JP2016113678A - 縁部絶縁部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極板の縁部における端面との密着性を安定して高めることができ、これにより該端面への金属の電着析出を確実に防止することができる縁部絶縁部材を提供する。【解決手段】金属の電解精錬に用いる電極板1の縁部に取り付けられる縁部絶縁部材であって、前記縁部に沿って延び、前記縁部に装着される絶縁部材本体11を有し、前記絶縁部材本体11は、この絶縁部材本体11の長手方向に延び、前記縁部に直接取り付けられる内殻体20と、前記内殻体20及び前記縁部を収容する溝を有し、前記長手方向に延びる外殻体と、を備え、前記内殻体20は、前記縁部の表裏面に取り付けられる一対の成形体21と、前記一対の成形体21の前記長手方向の端部同士を繋ぐとともに、前記縁部の前記長手方向を向く端面1cを覆う連結部22と、を備えることを特徴とする。【選択図】図5

Description

本発明は、金属の電解精製や電解採取等の電解精錬工程に使用される電極板に対して、該電極板の縁部を絶縁する目的で取り付けられる縁部絶縁部材に関するものである。
一般に、金属の電解精錬においては、ステンレス鋼等の金属からなる電極板を陰極とし、これを精錬する金属からなる陽極とともに電解槽に収容して電解液に浸漬し、電解を行って電極板の両表面に金属を析出させ、これを剥離することで板状精製物を得る方法が用いられている。
銅の電解精錬では、例えば、ステンレス鋼からなる電極板を陰極として比較的短時間の電解を行い、例えば厚さ0.5〜1.0mm程度の銅の種板を得た後、この種板を陰極として再度電解を行い、種板の表面に銅を析出させるコンベンショナル法が知られている。
また、ステンレス鋼製の電極板を陰極として長時間の電解を行い、例えば厚さ8〜10mm程度の銅板を直接得るパーマネントカソード法も周知である。
上述の種板や銅板を、ステンレス鋼等からなる電極板の両面に電着析出させたら、電着した金属を電極板から剥離して回収する。この際、電極板の縁部(特に側方縁部)に銅が電着して表裏両面の種板同士又は銅板同士が連結されていると、種板や銅板を電極板から剥ぎ取ることが困難になる。そこで、電極板の縁部への銅の電着を防止するために、下記特許文献1に示されるような、縁部絶縁部材が用いられている。
特許文献1のエッジストリップ(縁部絶縁部材)は、棒状をなし鉛直方向に延びるとともに断面U字状に形成されたチャネル部材(絶縁部材本体)と、このチャネル部材の下端部に配置されるエンドキャップ(端部被覆部)と、を有している。
チャネル部材には、その長手方向に沿って溝が設けられており、この溝内に陰極板(電極板)の側方縁部が嵌合される。すなわち、チャネル部材が陰極板の側方縁部を被覆するように装着されることにより、電解液に対して側方縁部を絶縁して、該側方縁部に銅が電着しないようにしている。
また、エンドキャップは、チャネル部材の溝内に収容された前記側方縁部の下端面が電解液に露出しないようにするためのものである。
すなわち、前記下端面が電解液に露出してこの部分に銅が電着すると、陰極板の表裏両面に電着された種板や銅板が陰極板から剥がれにくくなって生産性を低下させたり、製品の品質を低下させることがあり好ましくない。また、チャネル部材の溝内で電着した銅によって、エッジストリップが破損するおそれがある。このような不具合を防止するため、チャネル部材の下端部にエンドキャップを設けている。なお、エンドキャップは、超音波接着や溶媒接着等によりチャネル部材に固定されている。
特表2003−502511号公報
しかしながら、上記従来の縁部絶縁部材では、下記の課題を有していた。
すなわち、電解精錬時において、電極板の縁部のうち、特に縁部絶縁部材の長手方向を向く端面(具体的には、電極板の縁部における下端面)と、縁部絶縁部材との間の密着性が十分に確保されているとは言えず、これらの間に電解液が浸入して、銅(金属)が電着析出することがあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電極板の縁部における端面との密着性を安定して高めることができ、これにより該端面への金属の電着析出を確実に防止することができる縁部絶縁部材を提供することを目的としている。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明は、金属の電解精錬に用いる電極板の縁部に取り付けられる縁部絶縁部材であって、前記縁部に沿って延び、前記縁部に装着される絶縁部材本体を有し、前記絶縁部材本体は、この絶縁部材本体の長手方向に延び、前記縁部に直接取り付けられる内殻体と、前記内殻体及び前記縁部を収容する溝を有し、前記長手方向に延びる外殻体と、を備え、前記内殻体は、前記縁部の表裏面に取り付けられる一対の成形体と、前記一対の成形体の前記長手方向の端部同士を繋ぐとともに、前記縁部の前記長手方向を向く端面を覆う連結部と、を備えることを特徴とする。
本発明の縁部絶縁部材は、電極板の縁部に沿って延びる絶縁部材本体を有しており、この絶縁部材本体は、電極板の縁部に装着される。絶縁部材本体は、電極板の縁部に直接取り付けられる内殻体と、内殻体及び前記縁部を収容する溝を有する外殻体と、を備えた2層構造となっており、つまり外殻体の内部に、内殻体が収容される。このように外殻体が内殻体を覆うことにより、内殻体への電解液の浸入が抑えられている。
そして内殻体は、電極板の縁部において表裏面に取り付けられる一対の成形体と、一対の成形体の長手方向の端部同士を繋ぐとともに、電極板の縁部において長手方向を向く端面を覆う連結部と、を備えている。従って内殻体を、例えば断面コ字状等の所謂「折り返し構造」とすることができ、電極板の縁部への密着性を安定して高めることが可能になる。
具体的に、一対の成形体は、例えばそれぞれ板状に形成することができ、これにより電極板の表裏面に対して密着させることができる。従って、電極板の表裏面と、成形体との間を通して、縁部絶縁部材の内部に電解液が浸入することを防止できる。
