JP2016108792A - 鉄骨構造物の梁用金物および梁接合部 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび上下フランジ間の内法高さがhであるH型鋼からなる梁の補強もしくは梁同士の接合に用いられる鉄骨構造物の梁用第1の金物であって、
梁用金物は上板、下板、第1の側板、第2の側板および背板からなり、幅が(2×d−t)、奥行きが(2×d−t)、高さがh以下である、正面が開放された略直方体であり、上板および下板には、正面からd、第1の側板の表面からdの位置に1個の貫通孔が設けられ、第1の側板、第2の側板および背板には、複数の貫通孔が少なくとも縦方向に1列設けられており、第1および第2の側板に設けられた貫通孔は正面からdの位置にあり、背板に設けられた貫通孔は第1の側板の表面からdの位置にある上下対称形状であることを特徴とする鉄骨構造物の梁用第1の金物。
[2] [1]記載の梁用第1の金物の第1の側板を、複数の貫通孔が少なくとも縦方向に1列設けられている正面方向への延在部を設け、かつ、延在部をtだけ第2の側板側にシフトするようにしたことを特徴とする鉄骨構造物の梁用第2の金物。
[3] フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび内法高さがhであるH型鋼からなる勝ち側梁と負け側梁を、勝ち側梁のウェブ面のいずれか一方もしくは両方に負け側梁が取り付くように接合した鉄骨構造物の梁接合部であって、
勝ち側梁の負け側梁が取り付く側のウェブ面には、[1]記載の第1の金物と[2]記載の第2の金物の第1の側板同士を隣接させ、かつ、その隣接境界部を前記負け側梁の構造芯と一致させた状態で、それぞれの背板が当接するように、第1の金物と第2の金物を配置し、
勝ち側梁の負け側梁が取り付かない側のウェブ面には、[1]記載の第1の金物2個の第1の側板同士を隣接させた状態でそれぞれの背板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
第1の金物または第2の金物の背板に設けられた貫通孔と勝ち側梁のウェブに設けられた貫通孔を介して、勝ち側梁のウェブを挟んで対向する金物同士をボルト・ナットで固定し、
第2の金物の第1の側板の延在部に設けられた貫通孔と負け側梁の先端部のウェブに設けられた貫通孔を介して、第2の金物と負け側梁とをボルト・ナットで固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁接合部。
[4] フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび内法高さがhであるH型鋼からなる勝ち側梁と負け側梁を、勝ち側梁のウェブ面のいずれか一方もしくは両方に負け側梁が取り付くように接合した鉄骨構造物の梁接合部であって、
勝ち側梁の負け側梁が取り付く側のウェブ面には、[1]記載の第1の金物2個の背板同士を2×tの間隙を有するように対向させた状態で、かつその間隙の中心を負け側梁の構造芯となる位置に一致させて、それぞれの第2の側板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
勝ち側梁の負け側梁が取り付かない側のウェブ面には、[1]記載の第1の金物2個の背板同士を2×tの間隙を有するように対向させた状態でそれぞれの第2の側板が当接するように、または、第1の側板同士を隣接させた状態でそれぞれの背板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
第1の金物の背板または第2の側板に設けられた貫通孔と勝ち側梁のウェブに設けられた貫通孔を介して、勝ち側梁のウェブを挟んで対向する金物同士をボルト・ナットで固定し、
負け側梁の先端部のウェブの両面それぞれに、[1]記載の第1の金物を背板が当接するように配置し、これらの金物の背板と負け側梁の先端部のウェブに設けられた貫通孔を介して、負け側梁のウェブを挟んで対向する金物同士とをボルト・ナットで固定し、
勝ち側梁の負け側梁が取り付く側に固定された第1の金物2個の第1の側板と、前記負け側梁の先端部に固定された第1の金物2個の第1の側板または第2の側板とを、それぞれの貫通孔を介してボルト・ナットで固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁接合部。
