JP2016094536A - 熱可塑性樹脂フィルムとその製造方法、光学フィルム、偏光子保護フィルム、および位相差フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上であるメタクリル樹脂(A)と、ビニルアセタール樹脂(B)とを含み、メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、メタクリル樹脂(A)の含有量が95質量部以下75質量部超であり、ビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5質量部以上25質量部未満である、熱可塑性樹脂フィルム。
【選択図】なし
Description
本発明はまた、上記熱可塑性樹脂フィルムを用いた、光学フィルム、偏光子保護フィルム、および位相差フィルムに関する。
従来、偏光子保護フィルムには、トリアセチルセルロースが主に使用されている。しかしながら、トリアセチルセルロースからなるフィルムは透湿度が高く、薄膜化に従って偏光子の品質が低下する傾向がある。
そこで、新たな偏光子保護フィルムの材料として、メタクリル樹脂が検討されている。
従来一般的なメタクリル樹脂のみからなる樹脂フィルムは、靱性等の力学物性が不充分であり、製膜性が良くない。
メタクリル樹脂からなるフィルムを延伸処理すると靭性が高まることが知られている(特許文献1を参照)。しかしながら、従来一般的なメタクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は低く耐熱性が低いため、メタクリル樹脂からなる延伸フィルムは熱収縮しやすい。
また、偏光子保護フィルム等の光学フィルムにおいては、フィルムの位相差をゼロまたはそれに近い値に調整できることが好ましい。
ビニルアセタール樹脂は、メタクリル樹脂との親和性が良く、ガラス転移温度(Tg)の差も小さい。ビニルアセタール樹脂を添加することで、各種力学物性および製膜性を向上することができる。
ビニルアセタール樹脂自身は正の固有複屈折を有し、負の固有複屈折を有するメタクリル樹脂にブレンドすることで、フィルムの位相差を所望の範囲に容易に調整することができる。
例えば、偏光子保護フィルム等の用途では、フィルムの位相差をゼロまたはそれに近い値に調整することができる。位相差フィルム等の用途では、所望の値に調整することができる。
特許文献7には、ビニルブチラール樹脂中のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量、並びに水分率を特定範囲に調整することで、ダンベル試験片のヘイズおよび面内方向レタデーションが好適な範囲内となることが記載されている。
しかしながら、特許文献4〜8では、従来一般的なメタクリル樹脂を用いているため、耐熱性の向上効果は得られない。
上記第1のメタクリル樹脂を用いることで、耐熱性を向上できる。上記第2のメタクリル樹脂を用いることで、各種力学物性および製膜性を向上できる。
メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、メタクリル樹脂(A)の含有量が95質量部以下75質量部超であり、ビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5質量部以上25質量部未満である、
熱可塑性樹脂フィルム。
重量平均分子量が50000〜150000であり、
分子量200000以上の成分の含有量が0.1〜10%であり、
分子量15000未満の成分の含有量が0.2〜5%である、
(1)に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上である第1のメタクリル樹脂(X1)と、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が45〜58%である第2のメタクリル樹脂(X2)とを含み、
第1のメタクリル樹脂(X1)と第2のメタクリル樹脂(X2)との合計量100質量部に対して、
第1のメタクリル樹脂(X1)の含有量が40〜70質量部であり、
第2のメタクリル樹脂(X2)の含有量が60〜30質量部であるメタクリル樹脂である、
(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム。
(8)(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムからなる位相差フィルム。
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上であるメタクリル樹脂(A)と、ビニルアセタール樹脂(B)とを含み、
メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、メタクリル樹脂(A)の含有量が95質量部以下75質量部超であり、ビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5質量部以上25質量部未満である熱可塑性樹脂組成物を用意する工程と、
前記熱可塑性樹脂組成物をフィルム成形する工程とを含む、
熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
メタクリル樹脂(A)に含まれる少なくとも1種の前記メタクリル樹脂をアニオン重合法により製造する、
(9)に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上である第1のメタクリル樹脂(X1)と、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が45〜58%である第2のメタクリル樹脂(X2)とを含み、
第1のメタクリル樹脂(X1)をアニオン重合法により製造し、
第2のメタクリル樹脂(X2)をラジカル重合法により製造する、
(9)または(10)に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)とを含む。
メタクリル樹脂(A)およびビニルアセタール樹脂(B)はそれぞれ、1種または2種以上用いることができる。
耐熱性向上の観点から、メタクリル樹脂(A)は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)の下限が58%、好ましくは59%、より好ましくは60%、特に好ましくは62%、最も好ましくは65%である。
一般に、メタクリル樹脂は、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が高くなる程、耐熱性は向上する一方、靱性等の力学物性が低下し、製膜性が低下する傾向がある。
本発明では、比較的高シンジオタクティシティのメタクリル樹脂(A)に対して、後記ビニルアセタール樹脂(B)をブレンドすることで、靱性等の力学物性の向上を図り、製膜性の向上を図っている。
シンジオタクティシティが上記範囲にあると、熱収縮率が抑制され、厚さが均一で且つ表面平滑性に優れ、表面硬度の大きいフィルムが得られやすい。
なお、ポリマー分子中の構造単位の連鎖(2連子、diad)において立体配置が同じものをメソ(meso)、逆のものをラセモ(racemo)と称し、それぞれm、rと表記する。
メタクリル樹脂の三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)(%)は、重水素化クロロホルム中、30℃で、1H-NMRスペクトルを測定し、そのスペクトルからTMSを0ppmとした際の、0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、式:(X/Y)×100にて算出することができる。
この場合、第1のメタクリル樹脂(X1)と第2のメタクリル樹脂(X2)との合計量100質量部に対して、第1のメタクリル樹脂(X1)の含有量が40〜70質量部であり、第2のメタクリル樹脂(X2)の含有量が60〜30質量部であることが好ましい。
第1のメタクリル樹脂(X1)および第2のメタクリル樹脂(X2)はそれぞれ、1種または2種以上用いることができる。
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上である第1のメタクリル樹脂(X1)を用いることで、耐熱性を一層向上できるが、この樹脂単独では、靱性等の力学物性が低下し、製膜性が低下する傾向がある。三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上である第1のメタクリル樹脂(X1)と三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58%以下である第2のメタクリル樹脂(X2)とを併用することで、耐熱性を向上しつつ、靱性等の力学物性の向上、並びに、製膜性の向上を図ることができる。
メタクリル樹脂(A)のMwが上記範囲にあると、靭性等の力学物性が良好であり、フィルムの厚さが均一で表面平滑性に優れるフィルムが得られやすい。
分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲にあると、靭性等の力学物性が良好で、表面平滑性に優れるフィルムが得られやすい。
なお、本明細書において、MwおよびMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したよるクロマトグラムを標準ポリスチレンの分子量に換算した値である。
本明細書において、GPC測定は後記[実施例]の項に記載の方法にて行う。
