JP2016091997A - 固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻き取り方法 - Google Patents
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Abstract
Description
0<r・θ<1.5 ・・・式(1)
0<r・θ<1.2・・・式(2)
T1≧100 かつ T1≧T2≧0.8×(D1/D2)×T1・・・式(3)
0<r・θ<1.5 ・・・式(1)
さらに好ましくは、下記式(4)を満たし、巻き始めから巻き終りまで巻取り張力が漸減することである。
巻き取り張力(T2)が低すぎて上記式(3)を満足しない場合は、蛇行が生じ巻き取った後に巻きズレが発生するため、好ましくない。また、巻き取り張力(T2)が高すぎて上記式(4)を満足しない場合は、シート状物の割れが発生することがあるため、好ましくない。
(a)炭素短繊維から炭素繊維紙を得る工程と、
(b)前記炭素繊維紙に熱硬化性樹脂を含浸させて、樹脂含浸紙を得る工程と、
(c)前記樹脂含浸紙を加熱プレス成形して、樹脂硬化シートを得る工程と、
(d)前記樹脂硬化シートを不活性雰囲気下の焼成炉内に走行させて、熱処理を行う工程
工程(a)で炭素繊維紙を製造する方法としては、液体の媒体中に炭素短繊維を分散させて抄造する湿式法や、空気中に炭素短繊維を分散させて降り積もらせる乾式法が適用できるが、中でも湿式法が好ましい。工程(a)は、連続的に行われる。
炭素繊維紙に含浸させる熱硬化性樹脂としては、常温において粘着性または流動性を示す樹脂で、かつ炭素化後も導電性物質として残存する物質が好ましく、フェノール樹脂、フラン樹脂等を用いることができる。フェノール樹脂としては、アルカリ触媒存在下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって得られるレゾールタイプのフェノール樹脂を用いることができる。また、レゾールタイプの流動性フェノール樹脂に、公知の方法によって酸性触媒下においてフェノール類とアルデヒド類の反応によって生成する、固体の熱融着性を示すノボラックタイプのフェノール樹脂を溶解混入させることもできる。ただし、この場合、硬化剤として例えばヘキサメチレンジアミンを含有した、自己架橋タイプとすることが好ましい。フェノール樹脂として、市販品を利用することも可能である。なお、フェノール類としては、例えば、フェノール、レゾルシン、クレゾール、キシロール等が用いられる。アルデヒド類としては、例えば、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、フルフラール等が用いられる。また、これらを混合物として用いることができる。
工程(c)では、樹脂含浸紙中の熱硬化性樹脂を硬化して、シート厚みを制御する重要な工程である。工程(c)は、生産性の観点から、連続的に行われる。
工程(d)では、樹脂硬化シートを焼成する。具体的には、樹脂硬化シートを不活性雰囲気下の焼成炉内に走行させる。工程(d)は、連続的に行われる。
本発明の多孔質炭素繊維シートの厚みは、抵抗値の観点から、0.05〜0.4mmであることが好ましく、0.1〜0.3mmであることがより好ましい。厚みが0.05mm未満であると、厚み方向の強度が弱くなり、セルスタックを組んだときのハンドリングに耐えられなくなる。また、0.5mmを越えるとその電気抵抗が高くなり、スタックを積層した際にトータルの厚みが大きくなる。多孔質炭素繊維シートの厚みを0.05mm以上とすることで、厚み方向の強度が高くなり、セルスタックを組んだときのハンドリングに耐えられるようになる。また、多孔質炭素繊維シートの厚みを0.4mm以下とすることで、その電気抵抗が低くなり、スタックを積層した際のトータルの厚みが小さくなる。
本発明の多孔質炭素繊維シートは、炭素短繊維と、熱硬化性樹脂由来の炭化物とから構成されており、炭素短繊維同士が熱硬化性樹脂由来の炭化物により結着されている構造であることが好ましい。炭化物は、熱硬化性樹脂由来であるが、熱硬化性樹脂の種類や炭素繊維紙への含浸量により、最終的に多孔質炭素繊維シートに炭化物として残る割合が異なってくる。多孔質炭素繊維シートを100質量%とした場合に、炭素短繊維分を除いた熱硬化樹脂由来の炭化物の含有率は、多孔質炭素繊維シート中の炭素短繊維の結着や多孔質炭素繊維シート柔軟性発現の観点から、20〜60質量%であることが好ましい。
