以下、図面を参照して、本発明に係るバランサ装置10を、直列4気筒自動車用エンジン(以下、単にエンジン1と記す。)に適用した実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、エンジン1は、クランクシャフト2を水平方向に延在させた直列4気筒エンジンであり、シリンダ軸線を後方に傾斜させた姿勢で自動車に搭載される。上下の方向はエンジン1が自動車に搭載された状態で定まるものであるが、以下の説明では、説明及び理解を容易にするために、概ね鉛直に延びるシリンダ軸線方向及びこれに直交するクランク軸方向を上下・左右とするものとし、図1中にもこれに従って矢印で方向を示している。
エンジン1は、シリンダを形成すると共に下部にスカート部を有するアッパブロック3や、アッパブロック3の下部に結合され、アッパブロック3のスカート部と協働してクランク室4を画成するロアブロック5、ロアブロック5の下部に結合され、クランク室4の下方にオイル溜まりを画成するオイルパン6、ロアブロック5の下部に結合され、オイルパン6の内部に配置されるバランサ装置10等を備えている。以下、アッパブロック3とロアブロック5とを併せてシリンダブロック7と称する。
クランクシャフト2は、シリンダ内に摺動自在に設けられた図示しないピストンのピストンピンとコンロッド8を介して連結される4つのクランクピン2a(以下、左側から順に第1〜第4クランクピン2aと称する)や、クランクピン2aを挟む位置に設けられた5つのジャーナル2b(以下、左側から順に第1〜第5ジャーナル2bと称する)、ジャーナル2bとクランクピン2aとを連結するクランクアーム2c、クランクアーム2cにクランクピン2aと相反する側に一体形成されたカウンタウェイト2d等を備えている。第1及び第4クランクピン2aは同位相の位置に配置され、第2及び第3クランクピン2aは、第1及び第4クランクピン2aと位相が180度異なる同位相の位置に配置されている。
クランクシャフト2の第1及び第5ジャーナル2bを軸支する軸受壁はシリンダブロック7の左壁及び右壁により構成され、第2〜第4ジャーナル2bを軸支する軸受壁はクランク室4内に設けられた隔壁により構成されている。
クランクシャフト2の左端は、第1ジャーナル2bから更に左方に延出し、シリンダブロック7の左壁から突出している。この突出した部分には、バランサ装置10を駆動するための比較的大径の大スプロケット2e(ドライブスプロケット)及び図示しないカムシャフトを駆動するための比較的小径の小スプロケット2fが第1ジャーナル2b側からこの順に固定されている。小スプロケット2fの外側にはクランクシャフト2を貫通させるようにチェーンケース9が設けられている。チェーンケース9の外側に位置するクランクシャフト2の左端には、エンジン1の補機を駆動するためのクランクプーリ2gが固定されている。
バランサ装置10は、ピストンの往復運動に起因して発生するエンジン1の二次振動を低減する。図2に併せて示すように、バランサ装置10は、それぞれクランクシャフト2と平行に配置された前後一対のバランサシャフト12(前バランサシャフト12F、後バランサシャフト12R)と、前バランサシャフト12Fと同軸上に配置されるインプットシャフト13と、これら2本のバランサシャフト12F、12R及びインプットシャフト13を軸支すると共に収容するバランサハウジング14とを備えている。両バランサシャフト12F、12Rは、シリンダ軸線方向において同じ高さに配置される。
バランサハウジング14は、両バランサシャフト12F、12Rの軸心(回転中心)を通る平面に沿って上下に2分割された上ハウジング14A及び下ハウジング14Bを主要素として構成される。上ハウジング14A及び下ハウジング14Bは、互いに組み付けられた状態で右側壁に開口を形成する形状とされている。この開口は、周縁にシール部材を設けたハウジングプレート14Cによって閉塞される。下ハウジング14Bの底壁には、組み付け時に各シャフト12、13が回転しないようにインプットシャフト13を固定すべく、図示しないピンを挿入するためのピン挿入孔14a(図1)が形成されている。
バランサハウジング14は、オイルの撹拌によるフリクションの増大を抑制するために、ピン挿入孔14a及び後述するオイル排出口以外からはオイルが侵入できない液密構造となっている。バランサ装置10は、バランサハウジング14の適所に設けられたボルト挿通孔14b(本実施形態では、図2に示す5箇所)に下方から挿通される図示しない通しボルトによってロアブロック5の下面(クランクシャフト2の下方)に締結される。
バランサハウジング14には、上ハウジング14A及び下ハウジング14Bにそれぞれ形成された半割りの軸受によって構成される6つのジャーナル軸受21〜26が形成されている。第1〜第4ジャーナル軸受21〜24は前バランサシャフト12Fの軸線(軸心及びその延長線)上に左から順に配置され、第5及び第6ジャーナル軸受25、26は、後バランサシャフト12Rの軸心上に左から順に配置されている。なお、本明細書において、軸受について「軸線(又は軸心)上に配置されている」とは、軸線(又は軸心)と同軸に軸線(又は軸心)周りに配置されているという意味である。
第5ジャーナル軸受25及び第6ジャーナル軸受26は、それぞれ第3ジャーナル軸受23及び第4ジャーナル軸受24と左右方向について同一の位置においてこれらの後方に配置されている。第3ジャーナル軸受23と第5ジャーナル軸受25とを形成する軸受壁、及び第4ジャーナル軸受24と第6ジャーナル軸受26とを形成する軸受壁は、それぞれ前後方向に連続する一体の壁として構成される。第3〜第6ジャーナル軸受23〜26の幅は、第1及び第2ジャーナル軸受21、22の幅よりも大きく、概ね同一の寸法とされている。
