本発明の積層体は、温度20℃及び周波数1.0Hzで測定された貯蔵弾性率(E’20)が3.0×106Pa未満である活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)を介して、2以上の基材(B)が接着された積層体であって、その曲げ応力(σ1)が35MPa未満であることを特徴とするものである。
本発明の積層体は、柔軟であるため、容易に湾曲形状等に変形することができる。また、前記積層体は、打ち抜き加工等する際に、局所的に強い力を加えた場合であっても、クラック等を引き起こしにくい。
前記積層体としては、その曲げ応力(σ1)が35MPa未満であるものを使用する。これにより、前記積層体をロール形状等に巻き取ることが可能となり、また打ち抜き加工等の際にクラックを発生させにくい。前記積層体としては、前記曲げ応力(σ1)が1MPa〜30MPaのものを使用することが好ましく、3MPa〜25MPaのものを使用することが、より好ましい。なお、前記曲げ応力(σ1)は、JISK 7171に準拠した3点曲げ試験方法で測定したものを指す。また、後述する曲げ応力(σ2)及び曲げ応力(σ3)も、上記曲げ応力(σ1)と同様の方法で測定した値を指す。
本発明の積層体の実施態様としては、〔基材(B)/活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)/基材(B)〕の順に積層されたものの他に、3つの基材と活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)とが〔基材(B)/活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)/基材(B)/活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)/基材(B)〕の順に積層されたものや、同様に4つ以上の基材と活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)とが積層されたもの等が挙げられる。前記構成において、前記基材(B)は、得られる積層体の曲げ応力(σ1)を35MPa未満に調整できる程度に柔軟であることが好ましい。また、前記構成において、前記活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)は、未硬化、または、前記所定の曲げ応力(σ1)を保持可能な程度に一部硬化したものであることが好ましい。
一方、本発明の積層体は、活性エネルギー線を照射することによって、実用上十分な剛性を備えた剛体を形成する。また、前記積層体は、例えばシート状のそれを、型等用いて変形させ、その変形を保持した状態のものに、活性エネルギー線を照射することによって、前記形状に成形された剛体を得ることができる。
前記積層体に紫外線を照射することによって得られた本発明の剛体は、前記活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)が硬化して形成された硬化層(A)の剛性に起因して、全体として高い剛性を有する。そのため、前記剛体は、高強度で、外力に起因したひび割れ等を生じさせにくい。
本発明の積層体を構成する活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)としては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)を用いて形成される接着剤層のうち、未硬化、または、前記積層体の曲げ応力(σ1)を前記範囲に調整可能な程度に一部硬化したものを使用することが好ましく、未硬化の接着剤層であることが、ロール等に巻き取り可能で、打ち抜き加工等の際にクラック等を引き起こしにくい積層体を得るうえでより好ましい。具体的には、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)が重合性不飽和二重結合を有する場合には、前記重合性不飽和二重結合がラジカル重合していない、または、前記積層体の曲げ応力(σ1)を前記範囲に調整可能な程度に、一部の重合性不飽和二重結合がラジカル重合したものを使用することが好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)としては、ロール等に巻き取り可能で、打ち抜き加工等の際にクラック等を引き起こしにくい積層体を得るうえで、温度20℃及び周波数1.0Hzで測定された貯蔵弾性率(E’20)が3.0×106Pa未満であるものを使用する。前記貯蔵弾性率(E’20)は、1.0×105Pa〜2.5×106Paであることが好ましく、5.0×105Pa〜2.0×106Paであることがより好ましく、1.0×106Pa〜2.0×106Paであることが、ロール等に巻き取り可能で、打ち抜き加工等の際にクラック等を引き起こしにくい積層体を得るうえでさらに好ましい。なお、前記貯蔵弾性率(E’20)は、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、商品名:RSA−II)を用いて測定した値を指す。前記測定には、厚さ100μmの未硬化の活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)を作製し、それをダンベルカッターを用いJIS K 7127の試験片タイプ5の形状に打ち抜いたものを使用した。
前記活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)の形成に使用可能な前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)としては、活性エネルギー線の照射によってラジカル重合等しうる官能基を有するものを使用することができ、例えば重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(a1)を含有するものを使用することができる。前記ポリウレタン(a1)を含有する接着剤層(A’)を有する積層体は、一般に知られるアクリル重合体等を含有する接着剤層を有する積層体と比較して、ロール状等に巻き取られた状態で保存等された場合であっても、前記ロールの端部から前記接着剤層が押し出されにくいという有利な効果を有する。
前記ポリウレタン(a1)としては、例えばポリオール(a1−1)とポリイソシアネート(a1−2)とを反応させることによって得られたイソシアネート基を有するポリウレタン(a1’)と、前記イソシアネート基と反応しうる官能基を有する(メタ)アクリル単量体とを反応させることによって得られるものを使用することができる。