メタクリル樹脂(A)は、分子量15000未満の成分(本明細書において、「低分子量成分」と定義する。)の含有量が0.2〜5%、好ましくは1〜4.5%である。
メタクリル樹脂(A)の高分子量成分および低分子量成分の含有量が上記範囲の場合、製膜性が向上し、均一な膜厚のフィルムが得られやすい。
分子量15000未満の成分(低分子量成分)の含有量は、GPCで得られるクロマトグラムとベースラインとで囲まれる部分の面積のうちの、分子量15000の標準ポリスチレンの保持時間より遅い保持時間部分の面積の割合として算出する。
メタクリル酸エステルとしては例えば、
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、およびメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル;
メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸アリールエステル;
メタクリル酸シクロへキシル、およびメタクリル酸ノルボルネニル等のメタクリル酸シクロアルキルエステル等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
上記の中でも、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチル(MMA)が特に好ましい。
さらに、メタクリル樹脂(A)において、全構造単位に対するメタクリル酸メチル(MMA)に由来する構造単位の含有量が、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
メタクリル樹脂(A)に用いることができるメタクリル酸エステル以外の他の単量体としては例えば、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−エチルへキシル等のアクリル酸アルキルエステル;
アクリル酸フェニル等のアクリル酸アリールエステル;
アクリル酸シクロへキシル、およびアクリル酸ノルボルネニル等のアクリル酸シクロアルキルエステル;
スチレン、およびα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;
(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリロニトリル等の一分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を一つだけ有するビニル系単量体等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
ガラス転移温度(Tg)が上記範囲にあると、フィルムの熱収縮等の変形が起こり難い。
ガラス転移温度(Tg)は、分子量またはシンジオタクティシティ(rr)等を調節することによって制御することができる。
本明細書において、特に明記しない限り、「ガラス転移温度(Tg)」は、後記[実施例]の項に記載の方法で測定される中間点ガラス転移温度である。
耐熱分解性が高く、異物が少なく、透明性が高いメタクリル樹脂が得られるという観点から、無溶剤の連続ラジカル重合およびアニオン重合法等が好ましい。
メタクリル酸エステルの二量体および三量体が少なく、フィルムの外観が優れるという観点からは、アニオン重合法が好ましい。
シンジオタクティシティ(rr)が比較的高いメタクリル樹脂を重合する場合、重合法によらず、重合温度は好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下である。
ただし、一般的にラジカル重合法では、重合温度が低いと、重合開始剤が効果的に働かず、重合が効率良く開始されない恐れがある。この場合、低温重合においても重合開始剤が良好に機能するアニオン重合が好ましい。
透明性が高く、シンジオタクティシティ(rr)が比較的高いメタクリル樹脂(A)が容易に製造できるという観点から、メタクリル樹脂(A)をなす少なくとも1種のメタクリル樹脂はアニオン重合法で製造することが好ましい。
具体的には、
アニオン重合法によって特性が規定範囲を満たすメタクリル樹脂(A)を製造する方法;
アニオン重合法で製造されたメタクリル樹脂とラジカル重合で製造されたメタクリル樹脂とを混合することによって、特性が規定範囲を満たすメタクリル樹脂(A)を製造する方法;
および、
アニオン重合法で製造された複数種のメタクリル樹脂を混合することによって、特性が規定範囲を満たすメタクリル樹脂(A)を製造する方法等が好ましい。
例えば、メタクリル樹脂(A)が第1のメタクリル樹脂(X1)と第2のメタクリル樹脂(X2)とを含む場合、好ましくは、第1のメタクリル樹脂(X1)はアニオン重合法で製造し、第2のメタクリル樹脂(X2)は通常の高温ラジカル重合法で製造することができる。
AlR1R2R3
(上記式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、またはN,N−二置換アミノ基を表す。
R2およびR3は、これらが互いに結合してなる、置換基を有していてもよいアリーレンジオキシ基であってもよい。)
あらかじめ用意された複数種のメタクリル樹脂を公知方法により溶融混練する方法;
および、
あらかじめ用意された1種または複数種のメタクリル樹脂の存在下で、他のメタクリル樹脂を重合する方法が挙げられる。
後者の方法では、メタクリル樹脂(A)に掛かる熱履歴が短くなるので、メタクリル樹脂(A)の熱分解が抑制され、着色や異物の少ないフィルムが得られやすい。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムでは、耐熱性の高いメタクリル樹脂(A)に対して、ビニルアセタール樹脂(B)をブレンドする。
例えば、偏光子保護フィルム等の用途では、フィルムの位相差をゼロまたはそれに近い値に調整することができる。位相差フィルム等の用途では、所望の値に調整することができる。
従来、偏光子保護フィルムおよび位相差フィルム等の用途では、メタクリル樹脂に対して、ポリカーボネートをブレンドすることで、位相差を調整している。本発明では、ポリカーボネートを用いなくても、位相差を容易に調整することができる。
ビニルアセタール樹脂(B)は、ポリカーボネートよりもメタクリル樹脂(A)との親和性が高いので、ポリカーボネートよりも多く添加することができ、位相差の調整自由度が大きい。また、各種力学物性および製膜性を向上できる利点もある。
lはビニルアルコール単位のモル比であり、l≧0である。
mはビニルエステル単位のモル比であり、m≧0である。
kはアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比である。
k/2はビニルアセタール単位のモル比であり、k/2>0である。
ビニルアセタール樹脂(B)が、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位、およびビニルアセタール単位のみからなる場合、k+l+m=1である。
PVAのアセタール化に用いたアルデヒドの一般式はRa−CHOで表される。
上記式(I)〜(III)中のRaはこのアルデヒドのRaと同一である。
ビニルエステルの一般式はRbCOOCH=CH2で表される。
上記式(I)〜(III)中のRbはこのビニルエステル(RbCOOCH=CH2)中のRbと同一である。
各単位の配列順序は特に制限されない。
各単位は、ランダムに配列されていてもよいし、ブロック状に配列されていてもよいし、テーパ状に配列されていてもよい。また、繰り返し単位間の結合は、Head-to-Tailであってもよいし、Head-to-Headであってもよい。
ビニルアルコール樹脂(PVA)は、1種または2種以上を用いることができる。
ビニルアルコール樹脂(PVA)の製造方法としては、ポリ酢酸ビニル等の1種または2種以上のビニルエステル系重合体をアルカリ、酸、またはアンモニア水等によりけん化する方法等が挙げられる。
上記ビニルエステル系重合体の重合に用いられるビニルエステル単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、およびバーサティック酸ビニル等が挙げられる。中でもビニルアルコール樹脂(PVA)の生産性の観点から、酢酸ビニルが好ましい。
エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、および1−ヘキセン等のα−オレフィン類;
(メタ)アクリル酸およびその塩;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、および(メタ)アクリル酸i−プロピル等の(メタ)アクリル酸エステル類;
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、およびN−エチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、およびn−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、および1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類;
アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、およびヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;
ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、およびポリオキシブチレン基等のオキシアルキレン基を有する単量体;
ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;
酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、および3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類またはそのエステル化物;
N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、およびN−ビニルピロリドン等のN−ビニルアミド類;
フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体;
エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、または2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;
ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、およびジメチルアリルアミン等のアリルエチルアミンに由来するカチオン基を有する単量体等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
溶液重合法において使用される溶媒としてのアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、およびプロピルアルコール等の低級アルコールが通常用いられる。
上記各種重合法に使用される重合開始剤としては、
α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)等のアゾ化合物;
および、
過酸化ベンゾイル、およびn−プロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。
上記各種重合法において、重合温度については特に制限されず、通常0〜200℃である。
アルカリ性物質としては、水酸化カリウム、および水酸化ナトリウム等が挙げられる。
アルカリ性物質の使用量は、ビニルエステル系重合体中のビニルエステル単位に対して、モル比で、好ましくは0.004〜0.5、より好ましくは0.005〜0.05である。
アルカリ性物質は、けん化反応の初期に一括添加してもよいし、けん化反応の途中で追加添加してもよい。
けん化反応時に使用可能な溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、およびジメチルホルムアミド等が挙げられる。中でもメタノールが好ましい。溶媒は含水率を調整されたものが好ましい。溶媒の含水率は、好ましくは0.001〜1質量%、より好ましくは0.003〜0.9質量%、特に好ましくは0.005〜0.8質量%である。
PVAのけん化度は、好ましくは95mol%超、より好ましくは98mol%以上、特に好ましくは99mol%以上である。
けん化度が過低では、ビニルアセタール樹脂(B)の熱安定性が不充分になり、製膜時に熱分解あるいは架橋ゲル化等が生じる恐れがある。
洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、および水等が挙げられる。中でも、メタノール、酢酸メチル、水、またはこれらの混合液が好ましい。
洗浄液の使用量は、後述するアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量を満足するように設定するのが好ましく、PVA100質量部に対して、好ましくは300〜10000質量部、より好ましくは500〜5000質量部である。
洗浄温度は、好ましくは5〜80℃、より好ましくは20〜70℃である。
洗浄時間は、好ましくは20分間〜100時間、より好ましくは1〜50時間である。
アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が0.00001質量部未満のPVAは工業的に製造が困難である。また、同含有量が1質量部超では、得られるビニルアセタール樹脂(B)中に残存するアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が多くなり、製膜時に熱分解あるいは架橋ゲル化等が生じる恐れがある。
アルカリ金属としては、ナトリウムおよびカリウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属としては、カルシウムおよびバリウム等が挙げられる。
なお、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の含有量は、原子吸光法またはICP発光分析法で求めることができる。
ビニルアルコール樹脂(PVA)の粘度平均重合度が過小では、得られるビニルアセタール樹脂(B)の力学物性が不足して、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの力学物性、特に靭性が低下する恐れがある。
ビニルアルコール樹脂(PVA)の粘度平均重合度が過大では、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの原料である熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が高くなる傾向がある。
具体的には、ビニルアルコール樹脂(PVA)を完全に再けん化し、精製した後、30℃の水中で極限粘度[η](dl/g)を測定し、その値から下記式にて算出される。
炭素数4以上のアルデヒドおよび/または炭素数3以下のアルデヒドを用いることができる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
中でも、ビニルアセタール樹脂(B)の製造容易性の観点から、アセトアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)等が好ましく、アセトアルデヒド等が特に好ましい。
これらは1種または2種以上用いることができる。
中でも、ビニルアセタール樹脂(B)の製造容易性の観点から、ブチルアルデヒド等が好ましい。
すなわち、1種または2種以上の炭素数3以下のアルデヒドのみを用いるか、あるいは、1種または2種以上の炭素数3以下のアルデヒドと1種または2種以上の炭素数4以上のアルデヒドとを併用することが好ましい。
炭素数3以下のアルデヒドと炭素数4以上のアルデヒドとを併用する場合、ビニルアセタール樹脂(B)の製造容易性とビニルアセタール樹脂(B)の熱安定性および力学物性の観点から、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとの組合わせが好ましい。
ビニルアルコール樹脂(PVA)の水溶液とアルデヒドとを酸触媒の存在下でアセタール化反応させて樹脂粒子を析出させる水媒法;
および、
ビニルアルコール樹脂(PVA)を有機溶媒中に分散させ、酸触媒存在下でアルデヒドとアセタール化反応させ、この反応液をビニルアセタール樹脂(B)に対して貧溶媒である水等により析出させる溶媒法等が挙げられる。
これらのうち水媒法が好ましい。
酢酸、およびp−トルエンスルホン酸等の有機酸類;
硝酸、硫酸、および塩酸等の無機酸類;
炭酸ガス等の水溶液にした際に酸性を示す気体;
および、
陽イオン交換体および金属酸化物等の固体酸触媒等が挙げられる。
先ず、アセタール化されなかったビニルアルコール単位の質量比(l0)および酢酸ビニル単位の質量比(m0)を滴定によって求める。アセタール化されたビニルアルコール単位の質量比(k0)を式:k0=1−l0−m0にて算出する。これらから、アセタール化されなかったビニルアルコール単位のモル比(l)および酢酸ビニル単位のモル比(m)を計算し、式:k=1−l−mにて、アセタール化されたビニルアルコール単位のモル比(k)を算出する。
ビニルアセタール樹脂(B)を重水素化ジメチルスルフォキサイドに溶解し、1H−MMRまたは13C−NMRを測定して、アセタール化されなかったビニルアルコール単位のモル比(l)、ビニルエステル単位のモル比(m)、およびアセタール化されたビニルアルコール単位のモル比(k)を算出する。ここで、k0+l0+m0=1、k+l+m=1である。そして、式:{k/(k+l+m)}×100にて、アセタール化度を算出する。
同様に、アセトアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合は、「アセトアセタール化度」と呼ばれる。
同様に、ホルムアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合は、「ホルマール化度」と呼ばれる。
ブチルアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合をk(BA)とする。アセトアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合をk(AA)とする。ホルムアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合をk(FA)とする。アセタール化されていないビニルアルコール単位のモル割合をlとする。酢酸ビニル単位のモル割合をmとする。