上ハウジング14A及び下ハウジング14Bは、適所に配置された複数のボルト孔14cに挿入される複数のボルトB(図6参照)によって互いに締結される。本実施形態では、ボルト孔14cは、第1ジャーナル軸受21を形成する軸受壁と第2ジャーナル軸受22を形成する軸受壁とを連結する壁に2つと、第3及び第5ジャーナル軸受23、25を形成する軸受壁に3つと、第4及び第6ジャーナル軸受24、26を形成する軸受壁に形成された3つとの合計8箇所に形成されている。ボルト孔14cは、上記連結壁においては、第1及び第2ジャーナル軸受21、22の外側(前後)に配置され、2つの軸受壁においては、それぞれ2つのジャーナル軸受23・25、24・26の間と2つのジャーナル軸受23・25、24・26の外側とに配置されている。なお、ボルト孔14cは、図6に示すように、上ハウジング14Aにおいては上ハウジング14Aを貫通する挿通孔として構成され、下ハウジング14BにおいてはボルトBを螺着させる雌ねじ孔として構成され、ボルトBは上からボルト孔14cに挿入される。後述する油路が接続する雌ねじ孔は有底とされている。
図1及び図2に戻り、インプットシャフト13は、バランサハウジング14から左方に突出するように設けられ、この突出した部分のクランク軸方向において大スプロケット2eと対応する位置にはドリブンスプロケット13aが固定されている。また、インプットシャフト13には、ドリブンスプロケット13aの右方に第1ジャーナル13b及び第2ジャーナル13cが比較的小さな間隔を空けて形成され、第2ジャーナル13cから右方に比較的大きな間隔を空けた右端に第3ジャーナル13dが形成されている。インプットシャフト13の第1、第2及び第3ジャーナル13b、13c、13dは、それぞれ第1、第2及び第3ジャーナル軸受21、22、23によって支持される。
クランクシャフト2の大スプロケット2e及びインプットシャフト13のドリブンスプロケット13aにはローラチェーン15が巻き掛けられる。即ち、大スプロケット2e、ローラチェーン15及びドリブンスプロケット13aにより、クランクシャフト2の回転力をインプットシャフト13に伝達する巻き掛け式の第1伝動機構16が構成される。インプットシャフト13はクランクシャフト2と同方向に回転する。
インプットシャフト13の第2ジャーナル13cの右方には拡径する鍔状のスラストプレート13e(カラー)が一体形成され、スラストプレート13eの右方(スラストプレート13eと第3ジャーナル13dとの間)には比較的大径の第1ヘリカルギヤ13fが固定されている。スラストプレート13eの両面(インプットシャフト13の軸方向の両端面)は、後述するようにインプットシャフト13のスラスト荷重をバランサハウジング14に伝達するスラスト面になる。
バランサハウジング14のスラストプレート13eに対応する位置には、スラストプレート13eの少なくとも周縁部を受容すると共に、少なくとも一部においてスラストプレート13eの両面から伝達されるスラスト荷重を支持するスラスト軸受を形成するための溝14d(14Ad、14Bd)が環状に形成されている。
図1のIII部を拡大して示す図3に示されるように、この溝14dは、上ハウジング14Aにおいて、スラストプレート13eよりも広い幅を有し、スラストプレート13eを非接触状態で受容する受容溝14Adとして半円弧状に形成される。一方、下ハウジング14Bにおいては、溝14dは、スラストプレート13eと略同一の幅を有し、スラストプレート13eの両面と面接触状態で薄い流体膜を介してインプットシャフト13のスラスト荷重を支持する一対のスラスト軸受面14e、14eを形成するスラスト軸受溝14Bdとして半円弧状に形成される。即ち、下ハウジング14Bのスラスト軸受溝14Bdが形成された壁部がインプットシャフト13のスラスト軸受を構成している。
図4は、図2中のIV部を、インプットシャフト13を取り除いた状態に示す透視拡大図である。図3及び図4に示すように、下ハウジング14Bの両スラスト軸受面14e、14eには、インプットシャフト13の径方向に延在してスラスト軸受面14e、14eに潤滑油を供給する給油溝14f、14fが形成されている。本実施形態では、各スラスト軸受面14eの前後方向の中央に上下方向に延在する1つの給油溝14fが形成されている。両給油溝14f、14fは、スラストプレート13eの下端よりも下方まで延びており、スラスト軸受溝14Bdにおけるスラストプレート13eの周囲に形成された隙間を介して互いに連通している。
図3に示すように、インプットシャフト13の第2ジャーナル13cとスラストプレート13eとの間における下ハウジング14Bの底面14gは、インプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13fとスラストプレート13eとの間における下ハウジング14Bの底面14hよりも低くなっている。
図1のV部を拡大して示す図5に示すように、インプットシャフト13の前バランサシャフト12F側の軸端面(右端面)には、円形断面の有底孔13gがインプットシャフト13の軸心上に形成されている。即ち、インプットシャフト13の前バランサシャフト12F側の端部(第3ジャーナル13dの少なくとも一部)が、均一の厚さを有する筒状の壁によって形成されている。有底孔13gは、ドリル加工によって形成され、その底面13hはドリルの先端刃の形状に合わせて円錐形状となっている。また、有底孔13gの側周面(第3ジャーナル13dの内周面と略一致)は、ジャーナル軸受面として利用できるように平滑に仕上げられる。有底孔13gの側周面の深さd(軸方向長さ)は、インプットシャフト13の第3ジャーナル13dの幅(軸方向長さ)よりも若干大きくされている。
