JP2016104695A - 光学ガラス、光学素子およびガラス成形体の製造方法 - Google Patents

光学ガラス、光学素子およびガラス成形体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】多量のTa2O5及びNb2O5を含有させなくとも、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が所望の範囲内にありながら高屈折低分散領域を有する透過率の優れ、高い熱安定性を有する光学ガラスの提供。【解決手段】酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で、La2O3を10.0〜40.0%、B2O3を10.0〜40.0%、SiO2を0〜15.0%、Nb2O5を0〜20.0%、TiO2を0〜10.0%、Ta2O5を0〜10.0%、ZrO2を15%以下、BaOを9%以下、WO3を1%以下、含有し、酸化物換算組成の質量比(Nb2O5+TiO2)/(SiO2+B2O3)が0.3〜1.0であり、1.75〜1.95の屈折率(nd)を有し、30〜40のアッベ数(νd)を有する光学ガラス。【選択図】なし

Description

本発明は、光学ガラス、光学素子およびガラス成形体の製造方法に関する。
近年、光学系機器のデジタル化や高精細化が急激に進んでおり、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮影機器や、プロジェクタ、プロジェクションテレビ等の画像再生(投影)機器等の、各種光学機器に用いられるレンズやプリズム等の光学素子に対する軽量化及び小型化の要求は、ますます強まっている。
光学素子を作製する光学ガラスの中でも、特に光学素子の軽量化及び小型化を図ることが可能な、1.75以上の屈折率(nd)を有し、30以上のアッベ数(νd)を有する高屈折率低分散ガラスの需要が非常に高まっている。このような高屈折率低分散ガラスとしては、特許文献1〜3に記載のガラス組成のものが挙げられる。具体的には、例えば屈折率(nd)が1.69以上1.85以下、アッベ数(νd)が34以上51以下の範囲内にあり、かつThO2及びCdOを用いない光学ガラスが特許文献1および2に記載されている。また、屈折率(nd)が1.6以上1.8以下、アッベ数(νd)が40以上60以下の範囲内にある光学ガラスが特許文献3に記載されている。
特開昭48−059116号公報 特開昭52−103412号公報 特開2004−161506号公報
こうした光学素子の製造方法としては、ガラス材料を再加熱して成形(リヒートプレス成形)して得られたガラス成形品を研削研磨する方法や、ゴブ又はガラスブロックを切断し研磨したプリフォーム材、若しくは公知の浮上成形等により成形されたプリフォーム材を再加熱して、高精度な成形面を持つ金型で加圧成形する方法(精密プレス成形)が用いられている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載のガラスのように、高屈折低分散領域を実現し、かつ光学ガラスとして使用しうる透過率を得るためには、多量のTa25及びNb25を含有させる必要があった。そのため、当該領域のガラスには常にコストダウンの要求があった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が特定の範囲内にありながら、高い熱的安定性を有する光学ガラス、この光学ガラスからなる光学素子、およびこの光学ガラスからなるガラス成形体の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ね、La23成分及びB23成分を併用し、SiO2成分、Nb25成分およびTiO2成分を特定含有率以下に抑えることで、多量のTa25及びNb25を含有させなくとも、光学ガラスとして使用しうる透過率を有することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)〜(7)である。
(1)酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で、
La23成分を10.0〜40.0%、
23成分を10.0〜40.0%、
SiO2成分を0〜15.0%、
Nb25成分を0〜20.0%、
TiO2成分を0〜10.0%
含有し、1.75〜1.95の屈折率(nd)を有し、30〜40のアッベ数(νd)を有する光学ガラス。
(2)酸化物換算組成の質量比(Nb25+TiO2)/(SiO2+B23)が1.0以下である、上記(1)に記載の光学ガラス。
(3)さらに、酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で、
ZnO成分を5.0〜20.0%及び/又は
ZrO2成分を0〜15.0%及び/又は
Al23成分を0〜5.0%及び/又は
BaO成分を0〜20.0%及び/又は
WO3成分を0〜10.0%及び/又は
Na2O成分を0〜5.0%及び/又は
2O成分を0〜5.0%及び/又は
Li2O成分を0〜5.0%及び/又は
23成分を0〜5.0%及び/又は
Gd23成分を0〜5.0%及び/又は
Yb23成分を0〜5.0%及び/又は
SrO成分を0〜5.0%及び/又は
CaO成分を0〜5.0%及び/又は
Sb23成分を0〜1.0%
含有する上記(1)または(2)に記載の光学ガラス。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
(5)上記(1)〜(3)のいずれか記載の光学ガラスからなる精密プレス成形用プリフォーム。
(6)上記(5)に記載の精密プレス成形用プリフォームを精密プレス成形してなる光学素子。
(7)上記(1)〜(3)のいずれか記載の光学ガラスを軟化させ、金型内でプレス成形を行うガラス成形体の製造方法。
