JP2016094369A - グリシンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】純度の高いグリシンを効率的に得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】(I)モノエタノールアミンを、アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物、水ならびに銅含有触媒の共存下にて、酸化脱水素反応してグリシン塩を含有する反応液を得る工程、(II)前記反応液を冷却してシュウ酸塩を析出させた後、前記反応液からシュウ酸塩を分離除去する工程、および(III)前記シュウ酸塩の分離除去後のグリシン塩含有水溶液からグリシンを得る工程、を有する、モノエタノールアミンを酸化脱水素してグリシンを製造する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、グリシンの製造方法に関する。
グリシンは食肉加工、清涼飲料、インスタント食品、その他、加工食品の食品添加剤として広く使用されている。また医薬品、農薬、アミノ酸の原料等の分野にも使用されている。
グリシンの工業的製造方法として、青酸とホルムアルデヒドを原料とするストレッカー法や、モノクロロ酢酸とアンモニアを原料とするα−ハロゲン酸法が一般的に用いられている。しかしながら、ストレッカー法で使用する青酸は、猛毒ガスであるために製造設備、取扱い、立地面などで大きな制約を受け、しかも青酸は、その大半がアクリロニトリル製造時の副生物として得られるものであるため、原料の安定確保の面でも大きな問題があった。また、α−ハロゲン酸法は、副生成物が多量に発生するため、廃棄物処理の面で課題があった。
さらに、銅触媒を用いてモノエタノールアミンをアルカリ水溶液中で酸化脱水素してグリシン塩を製造する方法も知られている。特許文献1には、銅とジルコニウムを含有する触媒を用いて、アルカリ金属水酸化物共存下で、モノエタノールアミンを反応させることにより、グリシン塩を製造する方法が開示されている。特許文献2には、金属をドープしたラネー銅触媒を用いて、アミノアルコールを酸化脱水素してアミノカルボン酸を製造する方法が開示されており、モノエタノールアミンから、プラチナを1%ドープしたラネー銅を触媒に用いて、水酸化ナトリウム水溶液中、グリシン塩を製造している。
特開昭60−41645号公報 特開2001−286761号公報
上記方法はいずれも活性、選択性に優れた方法であるが、触媒を繰り返し使用する際に触媒活性が低下する場合があり、高い生産性を維持するための製法の開発が依然として望まれている。
また、上述のように、グリシンは食品添加剤や医農薬原料として重要な化合物であるため化合物中に有毒な不純物が微量でも含まれないことが望まれている。
一方、モノエタノールアミンよりアルカリ水溶液中で銅含有触媒を用いて、酸化脱水素反応によりグリシンを製造する方法において、生成するグリシンの中には不純物としてシュウ酸が含まれる。シュウ酸は、タデ科やサトイモ科の植物に多く含まれており、自然界に存在する物質であるが、その一方でシュウ酸は、体内ではカルシウムと強く結合する性質があるため、医薬用外劇物に指定されている。グリシンの製造においては、反応により得られるグリシン塩水溶液をイオン交換法や電気透析等によりグリシン水溶液にした後、晶析することによりグリシンを得るが、不純物として生成するシュウ酸は、通常、グリシンを晶析法により精製する際に分離される。
しかしながら、その物理化学的性質のために、シュウ酸塩を含む液を電気透析すると透析時間が通常よりも長くかかること、得られたグリシン中のシュウ酸は精製工程において除去することが非常に難しくグリシンを晶析・精製しても高純度のグリシンを得ることが困難であるということを見出した。
そこで本発明は、モノエタノールアミンを原料としてグリシンを製造する際に、純度の高いグリシンを効率的に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、銅含有触媒を用いて、アルカリ水溶液中でモノエタノールアミンを酸化脱水素反応してグリシン塩を含有する反応液を得た後に、その反応液を冷却してシュウ酸塩を析出させて、反応液からシュウ酸塩を分離除去し、分離後のグリシン塩含有水溶液から、純度の高いグリシンを効率的に得ることができることを見出して本発明を完成した。
すなわち、上記目的は、下記(1)〜(3)によって達成される。
(1) (I)モノエタノールアミンを、アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物、水ならびに銅含有触媒の共存下にて、酸化脱水素反応してグリシン塩を含有する反応液を得る工程、
(II)前記反応液を冷却してシュウ酸塩を析出させた後、前記反応液からシュウ酸塩を分離除去する工程、および