図2に示すように、両バランサシャフト12F、12Rは、それぞれ第3及び第5ジャーナル軸受23、25に対応する位置に形成された第1ジャーナル12Fa(図5参照)、12Raと、第4及び第6ジャーナル軸受24、26に対応する位置に形成された第2ジャーナル12Fb、12Rbとを備えている。また、両バランサシャフト12F、12Rは、それぞれ第2ジャーナル12Fb、12Rbの左右両側に設けられ、回転中心から径方向外側に重心位置を偏倚させた実質的に同一形状の左右一対のバランサウェイト12Fc・12Fc、12Rc・12Rcと、左側のバランサウェイト12Fc、12Rcと第1ジャーナル12Fa、12Raとの間に固定された第1ヘリカルギヤ12Fd、12Rdとを備えている。
後バランサシャフト12Rは、第1ジャーナル12Raを第5ジャーナル軸受25によって軸支され、第2ジャーナル12Rbを第6ジャーナル軸受26によって軸支される。一方、前バランサシャフト12Fは、図5に併せて示すように、左端に配置された第1ジャーナル12Faをインプットシャフト13の有底孔13gに突入させるように配置され、第2ジャーナル12Fbを第4ジャーナル軸受24によって軸支される。
即ち、前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faは、有底孔13gを画成する部分であるインプットシャフト13の第3ジャーナル13dによって軸支される。前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faは、有底孔13gの側周面の深さdよりも若干小さい軸方向長さとされており、左右方向において第3ジャーナル軸受23と略同じ位置に配置される。従って、直接的にはインプットシャフト13の第3ジャーナル13dが前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Raを軸支するが、実質的には、第3ジャーナル軸受23が、インプットシャフト13の第3ジャーナル13d及び前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faの両方を軸支している。
左右のバランサウェイト12Fc、12Rc間の第2ジャーナル12Fb、12Rbを軸支する第4ジャーナル軸受24及び第6ジャーナル軸受26には、軸受メタル28が配置されている。
両バランサシャフト12F、12Rにおいては、左右一対のバランサウェイト12Fc、12Rcの互いに対向する部分が第2ジャーナル12Fb、12Rbに対して拡径された鍔状とされており(図1、図2参照)、この鍔状部分の対向する内面が第4ジャーナル軸受24又は第6ジャーナル軸受26にスラスト力を伝達するスラスト面になっている。つまり、第4及び第6ジャーナル軸受24、26を形成する軸受壁が両バランサシャフト12F、12Rの軸方向荷重を支持するスラスト軸受を兼ねている。
図2に示すように、前バランサシャフト12Fは、上記のように第1ジャーナル12Faが左端を構成している。一方、後バランサシャフト12Rは、第1ジャーナル12Raから更に左方に延出しており、この延出した部分にはインプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13fと互いに噛み合う第2ヘリカルギヤ12Reが固定されている。即ち、これらの第1ヘリカルギヤ13f及び第2ヘリカルギヤ12Reにより、インプットシャフト13の回転力を後バランサシャフト12Rに伝達する第2伝動機構17が構成される。これにより、後バランサシャフト12Rはインプットシャフト13と逆方向に回転する。なお、後バランサシャフト12Rの第2ヘリカルギヤ12Re及び第1ヘリカルギヤ12Rdのねじれの向きは同一とされており、これによって後バランサシャフト12Rの軸方向荷重が小さくなっている。
そして、後バランサシャフト12Rの第1ヘリカルギヤ12Rd及び前バランサシャフト12Fの第1ヘリカルギヤ12Fdは互いに噛み合っており、これらの第1ヘリカルギヤ12Rd、12Fdにより、後バランサシャフト12Rの回転力を前バランサシャフト12Fに伝達する第3伝動機構18が構成される。第3伝動機構18をなすこれらの第1ヘリカルギヤ12Rd、12Fdは、同一径及び同一歯数とされており(増速ギヤ比=1)、両バランサシャフト12F、12Rは、互いに相反する方向に同一回転速度で回転する。
第1伝動機構16及び第2伝動機構17の増速比は、両バランサシャフト12F、12Rがクランクシャフト2の回転速度の2倍の回転速度となるように設定されている。具体的には、本実施形態では、第1伝動機構16のチェーン増速比は4/3に設定され、第2伝動機構17の増速ギヤ比は3/2に設定され、第1伝動機構16と第2伝動機構17とを合わせた機構の増速比が2となっている。
従って、クランクシャフト2の回転速度を1とした場合、インプットシャフト13の回転速度は4/3(クランクシャフト2と同方向)、前バランサシャフト12Fの回転速度は2(クランクシャフト2と同方向)となり、前バランサシャフト12Fのインプットシャフト13に対する相対回転速度(即ち、軸受であるインプットシャフト13の第3ジャーナル13dに対する前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faの回転速度)は2/3となる。
また、ドリブンスプロケット13aの直径及び丁数(歯数)は大スプロケット2e(図1)の直径及び丁数の3/4倍となり、インプットシャフト13の回転速度がクランクシャフト2の回転速度の2倍になる時の比(1/2倍)よりも大きくなる。これにより、第1伝動機構16における騒音が小さくなる。