前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリオール(a1−1)としては、例えばポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を使用することができる。なかでも、前記ポリオール(a1−1)としては、活性エネルギー線を照射する前においては柔軟で前記所定の貯蔵弾性率を備えた積層体を得ることができ、かつ、活性エネルギー線を照射した後においては、高硬度で前記所定の貯蔵弾性率を備えた剛体を得るうえで、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールを単独または2種以上組み合わせ使用することが好ましく、ポリカーボネートポリオール及びポリエステルポリオールを組み合わせ使用することがより好ましい。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステル及び/又はホスゲンと、後述する低分子ポリオールとを反応させて得られるものを使用することができる。
前記炭酸エステルとしては、例えばメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等を使用することができる。
また、前記炭酸エステルやホスゲンと反応しうる低分子ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノール等を使用することができる。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、脂肪族ポリカーボネートポリオールまたは脂環式ポリカーボネートポリオールを使用することが好ましい。
脂肪族ポリカーボネートポリオールとしては、前記接着シートに、例えば光学用途に使用可能なレベルの透明性を付与するうえで、ジアルキルカーボネートと、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールとを反応させて得られるものを使用することが好ましい。
脂環式ポリカーボネートポリオールとしては、前記活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)及びそれが硬化して形成される硬化層(A)に、例えば光学用途に使用可能なレベルの透明性を付与し、かつ優れた初期凝集力を付与するうえで、例えばジアルキルカーボネートと、シクロヘキサンジメタノール及びその誘導体からなる群より選ばれる1種以上を含むポリオールとを反応させて得られるものを使用することが好ましい。
前記ポリカーボネートポリオールについては、前記所定範囲内の貯蔵弾性率(E’20)を備えた接着剤層(A’)及び硬化層(A)を形成し、その結果、硬化前はロール巻き取り等が可能で、かつ、硬化後にはディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性を備えた剛体を得るうえで1000〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1000〜3000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
前記ポリカーボネートポリオールは、前記ポリオール(a1−1)の全量に対して50質量%〜90質量%の範囲で使用することが好ましく、60質量%〜80質量%の範囲で使用することが、活性エネルギー線を照射する前においては柔軟で前記所定の貯蔵弾性率を備えた積層体を得ることができ、かつ、活性エネルギー線を照射した後においては、高硬度で前記所定の貯蔵弾性率を備えた剛体を得、その結果、硬化前であればロール巻き取り等が可能で、硬化後にはディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性を備えた剛体を得るうえで好ましい。
前記ポリオール(a1−1)に使用可能な前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるもの、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステル、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
前記低分子量のポリオールとしては、例えば概ね分子量が50〜300程度である、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族アルキレングリコールや、シクロヘキサンジメタノール等を使用することができる。
また、前記ポリエステルポリオールの製造に使用可能な前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、及びそれらの無水物またはエステル化物等を使用することができる。
前記ポリエステルポリオールとしては、前記所定範囲内の貯蔵弾性率(E’20)を備えた接着剤層(A’)及び硬化層(A)を得、その結果、硬化前はロール巻き取り等が可能で、かつ、硬化後にはディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性を備えた剛体を得るうえで脂肪族ポリエステルポリオールを使用することが好ましく、直鎖脂肪族ポリエステルポリオールを使用することがより好ましい。前記直鎖脂肪族ポリエステルポリオールは、側鎖にアルキル基を有さないポリエステルポリオールを指す。
前記ポリエステルポリオールとしては、前記脂肪族アルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸とを反応させて得られるものが挙げられ、1,4−ブタンジオールとアジピン酸とをエステル化反応して得られる脂肪族ポリエステルポリオールを使用することが好ましい。
前記ポリエステルポリオールとしては、前記所定範囲内の貯蔵弾性率(E’20)を備えた接着剤層(A’)及び硬化層(A)を形成し、その結果、硬化前はロール巻き取り等が可能で、かつ、硬化後にはディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性を備えた剛体を得るうえで1000〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
特に、前記ポリエステルポリオールとして、1,2−エタンジオールまたは1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールと、アジピン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用する場合には、1100〜2900の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用する場合には、1100〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用する場合には、1000〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