[5] フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび内法高さがhであるH型鋼からなる勝ち側梁と負け側梁を、勝ち側梁のウェブ面のいずれか一方もしくは両方に負け側梁が取り付くように接合した鉄骨構造物の梁接合部であって、
勝ち側梁の負け側梁が取り付く側のウェブ面に、[1]記載の第1の金物2個の背板同士を2×tの間隙を有するように対向させた状態で、かつその間隙の中心を負け側梁の構造芯と一致させて、それぞれの第2の側板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
勝ち側梁の負け側梁が取り付かない側のウェブ面に、[1]記載の第1の金物2個の背板同士を2×tの間隙を有するように対向させた状態でそれぞれの第2の側板が当接するように、または、第1の側板同士を隣接させた状態でそれぞれの背板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
さらに、勝ち側梁の負け側梁が取り付く側に配置した第1の金物2個の間に、厚さが2×tで長さが(2×d−t)より長く、かつ、この長い部分(延在部)が2×tだけシフトしているブラケットを配置し、
第1の金物の背板または第2の側板に設けられた貫通孔と勝ち側梁のウェブに設けられた貫通孔を介して、勝ち側梁のウェブを挟んで対向する金物同士とをボルト・ナットで固定し、
勝ち側梁の負け側梁の取り付く側に配置した第1の金物2個の背板に設けられた貫通孔とブラケットの貫通孔を介して、第1の金物2個の間にブラケットをボルト・ナットで固定し、
ブラケットの延在部に設けられた貫通孔と負け側梁の先端部のウェブに設けられた貫通孔を介して、ブラケットと負け側梁とをボルト・ナットで固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁接合部。
[6] 柱の先端に、板要素を組み合わせて断面を十字状とした十字状部材とその上下に取り付けられた平板からなり、上下の平板のいずれか一方に、貫通孔が設けられている柱用金物を溶接し、
[3]〜[5]のいずれかに記載の鉄骨構造物の梁接合部の上側および下側のいずれか一方または両方に、柱用金物に設けられた貫通孔と梁接合部のフランジに設けられた貫通孔とを介してボルト・ナットで柱を固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁接合部。
[7] 柱用金物の上下の平板のいずれか一方に設けられる貫通孔は、十字状部材で区画されたそれぞれの区画に1箇所ずつ、かつその中心間距離が2×dとなるように設けられていることを特徴とする[6]記載の鉄骨構造物の梁接合部。
[8] 柱用金物の十字状部材の少なくとも1つの板要素に鉛直ブレースを取り付けるための貫通孔を設けたことを特徴とする[6]または[7]に記載の鉄骨構造物の梁接合部。
[9] 鉛直ブレースを取り付けるための板要素に、平面視で上下の平板よりも突出する突出部を設け、この突出部に貫通孔を設けたことを特徴とする[8]に記載の鉄骨構造物の梁接合部。
[10] フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび内法高さがhであるH型鋼からなる梁のウェブの各面に、[1]記載の第1の金物2個の第1の側板同士を隣接させた状態でそれぞれの背板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
第1の金物の背板に設けられた貫通孔と梁のウェブに設けられた貫通孔を介して、梁のウェブを挟んで対向する金物同士をボルト・ナットで固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁補強部。
本発明では、第1の金物同士、あるいは第1の金物と第2の金物とを組み合わせて梁の上下フランジ間に配置することで、梁を補強(スチフナ代替)するとともに、全ての梁接合形態(梁2本によるL型接合、梁2本によるT型接合、梁3本によるT型接合、および、梁3本による十字型接合)に対応する。以下に、実施の形態として、ここで用いる金物と、接合形態について説明する。
第1の金物10を図2および図3を用いて説明する。図2は第1の金物10の斜視図であり、図3(a)〜(c)はそれぞれ正面図、水平断面図(図3(a)のX―X矢視断面図)、垂直断面図(図3(a)のY―Y矢視断面図)である。第1の金物10は一面が開放された略直方体である。上面および下面は各々1個の貫通孔を有する平板で構成され、4つの側面のうち1面(図では正面側)を開放し、残りの3面の各々は、縦方向に1列に並んだ少なくとも2個の貫通孔を有する平板で構成され、上下対称形状になっている。以下、上面の平板を上板11、下面の平板を下板12といい、また、側面の平板を側板という。さらに、開放側から見た正面図3(a)で右の側板を第1の側板13、左の側板を第2の側板14とし、第1の側板13と第2の側板14との間にあり、開放面と対向する側板を背板15という。