(III)前記シュウ酸塩の分離除去後のグリシン塩含有水溶液からグリシンを得る工程、
を有する、モノエタノールアミンを酸化脱水素してグリシンを製造する方法。
(2)前記工程(II)において、前記反応液を、冷却後の反応液の液温が60℃以下になるまで冷却する、上記(1)に記載の製造方法。
(3)モノエタノールアミンを酸化脱水素して得られるグリシンであって、グリシン中のシュウ酸の含有濃度がグリシンの全質量に対して1000ppm以下である、グリシン。
本発明に係るグリシンの製造方法は、不純物として含まれるシュウ酸塩を効果的に除去することができるので、高純度のグリシンを製造する際の生産効率が向上する。さらに得られるグリシンは高純度であるため、食品添加物や医薬品原料として高品質なものであるといえる。したがって、本発明は、高品質なグリシンの製造方法に関する技術として、産業上非常に優れている。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明は、モノエタノールアミンを酸化脱水素してグリシンを製造する方法であって、下記(I)〜(III)の工程を有する:
(I)モノエタノールアミンを、アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物、水ならびに銅含有触媒の共存下にて、酸化脱水素反応してグリシン塩を含有する反応液を得る工程;
(II)前記反応液を冷却してシュウ酸塩を析出させた後、前記反応液からシュウ酸塩を分離除去する工程;および
(III)前記シュウ酸塩の分離除去後のグリシン塩含有水溶液からグリシンを得る工程。
当該方法によると、モノエタノールアミンの酸化脱水素反応物中に不純物として含まれるシュウ酸塩を効果的に除去することができる。このため、本発明の方法によると、高純度のグリシンを高い生産効率で製造できる。また、本発明の方法で得られるグリシンは高純度であるため、食品添加物や医薬品原料として有用である。
[工程(I)]
本工程(I)では、モノエタノールアミンを、アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物、水ならびに銅含有触媒の共存下にて、酸化脱水素反応してグリシン塩を含有する反応液を得る。本工程では、特表2002−524015号公報、特開平7−89912号公報に記載の方法等の公知の方法を同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。また、本工程(I)の好ましい形態を以下に詳述するが、本発明は下記形態に限定されない。
本発明で使用できるモノエタノールアミンは、特に限定されず、工業的に流通しているものを使用することができる。原料モノエタノールアミン中のモノエタノールアミンの純度は、好ましくは98質量%以上、より好ましくは99質量%以上、更に好ましくは99.5質量%以上(上限:100質量%)である。モノエタノールアミンの純度が98質量%未満であるとグリシン塩合成の際に副生成物が多くなり、精製工程においてグリシン塩からの除去が困難となる。
また、本発明で使用できるアルカリ金属の水酸化物あるいはアルカリ土類金属の水酸化物としては、特に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化バリウムなどが挙げられる。入手や取扱いの容易性から、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。上記アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物は、それぞれ、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物を組み合わせて使用してよい。アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物の形状は、特に制限されず、フレーク、粉末、ペレット等の固体形態で、または水溶液の形態で、いずれの形態でも用いることができるが、水溶液で使用するのが取り扱い易いため、好ましい。アルカリ金属の水酸化物あるいはアルカリ土類金属の水酸化物の使用量(アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物を複数種使用する場合には、合計使用量)は、特に制限されないが、反応に使用するモノエタノールアミンの水酸基に対して、好ましは1当量以上、より好ましは1.0〜2.0当量の範囲内である。
