JP2016112988A - ステアリング装置 - Google Patents

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雅芳 作田
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Abstract

【課題】車両衝突時のアッパージャケットの移動量を十分に確保しつつ、EAの安定化を図ることができるステアリング装置を提供すること。【解決手段】ステアリング装置1は、アッパージャケット19に設けられた開口部42と、アッパージャケット19に取り付けられるツース部材46に設けられた凸部52とを含む。開口部42は、前側X2を臨む端面43によって一部が縁取られている。凸部52は、開口部42に嵌め込まれており、端面43に前側X2から対向する対向面52Aを有する。端面43および対向面52Aの少なくとも一方は、後側X1に向かうにつれて外側R1へ向かうように軸方向Xに傾斜している。車両衝突時には、ツース部材46が、アッパージャケット19から離脱する。これにより、アッパージャケット19は、ロアージャケット20に対して軸方向Xへ移動する。【選択図】図4

Description

この発明は、ステアリング装置に関する。
下記特許文献1に記載のステアリング装置は、車体に固定される支持アセンブリと、操舵部材を保持する筒状体とを含む。筒状体は、支持アセンブリに対して摺動可能に取り付けられている。支持アセンブリには、歯を有する可動爪が回転可能に固定されている。筒状体には、複数の凹部有するガイド片が設けられている。可動爪の歯は、ガイド片の凹部と噛み合う。
車両衝突が発生したときに、筒状体は、支持アセンブリの内側に移動する。そのとき、可動爪の歯がガイド片の凹部に噛み合っているので、ガイド片は、可動爪に保持された状態で維持される。
米国特許出願公開第2011/0210536号明細書
特許文献1のステアリング装置では、車両衝突時にアッパージャケットである筒状体が支持アセンブリの内側に移動することによって、車両衝突時の衝撃が吸収(EA:Energy Absorption)される。車両衝突時には、ガイド片が可動爪を介して車体側に固定されている。筒状体の操舵部材側に端部には、ターンスイッチやコンビスイッチやキーロックなどの装備品が取り付けられることがあるため、車両衝突時に筒状体が移動すると、ガイド片における操舵部材側の端部が当該装備品に衝突する場合がある。この場合、当該装備品に衝突したときのガイド片が予測不能に動くことによって、安定したEAが阻害される虞がある。また、この場合、筒状体は、車両衝突時にガイド片と装備品との間の距離しか移動することができないので、EAのための筒状体の移動量を十分に確保できない虞がある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、車両衝突時の衝撃吸収のためのアッパージャケットの移動量を十分に確保しつつ、EAの安定化を図ることができるステアリング装置を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、一端(3A)に操舵部材(11)が連結され、軸方向(X)に伸縮可能なステアリングシャフト(3)と、前記操舵部材側(X1)で前記ステアリングシャフトを保持するアッパージャケット(19)と、前記操舵部材とは反対側(X2)で前記ステアリングシャフトを保持するロアージャケット(20)とを有し、前記ロアージャケットに対する前記アッパージャケットの前記軸方向への移動によって前記ステアリングシャフトとともに前記軸方向に伸縮可能なコラムジャケット(4)と、前記ロアージャケットを支持し、車体(2)に固定されたブラケット(6)と、前記軸方向に並ぶ複数の被係合歯(50)を有し、前記ステアリングシャフトを中心とする径方向(R)における外側(R1)から前記アッパージャケットに取り付けられるツース部材(46)と、前記径方向における前記ツース部材の外側に配置され、前記ロアージャケットによって支持され、前記軸方向における前記アッパージャケットの位置をロックするために前記被係合歯と噛み合う係合歯(57)を有するロック部材(48)と、車両衝突時に、前記被係合歯と前記係合歯とが噛み合った状態における前記ツース部材から前記アッパージャケットを離脱させる離脱機構(9)と、前記アッパージャケットに設けられ、前記反対側を臨む端面(43)によって一部が縁取られた開口部(42)と、前記ツース部材に設けられ、前記開口部の端面に前記軸方向における前記反対側から対向する対向面(52A,68A,73A,76A)を有し、前記開口部に嵌め込まれる凸部(52,68,73,75)とを含み、前記端面および前記対向面の少なくとも一方は、前記操舵部材側へ向かうにつれて前記径方向における外側へ向かうように前記軸方向に傾斜していることを特徴とする、ステアリング装置(1)である。
請求項2記載の発明は、前記凸部は、前記ツース部材において前記操舵部材側の端部(46A)に設けられていることを特徴とする、請求項1記載のステアリング装置である。
請求項3記載の発明は、前記凸部は、前記ツース部材において前記操舵部材側の端部を折り曲げることによって形成された折り曲げ部(65,70)であることを特徴とする、請求項2記載のステアリング装置である。
請求項4記載の発明は、前記ツース部材において前記操舵部材側の端部は、前記径方向における外側へ反っていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステアリング装置である。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
請求項1記載の発明によれば、ステアリング装置では、コラムジャケットが、操舵部材側のアッパージャケットと、操舵部材とは反対側のロアージャケットとを有していて、アッパージャケットおよびロアージャケットによってステアリングシャフトを保持している。ロアージャケットは、車体に固定されたブラケットによって支持されている。アッパージャケットがロアージャケットに対してステアリングシャフトの軸方向に移動することによって、コラムジャケットがステアリングシャフトとともに軸方向に伸縮する。
