JP2016101149A - 液状調味料 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の液状調味料は、魚節を有機酸水溶液で抽出した魚節抽出液を含有する液状調味料であって、トリプトファンの濃度が60nmol/mL以下、好ましくは30nmol/mL以下であり、かつ4−エチルグアヤコールとジメチルスルフィドのガスクロマトグラフィ(後述のヘッドスペースSPME−GC−MS法による)におけるピーク面積比(EG/DS)が25以上、好ましくは40以上である。
本発明において、魚節とは、魚体を茹でて干しただけの「なまり節」、それを燻製にした「荒節」、さらに黴付けして熟成した「枯節」を含む。また、魚節に加工する魚体の種類としては、鰹、宗田鰹、鯖、鰯、鰺、鮪等をあげることができる。
魚節抽出液を得るにあたり、魚節としては1種を使用してもよく、魚体や加工方法により異なる複数種を合わせて使用してもよい。
本発明の液状調味料には、魚節の種類や抽出条件により選択される一種や又は複数種の魚節抽出液を含有することができ、その少なくとも一つは魚節を有機酸水溶液で抽出したものとする。魚節の抽出溶媒として有機酸水溶液を使用することにより、臭気成分であるアンモニアの飛散を抑え、またシステイン等硫化物の分解を早めることができる。
魚節の抽出溶媒としての有機酸水溶液を構成する有機酸としては、1個以上のカルボキシル基を有し、食材として用いられているものを使用することができる。有機酸の具体例としては、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、プロピオン酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸等を挙げることができ、これらの1種又は複数種を合わせて使用することができる。特に、産業上の入手容易性の点で酢酸を使用することができ、また、酸味のバランスの点で乳酸、リンゴ酸、グルコン酸、クエン酸から選ばれる酸を使用することができる。
有機酸水溶液における有機酸の濃度は、産業上の入手容易性、抽出時の刺激臭抑止、および抽出効率の点から0.1〜5.0%とすることができる。
魚節の抽出に使用する有機酸水溶液には、浸透圧調整の点から、ショ糖、ブドウ糖、果糖、デキストリン、又はこれらの還元物等の糖類を添加することができる。糖類の添加量は、5%以下、特に1〜0%とすることができる。
また、腐敗防止、抽出率向上の点から、エタノール、酒精などのアルコール類を添加することができる。アルコール類の添加量は、10%以下、特に5〜0%とすることができる。 さらに、有機酸水溶液には、食塩、醤油等の調味料を添加してもよい。
抽出時の加熱条件としては、80〜95℃で10〜80分間とすることが好ましい。また、80〜95℃に加熱した後、急冷し、常温で1〜120日間としても良い。
本発明の液状調味料は、上述のようにして得られる魚節抽出液の1種又は複数種を適宜混合し、トリプトファン濃度が60nmol/mL以下、4−エチルグアヤコールとジメチルスルフィドのガスクロマトグラフィ(後述のヘッドスペースSPME−GC−MS法による)におけるピーク面積比(EG/DS)が25以上となるように調整し、必要に応じて酸味料を添加することによりpH調整し、また、必要に応じて糖アルコール、糖類、塩類等を配合したものである。但し、本発明の液状調味料は好ましい魚節の香りと十分な旨みを有しているので、旨み等の増強のためにアミノ酸を添加することは不要である。
本発明の液状調味料は、必要に応じて酸を添加することによりpH4以上5以下に調整することが好ましく、特にpH4.0以上4.4以下とする。このようなpHに調整することにより、魚節抽出液の魚臭を低減させることができ、また、本発明の液状調味料を野菜にかけた場合に、野菜の苦みを緩和することができ、さらに液状調味料の保存性を向上することができる。
本発明の液状調味料に糖アルコールを添加することにより、魚節抽出物に含まれる苦みや野菜の苦みを軽減することができる。
糖アルコールとしては、単糖の糖アルコール及び二糖の糖アルコールの少なくとも1種を使用することができ、単糖の糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール等を使用することができ、二糖の糖アルコールとしては、マルチトール等を使用することができる。本発明の液状調味料に糖アルコールを含有させるため、還元澱粉糖化物のように単糖や二糖の糖アルコールと、それ以外の糖アルコールを含んだ混合物を使用してもよい。還元澱粉糖化物としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシコーンスターチ、タピオカ澱粉等の澱粉類を分解して得られるデキストリン、マルトデキストリン、水飴等と称される澱粉糖化物に水素を添加して得られる還元物を使用することができる。