本工程(I)において、酸化脱水素反応は、水の存在下で行われる。水を使用することにより、モノエタノールアミンとアルカリ金属の水酸化物、あるいはアルカリ土類金属の水酸化物を均一系で反応でき、その結果、グリシン塩を高収率で得ることができる。ここで、水としては、特に制限されず、工業水、水道水、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水等が挙げられる。反応に用いられる水の量は、反応を均一に行うことができる量であれば特に制限されないが、モノエタノールアミンに対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは50〜500質量%、さらにより好ましくは100〜300質量%の範囲内である。
また、本工程(I)において、酸化脱水素反応は、銅含有触媒の存在下で行われる。ここで、用いられる銅含有触媒は、銅を必須成分して含有するものである。銅の原料としては、金属銅の他に、例えば硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物、水酸化物等の無機物、例えばギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩等の有機酸塩の化合物がいずれも使用できる。銅含有触媒の形態は特に限定されない。例えば金属銅表面を酸化後水素により還元した触媒、ラネー銅合金をアルカリ水溶液で展開し得られた触媒やさらに、ギ酸銅、炭酸銅等を熱分解及び/又は還元して得られた活性化銅をそのまま、またはアルカリ耐性担体に前記の銅化合物を担持した後に焼成及び/又は還元により得られる活性化銅、無電解メッキにより銅を担持した触媒等を使用することができる。好ましい担体の例としては、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、シリコンカーバイト、活性炭などが挙げられる。特に、反応への活性、触媒の寿命の点から展開ラネー銅及び、共沈法または含浸法にて酸化ジルコニウム、シリコンカーバイド、活性炭に担持した銅触媒が好適に使用される。
銅含有触媒には、その他の金属を含んでいてもよい。その他の金属としては特に限定されないが、例えば、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銀、金、亜鉛、カドミウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、セレン、テルル等があり、好ましくは、ルビジウム、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、ニオブ、クロム、モリブデン、鉄、オスミウム、コバルト、ニッケル、金、亜鉛、ガリウムであり、特に好ましくは、マグネシウム、クロム、鉄、オスミウム、コバルト、ニッケルである。
銅含有触媒が上記他の金属を含む場合の、銅含有触媒における上記他の金属の含有量は、広範な範囲内で変化でき、特に制限されない。通常、モノエタノールアミンからグリシンへの転化のしやすさを考慮すると、銅含有触媒における上記他の金属の含有量は、10〜50,000ppm程度、より好ましくは約20〜約5000ppm、さらにより好ましくは約50〜約5000ppmであることが好ましい。
銅含有触媒の使用量は、酸化脱水素反応を有効に進行できる量であれば特に制限されないが、モノエタノールアミンに対して、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは5〜50質量%である。
銅含有触媒の大きさは特に制限されないが、銅含有触媒の粒度は小さすぎると触媒の分離の際に不利になる場合がある。例えば、触媒を沈降させて分離する場合には沈降速度が遅くなり、また濾過して分離する場合には濾過速度が遅くなる。一方、粒度が大きすぎると沈降性は良くなるが、触媒の分散を良くするために大きな撹枠動力が必要となり、また触媒の有効表面積が少なくなるので触媒活性が低下する場合がある。上記点を考慮すると、銅含有触媒の粒度(平均粒径:直径)は、2〜300μmの範囲内であるのが好ましい。但し、この反応を固定床流通式の反応器を用いて行なうような場合は、圧力損失を少なくする必要があるので銅含有触媒の粒度はもっと大きなものが好適である。また、本発明に用いられる銅含有触媒の比表面積は小さすぎると触媒活性が低くて多量の触媒を用いることになる。従って、銅含有触媒の比表面積(BET比表面積)は、BET測定法において0.1m/g以上であるのが好ましく、より好ましくは0.2m/g以上であり、さらに好ましくは1m/g以上である。銅含有触媒の比表面積(BET比表面積)は、BET測定法において、例えば100m/g以下であり、好ましくは50m/g以下である。
工程(I)において、酸化脱水素反応条件は、酸化脱水素反応が良好に進行する条件であれば特に制限されない。例えば、反応温度は、モノエタノールアミン及び生成したグリシンの炭素−窒素結合の熱分解及び水素化分解を有効に防ぐことを考慮すると、好ましくは220℃以下の温度、より好ましくは120℃〜210℃、さらにより好ましくは140℃〜200℃の温度範囲内で行われる。また、反応時間は、特に制限されないが、好ましくは2〜20時間、より好ましくは3〜10時間である。
