以下、本発明の一実施形態を図1〜図12(B)に基づいて説明する。図1には、一実施形態に係る画像表示装置としてのプロジェクタ11の概略構成が示されている。
プロジェクタ11は、図1に示されるように、単数あるいは複数の発光点を有する複数(例えば3つ)の発光素子111R、111G、111B等を含む光源部を備えている。3つの発光素子111R、111G、111Bは、LD(レーザダイオード)であり、互いに異なる波長λR、λG、λBの光束を放射する。例えばλR=640nm、λG=530nm、λB=445nmである。各発光素子は、LDドライバによって駆動される。LDは、半導体レーザの一種であり、端面発光レーザとも呼ばれる。
発光素子111R、111G、111Bから放射された波長λR、λG、λBの光束は、それぞれカップリングレンズ112R、112G、112Bにより後続の光学系にカップリングされる。
カップリングレンズ112R、112G、112Bによりカップリングされた光束は、それぞれアパーチャ113R、113G、113Bにより整形される。
各アパーチャは、光束の発散角等に応じて円形、楕円形、長方形、正方形等、様々な形状であることができる。
各アパーチャを介した光束は、合成素子115により光路合成される。合成素子115はプレート状或いはプリズム状のダイクロイックミラーであり、波長に応じて光束を反射/透過し、一つの光路に合成する。この合成された光が光源部から出射された光である。
合成された光束は、レンズ114により光偏向器117の反射面に導光される。レンズ114は、光偏向器117側に凹面が向けられたメニスカスレンズである。
光偏向器117の反射面で反射された光は、投射レンズ119を介して投影される。なお、投射レンズ119に、レーザ光特有のスペックルノイズを抑制するための拡散板を設けても良い。
光偏向器117は、駆動装置としての制御ボード118により駆動される。そこで、光偏向器117と制御ボード118とを含んで光偏向装置100が構成されている。
ここで、プロジェクタ11の全体動作について簡単に説明する。例えばパソコン(パーソナルコンピュータ)等の上位装置からの画像情報が画像処理部に入力され、画像処理部で所定の処理(例えば歪み補正処理、画像サイズ変更処理、解像度変換処理等)が施され、LDドライバに送られる。
LDドライバは、画像処理部からの画像情報に基づいて強度変調した駆動信号(パルス信号)を生成し、駆動電流に変換する。そして、LDドライバは、制御ボード118からの同期信号に基づいて、各発光素子の発光タイミングを決定し、該発光タイミングで、駆動電流を供給して、該発光素子を駆動する。
光偏向器117は、複数の発光素子からの光が合成された光(合成光)を互いに直交する二軸周りに独立に偏向する。偏向された光は、投射レンズ119を介して被走査面に投影される。この結果、レーザ光により被走査面が主走査方向及び副走査方向に2次元走査され、被走査面上に2次元のフルカラー画像が形成される。なお、各発光素子を直接変調する強度変調に代えて、該発光素子から射出されたレーザ光を光変調器で変調(外部変調)しても良い。
図2には、光偏向器117の構成が平面図にて示されている。光偏向器117は、主走査方向に対応する一軸(以下では第1軸とも称する)周りに揺動可能なミラー103を含むミラー構造部と、該ミラー構造部を副走査方向に対応する、上記一軸に直交する他軸(以下では第2軸とも称する)周りに揺動可能に支持する支持構造部とを含む。光偏向器117は、シリコン基板101上に形成されている。
詳述すると、ミラー構造部は、反射面を有するミラー103に加えて、該ミラー103の両端に個別に一端が接続され同軸上に位置する2つのトーションバー110と、該2つのトーションバー110に個別に自由端が接続された2つのカンチレバー109と、該2つのカンチレバー109に個別に設けられた2つの圧電部材104と、各カンチレバー109の固定端が内縁に接続された枠部301とを有している。そこで、ミラー構造部では、各圧電部材104の反り変形に伴って対応するカンチレバー109が反り変形し、ミラー103が第1軸周りに揺動する。
