JP6094449B2 - 電解精製用パーマネントカソード及びそれを用いた銅の電解精製方法 - Google Patents
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Description
このエッジストリップには、操業の過程でパーマネントカソードが一時的に曲がったりするため弾性が求められ、また、パーマネントカソードへの密着性が求められるため、通常、樹脂製のものが用いられている。
しかしながら、交換直後の新規なエッジストリップにおいてもエッジストリップ下端に粒状の電気銅の電着が見られ、この粒状の電着銅の粗大化によるエッジストリップの破損や、粗大化した電着銅がアノードと接触してショートを起こし電気銅の生産効率に悪影響を及ぼすといったトラブルが発生している。
しかしながら、上記方法によっても、操業時間の経過とともに、エッジストリップ下端部に設けられたウレタン系樹脂とパーマネントカソードの間には、隙間が生じる。一度、この隙間が生じると、この隙間から電解液が侵入し、粒状の電気銅の電着が始まる。粒状の電気銅が電着すると、この隙間は更に大きくなり、更なる電解液の進入と粒状の電気銅の電着が始まり、最終的にはエッジストリップを破損させていた。
図3に見られるように従来のパーマネントカソード本体部22及びエッジストリップ30のピンによる固定方法は、作業性の容易さなどの理由により、パーマネントカソード本体部22両側辺部に設けられている厚さ方向に貫通したカソードインナーピン差込孔25、並びにエッジストリップ30におけるカソードインナーピン差込孔25に対応した位置におけるパーマネントカソード本体部22の上部、エッジストリップ30の上部に設けられている、それぞれのトップピン差込孔24、31を用い、その差込孔にピンを差し込み、固定していた。
先ず、熱膨張とは、温度Tにおける長さLの物体が、温度T+dTに変化すると長さがL+dLになるという現象を言い、線膨張係数をαとすると、下記(1)式で表わされる。
線膨張係数αは、単位長さ当たりにおける温度による長さの変化率で、[1/K]の単位を有する。
電着した粒状の電気銅は、エッジストリップの破損やパーマネントカソードとアノードの間に電流の偏りをもたらし、ひいてはパーマネントカソードとアノードとの短絡により生産効率を低下させるという問題を引き起こす。
パーマネントカソード本体部2の両側辺部2a、2aを、白抜き矢印で示すように外側から対のエッジストリップ10、10で挟み込んで覆う形態を採っている。
そのエッジストリップ10のパーマネントカソード本体部2への固定について以下に説明する。
一方、エッジストリップ10にも、その下部に少なくとも1ヶ所、エッジストリップアンダーピン差込孔11が設けられている。
それらのアンダーピン差込孔4、11が設けられる位置は、第一にパーマネントカソード本体部2及びエッジストリップ10の下部に設けられ、第二にパーマネントカソード本体部2にエッジストリップ10を取り付けた際に、両アンダーピン差込孔4、11が重ね合わさり貫通孔を形成し、その貫通孔にアンダーピン7が、その重ね合わさった孔に差し込まれ、カソードとストリップを固定できれば良く、種々の方法が採れる。
電解精製に際しては、電解槽にパーマネントカソードを装入した時に、そのパーマネントカソードに固定されたエッジストリップの上端は、電解槽の液面よりも上に位置していることが好ましい。
エッジストリップの上端が、電解槽の液面よりも下に位置した場合、エッジストリップの上端から電解槽の液面までの間に電気銅が電着するため、エッジストリップの上端は、電着した電気銅により、エッジストリップが熱膨張により延びた状態で固定されてしまう。従って、操業が終わり常温に戻ったとき、エッジストリップは縮むため、エッジストリップにひび割れが生じるなどのトラブルが発生する。
エッジストリップ上端10aとビーム3の間には、隙間Gが設けられることが好ましい。その隙間Gは10〜150mmであることが好ましい。
これらのアンダーピン差込孔は、それぞれの孔を合致させて、パーマネントカソード本体部2とエッジストリップ10を貫通する貫通孔を形成し、その貫通孔にストップピンを差し込み、両者を固定するのに使われる。したがって、その貫通孔の位置で熱膨張による影響が決まってくる。
これらのアンダーピン差込孔4、11の位置が、パーマネントカソード下端2b及びエッジストリップ下端10bから100mmまでの領域に設けた場合、エッジストリップ10の線膨張係数が150×10−6[1/K]以下であれば、アンダーピンよりも下側に膨張する長さを、約0.5mm以下に抑えることが可能である。
パーマネントカソード下端2bとエッジストリップ下端10bに生じる隙間が、およそ0.5mm以下であれば、60℃前後の電解液の表面張力から、この電解液が侵入する可能性は小さい。
従って、パーマネントカソード下端2bとエッジストリップ下端10bに生じる隙間は、0.5mmを超える可能性があり、電解液がこの隙間から侵入し、粒状の電気銅が電着する可能性が高くなる。
この線膨張係数が150×10−6[1/K]を超えると、アンダーピンよりも下側で膨張する長さは、0.5mmよりも大きくなる可能が出てくる。
従って、パーマネントカソード下端とエッジストリップ下端に生じる隙間は、0.5mmを超える可能性があり、電解液がこの隙間から侵入し、粒状の電気銅が電着する可能性が高くなる。
パーマネントカソードの具体的な材質は、ステンレス鋼であることが好ましい。
先ず、厚み3.2mmのSUS316で作られたパーマネントカソード本体部2の両側辺部下端からH=100mmの位置に、直径8mmのカソードアンダーピン差込孔4を設ける。
