本発明に係る、無機材料製の円筒状炉芯管を備える外熱式の連続式焼成炉を用いた焼成原料の焼成方法を詳細に説明する。
本発明に係る焼成原料の焼成方法は、無機材料製の円筒状炉芯管を備えその両端部の中間にヒータ加熱領域がある外熱式の連続式焼成炉を用いて、前記円筒状炉芯管の一端に備わる焼成原料供給口から前記円筒状炉芯管の内部に供給した焼成原料を前記ヒータ加熱領域内で焼成し、焼成物を前記円筒状炉芯管の他端に備わる焼成物送出口より送出する、焼成原料の焼成方法であって、前記円筒状炉芯管は、前記焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域における前記円筒状炉芯管の厚みの最小値が、前記焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所における前記円筒状炉芯管の厚みの最大値より大きいこと、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.5倍以上、特に好ましくは1.8倍以上大きいことを特徴とする焼成原料の焼成方法である。
本発明に係る焼成物は、焼成原料を焼成することにより生成する物質であれば特に限定されないが、焼成に高い温度、例えば1000℃以上の温度を要する物質が好ましい。金属窒化物、金属炭化物、金属酸化物などの結晶質の無機粉末が好ましく、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、アルミナ、マグネシア、ジルコニアなどが挙げられるが、焼成に特に高温を要する窒化物、なかでも窒化ケイ素が好ましい。
本発明に係る焼成原料は、焼成されることで前記焼成物を生成する物質であれば良く、窒化や酸化により金属窒化物や金属酸化物を生成する金属粉末、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属ハロゲン化物などの金属化合物、結晶質物の前駆体である非晶質物、複合金属酸化物を生成する複数の金属酸化物などの金属化合物などがあげられる。
焼成原料が焼成に伴って発熱する場合は、従来の無機材料製の炉芯管は、その加熱時にも炉芯管が破損しやすくなるが、本発明の焼成方法はその抑制にも効果があり、好ましい。焼成原料が焼成に伴って発熱する反応としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、ランタン、セリウム、カルシウム、ストロンチウム等の金属粉末からなる焼成原料をアンモニアや窒素ガス中で1200〜1500℃の温度で焼成し、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ランタン、窒化セリウム、窒化カルシウム、窒化ストロンチウム等の焼成物を合成する直接窒化反応が挙げられる。また、金属窒化物と窒素或いはアンモニアとの反応や金属イミドの熱分解反応が挙げられる。なかでも、窒化ケイ素の焼成原料である非晶質Si−N(−H)系化合物は特に発熱が大きく、特に本発明の効果が顕著である。なお、非晶質Si−N(−H)系化合物については後述する。
本発明に係る無機材料製の円筒状炉芯管を備える外熱式の連続式焼成炉(以下、外熱式の連続焼成炉、または連続焼成炉と略記することがある)について説明する。
本発明に係る、円筒状炉芯管を備える外熱式の連続式焼成炉とは、円筒状炉芯管を外部から加熱するヒータを備えており、焼成原料を円筒状炉芯管の一端に備えられた焼成原料投入口から円筒状炉芯管の内部に供給して流動させながら内部で焼成する円筒状炉芯管を備える焼成炉のことであり、例えば、円筒状炉芯管を備える外熱式のロータリーキルン炉、シャフトキルン炉、流動化焼成炉等が挙げられる。円筒状炉芯管を備える外熱式のロータリーキルン炉とは、焼成原料を円筒状炉芯管の回転により長手方向に平行移動させながら加熱処理する焼成炉である。円筒状炉芯管を備える外熱式のシャフトキルン炉とは、主に縦型の円筒状炉芯管を備えており、焼成原料を円筒状炉芯管の上部から供給し、焼成物を下部から連続的に排出することで被焼成物が円筒状炉芯管の上部から下部に移動することで加熱処理する手法である。筒状炉芯管を備える外熱式の流動化焼成炉とは、主に縦型の円筒状炉芯管を備えており、円筒状炉芯管内部に設置された分散板の下部からガスを供給することで円筒状炉芯管内部の被焼成物を流動化させながら加熱処理する焼成炉である。一般に焼成原料は円筒状炉芯管の上部から供給され、外部から加熱された円筒状炉芯管内部に導入される。導入された焼成原料は流動化された状態で焼成され、焼成された粉末は一般には分散板の直上に設置された排出口から排出される。
また、本発明に係る外熱式の連続式焼成炉は無機材料製の円筒状炉芯管を備える。無機材料製の円筒状炉芯管としては、特に限定されないが、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミックス製の円筒状炉芯管が挙げられ、炭化ケイ素製の円筒状炉芯管が好ましい。炭化ケイ素は、耐環境性、耐熱性、耐磨耗性に優れ、高強度、高熱伝導、低熱膨張、低比重であることから、連続式焼成炉の円筒状炉芯管の材料に適している。炭化ケイ素の中でも高温強度、耐食性、耐磨耗性に優れる常圧焼結炭化ケイ素が好ましい。一般に、炭化ケイ素製炉芯管は高価なことから、長期間破損させることなく運転できれば、その経済的効果は非常に大きい。
本発明に係る円筒状炉芯管は、その一端に焼成原料供給口を、他端に焼成物送出口を備えており、焼成原料供給口より炉芯管内部に供給された焼成原料を、炉芯管内部を流動させながら焼成物送出口に向かって移動させる仕組みを有している。例えば、ロータリーキルン炉の場合は、焼成原料供給口が焼成物送出口より高い位置になるよう炉芯管が傾斜して設置されており、炉芯管が回転することで、焼成原料は焼成原料供給口から焼成物送出口に、炉芯管内を流動しながら移動する。例えば、シャフトキルン炉の場合は、円筒状炉芯管の内部は被焼成物で満たされており、焼成原料は円筒状炉芯管の上部に備えられた焼成原料供給口から供給され、焼成物は円筒状炉芯管の下部に備えられた焼成物送出口から排出されることによって、炉芯管内を流動しながら移動する。例えば、流動化焼成炉の場合は、流動化ガスの流量を調整することにより、円筒状炉芯管の上部に備えられた原料供給口から供給された焼成原料は、流動化ガスにより流動化するが、加熱焼成されることで流動性が変化し分散板上部に堆積する。そして、焼成物が分散板の直上に供えられた焼成物送出口から排出されることによって焼成原料は焼成原料供給口から焼成物送出口に、炉芯管内を流動しながら移動する。炉芯管外部に設けられたヒータによって炉芯管が加熱されることによって、焼成原料は炉芯管内を流動しながら焼成され、焼成物送出口から送出される際には、焼成物に転換されている。
本発明の円筒状炉芯管のヒータ加熱領域とは、円筒状炉芯管の外周にあるヒータが筒状炉芯管を所定の温度に制御可能に加熱できる領域であるが、本発明では、実用的に、ヒータ自体の実質的な発熱領域と対応する円筒状炉芯管の領域としてもよい。後者の場合、ヒータが複数の個別ヒータの集合体である場合にはそれらの個別ヒータの間の間隙部分はヒータ加熱領域に含まれるが、ヒータ又は複数の個別ヒータの集合体の両端より外側にあって間接的に加熱される部分は除外される。本発明では、このヒータ加熱領域の内部に下記の付着物付着領域があるように温度制御されることが望ましい。
