JP2016119365A - コイル部品用ボビンおよびコイル部品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ギア駆動による巻線が可能なコイル部品用ボビンに関して、ボビン本体の構造を簡略化するとともに、ギア部による安定した回転が可能になるコイル部品用ボビンを提供する。また、かかるボビンを用いた、巻線終了後の作業性向上が可能なボビンの製造方法を提供する。【解決手段】コイルを構成する導線を巻回するためのコイル部品用ボビンであって、導線を巻回するための第1の円筒部と、該第1の円筒部の両端側に配置された鍔部とを備えるボビン本体と、前記ボビン本体に対して前記第1の円筒部の軸方向に着脱可能なギア部とを有し、前記ボビン本体および前記ギア部はそれぞれ前記軸方向を分割面の方向とする分割片を組み合わせて構成されたことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、トランス等のコイル部品に用いられるボビンおよびコイル部品の製造方法に関するものである。
1kWを超えるスイッチング電源、絶縁式インバータ等の電源装置は、効率の観点からおおよそ10kHzから80kHzで駆動される。かかる条件で駆動されるスイッチング電源等に用いられるトランスの磁心材料としてはMn-Znフェライトが代表的である。小型化の観点から、飽和磁束密度が高いアモルファス材料、ナノ結晶材料などの軟磁性合金材料も使用される。トランスの構成としては、UU形状、EE形状に成型した磁心を、予めボビンに導線を巻回して形成したコイルフォーム内で突き合わせてロの字状、レーストラック状、日の字状の磁路を形成する構成が一般的である。
上記構成においては 突合せ面で僅かであるにせよギャップを生じる。特に、比抵抗が低い軟磁性合金薄帯のカットコアを用いる場合、かかるギャップが生じることで、漏れ磁束による損失が増加する。そのため軟磁性合金薄帯をカットコアの形態で使用する場合、動作磁束密度を十分に高くすることができず、軟磁性合金材料が持つ特性を十分に活かした設計ができるとは言い難い。
この点、トロイダルトランスのように、ノーカットコアを使用したトランスも存在する。しかしながらトロイダルトランスにおける巻線は手作業となるため、作業性が悪い、特性ばらつきが大きい等の問題がある。ノーカットとは、磁性合金薄帯の磁路の途中に切断部分を持たないことをいう。ノーカット磁心に効率よく巻線を施す技術としては、例えば特許文献1のように、駆動源によってボビンを駆動して巻線する構成が提案されている。特許文献1に開示された巻枠(ボビン)では、フランジの外周に駆動歯車に噛み合う歯が設けられるとともに、フランジの内側面には導体の巻始め端部を係入して固定するための溝が設けられている。かかる溝を設ける目的は、巻始め端部がボビンの回転を妨げることを防止することにある。
また、歯車構造に起因するボビン製造時の金型構造の複雑化を回避するために、ボビン本体と歯車を別体として構成するコイル用ボビンが特許文献2に開示されている。かかるボビンにおいては、巻線終了後の作業性を阻害する歯車を取り外すことができるので、巻線終了後の作業性が向上する効果もある。
実公昭62−36270号公報 実開平1−135722号公報
しかしながら、特許文献2に記載のボビンでは、分割式の被動用歯車片は、ボビン本体の径方向からボビン片へ係合するため、被動用歯車片を確実に固定することが困難である。そのため、ボビンの回転中に歯車片が径方向に脱落し、安定した回転を維持できない可能性があった。
そこで、上記課題に鑑み、本発明は、ギア駆動による巻線が可能なコイル部品用ボビンに関して、ボビン本体の構造を簡略化するとともに、ギア部による安定した回転が可能になるコイル部品用ボビンを提供することを目的とする。また、かかるボビンを用いた、巻線終了後の作業性向上が可能なボビンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明のコイル部品用ボビンは、コイルを構成する導線を巻回するためのコイル部品用ボビンであって、導線を巻回するための第1の円筒部と、該第1の円筒部の両端側に配置された鍔部とを備えるボビン本体と、前記ボビン本体に対して前記第1の円筒部の軸方向に着脱可能なギア部とを有し、前記ボビン本体および前記ギア部はそれぞれ前記軸方向を分割面の方向とする分割片を組み合わせて構成されたことを特徴とする。
