JP2016113678A - 縁部絶縁部材 - Google Patents
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Abstract
Description
また、ステンレス鋼製の電極板を陰極として長時間の電解を行い、例えば厚さ8〜10mm程度の銅板を直接得るパーマネントカソード法も周知である。
チャネル部材には、その長手方向に沿って溝が設けられており、この溝内に陰極板(電極板)の側方縁部が嵌合される。すなわち、チャネル部材が陰極板の側方縁部を被覆するように装着されることにより、電解液に対して側方縁部を絶縁して、該側方縁部に銅が電着しないようにしている。
すなわち、前記下端面が電解液に露出してこの部分に銅が電着すると、陰極板の表裏両面に電着された種板や銅板が陰極板から剥がれにくくなって生産性を低下させたり、製品の品質を低下させることがあり好ましくない。また、チャネル部材の溝内で電着した銅によって、エッジストリップが破損するおそれがある。このような不具合を防止するため、チャネル部材の下端部にエンドキャップを設けている。なお、エンドキャップは、超音波接着や溶媒接着等によりチャネル部材に固定されている。
すなわち、電解精錬時において、電極板の縁部のうち、特に縁部絶縁部材の長手方向を向く端面(具体的には、電極板の縁部における下端面)と、縁部絶縁部材との間の密着性が十分に確保されているとは言えず、これらの間に電解液が浸入して、銅(金属)が電着析出することがあった。
すなわち、本発明は、金属の電解精錬に用いる電極板の縁部に取り付けられる縁部絶縁部材であって、前記縁部に沿って延び、前記縁部に装着される絶縁部材本体を有し、前記絶縁部材本体は、この絶縁部材本体の長手方向に延び、前記縁部に直接取り付けられる内殻体と、前記内殻体及び前記縁部を収容する溝を有し、前記長手方向に延びる外殻体と、を備え、前記内殻体は、前記縁部の表裏面に取り付けられる一対の成形体と、前記一対の成形体の前記長手方向の端部同士を繋ぐとともに、前記縁部の前記長手方向を向く端面を覆う連結部と、を備えることを特徴とする。
このように、電解精錬時において、内殻体の連結部が、電極板の縁部の端面に対して確実に、かつ安定して密着させられて、該端面への金属の電着析出を確実に防止することができる。
一方、本発明の上記構成によれば、電極板の縁部に対する縁部絶縁部材の位置ずれを確実に防止できるのである。
本実施形態の縁部絶縁部材10は、金属の電解精製や電解採取等の電解精錬工程に使用される電極板1に対して、該電極板1の縁部を絶縁する目的で取り付けられるものであり、また、電極板1の縁部を保護する機能も有している。具体的に、本実施形態で説明する電極板1及び縁部絶縁部材10は、銅の電解精錬に用いられるものである。
本実施形態では、電解精錬工程によって電極板1の表裏面(電極板1の厚さ方向を向く一対の外面)に銅を電着析出させて、例えば厚さ8〜10mm程度の銅板を直接的に得るパーマネントカソード法を採用している。
またこの正面視で、電極板1の四辺に相当する4つの縁部(辺部)のうち、側方の両端に位置して上下方向に延びる一対の縁部(つまり側方縁部であり、図2における電極板1の左右の縁部)には、該縁部を電極板1の厚さ方向に貫通する貫通孔2a、2bが、それぞれ形成されている。
また、貫通孔2aの下方に配列する複数の貫通孔2bは、縁部絶縁部材10の後述する内殻体20を電極板1に固定するための内殻体取付孔となっている。本実施形態の例では、電極板1の縁部において、複数の内殻体取付孔2b同士が、該縁部が延びる方向(図2における上下方向)に沿って互いに等間隔をあけて配列している。ただし、これらの内殻体取付孔2b同士は、等間隔をあけて配列していなくてもよく、つまり不等間隔をあけて配列していてもよい。電解精錬時において、これらの内殻体取付孔2bは、電解液Sの液面よりも下方に配置される。
また、切り欠き部1aにおいて下方を向く端面(つまり電極板1の側方縁部の下端部において下方を向く端面)1cは、上下方向に垂直な平面状をなしている。