焼成過程で円筒状炉芯管の内壁に焼成物などの付着物が付着する領域は、焼成原料や焼成物の種類、焼成温度や焼成する際の昇温速度などの焼成条件などによってまちまちであるが、ヒータ加熱されている間、すなわち、焼成原料が加熱されて昇温を開始したときから焼成温度に保持されて、さらには降温している間のうち、焼成物の結晶化が開始し終了するまでの領域、焼成原料間の反応が開始し終了するまでの領域であることが多い。したがって、円筒状炉芯管の内壁に付着する付着物には、得られる最終生成物だけでなく、焼成原料から最終生成物までの間の中間生成物も含まれる。また、付着物が円筒状炉芯管の内壁に付着する領域は、焼成後の炉芯管の内部を工業用内視鏡にて観察することで特定することができる。ここで円筒状炉芯管の内壁への付着物の付着領域は、それ自体または同等の円筒状炉芯管を用いて、少なくとも1回(上限は実用される回数であり、限定されないが、通常たとえば10回以下としてよい。)の焼成後に、厚さ5mm以上の付着が見られたとき、付着領域と判断する。焼成の回数を変えて測定すると、付着領域が相互に完全に一致しないことがあるとしても、付着領域の端部は付着物の付着量が少なく熱履歴における付着物の影響も小さいので、実測された付着領域が本発明の所定の厚みを有していれば本発明の効果を得るには十分である。
本発明においては、焼成原料の焼成時に、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所が、焼成過程で前記円筒状炉芯管の内壁に付着物が付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置するように前記円筒状炉芯管を加熱することに加えて、前記円筒状炉芯管に、前記焼成の過程で前記円筒状炉芯管の内壁に付着物が付着する領域における前記円筒状炉芯管の厚みの最小値を、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所における前記円筒状炉芯管の厚みの最大値より大きくした円筒状炉芯管を用いる。本発明の効果は、前記付着物付着領域における前記円筒状炉芯管の厚みの最小値を、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所における前記円筒状炉芯管の厚みの最大値より1.3倍以上大きくした円筒状炉芯管を用いると顕著になり、1.5倍以上大きくした円筒状炉芯管を用いるとさらに顕著になり、1.8倍以上大きくした円筒状炉芯管を用いると特に顕著になる。なお、好ましい態様において、焼成の過程で円筒状炉芯管の内壁に付着物が付着する領域における円筒状炉芯管の厚みは一定であることができる。さらに好ましくは、焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所が、焼成原料供給口と付着物付着領域の間、及び、付着物付着領域と焼成物送出口の間にそれぞれ存在し、円筒状炉芯管の付着物付着領域における円筒状炉芯管の厚みの最小値が、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になるそれぞれの箇所における円筒状炉芯管の厚みの最大値より大きくした円筒状炉芯管、好ましくは1.3倍以上、より好ましくは1.5倍以上、特に好ましくは1.8倍以上大きくした円筒状炉芯管を用いる。
また、前記焼成の過程で前記円筒状炉芯管の内壁に付着物が付着する領域における前記円筒状炉芯管の厚みの最小値は、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所における前記円筒状炉芯管の厚みの最大値の7倍以下であることが好ましい。前記円筒状炉芯管の厚みがこれより大きくなると、炉芯管の製造コストや、焼成時の消費電力が大きくなることがあるからである。
また、さらに好ましくは、前記円筒状炉芯管に、前記焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域における前記円筒状炉芯管の厚みの最小値を、前記焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大でないが極大になる焼成物の結晶化が開始し終了するまでの領域、焼成原料間の反応が開始し終了するまでの領域(ヒータ加熱領域内にある箇所を除く。)における前記円筒状炉芯管の厚みの最大値より大きくした円筒状炉芯管を用いる。ここで厚みの差は実質的であればよいが、たとえば、1.3倍以上、さらには1.5倍以上、1.8倍以上であることができる。
ここで、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大又は極大になる箇所とは、究極的には点であるが、実際的には、所定の間隔で温度を測定して温度勾配の変化率を求める領域を意味する。さらには、50mmの間隔で測定して焼成時の温度勾配の変化率の絶対値を求め、その絶対値が最大又は極大になる点を中心とし両側に各50mm(合計100mm)の幅の領域の厚みの最大値が上記の条件を満たすことが望ましい。
基本的には、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大又は極大になる箇所の厚みが上記の条件を満たせばよく、実際のところ、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大又は極大になる箇所の厚みに対してその周囲の領域の厚みをそれより厚くしなければならない格別の理由はないし、またその周囲の厚みは焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大又は極大になる箇所、領域の厚み以上に制約しなければならない理由もない。1つの好ましい態様では、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大又は極大になる箇所を含む、ヒータ加熱領域の端部と円筒状炉芯管の端部の間の領域の全体の厚みの最大値を、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大又は極大になる箇所の厚みの最大値とすることができる。1つの好ましい態様では、ヒータ加熱領域の端部と円筒状炉芯管の端部の間の領域を一定の厚さにすることができる。
本発明に係る円筒状炉芯管は、焼成時、長手方向に温度分布を有する。焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所とは、円筒状炉芯管の長手方向の温度分布で温度変化率が最大になる箇所のことであり、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所は、焼成時の炉芯管内部の長手方向の温度分布を測定することで特定することができる。
焼成過程で円筒状炉芯管の内壁に付着物が付着する領域も、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所も、円筒状炉芯管に対するヒータの設置位置や、ヒータの温度を調節することで調節することができる。通常は、炉芯管のヒータ出入口部付近の二箇所が、焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大(極大)になる箇所になり、それらの少なくとも一方が、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所になるので、焼成過程で円筒状炉芯管の内壁に付着物が付着する領域が、これらの二箇所よりヒータ内部に入るように、ヒータの温度を調節して円筒状炉芯管内部の温度分布を制御すれば良い。そして、焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大になる当該二箇所における円筒状炉芯管の厚みの最大値より、付着物付着領域における円筒状炉芯管の厚みの最小値が1.3倍以上、さらに1.5倍以上、特に1.8倍以上大きいことがより好ましい。