アッパージャケットには、ツース部材が、ステアリングシャフトを中心とする径方向における外側から取り付けられている。ツース部材の径方向における外側には、ロアージャケットに支持されたロック部材が配置されている。ロック部材の係合歯とツース部材の被係合歯とが噛み合うことによって、軸方向におけるアッパージャケットの位置がロックされる。アッパージャケットには、操舵部材とは反対側を臨む端面によって一部を縁取られた開口部が設けられている。開口部には、ツース部材に設けられた凸部が嵌め込まれる。ツース部材は、開口部の端面に軸方向における反対側から対向する対向面を有する。
車両衝突時には、離脱機構が、アッパージャケットからツース部材を離脱させることによって、アッパージャケットがロアージャケットに対して前記反対側へ移動する。これにより、開口部の端面と、ツース部材の対向面とが当接する。
端面および対向面の少なくとも一方は、操舵部材側へ向かうにつれて径方向における外側へ向かうように軸方向に傾斜している。そのため、凸部は、当該一方の傾斜に沿って開口部から径方向の外側へはみ出てアッパージャケットの外表面に乗り上げる。これにより、ツース部材の操舵部材側の端部がアッパージャケットの外表面から浮き上がる。したがって、たとえば、アッパージャケットの外表面に装備品が取り付けられていた場合、車両衝突時には、ツース部材において既に浮き上がった状態の前記端部は、当該装備品を円滑に乗り上げることによって径方向における外側へ反る。これにより、当該装備品がツース部材の操舵部材側の端部に当接することに起因してアッパージャケットの移動が阻害されるのを防ぐことができるため、車両衝突時の衝撃吸収のためのアッパージャケットの移動量を十分に確保することができる。また、車両衝突時のツース部材では、操舵部材側の端部が径方向における外側へ浮き上がって反るというように挙動が一定になるので、ツース部材に起因してEAが不安定になることがなく、EAの安定化を図ることができる。
請求項2記載の発明によれば、凸部は、ツース部材において操舵部材側の端部に設けられているため、凸部がアッパージャケットの外表面に乗り上げた場合に、ツース部材の操舵部材側の端部を確実にアッパージャケットの外表面から浮き上がらせることができる。
請求項3記載の発明によれば、凸部は、ツース部材において操舵部材側の端部を折り曲げることによって形成された折り曲げ部であるため、その形成が容易であり、さらに、凸部が別部品である場合に凸部の取り付け用の穴をツース部材に孔などを設ける必要がない。これにより、凸部をシンプルに構成できるとともに、ツース部材の強度の低下を抑制することができる。
請求項4記載の発明によれば、ツース部材において操舵部材側の端部は、径方向における外側へ反っているため、車両衝突時には、前述した装備品を一層円滑に乗り上げることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置1の概略構成を示す側面図である。 図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。 図3は、ロック機構8および離脱機構9の分解斜視図である。 図4は、図2におけるIV−IV線に沿った階段断面図である。 図5は、図4において二次衝突が発生してアッパージャケット19が前側X2へ移動した後の状態を示した図である。 図6は、図5に示す状態よりもさらに前側X2にアッパージャケット19が移動した後の状態を示した図である。 図7は、図6に示す状態よりもさらに前側X2にアッパージャケット19が移動した後の状態を示した図である。 図8は、本発明の第1変形例の凸部68の周辺の断面図である。 図9は、本発明の第2変形例の凸部73の周辺の断面図である。 図10は、本発明の第3変形例の凸部75の周辺の断面図である。 図11は、本発明の第4変形例の凸部52の周辺の断面図である。
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置1の概略構成を示す側面図である。図1において、紙面左側が、ステアリング装置1が取り付けられる車体2の前側であり、紙面右側が車体2の後側であり、紙面上側が車体2の上側であり、紙面下側が車体2の下側である。
図1を参照して、ステアリング装置1は、ステアリングシャフト3と、コラムジャケット4と、ロアーブラケット5と、アッパーブラケット6(ブラケット)と、位置調整機構7と、ロック機構8と、離脱機構9とを主に含んでいる。
ステアリングシャフト3では、後端である一端3Aに操舵部材11が連結されている。ステアリングシャフト3において前端である他端3Bが、自在継手12、インターミディエイトシャフト13および自在継手14を順に介して、転舵機構15のピニオン軸16に連結されている。転舵機構15は、ラックアンドピニオン機構などで構成されている。転舵機構15は、ステアリングシャフト3の回転が伝達されたことに応じて、図示しないタイヤなどの転舵輪を転舵させる。
ステアリングシャフト3は、車体2の前後方向に延びている。以下では、ステアリングシャフト3が延びる方向を軸方向Xとする。軸方向Xは、他端3Bが一端3Aよりも低くなるように水平方向に対して傾斜している。軸方向Xにおいて操舵部材11側である後側には、符号「X1」を付し、軸方向Xにおいて操舵部材11とは反対側である前側には、符号「X2」を付す。
軸方向Xに対する直交方向のうち、図1において紙面と垂直な方向を左右方向Yといい、図1において略上下に延びる方向を上下方向Zという。左右方向Yにおいて、図1の紙面の奥側は、右側Y1であり、紙面の手前側は、左側Y2である。上下方向Zにおいて、上側には、符号「Z1」を付し、下側には、符号「Z2」を付す。
なお、図1以外の各図において図1の軸方向X、後側X1、前側X2、左右方向Y、右側Y1、左側Y2、上下方向Z、上側Z1および下側Z2に対応する方向には、図1と同じ符号を付している。
ステアリングシャフト3は、少なくとも一部が円筒状のアッパーシャフト17と円柱状のロアーシャフト18とを有している。アッパーシャフト17は、ロアーシャフト18よりも後側X1で同軸状に配置されている。
アッパーシャフト17における後端17Aが、ステアリングシャフト3の一端3Aであり、アッパーシャフト17の後端17Aに操舵部材11が連結されている。
ロアーシャフト18における前端18Aが、ステアリングシャフト3の他端3Bである。ロアーシャフト18の後端は、アッパーシャフト17の前端17Bに前側X2から挿入されている。ロアーシャフト18は、スプライン嵌合やセレーション嵌合によってアッパーシャフト17に嵌合されることでアッパーシャフト17の前端17Bに連結されている。そのため、アッパーシャフト17とロアーシャフト18とは、一体回転可能であるとともに、軸方向Xに沿って相対移動可能である。ロアーシャフト18に対するアッパーシャフト17の軸方向Xへの移動によって、ステアリングシャフト3は、軸方向Xに伸縮可能である。