使用するカーボン粉としては、たとえば、黒鉛粉やカーボンブラックなどを用いることができる。例えばカーボンブラックとしてはアセチレンブラック(例えば電気化学工業(株)製のデンカブラック)、ケッチェンブラック(例えばライオン(株)製のKetjen Black EC)、ファーネスブラック(例えばCABOT社製のバルカンXC72)などを用いることができる。より高い導電性を発現するといった観点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。
界面活性剤は公知のものを利用できる。例えばポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(例えばACROS ORGANICS社製のTriton X−100)、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテルなど非イオン性界面活性剤が挙げられる。取扱い性および分解温度から、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを用いることが好ましい。
<多孔質炭素繊維シートの塗工処理>
多孔質炭素繊維シートに撥水性を付与すべく行う撥水処理には、フッ素樹脂などの撥水剤の粒子を溶媒中に分散させた分散液を用いる。溶媒として水を用いる場合、撥水剤は、そのままでは水には分散しないため、適当な界面活性剤によって水中に分散させる。また、分散液としてはあらかじめ撥水剤が分散されたディスパージョン等を用いることもできる。
多孔質炭素繊維シート上に塗工膜を形成するための塗工液を塗布方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えばバーコート法、ブレード法、スクリーン印刷法、スプレー法、カーテンコーティング法およびロールコート法などがあげられる。これらの方法により、多孔質炭素電極基材上に均一な塗工膜を形成することができる塗工膜の厚みは、50〜2000μmであることが好ましい。塗工膜の厚みが50μmよりも薄すぎると厚みの均一な膜を得ることが困難となり、2000μmより大きいと乾燥後に意図しない大きなクラックをコーティング層に生じやすくなるため、好ましくない。より好ましい塗工膜の厚みの範囲は50〜1000μmである。
本発明においては、塗工膜を形成した多孔質炭素繊維シートを150℃〜300℃の環境下におくことにより、塗工膜を乾燥させる。例えばプレートヒーター、加熱ロールや、熱風乾燥機やIRヒーターなどを用いて150℃〜300℃の環境を作ることができる。
当該工程においては、乾燥後の「塗工膜を形成した多孔質炭素繊維シート」を300〜400℃の環境下において焼成する。この焼成工程においては、第一に多孔質炭素電極基材および塗工膜中に含まれる界面活性剤等の分散剤を消失させ、加えて撥水剤を融点付近まで加熱することによって、撥水剤粒子を溶融させてその形状をコントロールすることでコーティング層の細孔構造制御とカーボン粉のバインディングを強固にする。したがって、温度としては、300〜400℃の範囲が好ましく、より好ましくは340〜400℃である。
多孔質炭素繊維シートの厚みについて、マイクロメータ(株式会社ミツトヨ製、商品名:MDC−25MJ)により、幅方向に5点測定し、その平均厚みを算出した。
多孔質炭素繊維シートを200mm×300mmサイズのサンプルを5枚切り出し、電子天秤にて秤量した。そして、1)で測定した平均厚みを使用して、嵩密度を算出した。
支点間距離2cm、歪み速度10mm/minで10mm幅のサンプルに荷重をかけていき、荷重がかかり始めた点から試験片が破断したときの加圧くさびの移動距離を測定して求めた、その値を曲げたわみとした。
多孔質炭素電極基材を100質量%としたときに、炭素繊維分を除いた熱硬化樹脂由来の炭化物の含有率であり、以下の式(5)により算出した。
C={Gw−(Pw×F/100)}/Gw×100・・・式(5)
C:多孔質炭素繊維シートの熱硬化性樹脂由来の炭化物の含有率(質量%)
Gw:多孔質炭素繊維シートの目付(g/m2)
Pw:炭素繊維紙の目付(g/m2)
F:炭素繊維紙中の炭素繊維の割合(質量%)