上記の如く、焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所は、付着物付着領域と焼成物送出口の間、及び、付着物付着領域と焼成原料供給口の間に存在し、さらには円筒状炉芯管のヒータ加熱領域の出口側端の近く、及び、円筒状炉芯管のヒータ加熱領域の入口側端部の近くに存在することができるが、1つの好ましい態様によれば、焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大ではないが極大になる箇所が、付着物付着領域と焼成物送出口の間、又は、付着物付着領域と焼成原料供給口の間に存在することがある。このような場合に、円筒状炉芯管は、焼成物が円筒状炉芯管の内壁に付着する領域における円筒状炉芯管の厚みの最小値が、焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大にならないが極大になる箇所(ヒータ加熱領域を除く。)における円筒状炉芯管の厚みの最大値より大きいことが好ましい。
また、本発明の1つの好ましい態様によれば、円筒状炉芯管が、焼成原料供給口側から焼成物送出口側に向かって順に第1の部位から第5の部位を有し、第1の部位が焼成時の昇温領域で温度勾配の変化率の絶対値が最大になる第1の箇所を含みかつ第1の厚さを有し、第2の部位が第1の厚さから第2の厚さまで増加する傾斜した厚さを有し、第3の部位が付着物付着領域を含みかつ第2の厚さを有し、第4の部位が第2の厚さから第3の厚さまで減少する傾斜した厚さを有し、第5の部位が焼成時の降温領域で温度勾配の変化率の絶対値が最大になる第2の箇所を含みかつ第3の厚さを有し、第2の厚さが第1の厚さおよび第5の厚さの1.3倍以上、1.5倍以上、さらには1.8倍以上であることができる。
また本発明は、円筒状炉芯管の内径が150mm〜350mmであることが好ましい。また本発明は、円筒状炉芯管の第1の部位の長さが400mm〜2400mm、第2の部位の長さが5mm〜200mm、第3の部位の長さが400mm〜2400mm、第4の部位の長さが5mm〜200mm、第5の部位の長さが400mm〜2400mmであることが好ましい。
各領域における円筒状炉芯管の厚みの最小値および最大値とは、その領域で最も厚みが小さい個所の厚み、および最も厚みが大きい個所の厚みのことであり、各個所における炉芯管の厚みの最小値および最大値は、超音波厚さ計で測定することができる。
焼成物が円筒状炉芯管の内壁に付着する領域における円筒状炉芯管の厚みの最小値を、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所(さらには極大になる箇所)における前記円筒状炉芯管の厚みの最大値より有意に大きくすることで、加熱中あるいは冷却中に発生する円筒状炉芯管の破損を抑制しながらも、安定した品質の焼成物を製造することが可能になる。円筒状炉芯管の付着物付着領域の厚みを大きくしながら、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大又は極大になる箇所の厚みを小さくすることで、焼成時における付着物に起因する熱歪に基づく破損と、焼成のための温度分布に基づく熱歪に基づく破損の両方を、防止、抑制することができる。ここで、安定した品質の焼成物とは、原料の非晶質成分の残留が少ない焼成物や、原料の未反応成分や中間生成物の残留が少ない焼成物のことをいう。
上述の通り、本発明に係る円筒状炉芯管は炭化ケイ素製であることが好ましく、円筒状炉芯管が炭化ケイ素製である場合は、前記炉芯管付着物付着領域における前記円筒状炉芯管の内径に対する厚みの比が0.07(mm/mm)以上であることが好ましい。前記炉芯管付着物付着領域における前記円筒状炉芯管の内径に対する厚みの比がこの範囲であれば、円筒状炉芯管の破損が特に良く抑制される。また、前記炉芯管付着物付着領域における前記円筒状炉芯管の内径に対する厚みの比は、0.16(mm/mm)以下であることがさらに好ましい。前記炉芯管付着物付着領域における前記円筒状炉芯管の内径に対する厚みの比がこの範囲であれば、品質が特に安定した焼成物を製造することが可能である。特に、前記炉芯管付着物付着領域における前記円筒状炉芯管の内径に対する厚みの比が、0.08(mm/mm)以上、0.15(mm/mm)以下であることが好ましい。
また、本発明に係る円筒状炉芯管において、前記炉芯管付着物付着領域における円筒状炉芯管の厚みの平均値をAとし、焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大、極大になる箇所における前記円筒状炉芯管の厚みをBとすると、円筒状炉芯管が炭化ケイ素製である場合、これらの比A/Bは1.5(mm/mm)以上、さらに1.8(mm/mm)以上であることが好ましい。前記A/Bが1.5(mm/mm)以上、さらに1.8(mm/mm)以上であれば、円筒状炉芯管の破損が特に良く抑制され、また品質が特に安定した焼成物を製造することが可能である。比A/Bは、さらに1.9(mm/mm)以上、1.95(mm/mm)以上、特に2.0(mm/mm)以上であることが好ましい。温度勾配の変化率の絶対値が最大、極大になる箇所が或る領域として測定される場合には、その領域の厚みの平均値をその厚みとしてよい。
次に、本発明に係る焼成原料の焼成方法について、非晶質Si−N(−H)系化合物を、図1に示すロータリーキルン炉を用いて焼成し、窒化ケイ素を製造する、非晶質Si−N(−H)系化合物の焼成方法を一例として、さらに詳細に説明する。
はじめに、本発明に係る外熱式のロータリーキルン炉について、図1に示すロータリーキルン炉を参照して説明する。本発明に係る外熱式のロータリーキルン炉には、円筒状炉芯管1と、円筒状炉芯管1の一部(中央部)の外側(外周)にヒータ2が備えられている。円筒状炉芯管1には、円筒状炉芯管1の一端に焼成原料供給口3が、他端に焼成物送出口5が備えられており、円筒状炉芯管1は、焼成原料供給口3が焼成物送出口5より高い位置になるように設置されている。焼成原料は円筒状炉芯管1の一端に備えられた焼成原料供給口3から円筒状炉芯管1内に導入される。焼成原料は、円筒状炉芯管1の回転により加熱領域(ヒータ加熱領域)4に移動し、加熱領域4を焼成物送出口5に向かって流動しながら、ヒータ2により加熱された円筒状炉芯管1からの伝熱によって加熱され、焼成される。焼成され得られた焼成物は焼成物送出口5より送出される。
前記ロータリーキルン炉を用いて焼成原料を焼成し焼成物を製造すると、円筒状炉芯管1には、焼成物の一部がその内壁の一部、炉芯管付着物付着領域6に付着し、焼成を繰り返すことでそれが堆積し、炉芯管付着物層7を形成する。
