JP2016110849A - 燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体及びその製造方法 - Google Patents

燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】簡単な構成及び工程で、接着剤の経時変化を良好に抑制して接着強度を確保することができ、電解質膜・電極構造体と樹脂枠部材とを強固且つ良好に接合することを可能にする。【解決手段】樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10は、段差MEA10aと樹脂枠部材24とを備える。樹脂枠部材24は、内周基端部24sからカソード電極22側に膨出する内側膨出部24aを有し、固体高分子電解質膜18の露出面18beと前記内側膨出部24aとは、接着剤28aにより接合される。露出面18beには、接着剤28aの塗布領域より広範囲に亘って水分不透過層26が設けられる。【選択図】図3

Description

本発明は、固体高分子電解質膜を第1電極及び第2電極で挟んだ段差MEAと、前記段差MEAの外周を周回する樹脂枠部材とを備える燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体及びその製造方法に関する。
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。燃料電池は、固体高分子電解質膜の一方にアノード電極が、前記固体高分子電解質膜の他方にカソード電極が、それぞれ配設された電解質膜・電極構造体(MEA)を備えている。アノード電極及びカソード電極は、それぞれ触媒層(電極触媒層)とガス拡散層(多孔質カーボン)とを有している。
電解質膜・電極構造体は、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持されることにより、燃料電池が構成されている。この燃料電池は、所定の数だけ積層することにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
電解質膜・電極構造体では、一方のガス拡散層が固体高分子電解質膜よりも小さな平面寸法に設定されるとともに、他方のガス拡散層が前記固体高分子電解質膜と略同一の平面寸法に設定される、所謂、段差MEAを構成する場合がある。その際、比較的高価な固体高分子電解質膜の使用量を削減させるとともに、薄膜状で強度が低い前記固体高分子電解質膜を保護するために、樹脂枠部材を組み込んだ樹脂枠付きMEAが採用されている。
樹脂枠付きMEAとして、例えば、特許文献1に開示されている電解質膜−電極接合体が知られている。この電解質膜−電極接合体では、図10に示すように、膜1の一方の面には、前記膜1と同一の外形寸法を有するアノード触媒層2aとアノードガス拡散層2bとが配置されている。膜1の他方の面には、前記膜1よりも小さな外形寸法を有するカソード触媒層3aとカソードガス拡散層3bとが配置されている。これによって、段差MEA4が構成されている。
アノードガス拡散層2bは、カソードガス拡散層3bよりも大きな面積に設定されており、前記カソードガス拡散層3b側の膜1の外周部とガスケット構造体5とは、接着部位6を介して接合されている。
特開2007−66766号公報
ところで、上記の特許文献1では、カソードガス拡散層3b側の膜1の外周縁部(平面)とガスケット構造体5の内周薄肉部5aの平面とが、額縁平面形状の接着部位6を介して接合されている。
しかしながら、膜1は、吸湿性を有しており、接着剤による接合時に熱が付与されると、前記膜1から水蒸気が放出される。このため、膜1と接着部位6との界面に水蒸気が浸入するおそれがある。従って、接着部位6は、経時変化により接合強度(接着力)が低下し、例えば、ガス遮断性が低下するという問題がある。
本発明は、この種の問題を解決するものであり、簡単な構成及び工程で、接着剤の経時変化を良好に抑制して接着強度を確保することができ、電解質膜・電極構造体と樹脂枠部材とを強固且つ良好に接合することが可能な燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体及びその製造方法では、段差MEAと樹脂枠部材とを備えている。段差MEAは、固体高分子電解質膜の一方の面には、第1電極が設けられ、前記固体高分子電解質膜の他方の面には、第2電極が設けられるとともに、前記第1電極の平面寸法は、前記第2電極の平面寸法よりも大きな寸法に設定されている。
樹脂枠部材は、固体高分子電解質膜の外周を周回して設けられている。樹脂枠部材は、内周基端部から第2電極側に膨出する薄肉状の内側膨出部を有し、固体高分子電解質膜の他方の面の中、前記第2電極の外方に露呈する露出面と前記内側膨出部とは、接着剤により接合されている。
そして、固体高分子電解質膜の露出面には、接着剤の塗布領域より広範囲に亘って枠形状の水分不透過層が設けられるとともに、樹脂枠部材と前記固体高分子電解質膜とは、前記水分不透過層を介装して前記接着剤により接合されている。
また、内側膨出部の内周端部には、厚さ方向に膨出して内側凸状部が設けられる一方、内周基端部には、厚さ方向に膨出して外側凸状部が設けられることが好ましい。その際、内側凸状部及び外側凸状部と水分不透過層とで接着剤が塗布される接着剤層を形成するとともに、前記内側凸状部及び前記外側凸状部の一部は、前記水分不透過層に重なり合うことが好ましい。