支持構造部は、枠部301の外縁にそれぞれの一端が接続された、複数(例えば8つ)の梁が折り返し部を介して蛇行するように連続する2つの蛇行部302(ミアンダ形状部)と、各蛇行部302の複数の梁に個別に設けられた複数(例えば8つ)の圧電部材303と、各蛇行部302の他端が内縁に接続された枠部310とを有している。そこで、各圧電部材303の反り変形に伴って各蛇行部の複数の梁が反り変形し、ミラー103が第2軸周りに揺動する。
すなわち、支持構造部は、反射面を有するミラー構造部を第2軸周りに揺動可能に支持する。
以上のように構成される光偏向器117は、ミラー103を第1軸及び第2軸周りに独立に揺動させ、ミラー103に入射した光を第1軸及び第2軸周りに偏向し、該偏向された光により被走査面を主走査方向及び副走査方向に2次元走査することができる。
なお、図2において、符号201は、各圧電部材に電圧を印加するためのパッドであり、シリコン基板101上に設けられた配線部材(不図示)により該圧電部材に接続されている。
ミラー構造部の各圧電部材104は、圧電材料を挟んで設けられた一対の電極材料間に周期的な電圧が印加されることで反り変形する。ここでは、圧電部材104には、画像のフレームレートから決定される駆動周波数、例えば20kHz等の比較的高い駆動周波数の正弦波電圧が印加される。
この際、駆動周波数をミラー103の重量とトーションバー110のばね定数とから決定される共振周波数に近い周波数とすることにより、共振させてミラー103を揺動させることができるので、比較的低い電圧でミラー103の第1軸周りの振れ角(揺動角)を大きくすることができる。
図3は、図2の光偏向器からミラー構造部を抜粋して示す図である。図4は、図3のA−A’断面図である。図5は、図3のB−B’断面図である。図6は、図3のC−C’断面図である。図4及び図5には、主にミラー103を揺動させる駆動力を発生するカンチレバー109及び圧電部材104が示されている。図6には、主にミラー103が示されている。
以下に、図3〜図6を参照して、シリコン基板101上に形成される光偏向器117の製造方法について説明する。
シリコン基板101としては、通常SOI(Silicon On Insulator)基板が使用される。シリコン基板101(SOI基板)は、活性層102となるシリコン層と、埋め込み酸化膜116(一般にBOX層と称される)と、基材層105となるシリコン層とにより構成される(図4及び図5参照)。
先ず、シリコン基板101の表面にシリコン酸化膜107が成膜され、その後、下部電極材料120、圧電材料121、上部電極材料122が順に成膜される。その後、上部電極材料122、圧電材料121、下部電極材料120がそれぞれ異なるパターンでパターン化される。このとき、各パターンは光偏向器117に要求される性能等に応じて任意の形でパターン化され、下部電極材料120と同一パターンでシリコン酸化膜107がエッチングされる。
次いで、絶縁膜108が成膜され、接続孔112を開口して引出し配線材料111が成膜されパターン化される。その後、パッシベーション膜113及びミラー膜(ミラー103)を成膜し、順次パターン化される。その後、活性層102と基材層105と埋め込み酸化膜116を順次パターン化及びエッチングし、光偏向器117が完成される。ウェハからチップ(個々の光偏向器117)に分割する方法としては、例えばブレードによるダイシング技術、レーザダイシング技術、ドライエッチング技術が挙げられる。
光偏向器117では、図4及び図5において、下部電極材料120と上部電極材料122の間に正弦波の駆動電圧を印加することにより、圧電材料121が面内方向に伸縮し、カンチレバー109の反りを発生させトーションバー110の捩りを起こし、ミラー103の共振振動を誘発させ、ミラー103を第1軸周りに揺動させる(図6参照)。