また、一対の成形体の長手方向の端部同士を繋ぐ連結部が、電極板の縁部において長手方向を向く端面を被覆するので、該端面と連結部との間を通して、縁部絶縁部材の内部に電解液が浸入することが防止される。なお、連結部が、一対の成形体の長手方向の端部同士を繋いでいるとともに、内殻体が折り返し構造とされていることにより、この連結部が覆う電極板の縁部の端面への、電解液の回り込みによる浸入も防止することが可能になる。
このように、電解精錬時において、内殻体の連結部が、電極板の縁部の端面に対して確実に、かつ安定して密着させられて、該端面への金属の電着析出を確実に防止することができる。
また、本発明の縁部絶縁部材において、前記絶縁部材本体の前記長手方向の端部には、端部被覆部が配設されており、前記端部被覆部は、前記連結部をその前記長手方向の外側から覆うこととしてもよい。
この場合、電極板の縁部における端面を内殻体の連結部が被覆し、さらにこの連結部を、絶縁部材本体の長手方向の外側から端部被覆部が覆うので、これにより電極板の縁部の端面が二重に覆われる構造となって、前記端面への電解液の浸入を防止するという作用効果がさらに格別顕著なものとなる。
また、本発明の縁部絶縁部材において、前記成形体は、前記長手方向に分割された複数の板部を有し、前記長手方向に隣り合う前記板部同士の間に、隙間が設けられていることとしてもよい。
この場合、内殻体の成形体が、絶縁部材本体の長手方向に沿って複数の板部に分割されており、前記長手方向に隣り合う板部同士の間には隙間が設けられているので、電解精錬時において、例えば65℃程度に温度設定される電解液に縁部絶縁部材が浸漬され、内殻体の各板部が熱膨張した場合であっても、熱膨張の寸法を予め見込んで前記隙間を設定することにより、板部同士が強く接触するような事態を防止できる。これにより、内殻体と電極板との間から、縁部絶縁部材の内部に電解液が浸入することを安定的に防止できる。
また、本発明の縁部絶縁部材において、前記電極板の縁部には、該電極板の厚さ方向にこの縁部を貫通する貫通孔が形成されており、前記一対の成形体同士が、前記貫通孔内を通して互いに連結されることとしてもよい。
この場合、内殻体の一対の成形体が、電極板の縁部に確実に固定されて、内殻体と電極板との相対移動が、電極板の厚さ方向及び該厚さ方向に垂直な面方向のすべてにおいて規制される。具体的には、電極板の縁部に装着された内殻体が、電極板の表裏面から離間することや、表裏面上を面方向に移動(スライド移動、回転移動等)することが、確実に規制される。
具体的に従来では、電解精錬工程において、電極板の縁部に装着された縁部絶縁部材に熱膨張による変形が生じたり、衝突等による外力が加えられたりして、縁部絶縁部材に位置ずれ(水平方向への横ずれや鉛直方向への縦ずれ等)が生じやすかった。このような位置ずれが生じると、縁部絶縁部材と電極板の縁部との間に電解液が浸入するおそれがある。
一方、本発明の上記構成によれば、電極板の縁部に対する縁部絶縁部材の位置ずれを確実に防止できるのである。
従って、内殻体の一対の本体部と、電極板の表裏面との密着性が高められ、かつ、内殻体の連結部と、電極板の縁部の端面との密着性も高められて、上述した作用効果がさらに顕著なものとなる。
本発明の縁部絶縁部材によれば、電極板の縁部における端面との密着性を安定して高めることができ、これにより該端面への金属の電着析出を確実に防止することができる。
本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材を電極板の縁部に装着した状態を示す正面図である。 縁部絶縁部材を取り付けていない電極板を示す正面図である。 図2のB部の(a)正面図、(b)側面図、である。 図1のA−A断面を示す図である。 電極板の縁部に取り付けられた内殻体の要部を示す正面図である。 図5のC−C断面を示す図である。 内殻体における一対の成形体及び連結部を示す(a)平面図、(b)側面図、である。 図7(b)のD部を拡大して示す図である。 図7(a)のE−E断面を示す図である。 図7(a)のF−F断面を示す図である。 内殻体の成形体の板部を示す(a)平面図、(b)側面図、である。 内殻体の成形体の板部を示す(a)側面図、(b)平面図、である。 外殻体を示す(a)下面図、(b)正面図、である。 図13(b)のG−G断面を示す図である。 図13(b)のH−H断面を示す図である。 電極板の切り欠き部に端部被覆部の切り欠き係合部を係合した状態を説明する正面図である。
以下、本発明の一実施形態に係る縁部絶縁部材10について、図面を参照して説明する。
本実施形態の縁部絶縁部材10は、金属の電解精製や電解採取等の電解精錬工程に使用される電極板1に対して、該電極板1の縁部を絶縁する目的で取り付けられるものであり、また、電極板1の縁部を保護する機能も有している。具体的に、本実施形態で説明する電極板1及び縁部絶縁部材10は、銅の電解精錬に用いられるものである。
本実施形態に係る銅の電解精錬(電解精錬工程)では、図1に示されるように、電解槽に貯留された硫酸銅溶液からなる電解液S中に、ステンレス鋼製の電極板1を浸漬するとともに、この電極板1を陰極として用いる。また、電解槽の電解液S中には、陽極として不図示の粗銅が浸漬される。
本実施形態では、電解精錬工程によって電極板1の表裏面(電極板1の厚さ方向を向く一対の外面)に銅を電着析出させて、例えば厚さ8〜10mm程度の銅板を直接的に得るパーマネントカソード法を採用している。
図1及び図2に示されるように、電極板1は、矩形板状をなしている。電極板1は、その上方縁部が棒状のハンガーバー3に連結されて、該ハンガーバー3に垂下設される。ハンガーバー3は、電解液Sの液面よりも上方に離間して配設されており、水平方向に延びている。ハンガーバー3に垂下設された電極板1は、電解精錬時において、その上端部以外の部位が電解液S中に浸漬される。
図2に示される電極板1の正面視で、矩形状をなす電極板1の4つの隅部(角部)のうち、下方に位置するとともに互いに側方に離間して配置される2つの隅部には、矩形状の切り欠き部1aがそれぞれ形成されている。なお、本実施形態でいう「側方」とは、水平方向を指しており、「上下方向」とは、鉛直方向を指す。
またこの正面視で、電極板1の四辺に相当する4つの縁部(辺部)のうち、側方の両端に位置して上下方向に延びる一対の縁部(つまり側方縁部であり、図2における電極板1の左右の縁部)には、該縁部を電極板1の厚さ方向に貫通する貫通孔2a、2bが、それぞれ形成されている。