また、前記コイル部品用ボビンにおいて、前記軸方向から見て、前記ギア部の分割位置が前記ボビン本体の分割位置と異なることが好ましい。
また、前記コイル部品用ボビンにおいて、前記ギア部は、前記軸方向の前記ボビン本体の反対側に突出した第2の円筒部を有し、前記鍔部と前記ギア部には、前記第1の円筒部側と第2の円筒部側とを連通するための切欠き部が設けられていることが好ましい。
さらに、前記第2の円筒部には、前記軸方向から見て前記切欠き部と重なる位置に補助ギア部を有することが好ましい。
本発明のコイル部品の製造方法は、ノーカットの閉磁路の磁心を、前記磁心の磁路に沿った直線部を有するケースに収容する第1の工程と、導線を巻回するための第1の円筒部と該第1の円筒部の両端側に配置された鍔部とを備えるボビン本体と、前記ボビン本体に対して前記第1の円筒部の軸方向に着脱可能なギア部とを有するコイル部品用ボビンを前記ケースの直線部に取り付ける第2の工程と、前記第1の円筒部に導線を巻回してコイルを形成する第3の工程とを有し、前記ボビン本体および前記ギア部はそれぞれ前記軸方向を分割面の方向とする分割片を組み合わせて構成されるとともに、前記コイル部品用ボビンは前記ケースの直線部に回動可能に支持され、前記第3の工程において、前記ギア部を介して前記ボビン本体を回転させることによって前記第1の円筒部に前記導線を巻回してコイルを形成し、前記コイルの形成後に前記ギア部を前記ボビン本体から取り外すことを特徴とする。
また、前記コイル部品の製造方法において、前記コイルは、トランスを構成する一次コイルおよび二次コイルを有し、前記一次コイルを構成する導線の巻回部と二次コイルを構成する導線の巻回部とを前記第1の円筒部の径方向に交互に形成することが好ましい。
本発明によれば、ギア駆動による巻線が可能なコイル部品用ボビンに関して、ボビン本体の構造を簡略化するとともに、ギア部による安定した回転が可能になるコイル部品用ボビンを提供することができる。また、巻線終了後にギア部をボビンから取り外せるため、巻線終了後の作業性が向上する。
本発明に係るコイル部品用ボビンの実施形態を示す斜視図である。 本発明に係るコイル部品用ボビンの実施形態に用いるボビン本体の分解斜視図である。 本発明に係るコイル部品用ボビンの実施形態に用いるギア部を示す斜視図である。 磁心とそれが収容されるケースの構成を示す分解斜視図である。 (a)ボビンと、(b)ボビンを図4に示すケースに取り付けたケースユニットを示す斜視図である。 図5(b)に示すケースユニットに導線を巻回したコイル部品を示す斜視図である。 コイル部品の構成例を示す断面模式図である。 コイル部品の他の構成例を示す断面模式図である。 コイル部品の他の構成例を示す断面模式図である。 コイル部品の他の構成例を示す断面模式図である。
本発明に係るコイル部品用ボビンの構成を以下に示す。
本発明に係るコイル部品用ボビンは、コイルを構成する導線を巻回するためのコイル部品用ボビンであって、導線を巻回するための第1の円筒部と、該第1の円筒部の両端側に配置された鍔部とを備えるボビン本体と、前記ボビン本体に対して前記第1の円筒部の軸方向(以下、単に軸方向ともいう)に着脱可能なギア部とを有する。さらに、前記ボビン本体および前記ギア部はそれぞれ前記軸方向を分割面の方向とする分割片を組み合わせて構成される。かかる構成によって、ギア部を介した回動による巻線(以下、ギア巻ともいう)が可能となるため、磁心を収容した環状のケースを用いた場合の、巻線の作業性を確保することができる。しかも、ギア部は着脱可能であるため、ボビン本体の構造が簡略化できる。さらに、着脱方向が円筒部の軸方向であり、ギア巻の際にギア部は径方向に拘束されているため、ギア部を介した安定な回転が可能になる。
以下、本発明に係るコイル部品用ボビンおよびコイル部品の製造方法の実施形態について図を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施形態において説明する構成は、他の実施形態の趣旨を損なわない限りにおいて他の実施形態においても適用することが可能であり、その場合、重複する説明は適宜省略する。
図1は本発明のコイル部品用ボビン(以下、単にボビンともいう)の実施形態を示す斜視図、図2は図1のボビンのボビン本体を示す斜視図、図3は図1のボビンのギア部を示す斜視図である。図1では、便宜上ボビンの一端側のギア部を外した状態を示してある。図1に示すボビンを適用するコイル部品としてはトランスを想定しているが、ボビンの用途はこれに限定されるものではない。
