JP2016113733A - ポリ塩化ビニル製手袋及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、下記特許文献1に記載された作業用手袋は、防水・耐油性材料の溶液が充填された第1の浸漬槽に、手袋金型を手首部まで浸漬させて、手袋金型の表面に防水・耐油層を形成する。その後、滑り止め性材料の溶液が充填された第2の浸漬槽に、防水・耐油層が形成された手袋金型の指先端および手のひら側を浸漬させた後、手袋金型を引き上げて乾燥させることにより、手のひら部および手のひら側の5本の指部が滑り止め層で積層され、甲部側の親指部と、その他の指部の一部に根元が円弧状になった滑り止め層が積層されている(例えば、特許文献1参照)。
第2の浸漬槽に充填される浸漬溶液は、高分子ペースト中に発泡剤を添加したもの、高分子ペースト中に微粒子を添加したもの、或いは膨張剤が内包されたマイクロバルーン樹脂等、滑り止め効果を有する材料である。手袋の指先端及び手のひら側において工具や物品を掴む領域にのみ滑り止め層が部分的に積層されている。
特許文献1に記載された従来の技術として、立体手型に装着したメリヤス手袋の全体を、合成ゴムに中空セラミックス粒子と膨張剤が内包されたマイクロバルーン樹脂を混合した第1の浸漬溶液に浸漬して、第1の浸漬溶液からなる膜で、メリヤス手袋全体を被覆し乾燥させる。その後、メリヤス手袋の少なくとも手の平部分を、ゴム接着剤に中空セラミックス粒子を混合した第2の浸漬溶液に浸漬して、第2の浸漬溶液からなる膜で、メリヤス手袋の少なくとも手の平部分を被覆し乾燥させて形成した浸漬作業用手袋がある(例えば、特許文献2参照)。
乾燥により膨張剤が膨張しマイクロバルーン樹脂の体積が数十倍になり、合成ゴムの密度が粗くなり手袋の軽量化が図られ、手袋表面が凹凸状となり、滑り止め効果が得られる。また、吸油性に優れるという中空セラミックス粒子が混合された第2の浸漬溶液の膜で、物を直接つかむ手袋の手の平部分が被覆されるので、油脂に対する滑り止め効果が非常に高くなる。
そのため、洗剤などを使った滑り易い作業に不安があるという問題があった。
また、特許文献2の場合には、手袋の表面全体に凹凸状の滑り止め層が形成され且つ手の平部分に油脂に対する滑り止め膜が積層されるため、指や手のひらが曲げ難くなって物を掴み難くなるという問題があった。
[請求項1] 成形型に沿って全体的に形成されるポリ塩化ビニルに所定量の可塑剤を配合した本体層と、
前記本体層に沿って形成されるポリ塩化ビニルに所定量の発泡剤を配合した発泡層と、を備え、
前記本体層は、前記ポリ塩化ビニルの配合量よりも前記可塑剤の配合量が30重量部以上少なくなるように設定され、
前記発泡層は、前記発泡剤の加熱に伴い前記本体層に向かって膨出形成される多数の気泡を有することを特徴とするポリ塩化ビニル製手袋。
したがって、本体層の表面全体におけるグリップ性能の向上と柔軟性を両立させることができる。
その結果、手袋の指先端及び掌側において物品などをつかむ領域にのみ、滑り止め効果を有する材料からなる滑り止め層が部分的に積層される従来のものに比べ、低可塑剤による滑り止め面が本体層の外側表面に広く形成されるため、食器などの物品に対する滑り止め効果を拡大できる。
また、手袋の表面全体に凹凸状の滑り止め層が形成され且つ手の平部分に油脂に対する滑り止め膜が積層される従来のものに比べ、多数の気泡の膨出による肉薄部位が本体層の全体に形成されるため、指や手のひらが曲げ易くなって、食器などの物品を確実につかめる。
それにより、滑り易い洗剤を使った食器洗いなどでも食器が滑り落ちることを防止でき、洗剤などを使った滑り易い作業における安全性の向上が図れる。