これら貫通孔2a、2bのうち、最も上方に位置する貫通孔2aは、縁部絶縁部材10の後述する外殻体40を電極板1に固定するための外殻体取付孔となっている。本実施形態の例では、外殻体取付孔2aは、電解精錬時には電解液Sの液面よりも上方に配置される。
また、貫通孔2aの下方に配列する複数の貫通孔2bは、縁部絶縁部材10の後述する内殻体20を電極板1に固定するための内殻体取付孔となっている。本実施形態の例では、電極板1の縁部において、複数の内殻体取付孔2b同士が、該縁部が延びる方向(図2における上下方向)に沿って互いに等間隔をあけて配列している。ただし、これらの内殻体取付孔2b同士は、等間隔をあけて配列していなくてもよく、つまり不等間隔をあけて配列していてもよい。電解精錬時において、これらの内殻体取付孔2bは、電解液Sの液面よりも下方に配置される。
また、電極板1の4つの縁部のうち、下方に位置して側方に延びる縁部には、図3(a)(b)に示されるように、該縁部の下方を向く端面に、断面凹V字状をなすV溝1bが形成されている。
また、切り欠き部1aにおいて下方を向く端面(つまり電極板1の側方縁部の下端部において下方を向く端面)1cは、上下方向に垂直な平面状をなしている。
縁部絶縁部材10は、電極板1の縁部に着脱可能に装着される。本実施形態の例では、縁部絶縁部材10が、電極板1の一対の側方縁部にそれぞれ装着される。なお、特に図示していないが、縁部絶縁部材10は、電極板1の下方の縁部に装着されていてもよく、この場合、電極板1の下方の縁部には、V溝1bを形成しなくてもよい。
図1、図4及び図13に示されるように、縁部絶縁部材10は、電極板1の縁部に沿って延びる棒状をなし、該縁部に着脱可能に装着される絶縁部材本体11と、絶縁部材本体11の長手方向の端部(下端部)に配設されるとともに、切り欠き部1aに対応する形状(係合する形状)を有する端部被覆部12と、絶縁部材本体11の長手方向に沿って延び、該絶縁部材本体11に着脱可能に装着される締め付けロッド13と、を備えている。
絶縁部材本体11のうち後述する外殻体40及び締め付けロッド13は、例えば押し出し成型等により形成されており、端部被覆部12は、射出成型等により形成される。
本実施形態においては、図1に示されるように、絶縁部材本体11が延びる長手方向(絶縁部材本体11の延在方向)は、電極板1の側方縁部が延びる上下方向(鉛直方向)と同じ向きである。
なお、本明細書においては、絶縁部材本体11の長手方向及び電極板1の厚さ方向に垂直な向きを、絶縁部材本体11の短手方向(或いは幅方向)ということがある。
縁部絶縁部材10は、樹脂材料により形成される。縁部絶縁部材10は、弾性変形可能であり、かつ、所定以上の剛性を備えている。
本実施形態では図4において、縁部絶縁部材10のうち、少なくとも後述する内殻体20以外の部位(具体的には、絶縁部材本体11の外殻体40、端部被覆部12及び締め付けロッド13)は、絶縁性、耐熱性、耐酸性及び耐衝撃強度に優れたエンジニアリングプラスチックにより形成されている。なお、さらに内殻体20が、エンジニアリングプラスチックにより形成されていてもよい。
このようなエンジニアリングプラスチックを採用することにより、縁部絶縁部材10の機械的強度が確保され、かつ、縁部絶縁部材10が電解液Sに長時間浸漬された場合においても、部材の劣化が防止される。
外殻体40及び端部被覆部12に採用されるエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、シリコン樹脂(SI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリカーボネイト(PC)、ポリアクリレート(PAR)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリサルフォン(PSF)、ポリフェニルサルフォン(PPSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニルエーテル(PPE)等が挙げられる。
なお、外殻体40及び端部被覆部12に用いられる材料(材質)は、要求される絶縁性、耐熱性、耐酸性、耐衝撃強度等によって適宜選択されるものであり、また電解液Sを構成する酸や電解温度等も考慮して、好適な材料を選定することが好ましい。
例えば、本実施形態における銅の電解精錬では、電解液Sが硫酸を含んでいて約60〜65℃に維持されているので、硫酸に対する耐酸性を有するとともに、60〜65℃で軟化や変質が生じない程度の耐熱性を有するポリフェニルエーテル(PPE)等を使用することが好ましい。
なお、端部被覆部12については、その配置される位置や機能を鑑みて、外殻体40よりもさらに耐熱性及び耐衝撃強度に優れた材料を使用することが好ましい。
図4に示されるように、絶縁部材本体11は、該絶縁部材本体11の長手方向に延び、電極板1の縁部に直接取り付けられる内殻体20と、内殻体20及び前記縁部を収容する溝14を有し、前記長手方向に延びる外殻体40と、を備えている。
内殻体20は、外殻体40よりも弾性変形しやすい材料で形成されている。具体的には、内殻体20として、電極板1の縁部に密着させることが可能な程度の弾性を有する、外殻体40よりも柔軟な材料を用いている。なお、本明細書でいう「密着」とは、互いに接触する面同士の間に流体が通過不能な程度に、これらの面同士が隙間なく当接させられている状態を指す。
また、内殻体20は、射出成型等により形成される。
図4に示されるように、内殻体20の厚さ(電極板1の厚さ方向に沿う長さ)は、外殻体40の厚さよりも小さくされている。
内殻体20は、弾性変形しやすい特性の他に、耐熱性、耐酸性及び耐衝撃強度についても優れた特性の材料であることが望ましい。具体的に、内殻体20に用いられる材料(材質)としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド46(P46)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。本実施形態では、内殻体20の材料として、ポリプロピレン(PP)を用いている。