次に第2の金物20について図4および図5を用いて説明する。第2の金物20は、負け側梁のウェブとの接合に供するために第1の金物の一部を変更したもので、負け側梁との接合用のブラケットとして、第1の側板を正面側に突出させた延在部を有する形態になっている。図4は第2の金物の斜視図であり、図5(a)〜(c)は第2の金物の正面図、水平断面図(図5(a)のX―X矢視断面図)、垂直断面図(図5(a)のY―Y矢視断面図)である。以下、上面の平板を上板21、下面の平板を下板22、開放側から見た正面図5(a)で右側の側板を第1の側板23、左側の側板を第2の側板24、そして、第1の側板23と第2の側板24との間にある側板を背板25という。上板、下板、側板には、貫通孔26a〜26eが設けられている。第1の側板23は、第2の金物の正面側に突出するように延在していて、該延在部23aは、tだけ内側(第2の側板24側)に偏芯して位置するように加工されている。延在部長さは、直交して取り付けられる梁との取り合いを考慮して設計上必要とされる長さとすればよい。この延在部23aには、負け側梁のウェブと接合される、少なくともひとつ以上の貫通孔26fが設けられている(図示の例では3個)。貫通孔26fの位置は、設計上の観点から決定すればよく、1列に限らず2列以上としてもよい。
その他の構成については、第1の金物10と同じであるので、説明は省略する。
本発明では、第1の金物同士、あるいは第1の金物と第2の金物とを組み合わせて梁の上下フランジ間に配置することで、梁を補強するとともに、全ての梁接合形態(L型接合、T型接合、十字型接合)に対応できる。ここで、第1の金物同士、または、第1の金物と第2の金物の2つの金物を組み合わせるのに際しては、一方の金物を、図2〜5に示す状態と上下を逆にして使用する。この場合は、第1の側板13または23は左側に、第2の側板14または24は右側に来る。なお、上板は下側に、上板は下側に来るが、説明の都合上、上下逆にした場合であっても上側を上板、下側を下板と呼ぶことにする。
本発明によれば、梁の接合方式として、ブラケット方式および突きつけ方式のいずれにも対応することができる。なお、ここで言うブラケット方式とは、第2の金物の延在部または、図11のブラケット40に対して、負け側梁のウェブを、ボルト・ナットによるせん断接合する形式を言い、突きつけ方式とは、図10に示すように、接合する相互の梁に第1の金物を取り付け、それらを突きつけてボルト・ナットで引っ張り接合する形式を言う(図10、図11については後述する)。
本発明では、梁と梁の接合にあたっては、上述のように溶接接合を行わず、ボルト・ナットを用いて接合する。なお、金物の側板、背板の板厚が厚い場合は、通しボルトではなく、貫通孔16c〜16e、貫通孔26c〜26eにめねじを形成してボルトをねじ込むようにしてもよい。この形態は、縦方向の貫通孔が偶数の場合について用いるとよく、この際、前記すべての貫通孔にめねじを切ると、ねじ込み不能になるので、上下逆転配置して隣接させる場合に対向する貫通孔について、一方が、めねじ、もう一方は、めねじなし、となるように、めねじを形成する貫通孔とめねじを形成しない貫通孔を、例えば、最上部の貫通孔にはめねじを形成し、次の貫通孔には形成しないというように、縦方向で交互に配置するなど、適宜配置するとよい。
[接合形態1]
第1の金物10と第2の金物20を組み合わせ、平面視で2本の梁をブラケット方式によりL型に接合する場合について説明する(ブラケット式L型接合形態)。図6は第1の金物10を3個、第2の金物20を1個用いて2本の梁をL型に接合している状況を示す水平断面図である。図6において、60は勝ち側梁、70は負け側梁、101、102、103は第1の金物、201は第2の金物である。
この接合形態は平面視で2本の梁をブラケット方式によりT型に接合するもの(ブラケット式T型接合形態)で、図7に示すように、勝ち側梁60が延長されているほかは、接合形態1と同じであるので、説明は省略する。
この接合形態は平面視で3本の梁をブラケット方式によりT型に接合するもの(第2のブラケット式T型接合形態)で、図8を用いて説明する。3本の梁をT字状に配置し、これらを2個の第1の金物10と2個の第2の金物20を用いて接合する。勝ち側梁60の長手方向端部において、ウェブ61を挟んで両側に、2本の負け側梁70がそれぞれ取り付く構造である。