ブチラール化度(mol%)は、式:k(BA)/{k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m}×100で求められる。
アセトアセタール化度(mol%)は、式:k(AA)/{k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m}×100で求められる。
ホルマール化度(mol%)は、式:k(FA)/{k(BA)+k(AA)+k(FA) +l+m}×100で求められる。
なお、アルデヒドごとのアセタール化度は、1H−NMRまたは13C−NMRによって、アセタール化したアルデヒドの比率を測定することによって算出することができる。ただし、k(BA)+k(AA)+k(FA)+l+m=1である。
ビニルアセタール樹脂(B)が、ビニルアルコール樹脂(PVA)を炭素数3以下のアルデヒドと炭素数4以上のアルデヒドとで共アセタール化して得られた樹脂である場合、ビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度は、連続生産性の観点から、好ましくは55〜85mol%であり、より好ましくは60〜83mol%であり、特に好ましくは70〜83mol%である。
上記範囲のアセタール化度を有するビニルアセタール樹脂(B)は、製造容易で溶融加工も容易である。
ビニルエステル単位が過多では、ビニルアセタール樹脂(B)の熱安定性および連続生産性等が低下する恐れがある。
したがって、ビニルアセタール樹脂(B)の粘度平均重合度は、ビニルアルコール樹脂(PVA)と同様、好ましくは500以上、より好ましくは500〜4,000、特に好ましくは500〜3,000、最も好ましくは500〜2,000である。
ビニルアセタール樹脂(B)の重合度が過低では、ビニルアセタール樹脂(B)の力学物性が不足し、特に靭性が不足する恐れがある。ビニルアセタール樹脂(B)の重合度が過高では、溶融粘度が高くなり、製膜が困難になる恐れがある。
酸触媒の除去方法としては、
スラリーの水洗を繰り返す方法;
スラリーに中和剤を添加する方法;
および、
スラリーにアルキレンオキサイド類等を添加する方法等が挙げられる。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、および炭酸カリウム等のアルカリ金属化合物;
水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;
および、
アンモニアまたはその水溶液等が挙げられる。
エチレンオキサイド、およびプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド;
および、
エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類等が挙げられる。
精製方法は特に制限されず、洗浄液を用いた洗浄と脱洗浄液とを繰り返す方法等が通常用いられる。
洗浄液としては、水、または、水にメタノールおよびエタノール等のアルコールを加えた混合液等が挙げられる。
洗浄液中の水/アルコールの混合比率は、質量比で、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは60/40〜90/10である。
水の割合が過小では、ビニルアセタール樹脂(B)の混合洗浄液中への溶出が多くなる傾向がある。水の割合が過多では、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の除去効率が低下する傾向がある。
アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の量が100ppm超では、高温下でゲルが発生して、本発明の熱可塑性樹脂フィルムの連続生産性が低下する傾向がある。
なお、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の含有量が0.1ppm未満のビニルアセタール樹脂(B)は、それを得るために長時間の洗浄を要するので、製造コストが高くなり、工業的な生産が難しい傾向がある。
水分率が、0.005%未満のものは製造が難しく、過度な熱履歴を経ることがあるため、着色を起こす等して、品質が低下する場合がある。一方、水分率が2%を超えると、製膜が困難な場合がある。
なお、水分率はカールフィッシャー法で測定することができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの靱性等の力学物性、耐熱性、透明性、ヘイズ、および製膜性が良好となり、フィルムの位相差を小さく調整し易いという観点から、メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との配合比は以下の通りとする。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムにおいて、メタクリル系樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、メタクリル系樹脂(A)の含有量は95質量部以下75質量部超、ビニルアセタール樹脂(B)の含有量は5質量部以上25質量部未満である。
好ましくは、メタクリル系樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、メタクリル系樹脂(A)の含有量は93質量部以下80質量部超、ビニルアセタール樹脂(B)の含有量は7質量部以上20質量部未満である。
特に好ましくは、メタクリル系樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、メタクリル系樹脂(A)の含有量は93質量部以下84質量部超、ビニルアセタール樹脂(B)の含有量は7質量部以上16質量部未満である。
偏光子保護フィルム等の用途において、上記配合比とすることで、位相差をゼロまたはそれに近い値に調整することができる。
偏光子保護フィルム等の用途において、膜厚200μmの一軸延伸フィルムの場合、膜厚方向の位相差(Rth)は好ましくは−15〜+15nmである。
位相差フィルム等の用途において、上記配合比とすることで、位相差を所望の範囲に調整することができる。
ビニルアセタール樹脂(B)の量が5質量部未満では、フィルムの靭性等の力学物性および製膜性が低下する。また、偏光子保護フィルムおよび位相差フィルム等の光学フィルム等の用途において、位相差を好適な範囲内に調整することが難しくなる。
一方、ビニルアセタール樹脂(B)の量が25質量部以上では、透明性が低下し、ヘイズが高くなる。また、偏光子保護フィルムおよび位相差フィルム等の光学フィルムの用途において、位相差を好適な範囲内に調整することが難しくなる。
他の重合体または樹脂;
および、
フィラー、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、光拡散剤、有機色素、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、発泡剤、充填剤、および蛍光体等の各種添加剤等が挙げられる。
他の重合体または樹脂としては、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、およびポリノルボルネン等のオレフィン樹脂;
エチレン系アイオノマー;
ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、およびMBS樹脂等のスチレン系樹脂;
メチルメタクリレート−スチレン共重合体;
ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート等のエステル樹脂;
ナイロン6、ナイロン66、およびポリアミドエラストマー等のポリアミド;
ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、およびシリコーン変性樹脂;
アクリルゴム、アクリル系熱可塑性エラストマー、およびシリコーンゴム;
SEPS、SEBS、およびSIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;
IR、EPR、およびEPDM等のオレフィン系ゴム等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに含有し得る他の重合体または樹脂の合計量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、および炭酸マグネシウム等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに含有し得るフィラーの量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下である。
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。
例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、およびチオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、同一分子中にリン系酸化防止剤の効果を持つ部分およびヒンダードフェノール系酸化防止剤の効果を持つ部分を含む酸化防止剤を用いることもできる。
これらの酸化防止剤は1種または2種以上を用いることができる。