本発明の実施形態に係るポリ塩化ビニル製手袋Aは、例えば食器洗いや掃除や洗濯などの家事、特に洗剤を使った作業に有効な軟質手袋である。図1(a)〜(c)に示すように、ポリ塩化ビニルに所定量の可塑剤が配合されたポリ塩化ビニル系ペーストに、成形型Bを浸漬することで、成形型Bに沿って浸漬成形される。成形後は、成形型Bから反転離型又は正転離型して完成品が得られる。
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係るポリ塩化ビニル製手袋Aは、手袋の成形型Bに沿って全体的に形成される本体層1と、本体層1に沿って形成される発泡層2と、を主要な構成要素として備えている。
さらに、本体層1において成形型Bと対向する表面に一体形成される滑り止め用凹凸部10と、発泡層2において本体層1と反対側の面に沿って積層形成される被覆層3と、を備えることが好ましい。
本体層1は、使用者の手の全体を覆うように手袋形状に浸漬成形される。本体層1の成分は、主にポリ塩化ビニルと可塑剤の混合物であり、それに加えて希釈剤,安定剤,粘度調整剤,ゲル化剤,顔料などの軟質塩化ビニル手袋に通常使用される各種の添加剤を配合している。
ポリ塩化ビニルとしては、浸漬成形に使用される一般的な重合度1000〜2500の乳化重合ポリ塩化ビニルが好適に使用される。
このポリ塩化ビニルとしては、新第一塩ビ社製のZEST(登録商標)P−21(重合度1550)が該当する。
可塑剤として、食器洗いなどの食品接触用途以外が目的の場合は、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)などのフタル酸エステルが好適に使用される。
なお、ポリ塩化ビニル製手袋Aが食品と接触する用途の場合には、可塑剤として、ジエチルヘキシルテレフタレートなどのテレフタル酸エステル、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステルなどの1,2−シクロヘキサンジカルボン酸エステル、トリエチルヘキシルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル、ポリエステルなどが単独又は併用で使用される。
本体層1のポリ塩化ビニルに含まれる可塑剤の配合例としては、本体層1においてポリ塩化ビニルの配合量を100重量部とした時に、可塑剤の配合量が30〜70重量部となるように設定することが好ましい。
発泡層2は、本体層1に沿って使用者の手の全体を覆うように手袋形状に浸漬成形される。発泡層2の成分は、主にポリ塩化ビニルと発泡剤の混合物であり、それに加えて希釈剤,安定剤,粘度調整剤,ゲル化剤,顔料などの各種の添加剤を配合することも可能である。
発泡剤としては、例えばアゾジカルボン酸アミド(ADCA)やp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)などの熱分解によりガス化して発泡する化学発泡剤を用いるか、又はそれらの混合が好適に使用される。またその他に、温度上昇により膨張変形する発泡剤を用いることも可能である。
さらに、発泡層2は、発泡剤が配合された前記ポリ塩化ビニルの加熱に伴い、発泡層2の全体に亘り、本体層1に向かって膨出形成される多数の気泡2aを有している。
つまり、発泡層2に含まれる塩化ビニルと発泡剤の配合比は、発泡層2の形成後に発泡層2が加熱されることにより、発泡層2となる塩化ビニルの全体に亘り多数の気泡2aがそれぞれ発泡して、発泡層2の厚みが膨張し、本体層1において多数の気泡2aの膨出部位1aを、それぞれ部分的に肉薄状に形成するように設定されている。
発泡層2の内部で発泡する多数の気泡2aとしては、図1(c)に示されるように、それぞれ分離した独立気泡とすることが好ましい。