この接合形態は平面視で3本の梁をブラケット方式により十字型に接合するもの(ブラケット式十字型接合形態)で、図9に示すように、勝ち側梁60が延長されているほかは、接合形態3と同じであるので、説明は省略する。
次に、平面視で2本の梁を突きつけ方式によりT型に接合する接合形態(突きつけ式T型接合形態)を、図10を用いて説明する。2本の梁をT字状に配置し、これらを第1の金物10を6個用いて接合する。なお、図10では、負け側梁70が取り付かない方向の金物および貫通孔の記載を省略している。
本接合形態は、第1の金物による平面視で2本の梁をブラケット方式によりT型に接合する形態(第3のブラケット式T型接合形態)である。接合形態5の変形例であり、梁に設ける貫通孔は同じである。以下、図11を用いて説明する。なお、接合形態5と同じく、図11では、負け側梁70が取り付かない方向の金物および貫通孔の記載を省略している。
これまでは、梁同士を接合した接合部について述べてきたが、以下、接合形態1〜6の梁接合部(梁が取り付かない場合の梁補強部を含む)にさらに柱が取り付く接合形態について説明する。ここでは、接合形態2(図7参照)で説明したブラケット式T型接合形態を例に説明する。
<H形鋼>
軽量鉄骨構造物の梁通し型架構の梁に用いたH形鋼は、標準化により全てH−250×100×3.2×4.5である。図1に示すように、H形鋼のフランジ幅を4×d、ウェブ板厚を2×t、上下フランジの内法高さをhと規定すると、d=25mm、t=1.6mm、h=241mmである。
図2および図3に示した第1の金物として、設計寸法で、幅:48.4mm、奥行:48.4mm、高さ:241mmの金物を作製した。幅、奥行の寸法は(2×d−t)から算出し、高さはH形鋼の内法高さhとした。作製の際の精度管理は±0.5mmとしたが、高さについては、梁の上下フランジ間の寸法誤差を考慮して、プラスゼロ、マイナス1mmで管理した。
第2の金物は、第1の金物の第1の側板を除けば、第1の金物と同じである(図4参照)。厚さが9mmの鋼板から金物の上板および下板は作製し、また、厚さ3.2mmの鋼板をプレス加工によりコ字状に成形して、第1の側板、背板および第2の側板とした。成形にあたっては、第1の側板を第2の側板より50mm長くして延在部を設け、この延在部をt=1.6mmだけ内側(第2の側板側)に位置するように曲げ加工を追加した。その後、これらの板を溶接して第2の金物とした。金物には第1の金物と大きさ・位置が同じの貫通孔を設けており、さらに延在部には、先端から25mmの位置で、高さ方向には各側板と同一位置に2個、高さ方向の中間位置に1個の計3個の、M16相当の貫通孔を設けた。
梁には、配置される金物の貫通孔に対応した貫通孔を設けた。勝ち側梁の上下フランジには、梁中心(ウェブ芯)からd=25mm離れた位置に径がM16相当の貫通孔を、ウェブを挟んで両側に2箇所、計4個所に設けた。片側のフランジの貫通孔の間隔は2×d=50mmであり、その中心線は、取り付く梁の中心線と一致するようにした。勝ち側梁のウェブには、上フランジ下面から60mm離れた位置と下フランジ上面から60mm離れた位置との計2箇所に径がM10相当の貫通孔を50mm間隔で2列設けた。
梁の接合形態には、「発明を実施するための形態」で述べたように、2本の梁をL型に接合する形態、2本または3本の梁をT型に接合する形態、および、3本の梁を十字型に接合する形態があり、また、各々にブラケット方式と突きつけ方式がある。以下に、上記のH形鋼および第1、2の金物を用いて梁接合部を構築したいくつかの例を述べる。
第1の金物と第2の金物との第1の側板同士を隣接させ、これら金物の背板を勝ち側の梁の、負け側の梁が取り付く側のウェブ面に当接させ、別の第1の金物2個の第1の側板同士を隣接させ、これら金物の背板を勝ち側の梁のもう一方のウェブ面に当接させた。次いで、ウェブの両側にある金物同士を、金物およびウェブの貫通孔を介してM10のボルト・ナットで緊結し、隣接する金物同士を側板の貫通孔を介してM10のボルト・ナットで緊結した。そしてこれら金物の上板と上フランジ、下板と下フランジを貫通孔を介してM16のボルト・ナットで緊結し、その後、第2の金物の延在部と負け側梁のウェブを、貫通孔を介してM16のボルト・ナットで緊結した。これにより、溶接することなく、所定の位置に所期の強度で、勝ち側梁に負け側梁を接合することができた。なお、L型接合でも同様である。