コラムジャケット4は、全体として、軸方向Xへ延びる中空体である。コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3を収容し、保持している。コラムジャケット4は、軸方向Xに延びるアッパージャケット19およびロアージャケット20を有している。
アッパージャケット19は、ロアージャケット20よりも後側X1に位置している。アッパージャケット19は、ロアージャケット20に対して内嵌されている。詳しくは、アッパージャケット19の前端19Bがロアージャケット20の後端20Aに対して後側X1から挿入されている。この状態で、アッパージャケット19は、ロアージャケット20に対する軸方向Xへの移動が可能である。この移動によって、コラムジャケット4の全体は、軸方向Xに沿って伸縮可能である。
コラムジャケット4は、軸受21および軸受22によってステアリングシャフト3に連結されていることから、コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3を回転自在に支持している。
詳しくは、アッパージャケット19の後端19Aは、軸受21によってアッパーシャフト17に連結されている。アッパージャケット19は、アッパーシャフト17を回転自在に支持し、アッパーシャフト17を後側X1で保持している。また、ロアージャケット20の前端は、軸受22によってロアーシャフト18に連結されている。ロアージャケット20は、ロアーシャフト18を回転自在に支持し、ロアーシャフト18を前側X2で保持している。そのため、アッパーシャフト17およびアッパージャケット19のまとまりは、ロアーシャフト18およびロアージャケット20のまとまりに対して、軸方向Xに移動可能である。これにより、コラムジャケット4は、ステアリングシャフト3とともに伸縮可能である。
ここでのステアリングシャフト3およびコラムジャケット4の伸縮を「テレスコ」と呼び、この伸縮調整、つまり、テレスコによる操舵部材11の軸方向Xでの位置調整をテレスコ調整と呼ぶ。
ロアーブラケット5は、ロアージャケット20の前側X2の部分を支持し、ステアリング装置1を車体2に連結している。
ロアーブラケット5は、ロアージャケット20に固定された一対の可動ブラケット5Aと、車体2に固定された固定ブラケット5Bと、左右方向Yに延びる中心軸5Cとを含んでいる。
可動ブラケット5Aは、固定ブラケット5Bによって、中心軸5Cを介して回動可能に支持されている。そのため、コラムジャケット4全体は、ステアリングシャフト3を伴って、中心軸5Cを中心に上下に回動することができる。ここでの回動を「チルト」と呼び、中心軸5Cを中心とした略上下方向をチルト方向と呼ぶ。また、チルトによる操舵部材11の向き調整をチルト調整と呼ぶ。
アッパーブラケット6は、ロアージャケット20の後側X1の部分を支持し、ステアリング装置1を車体2に連結している。
図2は、図1におけるII−II線に沿った断面図である。
図2を参照して、アッパーブラケット6は、下向きに開放する溝形であり、軸方向Xから見て上下が逆になった略U字状をなすように、コラムジャケット4を挟んで左右対称に形成されている。詳述すると、アッパーブラケット6は、左右方向Yに薄くコラムジャケット4を挟んで対向する一対の側板23と、一対の側板23のそれぞれの上端部に連結された上下方向Zに薄い連結板24とを一体的に備えている。
一対の側板23において、左右方向Yから見て同じ位置には、チルト溝25が形成されている。チルト溝25は、上下方向Z、厳密には、中心軸5C(図1参照)を中心とした周方向であるチルト方向に延びている。連結板24は、たとえば一対の側板23よりも左右方向Yにおいて両外側へ延びた部分を有しており、当該部分に挿通される図示しないボルトなどによって、アッパーブラケット6全体が車体2に固定されている。
ロアージャケット20の上側Z1の部分には、軸方向Xの全域に延びて上下方向Zにロアージャケット20を貫通するスリット26が形成されている。また、ロアージャケット20の後端20Aには、左右方向Yからスリット26を区画しつつ上側Z1に延びる一対の支持部27が一体的に設けられている。支持部27は、軸方向Xおよび上下方向Zに広がる略直方体である。
一対の支持部27のそれぞれには、左右方向Yに支持部27を貫通する軸挿通孔28が形成されている。一対の支持部27の軸挿通孔28は、左右方向Yから見て同じ位置にある。一対の支持部27の軸挿通孔28は、左右方向Yから見て、アッパーブラケット6の一対の側板23のチルト溝25の一部と重なっている。
位置調整機構7は、操舵部材11(図1参照)のチルト調整およびテレスコ調整を可能にしたり、チルト調整やテレスコ調整を終えた操舵部材11の位置をロックしたりするための機構である。
位置調整機構7は、回転軸30と、操作部材31と、リング状のカム32およびカムフォロワ33と、ナット34と、リング状の介在部材35、針状ころ軸受36およびスラストワッシャ37とを含む。
回転軸30は、左右方向Yに延びる棒状である。回転軸30は、左右方向Yから見て軸挿通孔28とチルト溝25とが重なる部分に挿通される。回転軸30は、アッパーブラケット6の一対の側板23によって支持されている。回転軸30は、ステアリングシャフト3よりも上側Z1に位置している。
回転軸30の一端である左端部は、左側Y2の側板23よりも左側Y2に位置している。回転軸30の他端である右端部は、アッパーブラケット6の右側Y1の側板23よりも右側Y1に位置している。
回転軸30の左端部には、回転軸30の他の部分よりも大径な頭部30Aが設けられており、回転軸30の外周面の右端部には、ねじ溝30Bが設けられている。
操作部材31は、たとえば把持可能なレバーである。操作部材31は、回転軸30の頭部30A付近に取り付けられている。回転軸30は、操作部材31の操作に応じて回転する。
回転軸30の左端部は、カム32およびカムフォロワ33に挿通されている。操作部材31と左側Y2の側板23との間には、カム32およびカムフォロワ33が、左側Y2からこの順に並んでいる。