上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系(SBC)、オレフィン系(TPO)、ウレタン系(TPU)、ポリエステル系(TPEE)や、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)などが挙げられる。
詳しくは、上記スチレン系(SBC)として、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)などが挙げられる。
また、上記オレフィン系(TPO)として、ポリプロピレン(PP)の中に各種ゴム材を微分散させた、PP−EPM、PP−EPDM、PP−NBR、PP−IRや、ポリエチレン(PE)の中にエチレンプロピレンゴムを微分散させたPE−EPDMなどが挙げられる。
また、上記ウレタン系(TPU)として、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール(PBA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(PHC)などが挙げられる。
また、上記ポリエステル系(TPEE)として、ポリブチレンテレフタレート−ポリカプロラクトン(PBT−PCS)、ポリブチレンアジテート(PBA)などが挙げられる。
そして、図4〜図12に示されるように、内殻体20は、電極板1の縁部の表裏面に取り付けられるとともに、絶縁部材本体11の長手方向に沿って延びる一対の成形体21(21A、21B)と、一対の成形体21の前記長手方向の端部(下端部)同士を繋ぐとともに、電極板1の縁部の前記長手方向を向く端面(下端面)1cを覆う連結部22と、を備えている。
また、一対の成形体21同士は、電極板1の縁部に形成された内殻体取付孔(貫通孔)2b内を通して、互いに連結される。この構成により、内殻体20は、電極板1の縁部に装着された際に、該電極板1に対して移動を規制された状態で固定される。
一対の成形体21(21A、21B)は、絶縁部材本体11の長手方向に細長く延びる矩形板状をそれぞれなしており、互いに連結される部分の形状が異なっている。具体的に、これらの成形体21A、21Bは、内殻体取付孔2b内において互いに着脱可能に係止される部分(後述する係止軸部27、係止筒部25)を有しており、これら係止部分の形状が、互いに異なっている。
本実施形態では、一対の成形体21A、21Bのうち、電極板1の表面(電極板1の厚さ方向を向く一対の外面のうち、一方の外面)に取り付けられるものを成形体21Aと呼び、電極板1の裏面(電極板1の厚さ方向を向く一対の外面のうち、他方の外面)に取り付けられるものを成形体21Bと呼ぶ。
図5に示されるように、成形体21は、絶縁部材本体11の長手方向に分割された複数の板部23、24を有している。本実施形態では、これら板部23、24のうち、成形体21における長手方向の下端部に配置されて連結部22に連結されるものを、板部23と呼び、成形体21における長手方向の下端部以外の部位に配置されて連結部22に連結されないものを、板部24と呼ぶ。特に図示していないが、本実施形態では、成形体21の板部24が、絶縁部材本体11の長手方向に沿って複数設けられている。
成形体21において、絶縁部材本体11の長手方向に隣り合う板部23、24同士の間には、隙間が設けられている。また、長手方向に隣り合う板部24同士の間にも、隙間が設けられている。
前記隙間は、電解精錬時において、例えば60〜65℃程度に温度設定される電解液Sに縁部絶縁部材10が浸漬され、内殻体20の各板部23、24が熱膨張した場合であっても、長手方向に隣り合う板部23、24同士(板部24同士についても同じ。以下同様)が、互いに強く接触して変形することがないように、かつ、板部23、24同士の間に電解液Sが浸入可能な大きな空隙が形成されないように、予め計算値や試験値等により熱膨張寸法を見込んで設定されることが好ましい。
なお、内殻体20の板部23、24が熱膨張しても、内殻体20を覆う外殻体40の作用等により板部23、24同士の接触による変形を防止(抑制)できる場合には、前記隙間は、設けられなくてもよい。
図7(a)(b)及び図11(a)(b)に示されるように、一対の成形体21A、21Bのうち、電極板1の裏面に装着される成形体21Bには、絶縁部材本体11の長手方向(図7及び図11における左右方向)に間隔をあけて、複数の係止筒部25が形成されている。これらの係止筒部25は、成形体21Bの厚さ方向を向く両面のうち、電極板1に接触させられる面に突設されている。
図6に示されるように、成形体21Bの係止筒部25は、電極板1の縁部に形成された内殻体取付孔(貫通孔)2b内に挿入される。係止筒部25の外径は、内殻体取付孔2bの内径よりも小さくなっている。すなわち、係止筒部25の外周面と内殻体取付孔2bの内周面との間には隙間が設けられており、該隙間は、電解精錬時における成形体21の熱膨張寸法を予め見込んで設定されることが好ましい。
また、図6及び図9に示されるように、係止筒部25の内周面には、周方向に沿って延びる環状段部26が形成されている。
図7(a)(b)及び図12(a)(b)に示されるように、一対の成形体21A、21Bのうち、電極板1の表面に装着される成形体21Aには、絶縁部材本体11の長手方向(図7及び図12における左右方向)に間隔をあけて、複数の係止軸部27が形成されている。これらの係止軸部27は、成形体21Aの厚さ方向を向く両面のうち、電極板1に接触させられる面に突設されている。
図6に示されるように、成形体21Aの係止軸部27は、該成形体21Aに電極板1を挟んで対向する成形体21Bにおける、対応する係止筒部25内に嵌合する。
また、図6及び図10に示されるように、係止軸部27の外周面には、周方向の一部が他の部位よりも突出して突起28が形成されている。係止軸部27が係止筒部25内に嵌合した際に、係止軸部27の突起28は、係止筒部25の環状段部26に係止される。これにより、係止軸部27と係止筒部25とが抜け止め状態とされて、嵌合するようになっている。
