JP2016108708A - 柔軟性を有する無機繊維断熱吸音材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
製造時のエネルギー消費が少なく、優れた剛性と柔軟な風合いを有し、住宅や建物への施工に適した無機繊維断熱吸音材を提供すること。
【解決手段】
熱可塑性樹脂を主成分とした水溶性ポリマーと、架橋剤と、柔軟剤とを含有し、100から200℃の加熱温度により硬化する事が可能な水溶性バインダーが提供される。又、該水溶性バインダーを用いて成形された無機繊維断熱吸音材が提供される。
【選択図】 図1
Description
1)熱可塑性樹脂を主成分とした水溶性ポリマーと、架橋剤と、柔軟剤とを含有し、低温加熱により成形が可能な水溶性バインダーであること。
2)前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂であること。
3)前記架橋剤は、(a)ポリカルボン酸の化合物、重合物若しくは共重合物、(b)ほう素化合物、又は、(c)それらの混合物より選択される1種類であること。
4)前記柔軟剤は、(A)重質オイル、(B)シリコーンオイル、又は(C)その混合物の水分散体であること。
5)1〜4の水溶性バインダーを無機繊維に付与し、100℃から200℃の低温加熱処理によって成形すること。
本発明の水溶性バインダーは、低い温度での硬化が可能になる事で、混合した柔軟剤の性能を十分に発揮する事ができる。その為、住宅や建物への施工に適した剛性と柔軟性を有した無機繊維断熱吸音材を提供することができる。
尚、架橋剤の上限は、特に限定するものではないが、経済性の観点からすると、ポリビニルアルコール系樹脂100.0質量部に対して、100.0質量部以下が好ましい。
本発明の無機繊維用水溶性バインダーに用いる柔軟剤(A)(B)(C)としては、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対し、5.0から30.0質量部含有することが好ましい。5.0質量部より少ないと、柔軟剤としての効果を発揮することができない。5.0質量部以上だと、柔軟剤としてより有効に効果を発揮することができる。30.0質量部を超えると、無機繊維断熱吸音材の剛性の低下に繋がり、施工性が悪化する。
バインダー液の硬化時間には、測定溶液の水分蒸発も含まれており、水分蒸発時間を除くと、樹脂成分は60秒程度で硬化する。実際の製造工程では、気温が40〜50℃と高温になり、スプレー時より水分の蒸発が開始する為、塗布液の濃度調整により、理論上は60秒程度での硬化は可能である。但し、実生産では、150秒以上がより好ましい条件と判断した。
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製のポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で92.5部と、架橋剤として五協産業社製マレイン酸系共重合物「ガントレンツAN‐119」の水溶液を固形分換算で7.5部と、柔軟剤として出光興産社製の重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15部及び信越化学社製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4.0%になるように、水で調整して、実施例1の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
重合度が300で、ケン化度が88%である日本酢ビ・ポバール社製のポリビニルアルコール系樹脂「JL−05E」の水溶液を固形分換算で96部と、架橋剤としてホウ砂の4%水溶液を固形分換算で4部と、柔軟剤として出光興産社製の重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15部及び信越化学社製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4.0%になるように、水で調整して、実施例2の無機繊維用水溶性バインダーを得た。
DIC製無機繊維用水溶性フェノール系樹脂「フェノライト」の水溶液を固形分換算で100部と、柔軟剤として、出光興産社製の重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15部及び信越化学社製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4.0%になるように、水で調整して、比較例1の無機繊維用水溶性バインダーを得た。尚、使用した水溶性フェノール樹脂は、すでに架橋剤(ホルムアルデヒド)が混合されたものを使用している為、新たに架橋剤は添加していない。