実施例にて使用した装置を図4に示した。この中でガイドロール8及びガイドロール10は移動式のフリーロールであり、これをシート道方向に移動することで抱き角を変更し、常にガイドロール8にて形成される抱き角とガイドロール10にて形成される抱き角を同一とした。またロールを交換することで異なるロール径におけるデータを取得した。
巻き出し軸から巻き取り軸の間に配置されているガイドロール、ニップロールの半径から各ロールの曲率を算出する。さらにガイドロールあるいはニップロールの抱き角(θ)を測定する。ただし、抱き角は図1に示す角度(θ)を指す。以上から、シート道の曲がり箇所について、r・θをそれぞれ算出し、その最大値を代表値とする。
図4のガイドロール(フリーロール)にロープを取り付け、その先端にばね秤を取り付けて引っ張り、ロールが回転させるために必要最低限の応力を測定した。測定した応力(F(N))及びガイドロール直径(d(m))から以下の式(6)により回転トルク(Tr(N・m))を算出した。
Tr=(d×F)/2・・・式(6)
巻き取り機の引張応力(N)をシート幅(m)で割り返した値。
図4の装置を用いて、1000m長さの多孔質炭素繊維シートの巻き出し、巻き取りを行い、巻き取る直前の位置で透過光を用いて目視で割れている箇所をカウントした。
図3に示した巻きズレを含む全幅(Wb)とシート幅(Wa)の長さを元に以下の式(7)から算出した数字を巻きズレ(Wg)とした。
Wg=Wb−Wa・・・式(7)
図4の装置で巻き取った多孔質炭素繊維シートロールを図5の装置を用いて巻き出し、シート裏面を確認できるようにした上で、巻き出し位置で長辺1mmサイズ以上の炭素粉塊の個数をカウントした。
平均繊維長3mmにカットしたポリアクリロニトリル系炭素短繊維(三菱レイヨン株式会社製、商品名:パイロフィルTR50S、平均単繊維径:7μm)、ポリビニルアルコール(PVA)短繊維(クラレ株式会社製、商品名:VBP105−1、繊維長3mm)、ポリエチレンパルプ(三井化学株式会社製、商品名:SWP)を用意した。ポリアクリロニトリル系炭素短繊維50質量部を湿式短網連続抄紙装置のスラリータンクで水中に均一に分散解繊し、十分に分散したところにPVA短繊維10質量部およびポリエチレンパルプ40質量部を均一に分散し、送り出した。送り出されたウェブを短網板に通し、ドライヤー乾燥後、幅1000mm、坪量43g/m2のロール形態の炭素繊維紙を得た。
実施例1と同じ多孔質炭素繊維シートを用い、図4に示す装置で実施例4のシート道条件で、8:ガイドロール1と9:ニップロールの間に、コーティング層の塗工装置、乾燥装置を設置し、巻き取りを行った。
デンカブラック(電気化学工業株式会社製)、イオン交換水、イソプロピルアルコールをそれぞれ5:100:80の割合で混合し、ホモミクサーMARK−II(プライミクス株式会社製)を用いて、冷却しながら15000rpmで30分間撹拌を行って、コーティング液1を得た。
コーティング液1に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ディスパージョンをカーボンブラック1に対し、0.3の割合で添加しディスパーによって5000rpmで15分間の撹拌を行い、コーティング液2を得た。
多孔質電極基材用の撥水処理液の作成には、PTFEディスパージョン(31−JR、三井デュポンフロロケミカル製)と界面活性剤(ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル)および蒸留水を用いた。撥水処理液における固形分濃度が、PTFEは1wt%、界面活性剤は2wt%となるように調整した後、蒸留水を添加して、ディスパーを用いて1000rpm、10分間撹拌することによって撥水処理液を作成した。
多孔質電極基材を上記の撥水処理液に浸漬することによって含浸させ、含浸後の多孔質電極基材をニップロールによって、多孔質電極基材に付着した余分な撥水処理液を取り除き、乾燥機にて200℃でシートを乾燥処理した。さらに、コーティング液2をバーコート法により、撥水処理した多孔質炭素繊維シートに塗工し、100℃に設定した熱風乾燥炉を用いて乾燥させた。さらに、乾燥後焼結炉にて360℃にて焼結処理をおこなってコーティング層を形成した多孔質炭素電極基材を得た。
