JP2019010005A - 液体調味料及びその製造方法、並びに液体調味料の風味改善方法 - Google Patents
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したがって、これらを利用した液体状調味料においては、その不快風味の結果、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りが埋没し、不快風味が強調され、液体調味料の呈味が嫌悪されてしまうという課題があった。
しかしながら、その風味が強いことにより、酵母エキス自体の風味が被添加飲食品に強く付与され、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りのような、繊細な香りをも殺してしまうという課題があった。
しかも特許文献4に記載された発明では、そのマスキング効果によって埋没した、魚節の好ましい香りを増強すべく、香料や魚節分画香気成分を配合することで、この回復を図っており、素材本来が有する好ましい香りの特質を変化させることなく、そのまま引き出すという点において、解決がなされていなかった。
そして、本発明者らは上記の知見に基づいてさらに鋭意研究を進めることにより、最終的に下記の発明を完成させるに至った。
手段[2]:前記液体調味料が、あごだし以外の魚節だし類を含有することを特徴とする、手段1に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[3]:前記魚節だし類が、鰹だし、サバだし、煮干しだしから選ばれる1種以上であって、かつ、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記魚節だし類の抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.3質量部以上12質量部以下である、
ことを特徴とする、手段2に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[4]:前記液体調味料が、酵母エキスを含有することを特徴とする、手段1乃至3のいずれか1に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[5]:前記酵母エキスが、ビール酵母、パン酵母、トルラ酵母から選ばれる1種以上に由来するものであって、かつ、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、前記酵母エキスの含有量が、0.1質量部以上5質量部以下である、ことを特徴とする、手段4に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[6]:前記液体調味料が、醤油を含有し、かつ、前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.05質量%以上5質量%以下であることを特徴とする、手段1乃至5のいずれか1に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[7]:前記液体調味料が、糖類を含有し、かつ、前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上2質量%以下である、ことを特徴とする、手段1乃至6のいずれか1に記載に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[8]:前記液体調味料が、有機酸及び/又は核酸を含有し、前記有機酸が、コハク酸及び/又はコハク酸塩であって、前記核酸が、イノシン酸又はその塩、及び/又は、グアニル酸又はその塩であって、かつ、前記有機酸の含有量が、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対して、0.03質量部以上0.3質量部以下であって、前記核酸の含有量が、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対して、0.03質量部以上0.7質量部以下である、ことを特徴とする、手段1乃至7のいずれか1に記載に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[9]:前記液体調味料が、野菜煮込み用調味料であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[10]:前記液体調味料が、レトルト調味料であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1に記載のあごだし含有液体調味料。
手段[11]:あごだしに、あごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を混合した後、60℃以上90℃以下かつ60分以下達温以上の範囲で加熱処理することを特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
手段[12]:あごだしに、あごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を混合した後、110℃以上130℃以下かつ60分以下5分以上の範囲でレトルト殺菌処理することを特徴とする、あごだし含有液体調味料の製造方法。
手段[13]:手段1に記載のあごだし含有液体調味料に、あごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を含有させることを特徴とする、あごだし含有液体調味料の風味の改善方法。
次に、本発明によれば、生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味が改善され、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りが増強された、あごだし含有液体調味料の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、あごだしを含有する液体調味料について感じられる生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味を改善すると共に、あごだしを含有する液体調味料について感じられる特有の繊細なうま味や好ましい香り(以下、これらを「好ましい風味」と称することがあります。)を増強することのできる、風味の改善方法を提供することができる。
尚、この内、あごだしの特有の繊細なうま味や好ましい香りを活かすという観点から、比較的風味に独特すぎる特徴が少なく、ある程度の強さを有する、鰹だし、サバだし、煮干しだしが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、1種以上を混合して使用してもよい。また、単独で抽出しただしを混合してもよいし、複数の原料を混合して抽出しただしであってもよい。