前記ポリエステルポリオールは、前記ポリオール(a1−1)の全量に対して10質量%〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、20質量%〜40質量%の範囲で使用することが、硬化前はロール巻き取り等が可能で、且つ、硬化後にはディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性を備えた剛体を得るうえで好ましい。
前記ポリオール(a1−1)としては、前記ポリカーボネートポリオールと前記ポリエステルポリオールとを組み合わせ使用することが好ましい。
前記ポリカーボネートポリオール及び前記ポリエステルポリオールは、前記ポリオール(a1−1)100質量部に対して、合計20質量部以上を含有するものを使用することが好ましく、50質量部以上を含有するものを使用することが、光学用途に使用可能なレベルの透明性を維持するうえで好ましい。
前記ポリカーボネートポリオールと前記ポリエステルポリオールとを組み合わせ使用する際には、[ポリカーボネートポリオール/ポリエステルポリオール](質量比)は、1.5〜7.0の範囲であることが、前記所定範囲内の貯蔵弾性率(E’20)を備えた接着剤層(A’)及び硬化層(A)を形成し、その結果、硬化前はロール巻き取り等が可能で、硬化後にはディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性を備えた剛体を得るうえで好ましい。
また、前記ポリオール(a1−1)としては、ポリエーテルポリオールを使用することもできる。前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族ポリエーテルポリオールや脂環式構造を有するポリエーテルポリオールを使用することが好ましい。
また、前記ポリオール(a1−1)としては、前記したもののほかに、その他のポリオールを使用することができる。前記その他のポリオールとしては、例えばアクリルポリオール等が挙げられる。
前記ポリオール(a1−1)としては、500〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1000〜3000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが、保型性、塗布作業性、初期凝集力等に優れた接着剤層(A’)及び硬化層(A)を形成するうえでより好ましい。なお、前記数平均分子量は、下記条件にて測定した値である。
〔数平均分子量の測定方法〕
本発明に記載の数平均分子量の測定は、ポリスチレン換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)により、下記条件にて測定した値である。
樹脂試料溶液;0.4質量%テトラヒドロフラン(THF)溶液
測定装置型番;HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム ;TSKgel(東ソー株式会社製)
溶離液 ;テトラヒドロフラン(THF)
前記ポリウレタン(a1)の製造に使用可能なポリイソシアネート(a1−2)としては、脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等を使用することができ、脂環式ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−メチルシクロヘキサンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、前記したなかでも、前記ポリオール(a1−2)との良好な反応性を有し、かつ、耐熱性や透明性(光線透過性)等に優れた接着剤層(A’)及び硬化層(A)を得るうえで、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(BICH)を使用することが好ましい。
前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)とを反応させイソシアネート基を有するポリウレタン(a1’)を製造する方法としては、例えば反応容器に仕込んだ前記ポリオール(a1−1)を、常圧または減圧条件下で加熱することにより水分を除去した後、前記ポリイソシアネート(a1−2)を一括または分割して供給し反応させる方法が挙げられる。
前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)との反応は、前記ポリイソシアネート(a1−2)が有するイソシアネート基と、前記ポリオール(a1−1)が有する水酸基との当量比(以下[NCO/OH当量比]という。)が、1.1〜20.0の範囲で行うことが好ましく、1.1〜13.0の範囲で行うことがより好ましく、1.1〜5.0の範囲で行うことがさらに好ましく、1.5〜3.0の範囲で行うことが特に好ましい。
前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)との反応条件(温度、時間等)は、安全、品質、コストなど諸条件を考慮して適宜設定すればよく、特に限定しないが、例えば反応温度は、好ましくは70〜120℃の範囲であり、反応時間は、好ましくは30分〜5時間の範囲である。
前記ポリオール(a1−1)と前記ポリイソシアネート(a1−2)とを反応させる際には、必要に応じて、触媒として、例えば、三級アミン触媒や有機金属系触媒等を使用することができる。
また、前記反応は、無溶剤の環境下で行っても、有機溶剤存在下で行ってもよい。
前記有機溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。前記有機溶剤は、前記ポリウレタン(a1’)の製造途中または、前記ポリウレタン(a1’)を製造した後、減圧加熱、常圧乾燥等の適切な方法により除去してもよい。
前記方法で得られたイソシアネート基を有するポリウレタン(a1’)としては、40℃以上の軟化温度を有するものを使用することが好ましく、50℃以上の軟化温度を有するものを使用することがより好ましい。なお、前記軟化温度とは、JIS K 2207に準拠して測定した値を指す。前記軟化温度の上限は、100℃以下であることが好適である。
本発明で使用するポリウレタン(a1)は、前記方法で得られたイソシアネート基を有するポリウレタン(a1’)、及び、前記イソシアネート基と反応しうる官能基を有する(メタ)アクリル単量体を反応させることによって製造することができる。具体的には、前記ポリウレタン(a1)は、前記方法で得たポリウレタン(a1’)またはその有機溶剤溶液と、前記(メタ)アクリル単量体とを混合し反応させることによって製造することができる。