実施例1と同じ多孔質炭素繊維シートを用い、図4に示す装置を用いて巻き出し、巻取り試験を行った。ただし、図4の装置を調整し、r・θが2.3となる装置で行った。割れ個数を検査した結果、2箇所の割れが認められた。
2:ガイドロールあるいはニップロール
3:多孔質炭素繊維シート
4:シート状物端部の位置検出装置
5:多孔質炭素繊維シート
6:コアボビン
7:多孔質炭素繊維シート
8:ガイドロール1
9:ニップロール
10:ガイドロール2
11:シート状物端部位置検出装置
12:光源
13:多孔質炭素繊維シート
Claims (9)
- 多孔質炭素繊維シートを巻き出す軸と、ロール状に巻き取る巻取り軸と、該巻取り軸の上流側に前記多孔質炭素繊維シート状物をニップするニップロール、および多孔質炭素繊維シート状物の端部位置検出装置を配置し、その検出信号により前記巻取り軸を巻取り軸の軸線方向に移動させながら、巻き取る工程において、巻き出す軸と巻き取り軸の間に少なくとも1本以上のガイドロールを含み、ニップロールおよびガイドロールのシート道の曲率をr(mm−1)、ニップロールおよびガイドロールで形成される抱き角をθ(度)とした時に、各々のニップロールおよびガイドロールにおいて下記式(1)が満たされることを特徴とする固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻き取り方法。
0<r・θ<1.5 ・・・式(1) - 各々のニップロールおよびガイドロールにおいて下記式(2)が満たされることを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻取り方法。
0<r・θ<1.2・・・式(2) - 前記ガイドロールがフリーロールあるいは駆動ロールであることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻き取り方法。
- 前記フリーロールの回転トルクが0.5N・m以下であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻き取り方法。
- 前記多孔質炭素繊維シートを巻き取る工程において、巻き始めのロール径をD1(mm)、その時の巻き取り張力をT1(N/m)、巻き終りのロール径をD2、その時の巻き取り張力をT2(N/m)とした時に、巻き取り張力が下記式(3)を満たし、巻き始めから巻き終りまで巻取り張力が漸減することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻き取り方法。
T1≧100 かつ T1≧T2≧0.8×(D1/D2)×T1・・・式(3) - 前記端部検出装置がニップロール下流に配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻き取り方法。
- 前記巻き出し軸とニップロールの間、あるいはニップロールと巻き取り軸の間に、多孔質炭素繊維シートにカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を設ける工程を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻き取り方法。
- 多孔質炭素繊維シートにカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を設ける工程が、以下の(e)〜(g)の工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻き取り方法。
(e)カーボン粉、撥水剤、界面活性剤および水からなるコーティング液を塗工して、多孔質炭素繊維シート上に塗工膜を形成する工程。
(f)工程(e)で得られた塗工膜を形成した多孔質炭素繊維シートを150℃〜300℃の環境下にて、乾燥し、塗膜における水分を除去し、多孔質炭素繊維シート上にコーティング層を形成する工程。
(g)工程(f)で得られた乾燥させたシートを、200℃〜400℃に加熱する工程。 - 巻き出す多孔質炭素繊維シートが、少なくとも1面にカーボン粉と撥水剤からなるコーティング層を有していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用多孔質炭素繊維シートの巻き取り方法。
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