次に、線膨張係数110×10−6[1/K]のABS樹脂で作られたエッジストリップ2の下端2bからH=100mmの位置に直径8mmのエッジストリップアンダーピン差込孔11を設ける。
また、このエッジストリップ上端は、電解槽にパーマネントカソードを入れた時、このパーマネントカソードに固定されたエッジストリップの上端が電解槽の液面よりも上に位置するように設けた。
具体的なエッジストリップの長さは1000mm、エッジストリップ上端とパーマネントカソード上端に取り付けられたビームとの距離Gは150mmとした。
この結果、エッジストリップの破損も発生しなかった。
比較例として、図3に示すパーマネントカソード本体部22の上部、及びエッジストリップ30の上部をピンで固定する形式の電解精製用パーマネントカソード21を用いて、実施例1と同様に銅の電解精製を実施した。
図3の電解精製用パーマネントカソード21では、パーマネントカソード本体部22に設けられるカソードアンダーピン差込孔の代わりに、パーマネントカソード両側辺部上端から100mmの位置にカソードトップピン差込孔を設け、エッジストリップに設けられるエッジストリップアンダーピン差込孔の代わりに、エッジストリップ上端から100mmの位置にエッジストリップトップピン差込孔を設け、前記トップピン差込孔にトップピンを差し込むことで固定することを除き、実施例1と同様にして行った。
その結果、粒状の電気銅が電着し、エッジストリップが破損した。
2、22 パーマネントカソード本体部
2a パーマネントカソード本体部の側辺部
2b パーマネントカソード本体部の下端部
2c ガイドインナーピン
3、23 ビーム
4 カソードアンダーピン差込孔
6 エンドギャップ
7 アンダーピン
10、30 エッジストリップ
10a エッジストリップ上端部
10b エッジストリップ下端部
10c ガイド溝
11 エッジストリップアンダーピン差込孔
24 カソードトップピン差込孔
25 カソードインナーピン差込孔
27 トップピン
31 エッジストリップトップピン差込孔
32 エッジインナーピン差込孔
Claims (8)
- 電解精製用パーマネントカソードであって、
少なくともパーマネントカソード本体部と、前記パーマネントカソード本体部の両側辺部をマスキングする絶縁材からなる一対のエッジストリップを備え、
前記パーマネントカソード本体部は、前記両側辺部下部の少なくとも1箇所に、前記本体部を厚さ方向で貫通しているカソードの両側辺部下部においてカソードとエッジストリップを固定するためのピン(以下、アンダーピンとよぶ)であるカソードアンダーピン差込孔を有し、
前記エッジストリップは、前記カソードアンダーピン差込孔の少なくとも1箇所と合致して貫通孔を形成する位置に設けられるエッジストリップアンダーピン差込孔を備え、
前記エッジストリップが、前記パーマネントカソード本体部の両側辺部に沿って、前記両側辺部を覆うように取り付けられ、且つ前記カソードアンダーピン差込孔とエッジストリップアンダーピン差込孔を合致させて貫通孔を形成し、前記貫通孔にアンダーピンを差し込み、前記エッジストリップをパーマネントカソード本体部に固定し、熱膨張により発生するパーマネントカソードとエッジストリップの熱膨張挙動の違いにより生じる線膨張長さの差を上部に逃がすことを特徴とする電解精製用パーマネントカソード。 - 前記エッジストリップアンダーピン差込孔が、前記エッジストリップ下端から、前記本体部下端と前記カソードアンダーピン差込孔間の距離Hと等しい距離の位置に設けられ、前記カソードアンダーピン差込孔と合致して貫通孔を形成し、前記貫通孔にアンダーピンを差し込み、前記エッジストリップをパーマネントカソード本体部に固定することを特徴とする請求項1に記載の電解精製用パーマネントカソード。
- 前記電解精製用パーマネントカソードが、電解槽に装入された際に、前記エッジストリップの上端が、電解槽内の電解液の液面よりも上に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解精製用パーマネントカソード。
- 前記カソードアンダーピン差込孔が設けられた領域が、前記パーマネントカソード本体部下端から上端に向かって100mmまでの領域であることを特徴とする請求項1から3にいずれか1項に記載の電解精製用パーマネントカソード。
- 前記エッジストリップが、電解精製で使用する電解液の浸食に耐え、かつ線膨張係数が150×10−6[1/K]以下の樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解精製用パーマネントカソード。
- 前記エッジストリップの材質が、硬質ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)のいずれか1つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解精製用パーマネントカソード。
- 前記パーマネントカソードの材質が、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解精製用パーマネントカソード。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解精製用パーマネントカソードを用いて銅の精製を行うことを特徴とする銅の電解精製方法。
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