図6において、係止軸部27と係止筒部25が抜け止め状態で互いに嵌合したときに、成形体21A、21Bはそれぞれ、電極板1の表裏面に密着させられる。また、作業者が外力を加えて成形体21A、21B同士を厚さ方向に離間させることにより、突起28は環状段部26を乗り越える。これにより、係止軸部27を係止筒部25内から取り外すことができるとともに、成形体21A、21Bを電極板1から取り外すことが可能である。
また、図6及び図10に示されるように、成形体21Aのうち突起28に対向する部分には、該突起28を成形するための、型抜き用のくい切り孔29が形成されている。
図4〜図7、図11及び図12に示されるように、成形体21A、21Bの周囲に形成される縁部(辺部)のうち、少なくとも電極板1の側方(水平方向)に沿う外側を向く縁部には、傾斜面が形成されている。
具体的には、図4及び図6に示されるように、成形体21A、21Bにおいて、絶縁部材本体11の短手方向(図4及び図6における左右方向)の両端に位置する一対の縁部のうち、電極板1の側方に沿う外側(図4及び図6における左側)に配置される縁部には、前記短手方向に沿って電極板1の外側(側方に沿う外側)に向かうに従い漸次板厚が薄くなる傾斜面が形成されている。
また、成形体21の板部23、24のうち、板部24については、図11及び図12に示されるように、この板部24の長手方向の両端に位置する一対の縁部にも、該長手方向に沿って板部24の外側へ向かうに従い漸次板厚が薄くなる傾斜面が形成されている。
成形体21の周囲の縁部に形成される傾斜面は、内殻体20に対して外殻体40を装着しやすくする目的で形成されている。また、このような傾斜面が形成されることにより、電極板1の表裏面に対する成形体21の密着性も高められている。
図5、図7、図11及び図12において、符号30で示される成形体21の縁部に形成された切り欠きは、成形体21を電極板1の縁部に取り付ける際に、作業者が取り付け向きを確認するための指標となる取り付け向き表示部である。取り付け向き表示部30が形成されていることにより、内殻体20を電極板1の縁部に装着する際の作業性が向上し、ひいては電解精錬工程が短縮化されて、生産性が向上する。
図5、図7及び図8に示されるように、連結部22は、矩形板状をなしている。また、連結部22の厚さ方向を向く両面のうち、電極板1に接触させられる面には、該面の一対の成形体21A、21Bに連結される両端部に、断面凹V字状をなす一対のV溝31が形成されている。V溝31は、連結部22において絶縁部材本体11の短手方向(幅方向)に沿って延びているとともに、該連結部22の前記短手方向に沿う両端面に開口している。つまりV溝31は、連結部22における前記短手方向の全域にわたって形成されている。
また、内殻体20が電極板1の縁部に取り付けられた状態で、連結部22において電極板1に接触させられる面のうち、一対のV溝31同士の間に位置する部分が、該電極板1の縁部における下端面(端面)1cに密着させられる。図5に示されるように、連結部22は、電極板1の縁部の下端面1cのうち、少なくとも電極板1の側方(図5における左右方向)に沿う内側部分に当接させられる。
なお、内殻体20を電極板1の縁部に装着した状態では、各V溝31において向かい合う一対の内壁(溝の壁面)同士が互いに当接させられて、該V溝31は閉じるようになっている。
図4に示されるように、絶縁部材本体11の内殻体20及び外殻体40のうち、外殻体40は、電極板1の縁部に装着された内殻体20とともに、該縁部を収容可能な溝14を有している。溝14は、電極板1の厚さ方向に対向配置される一対の溝壁と、これら溝壁同士を繋ぐ溝底と、を有している。
外殻体40が、電極板1の縁部とともに内殻体20を被覆しつつ、該縁部に装着された状態で、溝14の溝底は、電極板1の縁部において側方(水平方向)を向く端面に密着している。また、溝14の一対の溝壁のうち、開口部及び底部(つまり溝14の深さ方向に沿う両端部)は、電極板1の縁部における表裏面にそれぞれ密着している。また、溝14の一対の溝壁において、開口部と底部の間に位置する中間部分は、他の部位よりも電極板1の表裏面から後退させられており、この中間部分が凹部となっている。凹部は、内殻体20の形状に対応する形状とされており、凹部内には、内殻体20が収容される。
具体的に、溝14の溝幅(開口部及び底部の溝幅)は、電極板1の厚さ寸法と略同一に設定されており、溝14の深さは、例えば18mm程度に設定されている。そして溝14は、ISA法で使用される電極板1の縁部に形成された貫通孔2bを、内殻体20ごと覆うことができるように形成されている。
また、外殻体40において、絶縁部材本体11の短手方向(図4における左右方向)に沿う溝14とは反対側に位置する縁部には、絶縁部材本体11の長手方向に沿って延びるロッド嵌合溝15が形成されている。本実施形態の例では、ロッド嵌合溝15は、前記長手方向に垂直な断面が凹C字状をなしている。
図1、図4、図13〜図16において、ロッド嵌合溝15には、締め付けロッド13が嵌合される。締め付けロッド13は、軸状をなしており、その横断面が円形状とされている。つまり締め付けロッド13は、丸棒状であり、その外径が、ロッド嵌合溝15の横断面における曲率半径の2倍の値よりも、若干大きく形成されている。
このような締め付けロッド13をロッド嵌合溝15に嵌合させることによって、該ロッド嵌合溝15は溝幅方向に押し広げられ、この反作用により、溝14の溝幅は狭められて、該溝14の一対の溝壁が電極板1により強く密着させられるようになっている。
図13(a)(b)及び図15に示されるように、外殻体40の長手方向に沿う下端部(図13(b)における左端部)には、端部被覆部12が一体に設けられている。図示の例では、端部被覆部12が、外殻体40の下端よりも下方へ突出して形成されている。
図15及び図16に示されるように、端部被覆部12は、外殻体40の溝14内に配置されて矩形板状をなす切り欠き係合部12aを有している。図16において、ハッチングで示される矩形状の部分が、切り欠き係合部12aである。
切り欠き係合部12aは、電極板1の切り欠き部1aに対応する形状(凹凸嵌合する形状)とされており、具体的には、縁部絶縁部材10が電極板1の縁部に装着されたときに、切り欠き係合部12aが、切り欠き部1aに係合する。