本体層1において使用時に食器などの物品と対向する外側表面には、その外側表面において少なくとも指先部位1bに滑り止め用凹凸部10を一体形成することが好ましい。
滑り止め用凹凸部10の具体例として、図1(a)(b)に示される場合には、5本の指先部位1bの総てに、複数の突起からなる第一滑り止め用凹凸部11をそれぞれ部分的に一体形成している。それに加えて、図1(a)(b)に二点鎖線で示されるように、手のひら1cの一部に複数の突起からなる第二滑り止め用凹凸部12を部分的に一体形成し、親指の根本部位1dにも複数の突起からなる第三滑り止め用凹凸部13を部分的に一体形成することも可能である。
また、その他の例として図示しないが、5本の指先部位1bのうちいずれかに第一滑り止め用凹凸部11を配置したり、手のひら1cにおいて図示例以外の箇所に第二滑り止め用凹凸部12の位置を変えたり、親指以外の他の指の根本部位1dなどにも第三滑り止め用凹凸部13を配置したり、手のひら1c又は各指の根本部位1dのいずれか一方か若しくは両方に第二滑り止め用凹凸部12や第三滑り止め用凹凸部13を一体形成せずに平滑面とするなど、変更することも可能である。さらに、第一滑り止め用凹凸部11又は第二滑り止め用凹凸部12若しくは第三滑り止め用凹凸部13のいずか一つか或いは全部を、図示される形状の複数の突起からではなく、図示例以外の形状のもので形成するなど、変更することも可能である。
発泡層2において本体層1と反対側で使用者の手と接する面には、この面に沿って被覆層3を積層形成することが好ましい。
被覆層3の材料としては、例えばウレタンやアクリル樹脂などのエマルションからなる表面処理剤を用いることが好ましい。
被覆層3の具体例として、図1(c)に示される場合には、被覆層3は、被覆層3の形成後に発泡層2が加熱されることにより、発泡層2となる該塩化ビニルの全体に亘り多数の気泡2aがそれぞれ発泡して、発泡層2の厚みが膨張し、被覆層3において多数の気泡2aの膨出部分が均等厚みの凹凸面3aとなるように変形させている。
それによって、ポリ塩化ビニル製手袋Aの内部に使用者が手を出し入れする時に、適度な滑り性が得られて粘着し難くなり、手の着脱を容易にしている。
また、その他の例として図示しないが、被覆層3が形成されずに発泡層2を露出させたり、被覆層3に代えて他の層を形成するなど、変更することも可能である。
そして、本発明の実施形態に係るポリ塩化ビニル製手袋Aを生産するための製造方法は、ポリ塩化ビニルに所定量の可塑剤が配合された本体層用のポリ塩化ビニル系ペーストに、成形型Bを全体的に浸漬することで、成形型Bに沿って本体層1が全体的に成形される本体層形成工程と、ポリ塩化ビニルに所定量の発泡剤が配合された発泡層用のポリ塩化ビニル系ペーストに、本体層1が浸漬成形された成形型Bを全体的に浸漬することで、本体層1に沿って全体的に積層されるように発泡層2が成形される発泡層形成工程と、発泡層2を全体的に乾燥する加熱工程と、を主要な工程として含んでいる。
本体層用のポリ塩化ビニル系ペーストと発泡層用のポリ塩化ビニル系ペーストは、それぞれの粘度が任意に設定され、粘度を調整することで、浸漬成形される本体層1の厚みと発泡層2の厚みが変化する。
特に、本体層用のポリ塩化ビニル系ペーストの粘度を調整することにより、用途に応じて極薄手,薄手,中厚手,厚手など、複数種類のポリ塩化ビニル製手袋Aが得られる。
それにより、加熱工程が完了した後に、図1(b)に示されるように、成形型Bから本体層1及び発泡層2が一体形成されたポリ塩化ビニル製手袋Aを剥がし、裏返す(反転離型)ことで、本体層1が外側に露出され且つ本体層1の内側に発泡層2を積層したポリ塩化ビニル製手袋Aの完成品が得られる。