中でも、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤およびヒンダードフェノール系酸化防止剤等が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤の使用量:ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量は、質量比で、1:5〜2:1が好ましく、1:2〜1:1がより好ましい。
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、および2,4−ジt−アミル−6−(3’,5’−ジt−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)等が好ましい。
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、およびホルムアミジン類等が挙げられる。
これらは1種または2種以上を用いることができる。
上記の中でも、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、または波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
ベンゾトリアゾール類としては、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、
2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、
および、
2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール](ADEKA社製;LA−31)等が好ましい。
このような紫外線吸収剤としては、
2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(ADEKA社製;LA−F70)、
およびその類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;TINUVIN477−D、TINUVIN460、およびTINUVIN479)等が挙げられる。
Y1、Y2、Y3およびY4はそれぞれ独立に、炭素原子以外の二価基(酸素原子、硫黄原子、NH、およびNR5等)である。ここで、R5はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、およびアラルリル基等の置換基である。この置換基は、この置換基にさらに置換基を有してもよい。
Z1およびZ2はそれぞれ独立に、三価基(窒素原子、CH、およびCR6等)である。ここで、R6はアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアラルキル基、およびアラルリル基等の置換基である。この置換基は、この置換基にさらに置換基を有してもよい。
R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシル基、ハロゲノ基、アルキルスルホニル基、モノホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基、チオモルホリノスルホニル基、およびピペラジノスルホニル基等の置換基である。この置換基は、この置換基にさらに置換基を有してもよい。
a、b、cおよびdはそれぞれR1、R2、R3およびR4の数を示し、それぞれ1〜4のいずれかの整数である。
金属錯体の添加量は、本発明の熱可塑性樹脂フィルム100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜2質量部である。
金属錯体は380〜400nmの波長におけるモル吸光係数が大きいので、充分な紫外線吸収効果を得るために添加する量が少なくて済む。添加量が少なくなればブリードアウト等によるフィルム外観の悪化を抑制することができる。また、金属錯体は耐熱性が高いので、製膜時の劣化あるいは分解が少ない。さらに金属錯体は耐光性が高いので、紫外線吸収性能を長期間保持することができる。
シクロヘキサン1Lに紫外線吸収剤10.00mgを添加し、目視による観察で未溶解物がないように溶解させる。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用い、波長380〜450nmでの吸光度を測定する。紫外線吸収剤の分子量(MUV)と、測定された吸光度の最大値(Amax)とから次式により計算し、モル吸光係数の最大値εmaxを算出する。
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。
好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類等が挙げられる。
滑剤としては、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、および硬化油等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
離型剤としては、
セチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類;
および、
ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド等のグリセリン高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
高級アルコール類とグリセリン脂肪酸モノエステルとを併用する場合、その割合は特に制限されないが、高級アルコール類の使用量:グリセリン脂肪酸モノエステルの使用量は、質量比で、2.5:1〜3.5:1が好ましく、2.8:1〜3.2:1がより好ましい。
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造される、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子が用いられる。かかる重合体粒子は、単一組成および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、組成または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。
特に、内層に比較的低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の比較的高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましい。
高分子加工助剤は、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。極限粘度が過小あるいは過大では、製膜性が低下する恐れがある。
具体的には、三菱レイヨン社製メタブレン−Pシリーズ、ロームアンドハース社製、ダウケミカル社製、および呉羽化学社製のパラロイドシリーズ等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムに配合される高分子加工助剤の量は、メタクリル樹脂(A)100質量部とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部である。
高分子加工助剤の配合量は、0.1質量部未満では製膜性が低下する恐れがあり、5質量部超ではフィルムの表面平滑性等が悪化する恐れがある。
耐衝撃性改質剤としては、
アクリル系ゴムもしくはジエン系ゴムをコア層成分として含むコアシェル型改質剤;
および、
ゴム粒子を複数包含した改質剤等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
有機色素としては、紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物等が好ましく用いられる。
光拡散剤または艶消し剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子、タルク、炭酸カルシウム、および硫酸バリウム等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、および蛍光漂白剤等が挙げられる。
これらは1種または2種以上用いることができる。
上記各種添加剤の合計量は、メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、好ましくは7質量部以下、より好ましくは5質量部以下、特に好ましくは4質量部以下である。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法は、特に限定されない。
例えば、メタクリル系樹脂(A)およびビニルアセタール樹脂(B)を含む複数種の原料樹脂を用意し、これら複数種の原料樹脂を溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を得、これを製膜(フィルム成形)する方法が好ましい。
例えば、メタクリル樹脂(A)、ビニルアセタール樹脂(B)、および必要に応じて他の重合体または樹脂を一度に溶融混練することができる。
また、メタクリル樹脂(X1)とメタクリル樹脂(X2)とを溶融混練してメタクリル樹脂(A)を得た後、メタクリル樹脂(A)、ビニルアセタール樹脂(B)、および必要に応じて他の重合体または樹脂を溶融混練してもよい。
混練温度は、樹脂成分の軟化温度に応じて適宜調節され、110〜300℃の範囲内が好ましく、140〜300℃の範囲内がより好ましい。