ボビン本体3は、導線を巻回するための第1の円筒部1と、第1の円筒部1の両端側に配置された鍔部2とを備える。鍔部2は、その外径が第1の円筒部1の外径よりも大きい板状であり、導線の巻回部分を画定する。ボビン本体3は、第1の円筒部1の軸方向(x方向)を分割面(分割片の合わせ面)の方向とする二つの分割片3a、3bを組み合わせて構成される。分割片3a、3bで磁心を挟み込むようにしてボビン本体3が組み立てられる。分割片3a、3bの形状は互いに異なるものでもよいが、図1に示す半割片のように分割片3a、3bの形状を同一にすることで、工程の簡略化、コスト低減が可能である。
ボビン100は、さらにボビン本体3に対して軸方向に着脱可能なギア部4を有する。ギア部4は、導線を巻回するための回動力を受けるためのものであり、前記軸方向、鍔部2の外側からボビン本体3に同軸状に装着される。ギア部4は円筒部1と軸を共通にしており、モータ等の駆動力をギア部4に与えることにより、円筒部1がギア部4と一体的に回動する。ギア部4もボビン本体3と同様に、軸方向を分割面の方向とする分割片4a、4bを組み合わせて構成されている。
図1〜3に示す実施形態では、軸方向に開口した複数の貫通孔5を鍔部2に備え、ギア部4には前記貫通孔5に嵌合する突起部(図示せず)を備える。複数の貫通孔5が周方向に離間して配置されているため、ボビン本体3とギア部4とが径方向(yz平面方向)に確実に拘束される。ボビン本体3とギア部4とは嵌合力で固定される一方、ギア部4は着脱可能になっている。着脱の方向が軸方向であるため、ギア巻の際にギア部が径方向に脱落することを防止できる。ボビン本体3とギア部4との固定方法は図1〜3に示す形態に限られるものではない。例えば、貫通孔5の代わりに有底孔を設けてもよい。突起部をボビン本体に、貫通孔等をギア部に設けてもよい。また、突起部の固定は嵌合に限らず、係止等によってもよい。図1〜3に示す実施形態では、各分割片3a、3bの鍔毎に四つの貫通孔が周方向に等間隔で配置されているが、貫通孔等の数や配置はこれに限定されるものではない。固定箇所を増やすことで一箇所当たりの負荷を減らすことができる。
鍔部の直径および歯の谷の部分で規定するギア部の直径の大小関係はこれを特に規定するものではないが、前記ギア部の直径を鍔部の直径以上にすることで、ギア巻におけるギア同士の位置決めが簡略化できる。
円筒部とギア部の分割位置は同じにすることも可能であるが、図1〜3に示す実施形態では、軸方向から見て、ギア部4の分割位置がボビン本体3の分割位置と異なる構成が適用されている。分割位置を異なるようにすることで、鍔部の一つの分割片に形成した複数の固定箇所をギア部の二つの分割片に割り当てることが可能になる。かかる構成によって、鍔部の分割片およびギア部の分割片が相互に拘束しあう、より強固な構造のコイル部品用ボビンが実現できる。
次に、ギア部に係る好ましい形態についてさらに詳述する。図3に示すギア部4は、第1の円筒部の軸方向の、ボビン本体3の反対側に突出した第2の円筒部7を有し、鍔部2とギア部4には、第1の円筒部1側と第2の円筒部7側とを連通するための切欠き部8が設けられている。第2の円筒部は第1の円筒部と同軸状に構成されているため、第2の円筒部の軸方向は第1の円筒部の軸方向に一致する。第2の円筒部7は、第1の円筒部に巻回する導線の巻端(リード)の引き回し、固定等に利用することができる。しかも、ギア部4は着脱可能であるため、ギア巻の後に取り外すことで、コイル部品の構造の簡素化が可能である。
第1の円筒部に巻回した導線の巻端を第2の円筒部に導出するために鍔部2およびギア部4に貫通孔を設けることも可能であるが、巻端の導出が煩雑になる。これに対して、鍔部2とギア部4に切欠き部6、8を設けて、そこから巻端を引き出す構成の方が巻線の作業性が高く、好ましい。切欠き部8の形状はこれを特に限定するものではないが、例えば導線を引き出すのに十分な幅を持つスリット状に形成すればよい。スリットの幅は、ギア部の360°の回転角のうち、30°以下に相当する大きさが実用的に好ましい範囲である。また、鍔部2の切欠き部6とギア部4の切欠き部8との重なりは一部でもよいが、図1〜3に示す実施形態のように、両者の幅方向端部が一致するように構成されていることがより好ましい。