本発明によれば、La23成分及びB23成分を併用し、SiO2成分、Nb25成分およびTiO2成分を特定含有率以下に抑えることで、多量のTa25及びNb25を含有させなくとも、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が所望の範囲内にありながら透過率の優れた光学ガラスを得ることができる。
本発明の光学ガラスにおいて、各成分の組成範囲を前記の通りに限定した理由を説明する。なお、本明細書中においては、特に断らない限り、各成分の含有率は質量%にて表されるものとする。
本発明の光学ガラスは、酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で、La23成分を10.0〜40.0%、B23成分を10.0〜40.0%、SiO2成分を0〜15.0%、Nb25成分を0〜20.0%、TiO2成分を0〜10.0%含有し、1.75〜1.95の屈折率(nd)を有し、30〜40のアッベ数(νd)を有する光学ガラスである。B23成分を上記範囲内で含むことでガラスの熱的安定性が高められるとともにガラスの屈折率が高められる。また、La23成分を上記範囲内で含むことでガラスの屈折率及びアッベ数が調整される。さらに、B23成分およびLa23成分を併用し、SiO2成分、Nb25成分およびTiO2成分を上記範囲内に抑えることで、高屈折低分散特性と高透過率特性が両立できる。
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されず、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有率は、特に断りがない限り、全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%とする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時にすべて分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
<必須成分、任意成分について>
La23成分は、ガラスの屈折率を高めるとともに、ガラスの分散を小さくしてガラスのアッベ数を大きくする成分である。特に、La23成分の含有率を10.0%以上にすることで、ガラスの屈折率を高めることができる。一方、La23成分の含有率を40.0%以下にすることで、ガラスの安定性を高めてガラスの失透を低減することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLa23成分の含有率は10.0%、好ましくは15.0%、より好ましくは20.0%、より好ましくは25.0%、より好ましくは29.0%を下限とし、40.0%、好ましくは37.0%、より好ましくは36.0%、さらに好ましくは32.0%を上限とする。
La23成分は、原料として、例えば、La23、La(NO33・XH2O(Xは任意の整数)等を用いてガラス内に含有することができる。
23成分は、安定なガラスの形成を促し、ガラスの高い熱的安定性に寄与する成分である。特に、B23成分の含有率を10.0%以上にすることで、ガラスの安定性を高めることができる。一方、B23成分の含有率を40.0%以下にすることで、より大きな屈折率を得易くすることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するB23成分の含有率は10.0%、好ましくは15.0%、より好ましくは18.0%、さらに好ましくは20.0%を下限とし、40.0%、好ましくは35.0%、より好ましくは30.0%、より好ましくは26.0%、さらに好ましくは25.0%を上限とする。
23成分は、原料として、例えばH3BO3、Na247、Na247・10H2O、BPO4等を用いてガラス内に含有することができるが、H3BO3の形態で導入することが好ましい。
SiO2成分は、安定なガラス形成を促し、光学ガラスとして好ましくない失透(結晶物の発生)を低減する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、SiO2成分の含有率を15.0%以下にすることで、本発明が目的とする屈折率を得易くすることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSiO2成分の含有率は15.0%、好ましくは10.0%、より好ましくは3.7%を上限とする。また、好ましくは0.5%、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは1.5%を下限とする。
SiO2成分は、原料として、例えばSiO2、K2SiF6、Na2SiF6等を用いてガラス内に含有することができる。
Nb25成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスを安定化する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、Nb25成分の含有率を20.0%以下にすることで、ガラス製造時の溶解温度の上昇を抑えることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するNb25成分の含有率は20.0%、好ましくは16.0%、より好ましくは15.0%、より好ましくは12.0%、さらに好ましくは10.0%を上限とする。また、Nb25成分は高価格材料であるため、コストダウンのためには、好ましくは2.0%、より好ましくは5.0%、より好ましくは7.0%、さらに好ましくは9.0%を下限とする。
Nb25成分は、原料として、例えばNb25成分等を用いてガラス内に含有することができる。