本発明においては、円筒状炉芯管1における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所が、炉芯管付着物付着領域6と円筒状炉芯管1の一端との間に位置するように円筒状炉芯管1を加熱する。外熱式ロータリーキルン炉の円筒状炉芯管においては、通常、ヒータから露出する部分が、焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所になる。円筒状炉芯管1においても、円筒状炉芯管1がヒータ2から露出するヒータに隣接する部分8が、円筒状炉芯管1において焼成時の昇温領域及び降温領域のそれぞれにおいて温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所になるので、円筒状炉芯管1がヒータ2から露出するヒータに隣接する部分8が、炉芯管付着物層7と円筒状炉芯管1の一端との間に位置するように、ヒータ2の設置位置や温度条件を設定し、ヒータ2により円筒状炉芯管1を加熱し、焼成原料を焼成する。それに加えて、本発明においては、円筒状炉芯管1がヒータ2から露出するヒータに隣接する部分8の円筒状炉芯管1の厚みを、円筒状炉芯管の炉芯管付着物付着領域6の厚みより有意に小さくした円筒状炉芯管1を用いる。
次に、本発明に係る窒化ケイ素の原料である非晶質Si−N(−H)系化合物について説明する。
本発明に係る非晶質Si−N(−H)系化合物とは、シリコンジイミド、シリコンテトラアミド、シリコンクロルイミド等の含窒素シラン化合物の一部又は全てを加熱分解して得られるSi、N及びHの各元素を含む非晶質の化合物、又は、Si及びNを含む非晶質窒化ケイ素のことであり、以下の組成式(1)で表される。
Si6N2x(NH)12−3x・・・・(1)
(ただし、式中x=0.5〜4であり、組成式には明記しないが、不純物としてハロゲンを含有する化合物を含む)
なお、本発明においては、非晶質Si−N(−H)系化合物は、組成式(1)において、x=0.5で表されるSi6N1(NH)10.5からx=4で表される非晶質Si3N4までの一連の化合物を総て包含しており、x=3で表されるSi6N6(NH)3はシリコンニトロゲンイミドと呼ばれている。
本発明に係る含窒素シラン化合物としては、シリコンジイミド、シリコンテトラアミド、シリコンクロルイミド等が用いられる。これらの化合物は以下の組成式(2)で表される。本発明においては、便宜的に、以下の組成式(2)においてy=8〜12で表される含窒素シラン化合物をシリコンジイミドと表記する。
Si6(NH)y(NH2)24−2y・・・・(2)
(ただし、式中y=0〜12であり、組成式には明記しないが、不純物としてハロゲンを含有する化合物を含む)
本発明に係る非晶質Si−N(−H)系化合物粉末は、公知方法、例えば、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四沃化ケイ素等のハロゲン化ケイ素とアンモニアとを気相で反応させる方法、液状の前記ハロゲン化ケイ素と液体アンモニアとを反応させる方法等によって製造される。
また、本発明に係る非晶質Si−N(−H)系化合物粉末としては、公知方法、例えば、前記含窒素シラン化合物を窒素又はアンモニアガス雰囲気下に1200℃以下の温度で加熱分解する方法、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四沃化ケイ素等のハロゲン化ケイ素とアンモニアとを高温で反応させる方法等によって製造されたものが用いられる。
以上の非晶質Si−N(−H)系化合物を、図1に示す、円筒状炉芯管1を備えるロータリーキルン炉を用いて焼成し窒化ケイ素を製造する。そして、円筒状炉芯管1は炭化ケイ素製である。非晶質Si−N(−H)系化合物を窒素含有不活性ガス雰囲気下又は窒素含有還元性ガス雰囲気下、1400〜1700℃の温度で焼成することにより結晶質窒化ケイ素粉末が得られるが、このとき1000〜1400℃の温度範囲で窒化ケイ素の結晶化が起こり、同時に、窒化ケイ素および/または結晶化前の非晶質Si−N(−H)系化合物が円筒状炉芯管1の内壁に付着する。ロータリーキルン炉を用いて、以上の窒化ケイ素の製造を繰り返すと、炉芯管内壁の一部に炉芯管付着物層7が形成される。
炉芯管付着物層7が形成された円筒状炉芯管1には、円筒状炉芯管の冷却時に、円筒状炉芯管1と炉芯管付着物層7との熱膨張係数の違いによって応力が発生する。炭化ケイ素製の円筒状炉芯管1は、弾性率が高いので、温度分布により生じる熱膨張差による変位で大きな熱応力が発生する。それに加えて炭化ケイ素製品は脆性的なので、炉芯管付着物付着領域における前記円筒状炉芯管の内径に対する厚みの比が0.07(mm/mm)未満である外径および内径が一定の形状の、従来の炉芯管の場合、この応力を緩和できず破損に至ることがある。
これに対して、焼成原料の焼成時に、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置するように前記円筒状炉芯管を加熱することに加えて、本発明に係る円筒状炉芯管1のように、円筒状炉芯管がヒータから露出する部分8の厚み、すなわち、円筒状炉芯管1において焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所の厚みが炉芯管付着物付着領域6の厚みより有意に小さい円筒状炉芯管を用いると、非晶質Si−N(−H)系化合物の焼成を繰り返しても、運転中の円筒状炉芯管の破損が抑制される。
また、非晶質Si−N(−H)系化合物を焼成して窒化ケイ素を製造する場合、その焼成工程において、結晶化熱による発熱で非晶質Si−N(−H)系化合物の温度が短時間に急激に上昇する。円筒状炉芯管には、さらに大きな熱応力が発生するので、本発明に係る円筒状炉芯管1を用いる窒化ケイ素の製造方法は、円筒状炉芯管を破損させることなく、品質が安定した窒化ケイ素を得るに特に有効な製造方法である。特に、非晶質Si−N(−H)系化合物を焼成して窒化ケイ素を製造するにあたっては、炉芯管付着物付着領域6の厚みが、内径に対する比で0.07(mm/mm)以上である(すなわち、炉芯管付着物付着領域における前記円筒状炉芯管の内径に対する厚みの比が0.07(mm/mm)以上である)、炭化ケイ素製の円筒状炉芯管1を用いることが好ましい。本発明では、炉芯管付着物付着領域6の厚みが、内径に対する比で0.08(mm/mm)以上、0.09(mm/mm)以上、0.10(mm/mm)以上であることができる。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(付着物が炉芯管の内壁に付着する領域の特定方法)
付着物が炉芯管内壁に付着する領域は、以下の方法で特定した。運転後の円筒状炉芯管の内部を工業用内視鏡(株式会社佐藤商事製工業用内視鏡PRO3EX)を挿入し、円筒状炉芯管の長手方向の位置を特定しながら付着状況を観察した。その付着状況から付着物領域を特定した。
(円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大(または極大)になる箇所の確認方法)
円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大(または極大)になる箇所の確認は、本発明においては以下の方法で行った。
円筒状炉芯管を所定の焼成温度に加熱し、温度が安定したところで、円筒状炉芯管の原料供給口側の一端から熱電対を挿入し、焼成物送出口側に向かって移動させながら、原料供給口側から焼成物送出口側に向かって順に50mm間隔で、炉芯管内壁の温度を測定した。
得られた各温度測定点Xにおける温度TX(℃)と、それより焼成物送出口側に向かって50mmの位置の温度測定点X+50における温度TX+50(℃)と、それら温度測定点の間隔50mmから、これら温度測定点の中間の位置X+25における温度勾配ΔTX+25(℃/mm)を、以下の式(3)を用いて算出した。