すなわち、加熱工程の後に、成形型Bから本体層1及び発泡層2を剥がし裏返すことで本体層1が外側に露出するように離型する反転離型工程と、を含んでいる。
また、その他の例として図示しないが、先ず成形型Bに沿って発泡層2が全体的に浸漬成形される発泡層形成工程を行い、発泡層2が乾燥した後に、本体層1が全体的に浸漬成形される本体層形成工程を行うことで、発泡層2の外面に沿って本体層1が全体的に積層される。その後に発泡層2を乾燥する加熱工程が完了してから、成形型Bから発泡層2及び本体層1が一体形成されたポリ塩化ビニル製手袋Aを剥がす(正転離型する)ことで、本体層1が外側に露出され且つ本体層1の内側に発泡層2を積層したポリ塩化ビニル製手袋Aの完成品を得ることも可能である。
ただし、正転離型の場合には、成形型Bに形成された滑り止め用の凹凸模様B1を、本体層1に転写できなくなるので、他の方法により滑り止め用凹凸部10を形成する必要がある。
このような従来のポリ塩化ビニル製手袋が滑り易かった原因としては、洗剤を使った食器洗いなどの作業を行うと、手袋の表面全体に存在する多量の可塑剤の成分と、洗剤に含まれる界面活性剤などの滑り成分とが接触し、これら両者の相互作用により更に滑り易くなったと推測される。
従来のポリ塩化ビニル製手袋では、洗剤の付いた食器などの物品を持った状態で、物品が僅かでも滑り始めると、一気にツルッと滑り落ちる状況が見られる。つまり、物品を持ち続けるために必要な静止摩擦力が、手袋の表面全体に浮き出た(染み出た)可塑剤の成分量によっては、多大な悪影響を与えることが解った。
そのため、従来のポリ塩化ビニル製手袋の表面全体に浮き出る(染み出る)可塑剤の成分量よりも、本体層1の表面に浮き出る(染み出る)可塑剤の成分量の方が少なくなる。
それにより、本体層1の外側表面で、洗剤が付いた食器などの物品を持って食器洗いなどの作業を行っても、洗剤に含まれる界面活性剤などの滑り成分と可塑剤の成分との相互作用による滑り易さが、従来のポリ塩化ビニル製手袋の表面に比べて減少する。つまり、本体層1の外側表面は、物品を持ち続けるために必要な静止摩擦力が、従来のポリ塩化ビニル製手袋の表面よりも大きいので、洗剤が付いた食器などの物品に対し引っ掛かり易くなる。さらに、本体層1の外側表面における動的摩擦力が大きくなるため、物品が多少滑っても、取り落とし難くなる。
しかし、その反面として本体層1は、可塑剤の配合量が少ないことから全体的に硬くなり、使用時の屈曲変形が困難になって、物品をつかみ難くなる傾向がある。
そこで、本体層1に沿って発泡層2を形成し、加熱で多数の気泡(独立気泡)2aを本体層1に向かって膨出させることにより、本体層1において多数の気泡2aの膨出部位1aが、それぞれ部分的に肉薄になって、本体層1が全体的に軟らかくなる。
したがって、本体層1の表面全体におけるグリップ性能の向上と柔軟性を両立させることができる。
その結果、低可塑剤による滑り止め面が本体層1の外側表面に広く形成されるため、食器などの物品に対する滑り止め効果を拡大できる。
また、多数の気泡2aの膨出による肉薄部位が本体層1の全体に形成されるため、指や手のひらが曲げ易くなって、食器などの物品を確実につかめる。
それにより、滑り易い洗剤を使った食器洗いなどでも食器が滑り落ちることを防止でき、洗剤などを使った滑り易い作業における安全性の向上が図れる。
この場合には、食器洗いなどの作業時に滑り止め用凹凸部10が、食器などの物品と必ず接触して、摩擦抵抗が増える。
したがって、グリップ性能を更に向上させることができる。
その結果、洗剤を使った食器洗いなどでも食器の滑り落ちをより確実に防止できる。