カム32は、回転軸30に対して一体回転可能であるのに対して、カムフォロワ33は、回転軸30に対して相対回転可能かつ左右方向Yに移動可能である。ただし、カムフォロワ33において左側Y2の側板23のチルト溝25に挿通される部分には、二面幅が形成されているので、カムフォロワ33の空転がチルト溝25によって防止されている。
回転軸30のねじ溝30Bには、ナット34が取り付けられている。ナット34と右側Y1の側板23との間には、介在部材35、針状ころ軸受36およびスラストワッシャ37が、左側Y2からこの順に並んでいる。回転軸30は、介在部材35、針状ころ軸受36およびスラストワッシャ37のそれぞれに対して挿通されている。
回転軸30は、アッパーブラケット6の各チルト溝25内で、前述したチルト方向に移動可能である。運転者がチルト調整のために操舵部材11(図1参照)を上下方向Zに移動させると、コラムジャケット4全体が、アッパーブラケット6に対し相対的にチルトする。操舵部材11のチルト調整は、回転軸30がチルト溝25内で移動可能な範囲で行われる。
運転者などの使用者がテレスコ調整やチルト調整をした後に、操作部材31を回動させると、カム32が回転し、カム32およびカムフォロワ33に形成されたカム突起38が互いに乗り上げる。これにより、カムフォロワ33は、回転軸30の軸方向に沿って右側Y1に移動し、左側Y2の側板23に押し付けられる。カムフォロワ33による押し付けによって、一対の側板23は、カムフォロワ33と介在部材35との間で左右方向Yの両側から締め付けられる。
これにより、一対の側板23が左右方向Yの両側からロアージャケット20の支持部27を挟持することで各側板23と支持部27との間に摩擦力が生じる。当該摩擦力によって、コラムジャケット4の位置がロックされ、操舵部材11(図1参照)がチルト調整後の位置でロックされてチルト方向に移動できなくなる。
また、ロアージャケット20の一対の支持部27が側板23によって挟持されることによって、一対の支持部27の間隔が狭まる。これにより、ロアージャケット20の内周部が狭くなって、ロアージャケット20は、ロアージャケット20内のアッパージャケット19に圧接する。その結果、アッパージャケット19とロアージャケット20との間に摩擦力が生じる。アッパージャケット19とロアージャケット20との間の摩擦によって、アッパージャケット19の位置がロックされ、操舵部材11(図1参照)がテレスコ調整後の位置でロックされて軸方向Xに移動できなくなる。
このように、チルト方向および軸方向Xにおいて操舵部材11(図1参照)の位置が固定されているときのステアリング装置1の状態を「ロック状態」と呼ぶ。
ロック状態のステアリング装置1において、操作部材31を先程とは逆方向へ回動させると、カム32がカムフォロワ33に対して回転し、カムフォロワ33は、回転軸30の軸方向に沿って左側Y2に移動する。すると、カムフォロワ33と介在部材35との間における一対の側板23に対する締め付けが解除される。各側板23と支持部27との間の摩擦力や、ロアージャケット20とアッパージャケット19との間の摩擦力が無くなるので、操舵部材11(図1参照)が軸方向Xおよびチルト方向に移動できるようになる。これにより、操舵部材11のテレスコ調整やチルト調整が再び可能となる。
このように、チルト方向および軸方向Xにおいて操舵部材11の位置の固定が解除されているときのステアリング装置1の状態を「解除状態」と呼ぶ。
図1を参照して、アッパージャケット19の後端19Aの外周面(外表面)19Cには、キーロック本体、ターンスイッチおよびコンビスイッチなどの装備品40が取り付けられている。装備品40は、外周面19Cから突出した任意の形状に形成されている。装備品40は、たとえば、外周面19Cの周方向全域において後端19Aを取り囲んでおり、軸方向Xから見て、略四角形状である。装備品40は、操舵部材11のテレスコ調整の際、アッパージャケット19と一体移動する。
図3は、ロック機構8および離脱機構9の分解斜視図である。図4は、図2におけるIV−IV線に沿った階段断面図である。以下では、ステアリングシャフト3の中心軸3Cを中心とする径方向には、符号「R」を付す。径方向Rのうち、ステアリングシャフト3から離れる方向を径方向外側R1とし、ステアリングシャフト3の中心軸3Cへ向かう方向を径方向内側R2とする。
図3を参照して、アッパージャケット19の前端19Bの上側Z1の周壁には、上側Z1から見て円形状の第1ピン孔41が設けられている。第1ピン孔41は、前端19Bの上側Z1の周壁を上下方向Zに貫通している。
アッパージャケット19の前端19Bの上側Z1の周壁において第1ピン孔41よりも後側X1には、開口部42が設けられている。開口部42は、前端19Bの上側Z1の周壁を上下方向Zに貫通している。開口部42は、上側Z1から見て、略四角形状である。開口部42は、前側X2を臨む端面43によって一部が縁取られている。詳しくは、端面43は、略四角形状の開口部42の四辺のうち、後側X1の一辺を区画している。
図4を参照して、端面43は、上下方向Zに沿って延びる鉛直面44と、後側X1に向かうにつれて上側Z1(外側R1でもある)へ向かうように軸方向Xに傾斜する傾斜面45とを含む。傾斜面45は、鉛直面44の上端部とアッパージャケット19の外周面19Cとを連結している。端面43は、傾斜面45だけで構成されてもよい。傾斜面45は、端面43と外周面19Cとが交差する部分の角を面取りすることで形成される。
図3を参照して、ロック機構8は、歯同士の噛み合いよるロック(ポジティブロック)によって、ロアージャケット20に対するアッパージャケット19の軸方向Xにおける位置を強固にロックしたり、アッパージャケット19のロックを解除したりするための機構である。ロック機構8は、ツース部材46と、伝達部材47(図2参照)と、ロック部材48とを含む。図3では、説明の便宜上、伝達部材47の図示を省略している。
ツース部材46は、軸方向Xに長手で上下方向Zに薄い板状である。
ツース部材46には、上側Z1へ向けて突出する略三角形状の被係合歯50が複数設けられている。各被係合歯50は、左右方向Yから見て、上側Z1に向かうにしたがって前側X2へ向かうように斜めに突出している。複数の被係合歯50は、左右方向Yに延びており、軸方向Xに隣接して並んでいる。