TiO2成分は、ガラスの屈折率及びアッベ数を調整する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。通常、TiO2は透過率を悪化させる原因と考えられているが、他の成分とのバランスを取りつつ、含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減し、特に可視域におけるガラスの透過率を改善することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTiO2成分の含有率は10.0%、好ましくは7.0%、より好ましくは5.0%を上限とする。また、好ましくは1.0%、より好ましくは2.0%、さらに好ましくは3.0%を下限とする。
TiO2成分は、原料として、例えばTiO2成分等を用いてガラス内に含有することができる。
本発明の光学ガラスでは、Nb25成分及びTiO2成分の含有率の和の、SiO2成分及びB23成分の和の比、すなわち、酸化物換算組成の質量比である、(Nb25+TiO2)/(SiO2+B23)が1.0以下であることが好ましい。この質量比を1.0以下にすることで、結晶核を形成しやすいNb25成分及びTiO2成分の含有率が相対的に減少し、ガラスを得るまでに形成される結晶核が低減されるため、リヒートプレス成形や精密プレス成形を行うために光学ガラスを再加熱したときに、ガラスの乳白化及び失透を低減することができる。
酸化物換算組成の質量比である(Nb25+TiO2)/(SiO2+B23)は1.0、好ましくは0.9、より好ましくは0.8、より好ましくは0.7、さらに好ましくは0.6を上限とし、好ましくは0.1、より好ましくは0.2、より好ましくは0.3、さらに好ましくは0.4を下限とする。この質量比が0.1以上であると、ガラスの屈折率をより高めることができる。
ZnO成分は、ガラスの溶融性を向上する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、ZnO成分の含有率を20.0%以下にすることで、ガラスの高い熱的安定性を得易くすることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するZnO成分の含有率は、好ましくは20.0%、より好ましくは18.0%、さらに好ましくは17.0%を上限とし、好ましくは5.0%、より好ましくは8.0%、より好ましくは10.0%、より好ましくは12.0%、より好ましくは13.0%、さらに好ましくは15.0%を下限とする。
ZnO成分は、原料として、例えばZnO,ZnF2等を用いてガラス内に含有することができる。
ZrO2成分は、ガラスの屈折率を高め、耐失透性を向上させる成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、難溶融成分であるZrO2成分の含有率を15.0%以下にすることで、ガラス製造時の溶解温度の上昇を抑え、エネルギー損失を低減することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するZrO2成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは8.0%を上限とする。なお、ZrO2成分の含有率は、この範囲内であれば技術的には特に不利益はないが、上記効果を得易くする場合には、好ましくは0.5%、より好ましくは2.0%、より好ましくは3.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは6.0%を下限とする。
ZrO2成分は、原料として、例えばZrO2、ZrF4等を用いてガラス内に含有することができる。
Al23成分は、ガラスの化学的耐久性を向上し、溶融ガラスの耐失透性を向上する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、Al23成分の含有率を5.0%以下にすることで、ガラスの失透傾向を弱めて、ガラスの安定性を高めることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するAl23成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは4.0%、より好ましくは3.0%、さらに好ましくは2.0%を上限とする。なお、Al23成分の含有率は、この範囲内であれば技術的には特に不利益はないが、上記効果を得易くする場合には、好ましくは0.05%、より好ましくは0.1%、より好ましくは0.2%、より好ましくは0.3%、さらに好ましくは0.5%を下限とする。
Al23成分は、原料として、例えばAl23,Al(OH)3、AlF3等を用いてガラス内に含有することができる。
BaO成分は、ガラスの屈折率を調整し、ガラスの失透性を改善する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、BaO成分の含有率を20.0%以下にすることで、所望の屈折率を得易くすることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するBaO成分の含有率は、好ましくは20.0%、より好ましくは13.0%、より好ましくは9.0%、さらに好ましくは7.0%を上限とする。また、好ましくは1.0%、より好ましくは2.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは6.0%を下限とする。
BaO成分は、原料として、例えばBaCO3、Ba(NO32、BaF2等を用いてガラス内に含有することができる。
WO3成分は、ガラスの屈折率及び分散を調整し、ガラスの耐失透性を向上する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、WO3成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減し、特に可視−短波長領域(500nm未満)における透過率を低下し難くすることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するWO3成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは1.0%を上限とする。また、WO3成分の含有率は1.0%未満であることが好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。