ΔTX+25=(TX+50−TX)/50・・・・・(3)
各温度勾配算出点X+25における温度勾配ΔTX+25(℃/mm)と、それより原料供給口側に向かって50mmの位置の温度勾配算出点X−25における温度勾配ΔTX−25(℃/mm)と、それら温度勾配算出点の間隔50mmから、これら温度勾配算出点の中間の位置(=温度測定点X)における温度勾配の変化率の絶対値ΔTX/L((℃/mm)/mm)を、以下の式(4)を用いて算出した。ここで、温度勾配の変化率の絶対値ΔTX/L((℃/mm)/mm)とは、炉芯管の長手方向の距離に対する温度勾配の変化率の絶対値のことである。
ΔTX/L=|(ΔTX+25−ΔTX−25)/50|・・・・・(4)
以上により算出された、各温度測定点の温度勾配の変化率の絶対値ΔTX/L((℃/mm)/mm)から、その最大値または極大値を示す温度測定点を特定した。そして、その温度測定点から原料供給口側に向かって50mmの位置と、その温度測定点から焼成物送出口側に向かって50mmの位置とに挟まれる範囲、すなわち、以上の方法によって特定された、温度勾配の変化率の絶対値が最大値または極大値を示す温度測定点を中心として、炉芯管の長手方向に前後50mmの範囲に、本発明の円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大または極大になる箇所があることを確認した。
(窒化ケイ素粉末の結晶化度の測定方法)
精秤した窒化ケイ素粉末を0.5NのNaOH水溶液に加えて100℃に加熱した。窒化ケイ素の分解により発生したNH3ガスを1%ホウ酸水溶液に吸収させ、得られた吸収液中のNH3量を0.1N硫酸標準溶液で滴定した。吸収液中のNH3量と窒化ケイ素粉末の質量から、分解窒素の窒化ケイ素に対する質量割合(窒化ケイ素が分解して生成した窒素の、窒化ケイ素に対する質量割合)を算出した。窒化ケイ素粉末の結晶化度は、分解窒素の窒化ケイ素に対する質量割合と、窒化ケイ素に含まれる窒素の、窒化ケイ素に対する理論質量割合39.94%から、下記の式(5)により算出した。
結晶化度(%)=100−(分解窒素の窒化ケイ素に対する質量割合×100/39.94)・・・・(5)
(Si−N(−H)系化合物の製造)
20℃に保たれた直径40cm、高さ60cmの縦型耐圧反応槽内の空気を窒素ガスで置換した後、反応槽内に40リットルの液体アンモニア及び5リットルのトルエンを仕込んだ。反応槽内で、液体アンモニア及びトルエンをゆっくり攪拌しながら、液体アンモニアを上層に、トルエンを下層に分離した。予め調製した2リットルの四塩化ケイ素と0.1質量%の水分を含む6リットルのトルエンとからなる溶液(反応液)を、導管を通じて、ゆっくり撹拌されている反応槽内の下層に供給した。このとき、反応槽内に供給された四塩化ケイ素と反応槽内の液体アンモニアの体積比は5/100である。前記溶液の供給と共に、上下層の界面近傍に白色の反応生成物が析出した。反応終了後、反応槽内の反応生成物及び残留液を濾過槽へ移送し、反応生成物を濾別して、液体アンモニアで4回バッチ洗浄し、約1kgの比表面積が1400m2/gのシリコンジイミドを得た。
得られたシリコンジイミドを、直径150mm、長さ2800mm(加熱長1000mm)のロータリーキルン炉の原料ホッパに充填し、ロータリーキルン炉内を13Pa以下に真空脱気した後、酸素を2%含有する窒素ガスを全ガス量流量250NL/時間で供給し、加熱を開始した。ロータリーキルン炉の炉内が最高温度(1000℃)に達したところで原料供給スクリューフィーダーを回転させ、シリコンジイミドを3kg/時間の供給速度で原料ホッパから炉内に供給した。キルンの傾斜角度を2度、回転数を1rpmとし、最高温度での保持時間を10分として、シリコンジイミドを加熱して実施例1に係る非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を得た。実施例及び比較例に係る非晶質Si−N(−H)系化合物粉末は、比表面積が450m2/gであり、酸素含有割合が0.73質量%の、組成式Si6N8.4H1.2で表される、すなわち前記組成式(1)のSi6N2x(NH)12−3xにおいて式中のxが3.6である化合物粉末であった。
(実施例1)
(Si−N(−H)系化合物の製造)で説明した方法で得られた非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を、炭化ケイ素製の円筒状炉芯管を備える、次の外熱式ロータリーキルン炉を用いて焼成した。実施例1に係る外熱式ロータリーキルン炉に備わる円筒状炉芯管は、長さが2300mmで、一端から他端まで180mmの一定の内径を有しており、領域によって異なる外径(すなわち異なる厚み)を有している。円筒状炉芯管の厚みは、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって750mmまでの領域と、1550mmから2300mmの領域の領域が7mmであり、850mmから1450mmの領域が15mmである。また、750mmから850mmの領域が7mmから15mmまで一定の割合で大きくなっており、1450mmから1550mmの領域が15mmから7mmまで一定の割合で小さくなっている。円筒状炉芯管を加熱するヒータは、長さが1050mmであり、円筒状炉芯管の被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって625mmから1675mmの領域を覆うように設置されている。また、加熱ヒータは、個別の温度制御が可能な6つの独立したヒータ(被焼成原料供給口側から順にヒータ1〜ヒータ6)から構成されている。
以上の外熱式ロータリーキルン炉を用いて、次のようにして非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を焼成した。ロータリーキルン炉の原料ホッパに、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を充填した。ロータリーキルン炉の炉芯管内を窒素ガスで十分に置換した後、窒素ガス流通雰囲気下で、ヒータに通電して炉芯管を加熱した。炉心管内の最高温度を1500℃とし、炉芯管の被焼成原料供給口側では、炉芯管における窒化ケイ素の結晶化が始まる温度の位置、すなわち1200℃の位置がヒータにより直接加熱される領域に入るように、ヒータ1の温度を1100℃に、ヒータ2の温度を1230℃に、ヒータ3の温度を1370℃に設定し、ヒータ4〜6の温度を1500℃に設定し昇温した。炉心管内の温度分布が安定した後に、原料供給スクリューフィーダーを回転させ、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を1.0kg/時間の供給速度で原料ホッパから炉心管内に供給した。炉心管の回転数を2rpm、炉心管の水平方向に対する傾斜角度を2°として、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を流動させながら加熱し、焼成した。