ツース部材46の後端部46Aには、上下方向Zにツース部材46を貫通する孔51が設けられている。孔51は、上側Z1から見て、略四角形状である。図4を参照して、ツース部材46において孔51の後側X1の端縁を縁取る部分には、前側X2に向かうにつれて下側Z2へ延びる凸部52が設けられている。凸部52は、上側Z1から見て孔51とほぼ同じ大きさを有する上下に薄い小片状であって(図3参照)、ツース部材46と一体化されている。凸部52は、たとえば、プレス加工などによってツース部材46の一部を下側Z2へ向けて押し出すことによって形成される。
凸部52は、その下面として、後側X1に向かうにつれて上側Z1(外側R1でもある)へ向かうように軸方向Xに対して傾斜する対向面52Aを有する。対向面52Aの後端部は、ツース部材46の下面46Bに滑らかに連結されている。凸部52は、開口部42に嵌め込まれている。この状態で、凸部52の対向面52Aは、開口部42の端面43と軸方向Xに対向する。
ツース部材46の前端部には、上下方向Zにツース部材46を貫通する第2ピン孔53が設けられている。第2ピン孔53は、上側Z1から見て、円形状であり、第2ピン孔53は、第1ピン孔41よりも大径である。第2ピン孔53は、アッパージャケット19の第1ピン孔41と同軸状に配置される。後述するピン60が第1ピン孔41および第2ピン孔53に跨って挿入される。これにより、ロック部材48がアッパージャケット19に固定される。
ツース部材46は、アッパージャケット19の外周面19Cに上側Z1(外側R1でもある)から取り付けられている。ツース部材46は、ロアージャケット20のスリット26内に配置されている(図2参照)。
図3を参照して、ロック部材48は、円筒部55と、突出部56とを一体的に有する。円筒部55は、左右方向Yに円筒部55を貫通する円形状の挿通孔55Aを有している。突出部56は、左右方向Yから見て略矩形状であり、円筒部55の右側Y1の部分から後側X1に突出している。
突出部56の後側X1の端面58は、前側X2に凹湾曲している。突出部56の下側Z2の面56Aには、この面56Aに沿って互いに隣接して並ぶ複数の係合歯57が設けられている。複数の係合歯57は、下側Z2へ向かうに従って細くなる略三角形状であり、左右方向Yに延びている。
図2を参照して、ロック部材48は、ロアージャケット20のスリット26内において、ツース部材46の上側Z1(外側R1でもある)に配置されている。ロック部材48の円筒部55の挿通孔55Aには、回転軸30においてスリット26内に位置する部分が挿通されている。ロック部材48は、回転軸30を介してロアージャケット20によって支持されている。ロック部材48は、回転軸30に対して相対回転可能である。
伝達部材47は、操作部材31の操作に応じて、回転軸30の回転をロック部材48に伝達する。伝達部材47として、レバーやばね等を組み合わせた任意の構成を用いることができる。これにより、ロック部材48は、回転軸30を中心に回転する。なお、ロック部材48は、回転軸30と一体回転可能である場合には、伝達部材47を省略できる。
ステアリング装置1の状態が前述したロック状態であるときは、図4において実線で示すように、ロック部材48の係合歯57とツース部材46の被係合歯50とが噛み合っている。また、前述したように、ツース部材46は、アッパージャケット19に固定されており、ロック部材48は、回転軸30を介してアッパーブラケット6に固定されている。そのため、ロック状態では、ロアージャケット20に対するアッパージャケット19の移動が規制されている。よって、ロック状態では、ロアージャケット20とアッパージャケット19との間の摩擦力と、係合歯57と被係合歯50との噛み合いとによって、アッパージャケット19の軸方向Xにおける位置がさらに強固にロックされる。
また、図4を参照して、凸部52が開口部42に嵌め込まれることによって、ツース部材46は、左右方向Yにおける移動が規制される。そのため、ロック部材48の係合歯57と、ツース部材46の被係合歯50との噛み合いの安定化が図れる。
また、凸部52が開口部42に嵌め込まれていることから、ツース部材46は、凸部52側の後端部においてアッパージャケット19の外周面19Cから上側Z1に浮き上がることなく当該外周面19Cに沿っている。そのため、ロック部材48の係合歯57とツース部材46の被係合歯50とは、凸部52の存在に影響されず、安定して噛み合うことができる。
操作部材31(図2参照)を操作しステアリング装置1を解除状態にすると、図4の二点鎖線で示すように、ロック部材48が回転し、ロック部材48の複数の係合歯57は、ツース部材46の複数の被係合歯50から上側Z1へ離間する。これにより、複数の係合歯57と複数の被係合歯50との噛み合いが解除される。また、前述したように、解除状態では、アッパージャケット19とロアージャケット20との間の摩擦力も無くなっている。そのため、解除状態では、アッパージャケット19の軸方向Xにおける位置のロックが完全に解除されているので、操舵部材11のテレスコ調整が可能である。
離脱機構9は、車両衝突時にアッパージャケット19を車体2から離脱させるための機構である。離脱機構9は、ピン60と、前述したアッパージャケット19の第1ピン孔41の周縁部と、ツース部材46の第2ピン孔53の周縁部とによって構成されている。
ピン60は、たとえば樹脂製であり、上下方向Zに延びる円柱状の軸部60Aと、軸部60Aよりも大径な円柱状の頭部60Bとを一体的に含む(図3参照)。頭部60Bは、軸部60Aの上端部に固定されている。
ピン60は、アッパージャケット19の第1ピン孔41とツース部材46の第2ピン孔53とに跨って挿通されている。具体的には、軸部60Aは、第1ピン孔41に挿通されている。頭部60Bは、第2ピン孔53に挿通されている。頭部60Bの下面は、第1ピン孔41の周縁部に接触している。ツース部材46は、ピン60によって、アッパージャケット19の前端19Bに固定されている。そのため、操舵部材11のテレスコ調整の際、ツース部材46は、アッパージャケット19と一体移動する。
次に、車両衝突時のツース部材46の動作について説明する。以下では、説明の便宜上、図4において二次衝突が発生してアッパージャケット19が前側X2へ移動した後の状態を示した図5〜図7も参照して説明する。
図1を参照して、車両衝突の際、運転者が操舵部材11に衝突するいわゆる二次衝突が発生する。通常ではステアリング装置1がロック状態であるので、二次衝突による衝撃は、アッパーシャフト17を介して操舵部材11からアッパージャケット19へ伝達される。これにより、アッパージャケット19が前側X2へ移動しようとする。