前記(メタ)アクリル単量体としては、イソシアネート基と反応しうる官能基として、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等を有する(メタ)アクリル単量体を使用することができ、水酸基、アミノ基を有する(メタ)アクリル単量体を使用することが好ましい。
前記(メタ)アクリル単量体としては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物、グリシドールジ(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
なかでも、前記(メタ)アクリル単量体としては、例えば赤外線、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線、太陽光等の活性エネルギー線を照射することによって速硬化性し、かつ、最終的に得られる硬化層(A)の機械的強度をより一層向上するうえで2−ヒドロキシエチルアクリレートを使用することが好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方または両方を指す。
前記(メタ)アクリル単量体は、前記ポリウレタン(a1’)100質量部に対して、5質量部〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、5質量部〜15質量部の範囲で使用することがより好ましい。
より具体的には、(メタ)アクリル単量体は、前記ポリウレタン(a1’)が有するイソシアネート基のモル数に対して、好ましくは50モル%を超えて100モル%以下、より好ましくは60モル%〜100モル%、さらに好ましくは80モル%〜100モル%の、前記イソシアネート基と反応しうる官能基を供給可能な量を使用することができる。これにより、機械的強度や耐久性(特に耐加水分解性)などに優れた硬化層(A)を得ることができる。
前記ポリウレタン(a1’)と前記(メタ)アクリル単量体とを反応させる際には、必要に応じて、ウレタン化触媒を使用することができる。前記ウレタン化触媒は、前記ウレタン化反応の任意の段階で、適宜加えることができる。前記ウレタン化反応は、イソシアネート基含有量(%)が実質的に一定になるまで行うことが好ましい。
前記ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の含窒素化合物、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸第一錫等の有機金属塩、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等を使用することができる。
前記方法で得られた重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(a1)は、活性エネルギー線が照射されることによって(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和二重結合のラジカル重合が進行し硬化する。前記ポリウレタン(a1)として、イソシアネート基を有するものを使用する場合、前記イソシアネート基は、前記ラジカル重合とは別に、水(湿気)による湿気硬化反応する場合がある。
前記ポリウレタン(a1)を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)としては、ラジカル重合開始剤を含有するものを使用することができる。
前記ラジカル重合開始剤としては、公知のものが使用でき、例えば、光重合開始剤、過酸化物などが挙げられ、良好な生産性等を維持するうえで、光重合開始剤が好ましい。
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン等のアルキルフェノン光重合開始剤、カンファーキノン光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド光重合開始剤、チタノセン光重合開始剤等の従来公知のものを使用できる。
前記光重合開始剤の市販品(以下、商標記載)としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノンや、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(例えば、チバスペシャリティケミカルズ社製のダロキュア1173)、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン(例えば、チバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュア184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(例えば、チバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュア2959)、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン(例えば、チバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート(例えば、ストウファー社製のバイキュア55)、1,7−ビスアクリジニルヘプタン、9−フェニルアクリジン、クオンタキュアー(インターナショナル・バイオ−シンセティクス社製)、カイアキュアーMBP(日本化薬株式会社製)、エサキュアーBO(フラテリ・ランベルティ社製)、トリゴナル14(アクゾ社製)、イルガキュアー(チバ・ガイギー社製)、ダロキュアー(同社製)、スピードキュアー(同社製)、ダロキュアー1173とFi−4との混合物(イーストマン社製)等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
前記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって速やかに硬化させることのできるイルガキュア184、イルガキュア651等を使用することが好ましい。
また、前記ラジカル重合開始剤に使用可能な過酸化物としては、例えばケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、パーオキシエステル等の従来公知の過酸化物を、単独または2種以上組み合わせ使用してもよい。なかでも、前記過酸化物としては、80℃〜120℃の高温条件下で硬化させる場合であれば、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートを使用することが好ましく、特にパーオキシジカーボネートを使用することがより好ましい。