この反応は、酸化脱水素反応であって水素の発生を伴うため、できるだけ反応圧力を下げる方が反応速度の面から好ましい。通常、反応を液相で進めるためには、反応は、最低圧力以上、より好ましくは5〜50kg/cmGの圧力下で行うことが好ましい。また、酸化脱水素反応条件は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
反応の形式は、特に制限されず、バッチ、セミバッチ、連続反応いずれの方法も用いることができる。
本工程(I)で反応後の反応混合物は、濾過により銅含有触媒を分離して、濾液として目的とするグリシン塩を含有する反応液(グリシン塩の水溶液)が得られる。あるいは、反応混合物を静置して触媒を沈降させ、上澄み液としてグリシン塩の水溶液が得られる。
一方、濾過あるいは沈降などによって分離した銅含有触媒は回収してそのまま次の反応に再使用することができる。もちろん、回収した銅含有触媒を必要に応じて適宜再生処理を行って使用してもよい。
[工程(II)]
本工程では、上記工程(I)で得られたグリシン塩を含有する反応液を冷却してシュウ酸塩を析出させた後、前記反応液からシュウ酸塩を分離除去する。従来では、モノエタノールアミンの酸化脱水素反応物を晶析・精製することにより、シュウ酸を分離・除去していた。しかし、グリシンとシュウ酸とでは、析出温度が近似しているため、晶析によっては十分シュウ酸を分離・除去することができなかった。これに対して、本願発明者らは、グリシン塩およびシュウ酸塩の析出温度差がグリシンおよびシュウ酸の析出温度差に比して大きいことに着目して、シュウ酸が塩の形態で含まれるモノエタノールアミンの酸化脱水素の反応後でかつグリシン塩からグリシンへの変換前にグリシン塩含有反応液を冷却してシュウ酸塩を析出させることによって、不純物であるシュウ酸塩含有量を有意に低減できる(グリシンの純度を向上できる)ことを知得した。
本工程(II)において、シュウ酸塩を分離する方法としては、特に限定されず、シュウ酸塩を含む反応液を所定温度まで冷却し、析出するシュウ酸塩を除去すればよい。反応液を冷却する方法としては、例えば、(II−1)反応槽から外部循環により反応液を冷却装置へ循環させる;(II−2)冷却用のコイルを備えた反応槽を用いて反応液を冷却する;(II−3)反応槽の外部ジャケットに冷水を流す、などの公知の方法を使用できる。冷却後の反応液の温度(液温)は特に限定されないが、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に60℃以下が好ましい。すなわち、工程(II)において、前記反応液を、冷却後の反応液の液温が60℃以下になるまで冷却することが特に好ましい。反応液温の下限は、特に制限されないが、0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上である。反応液の温度が80℃を超えると、シュウ酸塩の析出が不十分となり、グリシン塩水溶液中に不純物として含まれるシュウ酸塩の量が多くなるために、その後の精製工程、例えば、電気透析による精製では、透析に時間を要したり、電力の消費量が多くなったり、膜の劣化が早くなったりするおそれがある。また、反応液の温度が10℃未満であると、シュウ酸塩に加えて、グリシン塩も析出して、グリシンの生産性が低下するおそれがある。
上記で析出したシュウ酸塩は、反応液から分離除去されて、グリシン塩含有水溶液を得る。ここで、シュウ酸塩を反応液から分離除去する方法としては、特に制限されないが、例えば、デカンテーション法、濾過法、遠心分離法等があり、なかでも濾過法が好ましい。
上記方法により得られる本発明のグリシン塩中に含まれるシュウ酸塩の含有濃度はグリシン塩の質量に対して1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、より好ましくは200ppm以下である。本明細書において、シュウ酸塩の含有濃度は、後述の実施例に記載の方法により分析することができ、検出される濃度の下限(検出限界)は1ppmであるため、最も好ましくは検出限界以下である。
[工程(III)]
本工程では、上記工程(II)で得られたシュウ酸塩の分離除去後のグリシン塩含有水溶液からグリシンを得る。
本工程により得られるグリシン塩を原料としてグリシンを得る方法としては、特に制限されず、例えば、特開平11−335337号公報や特開平8−12632号公報等に記載の従来公知のアミノ酸塩をアミノ酸にする方法を同様にしてまたは適宜修飾して用いることができる。具体的には、アミノ酸塩を脱塩してアミノ酸にする方法としては、例えば、アミノ酸のアルカリ塩を無機酸によって処理して、無機酸のアルカリ塩とアミノ酸にし、これを物理的に分離する方法、電気透析によって分離する方法、あるいは、アミノ酸のアルカリ塩を陽イオン交換樹脂と接触させてイオン交換する方法、電気分解してアミノ酸と苛性アルカリとにする方法等が用いられる。好適にはイオン交換法や電気透析で分離する方法であり、これらの方法を組み合わせる形態も好適に用いられる。