第1の金物と第2の金物との第1の側板同士を隣接させ、これら金物の背板を勝ち側梁のウェブの一方の面に、金物の貫通孔とウェブの貫通孔を合わせて当接させ、他方の面にも同じように当接させて配置した。次いで、ウェブの両側にある金物同士を、金物およびウェブの貫通孔を介してM10のボルト・ナットで緊結し、隣接する金物同士を側板の貫通孔を介してM10のボルト・ナットで緊結した。そしてこれら金物の上板と上フランジ、下板と下フランジを貫通孔を介してM16のボルト・ナットで緊結し、その後2本の負け側梁について、第2の金物の延在部と負け側梁のウェブを、貫通孔を介してM16のボルト・ナットで緊結した。これにより、溶接することなく、所定の位置に所期の強度で、勝ち側梁に負け側梁を接合することができた。なお、T型接合でも問題なく実施することができた。
ここでは、接合強度を上げるために、金物および梁の貫通孔は全てM16に統一した。さらに、第1の金物の全ての側板には、上面から120.5mmの高さ位置に貫通孔を追加し、勝ち側梁のウェブにも同様に貫通孔を追加した。負け側梁の上下フランジにも、梁芯からそれぞれd=25mm、梁先端からd=25mmの位置に貫通孔を設けた。
例3と同様にして、勝ち側梁に第1の金物4個を配置した。次に、負け側梁が取り付く側の第1の金物2個の間には、2×t=3.2mmの間隙が生成され、当該間隙には、その間隙と同じ板厚の平板からなるブラケットを配置した。すなわち、このブラケットは、負け側梁のウェブ芯に配置されている。このブラケットの奥行(長さ)寸法を100mm、高さ(幅)寸法を241mmとしたが、高さ寸法は241mmより小さくとも構わない。ブラケットは、金物に固定する部分(取付部)と、負け側梁のウェブに固定する部分(延在部)とからなり、延在部は、中心より2×t=3.2mmだけ片側にシフトするように曲げ加工がなされている。これにより、負け側梁のウェブとの当接面は、負け側梁の芯から1.6mmの位置に配置され、負け側梁のウェブを当接することで、負け側梁は構造芯と一致して配置できるようになっている。また、ブラケットの取付部には、第1の金物の背板の貫通孔に対応するM10相当の貫通孔が、上下方向に2個設けられ、上側の貫通孔は上端から60mm、下側の貫通孔は下端から60mm、いずれも取付部先端から23.4mmの位置に配置した。延在部には、先端から25mmの位置で、高さ方向には各側板と同一高さに2個、高さ方向の中間位置に1個の計3個の、M16相当の3個の貫通孔を設けた。なお、このブラケットは、予め前記間隙に挟持して、2つの金物の背板部分の貫通孔を介して、M10のボルト・ナットで一体に固定した。
例1に記載した梁接合部に柱用金物を用いて柱を接合した。使用した柱用金物は鋼製で、水平断面形状が十字型の、幅100mm×奥行100mm×高さ132mmの十字状部材の上下面に、幅100mm×奥行100mmの平板を溶接して組み立てた。鋼材の厚さは、全て16mmで、金物の仕上がり寸法は、幅100mm×奥行100mm×高さ150mmである。上下の平板の一方にはM16相当の貫通孔を4個設けてあり、各貫通孔の位置は、勝ち側の梁フランジに設けた貫通孔の位置と一致するように、平板の中心線から各d=25mm、隣り合う貫通孔の中心間距離は2×d=50mmとした。
柱用金物の十字状部材に貫通孔を設けてターンバックルブレースを取り付けるのに際して、当該貫通孔は、十字部状部材を延長せずに設けてもよいが、ここでは、ブレースの偏芯をなくして良好な構造性能を確保するために、例5に記載した柱梁接合部で用いた柱用金物に替えて、十字状部材の板要素の1つを延長して延在部を設けた例について説明する。延在部の突出長は、平面視で上下の平板から100mmであり、ターンバックルブレース取り付け用のM24相当の貫通孔を設けた。貫通孔位置は、金物高さの1/2である75mm、および、延在部の端面から25mmの位置とした。柱の高さは2650mmであり、柱間隔は1820mmである。これら柱と上下の梁とで形成される構面内側に、前記延在部を向けて柱を取り付けた。そして、延在部の貫通孔にM24のボルトでターンバックルブレースを取り付けた。ここで、上下の梁芯間隔は2900mmであるので、前記延在部の貫通孔に固定されたターンバックルブレースの延長線は、梁の高さ方向の芯と柱芯との交点である構造芯を通っており、また、十字状部材の貫通孔高さ位置で、柱芯から125mmの位置、すなわち、貫通孔位置を通っている。