すなわち、図16において、切り欠き係合部12aのうち上方を向く端面(上端面)が、電極板1の縁部において下方を向く端面(下端面)1cに対して、該端面1cの下方から接近配置(又は当接)される。なお、図16には特に図示されていないが、切り欠き係合部12aの上端面と、電極板1の縁部の下端面1cとの間には、内殻体20の連結部22が介装されている(図5を参照)。そして、切り欠き係合部12aの上端面は、内殻体20の連結部22に対して密着させられている。
詳しくは、切り欠き係合部12aを有する端部被覆部12が、内殻体20の連結部22を、絶縁部材本体11の長手方向の外側から(つまり連結部22をその下方から)覆っている。
また、切り欠き係合部12aのうち側方(図16における水平方向)に沿う電極板1の内側を向く端面(図16においては右端面)が、電極板1の切り欠き部1aにおいて側方に沿う電極板1の外側を向く端面(図16においては左端面)に対して、密着させられている。
つまり、端部被覆部12の切り欠き係合部12aが、電極板1の切り欠き部1aに係合することによって、切り欠き部1a内への電解液Sの浸入が防止されている。
ここで、外殻体40の下端部に、端部被覆部12を一体に成形する方法について説明する。端部被覆部12は、外殻体40の下端部に、モールド成型(射出成型)により一体成形されている。すなわち、端部被覆部12は、溶融したエンジニアプラスチック(樹脂材料)が外殻体40の下端部において固化することにより、該下端部に一体に形成されている。
具体的に、図13(b)及び図15において、端部被覆部12が設けられる前の外殻体40の下端部には、該外殻体40を厚さ方向(溝14の溝幅方向と同じ向き)に貫通する貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、溝14内に連通しており、該貫通孔16を含めた所定領域に対して樹脂材料を射出成型することにより、溝14の内部と外部(外殻体40の厚さ方向を向く一対の外面)にわたって、互いに連結された3層の板状体を有する端部被覆部12が形成される。
本実施形態では、端部被覆部12が、外殻体40の溝14内に配置されて該溝14の下端開口部を塞ぐように形成されるとともに、該端部被覆部12の内層を構成する上述の切り欠き係合部12aと、外殻体40の下端部における一対の外面に突設される一対の外層部12bと、貫通孔16内に充填されるとともに、切り欠き係合部12aと一対の外層部12bとを連結する軸部12cと、を有している。
なお、本実施形態の例では、図13(a)(b)及び図16に示されるように、矩形板状をなす一対の外層部12bと、矩形板状の切り欠き係合部12aとが、円柱状の軸部12cのみならず、外殻体40の下端から下方に向けて突設された矩形板状の底板12dによっても連結されている。また底板12dには、下方に向けて凸となる球面突起が形成されている。
端部被覆部12の材料(材質)としては、例えば外殻体40と同一のエンジニアリングプラスチック等の樹脂材料を用いることができる。すなわち、端部被覆部12として、外殻体40と同一材料のポリフェニルエーテル(PPE)を用いてもよい。
或いは、端部被覆部12として、外殻体40とは異なる樹脂材料を用いてもよい。この場合、端部被覆部12に用いる樹脂材料の融点が、外殻体40を構成する樹脂材料の融点以上に設定されていることが好ましい。これにより、端部被覆部12のモールド成型の際、溶融した端部被覆部12材料により外殻体40の表面が加熱され溶けるので、これらの接合強度が向上する。
さらに、端部被覆部12の材料として、ポリフェニルエーテル以外のポリフェニルサルフォン(PPSF)等の耐衝撃強度に優れる樹脂材料を用いることとしてもよく、この場合、電極板1を床等に載置する際に縁部絶縁部材10が受ける衝撃に対して、耐衝撃性(機械的強度)を充分に確保することができる。
図13(b)に示されるように、外殻体40の長手方向に沿う上端部(図13(b)における右端部)には、該外殻体40を厚さ方向に貫通する固定孔11aが形成されている。固定孔11aは、外殻体40を電極板1に固定するために設けられるものであり、図1に示されるように、電解精錬時には、電極板1の外殻体取付孔2aに対して同軸に配置される。これら固定孔11a及び外殻体取付孔2aには、不図示のピン部材が挿通され、これにより、電極板1に対して外殻体40が固定状態とされる。また、外殻体40の固定孔11aは、電解液Sの液面よりも上方に配置される。
次に、このように構成された縁部絶縁部材10を、電極板1の縁部に装着する手順について説明する。
まず、図2に示される電極板1の縁部(一対の側方縁部)に対して、図5及び図6に示されるように、内殻体20を取り付ける。詳しくは、内殻体20の一対の成形体21A、21Bを電極板1の縁部における表裏面に取り付けるとともに、これら成形体21A、21B同士を、該縁部の内殻体取付孔2bを通して互いに連結して、成形体21A、21Bを電極板1に密着させる。またこれにより、内殻体20のうち、一対の成形体21A、21B同士を繋ぐ連結部22を、電極板1の縁部の端面1cに密着させる。このように、電極板1の縁部に対して、内殻体20が固定される。
次に、内殻体20が装着された電極板1の縁部に対して、図4に示されるように、外殻体40を取り付ける。詳しくは、外殻体40のロッド嵌合溝15から締め付けロッド13を取り外した状態から、外殻体40の溝14内に、内殻体20及び電極板1の縁部を収容していく。この際、内殻体20及び電極板1の縁部に対して、外殻体40を長手方向(電極板1の下から上方)に向けてスライド移動させてもよく、或いは、短手方向(電極板1の側方(水平方向)に沿う外から内側)にスライド移動させてもよい。
次に、図1に示されるように、外殻体40の固定孔11aと、電極板1の外殻体取付孔2aとを同軸に位置合わせした状態で、これらの孔11a、2aにピン部材を挿通する。また、外殻体40のロッド嵌合溝15に対して、締め付けロッド13を嵌合する。これにより、電極板1の縁部に対して外殻体40が固定される。
このようにして、縁部絶縁部材10を電極板1の縁部に装着したら、この電極板1を陰極とし、粗銅を陽極として、これらを電解液S中に浸漬させ、例えば160時間以上の長時間の電解を行う。すると、電極板1の表裏面のうち、縁部絶縁部材10により被覆されていない領域に、例えば厚さ8〜10mmの銅(銅板)が電着析出する。