また、図1〜3の示す実施形態では、軸方向から見て第1の円筒部1の開口部を挟んだ両側に切欠き部6が設けられ、コイルの巻端を、各切欠き部から引き出すことが可能である。なお、図1〜3に示す実施形態では、各鍔部2の片側に二つずつ、計四つの切欠き部6、8が設けられている。かかるボビンを用いてトランスを構成すれば、コイルの巻端の引き出し位置を円筒部1の軸を中心として180度離間させて、巻端処理におけるコイルとの絶縁性を高めることが可能である。図1〜3に示す実施形態では切欠き部6、8は一方の鍔部につき一対設けられているが、コイルの構成に応じて二対以上設けることも可能である。但し、引き出された巻端間の間隔を確保する観点からは、一つの鍔部につき切欠き部は一対だけ形成されていることが好ましい。
導線の巻端は、第2の円筒部の周囲に巻回するように収容することができる。例えば、巻端を第2の円筒部上の空間の中で1ターン以上巻回して収容することで、引き出された巻端がギア巻作業中にばらけないように固定しておくことができる。図1〜3に示すボビンでは、さらに好ましい形態として、突起10が、ギア部4の表面から軸方向外側(第2の円筒部側)に向けて突設されている。切欠き部8から引き出された巻端は第2の円筒部7上の空間を引き回される。突起10は、引き回された巻端を径方向で拘束するため、次の導線を巻回する際の巻端の押さえとして機能させることができる。巻端を突起10に絡げることで、より確実な固定も可能である。
突起10の数はこれを限定するものではなく、導出する巻端の数に応じて決めることができる。また、複数の突起10は、ギア部4の周方向に回転対称的に配置することがより好ましい。
ギア部のさらに好ましい形態として、図3に示すボビンの第2の円筒部7は、軸方向から見て切欠き部8と重なる位置に補助ギア部9を有する。補助ギア部9は、第2の円筒部7の表面から径方向に突出し、先端にギアを有する板部材で構成されている。切欠き部8が設けられたギア部4のギアは、切欠き部8の位置で不連続になる。これに対して、軸方向から見てギアが連続になるように、上記のように補助ギア部9を配置する。ギア部4のピッチと補助ギア部9のピッチは一致する。すなわち、360度の回転角のうち、大半の回転角をギア部4で構成し、残りの一部の回転角を補助ギア部9で補完する。かかる構成によって円滑なギア巻が可能となる。
補助ギア部9の軸方向の位置はこれを特に限定するものではない。図3に示す実施形態では、巻端の引き回しの空間を確保するために補助ギア部9は第2の円筒部7の末端に配置してある。また、軸方向から見た場合、補助ギア部9の少なくとも周方向一端側がギア部4と重なるように構成することが可能である。但し、巻端のハンドリングスペースを確保するために、補助ギア部は必要最小限の大きさにすることがより好ましい。かかる観点からは、図3に示す実施形態のように、周方向において、切欠き部8の両端と、補助ギア部9の両端とが一致するように構成することが好ましい。
ギア部4を第1の円筒部1の一端側に着脱可能に設けることでボビンの回動は可能である。但し、両端側で駆動してボビンを安定に回動させる観点からは、第1の円筒部の両端側それぞれにギア部を備えることが好ましい。
ボビン2の材質はこれを特に限定するものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂を用いることができる。
次に図4〜6も参照しつつ、上記コイル部品用ボビンを用いたコイル部品の製造方法について説明する。コイル部品は、ケースに収容されたノーカットの閉磁路の磁心、および導線をボビンに巻回して構成されたコイルとを有する。図4は磁心とそれが収容されるケースの構成を示す分解斜視図、図5(a)は図1と同様のボビン、図5(b)は該ボビンを図4に示すケースに取り付けたケースユニットを示す斜視図、図6は図5(b)に示すケースユニットに導線を巻回したコイル部品を示す斜視図である。上述のコイル部品用ボビンは、ギア巻をトランスに適用する場合に好適な構成であるため、以下コイル部品としてトランスを想定して説明するが、コイル部品はこれに限定するものではなく、チョークコイル等を構成することもできる。
本発明に係るコイル部品の製造方法は、ノーカットの閉磁路の磁心11を、磁心11の磁路に沿った直線部12を有するケース13に収容する第1の工程と、導線を巻回するための第1の円筒部1と第1の円筒部1の両端側に配置された鍔部2とを備えるボビン本体3と、ボビン本体3に対して第1の円筒部1の軸方向に着脱可能なギア部4とを有するコイル部品用ボビンをケース13の直線部12に取り付ける第2の工程と、第1の円筒部1に導線を巻回してコイル14(15)を形成する第3の工程とを有する。