陽イオン交換樹脂を用いる方法は、特に限定されず、例えば、特開平8−12632号公報等に記載の方法などが使用できる。例えば、グリシンアルカリ金属塩を処理してグリシンにする場合、陽イオン交換樹脂は弱酸性陽イオン交換樹脂や強酸性陽イオン交換樹脂を用いることができる。アルカリ金属イオンに対してグリシンを選択的に分離するにはアルカリ金属塩に対してグリシンのイオン交換選択係数の小さな弱酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。弱酸性陽イオン交換樹脂の例としては、商品名でアンバーライトIRC−76(オルガノ(株))、ダイヤイオンWK10、WK20(三菱化学(株))、レバチットCNP80(バイエル(株))等が挙げられる。また、レバチットTP207、TP208(バイエル(株))のようなキレート樹脂も弱酸性陽イオン交換樹脂として使用できる。交換基の形はH型として使用する。陽イオン交換樹脂での処理条件としては、グリシン塩水溶液中のグリシン(グリシン成分)の濃度は33質量%以下で行われる。グリシンの質量%は操作温度における飽和濃度以下であればよいが、33質量%を超える濃度にするためには、陽イオン交換樹脂を70℃以上に保温する必要があり、陽イオン交換樹脂の耐熱性の問題上好ましくない。樹脂の使用量は、不純物の種類と量によって変化するが、弱酸性陽イオン交換樹脂処理でのアルカリ金属イオンのイオン交換においては、通常、処理するグリシンアルカリ金属塩1kgに対し、樹脂2000〜5000ml、好ましくは3000〜4000mlの範囲である。陽イオン交換樹脂を充填したイオン交換カラムを1塔または多塔で用いることにより、バッチ式または連続式で処理することができ、バッチ式の場合、樹脂処理の時間は3〜60分間、好ましくは6〜30分間である。連続式で処理する場合、樹脂塔への通液速度は液空間速度(L/L−樹脂/Hr)で1〜20の範囲、好ましくは2〜10の範囲である。
電気透析は、電解質の水溶液中に+−の電極を入れて電位勾配を与えると、溶液中の正および負のイオンが、それぞれ反対符号の電極方向へ移動する原理を利用したもので、両電極間にイオン交換膜と半透膜をおいて膜間にある溶液中の両イオンを別方向に移動させて膜外へ出す処理を言う。
電気透析を用いる方法は、特に制限されず、例えば、特開平11−335337号公報等に記載の方法などが使用できる。例えば、陽極側に水素イオン選択透過膜を、陰極側に陽イオン透過膜を配置してグリシンアルカリ金属塩をグリシンにする方法を示す。グリシンアルカリ金属塩の水溶液の通過する膜室のプラス電極側の半透膜として水素イオン選択透過膜を使用し、マイナス電極側のイオン交換膜として陽イオン透過膜を使用し、水素イオン選択透過膜および陽イオン透過膜の両側にはそれぞれ酸水溶液(たとえば硫酸)を流す。このとき、グリシンアルカリ金属塩の水溶液中のアルカリ金属イオンは、反対符号の電極側、すなわちマイナス電極側に移動するが、マイナス電極側の透過膜は陽イオン透過膜であるため、アルカリ金属イオンは当該膜をそのまま通過し酸水溶液中に浸入する。一方、グリシンアルカリ金属塩の水溶液中には水素イオン選択透過膜を通ってプラス電極側の酸水溶液から水素イオンが浸入してくる。これによりグリシンアルカリ金属塩の水溶液中のアルカリ金属イオンは水素イオンに交換され、グリシンアルカリ金属塩水溶液中のアルカリ金属イオンは除去されるのである。
ここで、水素イオン選択透過膜とは、水素イオンのみが透過でき、他のカチオンやアニオンは透過できない機能をもった膜で、その構造はカチオン交換膜とアニオン交換膜を張り合わされたハイブリッド膜である。当該膜に電位勾配を与えると水が分解して水素イオンと水酸化物イオンが生成し、水素イオンがマイナス電極側、水酸化物イオンがプラス電極側にそれぞれ移動し、水酸化物イオンは酸水溶液中の水素イオンと反応して水となる結果、見掛け上、水素イオンのみが当該膜を透過できることになる。水素イオン選択透過膜としては、市販品であれば例えば「SelemionHSV」(旭硝子社製)、「NEOSEPTABP1」(徳山曹達社製)などを挙げることができる。
陽イオン透過膜とは、カチオンを透過し、アニオンを透過しない機能をもった膜を言う。当該膜は、スルホン酸基やカルボン酸基など電離して負の電荷を持つ解離基を高密度に保持する膜であって、スチレン系の重合型均質膜でできたものが好適に使用できる。市販されているものとして、例えば「SelemionCMV」(旭硝子社製)、「AciplexCK−1,CK−2,K−101,K−102」(旭化成社製)、「NeoseptaCL−25T,CH−45T,C66−5T,CHS−45T」(徳山曹達社製)、「Nafion120,315,415」(DuPont社製)などを使用することができる。