図4を参照して、前述したように、ロック状態では、ツース部材46の被係合歯50は、ロック部材48の係合歯57と強固に噛み合っている。そのため、二次衝突時には、ツース部材46は、ロック部材48、回転軸30およびロアージャケット20を介して車体2(図1参照)側に固定されている。したがって、二次衝突時にアッパージャケット19に伝達される荷重が所定の値に達するまで、アッパージャケット19は、前側X2へ移動しない。
アッパージャケット19に伝達される荷重が所定の値に達し、アッパージャケット19が前側X2へ移動しようとする際、ピン60は、第1ピン孔41の周縁部と第2ピン孔53の周縁部とによって、軸部60Aと頭部60Bとの境界において破断される。これにより、第1ピン孔41に挿通されたピン60の軸部60Aは、第2ピン孔53に挿通されたピン60の頭部60Bに対して前側X2へ移動する。これにより、アッパージャケット19がロアージャケット20に対してさらに前側X2へ摺動する。このように、離脱機構9は、ロック状態においてツース部材46からアッパージャケット19を離脱させる。
離脱機構9によるアッパージャケット19の離脱と、ロアージャケット20に対するアッパージャケット19の摺動とにより、二次衝突の衝撃エネルギーの一部が吸収される。
図5を参照して、前述したように、ツース部材46の凸部52の対向面52Aは、二次衝突時も開口部42の端面43と対向している。そのため、アッパージャケット19が前側X2へ移動することによって、端面43の傾斜面45が対向面52Aに対して後側X1から接近して対向面52Aに当接する。
また、対向面52Aおよび傾斜面45は、後側X1へ向かうにつれて上側Z1へ向かうように軸方向Xに傾斜している。そのため、図6を参照して、凸部52は、傾斜面45の傾斜に沿って開口部42から上側Z1へはみ出てアッパージャケット19の外周面19Cに乗り上げる。これにより、ツース部材46の後端部46Aがアッパージャケット19の外周面19Cに対して上側Z1に浮き上がる。
このように、凸部52は、ツース部材46の後端部46Aに設けられているため、凸部52がアッパージャケット19の外周面19Cに乗り上げた場合に、ツース部材46の後端部46Aを確実に浮き上がらせることができる。
また、この状態で、ツース部材46の後端部46Aの最も後側X1の部分は、装備品40よりも上側Z1に位置している。
一方、ツース部材46において凸部52が設けられている部分よりも前側X2では、ツース部材46の被係合歯50とロック部材48の係合歯57とが噛み合っている。そのため、ツース部材46において被係合歯50が係合歯57と噛み合っている部分は、アッパージャケット19に対して浮き上がることなく、アッパージャケット19に沿った状態を維持している。
図7を参照して、凸部52がアッパージャケット19に乗り上げた後、アッパージャケット19がロアージャケット20に対して摺動し、さらに前側X2へ移動する。このとき、ツース部材46の後端部46Aが上側Z1に浮き上がっているので、装備品40がツース部材46の後端部46Aの下側Z2に潜り込みながら前進する。これによって、装備品40は、ツース部材46の後端部46Aを弾性変形させ上側Z1へ反らせる。このように、凸部52は、アッパージャケット19の外周面19Cに乗り上げることによって、後端部46Aが上側Z1へ反るきっかけをツース部材46に与える。
ツース部材46の後端部46Aが上側Z1へ反る際、ツース部材46の後端部46A以外の部分は、後端部46Aにつられて上側Z1へ移動しようとする。これにより、ツース部材46の被係合歯50とロック部材48の係合歯57とが互いに押し付けられる。したがって、被係合歯50と係合歯57との噛み合いが、より強固になる。
アッパージャケット19が所定の位置まで移動すると、アッパージャケット19が移動しなくなり、ツース部材46がそれ以上反らなくなる。このように、ロアージャケット20に対するアッパージャケット19の摺動と、ツース部材46の変形とによって、二次衝突の衝撃エネルギーの残りが吸収される。図7において二点鎖線で示した二次衝突前のアッパージャケット19の位置から、図7において実線で示した二次衝突後のアッパージャケット19の位置までの軸方向Xにおける距離には、符号「L1」を付す。
ここで、凸部52が設けられていないツース部材を有する比較例のステアリング装置の場合、二次衝突時にツース部材の後端部は、アッパージャケットの外周面に対して浮き上がらない。また、ツース部材の後端面は、軸方向Xに直交する平面である。そのため、図7において一点鎖線で示すように、二次衝突時には、アッパージャケットに設けられた装備品と、ツース部材の後端面とが軸方向Xに沿って衝突する。歯同士の噛み合いによって軸方向Xにおけるツース部材の位置が固定されているので、ロアージャケットに対するアッパージャケットの二次衝突時における摺動(EA摺動)は停止する。図7において二点鎖線で示した二次衝突前のアッパージャケット19の位置から、図7において一点鎖線で示した二次衝突後のアッパージャケットの位置までの軸方向Xにおける距離L2は、比較例の場合における二次衝突時でのアッパージャケットの移動距離である。この距離L2は、本実施形態における二次衝突時でのアッパージャケット19の移動距離L1よりも短い。つまり、比較例のステアリング装置では、本実施形態のステアリング装置1と比較して、二次衝突時の軸方向Xにおけるアッパージャケットの移動量(EAストローク)が減少している。また、比較例の場合、装備品と衝突した際のツース部材の挙動が予測不能である。
一方、本実施形態では、二次衝突時にツース部材46の後端部46Aがアッパージャケット19の外周面19Cに対して上側Z1に浮き上がっているため、装備品40がツース部材46の後端部46Aに当接することに起因してアッパージャケット19の移動が阻害されるのを防ぐことができる。これにより、二次衝突時の軸方向Xにおけるアッパージャケット19の移動量(EAストローク)を十分に確保することができる。
また、ステアリング装置1を設計する際、ツース部材46の後端部46Aと装備品40との当接を考慮せずに、EAストロークを設定することができる。
また、二次衝突時のツース部材46では、後端部46Aが上側Z1へ浮き上がって反るというように挙動が一定になるので、ツース部材46に起因してEAが不安定になることがなく、EAの安定化を図ることができる。