上述のようにボビン本体3およびギア部4はそれぞれ軸方向を分割面の方向とする分割片を組み合わせて構成されるとともに、コイル部品用ボビンはケースの直線部に回動可能に支持される。
第3の工程において、ギア部4を介してボビン本体3を回転させることによって第1の円筒部1に導線を巻回してコイル14(15)を形成し、コイル14(15)の形成後にギア部4をボビン本体3から取り外す。コイル14(15)が、トランスを構成する一次コイルおよび二次コイルである場合は、一次コイルを構成する導線の巻回部と二次コイルを構成する導線の巻回部とを第1の円筒部1の径方向に交互に形成することが好ましい。
具体的な巻線手順は、例えば以下のとおりである。まず導線の一端(巻端)を一方側の鍔部の外側に導出した後、第1の円筒部に導線を巻回してコイルを形成する。コイルの巻終わり(巻端)は他方側の鍔部の外側に導出する。かかる状態で、次の導線の巻回を同様にして行う。全ての導線の巻回が終了した後、巻端の結線処理を行いコイルの形成が完了する。
第3の工程において、ギア部の表面に突設された突起10を利用して、各巻回部毎に巻端を突起に絡げることもできる。各巻回部毎にその巻端を一時的に突起に絡げておき、全ての巻回部の形成が終わった後に、巻端の接続等の処理を行えば、巻端がばらけることがなく、巻線作業も容易になる。
上記コイル部品の製造方法においては。ギア巻を採用することで、ノーカットコアを用いたコイル部品の巻線の作業性が向上する。しかも、ギア部は着脱可能であるため、ボビン本体の構造が簡略化できる。さらに、着脱方向が第1の円筒部の軸方向であり、ギア巻の際にギア部は径方向には拘束されているため、ギア部を介した安定な回転が可能になる。
さらに、ギア巻が終了した後には、ボビン本体からギア部を取り外すため、ボビン本体、特に鍔部2の外側の構成が大幅に簡略化される。多数の突起を有するギア部は、巻線終了後の巻端の引き回し、結線等の作業の際に導線が引っ掛かりやすい。ギア巻終了後にギア部を除去することで、かかる不具合が解消され、巻線終了後の作業性が向上する。また、ギア巻終了後には不必要な構成が除去されることで、コイル部品の軽量化、小型化にも寄与する。
以下、コイル部品の構成要素について説明する。
コイル部品は、磁心11を収容するための環状のケース13と、導線を巻回するためのボビンとを備えるケースユニットを用いて構成することが好ましい。環状のケース1に収容される磁心11の構成はこれを特に限定するものではないが、例えば磁性合金薄帯を用いたノーカットコアを用いることができる。ノーカットの閉磁路の磁心は、磁気ギャップを持たないため、漏れ磁束の影響が排除され、高い動作磁束密度でのトランスの駆動が可能となる。磁心の構成の詳細については後述する。
ケース13は上下方向(図中のz方向)に分割された上ケース13aと下ケース13bの組立体である。なお、ここでいう上下の概念は、組立時の方向性を示す便宜的なものである。下ケース13bに磁心11を収容する空間が形成されており、かかる空間に上ケース13aで蓋をするように、上ケース13aと下ケース13bとが嵌合する。図4に示す実施形態では、上ケース13aと下ケース13bの接合部(重ね合わせ部分)は、環状のケース13の軸に垂直な方向、すなわちxy方向の側面にある。ケース13は、磁心11の磁路に沿った(図中のx方向に沿った)一対の直線部12を有する。ケース13は、磁心11の形状に倣って構成した矩形環状のケースであり、図中のy方向に沿った直線部も有する。なお、ケース13の四つの角には、上ケース13aと下ケース13bとを締結するための固定部としてy方向に突出した部分が形成されている。かかる突出した部分や角のアール部分などが形成されている場合も、ケースの全体的な形状としては矩形として取り扱う。
磁性合金薄帯を用いた磁心の場合、巻磁心、積層磁心のいずれの形態であっても、磁路に垂直な断面は通常矩形となる。したがって、それを収容するケースの断面の内形も通常矩形である。ケース断面の外形は矩形以外にすることも可能であるが、ケース構造の簡略化の観点からは矩形であることが好ましい。
ボビンの円筒部を支持するケースの直線部の断面の外形を円形やn角形(nは5以上の自然数)にすることも可能であるが、断面の形状が矩形のケースを用いることには以下の利点もある。例えば、コアケースユニットを用いてトランスを構成する場合、トランス駆動時には磁心が発熱するが、コイルに覆われている部分は放熱がコイルによって阻害されるため、トランスの温度が高くなる。これに対して断面の形状が矩形のケースを用いると、ケース外面とボビン内面との間にボビン外側に通じる大きな空間が形成されるため、放熱が促進され、トランスの温度上昇を抑えることができる。