溶融混練時における熱可塑性樹脂組成物にかかる剪断速度は、好ましくは100sec-1以上であり、より好ましくは200sec-1以上である。
急速冷却によって、メタクリル樹脂(A)が連続相を形成し、ビニルアセタール樹脂(B)が形成する分散相の大きさが非常に小さい状態を維持することができる。
例えば、Tダイ法(ラミネート法、および共押出法等)、インフレーション法(共押出法等)、圧縮成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、真空成形法、圧空成形法、トランスファー成形法、回転成形法、パウダースラッシュ法、および射出成形法(インサート法、二色法、プレス法、コアバック法、およびサンドイッチ法等)等の溶融成形法;
並びに、
溶液キャスト法等が挙げられる。
中でも、生産性の高さ、およびコスト等の点から、Tダイ法、インフレーション法、および射出成形法等が好ましい。
中でも、押出成形法が好ましい。押出成形法によれば、透明性が高く、厚さが均一で且つ表面平滑性に優れたフィルムを比較的高い生産性で得ることができる。押出機から吐出される熱可塑性樹脂組成物の温度は好ましくは160〜270℃、より好ましくは220〜260℃に設定する。異物除去の観点から、押出機には不純物をベントで除去できる設備が付いていることが好ましく、ポリマーフィルターを設置して製造するとよい。また、厚み精度を高いものとするために、ギアポンプを設置して製造するとよい。
上記鏡面は、金属鏡面であることが好ましい。鏡面の金属としてはクロム等が挙げられる。
押し出されたフィルム状物を挟持する一対の鏡面は、双方の鏡面温度が60℃未満の場合、得られる熱可塑性樹脂フィルムの表面平滑性が低下し、ヘイズが高くなる恐れがある。押し出されたフィルム状物を挟持する一対の鏡面は、双方の鏡面温度が130℃超の場合、フィルムと鏡面とが密着しすぎて鏡面からフィルムを剥離する際にフィルム表面が荒れ、得られる熱可塑性樹脂フィルムの表面平滑性が低下し、ヘイズが高くなる恐れがある。
10μm未満のフィルムは、製造が難しい。
500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性、および打抜き性等の二次加工性が低下し、単位面積あたりの材料コストも増大する。
押出成形で得られる未延伸フィルムのヘイズは、厚さ400μmにおいて、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。
延伸処理によって機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。
延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、およびチュブラー延伸法等が挙げられる。
均一に延伸でき、高強度のフィルムが得られるという観点から、延伸温度の下限は好ましくは熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)より10℃高い温度であり、延伸温度の上限は好ましくは熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)より40℃高い温度である。
延伸速度は、好ましくは10〜5000%/分である。
延伸後、熱固定を行うことによって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。延伸後のフィルムの厚さは、好ましくは10〜200μmである。
延伸フィルムの厚さ200μmにおけるヘイズは、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。
延伸することで、面内方向の複屈折性が効果的に発現する。
機能層としては、ハードコート層、アンチグレア層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、防眩層、静電気防止層、防汚層、および、微粒子等を含む易滑性層等が挙げられる。
接着層を構成する接着剤としては、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト系接着剤、および活性エネルギー線硬化型接着剤等が挙げられる。
中でも、水系接着剤および活性エネルギー線硬化型接着剤等が好適である。
水系接着剤は必要に応じて、架橋剤、酸等の触媒、および他の添加剤を含むことができる。
中でも、水系接着剤としてはビニルポリマーを含有する接着剤等が好ましく、ビニルポリマーとしてはビニルアルコール樹脂(PVA)等が好ましい。
ビニルアルコール樹脂(PVA)は、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、およびシュウ酸等の水溶性架橋剤を含むことができる。
接着効果の耐久性向上の観点から、アセトアセチル基を有するビニルアルコール系樹脂(PVA)を含む接着剤がより好ましい。
水系接着剤は通常、0.5〜60質量%の固形分を含む水溶液である。
活性エネルギー線硬化型接着剤としてはまた、エポキシ化合物またはオキセタン化合物と光酸発生剤とを主成分とする光カチオン型硬化成分を含むものを使用できる。
活性エネルギー線としては、電子線および紫外線等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、力学物性が良好で、透明性が高く、ヘイズが低く、表面平滑性が高く、耐熱性が高く、熱収縮率が小さく、位相差の調整が可能である。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、上記特性を活かして、任意の用途に使用できる。
例えば、偏光子保護フィルム、位相差フィルム、液晶保護板、導光板、導光フィルム、プリズムフィルム、拡散板、各種ディスプレイの前面板、携帯型情報端末の表面材、携帯型情報端末の表示窓保護フィルム、および、銀ナノワイヤーまたはカーボンナノチューブを表面に塗布した透明導電フィルム等に好適である。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを偏光子保護フィルムまたは位相差フィルムとして用いる場合、偏光子フィルムの片面または両面に積層することができる。偏光子フィルムと積層する場合、必要に応じて、接着層または粘着層を介して積層することができる。
偏光子フィルムは公知のものを使用でき、ビニルアルコール樹脂(PVA)とヨウ素とを含む延伸フィルム等が挙げられる。その膜厚は好ましくは1〜100μmである。
なお、以下の記載において、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を表し、「%」は「質量%」を表す。
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、カラムとしてGL Sciences Inc.製 Inert CAP 1(df=0.4μm、I.D.=0.25mm、長さ=60m)を接続した。インジェクション温度を180℃とし、検出器温度を180℃とした。カラム温度は、60℃に5分間保持した後、60℃から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持する温度プロファイルとした。これら条件下で測定を行い、得られた結果に基づいて重合転化率を算出した。
メタクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて下記の条件でクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンの分子量に換算して算出した。
GPC装置として、東ソー株式会社製「HLC−8320」を用いた。検出器としては、示差屈折率検出器(RI検出器)を用いた。カラムとしては、東ソー株式会社製の「TSKgel Super Multipore HZM−M」2本と「Super HZ4000」とを直列に繋いだものを用いた。溶離剤としては、テトラヒドロフラン(THF)を用いた。樹脂4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させた溶液を測定試料とした。溶離剤流量は0.35ml/分とした。カラム温度は40℃とした。溶離液流量0.35ml/分で、試料溶液20μlを注入して、クロマトグラムを測定した。
クロマトグラムのベースラインは、GPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。
検量線を用いて算出した積分分子量分布から、分子量200000以上の成分(高分子量成分)の割合、および、分子量15000未満の成分(低分子量成分)の割合を算出した。
なお、分子量が400〜5000000の範囲の標準ポリスチレンを用いてGPC測定し、保持時間と分子量との関係を示す検量線を作成した。検量線は標準ポリスチレン10点のデータを用いて作成した。
メタクリル樹脂の1H−NMRスペクトルを、核磁気共鳴装置(Bruker社製 ULTRA SHIELD 400 PLUS)を用い、溶媒として重水素化クロロホルムを用い、室温下、積算回数64回の条件にて、測定した。
得られたスペクトルからTMSを0ppmとした際の0.6〜0.95ppmの領域の面積(X)と、0.6〜1.35ppmの領域の面積(Y)とを計測し、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)を式:(X/Y)×100にて算出した。
JIS K 7121に準拠して、メタクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)を測定した。