次に、支持構造部について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、図2のX−X’断面図であり、図8は、支持構造部の圧電部材を反り変形させるための電気配線の概略図である。
図7において、各蛇行部302は、一端がミラー構造部の枠部301に接続され、他端が枠部310に接続されている。
ここで、蛇行部302の複数の梁は、2つの梁群304、305に分類されている。梁群304の梁と梁群305の梁は、第2軸方向に交互に並んでいる。以下では、梁群304と該梁群304に設けられた複数の圧電部材303を併せて圧電アクチュエータ群304Aと称し、梁群305と該梁群305に設けられた複数の圧電部材303を併せて圧電アクチュエータ群305Aと称する。図8から分かるように、2つの圧電アクチュエータ群304A、305Aには、異なる2つの駆動電圧が個別に印加される。
図8において、蛇行部302の各梁に設けられた上部電極材料122は共通であり(並列に接続され)、接地されている。一方、下部電極材料120は、圧電アクチュエータ群304A、305Aによって分かれており、圧電アクチュエータ群毎に並列に接続されている。このため、圧電アクチュエータ群304A、305Aは、同様な反りを発生させる。
支持構造部では、2つの圧電アクチュエータ群304A、305Aに2つの電圧が並行して(例えば同時に)個別に印加されることにより、枠部310に接する部位から徐々に変位が大きくなり、枠部301と接する部位の変位が最大となる。これにより、支持構造部では、ミラー構造部における第1軸周りのミラー103の揺動とは異なり、共振駆動によらず比較的大きな振れ角(揺動角)でミラー103を第2軸周りに揺動させることができる。
なお、図8においては、理解を容易にするために、圧電アクチュエータ群304A、305Aの圧電部材を相互に模様分けして示している。
ここで、図9(A)及び図9(B)には、それぞれ比較例1及び2における光偏向器の支持構造部の圧電部材に印加される駆動電圧と、該駆動電圧による副走査ミラー振れ角(副走査方向に対応する他軸周りのミラーの振れ角)が示されている。比較例1及び2の光偏向器の構成は、本実施形態と同じである。
詳述すると、比較例1では、図9(A)に示されるように、駆動電圧としての正弦波電圧の波形と、該正弦波電圧による副走査ミラー振れ角が示されている。比較例2では、図9(B)に示されるように、駆動電圧としての三角波電圧の波形と、該三角波電圧による副走査ミラー振れ角が示されている。
さらに詳述すると、図9(A)及び図9(B)において、横軸は時間であり、縦軸上部では副走査ミラー振れ角を模式的に示し、縦軸下部では略同一波形で位相差が180°の2種類の駆動電圧をそれぞれ破線及び一点鎖線で示している。これら2種類の駆動電圧は、各蛇行部の隣り合う2つの梁に個別に設けられた2つの圧電部材に個別に印加される。すなわち、各蛇行部の複数の梁に個別に設けられた複数の圧電部材の並び順に連続番号を付与した場合に、2種類の駆動電圧の一方が奇数番目の圧電部材に印加され、2種類の駆動電圧の他方が偶数番目の圧電部材に印加される。
比較例1における正弦波電圧による駆動では、隣り合う2つの梁に個別に設けられた2つの圧電部材に180°の位相差で正弦波電圧が印加され、隣り合う2つの梁は互いに反るタイミングが180°ずれるので、互いに反りを抑えこみながら振動しているといえる。これにより、得られる画像は比較的良好となる。
しかし、比較例1では、正弦波電圧ゆえに、副走査ミラー振れ角の時間変化が一定とはならない。このため、比較例1の光偏向器を画像表示装置(例えばプロジェクタ)に用いた場合は、副走査方向に対応する他軸周りのミラーの揺動速度が一定でないため、画像に明暗が発生することになる。すなわち、副走査ミラー振れ角の変化を直線的(リニア)にすることができない。