電極板1に電着した銅板が所期する厚さとなったら、該電極板1の表裏面から銅板を剥離して、回収する。銅板を回収する際は、電極板1の縁部から予め縁部絶縁部材10を取り外しておくことが好ましいが、装着したままであってもよい。つまり、本実施形態の縁部絶縁部材10は、上述した手順とは逆の手順により、電極板1の縁部から取り外し可能である。
以上説明した本実施形態に係る縁部絶縁部材10によれば、電極板1の縁部に直接取り付けられる内殻体20と、内殻体20及び前記縁部を収容する溝14を有する外殻体40と、を備えた2層構造となっており、つまり外殻体40の内部に、内殻体20が収容される。このように外殻体40が内殻体20を覆うことにより、内殻体20への電解液Sの浸入が抑えられている。
そして内殻体20は、電極板1の縁部において表裏面に取り付けられる一対の成形体21A、21Bと、一対の成形体21A、21Bの長手方向の端部同士を繋ぐとともに、電極板1の縁部において長手方向を向く端面1cを覆う連結部22と、を備えている。従って内殻体20を、本実施形態で説明したような断面コ字状の所謂「折り返し構造」とすることができ、電極板1の縁部への密着性を安定して高めることが可能になる。
具体的に、一対の成形体21A、21Bは、それぞれ板状をなしており、電極板1の表裏面に対して密着させることができる。従って、電極板1の表裏面と、成形体21A、21Bとの間を通して、縁部絶縁部材10の内部に電解液Sが浸入することが防止される。
また、一対の成形体21A、21Bの長手方向の端部同士を繋ぐ連結部22が、電極板1の縁部において長手方向を向く端面1cを被覆するので、該端面1cと連結部22との間を通して、縁部絶縁部材10の内部に電解液Sが浸入することが防止される。なお、連結部22が、一対の成形体21A、21Bの長手方向の端部同士を繋いでいるとともに、内殻体20が折り返し構造とされていることにより、この連結部22が覆う電極板1の縁部の端面1cへの、電解液Sの回り込みによる浸入も防止することが可能になる。
このように、電解精錬時において、内殻体20の連結部22が、電極板1の縁部の端面1cに対して確実に、かつ安定して密着させられて、該端面1cへの金属の電着析出を確実に防止することができる。
詳しくは、縁部絶縁部材10を電極板1の縁部に装着する際には、本実施形態で説明したように、絶縁部材本体11において電解液Sの液面よりも上方に位置する部分(固定孔11a)で、該絶縁部材本体11を電極板1に固定することが行われている。また一般に、樹脂材料からなる縁部絶縁部材10の線膨張係数は、金属からなる電極板1の線膨張係数よりも大きい。従って、電解精錬時には、例えば65℃程度に温度が維持される電解液S中において、熱膨張した縁部絶縁部材10の下端が、電極板1の下端に対して下方へ延びやすい。このため従来では、縁部絶縁部材の下端部と、電極板の縁部の下端面との間に生じた隙間から電解液Sが浸入し、電極板の下端面に金属が電着析出して、縁部絶縁部材が破損するおそれがあった。
一方、本実施形態によれば、縁部絶縁部材10の絶縁部材本体11が、内殻体20と外殻体40を備えており、電解液Sに直接晒される外殻体40の下端部が、電極板1の下端面1cに対してたとえ下方へ向けて延びた場合でも、内殻体20の連結部22と電極板1の下端面1cとの密着状態については安定して維持することができる。従って、電極板1の下端面1cに金属が電着析出するようなことが効果的に抑制されて、縁部絶縁部材10の破損を防止できる。
また、本実施形態では、絶縁部材本体11の長手方向の端部に、端部被覆部12が配設されており、端部被覆部12は、連結部22をその前記長手方向の外側から覆っているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの構成によれば、電極板1の縁部における端面1cを内殻体20の連結部22が被覆し、さらにこの連結部22を、絶縁部材本体11の長手方向の外側から端部被覆部12が覆うので、電極板1の縁部の端面1cが二重に覆われる構造となって、端面1cへの電解液Sの浸入を防止するという作用効果が、さらに格別顕著なものとなる。
また、本実施形態では、内殻体20の成形体21が、絶縁部材本体11の長手方向に沿って複数の板部23、24に分割されており、前記長手方向に隣り合う板部23、24同士の間には隙間が設けられているので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの構成によれば、電解精錬時において、例えば65℃程度に温度設定される電解液Sに縁部絶縁部材10が浸漬され、内殻体20の各板部23、24が熱膨張した場合であっても、熱膨張の寸法を予め見込んで前記隙間を設定することにより、板部23、24同士が強く接触するような事態を防止できる。これにより、内殻体20と電極板1との間から、縁部絶縁部材10の内部に電解液Sが浸入することを安定的に防止できる。
また、本実施形態では、電極板1の縁部に、該電極板1の厚さ方向にこの縁部を貫通する内殻体取付孔(貫通孔)2bが形成されており、内殻体20の一対の成形体21A、21B同士が、内殻体取付孔2b内を通して互いに連結されるので、下記の作用効果を奏する。
すなわちこの構成によれば、内殻体20の一対の成形体21A、21Bが、電極板1の縁部に確実に固定されて、内殻体20と電極板1との相対移動が、電極板1の厚さ方向及び該厚さ方向に垂直な面方向のすべてにおいて規制される。具体的には、電極板1の縁部に装着された内殻体20が、電極板1の表裏面から離間することや、表裏面上を面方向に移動(スライド移動、回転移動等)することが、確実に規制される。
具体的に従来では、電解精錬工程において、電極板の縁部に装着された縁部絶縁部材に熱膨張による変形が生じたり、衝突等による外力が加えられたりして、縁部絶縁部材に位置ずれ(水平方向への横ずれや鉛直方向への縦ずれ等)が生じやすかった。このような位置ずれが生じると、縁部絶縁部材と電極板の縁部との間に電解液Sが浸入するおそれがある。
一方、本実施形態によれば、電極板1の縁部に対する縁部絶縁部材10の位置ずれを確実に防止できるのである。