示差走査熱量測定装置(島津製作所社製「DSC−50」)を用い、いったん試料を230℃まで昇温して室温まで冷却した後、再度、室温から230℃まで10℃/分の昇温速度で昇温させる条件にてDSC曲線を測定した。得られたDSC曲線から求められる中間点をガラス転移温度(Tg)とした。なお、DSC曲線において複数のショルダーが現れる場合は、その最も高温側のショルダーに基づいて、ガラス転移温度(Tg)を決定した。
JIS K 7210に準拠して、メタクリル樹脂のメルトフローレート(MFR)を、230℃、3.8kg荷重、10分間の条件で測定した。
ビニルアルコール樹脂(PVA)の粘度平均重合度は、以下のようにして求めた。
JIS K 6726に準拠して、水を基準とするビニルアルコール樹脂(PVA)の相対粘度を測定し、この測定結果を基に粘度平均重合度を算出した。
ビニルアセタール樹脂(B)の粘度平均重合度は、原料であるビニルアルコール樹脂(PVA)の粘度平均重合度と等しいので、ビニルアルコール樹脂(PVA)の粘度平均重合度と同一値とした。
ビニルアセタール樹脂(B)の組成分析は、核磁気共鳴装置(日本電子製 Lambda500)を用い、13C−NMRスペクトルを測定することで、実施した。
溶媒として重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた。
ビニルアセタール樹脂(B)360mg、クロムアセチルアセトナート26mg、およびDMSO約3.0mlを混合して、濃度13wt%/volの試料を得た。
測定モードSGNNE(クロムアセチルアセトナート添加)、測定温度80℃、および積算回数30000回の条件で、13C−NMRスペクトルを測定した。
得られた13C−NMRスペクトルから、ビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度として、各ビニルアルコール単位の全繰返し単位に対するmol%を算出した。
具体的には、ブチルアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位(以下、「ブチルアセタール単位」または「BA単位」とも表記する。)の全繰返し単位に対するmol%、および、アセトアルデヒドでアセタール化されたビニルアルコール単位(以下、「アセトアセタール単位」または「AA単位」とも表記する。)の全繰返し単位に対するmol%を算出した。
得られた13C−NMRスペクトルから、アセタール化されていない残存水酸基(以下、「OH基」とも表記する。)の全繰返し単位に対するmol%、および、けん化されていない残存OAc基(ここで、OAcは、−OC(=O)CH3基である。)の全繰返し単位に対するmol%についても、算出した。
ビニルアセタール樹脂(B)のけん化度(mol%)は、式:100−[残存OAc基の含有量(mol%)]にて、算出した。
ビニルアセタール樹脂(B)のアルカリ金属の含有量を以下のようにして測定した。
ビニルアセタール樹脂(B)2mgを白金るつぼに入れ、H2SO4およびHNO3を添加してホットプレートで炭化し、次いで電気炉で灰化し、残渣を塩酸2mlに溶解した後に50mlのメスフラスコに移し、メスアップした。この溶液についてICP発光分析装置(ジャーレルアッシュ社製 IRIS AP)を用い、高周波出力750W、補助ガス流量(Ar)1.5L/min、ネブライザー流量(Ar)35psi、およびポンプ回転数130rpmの条件で、アルカリ金属であるNaの含有量を測定した。
未延伸フィルムを、Dumb Bell Ltd.製スーパーダンベルカッターで打ち抜いて、JIS K 6251に準拠したダンベル状2号形の試験片を得た。株式会社島津製作所製オートグラフAG−5000Bを用い、得られた試験片を引張り速度5mm/min.で引張り、破断伸度を測定した。
JIS K 7361−1に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて、未延伸フィルムおよび一軸延伸フィルムの全光線透過率を測定した。
JIS K 7136に準拠して、ヘイズメータ(村上色彩研究所製、HM−150)を用いて、未延伸フィルムおよび一軸延伸フィルムのヘイズを測定した。
未延伸フィルムの表面を目視により観察し、下記基準にて表面平滑性を評価した。
○(良):表面が平滑である。
×(不良):表面に凹凸がある。
一軸延伸フィルムの表面に70mmの長さの直線を記入し、80℃の温度に保たれた強制温風循環式恒温オーブン内で30分間加熱した。記入した直線の加熱後の長さ(L(mm))をスケールで読取り、下記式により加熱収縮率を求めた。
加熱収縮率(%)=(70−L)/70×100
一軸延伸フィルムの延伸部分から40mm×30mmの試験片を切り出した。この試験片について、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用い、温度23±2℃、湿度50±5%の条件において、波長590nm、40°傾斜方向の位相差値を測定した。得られたデータから3次元屈折率nx、ny、nzを求め、厚み方向位相差Rth=((nx+ny)/2−nz)×dを計算した。試験片の厚みdは、デジマティックインジケータ(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定し、屈折率nはデジタル精密屈折計(カルニュー光学工業株式会社 KPR−20)を用いて測定した。
(製造例1)
撹拌翼と三方コックが取り付けられた5Lのガラス製反応容器内を窒素で置換した。これに、室温下にて、トルエン1600g、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン2.49g(10.8mmol)、濃度0.45Mのイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウムのトルエン溶液53.5g(30.9mmol)、および濃度1.3Mのsec−ブチルリチウムの溶液(溶媒:シクロヘキサン95%、n−ヘキサン5%)6.17g(10.3mmol)を仕込んだ。撹拌しながら、これに、20℃にて、蒸留精製したメタクリル酸メチル(MMA)550gを30分かけて滴下した。滴下終了後、20℃で90分間撹拌した。溶液の色が黄色から無色に変わった。この時点におけるメタクリル酸メチル(MMA)の重合転化率は100%であった。
得られた溶液にトルエン1500gを加えて希釈した。次いで、得られた希釈液をメタノール100kgに注ぎ入れ、沈澱物を得た。得られた沈殿物を80℃、140Paにて24時間乾燥した。
攪拌機および採取管が取り付けられたオートクレーブ内を窒素で置換した。これに、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル(水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.0052質量部、およびn−オクチルメルカプタン0.225質量部を入れ、撹拌して、原料液を得た。この原料液中に窒素を送り込み、原料液中の溶存酸素を除去した。
オートクレーブと配管で接続された槽型反応器に容量の2/3まで原料液を入れた。温度を140℃に維持して先ずバッチ方式で重合反応を開始させた。重合転化率が55質量%になったところで、平均滞留時間150分となる流量で、原料液をオートクレーブから槽型反応器に供給し、且つ原料液の供給流量に相当する流量で、反応液を槽型反応器から抜き出して、温度140℃に維持し、連続流通方式の重合反応に切り替えた。切り替え後、定常状態における重合転化率は55質量%であった。
定常状態になった槽型反応器から抜き出される反応液を、平均滞留時間2分間となる流量で内温230℃の多管式熱交換器に供給して加温した。次いで加温された反応液をフラッシュ蒸発器に導入し、未反応単量体を主成分とする揮発分を除去して、溶融樹脂を得た。揮発分が除去された溶融樹脂を内温260℃の二軸押出機に供給してストランド状に吐出し、ペレタイザーでカットして、ペレットを得た。
製造例1で得られたメタクリル樹脂(X1−1)57質量部と製造例2で得られたメタクリル樹脂(X2−1)43質量部とを、東洋精機製二軸混練押出機LABO PLASTOMILL 2D30W2を用い、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数100rpmの条件で二軸混練した。
(製造例4)
粘度平均重合度が1000であり、けん化度が99mol%であるビニルアルコール樹脂(PVA、株式会社クラレ製)の10質量%水溶液に、アルデヒド化合物としてのブチルアルデヒドおよびアセトアルデヒドを所定量添加し、さらに、酸触媒としての20%塩酸をPVA100gに対して220ml添加し、攪拌することによって、アセタール化反応を行った。樹脂が析出した後、30℃で60分保持してから、樹脂析出物を含むスラリーを取り出した。公知方法に従ってイオン交換水への投入およびろ過を繰り返して、pH6になるまでスラリーを洗浄し、次いでアルカリ性の水性媒体中に懸濁させて攪拌し、次いでpH=7になるまで洗浄した。その後、揮発分が1.0%になるまで乾燥することによって、ビニルアセタール樹脂(B−1)を得た。揮発分は、乾燥前後の質量またはカールフィッシャー法により求めた。
ビニルアセタール樹脂(B−1)は、ブチルアセタール単位(BA単位)の全繰返し単位に対するモル割合が29mol%であった。
ビニルアセタール樹脂(B−1)は、アセトアセタール単位(AA単位)の全繰返し単位に対するモル割合が53mol%であった。