図4に示す実施形態では、磁心11の磁路方向に垂直な断面の形状が長方形であり、上ケース13aと下ケース13bの接合部側、すなわち環状のケースの内周側および外周側に、磁心11の長方形断面の長辺側が配置されるように、磁心11がケース13内に収容される。ボビンに巻回する巻線の全長を短くするためには、ボビンの内側の円筒部分に配置されるケースの断面形状はなるべく正方形に近いことが好ましい。しかしながら、ケースを薄くして小型化を図る場合、上ケース13aと下ケース13bの接合部は他の部分に比べて相対的にケースの厚さは大きくなる。これに対して、断面が長方形の磁心を用意し、その長辺が接合部側(側面側)になるように配置すれば、前述のようにケースが厚くなる分を、磁心の長辺と短辺との寸法差で相殺することができる。かかる構成を備えた上で、ケース13の、磁心11の磁路方向に垂直な断面の形状が、磁心11の断面の形状よりも正方形に近い(短辺と長辺の比が1に近い)か、正方形であることが好ましい。このうち正方形がもっとも好ましく、図4の構成ではケース13の断面形状は正方形にしてある。
ボビンの円筒部1の内周側とケース13の角とは緩やかに接するか、両者の間にわずかなクリアランスを介して配置され、ボビンは円筒部1においてケース13の直線部12に回動可能に支持される。
ケース13は、磁心11の保護、絶縁性の確保等の目的で用いられる。かかる目的に適うものであれば、ケースの材質はこれを特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂を用いることができる。
ノーカットの磁心11としては、磁性合金薄帯を環状に巻回して構成した巻磁心でもよいし、所定形状に打ち抜かれた複数の磁性合金薄帯を積層した積層磁心でもよい。図4に示す磁心11は長方形の磁路を構成している矩形環状の磁心であるが、磁心の形状はこれに限定されるものではない。但し、直線部12を有するケース13に収容するため、その一部に直線部を有する形状のものを用いる。例えば、矩形環状(ロの字状)、レーストラック状、中足付矩形環状(日の字状)などの磁心を用いることができる。矩形環状(ロの字状)、レーストラック状などの単純な環状の磁心に対しては、生産性の観点から巻磁心の構成が特に好適である。中足付矩形環状(日の字状)の磁心は、かかる形状に打ち抜いた磁性合金薄帯を積層する方法や、並置した二つの巻磁心をさらに別の巻磁心で囲む方法で得ることができる。なお、磁心の形状を表す矩形の文言は完全な矩形に限らず、磁性合金薄帯を巻回する際に必然的に生じる角のアール部分等を有する形状も含む趣旨である。
上述のように磁心11は磁性合金薄帯を巻回または積層して構成することができる。磁性合金薄帯は、例えば、溶湯を急冷して得られるFe基アモルファス合金薄帯、Co基アモルファス合金薄帯、Fe基ナノ結晶合金薄帯である。比較的飽和磁束密度が低いCo基アモルファス合金薄帯でもおおよそ0.55T以上の飽和磁束密度を有しており、これらの磁性合金薄帯は、フェライトに比べて飽和磁束密度が高く、トランスの小型化に有利である。かかる優位性を最大限に利用するため、磁心11はノーカットコアとして構成される。
磁心11を構成する磁性合金薄帯の組成および特性はこれを限定するものではない。例えば絶縁式スイッチング電源等に用いるトランス用途であれば、磁性合金薄帯は飽和磁束密度Bsが1.0T以上、かつ飽和磁束密度Bs対する残留磁束密度Brの比Br/Bsが0.3以下の磁気特性を有することが好ましい。具体的には、磁界中熱処理において、磁路に対し垂直に異方性をつけてBrを低下させた材料が好適である。磁界中熱処理によって磁路に対し垂直な方向に異方性をつけることで、飽和磁束密度Bs対する残留磁束密度Brの比Br/Bsを小さくすることができる。