さらに、この燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体では、水分不透過層の内周端部と第2電極の外周端部との間には、隙間が形成されることが好ましい。
さらにまた、本発明に係る製造方法は、固体高分子電解質膜の露出面に、接着剤の塗布領域より広範囲に亘って水分不透過層を設ける工程を有している。この製造方法は、樹脂枠部材と固体高分子電解質膜とを、水分不透過層を介装して接着剤により接合させる工程を有している。
本発明によれば、固体高分子電解質膜の露出面には、接着剤の塗布領域より広範囲に亘って水分不透過層が設けられている。そして、樹脂枠部材と固体高分子電解質膜とは、水分不透過層を介装して接着剤により接合されている。このため、固体高分子電解質膜から放出された水蒸気は、水分不透過層に阻止されて接着剤との界面に浸入することがない。
従って、簡単な構成及び工程で、接着剤の経時変化を良好に抑制して接着強度を確保することができ、電解質膜・電極構造体と樹脂枠部材とを強固且つ良好に接合することが可能になる。
本発明に係る製造方法が適用される樹脂枠付き電解質膜・電極構造体が組み込まれる固体高分子型燃料電池の要部分解斜視説明図である。 前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。 前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の要部断面説明図である。 前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体を構成する樹脂枠部材の斜視説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る製造方法において、前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体を構成するCCMを形成する際の説明図である。 前記製造方法において、段差MEAに樹脂枠部材を接合する際の説明図である。 前記製造方法において、前記段差MEAと前記樹脂枠部材との接合作業の説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る製造方法において、前記段差MEAに水分不透過層を設ける際の説明図である。 本発明に係る製造方法が適用される別の樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の要部断面説明図である。 特許文献1に開示されている電解質膜−電極接合体の説明図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10は、横長(又は縦長)の長方形状の固体高分子型燃料電池12に組み込まれる。複数の燃料電池12は、例えば、矢印A方向(水平方向)又は矢印C方向(重力方向)に積層されて燃料電池スタックが構成される。燃料電池スタックは、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池電気自動車(図示せず)に搭載される。
燃料電池12は、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10を第1セパレータ14及び第2セパレータ16で挟持する。第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、横長(又は縦長)の長方形状を有する。第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板や、カーボン部材等で構成される。
長方形状の樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10は、図2及び図3に示すように、段差MEA10aを備える。段差MEA10aは、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するアノード電極(第1電極)20及びカソード電極(第2電極)22とを有する。固体高分子電解質膜18は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用してもよい。
カソード電極22は、固体高分子電解質膜18及びアノード電極20よりも小さな平面寸法(外形寸法)を有する。なお、上記の構成に代えて、アノード電極20は、固体高分子電解質膜18及びカソード電極22よりも小さな平面寸法を有するように構成してもよい。その際、アノード電極20は、第2電極となり、カソード電極22は、第1電極となる。
アノード電極20は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに接合される第1電極触媒層20aと、前記第1電極触媒層20aに積層される第1ガス拡散層20bとを設ける。第1電極触媒層20a及び第1ガス拡散層20bは、同一の外形寸法を有するとともに、固体高分子電解質膜18と同一(又は同一未満)の外形寸法に設定される。
カソード電極22は、固体高分子電解質膜18の面18bに接合される第2電極触媒層22aと、前記第2電極触媒層22aに積層される第2ガス拡散層22bとを設ける。第2電極触媒層22a及び第2ガス拡散層22bは、同一の平面寸法を有するとともに、固体高分子電解質膜18の平面寸法よりも小さな平面寸法に設定される。固体高分子電解質膜18の面18b側の外周縁部には、カソード電極22の外方に露呈する露出面18beが設けられる。