WO3成分は、原料として、例えばWO3等を用いてガラス内に含有することができる。
Sb23成分は、溶融ガラスを脱泡する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、Sb23成分の含有率を1.0%以下にすることで、ガラス溶融時における過度の発泡を生じ難くすることができ、Sb23成分が溶解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くすることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSb23成分の含有率は、好ましくは1.0%、より好ましくは0.7%、より好ましくは0.5%、より好ましくは0.2%、さらに好ましくは0.1%を上限とする。
Sb23成分は、原料として、例えばSb23、Sb25、Na22Sb27・5H2O等を用いてガラス内に含有することができる。
Li2O成分は、ガラスの溶融性を改善するとともに、ガラスを再加熱したときの失透を低減する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、Li2O成分の含有率を5.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、ガラスの安定性を高めて失透等の発生を低減することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するLi2O成分の含有率は、好ましくは5.0%、より好ましくは4.0%、より好ましくは3.0%、より好ましくは2.0%、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは0.5%を上限とする。
Li2O成分は、原料として、例えばLi2CO3、LiNO3、LiF等を用いてガラス内に含有することができる。
Na2O成分は、ガラスの溶融性を改善するとともに、ガラスを再加熱したときの失透を低減する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、Na2O成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、ガラスの安定性を高めて失透等の発生を低減することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するNa2O成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
Na2O成分は、原料として、例えばNa2CO3、NaNO3、NaF、Na2SiF6等を用いてガラス内に含有することができる。
2O成分は、ガラスの溶融性を改善するとともに、ガラスの屈折率及びアッベ数を調整する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、K2O成分の含有率を10.0%以下にすることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、ガラスの安定性を高めて失透等の発生を低減することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するK2O成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
2O成分は、原料として、例えばK2CO3、KNO3、KF、KHF2、K2SiF6等を用いてガラス内に含有することができる。
MgO成分は、ガラスの屈折率を調整する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、MgO成分の含有率を10.0%以下にすることで、所望の屈折率を得易くし、ガラスの失透の発生を低減することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するMgO成分の含有率は、好ましくは10.0%、より好ましくは7.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
MgO成分は、原料として、例えばMgCO3、MgF2等を用いてガラス内に含有することができる。
CaO成分は、ガラスの溶融性を改善する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、CaO成分の含有率を15.0%以下にすることで、所望の屈折率を得易くし、ガラスの失透の発生を低減することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するCaO成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
CaO成分は、原料として、例えばCaCO3、CaF2等を用いてガラス内に含有することができる。
SrO成分は、ガラスの屈折率を調整し、ガラスの失透性を改善する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、SrO成分の含有率を15.0%以下にすることで、所望の屈折率を得易くし、ガラスの失透の発生を低減することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSrO成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
SrO成分は、原料として、例えばSr(NO32、SrF2等を用いてガラス内に含有することができる。