一方、インプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13fの直径及び歯数は、後バランサシャフト12Rの第2ヘリカルギヤ12Reの直径及び歯数の3/2倍となり、インプットシャフト13の回転速度がクランクシャフト2の回転速度の2倍になる時の比(1倍)よりも大きくなる。これにより、後述するようにインプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13fのみが油没して第2伝動機構17の潤滑を行う本実施形態では、オイルの撹拌によるフリクションが低減される。
バランサ装置10の各摺動部には、図示しないオイルポンプによってオイルパン6内のオイルストレーナの吸入口から吸い込まれてエンジン1の各部に向けて圧送されるエンジンオイルが油路を介して供給され、潤滑油として利用される。具体的には、バランサ装置10においては、第1〜第6ジャーナル軸受21〜26にエンジンオイルが供給される。
以下、バランサ装置10における油路の構成を説明する。図1に示すように、クランクシャフト2の第1ジャーナル2bを軸支する軸受壁にはメインギャラリからバランサ装置10にオイルを供給するブロック内油路29が設けられている。このブロック内油路29から供給されるオイルは、上ハウジング14Aの上面からバランサ装置10に導入され、上下に延在する図示しない油路を通って下ハウジング14Bとの接合面に供給される。
図2に示すように、下ハウジング14Bの上面には油路溝30(30A、30B)が形成されている。なお、詳細な図示は省略するが、上ハウジング14Aの下面にも同様に油路溝30が形成される。この油路溝30においては、下ハウジング14Bの前端の左端部がオイル入口30aとなる。油路溝30は、このオイル入口30aから後方へ延びる第1分岐溝30Aと、右方へ延びる第2分岐溝30Bとに分岐する。
第1分岐溝30Aは、オイル入口30aから後方へ延びた後に湾曲し、左方へ延びて連結壁に至り、連結壁においてボルト孔14cの周縁に沿って(ボルトBの周囲に)環状に形成されている。そして第1分岐溝30Aは、この環状部分から上ハウジング14Aの下面を通って、図3に示すように、第1及び第2ジャーナル軸受21、22の軸受面の上半分に円弧状に形成され、第1及び第2ジャーナル軸受21、22とインプットシャフト13の第1及び第2ジャーナル13b、13cと間の軸受隙間にオイルを供給する。
第2分岐溝30Bは、図2に示すように、オイル入口30aから右方へ延び、第3及び第5ジャーナル軸受23、25を形成する軸受壁の前端部において湾曲して後方へ延び、ボルト孔14cの周縁に沿って延びた後に第3ジャーナル軸受23の前端に至る。図6に併せて示すように、第3ジャーナル軸受23において、第2分岐溝30Bは第3ジャーナル軸受23の幅方向の中央において軸受面に沿って円環状に形成されており、第3ジャーナル軸受23とインプットシャフト13の第3ジャーナル13dとの間の軸受隙間にオイルを供給する。
第2分岐溝30Bは、第3ジャーナル軸受23の後端から再び後方へ延びてボルト孔14cの周縁に沿って延びた後、第5ジャーナル軸受25の前端に至る。第5ジャーナル軸受25においても、第2分岐溝30Bは第5ジャーナル軸受25の幅方向の中央において軸受面に沿って円環状に形成されており、第5ジャーナル軸受25と後バランサシャフト12Rの第1ジャーナル12Raとの間の軸受隙間にオイルを供給する。
図5及び図6に示すように、インプットシャフト13の第3ジャーナル13dの幅方向(軸方向)の中央には、筒状の壁を貫通して内外を連通する少なくとも1つのオイル供給孔31が形成されている。本実施形態では、2つのオイル供給孔31が180°異なる位置に直線状に形成されている。それぞれのオイル供給孔31は第3ジャーナル13dの外周面及び有底孔13gの側周面(第3ジャーナル13dの内周面)に開口している。
前バランサシャフト12Fには、左端面から軸方向に延び、少なくとも第2ジャーナル12Fbの幅方向の中央に至る(図1参照)有底のシャフト内油路32Fが形成されている。シャフト内油路32Fの左端の開口は栓33(チェックボール)によって閉塞されている。後バランサシャフト12Rにも、同様に栓33で閉塞されたシャフト内油路32R(図6)が形成されている。
そして、前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faの幅方向の中央には、外周面に円環状溝34が形成されると共に、円環状溝34とシャフト内油路32Fとを連通するべく径方向に延びる少なくとも1つのオイル導入孔35Fが形成されている。本実施形態では、2つのオイル導入孔35Fが180°異なる位置に直線状に形成されている。図1及び図2に示すように、前バランサシャフト12Fの第2ジャーナル12Fbの幅方向の中央には、内方のシャフト内油路32Fと外方とを連通する少なくとも1つのオイル導出孔36Fが形成されている。本実施形態では、バランサウェイト12Fcと相反する側(軸受隙間が大きい側)に1つのオイル導出孔36Fが形成されている。
一方、図2及び図6に示すように、後バランサシャフト12Rの第1ジャーナル12Raの幅方向の中央には、内方のシャフト内油路32Rと外方とを連通するべく径方向に延びる少なくとも1つのオイル導入孔35Rが形成されている。本実施形態では、2つのオイル導入孔35Rが180°異なる位置に直線状に形成されている。また、図2に示すように、後バランサシャフト12Rの第2ジャーナル12Rbの幅方向の中央にも、内方のシャフト内油路32Rと外方とを連通する少なくとも1つのオイル導出孔36Rが形成されている。前バランサシャフト12Fと同様に本実施形態では、バランサウェイト12Rcと相反する側(軸受隙間が大きい側)に1つのオイル導出孔36Rが形成されている。