この際、円筒状炉芯管において、温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所の特定を、(円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大(または極大)になる箇所の特定方法)にて説明した方法によって特定した。炉芯管内壁の温度分布(各温度測定点における温度)を図2に、それらの温度より算出された各温度測定点の中間位置における温度勾配を図3に、また、それらの温度勾配より算出された、各温度測定点における温度勾配の変化率を図4に示す。図4において、温度勾配の変化率の絶対値が極大になるのは、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって600mmの箇所と、1700mmの箇所であることがわかった。これらの結果から、実施例1においては、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲に、温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所があることが特定された。
非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間行って、窒化ケイ素粉末を製造し、その後、ロータリーキルン炉円筒状炉芯管を室温まで冷却した。円筒状炉芯管の冷却後、(付着物が炉芯管の内壁に付着する領域の特定方法)にて説明した方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。
これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置しており、焼成物が円筒状炉芯管の内壁に付着する領域における円筒状炉芯管の厚みの最小値が、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所における前記円筒状炉芯管の厚みの最大値より大きいことを確認した。
以上の焼成処理を30回繰り返し、焼成処理を30回実施した後でも炉芯管が破損しないことを確認した。焼成処理を繰り返す過程において、(付着物が炉芯管の内壁に付着する領域の特定方法)にて説明した方法によって、15回と30回の処理後に、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域とその厚みを測定した。焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域はいずれの処理後でも、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、焼成処理を繰り返しても、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が最大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置することが維持されていることを確認した。また、付着物の厚みは、15回処理後が1.0mm、30回処理後が2.1mmであることがわかった。付着物は、X線回折測定の結果から、α-Si3N4であることが確認された。また、30回目の焼成処理時に得られた窒化ケイ素粉末の結晶化度を(窒化ケイ素粉末の結晶化度の測定方法)にて説明した方法によって測定し、その結晶化度が100%であることを確認した。
(実施例2)
厚みが、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって750mmまでの領域と、1550mmから2300mmの領域の領域が10mm、850mmから1450mmの領域が20mm、また、750mmから850mmの領域が10mmから20mmまで一定の割合で大きくなっており、1450mmから1550mmの領域が20mmから10mmまで一定の割合で小さくなっていること以外は実施例1と同様の円筒状炉芯管を有するロータリーキルン炉を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素粉末を製造した。
この際、実施例1と同様の方法で、円筒状炉芯管の温度分布を測定し、その結果から、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲にあることを特定した。実施例1と同様に、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間原料供給し、窒化ケイ素粉末を製造した。円筒状炉芯管の冷却後、実施例1と同様の方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置しており、焼成物が円筒状炉芯管の内壁に付着する領域における円筒状炉芯管の厚みの最小値が、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所における前記円筒状炉芯管の厚みの最大値より大きいことを確認した。
実施例1と同様に、以上の焼成処理を30回繰り返し、焼成処理を30回実施した後でも炉芯管が破損しないことを確認した。
実施例1と同様の方法で、15回と30回の処理後に、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域とその厚みを測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、いずれの処理後でも、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。付着物の厚みは、15回処理後が1.0mm、30回処理後が2.1mmであることがわかった。付着物は、X線回折測定の結果から、α−Si3N4あることが確認された。また、30回目の焼成処理時に得られた実施例2の窒化ケイ素粉末は、結晶化度が100%であった。
(実施例3)
厚みが、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって750mmまでの領域と、1550mmから2300mmの領域の領域が14mm、850mmから1450mmの領域が28mm、また、750mmから850mmの領域が14mmから28mmまで一定の割合で大きくなっており、1450mmから1550mmの領域が28mmから14mmまで一定の割合で小さくなっていること以外は実施例1と同様の円筒状炉芯管を有するロータリーキルン炉を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素粉末を製造した。
この際、実施例1と同様の方法で、円筒状炉芯管の温度分布を測定し、その結果から、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲にあることを特定した。実施例1と同様に、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間原料供給し、窒化ケイ素粉末を製造した。円筒状炉芯管の冷却後、実施例1と同様の方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。
実施例1と同様に、以上の焼成処理を30回繰り返し、焼成処理を30回実施した後でも炉芯管が破損しないことを確認した。