なお、第1の実施形態では、第2電極触媒層22aと第2ガス拡散層22bとは、同一の平面寸法に設定されているが、前記第2電極触媒層22aの平面寸法は、前記第2ガス拡散層22bの平面寸法よりも大きな寸法(又は小さな寸法)を有してもよい。
第1電極触媒層20aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が第1ガス拡散層20bの表面に一様に塗布されて形成される。第2電極触媒層22aは、例えば、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が第2ガス拡散層22bの表面に一様に塗布されて形成される。
第1ガス拡散層20bは、多孔性と導電性を有するマイクロポーラス層20b(m)とカーボンペーパ又はカーボンクロス等のカーボン層20b(c)とから形成される。第2ガス拡散層22bは、マイクロポーラス層22b(m)とカーボンペーパ又はカーボンクロス等のカーボン層22b(c)とから形成される。第2ガス拡散層22bの平面寸法は、第1ガス拡散層20bの平面寸法よりも小さく設定される。第1電極触媒層20a及び第2電極触媒層22aは、固体高分子電解質膜18の両面に形成される。
樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10は、固体高分子電解質膜18の外周を周回するとともに、アノード電極20及びカソード電極22に接合されるフィルム状の樹脂枠部材(樹脂フィルム)24を備える。
樹脂枠部材24は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、又はm−PPE(変性ポリフェニレンエーテル樹脂)等で構成される。樹脂枠部材24は、さらにPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)又は変性ポリオレフィン等で構成される。
図2〜図4に示すように、樹脂枠部材24は、内周基端部24sからカソード電極22側に膨出する薄肉状に形成された内側膨出部24aを有する。内側膨出部24aは、内周基端部24sから内方に所定の長さを有して延在し、前記内側膨出部24aの内周端部には、厚さ方向に膨出して内側凸状部24cが設けられる。
内側凸状部24cは、第2電極触媒層22aの外周端部22ae及び第2ガス拡散層22bの外周端部22beの近傍に配置される。内側凸状部24c(内側膨出部24aの内周端部)とカソード電極22の外周端部との間には、隙間Sが形成される(図3参照)。
内側膨出部24aには、内周基端部24sに連続して、固体高分子電解質膜18の露出面18beの先端側に当接する外側凸状部24dが設けられる。外側凸状部24dは、露出面18beの先端外周側を周回する枠形状に形成される。
固体高分子電解質膜18の露出面18beには、後述する接着剤28aの塗布領域より広範囲に亘って、枠形状の水分不透過層26が設けられる。水分不透過層26は、水の不透過性を有し、固体高分子電解質膜18と良好な接着性を有する。水分不透過層26は、例えば、後述する粘着剤の他、液状フッ素エラストマー、エポキシ変性シリコーン樹脂、アクリル樹脂、PEMよりも低いIEC(イオン交換容量)(高いEW)を持つパーフルオロスルホン酸等が使用され、その他、スプレー方式ではないが、ホットメルト状のシート配置でもよい。ホットメルトとしては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エステル系が採用される。
水分不透過層26は、カソード電極22の外周端部位置から隙間S1だけ外方に離間した位置に内周端部が配置されるとともに、外周端部が固体高分子電解質膜18の外周端部と同一位置に配置される。隙間S1は、内側凸状部24cとカソード電極22の外周端部との隙間Sよりも小さな値に設定される。水分不透過層26の内周端部とカソード電極22の外周端部との間には、露出面18beが直接に露呈する。水分不透過層26の厚さは、樹脂枠部材24よりも薄い。
内側凸状部24c及び外側凸状部24dと水分不透過層26とにより、接着剤28aが塗布される接着剤層28を形成する。内側凸状部24c及び外側凸状部24dの一部は、積層方向に沿って水分不透過層26に重なり合っている。露出面18beと内側膨出部24aとは、水分不透過層26を介装して接着剤28aにより接合される。
接着剤層28には、接着剤28aとして、例えば、エポキシ系、アクリル系接着剤の他、高分子やフッ素系エラストマーが設けられる。なお、接着剤28aとしては、液体や固体、熱可塑性や熱硬化性等に制限されない。
図1に示すように、燃料電池12の矢印B方向(図1中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔32a及び燃料ガス出口連通孔34bが設けられる。酸化剤ガス入口連通孔30aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、冷却媒体入口連通孔32aは、冷却媒体を供給する。燃料ガス出口連通孔34bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体入口連通孔32a及び燃料ガス出口連通孔34bは、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
燃料電池12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給する燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体を排出する冷却媒体出口連通孔32b、及び酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス出口連通孔30bが設けられる。燃料ガス入口連通孔34a、冷却媒体出口連通孔32b及び酸化剤ガス出口連通孔30bは、矢印C方向に配列して設けられる。