このように構成された油路構造では、図5及び図6に示すように、第3ジャーナル軸受23に形成された第2分岐溝30Bの円環状部分を流通するオイルが、インプットシャフト13のオイル供給孔31を通って第3ジャーナル13dの内側の軸受面(前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faとの間の軸受隙間)に供給されると共に、円環状溝34を通ってオイル導入孔35Fから前バランサシャフト12Fのシャフト内油路32Fに流入する。シャフト内油路32Fに流入したオイルは、図1及び図2に示すようにオイル導出孔36Fを通って第2ジャーナル12Fbと第4ジャーナル軸受24(軸受メタル28)との間の軸受隙間に供給される。
同様に、図2及び図6に示すように、第5ジャーナル軸受25に形成された第2分岐溝30Bの円環状部分を流通するオイルが、オイル導入孔35Rから後バランサシャフト12Rのシャフト内油路32Rに流入する。シャフト内油路32Rに流入したオイルは、図2に示すようにオイル導出孔36Rを通って第2ジャーナル12Rbと第6ジャーナル軸受26(軸受メタル28)との間の軸受隙間に供給される。
以上がジャーナル軸受21〜26に対するオイルの供給路の構成である。次に、ジャーナル軸受21〜26の潤滑に供されたオイルの排出路及びスラスト軸受に対するオイルの供給路の構成について説明する。
図3に示すように、第1分岐溝30Aによって第1ジャーナル軸受21及び第2ジャーナル軸受22に供給されたオイルは、それぞれ左方及び右方に漏れ出る。第1ジャーナル軸受21から左方に漏れ出るオイルはそのままオイルパン6に回収される。第1ジャーナル軸受21から右方に漏れ出るオイルは、下ハウジング14Bの第1ジャーナル軸受21と第2ジャーナル軸受22との間の底壁に形成されたピン挿入孔14aからバランサハウジング14の外に排出され、オイルパン6に回収される。同様に、第2ジャーナル軸受22から左方に漏れ出るオイルもピン挿入孔14aからバランサハウジング14の外に排出され、オイルパン6に回収される。
なお、ピン挿入孔14aは下ハウジング14Bの底壁に形成されており、ピン挿入孔14aからオイルパン6内のオイルがバランサ装置10の内部に浸入し得るが、ピン挿入孔14aが第1ジャーナル軸受21と第2ジャーナル軸受22との間に形成されているため、オイルの浸入によるフリクションの増大は極めて小さい。
一方、第2ジャーナル軸受22から右方に漏れ出るオイルは、下ハウジング14Bに形成されたスラスト軸受溝14Bdに供給され、その一対のスラスト軸受面14e、14eとスラストプレート13eの両面との間でスラスト軸受の潤滑に供される。この際、オイルは、給油溝14fからスラスト軸受面14eに供給される。また、上記のように、一対の給油溝14f、14fは互いに連通しているため、給油溝14fが排出油路としても機能する。即ち、スラストプレート13eの左方に溜まったオイルは、両給油溝14f、14fを通ってスラストプレート13eの右方に流れることができる。一方、上記のようにスラストプレート13eの左方における下ハウジング14Bの底面14gがスラストプレート13eの右方における底面14hよりも低くなっていることにより、左方の給油溝14f内のオイルが無くなってスラスト軸受の潤滑油が不足することが防止される。
また、上記のように上ハウジング14Aの受容溝14Adはスラストプレート13eを非接触状態で受容しており、受容溝14Adのスラストプレート13eとの隙間もスラストプレート13eの左方に溜まったオイルをスラストプレート13eの右方に導く排出油路として機能する。受容溝14Adの隙間は、スラストプレート13eの左方のオイルがインプットシャフト13の軸心よりも上方まで溜まった時にオイルをスラストプレート13eの右方に導くだけでなく、スラストプレート13eの左方のオイルがインプットシャフト13の軸心以下の液位までしか溜まっていない時にも、スラストプレート13eの遠心力で飛散して天井面などに付着して流れ落ちるオイルをスラストプレート13eの右方に導くことができる。
このようにしてスラストプレート13eの右方に移動したオイルは、図1及び図2に示すようにインプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13f及び後バランサシャフト12Rの第2ヘリカルギヤ12Reを受容する凹部に溜まり、第1ヘリカルギヤ13f及び第2ヘリカルギヤ12Re(第2伝動機構17)の潤滑に供される。この際、インプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13fの直径が後バランサシャフト12Rの第2ヘリカルギヤ12Reの直径よりも大きいため、オイルは第1ヘリカルギヤ13fを受容する凹部に溜まり、第1ヘリカルギヤ13fに付着して潤滑に供される。第1ヘリカルギヤ13fによって掻き上げられて飛散したオイルは、上ハウジング14Aの上壁に形成された図示しないオイル排出口からバランサ装置10の外に排出され、オイルパン6に回収される。
また、第3ジャーナル軸受23とインプットシャフト13の第3ジャーナル13dとの潤滑に供され、第3ジャーナル軸受23から左方に漏れ出るオイルも、第2伝動機構17の潤滑に供されると共にインプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13fによって掻き上げられてバランサ装置10の外に排出される。第5ジャーナル軸受25において後バランサシャフト12Rとの潤滑に供され、第5ジャーナル軸受25から左方に漏れ出るオイルも同様である。