また、上記実施例では、d=25mm、t=1.6mm、h=241mmとしたが、d、t、hはH形鋼の寸法によって変化し、金物の寸法もそれに伴って変化する。金物の板厚、貫通孔の径は、構造設計等により必要に応じて任意に設定すればよい。また、接合する柱部材は、ここに記載されたものに限定することなく、角形鋼管のほかH形鋼など、任意の部材やサイズを用いることができ、例えば、□−75×75×3.2を用いても、H−100×100×6×9を用いてもよい。
11 上板
12 下板
13 第1の側板
14 第2の側板
15 背板
16a〜16e 貫通孔
20 第2の金物
21 上板
22 下板
23 第1の側板
23a 延在部
24 第2の側板
25 背面(背板)
26a〜26f 貫通孔
40 ブラケット
40a、40b 貫通孔
50 柱接合用金物
51、52 平板
53 十字状部材
53a 板要素
53b 貫通孔
54 貫通孔
55 ブラケット
55a、55b 貫通孔
60 勝ち側梁
60a、60b 貫通孔
61 勝ち側梁のウェブ
70 負け側梁
70a、70b、70c 貫通孔
71 負け側梁のウェブ
80 柱
80a 上柱
80b 下柱
Claims (10)
- フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび上下フランジ間の内法高さがhであるH型鋼からなる梁の補強もしくは梁同士の接合に用いられる鉄骨構造物の梁用第1の金物であって、
梁用金物は上板、下板、第1の側板、第2の側板および背板からなり、幅が(2×d−t)、奥行きが(2×d−t)、高さがh以下である、正面が開放された略直方体であり、上板および下板には、正面からd、第1の側板の表面からdの位置に1個の貫通孔が設けられ、第1の側板、第2の側板および背板には、複数の貫通孔が少なくとも縦方向に1列設けられており、第1および第2の側板に設けられた貫通孔は正面からdの位置にあり、背板に設けられた貫通孔は第1の側板の表面からdの位置にある上下対称形状であることを特徴とする鉄骨構造物の梁用第1の金物。 - 請求項1記載の梁用第1の金物の第1の側板を、複数の貫通孔が少なくとも縦方向に1列設けられている正面方向への延在部を設け、かつ、延在部をtだけ第2の側板側にシフトするようにしたことを特徴とする鉄骨構造物の梁用第2の金物。
- フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび内法高さがhであるH型鋼からなる勝ち側梁と負け側梁を、勝ち側梁のウェブ面のいずれか一方もしくは両方に負け側梁が取り付くように接合した鉄骨構造物の梁接合部であって、
勝ち側梁の負け側梁が取り付く側のウェブ面には、請求項1記載の第1の金物と請求項2記載の第2の金物の第1の側板同士を隣接させ、かつ、その隣接境界部を前記負け側梁の構造芯と一致させた状態で、それぞれの背板が当接するように、第1の金物と第2の金物を配置し、
勝ち側梁の負け側梁が取り付かない側のウェブ面には、請求項1記載の第1の金物2個の第1の側板同士を隣接させた状態でそれぞれの背板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
第1の金物または第2の金物の背板に設けられた貫通孔と勝ち側梁のウェブに設けられた貫通孔を介して、勝ち側梁のウェブを挟んで対向する金物同士をボルト・ナットで固定し、
第2の金物の第1の側板の延在部に設けられた貫通孔と負け側梁の先端部のウェブに設けられた貫通孔を介して、第2の金物と負け側梁とをボルト・ナットで固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁接合部。 - フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび内法高さがhであるH型鋼からなる勝ち側梁と負け側梁を、勝ち側梁のウェブ面のいずれか一方もしくは両方に負け側梁が取り付くように接合した鉄骨構造物の梁接合部であって、
勝ち側梁の負け側梁が取り付く側のウェブ面には、請求項1記載の第1の金物2個の背板同士を2×tの間隙を有するように対向させた状態で、かつその間隙の中心を負け側梁の構造芯となる位置に一致させて、それぞれの第2の側板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
勝ち側梁の負け側梁が取り付かない側のウェブ面には、請求項1記載の第1の金物2個の背板同士を2×tの間隙を有するように対向させた状態でそれぞれの第2の側板が当接するように、または、第1の側板同士を隣接させた状態でそれぞれの背板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