また、車両衝突時のツース部材46の挙動が一定で予測可能であるため、ツース部材46の材質や板厚などを変更することによって、ツース部材46の変形によって吸収される二次衝突の衝撃エネルギーの量を容易にコントロールできる。
また、車両衝突時に後端部46Aが上側Z1へ反り上がる構成のツース部材46では、ツース部材46の軸方向Xにおける長さに起因するツース部材46の配置の制約が緩和される。そのため、ツース部材46のレイアウトの自由度が向上される。
次に、本発明の第1変形例について説明する。
図8は、本発明の第1変形例の凸部68の周辺の断面図である。図8において、上記に説明した部材と同様の部材には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する(後述する図9〜図11において同じ)。
図8を参照して、第1変形例のツース部材46には、本実施形態のツース部材46とは異なり、ツース部材46の後端部46Aを前側X2へ向けるように下側Z2に折り曲げた折り曲げ部65が設けられている。折り曲げ部65は、たとえば、ツース部材46の後端部46Aを曲げ加工等により約180°折り返すことによって形成される。
折り曲げ部65は、後側X1に膨出する湾曲部66と、湾曲部66の下端部から前側X2へ延びる平板部67とを一体的に含む。湾曲部66は、後側X1に膨出する湾曲面66Aを有する。湾曲面66Aの下側Z2の部分は、後側X1へ向かうにつれて上側Z1(外側R1でもある)へ向かうように軸方向Xに傾斜している。湾曲面66Aの上端部は、ツース部材46の上面46Cと滑らかに連結されている。
平板部67は、下側Z2からツース部材46の下面46Bに接している。ツース部材46の折り曲げ部65の一部が開口部42に嵌め込まれた状態で、湾曲部66の下側Z2の略半分と、平板部67が開口部42内に位置している。第1変形例では、折り曲げ部65のうち開口部42に嵌め込まれた部分が、凸部68を構成している。湾曲面66Aの下側Z2の部分は、開口部42の端面43と軸方向Xに対向する対向面68Aである。
このように、凸部68は、折り曲げ部65によって構成されているため、その形成が容易であり、さらに、凸部が別部品である場合に凸部の取り付け用の穴をツース部材46に設ける必要がない。これにより、凸部68をシンプルに構成できるとともに、ツース部材46の強度の低下を抑制することができる。
次に、本発明の第2変形例について説明する。
図9は、本発明の第2変形例の凸部73の周辺の断面図である。
図9を参照して、第2変形例のツース部材46には、第1変形例のツース部材46と同様に、ツース部材46の後端部46Aを前側X2へ向けるように下側Z2に折り曲げた折り曲げ部70が形成されている。第2変形例の折り曲げ部70は、第1変形例の折り曲げ部65とは異なり、後側X1かつ上側Z1に膨出する湾曲部71と、軸方向Xに傾いて延びる平板部72とを含む。
湾曲部71は、後側X1へ向かうにつれて上側Z1(外側R1でもある)へ反っている。湾曲部71は、後側X1に膨出する湾曲面71Aを有する。平板部72は、湾曲部71の後側X1かつ下側Z2の端部から前側X2かつ下側Z2に延びている。平板部72は、その下面として、後側X1に向かうにつれて上側Z1(外側R1でもある)へ向かうように軸方向Xに対して傾斜する傾斜面72Aを有する。湾曲面71Aの後端部は、平板部72の傾斜面72Aの後端部と滑らかに連結されている。湾曲面71Aの前端部は、ツース部材46の上面46Cと滑らかに連結されている。
ツース部材46の折り曲げ部70の一部が開口部42に嵌め込まれた状態で、平板部72の下側Z2の部分が開口部42内に位置している。第2変形例では、折り曲げ部70のうち開口部42内に位置する平板部72の下側Z2の部分が、凸部73を構成している。傾斜面72Aのうち開口部42内に位置する部分が、開口部42の端面43と軸方向Xに対向する対向面73Aである。
このように、凸部73は、折り曲げ部70によって構成されているため、その形成が容易であり、さらに、凸部が別部品である場合に凸部の取り付け用の穴をツース部材46に設ける必要がない。これにより、凸部73をシンプルに構成できるとともに、ツース部材46の強度の低下を抑制することができる。
湾曲部71は、後側X1へ向かうにつれて上側Z1へ反っている。そのため、ツース部材46の後端部46Aは、ツース部材46の凸部73が開口部42に嵌め込まれた状態で、アッパージャケット19の外周面19Cに対して予め浮いている。これにより、ツース部材46の後端部46Aは、二次衝突時には、装備品40を一層円滑に乗り上げることができる。また、ツース部材46の後端部46Aは、二次衝突時に装備品40が軸方向Xに沿って移動して凸部73に衝突した場合、装備品40を確実に乗り上げることができる。
次に、本発明の第3変形例について説明する。
図10は、本発明の第3変形例の凸部75の周辺の断面図である。
図10を参照して、第3変形例の凸部75は、本実施形態の凸部52とは異なり、ツース部材46の下面から下側Z2へ突出した球体状である。凸部75は、下側Z2から見て、円形状であり、当該円形状の全周においてツース部材46と連結されている。
凸部75は、たとえば、上側Z1からツース部材46の後端部46Aをプレス加工で変形させることによって形成される。そのため、ツース部材46において凸部75が形成された部分の上面46Cには、下側Z2へ向けて窪んだ凹部75Aが形成されている。
凸部75は、下側Z2へ向けて膨出する湾曲面76を有する。湾曲面76の後側X1の部分は、後側X1へ向かうにつれて上側Z1(外側R1でもある)へ向かうように軸方向Xに傾斜する対向面76Aである。ツース部材46の凸部75が開口部42に嵌め込まれている。対向面76Aは、開口部42の端面43と軸方向Xに対向する。
前述したように、凸部75は、下側Z2から見て、円形状であり、当該円形状の全周においてツース部材46と連結されている。そのため、凸部75は、二次衝突時に端面43と衝突し、端面43から衝撃が伝達された場合であっても変形しにくいことから、アッパージャケット19に確実に乗り上げることができる。
次に、本発明の第4変形例について説明する。
図11は、本発明の第4変形例の凸部52の周辺の断面図である。
図11を参照して、第4変形例のツース部材46の後端部46Aは、本実施形態のツース部材46の後端部46Aとは異なり、凸部52よりも後側X1において上側Z1へ反っている。