図2及び図5に示すように、インプットシャフト13の第3ジャーナル13dと第1ヘリカルギヤ13fとの間、即ち前バランサシャフト12Fの左端の第1ジャーナル12Faよりも有底孔13gの底側には、有底孔13gを画成する部分を径方向に貫通する少なくとも1つのオイル排出孔37が形成されている。上記のように有底孔13gの底面13hは円錐形状となっているため、オイル排出孔37の径方向内側の端部は有底孔13gの底面13hに開口している。本実施形態では、2つのオイル排出孔37が180°異なる位置に直線状に形成されている。
従って、インプットシャフト13の第3ジャーナル13dと前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faとの間の軸受隙間で潤滑に供され、左方に漏れ出るオイルは、有底孔13gの底部からオイル排出孔37を通過して排出され、上記と同様に第2伝動機構17の潤滑に供されると共にインプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13fによって掻き上げられてバランサ装置10の外に排出される。
図1及び図2に示すように、第3ジャーナル軸受23、インプットシャフト13の第3ジャーナル13dの有底孔13g及び第5ジャーナル軸受25から右方に漏れ出るオイルは、両バランサシャフト12F、12Rの第1ヘリカルギヤ12Fd、12Rdを受容する凹部に溜まり、第1ヘリカルギヤ12Fd、12Rd(第3伝動機構18)の潤滑に供される。第1ヘリカルギヤ12Fd、12Rdによって掻き上げられて飛散したオイルは、上ハウジング14Aの上壁に形成された図示しないオイル排出口からバランサ装置10の外に排出され、オイルパン6に回収される。
第4ジャーナル軸受24及び第6ジャーナル軸受26においては、軸受隙間(軸受メタル28の内側)に供給されて潤滑に供されたオイルが軸受隙間から左右に漏れ出た後、軸受壁の側面と左右のバランサウェイト12Fc、12Rcのスラスト面との間でスラスト軸受の潤滑に供される。その後、オイルは左右一対のバランサウェイト12Fc、12Rcを受容する凹部に溜まり、図1に破線で示す連通路38を通って第3伝動機構18を構成する第1ヘリカルギヤ12Fd、12Rdを受容する凹部に流れ、第1ヘリカルギヤ12Fd、12Rdによって掻き上げられてバランサ装置10の外に排出される。
連通路38は、左右一対のバランサウェイト12Fc、12Rcが最も低い位置にある状態(図1の状態)において、バランサウェイト12Fc、12Rcの下端よりも低い位置に形成されている。エンジン1が左右方向に傾いていない状態では、第3伝動機構18の第1ヘリカルギヤ12Fd、12Rdの下端がバランサウェイト12Fc、12Rcの下端よりも低い位置にある(バランサウェイト12Fc、12Rcの最大半径よりも第1ヘリカルギヤ12Fd、12Rdの最大半径の方が大きい)。また、上記のように、バランサハウジング14は、ピン挿入孔14a及び上ハウジング14Aの上壁に形成されたオイル排出口以外からオイルが浸入できない構造となっている。そのため、左右方向の慣性力が作用せず、油面が水平な状態では、第1ヘリカルギヤ12Fd、12Rdによってオイルが掻き上げられることにより、油面はバランサウェイト12Fc、12Rcの下端よりも低くなる。これにより、バランサウェイト12Fc、12Rcのオイル撹拌によるフリクションの増大が防止される。
このように構成されたバランサ装置10では、各摺動部及び噛合部がオイルで潤滑されつつ図7中に矢印に示すように動力伝達が行われる。即ち、クランクシャフト2の回転力は、第1伝動機構16の大スプロケット2e(図1)、ローラチェーン15(図1)及びドリブンスプロケット13aを介してインプットシャフト13に伝達され、第2伝動機構17を構成する第1ヘリカルギヤ13f及び第2ヘリカルギヤ12Reを介して後バランサシャフト12Rに伝達される。上記のように、後バランサシャフト12Rはクランクシャフト2の2倍の回転速度でクランクシャフト2と逆方向に回転する。後バランサシャフト12Rの回転力は、第3伝動機構18を構成する2つの第1ヘリカルギヤ12Rd、12Fdを介して前バランサシャフト12Fに伝達される。前後一対のバランサシャフト12F、12Rは、互いに相反する方向に同一の回転速度で回転する。これにより、エンジン1の二次振動を打ち消すシリンダ軸線方向の慣性力が発生する。
以上のように、バランサ装置10では、図2及び図5に示すように、インプットシャフト13と前バランサシャフト12Fとが同軸上に配置され、インプットシャフト13の軸端面に円形断面の有底孔13gが同軸に形成され、前バランサシャフト12Fが第1ジャーナル12Faをインプットシャフト13の有底孔13gに突入させるように配置され、インプットシャフト13の有底孔13gが形成された側の端部に形成された第3ジャーナル13dが第3ジャーナル軸受23によって軸支され、前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faがインプットシャフト13の有底孔13gを画成する第3ジャーナル13dによって軸支され、インプットシャフト13の第3ジャーナル13dに径方向に貫通するオイル供給孔31が形成されている。
これにより、第3ジャーナル軸受23によってインプットシャフト13の第3ジャーナル13dと前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faとが軸支されるため、軸受幅が小さくなると共に、加工や組立の工数が削減される。また、インプットシャフト13の第3ジャーナル13dに形成されたオイル供給孔31から前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faを軸支する有底孔13gの側周面にオイルが供給されるため、油路の構造が簡単になり、これによってもバランサ装置10が小型化されると共に加工工数が削減される。