前記パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、市販品では、パーロイルTCP(日本油脂株式会社製)等が挙げられる。なかでも、過酸化物としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって速やかに硬化させることのできるパーロイルTCPを使用することが好ましい。
前記ラジカル重合開始剤は、前記ポリウレタン(a1)100質量部に対して0.5質量部〜5質量部の範囲で使用することが好ましく、1質量部〜3質量部の範囲で使用することがより好ましい。
また、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)としては、必要に応じて公知の多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものを使用することができる。
なお、本発明でいう「多官能」とは、重合性不飽和二重結合を分子中に2個以上有することを指す。
前記多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート、ソルビトール等の糖アルコールの(メタ)アクリレートエステル等の、重合性不飽和二重結合を2個〜4個有するもの等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
前記多官能(メタ)アクリレート化合物は、前記ポリウレタン(a1)の100質量部に対して、5質量部〜30質量部の範囲で使用することが好ましく、5質量部〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)としては、上記ポリウレタン(a1)の他に、必要に応じて添加剤を含有するものを使用することができる。
前記添加剤としては、シランカップリング剤、リン酸系添加剤、アクリレート系添加剤、粘着付与剤、光安定剤、老化防止剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填材、着色剤、界面活性剤等を使用することができる。
次に、本発明の積層体を構成する基材(B)について説明する。
前記基材(B)としては、本発明の積層体の曲げ応力(σ1)を35MPa未満に調整できる程度に柔軟であるものを使用する。具体的には、前記基材(B)としては、曲げ応力(σ2)20MPa以下である基材(B1)や基材(B2)等を使用することが好ましく、10MPa〜20MPaであるものを使用することが、硬化前のロール等に巻き取り性と、硬化後のディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性とを両立した積層体を得るうえでより好ましい。
前記基材(B)としては、厚さ50μm〜250μmのものを使用することが好ましく、50μm〜200μmのものを使用することが、本発明の積層体の曲げ応力(σ1)を35MPa未満に調整するうえでより好ましい。
前記基材(B)としては、一般にハードコートフィルムの基材として使用される各種の樹脂フィルム基材を使用することができる。
前記樹脂フィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ナイロン、アクリル樹脂等を用いて得られる樹脂フィルム基材を使用することができる。なかでも、前記樹脂フィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂を用いて得られる樹脂フィルム基材を使用することが、硬化前の良好なロール巻き取り性と、硬化後のディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性とを両立するうえで好ましい。
前記基材(B)としては、上記樹脂フィルム基材を単独で使用してもよいが、前記接着剤層(A’)や硬化層(A)との密着性を向上させることを目的として、プライマー層を有する樹脂フィルム基材を使用してもよい。
また、前記基材(B)としては、前記接着剤層(A’)や硬化層(A)との密着性を向上させることを目的として、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、コロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、紫外線照射処理、表面の酸化処理などの表面処理が施されたものを使用することができる。
本発明の曲げ応力(σ1)が35MPa未満である積層体は、例えば一方の基材(B)の一部または全部の面に、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)を塗布または転写することによって、温度20℃及び周波数1.0Hzで測定された貯蔵弾性率(E’20)が3.0×106Pa未満である活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)を形成し、前記活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)の表面に、他方の基材(B)を積層することによって製造することができる。前記基材としては、いずれも曲げ応力(σ2)20PMa以下のものを使用することが好ましい。
前記基材(B)の一部または全部の面に、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)を塗布する方法としては、例えば、ロールコーターやダイコーター等を用いる方法が挙げられる。
また、前記基材(B)の一部または全部の面に、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)を転写する方法としては、例えば、離型ライナーの表面に活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(a)をロールコーターやダイコーター等を用いて塗布し、乾燥等させることによって活性エネルギー線硬化性粘着剤層(A’)を形成した後、前記接着剤層(A’)を、前記基材(B)の面に貼付する方法が挙げられる。
前記方法で得られた積層体としては、その総厚さが300μm〜2000μmであるものを使用することが好ましく、400μm〜1000μmであるものを使用することが、硬化前の良好なロール巻き取り性と、硬化後のディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性とを両立するうえで好ましい。