Ta25成分は、ガラスの屈折率を高め、ガラスを安定化する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、Ta25成分の含有率を15.0%以下にすることで、希少鉱物資源であるTa25成分の使用量が低減されるため、ガラスの材料コストを低減することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するTa25成分の含有率は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは7.0%を上限とする。
Ta25成分は、原料として、例えばTa25等を用いてガラス内に含有することができる。
Ln23成分(LnはY、GdおよびYbからなる群から選ばれる少なくとも1つ)は、ガラスの屈折率及び分散を調整する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、Y23、Gd23及びYb23の各成分の含有率は、各々、30.0%以下にすることで、ガラスの所望の光学恒数が得易くなるとともに、ガラスの耐失透性を高めることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するY23、Gd23及びYb23の各成分の含有率は、各々、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、より好ましくは10.0%、さらに好ましくは5.0%を上限とする。
Ln23成分は、原料として、例えばY23、Gd23、Yb23等を用いてガラス内に含有することができる。
SnO成分及びSnO2成分は、溶湯ガラスの酸化を低減して溶融ガラスを清澄し、ガラスの光照射に対する透過率を悪化し難くする成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、SnO成分及びSnO2成分の含有率を、各々、1.0%以下にすると、溶融ガラスの還元によるガラスの着色を生じ難くすることができ、SnO成分及びSnO2成分が溶解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くすることができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するSnO成分及びSnO2成分の含有率は、各々、好ましくは1.0%、より好ましくは0.7%、さらに好ましくは0.5%を上限とする。
SnO成分及びSnO2成分は、原料として、例えばSnO、SnO2、SnF2、SnF4等を用いてガラス内に含有することができる。
CeO2成分は、ガラスを清澄化する成分であり、本発明の光学ガラスにおいて任意成分である。特に、CeO2成分1.0%以下にすると、可視光の着色を抑制することができる。
従って、酸化物換算組成のガラス全質量に対するCeO2成分の含有率は、各々、好ましくは1.0%、より好ましくは0.7%、さらに好ましくは0.5%を上限とする。
CeO2成分は、原料として、例えばCeO2、Ce(OH)3等を用いてガラス内に含有することができる。
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
他の成分を本発明の光学ガラスの特性を損なわない範囲で含有することができる。ただし、Tiを除くV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移元素成分は、各々を単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
また、PbO等の鉛化合物及びAs23等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避的な混入を除いて含有しないことが好ましい。これにより、特別な環境対策の措置を講じなくても、この光学ガラスを製造し、加工し、廃棄することができる。
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be及びSeの各成分は、近年、有害な化学物質として使用を控える傾向があり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、製品化後の処分に至るまで、環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらの成分を実質的に含まないことが好ましい。
本発明の光学ガラスは、その組成が酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%で表されているため、直接にモル%の表記に換算できるものではないが、本発明において要求される諸特性を満たすガラス組成物中に存在する各成分をモル%で示すと、酸化物換算組成で、概ね以下のようになる。
La23成分 : 3〜20mol%、
23成分 : 10〜70mol%、
SiO2成分 : 0〜30mol%、
Nb25成分 : 0〜10mol%、
TiO2成分 : 0〜20mol%、
ZnO成分 : 5〜30mol%及び/又は
ZrO2成分 : 0〜20mol%及び/又は
Al23成分 : 0〜10mol%及び/又は
BaO成分 : 0〜20mol%及び/又は
WO3成分 : 0〜10mol%及び/又は
Na2O成分 : 0〜10.0mol及び/又は
2O成分 : 0〜10.0mol及び/又は
Li2O成分 : 0〜10.0mol及び/又は
23成分 : 0〜10.0mol及び/又は
Gd23成分 : 0〜10.0mol及び/又は
Yb23成分 : 0〜10.0mol及び/又は
SrO成分 : 0〜10.0mol及び/又は
CaO成分 : 0〜10.0mol及び/又は
Sb23成分 : 0〜1.0mol%
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製することができる。すなわち、上記原料を、各成分が所定の含有率の範囲内となるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗溶融した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の溶融難易度に応じて電気炉で1200〜1400℃の温度範囲で3〜4時間溶融し、攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから金型に鋳込み、徐冷することにより作製することができる。