酸水溶液の酸としては、例えば硫酸や塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸や、酢酸、グリコール酸、クエン酸等を使用できるが、コストの点から硫酸が好適に使用できる。酸量は除去したいアルカリ金属イオン量により算出されるが、過剰に使用すれば当然ながらコストアップにつながる。酸水溶液は、算出された所定量の全量を一度に使用すると電気効率が悪くなるので、分割して、電気透析中に入れ替えて使用するのが望ましい。かかる分割使用により、グリシンアルカリ金属塩水溶液中のアルカリ金属イオン濃度を効率的に低くすることができる。酸水溶液は循環使用すればよい。
酸水溶液の濃度としては1〜40質量%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限側としては5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、他方上限側としては20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。酸水溶液の濃度が40質量%より大きいと、グリシンアルカリ塩水溶液中へ浸入する硫酸イオンなどの塩基の量が多くなるおそれがあり、また液温が低いときには硫酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩の結晶が析出して膜が詰まるおそれがある。一方、酸水溶液の濃度が1質量%未満では酸水溶液の循環液量を多くする必要が生じ、このため貯槽の容量を大きくしなければならないという問題が起こる。
グリシン塩含有水溶液におけるグリシン塩の濃度としては、5〜60質量%が好ましい。より好ましい範囲について述べると、下限側としては10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、他方上限側としては50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。グリシン塩含有水溶液におけるグリシン塩の濃度が60質量%より大きいと、液の粘度が高くなって透析膜にかかる圧力が大きくなり過ぎ膜を破壊するおそれがある。ただし、酸水溶液の流量とグリシンアルカリ金属塩水溶液の流量を調整して両側の差圧を等しくすることによって、グリシンアルカリ金属塩水溶液の濃度を高くすることもできる。一方、グリシンアルカリ金属塩水溶液の濃度が5質量%未満では貯槽の容量を大きくしなければならないという問題がある。電極室に循環させる極液は透析に用いる酸と同じ種類の酸を使用することが好ましく、その濃度は1〜2質量%程度が好ましい。極液の濃度が2質量%よりも高いと極板の腐食が早くなるおそれがあり、他方1質量%よりも低いと電流が流れにくくなるおそれがある。
電気透析の電極電流を制御する方法は、定電圧法、定電流法いずれでもよい。電流量が多いほど処理時間は短くなるが、通電による発熱で液温が上昇するので、膜を劣化させないよう液を冷却する必要が生じる。このため、膜を劣化させないような液温に抑えるよう電流量の上限を調整することが望まれる。
電気透析操作は通常バッチ処理で行い、一回の透析操作が終了すればグリシンアルカリ金属塩水溶液は入れ替える。ただし、このとき酸水溶液まで同時に入れ替える必要はなく、次バッチの途中まで使用して新しい酸水溶液に入れ替えればよい。これにより、グリシンアルカリ金属塩水溶液中のアルカリ金属イオン濃度を効率よく低下させることができる。もちろん、透析装置を多段に連結して電気透析を連続で行ってもよい。
バッチ処理において、電気透析操作の終了は、グリシンアルカリ金属塩水溶液が所定のpHになったかどうかで判断する。アルカリ金属イオンを除去したグリシン水溶液の生成を目的とする場合は、アルカリ金属イオン濃度が許容下限以下となった時に電気透析操作を終了するのがよい。アルカリ金属イオンを完全に除去しようと過剰に電気透析すると電流効率が低下し、またグリシン液に混入する硫酸イオンなどの塩基量が多くなるので好ましくないからである。
電気透析によってアルカリ金属イオンを減少させたグリシン水溶液には硫酸イオンなど微量の塩基が混入しているので、必要であれば、水酸化バリウム又は炭酸バリウムを所定量添加して硫酸バリウムを生成させ、濾別することによって硫酸イオンを除去することができる。
こうして得られたグリシン水溶液を必要に応じて適宜結晶化して、高純度のグリシンを得ることができる。