ポリアクリル酸を主成分とした三洋化成製無機繊維用水溶性アクリル樹脂「グラスパール」の水溶液を固形分換算で100部と、柔軟剤として、出光興産社製の重質オイルエマルション「ダフニープロソルブルPF」を固形分換算で15部及び信越化学社製シリコーンオイルエマルション「Polon MR」を固形分換算で5部とを混合し、撹拌後、水溶液の濃度が4.0%になるように、水で調整して、比較例2の無機繊維用水溶性バインダーを得た。尚、使用した水溶性アクリル酸重合物は、すでに架橋剤が添加されたものを使用している為、新たに架橋剤は添加していない。
実施例1及び2、比較例1及び2で得られた無機繊維用水溶性バインダーを、各温度に設定した熱板上に1ミリリットルを滴下し、熱板上で硬化するまでの時間を測定した。測定結果は、表-1にて記し、硬化時間と加熱温度の関係図として図1に示した。また、図1より水分の蒸発時間を除いた樹脂成分の硬化時間と加熱温度の関係図を図2に示した。
尚、加熱温度が110℃及び130℃の場合、比較例1及び2においては、樹脂が硬化しなかった。
実施例1及び2、比較例1及び2で得られた無機繊維用水溶性バインダーを、遠心法により繊維化したグラスウールに5.0%の付着量になる様にスプレー装置にて塗布し、無機繊維堆積装置内で吸引しながら有孔コンベア上に堆積させ、無機繊維中間体を得た。得られた無機繊維中間体をそれぞれの樹脂特性に適した乾燥温度(実施例1及び2:180℃,比較例1:240℃,比較例2:260℃)にて、5分間の加熱処理を実施し、各温度に加熱するのに必要な時間当たりの加熱エネルギー量を試算し、表2に記した。尚、エネルギー改善率は、従来技術の代表例たるフェノール樹脂(比較例1)を基準とし、フェノール樹脂を用いた場合に比較してどの程度エネルギーが改善されるかを示した。
前項で加熱処理を行い、密度16kg/m3、厚さ100mm、バインダー付着率5.0%の無機繊維断熱吸音材を得た。得られたそれぞれの無機繊維断熱吸音材を、SHIMADZU社製万能試験機「AG−IS」を用い、元厚さに対し、10%まで圧縮した時の反発力(低圧強度)と、50%まで圧縮した時の反発力(高圧強度)を測定し、比較した。測定結果は下記表に示した。
尚、低圧強度は、人間が無機繊維断熱吸音材を把持した時の感触に関するものである。200N/m2以下だと、人間が把持した場合に、感触が良いと感じる。250N/m2以上の場合、人間が把持した場合に皮膚に刺さる様な悪い触感を感じる。
高圧強度は、無機繊維断熱吸音材の強度に関するものである。1000N/m2以下の場合、柔らか過ぎ、切断等の加工や施工がし難くなる。また、1000N/m2以上の場合、切断等の加工や施工がし易いものと言える。
Claims (6)
- 熱可塑性樹脂を主成分とした水溶性ポリマーと、架橋剤と、柔軟剤とを含有し、100から200℃の加熱温度において硬化することが可能な水溶性バインダーであることを特徴とする、水溶性バインダー。
- 前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂である請求項1に記載の水溶性バインダー。
- 前記架橋剤は、(a)ポリカルボン酸の化合物、重合物、若しくは、共重合物、(b)ホウ素化合物、又は、(c)それらの混合物より選択される1種類であり、前記ポリビニルアルコール系樹脂を100質量部に対し、固形分換算で4.0質量部以上を含有する請求項1又は2のいずれか1項に記載の無機繊維用水溶性バインダー。
- 前記柔軟剤は、(a)重質オイル、(b)シリコーンオイル、又は、(c)その混合物の水分散体を、前記ポリビニルアルコール系樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対し、5.0から30.0質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の無機繊維用水溶性バインダー。
- 60〜600秒の間で、100から200℃の加熱温度で硬化する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無機繊維用水溶性バインダー。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の水溶性バインダーを無機繊維に付与し、100℃から200℃で60〜600秒間の加熱処理によって成形したことを特徴とする無機繊維断熱吸音材。
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