また、前記積層体を構成する活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)としては、その厚さが50μm〜500μmであるものを使用することが好ましく、100μm〜300μmであるものを使用することが、硬化前の良好なロール巻き取り性と、硬化後のディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性とを両立するうえで好ましい。
前記方法で得られた積層体は、シートまたはフィルム状であることが、例えばロール状に巻き取った状態で保管等できるため好ましい。
また、前記積層体を用い剛体を製造する方法としては、前記積層体に活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
前記活性エネルギー線を照射する方法としては、前記基材(B)が透明である場合には、前記基材(B)の表面等から活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
前記活性エネルギー線としては、紫外線等が挙げられる。前記紫外線は、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射してもよい。また、必要に応じて熱をエネルギー源として併用し、活性エネルギー線を照射した後、加熱してもよい。
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。
上記活性エネルギー線の照射装置としては、前記したもののほかに、殺菌灯、カーボンアーク、キセノンランプ、メタルハライドランプ、走査型、カーテン型電子線加速器等を使用することができる。
また、前記剛体として、湾曲部や角部等を有する所定形状に成形された剛体を製造する方法としては、例えば雄型と雌型とによって構成されるプレス成型装置に、前記積層体を挟み込むことによって、前記積層体を前記型に対応した形状に変形させ、次いで、前記変形させた状態の積層体に、前記活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。
前記積層体を構成する活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)は、前記活性エネルギー線を照射されたことによってラジカル重合し、硬化層(A)を形成する。前記硬化層(A)の、温度20℃及び周波数1.0Hzで測定された貯蔵弾性率(E’20)は3.0×106Pa以上であることが好ましく、3.0×106Pa〜1.0×108Paであることがより好ましく、4.0×106Pa〜1.0×107Paであることが、高剛性で傷つきにくい剛体を得るうえでさらに好ましい。なお、前記貯蔵弾性率(E’20)は、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製、商品名:RSA−II)を用いて測定した値を指す。前記測定には、厚さ100μmの硬化層(A)を作製し、それをダンベルカッターを用いJIS K 7127の試験片タイプ5の形状に打ち抜いたものを使用した。
前記積層体は、前記活性エネルギー線を照射されたことによってラジカル重合し、曲げ応力(σ3)が35MPa以上である剛体を形成する。ここで、前記曲げ応力(σ3)は、JISK 7171に準拠した3点曲げ試験方法で測定したものを指す。前記曲げ応力(σ3)は、35MPa〜100MPaであることが、ディスプレイ等の表面の傷つきを防止できるレベルの剛性を備えた剛体を得るうえで好ましい。
前記方法で得た剛体としては、その最外層を構成する基材(B)の片面または両面(最外面)に、ハードコート層、加飾層、粘着剤層等の他の層を有するものを使用することが、例えば前記剛体を情報表示装置の表面に設置し使用するうえで好ましい。
前記ハードコート層としては、従来知られるハードコート剤を用いて形成することができる。
前記ハードコート剤としては、入手や取り扱いが容易で、用途に応じた表面硬度や耐久性等を備えたハードコートフィルム層を形成可能な、(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性組成物からなるハードコート剤を使用することが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性組成物からなるハードコート剤を使用することが好ましい。
前記ハードコート剤としては、高硬度で優れた耐久性と、優れた防汚性等とを両立するうえで、例えばフッ素系添加剤、シリコーン系添加剤、アクリル系添加剤等を含有するものを使用することができる。
前記方法で得られた本発明の剛体は、活性エネルギー線を照射することによって任意の形状に成形され、かつ高剛性を有することから、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末の表面パネル用途に使用することができる。また、本発明の剛体は、その生産効率に優れるため、従来よりも安価に生産できることから、低価格化が進む汎用携帯端末用途、または、多様なデザインを有するフレキシブルディスプレイ用途に好適に使用することができる。
以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明する。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)>
反応容器に、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びジアルキルカーボネートを反応させて得られる数平均分子量2000の脂肪族ポリカーボネートポリオール80質量部と、1,4−ブタンジオール及びアジピン酸を反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオール26質量部とを混合し、減圧条件下にて100℃に加熱することにより、水分率が0.05質量%になるまで脱水した。
次に、前記脂肪族ポリカーボネートポリオール及び前記ポリエステルポリオールの混合物を70℃まで冷却したものと、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート26質量部とを混合した後、100℃まで昇温し、イソシアネート基含有量が一定となるまで3時間反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。
前記ウレタンプレポリマー100質量部を100℃で加熱溶融させたものと、2−ヒドロキシエチルアクリレート11.4質量部とオクチル酸第一錫0.01質量部とを混合し、100℃でNCO%が一定となるまで反応させることによって、重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−1)を得た。なお、前記2−ヒドロキシエチルアクリレートは、前記ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基の総数がすべて前記2−ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基と理論上反応する量を使用した。