上記方法によって、高純度でかつ不純物(シュウ酸やシュウ酸塩)含有量の低いグリシンが製造できる。ここで、本発明の方法で得られるグリシンにおける、シュウ酸の含有濃度は、可能な限り低いことが好ましい。具体的には、シュウ酸の含有濃度は、グリシンの全質量に対して、1000ppm以下であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、モノエタノールアミンを酸化脱水素して得られるグリシンであって、グリシン中のシュウ酸の含有濃度がグリシンの全質量に対して1000ppm以下である、グリシンが提供される。シュウ酸の含有濃度は、より好ましくは500ppm以下、さらにより好ましくは200ppm以下である。本明細書において、シュウ酸の含有濃度は、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。なお、検出される濃度の下限(検出限界)は1ppmであるため、最も好ましくは検出限界以下である。また、本発明の方法で得られるグリシンの純度は、可能な限り高いことが好ましい。具体的には、グリシンの純度は、好ましくは98%以上、より好ましくは98.5%以上、さらにより好ましくは99%以上(上限:100%)である。本明細書において、グリシンの純度は、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
また、本実施例及び比較例におけるシュウ酸(塩)及びグリシン(塩)の純度は、下記条件に従って測定した。
<シュウ酸(塩)及びグリシン(塩)の定量方法>
装置:キャピラリー電気泳動システム Agilent7100
キャピラリーサイズ:内径75μm、全長80.5cm
泳動液:α‐AFQ109
試料注入:加圧法(50mbar、8sec)
キャピラリー温調:25℃
電圧:−25kV
検出波長:Sig=400nm、20nm Ref=265nm、10nm
定量:濃度既知のシュウ酸(塩)水溶液、及びグリシン(塩)水溶液を用いた検量線法。
[実施例1]
モノエタノールアミン(純度:99.8質量%)230g、水酸化ナトリウム162g、水393g、ラネー銅触媒(BET比表面積:20.8m/g)24gを1000mlのニッケル製オートクレーブに仕込み、内部を窒素ガスで3回置換した後、反応温度160℃、反応圧力10kg/cmGで、水素の発生がなくなるまで反応を行った。反応に要した時間は、160℃に昇温後5時間であった。
反応混合物を、濾過によりラネー銅触媒とグリシン塩(グリシンナトリウム)を含有する反応液とに分離して、グリシン塩含有反応液を得た。次に、この反応液を入れたガラス容器を、冷水を満たした別のステンレス容器に浸漬することにより、60℃(液温)に冷却して、析出したシュウ酸塩を濾過にて除去した。濾過して得られた濾液(グリシンナトリウム水溶液)中のシュウ酸ナトリウム濃度はグリシンナトリウムの質量に対して132ppmであった。
次に、上記濾液に純水を600g添加して希釈して、グリシン塩濃度が26質量%のグリシン塩含有水溶液を得た。このグリシン塩含有水溶液について、アシラーザーEX3B(アストム社製)を用いて電気透析を行うことによって、グリシン水溶液を得た。電気透析に要した時間は2時間であった。続いて、得られたグリシン水溶液から晶析により純度99.8%のグリシンを得た。得られたグリシン中のシュウ酸の含有量は120ppmであった。
[実施例2]
実施例1で使用したラネー銅触媒を分離して蒸留水で洗浄後、そのラネー銅触媒を用いて再度、実施例1と同様の条件で水素の発生がなくなるまで反応を行った。反応に要した時間は、160℃に昇温後5.5時間であった。
反応混合物を、濾過によりラネー銅触媒とグリシン塩(グリシンナトリウム)を含有する反応液とに分離して、グリシン塩含有反応液を得た。次に、この反応液を入れたガラス容器を、冷水を満たした別のステンレス容器に浸漬することにより、60℃(液温)に冷却して、析出したシュウ酸塩を濾過にて除去した。濾過して得られた濾液(グリシンナトリウム水溶液)中のシュウ酸ナトリウム濃度はグリシンナトリウムの質量に対して158ppmであった。
次に、上記濾液に純水を600g添加して希釈して、グリシン塩濃度が26質量%のグリシン塩含有水溶液を得た。このグリシン塩含有水溶液について、アシラーザーEX3B(アストム社製)を用いて電気透析を行うことによって、グリシン水溶液を得た。電気透析に要した時間は2.5時間であった。続いて、得られたグリシン水溶液から晶析により純度99.1%のグリシンを得た。得られたグリシン中のシュウ酸の含有量は146ppmであった。
[実施例3]
モノエタノールアミン(純度:99.8質量%)230g、水酸化ナトリウム162g、水393g、ラネー銅触媒(BET比表面積:0.6m/g)24gを1000mlのニッケル製オートクレーブに仕込み、内部を窒素ガスで3回置換した後、反応温度160℃、反応圧力10kg/cmGで、水素の発生がなくなるまで反応を行った。反応に要した時間は、160℃に昇温後5時間であった。