次に、比較例2における三角波電圧による駆動では、正弦波電圧と同様に、隣り合う2つの梁に個別に設けられた2つの圧電部材に180°の位相差で三角波電圧が印加され、隣り合う2つの梁は互いに反るタイミングが180°ずれるので、互いに反りを抑えこみながら振動しているといえる。
しかし、比較例2では、電圧を昇圧する時間帯と電圧を降圧する時間帯との境界において昇圧と降圧との間で電圧が急激に変わるため、駆動電圧に高調波成分を有していることとなる。この高調波成分は、ミラー構造部の重さに起因する該ミラー構造部の共振周波数およそ数百Hzに相乗することにより、図9(B)に示されるように、ミラー103の振れ角がきれいな直線とはならず、ミラー構造部の共振周波数に相当するタイミングで異常振動を起こすこととなる。このため、投影画像においても異常な明暗や画像の異常表示につながることとなる。
以下に、本実施形態の光偏向器117の駆動方法について説明する。光偏向器117の梁群304、梁群305に設けられた圧電部材に個別に印加される駆動電圧A、Bの波形400、500(ここでは周期波形)は、図10に示されるように、一定に昇圧する時間帯である定昇圧時間帯401、501と、高電圧で安定する時間帯である高定電圧時間帯402、502と、一定に降圧する時間帯である定降圧時間帯403、503と、低電圧(高定電圧時間帯での電圧よりも低い電圧)で安定する時間帯である低定電圧時間帯404、504とにより、それぞれ1周期が構成されている。すなわち、駆動電圧A、Bの波形400、500は、台形波(厳密には等脚台形波)である。以下では、駆動電圧A、Bの波形400、500を、駆動波形400、500とも呼ぶ。
さらに、2つの駆動波形400、500は、位相が180°ずれた略同一波形である。
また、各駆動波形における定昇圧時間帯と定降圧時間帯は、略同一時間である。
また、各駆動波形における高定電圧時間帯と低定電圧時間帯の合計時間の1周期に対する割合は、1割〜3割である。
なお、図10の縦軸下部、中部に、駆動波形400、500が、それぞれ破線、一点鎖線で示されている。低定電圧時間帯404、504の電圧は、接地されてゼロ電位であっても良いが、そうでなくても良い。駆動電圧A、Bを印加したときのミラー103の振れ角は縦軸上部に示されている。
本実施形態では、各駆動波形を上述した台形波とすることにより、駆動電圧が高電圧で停滞する高定電圧時間帯402、502や低電圧で停滞する低定電圧時間帯404、504があるにも関わらず、ミラー103は振れ角が停滞する時間がなく、高調波のノイズもなく、時間に対し一定の割合でミラー103の振れ角が変化する。これにより、光偏向器117を画像表示装置(例えばプロジェクタ)に用いた場合は、画面上での明暗ムラ等がない高品質で精細な画像表示が可能となる。
このように良好なミラー103の振れ角が得られる理由としては、本実施形態の駆動波形400、500は、すなわち台形波は、三角波や鋸波と異なり急激に電圧が急激に変化する波形ではないので高調波成分のノイズは発生しにくいこと(理由1)や、駆動波形400、500の位相が180°ずれているので高調波のノイズが発生しても相殺されること(理由2)が挙げられる。
上記理由1、2により高調波成分のノイズが発生しないので2次元画像を表示(投影)した場合に、望まれない明暗がない画像となる。
また、駆動波形400、500が時間に対して一定に(リニアに)変化する電圧なので、ミラー103の振れ角を時間に対して一定に変化させることができ、これにより高精細な画像を得ることができる。
また、駆動周波数(駆動電圧の周波数)は数十Hz程度であり、かつ蛇行部の梁群304、305はバネ定数が低いので、梁群304、305の変形によりミラー構造部を揺動させるときに枠部301の重量に起因してミラー103を慣性力で揺動させることができる。