したがって、簡単な製造工程でグリップ性能を更に向上させることができる。
その結果、グリップ性に優れたポリ塩化ビニル製手袋Aを低コストで製造できる。
[実施例1〜4及び比較例1〜5]
表1に示す実施例1〜4と表2に示す比較例1〜5は、表1及び表2に記載されたポリ塩化ビニルに対する可塑剤の配合量(重量部)で異なる配合割合の本体層1を形成し、更にポリ塩化ビニルに発泡剤が同じ配合割合で混合された発泡層2を有する手袋と、本体層1のみで発泡層2が無い手袋である。
すなわち、実施例1〜4及び比較例1〜3の手袋は、表1及び表2に記載されたポリ塩化ビニルに対する可塑剤の配合量(重量部)で本体層用のポリ塩化ビニル系ペーストを作成し、異なる配合割合の本体層1がそれぞれ略同じ肉厚で浸漬成形されるとともに、ポリ塩化ビニルに発泡剤が同じ配合割合で混合された発泡層用のポリ塩化ビニル系ペーストを作成し、発泡層2が本体層1に沿ってそれぞれ略同じ肉厚で浸漬成形され、発泡層2を加熱乾燥したものであり、共通の構成にしている。
比較例4,5の手袋は、表1及び表2に記載のポリ塩化ビニルに対する可塑剤の配合量(重量部)で作成した本体層用のポリ塩化ビニル系ペーストにより、異なる配合割合の本体層1をそれぞれ肉厚で浸漬成形して乾燥させたものであり、共通の構成にしている。
発泡層用のポリ塩化ビニル系ペーストは、塩化ビニル100重量部、可塑剤(DEHP)100重量部、安定剤4重量部、ゲル化剤4重量部、顔料1部の割合で配合された混合物に対し、発泡剤(ADCA)が粒状の塊(ダマ)とならないように撹拌しながら少量ずつ添加して、発泡剤を1〜5重量部を配合した。
発泡剤としては、分解温度が約140℃のものを使用し、加熱工程で発泡層用のポリ塩化ビニル系ペーストを約140℃以上に温度上昇させたところ、発泡層2が発泡を開始し、その後も140℃以上を継続することで発泡を完了させた。
実施例2の手袋では、本体層1のポリ塩化ビニル100重量部に対する可塑剤の配合量を40重量部にしている。
実施例3の手袋では、本体層1のポリ塩化ビニル100重量部に対する可塑剤の配合量を60重量部にしている。
実施例4の手袋では、本体層1のポリ塩化ビニル100重量部に対する可塑剤の配合量を70重量部にしている。
比較例2の手袋では、本体層1のポリ塩化ビニル100重量部に対する可塑剤の配合量を80重量部にしたところが異なっている。
比較例3の手袋では、本体層1のポリ塩化ビニル100重量部に対する可塑剤の配合量を110重量部にしたところが異なっている。
比較例4の手袋では、本体層1のポリ塩化ビニル100重量部に対する可塑剤の配合量を50重量部にしたところが異なっている。
比較例5の手袋では、本体層1のポリ塩化ビニル100重量部に対する可塑剤の配合量を90重量部にしたところが異なっている。
グリップ性は、実施例1〜4及び比較例1〜5の手袋を装着し、市販の合成洗剤1.5mLを水1000mLに溶かした洗剤水に、食器(コップ)を沈めた状態で、食器を持ち上げて滑り具合を確認する試験を行い、4段階で評価した結果である。
「食器が全く滑らない」を◎、「食器が滑らない」を○、「食器がやや滑る」を△、「食器がよく滑る」を×と評価した。
成形性は、前述した製造方法で、実施例1〜4及び比較例1〜5の手袋を生産する試験を行い、2段階で評価した結果である。
「本体層1及び発泡層2が容易に成形可能」を○、「本体層1及び発泡層2の成形が困難」を×と評価した。
柔軟性は、実施例1〜4及び比較例1〜5の手袋を装着し、各手袋の曲がり具合(使い易さ)を確認する試験を行い、3段階で評価した結果である。
「屈曲変形がスムーズで食器をつかみ易い」を◎、「屈曲変形に若干硬さを感じるものの食器をつかむことに支障が無い程度の曲がり具合」を○、「屈曲変形が困難で食器をつかみ難い」を×と評価した。