実施例1と同様の方法で、15回と30回の処理後に、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域とその厚みを測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、いずれの処理後でも、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。付着物の厚みは、15回処理後が1.0mm、30回処理後が2.1mmであることがわかった。付着物は、X線回折測定の結果から、α−Si3N4あることが確認された。また、30回目の焼成処理時に得られた実施例3の窒化ケイ素粉末は、結晶化度が100%であった。
(比較例1)
厚みが、全ての領域で10mmであること以外は実施例1と同様の円筒状炉芯管を有するロータリーキルン炉を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素粉末を製造した。
この際、実施例1と同様の方法で、円筒状炉芯管の温度分布を測定し、その結果から、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲にあることを特定した。実施例1と同様に、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間原料供給し、窒化ケイ素粉末を製造した。円筒状炉芯管の冷却後、実施例1と同様の方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。
実施例1と同様に、以上の焼成処理を繰り返したが、焼成処理を14回実施した後の冷却中に炉芯管が付着物付着領域で破損した。
(比較例2)
厚みが、全ての領域で17mmであること以外は実施例1と同様の円筒状炉芯管を有するロータリーキルン炉を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で窒化ケイ素粉末を製造した。
この際、実施例1と同様の方法で、円筒状炉芯管の温度分布を測定し、その結果から、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲にあることを特定した。実施例1と同様に、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間原料供給し、窒化ケイ素粉末を製造した。円筒状炉芯管の冷却後、実施例1と同様の方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。
実施例1と同様に、以上の焼成処理を繰り返したが、3回目の焼成処理中に送出口側の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所で炉芯管が破損した。
(実施例4)
(Si−N(−H)系化合物の製造)で説明した方法で得られた非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を、炭化ケイ素製の円筒状炉芯管を備える、次の外熱式ロータリーキルン炉を用いて焼成した。実施例4に係る外熱式ロータリーキルン炉に備わる円筒状炉芯管は、長さが2300mmで、一端から他端まで280mmの一定の内径を有しており、領域によって異なる外径(すなわち異なる厚み)を有している。円筒状炉芯管の厚みは、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって750mmまでの領域と、1550mmから2300mmの領域の領域が10mmであり、850mmから1450mmの領域が20mmである。また、750mmから850mmの領域が10mmから20mmまで一定の割合で大きくなっており、1450mmから1550mmの領域が20mmから10mmまで一定の割合で小さくなっている。円筒状炉芯管を加熱するヒータは、長さが1050mmであり、円筒状炉芯管の被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって625mmから1675mmの領域を覆うように設置されている。また、加熱ヒータは、個別の温度制御が可能な6つの独立したヒータ(被焼成原料供給口側から順にヒータ1〜ヒータ6)から構成されている。
以上の外熱式ロータリーキルン炉を用いて、次のようにして非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を焼成した。ロータリーキルン炉の原料ホッパに、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を充填した。ロータリーキルン炉の炉芯管内を窒素ガスで十分に置換した後、窒素ガス流通雰囲気下で、ヒータに通電して炉芯管を加熱した。炉心管内の最高温度を1500℃とし、炉芯管の被焼成原料供給口側では、炉芯管における窒化ケイ素の結晶化が始まる温度の位置、すなわち1200℃の位置がヒータにより直接加熱される領域に入るように、ヒータ1の温度を1100℃に、ヒータ2の温度を1230℃に、ヒータ3の温度を1370℃に設定し、ヒータ4〜6の温度を1500℃に設定し昇温した。炉心管内の温度分布が安定した後に、原料供給スクリューフィーダーを回転させ、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を1.0kg/時間の供給速度で原料ホッパから炉心管内に供給した。炉心管の回転数を2rpm、炉心管の水平方向に対する傾斜角度を2°として、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末を流動させながら加熱し、焼成した。
この際、円筒状炉芯管の温度分布を、(炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所の特定方法)で説明した方法によって測定した。得られた結果から、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲にあることを特定した。
非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間行って、窒化ケイ素粉末を製造し、その後、ロータリーキルン炉円筒状炉芯管を室温まで冷却した。円筒状炉芯管の冷却後、(付着物が炉芯管の内壁に付着する領域の特定方法)にて説明した方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。
以上の焼成処理を30回繰り返し、焼成処理を30回実施した後でも炉芯管が破損しないことを確認した。焼成処理を繰り返す過程において、(付着物が炉芯管の内壁に付着する領域の特定方法)にて説明した方法によって、15回と30回の処理後に、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域とその厚みを測定した。焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域はいずれの処理後でも、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、焼成処理を繰り返しても、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置することが維持されていることを確認した。また、付着物の厚みは、15回処理後が0.8mm、30回処理後が1.9mmであることがわかった。付着物は、X線回折測定の結果から、α-Si3N4であることが確認された。また、30回目の焼成処理時に得られた窒化ケイ素粉末の結晶化度を(窒化ケイ素粉末の結晶化度の測定方法)にて説明した方法によって測定し、その結晶化度が100%であることを確認した。