酵母の種類としては、ビール酵母由来、パン酵母由来、トルラ酵母由来のものがあるが、その風味は、処理法よりもその由来によることが大きく、特に、パン酵母やビール酵母はいわゆる「酵母風味」と呼ばれる酵母エキス独特の濃厚な味や強い香りが特に強く、生臭みなどの不快風味をマスキングをするにはより適しているが、逆に酵母風味も強く付与され、被添加調味料中に含まれる原料素材が元来有する風味をそのまま活かすという点では、使いづらい。これに対してトルラ酵母は前2者に対して、酵母風味が比較的弱く、不快風味をマスキングするには効果が劣るものの、原料素材が元来有する風味を活かすという点では使い易い。よって、これらの使い様はその種類に対しての工夫次第ではあるが、トルラ酵母由来であることがより好ましい。
しかしながら、本発明においては、前記魚節だし類による、あごだしの不快風味のマスキング効果が奏されており、かつ、あごだしの特有の繊細なうま味や好ましい香りはマスキングされていないことから、これのみを増強させることができるかどうか検討した結果、酵母エキスを含有させることにより、マスキングされた不快風味を増強し、再度不快風味を発現させることは無く、あごだしの特有の繊細なうま味や好ましい香りのみを増強することが分かった。
ただし、前記したように、トルラ酵母はそれ自体の「酵母風味」が弱いため、風味のマスキング効果よりも、風味のエンハンス効果が強く、液体調味料に異質な「酵母風味」が付与され難いという観点からも、トルラ酵母由来であることがより好ましい。
ここでいう糖類とは、単糖や二糖類(例えば、グルコース、フルクトース、スクロースなど)のように甘味を有する糖類のことを指す。
尚、これらを配合しなくても十分に前記好ましい風味を発現させたあごだし含有液体調味料をなし得るが、風味のバランスを整え、呈味の底上げ(全体的な力価の増強)を図る観点から、これらを加えたほうがよりよい。
本発明のあごだし含有液体調味料は、汎用的に使用できるものであるが、特に、その風味の野菜との相性及び元来風味が弱く調味料の風味に負け易い野菜類に適用されることが好ましい。つまり、野菜の本来の風味を活かし、適度なだし風味を付与するという観点から、野菜煮込み用調味料であることが好ましい。
その理由としては、あごだしを含有する調味料はレトルト処理によって、風味が弱まるためである。
本発明の作用効果によって、事前にあごだしの前記好ましい風味を増強しておくことで、レトルト処理によっても十分にあごだしの好ましい風味を感じられるあごだし含有液体調味料が得られるからである。
上記あごだし含有液体調味料が常圧加熱処理(レトルト殺菌処理をしない)の場合は、前記原材料を混合した後(つまり、前記あごだしに、前記した如きあごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を混合した後)、60℃以上90℃以下かつ60分以下達温以上の範囲で加熱処理することにより、あごだし含有液体調味料を製造することができる。
なお、ここで「魚節だし類」、「酵母エキス」、「醤油」、「糖類」、「有機酸及び/又は核酸」については、それぞれ上記あごだし含有液体調味料についての説明中に記載したとおりであり、また、「一定量」とは、上記あごだし含有液体調味料についての説明中に記載した、上記各成分の含有割合及びその好適割合を指している。
ここで風味の改善とは、あごだしを含有する液体調味料について感じられる生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味を改善することと、あごだしを含有する液体調味料について感じられる特有の繊細なうま味や好ましい香り(好ましい風味)を増強することとの両方を含むものである。
本実施例では、好ましい風味と不快風味を共に含有するあごだしの液体調味料に対する配合量(力価)の範囲についての検証を行なった。
これら試験例1〜12の条件と結果を表1に示す。
5:不快風味が弱い。
4:不快風味がやや弱い。
3:不快風味がある。
2:不快風味がやや強い。
1:不快風味が強い。
5:好ましい風味が強い。
4:好ましい風味がやや強い。
3:好ましい風味がある。
2:好ましい風味がやや弱い。
1:好ましい風味が弱い。
5:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善可。
4:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善やや可。
3:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善許容範囲。
2:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善やや難。
1:好ましい風味と不快風味のバランスの点で風味改善難。
ここでは、実施例1の結果から、風味の改善可能性の高いあごだしの配合量に調整した液体調味料に、表2に示す各種魚節だし類を加え、あごだしの風味改善が可能かどうかを検証した。
魚節だし類の配合による風味改善効果は、以下のそれぞれ5段階の基準で、試験例8を比較対照として、各試験例の「生臭み、苦味、エグ味、焦げ臭」(評価基準4:不快風味)、「うま味、香り」(評価基準5:好ましい風味)、「総合評価」(評価基準5)について評価した。評価は、品温を室温とし、専門のパネラー6名で行った(尚、評点の小数点以下は四捨五入した)。
これら試験例13〜22の条件と結果を、試験例8の条件と共に表2に示す。
5:不快風味がほとんど感じられず、優れている。
4:不快風味が弱く、やや優れている。
3:不快風味があるが、許容範囲。
2:不快風味がやや強く、やや劣る。
1:不快風味が強すぎて、劣る。
5:好ましい風味が強く、優れている。
4:好ましい風味がやや強く、やや優れている。
3:好ましい風味があり、許容範囲。
2:好ましい風味がやや弱く、やや劣る。
1:好ましい風味が弱く、劣る。
5:あごだしの好ましい風味が顕著に感じられ、特に優れている。
4:あごだしの好ましい風味が強く感じられ、優れている。
3:あごだしの好ましい風味が強く感じられ、やや優れている。
2:あごだしの好ましい風味がやや弱く感じられ、やや劣る。
1:あごだしの好ましい風味が弱く感じられ、劣る。
ここでは、実施例2において、各種魚節だし類が、あごだしの不快臭をマスキングし、好ましい風味を感じられやすくする作用が確認されたため、魚節だし類のあごだし含有液体調味料に対する配合量(力価)の範囲についての検証を行なった。
鰹だしは実施例2の試験例13と同様に調製し、表3に示す配合比で、あごだし含有液体調味料に添加・攪拌し、風味改善効果を評価した。評価は実施例2と同様にして行った。
これら試験例23〜34の条件と結果を、試験例13の条件と結果と共に表3に示す。
実施例2、3において、魚節だし類によるあごだしの不快風味マスキング効果及びその至適配合量の範囲が分かった。