また、インプットシャフト13に有底孔13gが形成されてこの有底孔13gに前バランサシャフト12Fが突入しているため、前バランサシャフト12Fに有底孔13gが形成されてこの有底孔13gにインプットシャフト13が突入する場合に比べてフリクションが低減される。即ち、前バランサシャフト12Fに有底孔13gが形成されてこの有底孔13gにインプットシャフト13が突入する場合であっても、クランクシャフト2の回転速度を1とした時の回転速度比が4/3であるインプットシャフト13と前バランサシャフト12Fとの相対回転速度比は同一(2/3)である。一方、前バランサシャフト12Fに有底孔13gが形成されてこの有底孔13gにインプットシャフト13が突入する場合、第3ジャーナル軸受23に対する前バランサシャフト12Fの回転速度比は2であるが、本実施形態では、第3ジャーナル軸受23に対する前バランサシャフト12Fの回転速度比がより小さな4/3となるため、第3ジャーナル軸受23におけるフリクションが小さくなる。
本実施形態では、インプットシャフト13の孔が有底孔13gとされ、インプットシャフト13における前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faよりも有底孔13gの底面13h側に、有底孔13gを画成する部分を径方向に貫通するオイル排出孔37が形成されている。これにより、有底孔13g内に排出されるオイルがオイル排出孔37から排出され、インプットシャフト13及び前バランサシャフト12Fにスラスト方向の油圧が作用することがない。従って、インプットシャフト13のスラスト荷重が小さくなり、フリクションが低減する。
本実施形態では、前バランサシャフト12Fにおける軸方向でオイル供給孔31と対応する第1ジャーナル12Faの外周面に円環状溝34が形成され、前バランサシャフト12Fに、内部を軸方向に延びるシャフト内油路32Fと、シャフト内油路32Fと円環状溝34とを連通するべく径方向に延在するオイル導入孔35Fとが形成されている。そのため、前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faに供給されるオイルの油路を延長し、第2ジャーナル12Fbにオイルを供給することが容易である。
≪変形実施形態≫
次に、図8を参照して変形実施形態に係るバランサ装置10について説明する。なお、上記実施形態と形態又は機能が共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
上記実施形態では、クランクシャフト2から一対のバランサシャフト12F、12Rへの動力伝達において、巻き掛け式の第1伝動機構16と、互いに噛み合う一対の歯車からなる歯車式の第2伝動機構17とによって2段階の増速が行われていたのに対し、本変形実施形態のバランサ装置10では、第2伝動機構17が2つの増速機構(二対の歯車)を備え、3段階の増速が行われる。
以下、具体的に説明する。バランサ装置10は、前後一対のバランサシャフト12F、12R及びインプットシャフト13に加え、インプットシャフト13と平行に配置された中間シャフト51を備えている。本変形実施形態では、中間シャフト51は、後バランサシャフト12Rと同軸上に配置されている。中間シャフト51には、インプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13fに噛み合う第1ヘリカルギヤ51aが固定されると共に、第1ヘリカルギヤ51aから右方に離間した位置に第2ヘリカルギヤ51bが固定されている。
一対のバランサシャフト12F、12Rの構成も上記実施形態と異なっている。具体的には、後バランサシャフト12Rにおいては、第1ジャーナル12Raが左端をなし、上記第2ヘリカルギヤ12Reは設けられていない。前バランサシャフト12Fにおいては、第1ジャーナル12Faと第1ヘリカルギヤ12Fdとの間であって、左右方向において中間シャフト51の第2ヘリカルギヤ51bと対応する位置に、当該第2ヘリカルギヤ51bと噛み合う第2ヘリカルギヤ12Feが固定されている。
中間シャフト51は、右端に第1ジャーナル51cを、第1ヘリカルギヤ51aと第2ヘリカルギヤ51bとの間に第7ジャーナル軸受27によって軸支される第2ジャーナル51dを備え、右端面に円形断面の有底孔51gが形成されている。第2ジャーナル51dは、想像線で示すように第1ヘリカルギヤ51aの左方に設けられてもよい。中間シャフト51の第1ジャーナル51cは第5ジャーナル軸受25により軸支され、後バランサシャフト12Rが第1ジャーナル12Raを中間シャフト51の有底孔51gに突入させるように配置される。即ち、実質的に、第5ジャーナル軸受25が、中間シャフト51の第1ジャーナル51c及び後バランサシャフト12Rの第1ジャーナル12Raの両方を軸支する。一方、第3ジャーナル軸受23が、実質的にインプットシャフト13の第3ジャーナル13d及び前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faの両方を軸支する点は上記実施形態と同様である。
インプットシャフト13の第1ヘリカルギヤ13f及び中間シャフト51の第1ヘリカルギヤ51aによって第1歯車機構17Aが構成され、中間シャフト51の第2ヘリカルギヤ51b及び前バランサシャフト12Fの第2ヘリカルギヤ12Feによって第2歯車機構17Bが構成される。そして、中間シャフト51、第1歯車機構17A及び第2歯車機構17Bによって第2伝動機構17が構成される。