詳述すると、各蛇行部において、梁群304、305の一方の圧電部材303に対して高電圧が印加される高定電圧時間帯と、梁群304、305の他方の圧電部材303に対して低電圧が印加される定低電圧時間帯が重なるので、梁群304、305の一方の変形に起因する慣性力によりミラー103の振れ角が増加する際に梁群304、305の他方がミラー103を引き戻そうとする動きを起こさず、ミラー103の振れ角が停滞する時間がない副走査ミラー振れ角の波形を得ることができ、画像投影における有効投影領域を拡大することができる。
次に、各駆動波形における高定電圧時間帯と低定電圧時間帯の合計時間の割合を1周期に対して1割〜3割としている理由を、以下に説明する。
前述の比較例2のように駆動電圧が三角波の場合、高調波成分のノイズが発生し、ミラーの揺動に異常が発生する。
そして、駆動波形が台形波の場合、高定電圧時間帯と低定電圧時間帯の合計時間の割合が1周期の1割よりも短い場合は、高調波成分のノイズが若干影響し、ミラーの揺動が不安定になるので、少なくとも1割以上は必要である。逆に、高定電圧時間帯と低定電圧時間帯の合計時間が3割よりも長くなると、上記慣性によるミラーの揺動が終了し、ミラーの揺動が不安定になる。
そこで、高定電圧時間帯と低定電圧時間帯の合計時間の割合は、1周期に対して1割〜3割の時間であることが望ましい。
以上のように構成されるプロジェクタ11では、複数の発光素子(半導体レーザ)からの光が合成された光を光偏向器117のミラー103で反射して2次元画像を投影するにあたり、主走査方向に対応する一軸(第1軸)周りに関しては、正弦波電圧によるほぼ共振周波数にて駆動を行うことによりミラー103を安定して揺動させることができ、副走査方向に対応する他軸(第2軸)周りに関しては、駆動波形400、500を用いて圧電アクチュエータ群304A、305Aを駆動することでミラー103を安定して揺動させることができる。
第1軸周り及び第2軸周りにおける安定したミラーの揺動により、本実施形態の利点が得られる。この利点を総じていうと、画面上での明暗ムラ等がない高品質で精細な画像表示が可能となる。
上記良好な副走査ミラー振れ角が得られる理由を簡単に説明すると、高調波成分のノイズが完全に抑制されることと、被走査面を副走査方向に走査する場合に一定のミラー揺動速度で投影されることである。この結果、画像の明暗ムラが完全に抑制され、画像投影における有効投影領域を拡大できる。そして、高精細な画像表示が可能となる。
ここで、2つの駆動波形400、500それぞれにおける定昇圧時間帯と定降圧時間帯の合計が、1画面を表示(形成)する時間に相当することが好ましい。
具体的に説明すると、プロジェクタ11のフレームレートを例えば60Hzとした場合、1画面を表示する時間は1/60秒ということになる。そこで、定昇圧時間帯と定降圧時間帯の合計が1/60秒よりも若干短い時間とすることにより、ミラー103を第1軸周りに往復揺動させつつ第2軸周りに往復揺動させることで1画面を表示することが可能となる。
さらに具体的に説明すると、第2軸周りの一方向へのミラー103の揺動では副走査方向の表示(投影)を1画素飛びに行い(図11(A)参照)、折り返しの第2軸周りの他方向へのミラー103の揺動にて該飛ばされた画素を表示(投影)する(図11(B)参照)こととしている。
図11(A)には、ミラー103の主走査方向に対応する一軸周りの往復揺動及び副走査方向に対応する他軸周りの一方向への揺動による投影画像が示されている。図11(B)には、ミラー103の主走査方向に対応する一軸周りの往復揺動及び副走査方向に対応する他軸周りの他方向(一方向と反対方向)への揺動による投影画像が示されている。
図11(A)では1画素飛びで点灯されており、図11(B)では上記飛ばされた画素が点灯されている。ここでは、理解を容易とするために、図11(A)の投影画像を投影するために発光素子を1画面を構成する全画素の略半数の画素に対応する走査タイミングで点灯させ、図11(B)の投影画像を投影するために発光素子を1画面を構成する全画素の残りの略半数の画素に対応する走査タイミングで点灯させている。