第1の金物の背板または第2の側板に設けられた貫通孔と勝ち側梁のウェブに設けられた貫通孔を介して、勝ち側梁のウェブを挟んで対向する金物同士をボルト・ナットで固定し、
負け側梁の先端部のウェブの両面それぞれに、請求項1記載の第1の金物を背板が当接するように配置し、これらの金物の背板と負け側梁の先端部のウェブに設けられた貫通孔を介して、負け側梁のウェブを挟んで対向する金物同士とをボルト・ナットで固定し、
勝ち側梁の負け側梁が取り付く側に固定された第1の金物2個の第1の側板と、前記負け側梁の先端部に固定された第1の金物2個の第1の側板または第2の側板とを、それぞれの貫通孔を介してボルト・ナットで固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁接合部。 - フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび内法高さがhであるH型鋼からなる勝ち側梁と負け側梁を、勝ち側梁のウェブ面のいずれか一方もしくは両方に負け側梁が取り付くように接合した鉄骨構造物の梁接合部であって、
勝ち側梁の負け側梁が取り付く側のウェブ面に、請求項1記載の第1の金物2個の背板同士を2×tの間隙を有するように対向させた状態で、かつその間隙の中心を負け側梁の構造芯と一致させて、それぞれの第2の側板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
勝ち側梁の負け側梁が取り付かない側のウェブ面に、請求項1記載の第1の金物2個の背板同士を2×tの間隙を有するように対向させた状態でそれぞれの第2の側板が当接するように、または、第1の側板同士を隣接させた状態でそれぞれの背板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
さらに、勝ち側梁の負け側梁が取り付く側に配置した第1の金物2個の間に、厚さが2×tで長さが(2×d−t)より長く、かつ、この長い部分(延在部)が2×tだけシフトしているブラケットを配置し、
第1の金物の背板または第2の側板に設けられた貫通孔と勝ち側梁のウェブに設けられた貫通孔を介して、勝ち側梁のウェブを挟んで対向する金物同士とをボルト・ナットで固定し、
勝ち側梁の負け側梁の取り付く側に配置した第1の金物2個の背板に設けられた貫通孔とブラケットの貫通孔を介して、第1の金物2個の間にブラケットをボルト・ナットで固定し、
ブラケットの延在部に設けられた貫通孔と負け側梁の先端部のウェブに設けられた貫通孔を介して、ブラケットと負け側梁とをボルト・ナットで固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁接合部。 - 柱の先端に、板要素を組み合わせて断面を十字状とした十字状部材とその上下に取り付けられた平板からなり、上下の平板のいずれか一方に、貫通孔が設けられている柱用金物を溶接し、
請求項3〜5のいずれかに記載の鉄骨構造物の梁接合部の上側および下側のいずれか一方または両方に、柱用金物に設けられた貫通孔と梁接合部のフランジに設けられた貫通孔とを介してボルト・ナットで柱を固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁接合部。 - 柱用金物の上下の平板のいずれか一方に設けられる貫通孔は、十字状部材で区画されたそれぞれの区画に1箇所ずつ、かつその中心間距離が2×dとなるように設けられていることを特徴とする請求項6記載の鉄骨構造物の梁接合部。
- 柱用金物の十字状部材の少なくとも1つの板要素に鉛直ブレースを取り付けるための貫通孔を設けたことを特徴とする請求項6または7に記載の鉄骨構造物の梁接合部。
- 鉛直ブレースを取り付けるための板要素に、平面視で上下の平板よりも突出する突出部を設け、この突出部に貫通孔を設けたことを特徴とする請求項8に記載の鉄骨構造物の梁接合部。
- フランジの幅が4×d、ウェブの厚さが2×tおよび内法高さがhであるH型鋼からなる梁のウェブの各面に、請求項1記載の第1の金物2個の第1の側板同士を隣接させた状態でそれぞれの背板が当接するように、第1の金物2個を配置し、
第1の金物の背板に設けられた貫通孔と梁のウェブに設けられた貫通孔を介して、梁のウェブを挟んで対向する金物同士をボルト・ナットで固定してなることを特徴とする鉄骨構造物の梁補強部。
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