本実施形態においては、図1に示されるように、絶縁部材本体11が延びる長手方向(絶縁部材本体11の延在方向)は、電極板1の側方縁部が延びる上下方向(鉛直方向)と同じ向きである。
なお、本明細書においては、絶縁部材本体11の長手方向及び電極板1の厚さ方向に垂直な向きを、絶縁部材本体11の短手方向(或いは幅方向)ということがある。
本実施形態では図4において、縁部絶縁部材10のうち、少なくとも後述する内殻体20以外の部位(具体的には、絶縁部材本体11の外殻体40、端部被覆部12及び締め付けロッド13)は、絶縁性、耐熱性、耐酸性及び耐衝撃強度に優れたエンジニアリングプラスチックにより形成されている。なお、さらに内殻体20が、エンジニアリングプラスチックにより形成されていてもよい。
このようなエンジニアリングプラスチックを採用することにより、縁部絶縁部材10の機械的強度が確保され、かつ、縁部絶縁部材10が電解液Sに長時間浸漬された場合においても、部材の劣化が防止される。
例えば、本実施形態における銅の電解精錬では、電解液Sが硫酸を含んでいて約60〜65℃に維持されているので、硫酸に対する耐酸性を有するとともに、60〜65℃で軟化や変質が生じない程度の耐熱性を有するポリフェニルエーテル(PPE)等を使用することが好ましい。
なお、端部被覆部12については、その配置される位置や機能を鑑みて、外殻体40よりもさらに耐熱性及び耐衝撃強度に優れた材料を使用することが好ましい。
また、内殻体20は、射出成型等により形成される。
図4に示されるように、内殻体20の厚さ(電極板1の厚さ方向に沿う長さ)は、外殻体40の厚さよりも小さくされている。
また、上記オレフィン系(TPO)として、ポリプロピレン(PP)の中に各種ゴム材を微分散させた、PP−EPM、PP−EPDM、PP−NBR、PP−IRや、ポリエチレン(PE)の中にエチレンプロピレンゴムを微分散させたPE−EPDMなどが挙げられる。
また、上記ポリエステル系(TPEE)として、ポリブチレンテレフタレート−ポリカプロラクトン(PBT−PCS)、ポリブチレンアジテート(PBA)などが挙げられる。
また、一対の成形体21同士は、電極板1の縁部に形成された内殻体取付孔(貫通孔)2b内を通して、互いに連結される。この構成により、内殻体20は、電極板1の縁部に装着された際に、該電極板1に対して移動を規制された状態で固定される。
前記隙間は、電解精錬時において、例えば60〜65℃程度に温度設定される電解液Sに縁部絶縁部材10が浸漬され、内殻体20の各板部23、24が熱膨張した場合であっても、長手方向に隣り合う板部23、24同士(板部24同士についても同じ。以下同様)が、互いに強く接触して変形することがないように、かつ、板部23、24同士の間に電解液Sが浸入可能な大きな空隙が形成されないように、予め計算値や試験値等により熱膨張寸法を見込んで設定されることが好ましい。
なお、内殻体20の板部23、24が熱膨張しても、内殻体20を覆う外殻体40の作用等により板部23、24同士の接触による変形を防止(抑制)できる場合には、前記隙間は、設けられなくてもよい。
また、図6及び図9に示されるように、係止筒部25の内周面には、周方向に沿って延びる環状段部26が形成されている。
また、図6及び図10に示されるように、係止軸部27の外周面には、周方向の一部が他の部位よりも突出して突起28が形成されている。係止軸部27が係止筒部25内に嵌合した際に、係止軸部27の突起28は、係止筒部25の環状段部26に係止される。これにより、係止軸部27と係止筒部25とが抜け止め状態とされて、嵌合するようになっている。
また、図6及び図10に示されるように、成形体21Aのうち突起28に対向する部分には、該突起28を成形するための、型抜き用のくい切り孔29が形成されている。