前記方法で得た重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−1)のイソシアネート基含有量(NCO%)は0質量%であった。
次に、前記重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−1)100質量部と、イルガキュア 184(チバスペシャリティ株式会社製)2質量部とを混合攪拌し、酢酸エチルを供給し不揮発分を57質量%に調整することにより活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を得た。
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)>
反応容器に、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びジアルキルカーボネートを反応させて得られる数平均分子量2000の脂肪族ポリカーボネートポリオール80質量部と、1,2−エタンジオール及びアジピン酸を反応させて得られる数平均分子量2000のポリエステルポリオール26質量部とを混合し、減圧条件下にて100℃に加熱することにより、水分率が0.05質量%になるまで脱水した。
次に、前記脂肪族ポリカーボネートポリオール及び前記ポリエステルポリオールの混合物を70℃まで冷却したものと、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート26質量部とを混合した後、100℃まで昇温し、イソシアネート基含有量が一定となるまで3時間反応させることによって、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得た。
前記ウレタンプレポリマー100質量部を100℃で加熱溶融させたものと、2−ヒドロキシエチルアクリレート11.4質量部とオクチル酸第一錫0.01質量部とを混合し、100℃でNCO%が一定となるまで反応させることによって、重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−4)を得た。なお、前記2−ヒドロキシエチルアクリレートは、前記ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基の総数がすべて前記2−ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基と理論上反応する量を使用した。
前記方法で得た重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−4)のイソシアネート基含有量(NCO%)は0質量%であった。
次に、前記重合性不飽和二重結合を有するポリウレタン(A−4)100質量部と、イルガキュア 184(チバスペシャリティ株式会社製)2質量部とを混合攪拌し、酢酸エチルを供給し不揮発分を57質量%に調整することにより活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)を得た。
<比較用樹脂組成物(III)>
攪拌機、還流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、メトキシエチルアクリレート75質量部、n−ブチルアクリレート24質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1質量部と重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.4部とを酢酸エチル100質量部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して重量平均分子量35万のアクリル共重合体(1)を得、酢酸エチルを供給し不揮発分を30質量%に調整することにより比較用樹脂組成物(III)を得た。
(実施例1)
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)100質量部を、片面がハードコート処理された曲げ応力15MPa及び厚さ100μmのポリエステルフィルム(以下#100ハードコートフィルム)のポリエステル面に乾燥後の厚さが300μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#100ハードコートフィルムのポリエステル面に接着剤層を作製した。次に、前記接着剤層の片面に、#100ハードコートフィルムのポリエステル面を貼り合わせることで、厚さ500μmの積層体(C−1)を得た。
(実施例2)
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)100質量部を、片面がハードコート処理された曲げ応力17MPa及び厚さ125μmのポリエステルフィルム(以下#125ハードコートフィルム)のポリエステル面に乾燥後の厚さが100μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#125ハードコートフィルムのポリエステル面に接着剤層を形成した。次に、前記接着剤層の片面に、曲げ応力5MPa及び厚さ50μmのポリエステルフィルム(以下#50ポリエステルフィルム)を貼り合わせ、積層体を作製した。また、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)100質量部を、上記とは別の、片面がハードコート処理された曲げ応力17MPa及び厚さ125μmのポリエステルフィルムのポリエステル面に乾燥後の厚さが100μmになるように塗工し、上記積層体と貼り合わせることで、厚さ500μmの積層体(C−2)を得た。
(実施例3)
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)100質量部を、片面がハードコート処理された曲げ応力19MPa及び厚さ188μmのポリエステルフィルム(以下#188ハードコートフィルム)のポリエステル面に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#188ハードコートフィルムのポリエステル面に接着剤層を形成した。次に、前記接着剤層の片面に、#50ポリエステルフィルムを貼り合わせ、積層体を作製した。また、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)100質量部を、上記とは別の#188ハードコートフィルムのポリエステル面に乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、上記積層体と貼り合わせることで、厚さが526μmの積層体(C−3)を得た。