次に、コイルの構成例について説明する。図7は、コイルとして、トランスを構成する一次コイルおよび二次コイルを有するコイル部品の一実施形態を示す断面模式図である。便宜上磁心11を収容するケースの図示は省略している。一次コイル14を構成する導線の巻回部Npと二次コイル15を構成する導線の巻回部Nsがボビン100の円筒部1の径方向(図7ではy方向)に交互に配置されている。一次コイルの巻回部Npと二次コイルの巻回部Nsとを磁心11の同じ部位に巻回し、一次コイルの導線と二次コイルの導線同士を密接させてコイルが構成されるので、コイル間の結合が高められる。高結合係数のトランスを実現することで、実効抵抗(交流抵抗)の増大を抑えることができる。すなわち、図7に示すように一次コイルの巻回部と二次コイルの巻回部を円筒部の径方向に交互に配置する構成によれば、銅損の増大抑制の効果が得られるため、上述のノーカットの磁心を用いることによるギャップ損失低減の効果と併せて、トランスの損失低減および小型化に寄与する。
巻回部NpおよびNsにおいて、導線は円筒部1の一端側から他端側(x方向)に巻回されて構成されている。各巻回部では導線を径方向に重ねて巻回することも可能であるが、上記のコイル間の結合を高める趣旨からは、各巻回部は、導線を重ねないで一層巻で構成することが好ましい。
また、各巻回部NpおよびNsを円筒部5の径方向に交互に配置する構成として各巻回部NpおよびNsをそれぞれ一つずつ配置して一次コイル14および二次コイル15を構成することは可能である。しかしながら、図7に示す実施形態のように、一次コイル14および二次コイル15が、それぞれ、並列接続された複数の巻回部に分割され、該複数の巻回部が、前記一次コイルおよび二次コイル毎に前記円筒部の径方向に交互に配置されていることが好ましい。かかる構成によって、コイルの抵抗が低減されるとともに、一次コイル14と二次コイル15との結合が高められる。分割されたコイルの接続形態は、並列接続だけに限らず、直列接続も適用することができる。導線を重ねて巻回するよりも、分割して、上述のように交互に配置する方が、コイル間の結合に有利である。
上述のコイルの構成は中足付矩形環状(日の字状)の磁心を用いたトランスにも適用できる。図8はその一実施形態を示す断面模式図である。一次コイル16と二次コイル17とを設けたボビン18を磁心19の中足に配置した点が図7に示す実施形態と異なるが、コイルやボビンの構成は図7に示す実施形態と同様であるので説明は省略する。
次に、図7の実施形態とはコイルの構成が異なる他の実施形態について説明する。図9に示すトランスでは、一次コイル20は直列接続された二つの副コイル20a、20bに、二次コイル21は直列接続された二つの副コイル21a、21bに分割されている。分割された一方(副コイル20aおよび副コイル21a)はボビン22に、他方(副コイル20bおよび副コイル21b)はボビン23に巻回されており、ボビン22、23はそれぞれ矩形環状(ロの字状)の磁心24の対向する一対の直線部分に配置されている。
各ボビンにおいて、一次コイル(副コイル)および二次コイル(副コイル)は、それぞれ、並列接続された複数の巻回部に分割され、該複数の巻回部が、一次コイルおよび二次コイル毎に円筒部の径方向に交互に配置されている構成は図7に示す構成と同様である。図9に示した構成は、さらに一次コイルおよび二次コイル毎に、ボビン22に構成した副コイルとボビン23に構成した副コイルとを直列接続することで、巻線数を増やすことを可能にした構成である。
次に、図7の実施形態とはコイルの構成が異なるさらに別の実施形態について説明する。図10に示すトランスでは、一次コイル25は直列接続された二つの副コイル25a、25bに、二次コイル26は直列接続された二つの副コイル26a、26bに分割されている。分割された一方(副コイル25aおよび副コイル26a)はボビン27に、他方(副コイル25bおよび副コイル26b)はボビン28に巻回されており、ボビン27、28はそれぞれ矩形環状(ロの字状)の磁心29の対向する二辺部分に配置されている。
各ボビンにおいて、一次コイル(副コイル)および二次コイル(副コイル)は、それぞれ、並列接続された複数の巻回部に分割され、該複数の巻回部が、一次コイルおよび二次コイル毎に円筒部の径方向に交互に配置されている構成は図7に示す構成と同様である。図10に示した構成は、さらに一次コイルおよび二次コイル毎に、ボビン27に構成した副コイルとボビン28に構成した副コイルとを並列接続することで、コイルの抵抗の低減を可能にした構成である。
一次コイルおよび二次コイルを、それぞれ、並列接続または直列接続された複数の巻回部に分割する構成は、上記実施形態に限定されるものではない。一次コイルおよび二次コイルが並列接続または直列接続で分割された部分を含んでいればよい。接続形態として、かかる並列接続または直列接続を単独で適用することもできるし、並列接続と直列接続を組み合わせて適用することもできる。