この評価結果から明らかなように、実施例1〜4は、グリップ性に加えて成形性及び柔軟性を向上させることができる。
詳しく説明すると、比較例1は、本体層1における可塑剤の配合量が不足して粘度が高くなり、希釈剤を添加しても目的とする厚みに成形できないため、成形性で不良な評価結果になった。さらに、本体層1における可塑剤の配合量が不足して本体層1が非常に硬くなり、柔軟性で不良な評価結果になった。
比較例2は、本体層1における可塑剤の配合量が多く、本体層1の表面全体に浮き出る可塑剤の量も多くなるため、食器がやや滑り易くてグリップ性で不良な評価結果になった。
比較例3は、本体層1における可塑剤の配合量がより多く、本体層1の表面全体に浮き出る可塑剤の量も更に多くなるため、食器がよく滑り易くてグリップ性で最も不良な評価結果になった。
比較例4は、本体層1における可塑剤の配合量が適量であるため、グリップ性、成形性において良好な評価結果が得られるものの、発泡層2が無いために手袋全体が非常に硬くなり、食器をつかみ難くて柔軟性で不良な評価結果になった。
比較例5は、発泡層2に代えて本体層1における可塑剤の配合量をより多くした。そのため、柔軟性において良好な評価結果が得られるものの、本体層1の表面全体に浮き出る可塑剤の量が多くなるため、グリップ性で不良な評価結果になった。
さらに、前述したポリ塩化ビニル製手袋A及びその製造方法では、成形型Bに沿って直接的に本体層1が浸漬成形されるノンサポート型の手袋及び製造方法を説明したが、これに限定されず、例えば特開2001−003211号公報に記載されるように、メリヤス製手袋や軍手などの原手(布製のインナー)を成形型Bに装着してから、その外側に本体層1が浸漬成形されるサポート型の手袋及び製造方法であっても良い。
10 滑り止め用凹凸部 2 発泡層
B 成形型
Claims (4)
- 成形型に沿って全体的に形成されるポリ塩化ビニルに所定量の可塑剤を配合した本体層と、
前記本体層に沿って形成されるポリ塩化ビニルに所定量の発泡剤を配合した発泡層と、を備え、
前記本体層は、前記ポリ塩化ビニルの配合量よりも前記可塑剤の配合量が30重量部以上少なくなるように設定され、
前記発泡層は、前記発泡剤の加熱に伴い前記本体層に向かって膨出形成される多数の気泡を有することを特徴とするポリ塩化ビニル製手袋。 - 前記本体層の外側表面に滑り止め用凹凸部を一体形成することを特徴とする請求項1記載のポリ塩化ビニル製手袋。
- 前記本体層は、前記ポリ塩化ビニルが100重量部に対し前記可塑剤を30〜70重量部を配合していることを特徴とする請求項1又は2記載のポリ塩化ビニル製手袋。
- ポリ塩化ビニルに所定量の可塑剤が配合された本体層用のポリ塩化ビニル系ペーストに、成形型を全体的に浸漬することで、前記成形型に沿って本体層が全体的に成形される本体層形成工程と、
ポリ塩化ビニルに所定量の発泡剤が配合された発泡層用のポリ塩化ビニル系ペーストに、前記本体層が浸漬成形された前記成形型を全体的に浸漬することで、前記本体層に沿って全体的に積層されるように発泡層が成形される発泡層形成工程と、
前記発泡層を全体的に乾燥する加熱工程と、を含み、
前記本体層形成工程では、前記本体層用のポリ塩化ビニル系ペーストが、前記ポリ塩化ビニルの配合量よりも前記可塑剤の配合量を30重量部以上少なくするように設定され、
前記加熱工程では、前記発泡層用のポリ塩化ビニル系ペースト中の前記発泡剤が発泡して所定の厚みに膨張し、多数の気泡が前記本体層に向かって膨出形成されることを特徴とするポリ塩化ビニル製手袋の製造方法。
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