具体的には、図4及び図6に示されるように、成形体21A、21Bにおいて、絶縁部材本体11の短手方向(図4及び図6における左右方向)の両端に位置する一対の縁部のうち、電極板1の側方に沿う外側(図4及び図6における左側)に配置される縁部には、前記短手方向に沿って電極板1の外側(側方に沿う外側)に向かうに従い漸次板厚が薄くなる傾斜面が形成されている。
成形体21の周囲の縁部に形成される傾斜面は、内殻体20に対して外殻体40を装着しやすくする目的で形成されている。また、このような傾斜面が形成されることにより、電極板1の表裏面に対する成形体21の密着性も高められている。
なお、内殻体20を電極板1の縁部に装着した状態では、各V溝31において向かい合う一対の内壁(溝の壁面)同士が互いに当接させられて、該V溝31は閉じるようになっている。
このような締め付けロッド13をロッド嵌合溝15に嵌合させることによって、該ロッド嵌合溝15は溝幅方向に押し広げられ、この反作用により、溝14の溝幅は狭められて、該溝14の一対の溝壁が電極板1により強く密着させられるようになっている。
図15及び図16に示されるように、端部被覆部12は、外殻体40の溝14内に配置されて矩形板状をなす切り欠き係合部12aを有している。図16において、ハッチングで示される矩形状の部分が、切り欠き係合部12aである。
すなわち、図16において、切り欠き係合部12aのうち上方を向く端面(上端面)が、電極板1の縁部において下方を向く端面(下端面)1cに対して、該端面1cの下方から接近配置(又は当接)される。なお、図16には特に図示されていないが、切り欠き係合部12aの上端面と、電極板1の縁部の下端面1cとの間には、内殻体20の連結部22が介装されている(図5を参照)。そして、切り欠き係合部12aの上端面は、内殻体20の連結部22に対して密着させられている。
詳しくは、切り欠き係合部12aを有する端部被覆部12が、内殻体20の連結部22を、絶縁部材本体11の長手方向の外側から(つまり連結部22をその下方から)覆っている。
つまり、端部被覆部12の切り欠き係合部12aが、電極板1の切り欠き部1aに係合することによって、切り欠き部1a内への電解液Sの浸入が防止されている。
なお、本実施形態の例では、図13(a)(b)及び図16に示されるように、矩形板状をなす一対の外層部12bと、矩形板状の切り欠き係合部12aとが、円柱状の軸部12cのみならず、外殻体40の下端から下方に向けて突設された矩形板状の底板12dによっても連結されている。また底板12dには、下方に向けて凸となる球面突起が形成されている。
或いは、端部被覆部12として、外殻体40とは異なる樹脂材料を用いてもよい。この場合、端部被覆部12に用いる樹脂材料の融点が、外殻体40を構成する樹脂材料の融点以上に設定されていることが好ましい。これにより、端部被覆部12のモールド成型の際、溶融した端部被覆部12材料により外殻体40の表面が加熱され溶けるので、これらの接合強度が向上する。
電極板1に電着した銅板が所期する厚さとなったら、該電極板1の表裏面から銅板を剥離して、回収する。銅板を回収する際は、電極板1の縁部から予め縁部絶縁部材10を取り外しておくことが好ましいが、装着したままであってもよい。つまり、本実施形態の縁部絶縁部材10は、上述した手順とは逆の手順により、電極板1の縁部から取り外し可能である。
このように、電解精錬時において、内殻体20の連結部22が、電極板1の縁部の端面1cに対して確実に、かつ安定して密着させられて、該端面1cへの金属の電着析出を確実に防止することができる。
すなわちこの構成によれば、電極板1の縁部における端面1cを内殻体20の連結部22が被覆し、さらにこの連結部22を、絶縁部材本体11の長手方向の外側から端部被覆部12が覆うので、電極板1の縁部の端面1cが二重に覆われる構造となって、端面1cへの電解液Sの浸入を防止するという作用効果が、さらに格別顕著なものとなる。