(実施例5)
厚みが、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって750mmまでの領域と、1550mmから2300mmの領域の領域が15mm、850mmから1450mmの領域が30mm、また、750mmから850mmの領域が15mmから30mmまで一定の割合で大きくなっており、1450mmから1550mmの領域が30mmから15mmまで一定の割合で小さくなっていること以外は実施例4と同様の円筒状炉芯管を有するロータリーキルン炉を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で窒化ケイ素粉末を製造した。
この際、実施例4と同様の方法で、円筒状炉芯管の温度分布を測定し、その結果から、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲にあることを特定した。実施例4と同様に、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間原料供給し、窒化ケイ素粉末を製造した。円筒状炉芯管の冷却後、実施例4と同様の方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。
実施例4と同様に、以上の焼成処理を30回繰り返し、焼成処理を30回実施した後でも炉芯管が破損しないことを確認した。
実施例4と同様の方法で、15回と30回の処理後に、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域とその厚みを測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、いずれの処理後でも、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。付着物の厚みは、15回処理後が0.8mm、30回処理後が1.9mmであることがわかった。付着物は、X線回折測定の結果から、α−Si3N4あることが確認された。また、30回目の焼成処理時に得られた実施例5の窒化ケイ素粉末は、結晶化度が100%であった。
(実施例6)
厚みが、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって750mmまでの領域と、1550mmから2300mmの領域の領域が20mm、850mmから1450mmの領域が40mm、また、750mmから850mmの領域が20mmから40mmまで一定の割合で大きくなっており、1450mmから1550mmの領域が40mmから20mmまで一定の割合で小さくなっていること以外は実施例4と同様の円筒状炉芯管を有するロータリーキルン炉を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で窒化ケイ素粉末を製造した。
この際、実施例4と同様の方法で、円筒状炉芯管の温度分布を測定し、その結果から、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲にあることを特定した。実施例4と同様に、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間原料供給し、窒化ケイ素粉末を製造した。円筒状炉芯管の冷却後、実施例4と同様の方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。
実施例4と同様に、以上の焼成処理を30回繰り返し、焼成処理を30回実施した後でも炉芯管が破損しないことを確認した。
実施例4と同様の方法で、15回と30回の処理後に、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域とその厚みを測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、いずれの処理後でも、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。付着物の厚みは、15回処理後が0.8mm、30回処理後が1.9mmであることがわかった。付着物は、X線回折測定の結果から、α−Si3N4あることが確認された。また、30回目の焼成処理時に得られた実施例3の窒化ケイ素粉末は、結晶化度が100%であった。
(比較例3)
厚みが、全ての領域で15mmであること以外は実施例4と同様の円筒状炉芯管を有するロータリーキルン炉を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で窒化ケイ素粉末を製造した。
この際、実施例4と同様の方法で、円筒状炉芯管の温度分布を測定し、その結果から、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲にあることを特定した。実施例4と同様に、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間原料供給し、窒化ケイ素粉末を製造した。円筒状炉芯管の冷却後、実施例4と同様の方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。
実施例4と同様に、以上の焼成処理を繰り返したが、焼成処理を13回実施した後の冷却中に炉芯管が付着物付着領域で破損した。
(比較例4)
厚みが、全ての領域で25mmであること以外は実施例4と同様の円筒状炉芯管を有するロータリーキルン炉を用いたこと以外は、実施例4と同様の方法で窒化ケイ素粉末を製造した。
この際、実施例4と同様の方法で、円筒状炉芯管の温度分布を測定し、その結果から、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって550mm〜650mmの範囲と、1650mm〜1750mmの範囲にあることを特定した。実施例1と同様に、非晶質Si−N(−H)系化合物粉末の供給を8時間原料供給し、窒化ケイ素粉末を製造した。円筒状炉芯管の冷却後、実施例1と同様の方法によって、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域を測定し、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着した領域が、被焼成原料供給口が備わる一端から他端に向かって900mmから1250mmの領域であることを確認した。これにより、円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所が、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域と、前記円筒状炉芯管の一端との間に位置していることを確認した。
実施例4と同様に、以上の焼成処理を繰り返したが、2回目の焼成処理中に送出口側の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所で炉芯管が破損した。
表1に、各実施例で用いたロータリーキルン炉の円筒状炉芯管における、焼成時の温度勾配の変化率の絶対値が極大になる箇所がある領域、焼成物が前記円筒状炉芯管の内壁に付着する領域、およびそれらの領域における円筒状炉芯管の厚みと、焼成を繰り返した際の、得られた窒化ケイ素の結晶化度および炉芯管の破損状況をまとめて示す。