本発明の液状調味料に糖アルコールを含有させる場合に、その含有量は、固形分換算で液状調味料の30%以下が好ましく、特に14%以上30%以下、さらには16%以上24%以下が好ましい。糖アルコールを過度に含有させると、本発明の液状調味料を野菜にかけた場合に、野菜の風味が損なわれる場合があり、反対に糖アルコールの含有量が少なすぎると上述の糖アルコールの添加効果を得られない。
本発明の液状調味料に糖類を添加することにより、魚節抽出物に含まれる苦みや野菜の苦みを軽減することができる。
糖類としては、果糖、ショ糖、ブドウ糖等を使用することが好ましい。糖類の添加量は液状調味料の10%以下が好ましく、特に1.5%以上10%以下が良く、2%以上8%以下が好ましい。
本発明の液状調味料において、塩類は、本発明の液状調味料を温野菜などの食品にかけた場合の食味の向上のために添加することが好ましい。
塩類の添加量は、食塩として、液状調味料の4%以上9%以下が好ましい。
本発明の液状調味料は、前述のように魚節抽出液の一種又は複数種調製し、各魚節抽出液のトリプトファン、4−エチルグアヤコール及びジメチルスルフィドの濃度に応じてそれらの複数種を混合し、トリプトファン濃度が60nmol/mL以下、4−エチルグアヤコールとジメチルスルフィドのガスクロマトグラフィ(後述のヘッドスペースSPME−GC−MS法による)におけるピーク面積比(EG/DS)が25以上となるように調整する。また、液状調味料に、必要に応じて前述のように糖アルコール、糖類、塩類等を配合することにより液状調味料を製造する。
本発明の調理食品は、本発明の液状調味料を食品に用いたものである。調理食品の種類には特に制限はないが、例えば、ダイコン、キャベツ、キュウリ、タマネギ、ニンジン、レタス等の野菜にかけてサラダとすることができる。特に、これらの野菜を加熱した温野菜に本発明の液状調味料をかけた調理食品は、魚節の香りがバランス良く立ち、温野菜の香りとマッチし、魚節の旨みが温野菜に味に加わるので、美味しい調理食品となる。
(1)魚節抽出液の調製
(1-A)魚節抽出液A
酢酸1%含有する有機酸水溶液(酸度1%)92部を90℃に加熱し、そこに鰹の荒節の粉砕物を有機酸水溶液の8部となるように投入し、加熱時間15分、30分、60分又は90分間加熱し、各加熱時間で得た魚節抽出液から抽出滓をストレーナーで除去し、常温(約25℃)まで冷却し、試験液を得た。
この試験液を50℃に温めたときのヘッドスペース部分の香気成分を試料とする固相マイクロ抽出−ガスクロマトグラフ質量分析法(ヘッドスペースSPME−GC−MS)で以下の条件に従って測定した。
(a-1)香気成分の分離濃縮方法
SPMEファイバーと揮発性成分抽出装置を用い、以下の条件に従って、固相マイクロ抽出法で香気成分の分離濃縮を行う。
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー StableFlex 50/30μm, DVB/Carboxen/PDMS(Agilent社製)
・揮発性成分抽出装置 Combi PAL(CTC Analitics社製)
・予備加温 50℃、15min
・撹拌速度 300rpm
・揮発性成分抽出 50 ℃、20min
・脱着時間 10min
ガスクロマトグラフ法及び質量分析法を用い、以下の条件に従って、液状調味料中のジメチルスルフィドのピーク面積に対する、4−エチルグアヤコールのピーク面積の比を測定する。
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器 Agilent7890B(AgilentTechnologies社製)
・カラム SOLGEL−WAX(SGE社製)
長さ30m,口径0.25mm,膜厚0.25μm
・温度条件 35℃(5min)保持→120℃まで5℃/min昇温
→220℃まで15℃/min昇温→6min保持
・キャリアー Heガス、ガス流量1.0mL/min
<質量分析条件>
・質量分析計 Agilent5977A(AgilentTechnologies社製)
・スキャン質量 m/z 29.0〜350.0
・イオン化方式 EI(イオン化電圧70eV)
試験液に含まれる苦み成分及び旨み成分の濃度を液体クロマトグラフ法(JEOL社製全自動アミノ酸分析器JLC−500/V2)により測定した。
これらの結果を表1及び図1に示す。
魚節の抽出時間が魚節抽出液に及ぼす香気、臭気及び旨みの影響を調べるために、魚節抽出液Aの調製において、鰹の荒節の使用量を2部とし、酢酸0.14%含有する有機酸水溶液(酸度0.14%)98部とし、魚節抽出液Aと同様に魚節抽出液Bを得た。そして、魚節抽出液Bに含まれる苦み成分及び旨み成分の濃度を魚節抽出液Aと同様に測定した。
[香りのバランス]
A:魚臭さが抑えられつつ魚節の燻製香が強く、温めた野菜とあわせたときの香りのバランスが優れている。
B:魚臭さが多少残りつつも魚節の燻製香があり、温めた野菜とあわせたときの香りのバランスが比較的よい。
C:魚節の燻製香以外の魚臭さが目立ち、温めた野菜とあわせたときの香りのバランスが悪い。