一次コイルを構成する導線および二次コイルを構成する導線として3層絶縁電線等の絶縁被覆付き電線を使用し、かかる厚い絶縁被覆によって、一次コイルと二次コイル間の絶縁を確保することも可能である。但し、導線毎の厚い絶縁被覆で一次コイルと二次コイル間の絶縁を確保しようとすると、巻回部全体の体積が増えるため、通常のマグネットワイヤ(エナメル線)等を使用し、一次コイルの巻回部と二次コイルの巻回部との間に絶縁シートを配置する方が好ましい。絶縁性に加えてボビンに巻回可能な柔軟性、強度を有する絶縁シートを用いることで、上述のギア部の回動を利用して絶縁シートの巻回も可能になる。絶縁シートの材質は、例えばポリエステル、不織絶縁紙(例えばノーメックス(ノーメックスはデュポン社の登録商標))等が好ましい。厚さは、絶縁性や柔軟性を考慮して、ポリエステルシートであれば25〜50μm、不織絶縁紙であれば50〜200μmが望ましい。
上記コイル部品は、巻線の作業性を確保しながら、高磁束密度を有する磁性合金薄帯の特性を有効に活かすことができるため、各種電源装置、特に1kWを超えるスイッチング電源、絶縁式インバータ等の電源装置用のトランスに好適である。
1:円筒部 2:鍔部 3:ボビン本体 4:ギア部 5:貫通孔 6:切欠き部
7:第2の円筒部 8:切欠き部 9:補助ギア部 10:突起 11:磁心
12:直線部 13:ケース 14:一次コイル 15:二次コイル
16:一次コイル 17:二次コイル 18:ボビン 19:磁心 20:一次コイル
21:二次コイル 22:ボビン 23:ボビン 24:磁心 25:一次コイル
26:二次コイル 27:ボビン 28:ボビン 29:磁心
100:ボビン 200:コイル部品

Claims (6)

  1. コイルを構成する導線を巻回するためのコイル部品用ボビンであって、
    導線を巻回するための第1の円筒部と、該第1の円筒部の両端側に配置された鍔部とを備えるボビン本体と、
    前記ボビン本体に対して前記第1の円筒部の軸方向に着脱可能なギア部とを有し、
    前記ボビン本体および前記ギア部はそれぞれ前記軸方向を分割面の方向とする分割片を組み合わせて構成されたことを特徴とするコイル部品用ボビン。
  2. 前記軸方向から見て、前記ギア部の分割位置が前記ボビン本体の分割位置と異なることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品用ボビン。
  3. 前記ギア部は、前記軸方向の前記ボビン本体の反対側に突出した第2の円筒部を有し、
    前記鍔部と前記ギア部には、前記第1の円筒部側と第2の円筒部側とを連通するための切欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のコイル部品用ボビン。
  4. 前記第2の円筒部には、前記軸方向から見て前記切欠き部と重なる位置に補助ギア部を有することを特徴とする請求項3に記載のコイル部品用ボビン。
  5. ノーカットの閉磁路の磁心を、前記磁心の磁路に沿った直線部を有するケースに収容する第1の工程と、
    導線を巻回するための第1の円筒部と該第1の円筒部の両端側に配置された鍔部とを備えるボビン本体と、前記ボビン本体に対して前記第1の円筒部の軸方向に着脱可能なギア部とを有するコイル部品用ボビンを前記ケースの直線部に取り付ける第2の工程と、
    前記第1の円筒部に導線を巻回してコイルを形成する第3の工程とを有し、
    前記ボビン本体および前記ギア部はそれぞれ前記軸方向を分割面の方向とする分割片を組み合わせて構成されるとともに、前記コイル部品用ボビンは前記ケースの直線部に回動可能に支持され、
    前記第3の工程において、前記ギア部を介して前記ボビン本体を回転させることによって前記第1の円筒部に前記導線を巻回してコイルを形成し、前記コイルの形成後に前記ギア部を前記ボビン本体から取り外すことを特徴とするコイル部品の製造方法。
  6. 前記コイルは、トランスを構成する一次コイルおよび二次コイルを有し、
    前記一次コイルを構成する導線の巻回部と二次コイルを構成する導線の巻回部とを前記第1の円筒部の径方向に交互に形成することを特徴とする請求項5に記載のコイル部品の製造方法。

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