そのため、ツース部材46の後端部46Aは、ツース部材46の凸部52が開口部42に嵌め込まれた状態で、アッパージャケット19の外周面19Cに対して予め浮いている。これにより、ツース部材46の後端部46Aは、二次衝突時には、装備品40を一層円滑に乗り上げることができる。また、ツース部材46の後端部46Aは、二次衝突時に装備品40が軸方向Xに沿って移動して凸部52に衝突した場合、装備品40を確実に乗り上げることができる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、本実施形態のステアリング装置1は、操作部材31が取り付けられた回転軸30がアッパージャケット19よりも上側Z1に配置された、いわゆるレバー上置きタイプのステアリング装置であるが、回転軸30がアッパージャケット19よりも下側Z2に配置された、いわゆるレバー下置きタイプのステアリング装置にもロック機構8を適用することができる。
この場合、ロック機構8全体がアッパージャケット19の下側Z2に配置されており、ロック状態では、ロック機構8の各部材は、図4の上下を逆にした位置関係でロック機構8を構成する。
具体的には、ツース部材46は、アッパージャケット19の外周面19Cに下側Z2(外側R1でもある)から取り付けられる。また、ロック部材48は、ツース部材46の下側Z2(外側R1でもある)に配置される。また、端面43および対向面52Aは、後側X1へ向かうにつれて下側Z2(外側R1でもある)へ向かうように軸方向Xに傾斜している。
また、凸部52の対向面52Aが後側X1に向かうにつれて外側R1へ向かうように軸方向Xに対して傾斜しておらず、上下方向Zに延びている場合も有り得る。この場合、端面43が傾斜面45を有していればよい。逆に、端面43が傾斜面45を有しておらず、鉛直面44のみを有する場合も有り得る。この場合、対向面52Aが後側X1に向かうにつれて外側R1へ向かうように軸方向Xに対して傾斜していればよい。要するに、端面43および対向面52Aの少なくとも一方が、後側X1に向かうにつれて外側R1へ向かうように軸方向Xに対して傾斜していればよい。
また、凸部52の対向面52Aおよび開口部42の傾斜面45は、湾曲した面であってもよい。詳しくは、対向面52Aは、下側Z2かつ後側X1へ凸湾曲していてもよいし、傾斜面45は、上側Z1かつ前側X2へ凸湾曲していてもよい。
また、凸部52は、必ずしもツース部材46の後端部46Aに設けられている必要はない。凸部52の位置が軸方向Xにおいて被係合歯50と重なる場合は、凸部52は、ツース部材46の左右方向Yにおける両端部から下側Z2に延びるように一対設けられる。この場合、アッパージャケット19には、一対の凸部52に対応して開口部42が一対設けられる。
また、ステアリング装置1は、一端がロアージャケット20またはアッパーブラケット6に固定され、他端がツース部材46に固定されたEAプレートを含んでいてもよい。この場合、二次衝突時には、アッパージャケット19の移動に伴って引き裂かれることによって二次衝突時の衝撃の一部を吸収する。
また、アッパージャケット19に装備品40が設けられていない場合も有り得る。たとえば、アッパージャケット19の後端19Aそのものが外側R1に張り出した部分を有する場合、二次衝突時には、ツース部材46の後端部46Aが当該部分を乗り上げる。
また、ステアリング装置1は、操舵部材11の操舵が補助されないマニュアルタイプのステアリング装置に限らず、電動モータによって操舵部材11の操舵が補助されるコラムアシストタイプの電動パワーステアリング装置(C−EPS)でもよい。
また、ステアリング装置1は、チルト調整不能なステアリング装置であってもよい。
1…ステアリング装置、2…車体、3…ステアリングシャフト、3A…一端、4…コラムジャケット、6…アッパーブラケット、9…離脱機構、19…アッパージャケット、20…ロアージャケット、42…開口部、43…端面、46…ツース部材、46A…後端部、48…ロック部材、50…被係合歯、52…凸部、52A…対向面、57…係合歯、65…折り曲げ部、68…凸部、68A…対向面、70…折り曲げ部、73…凸部、73A…対向面、75…凸部、76A…対向面、X…軸方向、X1…後側、X2…前側、R…径方向、R1…外側

Claims (4)

  1. 一端に操舵部材が連結され、軸方向に伸縮可能なステアリングシャフトと、
    前記操舵部材側で前記ステアリングシャフトを保持するアッパージャケットと、前記操舵部材とは反対側で前記ステアリングシャフトを保持するロアージャケットとを有し、前記ロアージャケットに対する前記アッパージャケットの前記軸方向への移動によって前記ステアリングシャフトとともに前記軸方向に伸縮可能なコラムジャケットと、
    前記ロアージャケットを支持し、車体に固定されたブラケットと、
    前記軸方向に並ぶ複数の被係合歯を有し、前記ステアリングシャフトを中心とする径方向における外側から前記アッパージャケットに取り付けられるツース部材と、
    前記径方向における前記ツース部材の外側に配置され、前記ロアージャケットによって支持され、前記軸方向における前記アッパージャケットの位置をロックするために前記被係合歯と噛み合う係合歯を有するロック部材と、
    車両衝突時に、前記被係合歯と前記係合歯とが噛み合った状態における前記ツース部材から前記アッパージャケットを離脱させる離脱機構と、
    前記アッパージャケットに設けられ、前記反対側を臨む端面によって一部が縁取られた開口部と、
    前記ツース部材に設けられ、前記開口部の端面に前記軸方向における前記反対側から対向する対向面を有し、前記開口部に嵌め込まれる凸部とを含み、
    前記端面および前記対向面の少なくとも一方は、前記操舵部材側へ向かうにつれて前記径方向における外側へ向かうように前記軸方向に傾斜していることを特徴とする、ステアリング装置。
  2. 前記凸部は、前記ツース部材において前記操舵部材側の端部に設けられていることを特徴とする、請求項1記載のステアリング装置。
  3. 前記凸部は、前記ツース部材において前記操舵部材側の端部を折り曲げることによって形成された折り曲げ部であることを特徴とする、請求項2記載のステアリング装置。
  4. 前記ツース部材において前記操舵部材側の端部は、前記径方向における外側へ反っていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のステアリング装置。
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