すなわちこの構成によれば、電解精錬時において、例えば65℃程度に温度設定される電解液Sに縁部絶縁部材10が浸漬され、内殻体20の各板部23、24が熱膨張した場合であっても、熱膨張の寸法を予め見込んで前記隙間を設定することにより、板部23、24同士が強く接触するような事態を防止できる。これにより、内殻体20と電極板1との間から、縁部絶縁部材10の内部に電解液Sが浸入することを安定的に防止できる。
すなわちこの構成によれば、内殻体20の一対の成形体21A、21Bが、電極板1の縁部に確実に固定されて、内殻体20と電極板1との相対移動が、電極板1の厚さ方向及び該厚さ方向に垂直な面方向のすべてにおいて規制される。具体的には、電極板1の縁部に装着された内殻体20が、電極板1の表裏面から離間することや、表裏面上を面方向に移動(スライド移動、回転移動等)することが、確実に規制される。
一方、本実施形態によれば、電極板1の縁部に対する縁部絶縁部材10の位置ずれを確実に防止できるのである。
また、絶縁部材本体11の長手方向の端部に、端部被覆部12が射出成型により一体に設けられているので、絶縁部材本体11に対する端部被覆部12の移動や離脱等が防止されて、縁部絶縁部材10を長期にわたり安定して電解精錬に用いることができる。
本発明の縁部絶縁部材10による作用効果について、銅の電解精錬を行って確認した。
具体的には、電極板1として300mm×300mmの矩形板状をなすミニチュアサンプルを用意し、この電極板1の縁部(一対の側方縁部)に、前述の実施形態で説明した縁部絶縁部材10を装着したものを実施例とした。
そして、電極板1及び縁部絶縁部材10を電解液S中に浸漬して、銅の電解精錬を行った。また、電解精錬の条件としては、銅濃度:40g/L、硫酸濃度:200g/L、電解液温度:65℃とした。
この電解精錬は、1クール9日間として実施し、電極板1の縁部における下端面1cに、何クール目で銅が電着析出するかについて、目視により確認した。
比較例においても、上述の実施例と同様の条件で試験を行い、何クール目で銅が電着析出するかについて、目視により確認した。
実施例では、5クール目を過ぎても、電極板1の縁部の下端面1cに、銅の電着析出は見受けられなかった。一方、比較例では、2クール目において、電極板1の縁部の下端面1cに、銅の電着析出が確認された。
1c 下端面(端面)
2b 内殻体取付孔(貫通孔)
10 縁部絶縁部材
11 絶縁部材本体
12 端部被覆部
14 溝
20 内殻体
21(21A、21B) 成形体
22 連結部
23、24 板部
40 外殻体
Claims (4)
- 金属の電解精錬に用いる電極板の縁部に取り付けられる縁部絶縁部材であって、
前記縁部に沿って延び、前記縁部に装着される絶縁部材本体を有し、
前記絶縁部材本体は、
この絶縁部材本体の長手方向に延び、前記縁部に直接取り付けられる内殻体と、
前記内殻体及び前記縁部を収容する溝を有し、前記長手方向に延びる外殻体と、を備え、
前記内殻体は、
前記縁部の表裏面に取り付けられる一対の成形体と、
前記一対の成形体の前記長手方向の端部同士を繋ぐとともに、前記縁部の前記長手方向を向く端面を覆う連結部と、を備えることを特徴とする縁部絶縁部材。 - 請求項1に記載の縁部絶縁部材であって、
前記絶縁部材本体の前記長手方向の端部には、端部被覆部が配設されており、
前記端部被覆部は、前記連結部をその前記長手方向の外側から覆うことを特徴とする縁部絶縁部材。 - 請求項1又は2に記載の縁部絶縁部材であって、
前記成形体は、前記長手方向に分割された複数の板部を有し、
前記長手方向に隣り合う前記板部同士の間に、隙間が設けられていることを特徴とする縁部絶縁部材。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の縁部絶縁部材であって、
前記電極板の縁部には、該電極板の厚さ方向にこの縁部を貫通する貫通孔が形成されており、
前記一対の成形体同士が、前記貫通孔内を通して互いに連結されることを特徴とする縁部絶縁部材。
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