そこで、ここでは、あごだしの好ましい風味をより増強できるか否かについて検証を行なった。
これら試験例35〜37の条件と結果を、試験例13の条件と結果と共に表4に示す。
ここでは、実施例4の結果、酵母エキスの添加により、あごだしの好ましい風味のみが増強されることが分かったため、あごだし含有液体調味料に対する酵母エキスの配合量(力価)の範囲についての検証を行なった。
これら試験例38〜45の条件と結果を、試験例37の条件と結果と共に表5に示す。
これら試験例46〜54の条件と結果を表6に示す。
5:あごだし含有液体調味料の風味バランスが特に改善されている。
4:あごだし含有液体調味料の風味バランスが改善されている。
3:あごだし含有液体調味料の風味バランスがやや改善されている。
2:あごだし含有液体調味料の風味バランスがやや改善されていない。
1:あごだし含有液体調味料の風味バランスが改善されていない。
これら試験例55〜63の条件と結果を表7に示す。
ここでは、実施例6、7と同様に、あごだし含有液体調味料の全体の味を考慮した場合における、風味のバランスを整え、呈味全体の底上げ(全体的な力価の増強)をするための有機酸及び/又は核酸の使用量の範囲について検証した。
これら試験例64〜83の条件と結果を表8(表8−1と表8−2)に示す。
本発明のあごだし含有液体調味料は、加熱殺菌処理される。そこでここでは、この加熱処理による本発明の作用効果に対する影響を検証した。
*:あごだしの不快風味が著しく強く、あごだし含有液体調味料の風味として不適。
**:あごだし含有液体調味料の呈味の底上げ(力価向上)感が認められ好ましい。
***:あごだし含有液体調味料の風味全体のバランスがよく、好ましい。
※:あごだしの好ましい風味が強く、風味全体のバランス、呈味の底上げ感が認められ特に好ましい。
よって、上記の通り、本発明によれば、生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味が改善され、あごだし特有の繊細なうま味や好ましい香りが増強された、あごだし含有液体調味料、及びその製造方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、あごだし液体調味料の風味を改善することができ、あごだしを含有する液体調味料について感じられる生臭みや苦味、エグ味、焦げ臭などの不快風味を改善すると共に、あごだしを含有する液体調味料について感じられる特有の繊細なうま味や好ましい香りを増強することができる。
それゆえ、本発明は食品産業の発展及び消費者の摂食行動に対して、確実に貢献することができるものと期待される。
Claims (13)
- あごだしを含有する液体調味料であって、
喫食時の前記液体調味料に対する、前記あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.05質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする、
あごだし含有液体調味料。 - 前記液体調味料が、あごだし以外の魚節だし類を含有することを特徴とする、
請求項1に記載のあごだし含有液体調味料。 - 前記魚節だし類が、鰹だし、サバだし、煮干しだしから選ばれる1種以上であって、かつ、
あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、
前記魚節だし類の抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)が、0.3質量部以上12質量部以下である、
ことを特徴とする、請求項2に記載のあごだし含有液体調味料。 - 前記液体調味料が、酵母エキスを含有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。
- 前記酵母エキスが、ビール酵母、パン酵母、トルラ酵母から選ばれる1種以上に由来するものであって、かつ、
あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対する、
前記酵母エキスの含有量が、0.1質量部以上5質量部以下である、
ことを特徴とする、請求項4に記載のあごだし含有液体調味料。 - 前記液体調味料が、醤油を含有し、かつ、
前記醤油の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.05質量%以上5質量%以下であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。 - 前記液体調味料が、糖類を含有し、かつ、
前記糖類の含有量が、喫食時の前記液体調味料に対して0.2質量%以上2質量%以下である、
ことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。 - 前記液体調味料が、有機酸及び/又は核酸を含有し、
前記有機酸が、コハク酸及び/又はコハク酸塩であって、
前記核酸が、イノシン酸又はその塩、及び/又は、グアニル酸又はその塩であって、かつ、
前記有機酸の含有量が、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対して、
0.03質量部以上0.3質量部以下であって、
前記核酸の含有量が、あごだしの抽出前の乾燥原料(水分15%に換算した場合)1質量部に対して、
0.03質量部以上0.7質量部以下である、
ことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。 - 前記液体調味料が、野菜煮込み用調味料であることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。
- 前記液体調味料が、レトルト調味料であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のあごだし含有液体調味料。
- あごだしに、あごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を混合した後、
60℃以上90℃以下かつ60分以下達温以上の範囲で加熱処理することを特徴とする、
あごだし含有液体調味料の製造方法。 - あごだしに、あごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を混合した後、
110℃以上130℃以下かつ60分以下5分以上の範囲でレトルト殺菌処理することを特徴とする、
あごだし含有液体調味料の製造方法。 - 請求項1に記載のあごだし含有液体調味料に、あごだし以外の魚節だし類、酵母エキス、醤油、糖類、有機酸、核酸から選ばれる1種以上を含有させることを特徴とする、あごだし含有液体調味料の風味の改善方法。
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