従って、内殻体20の一対の成形体21A、21Bと、電極板1の表裏面との密着性が高められ、かつ、内殻体20の連結部22と、電極板1の縁部の端面1cとの密着性も高められて、上述した作用効果がさらに顕著なものとなる。
また本実施形態では、縁部絶縁部材10のうち、少なくとも絶縁部材本体11の外殻体40及び端部被覆部12として、絶縁性、耐熱性、耐酸性及び耐衝撃強度に優れたポリフェニルエーテル(PPE)を用いているので、電解精錬時において縁部絶縁部材10が、硫酸を含む60〜65℃の電解液Sに長時間浸漬された場合でも、劣化を抑制することができ、長期にわたり安定して電解精錬を行うことができる。
また、絶縁部材本体11の外殻体40は、締め付けロッド13をロッド嵌合溝15に嵌合したり取り外したりすることで、電極板1の縁部へ容易に着脱することができる。また、内殻体20は、一対の成形体21A、21Bの係止軸部27と係止筒部25とを嵌合したり、この嵌合を解除したりすることで、電極板1の縁部へ容易に着脱することができる。
また、絶縁部材本体11の外殻体40及び締め付けロッド13が、押出し成型により成形されているので、製造設備を複雑にすることなく容易にこれらの部材を製造することができ、また、例えばこれらの部材を射出成型により成形する場合に比べて、残留熱応力による変形のおそれも低減して、精度よく作製することができる。
また、絶縁部材本体11の長手方向の端部に、端部被覆部12が射出成型により一体に設けられているので、絶縁部材本体11に対する端部被覆部12の移動や離脱等が防止されて、縁部絶縁部材10を長期にわたり安定して電解精錬に用いることができる。
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前述の実施形態では、絶縁部材本体11の長手方向の端部に、内殻体20の連結部22を覆う端部被覆部12が一体に設けられるとしたが、端部被覆部12は、絶縁部材本体11の長手方向の端部に、別体に(取り外し可能に)設けられていてもよい。
また、前述の実施形態においては、パーマネントカソード法による銅の電解精錬について説明したが、これに限定されることはなく、コンベンショナル法による銅の電解精錬であってもよい。また、銅以外の金属、例えばNi、Znなどの電解精製、電解採取に使用する電極板1に取り付ける縁部絶縁部材10であってもよい。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及びなお書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
<銅の電解精錬・確認試験>
本発明の縁部絶縁部材10による作用効果について、銅の電解精錬を行って確認した。
具体的には、電極板1として300mm×300mmの矩形板状をなすミニチュアサンプルを用意し、この電極板1の縁部(一対の側方縁部)に、前述の実施形態で説明した縁部絶縁部材10を装着したものを実施例とした。
そして、電極板1及び縁部絶縁部材10を電解液S中に浸漬して、銅の電解精錬を行った。また、電解精錬の条件としては、銅濃度:40g/L、硫酸濃度:200g/L、電解液温度:65℃とした。
この電解精錬は、1クール9日間として実施し、電極板1の縁部における下端面1cに、何クール目で銅が電着析出するかについて、目視により確認した。
一方、従来の比較例としては、前述の実施形態で説明した縁部絶縁部材10と比較して、絶縁部材本体11の外殻体40の溝14内に、内殻体20が収容される代わりに、該溝14の内面にシール膜が一体に形成されたものを用意した。このシール膜は、外殻体40とともに2色成形により形成したものであり、電極板1の表裏面に密着させられる。なお、シール膜には、前述の実施形態で説明した内殻体20の連結部22に相当する部位はなく、よって比較例においては、電極板1の縁部における下端面1cが、端部被覆部12のみにより覆われる。
比較例においても、上述の実施例と同様の条件で試験を行い、何クール目で銅が電着析出するかについて、目視により確認した。
<試験結果>
実施例では、5クール目を過ぎても、電極板1の縁部の下端面1cに、銅の電着析出は見受けられなかった。一方、比較例では、2クール目において、電極板1の縁部の下端面1cに、銅の電着析出が確認された。
1 電極板
1c 下端面(端面)
2b 内殻体取付孔(貫通孔)
10 縁部絶縁部材
11 絶縁部材本体
12 端部被覆部
14 溝
20 内殻体
21(21A、21B) 成形体
22 連結部
23、24 板部
40 外殻体

Claims (4)

  1. 金属の電解精錬に用いる電極板の縁部に取り付けられる縁部絶縁部材であって、
    前記縁部に沿って延び、前記縁部に装着される絶縁部材本体を有し、
    前記絶縁部材本体は、
    この絶縁部材本体の長手方向に延び、前記縁部に直接取り付けられる内殻体と、
    前記内殻体及び前記縁部を収容する溝を有し、前記長手方向に延びる外殻体と、を備え、
    前記内殻体は、
    前記縁部の表裏面に取り付けられる一対の成形体と、
    前記一対の成形体の前記長手方向の端部同士を繋ぐとともに、前記縁部の前記長手方向を向く端面を覆う連結部と、を備えることを特徴とする縁部絶縁部材。
  2. 請求項1に記載の縁部絶縁部材であって、
    前記絶縁部材本体の前記長手方向の端部には、端部被覆部が配設されており、
    前記端部被覆部は、前記連結部をその前記長手方向の外側から覆うことを特徴とする縁部絶縁部材。
  3. 請求項1又は2に記載の縁部絶縁部材であって、
    前記成形体は、前記長手方向に分割された複数の板部を有し、
    前記長手方向に隣り合う前記板部同士の間に、隙間が設けられていることを特徴とする縁部絶縁部材。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の縁部絶縁部材であって、
    前記電極板の縁部には、該電極板の厚さ方向にこの縁部を貫通する貫通孔が形成されており、
    前記一対の成形体同士が、前記貫通孔内を通して互いに連結されることを特徴とする縁部絶縁部材。
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