第2セパレータ16の樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10に向かう面16aには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとに連通して矢印B方向に延在する複数本の酸化剤ガス流路36が設けられる。
第1セパレータ14の樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10に向かう面14aには、燃料ガス入口連通孔34aと燃料ガス出口連通孔34bとに連通して矢印B方向に延在する複数本の燃料ガス流路38が形成される。互いに隣接する第1セパレータ14の面14bと第2セパレータ16の面16bとの間には、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体出口連通孔32bとに連通して矢印B方向に延在する複数本の冷却媒体流路40が形成される。
図1及び図2に示すように、第1セパレータ14の面14a、14bには、この第1セパレータ14の外周端部を周回して、第1シール部材42が一体化される。第2セパレータ16の面16a、16bには、この第2セパレータ16の外周端部を周回して、第2シール部材44が一体化される。
図2に示すように、第1シール部材42は、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10を構成する樹脂枠部材24に当接する第1凸状シール42aと、第2セパレータ16の第2シール部材44に当接する第2凸状シール42bとを有する。第2シール部材44は、第2凸状シール42bに当接する面がセパレータ面に沿って平面状に延在する平面シールを構成する。なお、第2凸状シール42bに代えて、第2シール部材44に凸状シール(図示せず)を設けてもよい。
第1シール部材42及び第2シール部材44には、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が用いられる。
次いで、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10を製造する本発明の第1の実施形態に係る製造方法について、以下に説明する。
先ず、段差MEA10aが作製される一方、樹脂枠部材24は、金型(図示せず)を用いて射出成形される。段差MEA10aでは、カーボンペーパの平坦面に、カーボンブラックとPTFE粒子との混合物からなるスラリーを塗布し、乾燥させて下地層であるマイクロポーラス層20b(m)が形成される。マイクロポーラス層20b(m)にカーボン層20b(c)を接合することにより、第1ガス拡散層20bが形成される。同様に、マイクロポーラス層22b(m)が形成され、前記マイクロポーラス層22b(m)にカーボン層22b(c)を接合することにより、第2ガス拡散層22bが形成される。
一方、電極触媒に溶媒を加えた後、イオン導電性高分子バインダ溶液として、例えば、パーフルオロアルキレンスルホン酸溶液が投入される。そして、所定のインク粘土になるまで、溶媒を添加することにより、アノード電極インク及びカソード電極インクが作成される。
そこで、図5に示すように、アノード電極インクは、PETフィルム50aにスクリーン印刷により塗工され、第1電極触媒層20aを設けたアノード電極シート52が形成される。第1電極触媒層20aは、固体高分子電解質膜18と同一の平面寸法に設定される。
同様に、カソード電極インクは、PETフィルム50bにスクリーン印刷により塗工され、第2電極触媒層22aを設けたカソード電極シート54が形成される。第2電極触媒層22aは、固体高分子電解質膜18よりも小さな平面寸法に設定される。
次いで、カソード電極シート54では、PETフィルム50bの外周縁部に、第2電極触媒層22aの外方(電極面外)に位置して水分不透過層26が設けられる。具体的には、カソード電極シート54に、電極塗工面をマスクした状態で、該マスクの周囲に粘着剤がスプレー塗布された後、乾燥処理することにより、作製される。
さらに、固体高分子電解質膜18が、アノード電極シート52及びカソード電極シート54に挟持された状態で、ホットプレスが行われる。そして、PETフィルム50a、50bが剥離されることにより、接合体(CCM)(catalyst coated membrane)が形成される。さらに、CCMは、第1ガス拡散層20bと第2ガス拡散層22bとに挟持され、ホットプレスにより一体化されて段差MEA10aが作製される(図6参照)。
また、図4に示すように、樹脂枠部材24は、肉薄形状の内側膨出部24aを有する。内側膨出部24aには、内周基端部24sに連続して外側凸状部24dが設けられるとともに、前記内側膨出部24aの内周端には、外側凸状部24dに対応して内側凸状部24cが設けられている。
次に、図6に示すように、固体高分子電解質膜18の露出面18be上に、すなわち、水分不透過層26上に、接着剤28aが、例えば、図示しないディスペンサーを介して塗布される。なお、接着剤28aは、樹脂枠部材24の内側膨出部24aの内側平坦面に塗布してもよい。