図11(C)には、図11(A)の投影画像と図11(B)の投影画像を合成した1つの画像(合成画像)が示されている。図11(C)から分かるように、1画面を構成する全画素の投影が可能となる。
結果として、ミラー103の第2軸周りの往復揺動による1画面表示では、片面(半画面)の表示時間が1/120秒より若干少ない程度での表示となるので、点灯画像の残像が分かりにくくなり、ひいては投影画像のぎらつき感を低減することができる。
また、2つの駆動波形400、500それぞれにおける定昇圧時間帯が1画面を表示(形成)する時間に相当し、該駆動波形における定降圧時間帯が1画面を表示(形成)する時間に相当しても良い。
具体的に説明すると、例えばプロジェクタ11のフレームレートを100Hzとした場合、1画面を表示する時間は1/100秒ということになる。すなわち、各駆動波形における定昇圧時間帯及び定降圧時間帯それぞれが1/100秒よりも若干短い時間とすることにより、ミラー103を第1軸周りに往復揺動させつつ第2軸周りに往復揺動させることで2画面を表示(投影)することができる。
さらに具体的に説明すると、第2軸周りの一方向へのミラー103の揺動では1画面を構成する全画素の表示(投影)を行い(図12(A)参照)、折り返しの第2軸周りの他方向へのミラー103の揺動では次の画面を構成する全画素の表示(投影)を行うこととしている(図12(B)参照)。
図12(A)には、ミラー103の第1軸周りの往復揺動及び第2軸周りの一方向への揺動による投影画像が示されている。図12(B)には、ミラー103の第1軸周りの往復揺動及び第2軸周りの他方向(一方向と反対方向)への揺動による投影画像が示されている。
図12(A)では1画面を構成する全画素が点灯されており、図11(B)では次の画面を構成する全画素が点灯されている。ここでは、理解を容易とするために、図12(A)の投影画像を投影するために発光素子を1画面を構成する全画素に対応する走査タイミングで点灯させ、図12(B)の投影画像を投影するために発光素子を次の画面を構成する全画素に対応する走査タイミングで点灯させている。
以上のような、ミラー103の第2軸周りの往復揺動による2画面表示は、フレームレートを例えば100Hz位の速さで表示する場合に適している。これにより、ミラー103の第2軸周りの揺動の1周期を50Hzとすることができる。つまり、定昇圧時間帯及び定降圧時間帯それぞれを1/100秒より若干短い時間とすることができ、ミラー103の往復の走査で2画面を表示することができる。
このときの1周期も50Hz位の時間であるので、発光素子(半導体レーザ)の点灯による往復光によるぎらつき感も抑制することができる。さらに、1画面の全画素を表示するための発光素子の点灯を連続して行うことができるので、発光素子を点灯するための制御回路(LDドライバ)を1画素飛びで設計する必要がないので簡素化できる。
以上説明した本実施形態の光偏向装置100は、反射面を有するミラー構造部と、該ミラー構造部に接続された、複数の梁が蛇行するように連続する蛇行部302と複数の梁に個別に設けられた複数の圧電部材303とを含み、ミラー構造部を揺動可能に支持する支持構造体と、隣り合う2つの梁に個別に設けられた2つの圧電部材303に異なる2つの周期波形(駆動波形400、500)の電圧を並行して(例えば同時に)個別に印加する制御ボード118(駆動装置)と、を備え、2つの周期波形それぞれは、電圧が上昇する昇圧時間帯(定昇圧時間帯)、電圧が降下する降圧時間帯(定降圧時間帯)、及び昇圧時間帯と降圧時間帯との間の電圧が一定の定電圧時間帯(低定電圧時間帯、高定電圧時間帯)を含む。
この場合、ミラー構造部の揺動速度の変動を抑制しつつミラー構造部の振れ角を所望の振れ角に維持することができる。