ビニルアセタール樹脂(B−1)は、残存水酸基(OH基)の含有量が17mol%で、OAc基の含有量が1mol%であった。
ビニルアセタール樹脂(B−1)は、アルカリ金属(Na)含有量が39ppmであった。
ビニルアセタール樹脂(B−1)の主な製造条件と各種物性を表2に示す。
使用するアルデヒドをブチルアルデヒドのみとし、その使用量を変更した以外は製造例4と同様にして、ビニルアセタール樹脂(B−2)を得た。
ビニルアセタール樹脂(B−2)の主な製造条件と各種物性を表2に示す。
メタクリル樹脂(A−1)85質量部およびビニルアセタール樹脂(B−1)15質量部を配合し、東洋精機製二軸押出機LABO PLASTOMILL 2D30W2を用い、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数100rpmの条件で二軸溶融混練することで、熱可塑性樹脂組成物を得た。
配合組成を表3に示す。
メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との配合組成を表3に示す通りとした以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
ビニルアセタール樹脂(B)を使用せず、メタクリル樹脂(A−1)をそのまま評価に供した。
メタクリル樹脂(A−1)の代わりに、メタクリル樹脂(X2−1)を用いた以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を得た。
各実施例および比較例において得られた熱可塑性樹脂組成物または樹脂について、以下の押出製膜とフィルム延伸を実施した。
<押出製膜>
熱可塑性樹脂組成物または樹脂を80℃で12時間乾燥させてから、製膜を実施した。
プラスチック工学研究所製GT−40単軸押出機を用い、熱可塑性樹脂組成物または樹脂を幅500mmのTダイより、樹脂温度260℃にて溶融状態でフィルム状に押出し、Tダイ直下において90℃に温度調節した2本の金属製鏡面ロールで、押付け圧力50N/mmで挟み込み、引き取ることにより、厚さ400μmの未延伸フィルムを得た。
<フィルム延伸>
上記未延伸フィルムから50mm×40mmの試験片を切り出し、これを引張試験機(島津製作所製、AG−IS 5kN)にセットした。試験片の長辺側を一対のチャックで把持させた。一対のチャック間距離は20mmとした。延伸温度をガラス転移温度(Tg)+10℃とし、一対のチャックによる引張方向について、延伸速度15%/分、延伸倍率2倍の条件で延伸し、10秒間保持した後、25℃環境下に取り出すことで常温まで冷却し、延伸部分の厚さが200μmの一軸延伸フィルムを得た。
なお、本明細書において、「常温」とは、25±5℃の温度と定義する。
また、チャックに把持された部分およびその近傍は延伸されない/または充分に延伸されないため、この部分を除いた部分を「延伸部分」と定義する。特に明記しない限り、「延伸フィルム」の各種パラメータ規定は、この延伸部分についての規定である。
実施例1〜4では、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上であるメタクリル樹脂(A)と、ビニルアセタール樹脂(B)とを含み、メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、メタクリル樹脂(A)の含有量が95質量部以下75質量部超であり、ビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5質量部以上25質量部未満である熱可塑性樹脂組成物を製造した。
表3に示すように、実施例1〜4で得られた未延伸フィルムは、靱性(引張破断伸度)が高く、全光線透過率が高く、ヘイズが低く、表面平滑性が高いものであった。
実施例1〜4で得られた未延伸フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であり、耐熱性が高いものであった。
実施例1〜4で得られた延伸フィルムは、加熱収縮率が小さく、全光線透過率が高く、ヘイズが低いものであった。
実施例1〜4で得られた延伸フィルム(膜厚200μm)は、膜厚方向の位相差(Rth)が−15〜15nmの範囲内であり、偏光子保護フィルム等として好適であった。
比較例1で得られた未延伸フィルムは、実施例1〜4に比して靱性(引張破断伸度)が低く、力学物性が不良であった。比較例1で得られた延伸フィルムは、実施例1〜4に比して加熱収縮率が大きく、不良であった。また、比較例1で得られた延伸フィルムは、膜厚方向の位相差(Rth)の絶対値が実施例1〜4に比して大きく、偏光子保護フィルム等の用途に不適であった。
比較例2で得られた未延伸フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が110℃未満であり、耐熱性が不良であった。比較例2で得られた延伸フィルムは、実施例1〜4に比して加熱収縮率が大きく、不良であった。また、比較例2で得られた延伸フィルムは、膜厚方向の位相差(Rth)の絶対値が実施例1〜4に比して大きく、偏光子保護フィルム等の用途に不適であった。
Claims (11)
- 三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上であるメタクリル樹脂(A)と、ビニルアセタール樹脂(B)とを含み、
メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、メタクリル樹脂(A)の含有量が95質量部以下75質量部超であり、ビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5質量部以上25質量部未満である、
熱可塑性樹脂フィルム。 - メタクリル樹脂(A)は、
重量平均分子量が50000〜150000であり、
分子量200000以上の成分の含有量が0.1〜10%であり、
分子量15000未満の成分の含有量が0.2〜5%である、
請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルム。 - メタクリル樹脂(A)は、
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上である第1のメタクリル樹脂(X1)と、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が45〜58%である第2のメタクリル樹脂(X2)とを含み、
第1のメタクリル樹脂(X1)と第2のメタクリル樹脂(X2)との合計量100質量部に対して、
第1のメタクリル樹脂(X1)の含有量が40〜70質量部であり、
第2のメタクリル樹脂(X2)の含有量が60〜30質量部であるメタクリル樹脂である、
請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。 - メタクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の含有量が99質量%以上である、
請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。 - メタクリル樹脂(A)は、温度230℃、荷重3.8kgで測定したメルトフローレートが0.1〜10g/10分である、
請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムからなる光学フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムからなる位相差フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法であって、
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が58%以上であるメタクリル樹脂(A)と、ビニルアセタール樹脂(B)とを含み、
メタクリル樹脂(A)とビニルアセタール樹脂(B)との合計量100質量部に対して、メタクリル樹脂(A)の含有量が95質量部以下75質量部超であり、ビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5質量部以上25質量部未満である熱可塑性樹脂組成物を用意する工程と、
前記熱可塑性樹脂組成物をフィルム成形する工程とを含む、
熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。 - メタクリル樹脂(A)が1種または2種以上のメタクリル樹脂を含み、
メタクリル樹脂(A)に含まれる少なくとも1種の前記メタクリル樹脂をアニオン重合法により製造する、
請求項9に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。 - メタクリル樹脂(A)は、
三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が65%以上である第1のメタクリル樹脂(X1)と、三連子表示のシンジオタクティシティ(rr)が45〜58%である第2のメタクリル樹脂(X2)とを含み、
第1のメタクリル樹脂(X1)をアニオン重合法により製造し、
第2のメタクリル樹脂(X2)をラジカル重合法により製造する、
請求項9または10に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
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