そして、図7に示すように、樹脂枠部材24は、内側凸状部24c及び外側凸状部24dが水分不透過層26に接触(又は隣接)するように、固体高分子電解質膜18側に押し付けられる。このため、接着剤28aは、接着剤層28に沿って押し広げられ、固体高分子電解質膜18の露出面18beと内側膨出部24aとは、水分不透過層26を介装して接合される。従って、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10が製造される。
樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10は、図2に示すように、第1セパレータ14及び第2セパレータ16により挟持される。第2セパレータ16は、樹脂枠部材24の内側膨出部24aに当接し、第1セパレータ14とともに樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10に荷重を付与する。さらに、燃料電池12は、所定数だけ積層されて燃料電池スタックが構成されるとともに、図示しないエンドプレート間に締め付け荷重が付与される。
このように構成される燃料電池12の動作について、以下に説明する。
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔30aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔34aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔32aには、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔30aから第2セパレータ16の酸化剤ガス流路36に導入され、矢印B方向に移動して段差MEA10aのカソード電極22に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔34aから第1セパレータ14の燃料ガス流路38に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路38に沿って矢印B方向に移動し、段差MEA10aのアノード電極20に供給される。
従って、各段差MEA10aでは、カソード電極22に供給される酸化剤ガスと、アノード電極20に供給される燃料ガスとが、第2電極触媒層22a及び第1電極触媒層20a内で電気化学反応により消費されて、発電が行われる。
次いで、カソード電極22に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔30bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極20に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔34bに沿って矢印A方向に排出される。
また、冷却媒体入口連通孔32aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ14と第2セパレータ16との間の冷却媒体流路40に導入された後、矢印B方向に流通する。この冷却媒体は、段差MEA10aを冷却した後、冷却媒体出口連通孔32bから排出される。
この場合、第1の実施形態では、図2及び図3に示すように、固体高分子電解質膜18の露出面18beには、接着剤28aの塗布領域(接着剤層28)より広範囲に亘って水分不透過層26が設けられている。そして、樹脂枠部材24の内側膨出部24aと固体高分子電解質膜18の露出面18beとは、水分不透過層26を介装して接着剤28aにより接合されている。
このため、吸湿性を有する固体高分子電解質膜18から放出された水蒸気は、水分不透過層26に阻止されて接着剤28aとの界面に浸入することがない。従って、接着剤層28に水分が滞留することを確実に抑制することができる。しかも、水分不透過層26は、カソード電極22の外周端部位置から隙間S1だけ外方に離間した位置に内周端部が配置されている(図3参照)。これにより、固体高分子電解質膜18から放出された水蒸気は、水分不透過層26の外周端部から外部に排出されるとともに、隙間S1を通って外部に排出されている。
このため、第1の実施形態では、簡単な構成及び工程で、接着剤層28の経時変化を良好に抑制して接着強度を確保することができる。従って、段差MEA10aと樹脂枠部材24とを、強固且つ良好に接合することが可能になるという効果が得られる。
次いで、本発明の第2の実施形態に係る製造方法について、以下に説明する。なお、第1の実施形態に係る製造方法と同一の工程については、その詳細な説明は省略する。
第2の実施形態では、図8に示すように、予め水分不透過層26を設けることなく、段差MEA10aが作製される。そして、段差MEA10aにおいて、固体高分子電解質膜18の露出面18beに粘着剤が塗布されることにより、水分不透過層26が設けられる。
このように、第2の実施形態では、固体高分子電解質膜18の露出面18beに水分不透過層26が設けられており、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
図9は、本発明の第1及び第2の実施形態に係る製造方法が適用される他の樹脂枠付き電解質膜・電極構造体60の要部断面説明図である。なお、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
樹脂枠付き電解質膜・電極構造体60は、段差MEA10aと樹脂枠部材62とを備える。樹脂枠部材62は、フィルム状に代えて比較的肉厚な枠形状に構成される。樹脂枠部材62は、最大厚さtを有する肉厚部62aを有し、この最大厚さtは、固体高分子電解質膜18の厚さとアノード電極20の厚さとの和に等しく(又は異なる寸法に)設定される。