反応混合物を、濾過によりラネー銅触媒とグリシン塩(グリシンナトリウム)を含有する反応液とに分離して、グリシン塩含有反応液を得た。次に、この反応液を入れたガラス製容器を、冷水を満たした別のステンレス製容器に浸漬することにより、60℃(液温)に冷却して、析出したシュウ酸塩を濾過にて除去した。濾過して得られた濾液(グリシンナトリウム水溶液)中のシュウ酸ナトリウム濃度はグリシンナトリウムの質量に対して141ppmであった。
次に、上記濾液200gに純水を500g添加して希釈して、グリシン塩濃度が14質量%のグリシン塩含有水溶液を得た。このグリシン塩含有水溶液について、弱酸性陽イオン交換樹脂アンバーライトIRC−76(オルガノ(株))230mlを充填した樹脂塔にダウンフローで通液し、フラクションコレクターで採取した。各フラクションのナトリウム交換の状況は、フラクション液の電導度及びpH測定結果からリアルタイムでモニタリングし、最終的にはイオンクロマト分析より決定した。通液の操作温度は25℃、流速はSV1(1時間に樹脂量の1倍の液量を通液する)で行った。初期仕込み水をグリシン塩水溶液で置換した時点から、破過前(フラクションコレクターで順次採取したサンプルの内、ナトリウムイオン濃度が急激に上昇する直前)までのフラクションを全て混合し、グリシン水溶液を得た。イオン交換に要した時間は0.5時間であった。続いて、得られたグリシン水溶液から晶析により純度99.5%のグリシンを得た。得られたグリシン中のシュウ酸の含有量は138ppmであった。
[比較例1]
実施例1において、反応液の冷却およびシュウ酸塩の分離除去を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。
詳細には、モノエタノールアミン(純度:99.8質量%)230g、水酸化ナトリウム162g、水393g、ラネー銅触媒(BET比表面積:20.8m/g)24gを1000mlのニッケル製オートクレーブに仕込み、内部を窒素ガスで3回置換した後、反応温度160℃、反応圧力10kg/cmGで、水素の発生がなくなるまで反応を行った。反応に要した時間は、160℃に昇温後5時間であった。
反応混合物を、濾過によりラネー銅触媒とグリシン塩(グリシンナトリウム)を含有する反応液とに分離して、グリシン塩含有反応液を得た。このグリシン塩含有反応液(グリシンナトリウム水溶液)中のシュウ酸ナトリウム濃度はグリシンナトリウムの質量に対して1928ppmであった。
次に、上記反応液に純水を600g添加して希釈して、グリシン塩濃度が26質量%のグリシン塩含有水溶液を得た。このグリシン塩含有水溶液について、アシラーザーEX3B(アストム社製)を用いて電気透析を行うことによって、グリシン水溶液を得た。電気透析に要した時間は5時間であった。続いて、得られたグリシン水溶液から晶析により純度98.2%のグリシンを得た。得られたグリシン中のシュウ酸の含有量は1856ppmであった。
上記結果から、実施例1〜3では、不純物であるシュウ酸塩及びシュウ酸の含有濃度が低く、高純度なグリシンを得ることができることが分かる。一方、反応液の冷却およびシュウ酸塩の分離除去を行わなかった比較例1では、電気透析に要する時間が実施例より長時間であり、また、得られたグリシンも実施例より純度が低く、不純物(シュウ酸塩及びシュウ酸)含有濃度が高いものであることが分かる。これらの結果から、本発明によるように反応液の冷却およびシュウ酸塩の分離除去を行うことによって、目的物であるグリシンの純度を向上し、かつ不純物(シュウ酸塩及びシュウ酸)の含有濃度を低減できると、考察される。このような高純度かつ低不純物含量のグリシンは、このような要求の高い分野、特に食品添加物や医薬品原料として好適に使用できることが期待される。

Claims (3)

  1. (I)モノエタノールアミンを、アルカリ金属の水酸化物および/またはアルカリ土類金属の水酸化物、水ならびに銅含有触媒の共存下にて、酸化脱水素反応してグリシン塩を含有する反応液を得る工程、
    (II)前記反応液を冷却してシュウ酸塩を析出させた後、前記反応液からシュウ酸塩を分離除去する工程、および
    (III)前記シュウ酸塩の分離除去後のグリシン塩含有水溶液からグリシンを得る工程、
    を有する、モノエタノールアミンを酸化脱水素してグリシンを製造する方法。
  2. 前記工程(II)において、前記反応液を、冷却後の反応液の液温が60℃以下になるまで冷却する、請求項1に記載の方法。
  3. モノエタノールアミンを酸化脱水素して得られるグリシンであって、グリシン中のシュウ酸の含有濃度がグリシンの全質量に対して1000ppm以下である、グリシン。
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