また、荒節抽出液Bの調製において、魚節として鰹の荒節を1部、宗田鰹の荒節2部を使用し、酢酸1.4%含有する有機酸水溶液(酸度0.14%)97部で、90℃、8分間、抽出することにより魚節抽出液Cを得た。そして、魚節抽出液Cに含まれる苦み成分及び旨み成分の濃度を(1-A)と同様に測定すると共に、(1-B)と同様に官能評価を行った。結果を表3に示す。
また、荒節抽出液Bの調製において、魚節として鰹の荒節2部、あごの荒節を4部使用し、酢酸1.4%含有する有機酸水溶液(酸度を0.14%)94部で、抽出を90℃、8分間行うことにより魚節抽出液Dを得た。そして、魚節抽出液Dに含まれる苦み成分及び旨み成分の濃度を(1-A)と同様に測定すると共に、(1-B)と同様に官能評価を行った。結果を表4に示す。
魚節の抽出温度が魚節抽出液に及ぼす香気、臭気及び旨みの影響を調べるために、魚節抽出液Aの調製において、鰹の荒節の使用量を2部とし、また酢酸1.4%含有する有機酸水溶液(酸度を0.14%)98部で、抽出温度を表5に示すように変え、魚節抽出液Aと同様に魚節抽出液Eを得た。そして、魚節抽出液Eに含まれる苦み成分及び旨み成分の濃度を(1-A)と同様に測定すると共に、(1-B)と同様に官能評価を行った。結果を表5及び図3に示す。図3から、75℃では香りが弱く、80〜95℃では4−エチルグアヤコールの燻製香が強いが温度上昇と共にトリプトファン濃度が高まり、苦みが強くなり、95℃を超えると香り全体が飛散してしまうことがわかる。
魚節抽出液Aの調製における酢酸1%含有する有機酸水溶液(酸度1%)に代えて、酢酸4.5%含有する有機酸水溶液(酸度4.5%)を使用することにより次のようにして魚節抽出液Fと椎茸抽出液を得た。
魚節抽出液Fと椎茸抽出液に含まれる香り成分及び臭気成分の濃度を(1-A)と同様に測定した。結果を表6に示す。
魚節を抽出するときの酸度と魚節抽出液に含まれる香気成分、臭気成分、苦み成分及び旨み成分の関係を調べるため、(1)で魚節抽出液を得るときの酸度と、(1)で測定した魚節抽出液の成分量を魚節の単位使用量(1%)あたりの成分量に換算した数値とを表7にまとめた。
・実施例1〜17及び比較例1〜3
表8に示すように、(1)で得た魚節抽出液をブレンドし、酢酸を用いて酸度0.5%になるまで調整し、実施例1〜9、実施例11〜16及び比較例1〜3の液状調味料を得た。
また、(1-B)と同様に官能評価を行い、さらに、下記の基準で食味評価を行った。
A:苦みが感じられず、すっきりとした味わいで、温めた野菜とあわせたときに野菜の美味しさを感じられる。
B:苦みが若干感じられるが、温めた野菜とあわせたときに野菜の美味しさを感じられる。
C:苦みが感じられ、温めた野菜とあわせたときに雑味を呈し、野菜の美味しさを十分に感じられない。
これらの結果を表8A、表8Bに示す。
魚節抽出液を用いた市販の液状調味料7種を比較例4〜9とし、そのトリプトファン濃度、香気成分及び旨み成分の濃度測定を(1-A)と同様に行った。また、(1-B)と同様に官能評価を行い、(3)と同様に食味評価も行った。
これらの結果を表8Cに示す。
実施例9、10、16及び17で得られた液状調味料10gを、カットした生キャベツ100gに和えて喫食したところ、キャベツの苦みが十分軽減され、かつキャベツの風味を損なわず、大変優れていた。
実施例9、10、16及び17で得られた液状調味料10gを、薄切り後に茹でて約50℃まで冷めた蒟蒻100gに和えて喫食したところ、実施例10及び17は特に蒟蒻の表面によく絡み、かつ蒟蒻の風味を損なわず、大変優れていた。
実施例9、10、16及び17で得られた液状調味料10gを、薄切り後に茹でて約50℃まで冷めた豚肉100gに和えて喫食したところ、豚肉の臭みが軽減され、かつ豚肉の風味を損なわず、大変優れていた。
Claims (6)
- 魚節を有機酸水溶液で抽出した魚節抽出液を含有する液状調味料であって、トリプトファン濃度が60nmol/mL以下、4−エチルグアヤコールとジメチルスルフィドのガスクロマトグラフィ(ヘッドスペースSPME−GC−MS法)におけるピーク面積比(EG/DS)が25以上である液状調味料。
- 請求項1記載の液状調味料であって、pH4以上5以下であり、単糖の糖アルコール又は二糖の糖アルコールの少なくとも一方を固形分換算で14質量%以上30質量%以下含有する液状調味料。
- 請求項1又は2記載の液状調味料であって、食塩を4質量%以上9質量%以下含有する液状調味料。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の液状調味料であって、酢酸を含有する液状調味料。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の液状調味料を用いた調理食品。
- 請求項5記載の調理食品であって、該調理食品が、液状調味料が温野菜に用いられた温野菜サラダである調理食品。
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