[物性]
本発明の光学ガラスは、高い屈折率(nd)及び低い分散性を有する。
特に、本発明の光学ガラスの屈折率(nd)は1.75、好ましくは1.77、より好ましくは1.78を下限とし、1.95、好ましくは1.93、より好ましくは1.92、より好ましくは1.91、より好ましくは1.90、より好ましくは1.86、さらに好ましくは1.84を上限とする。
また、本発明の光学ガラスのアッベ数(νd)は30、好ましくは35、より好ましくは37を下限とし、40、好ましくは39、さらに好ましくは38を上限とする。
このような高い屈折率により、光学ガラス素子の薄型化を図っても適度な光の屈折量が得られる。また、このような低い分散性により、単レンズであっても光の波長による焦点のずれ(色収差)が小さくなる。
従って、本発明の光学ガラスは、光学設計上有用であり、特に光学系の小型化を図ることができる。
また、本発明の光学ガラスは、光学ガラスとして利用できるだけの透過率を有している必要がある。特に、本発明の光学ガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率80%を示す波長(λ80)が460nm以下であり、より好ましくは450nm以下であり、最も好ましくは445nm以下である。
[プリフォーム及び光学素子]
このように本発明の光学ガラスは、様々な光学素子及び光学設計に有用であるが、その中でも、特に本発明の光学ガラスからリヒートプレス成形や精密プレス成形等の手段を用いてレンズやプリズム等の光学素子を作製することが好ましい。これにより、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに、高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現しつつ、これら光学機器における光学系の小型化を図ることができる。
以下に本発明の実施例を示す。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本発明の実施例(No.1〜No.20)の組成、及びこれらのガラスの屈折率(nd)、アッベ数(νd)、分光透過率(λ80)の結果を第1表に示す。
本発明の実施例(No.1〜No.20)の光学ガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、第1表に示した各実施例の組成となるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の溶融難易度に応じて電気炉で1200〜1400℃の温度で3〜4時間溶融した後、攪拌均質化してから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
ここで、実施例(No.1〜No.20)の光学ガラスの分光透過率(λ80)は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02−200に準じて測定した。
Figure 2016104695
第1表に示されるように、本発明の実施例(No.1〜No.20)の光学ガラスは、いずれも、透過率λ80が442nm以下であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは光学ガラスとして使用できることが明らかとなった。
また、本発明の実施例(No.1〜No.20)の光学ガラスは、いずれも屈折率(nd)が1.75以上であり、より詳細には1.78以上であることが明らかとなった。また、屈折率(nd)は1.95以下であり、より詳細には1.84以下であることが明らかとなった。
また、本発明の実施例(No.1〜No.20)の光学ガラスは、いずれもアッベ数(νd)が30以上であり、より詳細には36.1以上であることが明らかとなった。また、アッベ数(νd)は40以下であり、より詳細には39.3以下であることが明らかとなった。
従って、本発明の光学ガラスは、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)が所望の範囲内にありながら、高い透過率を有することが明らかとなった。
さらに、本発明の実施例(No.1〜No.20)の光学ガラスを用いて、リヒートプレス成形を行った後に研削および研磨を行い、レンズ及びプリズムの形状に加工した。また、本発明の実施例(No.1〜No.20)の光学ガラスを用いて、精密プレス成形用プリフォームを形成し、精密プレス成形用プリフォームを精密プレス成形した。いずれの場合も、加熱軟化後のガラスには乳白化及び失透等の問題は生じず、高い透過率を有しつつ、安定に様々なレンズ及びプリズムの形状に加工することができた。

Claims (1)

  1. 酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で、
    La23成分を25.0〜35.58%、
    23成分を18.0〜40.0%、
    SiO2成分を1.22〜15.0%、
    Nb25成分を0〜20.0%、
    TiO2成分を0〜10.0%、
    Ta25成分を0〜10.0%、
    ZrO2成分を15%以下、
    BaO成分を9%以下、
    WO3成分を1%以下、
    含有し、
    酸化物換算組成の質量比(Nb25+TiO2)/(SiO2+B23)が0.3〜1.0であり、
    1.75〜1.95の屈折率(nd)を有し、30〜40のアッベ数(νd)を有する
    光学ガラス。
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