このように構成される樹脂枠付き電解質膜・電極構造体60は、上記の樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10と同様の効果が得られる。
10、60…樹脂枠付き電解質膜・電極構造体
10a…段差MEA 12…燃料電池
14、16…セパレータ 18…固体高分子電解質膜
18be…露出面 20…アノード電極
20a、22a…電極触媒層 20b、22b…ガス拡散層
22…カソード電極 24、62…樹脂枠部材
24a…内側膨出部 24c…内側凸状部
24d…外側凸状部 24s…内周基端部
26…水分不透過層 28…接着剤層
28a…接着剤 30a…酸化剤ガス入口連通孔
30b…酸化剤ガス出口連通孔 32a…冷却媒体入口連通孔
32b…冷却媒体出口連通孔 34a…燃料ガス入口連通孔
34b…燃料ガス出口連通孔 36…酸化剤ガス流路
38…燃料ガス流路 40…冷却媒体流路
42、44…シール部材 52…アノード電極シート
54…カソード電極シート

Claims (6)

  1. 固体高分子電解質膜の一方の面には、第1電極が設けられ、前記固体高分子電解質膜の他方の面には、第2電極が設けられるとともに、前記第1電極の平面寸法は、前記第2電極の平面寸法よりも大きな寸法に設定される段差MEAと、
    前記固体高分子電解質膜の外周を周回して設けられる樹脂枠部材と、
    を備え、前記樹脂枠部材は、内周基端部から前記第2電極側に膨出する薄肉状の内側膨出部を有し、前記固体高分子電解質膜の前記他方の面の中、前記第2電極の外方に露呈する露出面と前記内側膨出部とは、接着剤により接合される燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体であって、
    前記固体高分子電解質膜の前記露出面には、前記接着剤の塗布領域より広範囲に亘って枠形状の水分不透過層が設けられるとともに、
    前記樹脂枠部材と前記固体高分子電解質膜とが、前記水分不透過層を介装して前記接着剤により接合されることを特徴とする燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体。
  2. 請求項1記載の燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体において、前記内側膨出部の内周端部には、厚さ方向に膨出して内側凸状部が設けられる一方、前記内周基端部には、厚さ方向に膨出して外側凸状部が設けられることにより、前記内側凸状部及び前記外側凸状部と前記水分不透過層とで前記接着剤が塗布される接着剤層を形成するとともに、
    前記内側凸状部及び前記外側凸状部の一部は、前記水分不透過層に重なり合うことを特徴とする燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体。
  3. 請求項1又は2記載の燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体において、前記水分不透過層の内周端部と前記第2電極の外周端部との間には、隙間が形成されることを特徴とする燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体。
  4. 固体高分子電解質膜の一方の面には、第1電極が設けられ、前記固体高分子電解質膜の他方の面には、第2電極が設けられるとともに、前記第1電極の平面寸法は、前記第2電極の平面寸法よりも大きな寸法に設定される段差MEAと、
    前記固体高分子電解質膜の外周を周回して設けられる樹脂枠部材と、
    を備え、前記樹脂枠部材は、内周基端部から前記第2電極側に膨出する薄肉状の内側膨出部を有し、前記固体高分子電解質膜の前記他方の面の中、前記第2電極の外方に露呈する露出面と前記内側膨出部とは、接着剤により接合される燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の製造方法であって、
    前記固体高分子電解質膜の前記露出面に、前記接着剤の塗布領域より広範囲に亘って枠形状の水分不透過層を設ける工程と、
    前記樹脂枠部材と前記固体高分子電解質膜とを、前記水分不透過層を介装して前記接着剤により接合させる工程と、
    を有することを特徴とする燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の製造方法。
  5. 請求項4記載の製造方法において、前記内側膨出部の内周端部には、厚さ方向に膨出して内側凸状部が設けられ、前記内周基端部には、厚さ方向に膨出して外側凸状部が設けられることにより、前記内側凸状部及び前記外側凸状部と前記水分不透過層とで前記接着剤が塗布される接着剤層を形成するとともに、
    前記内側凸状部及び前記外側凸状部の一部は、前記水分不透過層に重なり合うことを特徴とする燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の製造方法。
  6. 請求項4又は5記載の製造方法において、前記水分不透過層の内周端部と前記第2電極の外周端部との間には、隙間が形成されることを特徴とする燃料電池用樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の製造方法。
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