このように構成されたバランサ装置10では、図中に矢印で示すように動力伝達が行われる。即ち、ドリブンスプロケット13aを含む第1伝動機構16を介してインプットシャフト13に伝達されたクランクシャフト2の回転力は、第2伝動機構17の第1歯車機構17Aを介して中間シャフト51に伝達される。中間シャフト51の回転力は、第2伝動機構17の第2歯車機構17Bを介して前バランサシャフト12Fに伝達され、前バランサシャフト12Fをクランクシャフト2の2倍の回転速度でクランクシャフト2と同方向に回転させる。前バランサシャフト12Fの回転力は、第3伝動機構18を介して後バランサシャフト12Rに伝達され、後バランサシャフト12Rを前バランサシャフト12Fと相反する方向に同一の回転速度で回転させる。
そして、第1伝動機構16のチェーン増速比は、インプットシャフト13の回転速度がクランクシャフト2の回転速度よりも速くかつ前バランサシャフト12Fの回転速度よりも遅くなるように、1よりも大きくかつ2よりも小さく設定される。また、第2伝動機構17の第1歯車機構17Aの増速ギヤ比は、中間シャフト51の回転速度がインプットシャフト13の回転速度よりも速くかつ前バランサシャフト12Fの回転速度よりも遅くなるように、1よりも大きくかつ2よりも小さく設定される。例えば、第1伝動機構16のチェーン増速比が4/3に設定される場合、第1歯車機構17Aの増速ギヤ比が4/3、第2歯車機構17Bの増速ギヤ比が9/8に設定されることにより、バランサシャフト12F、12Rの回転速度がクランクシャフト2の回転速度の2倍になる。
図示は省略するが、中間シャフト51にもインプットシャフト13のスラストプレート13eと同様のスラスト部材を設け、下ハウジング14Bにスラスト軸受を設けるとよい。中間シャフト51に設けるスラスト部材の位置は、第1ヘリカルギヤ51aと第2ヘリカルギヤ51bとの間や、第1ヘリカルギヤ51aの左方とすればよい。
油路構造についても、詳細な図示は省略するが、上記実施形態と同様の要領で、図5に示した構成の油路を第5ジャーナル軸受25、中間シャフト51及び後バランサシャフト12Rに適用すればよい。具体的には、中間シャフト51にオイル供給孔31及びオイル排出孔37(図5)を形成し、後バランサシャフト12Rには、オイル導入孔35R(図6)に加えて円環状溝34を形成する。
以上のように、本変形実施形態のバランサ装置10では、図8及び図5に示すように、インプットシャフト13及び前バランサシャフト12Fが同軸上に配置されるだけでなく、中間シャフト51及び後バランサシャフト12Rも同軸上に配置され、インプットシャフト13及び中間シャフト51に形成された有底孔13g、51gにそれぞれ前バランサシャフト12F及び後バランサシャフト12Rが突入するように配置され、それぞれの突入部にオイル供給孔31からオイルが供給される。これにより、インプットシャフト13及び中間シャフト51を有するバランサ装置10においても、軸受幅が小さくなると共に、加工や組立の工数が削減される。
本変形実施形態においても上記実施形態と同様に、前バランサシャフト12Fに有底孔13gが形成されてこの有底孔13gにインプットシャフト13が突入する場合や、後バランサシャフト12Rに有底孔51gが形成されてこの有底孔51gに中間シャフト51が突入する場合に比べてフリクションが低減される。即ち、インプットシャフト13と前バランサシャフト12Fとの関係においては、上記実施形態と同様に、前バランサシャフト12Fに有底孔13gが形成された場合の第3ジャーナル軸受23での(前バランサシャフト12Fの)回転速度比は2となり、インプットシャフト13に有底孔13gが形成された本変形実施形態の場合には第3ジャーナル軸受23での(インプットシャフト13の)回転速度比がより小さな4/3となる。一方、中間シャフト51と後バランサシャフト12Rとの関係においては、後バランサシャフト12Rに有底孔51gがされた場合であっても、クランクシャフト2の回転速度を1とした時の回転速度比が16/9である中間シャフト51と後バランサシャフト12Rとの相対回転速度比は同一(2/9)である。一方、後バランサシャフト12Rに有底孔51gがされた場合、第5ジャーナル軸受25での(後バランサシャフト12Rの)回転速度比は2となり、中間シャフト51に有底孔51gが形成された本変形実施形態の場合には第5ジャーナル軸受25での(中間シャフト51の)回転速度比がより小さな16/9となる。これにより、第3ジャーナル軸受23及び第5ジャーナル軸受25におけるフリクションが小さくなる。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として車載用内燃機関のバランサ装置10として説明を行ったが、鉄道車両や船舶、航空機等にも広く適用することができ、バランサ装置10以外の機械装置に適用することもできる。また、上記実施形態では、第2伝動機構17や第3伝動機構18の歯車にヘリカルギヤを用いているが、平歯車ややまば歯車等を用いてもよい。上記実施形態では、巻き掛け式の第1伝動機構16にローラチェーン15を用いているが、サイレントチェーン等の他の構造のチェーンを用いてもよい。上記実施形態では、前バランサシャフト12Fの第1ジャーナル12Faの外周面に円環状溝34が形成されているが、インプットシャフト13の有底孔13gの側周面に円環状溝34が形成されてもよい。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。一方、上記実施形態に示したバランサ装置10の各要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。