(実施例4)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(II)にする以外は、実施例1と同様にして、積層体(C−4)を得た。
(比較例1)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を比較用樹脂組成物(III)にする以外は、実施例1と同様にして、積層体(C−5)を得た。
(比較例2)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を比較用樹脂組成物(III)にする以外は、実施例2と同様にして、積層体(C−6)を得た。
(比較例3)
上記比較用樹脂組成物(III)100質量部を、前記#188ハードコートフィルムのポリエステル面に乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、85℃で4分間乾燥することによって、前記#188ハードコートフィルムのポリエステル面に接着剤層を形成した。次に、前記接着剤層の片面に、#50ポリエステルフィルムを貼り合わせ、積層体を作製した。また、上記比較用樹脂組成物(II)100質量部を、上記とは別の#188ハードコートフィルムのポリエステル面に乾燥後の厚さが10μmになるように塗工し、上記積層体と貼り合わせることで、厚さが526μmの積層体(C−7)を得た。
(比較例4)
積層体(C−8)として、厚さ650μmの三菱レイヨン株式会社製アクリライトMR−200を使用した。
(曲げ応力の測定)
実施例及び比較例で得られた積層体を幅10mm及び長さ75mmに切断したものを、硬化前の試験片とした。
また、前記硬化前の試験片に、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ)を用いて、照射光量1.0J/cm2で紫外線することによって、硬化後の試験片を作製した。
次に、縦150mm及び横46mmの凹み部を有する台座を用意した。
次に、前記台座の前記凹み部の上面に、前記硬化前の試験片、及び、硬化後の試験片をそれぞれ載置した。
次に、各試験片の表面側から、直径7mmのプローブを、下方向に速さ10mm/分で押し込み、曲げ荷重の最大値(Fmax)を測定し、以下の式を用いて曲げ応力(σ)を算出した。
曲げ応力(σ)=(3FmaxL)/(2bh2)
Fmax:曲げ荷重の最大値
L:支点間距離=46mm
b:試験片幅=10mm
h:試験片厚さ
(ロール巻き取り性の評価)
実施例及び比較例で得られた積層体を、直径6インチのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(ABS)製コアに巻きつけることによってロールを得た。
前記ロールの外観を目視で観察し、その結果を下記評価基準に従って評価した。
○:コアに巻きつけることが可能で、かつ、シワ、割れ、ロール端部からの接着剤層のはみ出しなどの外観不良がなかった。
△:コアに巻きつけることはできたが、表面にシワ、割れ、ロール端部からの接着剤層のはみ出しなどの外観不良が発生した。
×:コアに巻きつけることができなかった。
(打ち抜き加工性の評価)
実施例及び比較例で得られた積層体を、ビク刃(刃角42度)を用いて25mm×100mmのサイズに打ち抜いた。その後、3波長蛍光灯下で打ち抜き加工された積層体の表面を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。
○:クラックや、基材と接着剤層の間の剥がれなどがまったく確認されなかった。
×:クラックや、基材と接着剤層の間の剥がれなどが確認された。
(剛性の評価)
実施例及び比較例で得られた積層体を、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ)を用いて、照射光量1.0J/cm2で紫外線を照射することによって、前記積層体が硬化し形成した物品を得た。
次に、前記物品を鋼板の表面に固定し、前記物品の上面に高さ50cmの位置から28gの鋼球を2回続けて落下させた。その後、3波長蛍光灯下で、前記物品の上面を目視で観察し、鋼球落下による窪み具合を下記評価基準にしたがい評価した。
◎:目視で確認できる窪みはなく、剛体といえるものであった。
○:浅い窪みはあるがあまり目立つものではなく、実用上、剛体といえるものであった。
×:著しい窪みがあり、剛体といえるものではなかった。
(曲面形状付与性の評価)
実施例及び比較例で得られた積層体を、直径5cmの円柱に巻きつけ、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ、照射光量1.0J/cm2)を用い紫外線を照射し前記積層体を硬化させた後、前記円柱を取り除くことによって、図3に示す形状の物品を得た。前記物品を製造した直後の、図3で示す距離1は、5cmであった。
前記物品を23℃下に1時間放置した後、図3に示す距離1を測定した。
前記放置後の物品の距離1と、前記製造直後の物品の距離1(5cm)と比較することによって、その曲面形状の維持具合を下記の評価基準にしたがい評価した。
○:前記放置後の前記物品の距離1が5cm以上6cm未満を維持していた。
×;前記放置後の前記物品の距離1が6cm以上であった。または、前記物品にシワや割れなどの外観不良が発生していた。
なお、前記「ロール巻き取り性」の評価において、ロールに巻きとることができなかったものは、「曲面形状付与性」の評価を行うことなく、「×」と評価した。
表2のとおり、実施例1〜4の積層体は、硬化前の曲げ応力が35MPa未満であったため、良好なロール巻き取り性や打ち抜き加工性を有するものであった。また、硬化後の曲げ応力が35MPa以上であったため、良好な剛性を有するものであった。更に、硬化前の曲げ応力が35MPa未満であり、硬化後の曲げ応力が35MPa以上であることで、硬化前に曲面形状を形成させ、且つ、硬化後に曲面形状を維持できることを確認された。一方、比較例1〜2の積層体は、硬化後の曲げ応力が35MPa未満であったため、剛性の評価での窪みの発生が確認された。また、比較例3〜4の積層体は、硬化前の曲げ応力が35MPa以上であるため、ロールでの巻き取りや打ち抜き加工時で外観不良の発生が確認された。更に、比較例1〜4の積層体は、貯蔵弾性率(E’20)が3.0×106Pa未満である活性エネルギー線硬化性接着剤層(A’)を有さないことから、曲面形状を付与することができなかった。