm、三菱レイヨン(株)製、製品名:TR352E115S)。
9枚のプリプレグ基材Aを、互いの炭素繊維の繊維軸方向が揃うように積層して、図2に示したようなプリプレグ積層体10を形成した。次いで、トムソン型により前記プリプレグ積層体を打ち抜き、端部10aに全周にわたって、図4に示すような傾斜した先端面10bを有する平面視矩形状のプリプレグ積層体10を得た。前記端部10aの先端面10bと、該端部10aにおける側板部の外側面を形成する面10cとのなす角度は、57.5°であった。
次いで、成形後の形状が、厚さ1.2mmの平板部と、該平板部の側縁部から、外周曲率半径が2mm、内周曲率半径が1mmで立ち上がる側板部を有する成形体となる下型及び上型を備える金型を用いて、前記先端面10bを有するプリプレグ積層体10を、強化繊維11(炭素繊維)の先端が位置する端部10aが面10d側に折り曲げられるように、140℃で加熱しながら3MPaの圧力で4分間プレスして、側板部を備える繊維強化複合材料成形体を得た。
得られた繊維強化複合材料成形体における側板部近傍を、炭素繊維の繊維軸方向と平行に切断した断面をキーエンス社製デジタルマイクロスコープにより撮影した写真を図9に示す。
プリプレグ積層体10の端部に傾斜した先端面を形成しなかった以外は、実施例1と同形状の平面視矩形状のプリプレグ積層体を作製し、実施例1と同様にして側板部を備える繊維強化複合材料成形体を得た。
得られた繊維強化複合材料成形体における側板部近傍を、炭素繊維の繊維軸方向と平行に切断した断面をキーエンス社製デジタルマイクロスコープにより撮影した写真を図10に示す。
2 平板部
3 側板部
3a 外側面
3b 内側面
10 プリプレグ積層体
10a 端部
10b 先端面
10c 面
10d 面
11 強化繊維
12 プリプレグ基材
Claims (4)
- 平板部と、前記平板部の側縁部から立ち上がる側板部とを備える繊維強化複合材料成形体の製造方法であって、
該側板部の立ち上がり部の、外周曲率半径が5mm以下であり、
強化繊維基材にマトリクス樹脂組成物が含浸されたシート状のプリプレグ基材が積層されたプリプレグ積層体を、該プリプレグ積層体における前記側板部を形成する端部を折り曲げつつ加熱加圧して成形して繊維強化複合材料成形体を得る成形工程を有し、
前記プリプレグ積層体における前記側板部を形成する端部の先端面を、当該端部における前記側板部の外側面を形成する面が、前記側板部の内側面を形成する面に対して面方向に外方に長くなるように傾斜させる、繊維強化複合材料成形体の製造方法。 - 前記平板部及び側板部の厚さが各々0.5〜2.0mmである、請求項1に記載の繊維強化複合材料成形体の製造方法。
- 前記プリプレグ基材を積層してプリプレグ積層体を得る積層工程と、
前記積層工程で得たプリプレグ積層体における前記側板部を形成する端部を切断して、前記端部の先端面を傾斜させる切断工程と、を前記成形工程の前に有する、請求項1又は2に記載の繊維強化複合材料成形体の製造方法。 - 前記切断工程において、枠状のトムソン刃を備えるトムソン型により、前記プリプレグ積層体を前記側板部の内側面を形成する側の面から打ち抜いて、該プリプレグ積層体における前記側板部を形成する端部の先端面を傾斜させる、請求項3に記載の繊維強化複合材料成形体の製造方法。
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