一方、特許文献1(特開2012−185314号公報)では、ミアンダ形状の圧電アクチュエータを圧電カンチレバー1本おきに駆動する駆動波形が、偶数番目の圧電カンチレバーに印加される第1電圧が鋸波状の電圧であり、奇数番目の圧電カンチレバーに印加される第2電圧はそれと逆位相の鋸波状の電圧であり、第1電圧と第2電圧の相対的な位相差の値をある特殊な値に設定している。
すなわち、鋸波駆動により発生する、電圧が急に変わる時間における高調波成分を、逆位相の電圧波形(鋸波)を、位相差をある特定の値(最適値)にして組み込むことにより、抑制しようとしている。
ここで、環境温度の変動や連続駆動の経時変化により圧電カンチレバーの圧電性能が変動する。この場合、ミラー構造部の所望の振れ角を維持するために駆動電圧を変える必要がある。
しかし、特許文献1では、第1電圧と第2電圧の相対的な位相差の最適値は電圧により異なるが、この位相差は予め定められた所定の値に固定されているため、第1電圧と第2電圧を変えると位相差の最適値が変わり、高調波成分を抑制できなくなる。この結果、ミラー構造部の揺動速度の変動を抑制できない。
従って、特許文献1の光偏向器の駆動装置をプロジェクタやヘッドアップディスプレイ等の画像表示装置に組み込んだ場合、高品質で精細な画像表示を安定して行うことができない。
一方、本実施形態の光偏向装置100では、各周期波形(駆動波形)が定昇圧時間帯、定降圧時間帯、及び定昇圧時間帯と定降圧時間帯との間の定電圧時間帯(低定電圧時間帯、高定電圧時間帯)を含むため、高調波成分を抑制でき、かつ2つの周期波形の電圧の位相差をある特殊な値に設定する必要もないので、環境温度の変動や連続駆動の経時変化により圧電性能が変化しても、電圧を調整するだけで、ミラー構造部の揺動速度の変動を抑制しつつ必要な(所望の)振れ角を維持できる。
この場合、上記位相差の調整なども必要でないので、投影される2次元画像に、望まれない明暗等が発生しない。また、光偏向器117の第1軸及び第2軸周りの揺動も安定しているので、輝度ムラや歪みの発生が抑えられた高品質で精細な画像の表示が可能となる。さらに、ミラー103の第2軸周りの振れ角の時間変化が一定であり、かつ周期波形(駆動波形400、500)と異なりミラー103の第2軸周りの揺動が停滞する時間がないので、効率よく画像表示を行うことができる。
また、定電圧時間帯は、定昇圧時間帯後かつ定降圧時間帯前の高定電圧時間帯、及び定降圧時間帯後かつ定昇圧時間帯前の低定電圧時間帯を含むため、昇圧から降圧に移行する際及び降圧から昇圧に移行する際のいずれにおいても、高調波成分の発生を抑制できる。
また、2つの周期波形(駆動波形400、500)それぞれは、定昇圧時間帯、定降圧時間帯、高定電圧時間帯及び低定電圧時間帯を1周期に含むため、ミラー構造体の往復揺動を均一の揺動速度かつ所望の振れ角で繰り返し行うことができる。
また、高定電圧時間帯と低定電圧時間帯の合計の1周期に対する割合は、1割〜3割であるため、ミラー構造部の揺動を安定させることができる。
また、2つの周期波形(駆動波形400、500)は、位相が180°ずれた略同一の波形であるため、蛇行部における隣り合う2つの梁は互いに反るタイミングが180°ずれ、互いに反りを抑えこみながら振動する。この結果、ミラー構造部を安定して揺動させることができる。
また、定昇圧時間帯と定降圧時間帯は、略同一の時間であるため、昇圧から降圧に移行するタイミング及び降圧から昇圧に移行するタイミングを略同一にすることができ、ミラー構造部が揺動範囲の一端及び他端で折り返す際のタイミングのずれを防止できる。
また、定昇圧時間帯及び定降圧時間帯の電圧の時間に対する変化は、一定であるため、ミラー構造部の揺動速度を基本的に一定にすることができる。
また、プロジェクタ11は、画像情報に基づいて変調された光を出射する複数の発光素子を含む光源部と、該光源部からの光を偏向する光偏向装置100と、を備えているため、高精細な画像を安定して表示することができる。
また、定昇圧時間帯と定降圧時間帯の合計が1画面を表示する時間に相当する場合、ミラー構造部の往復揺動により1画面を高精細に表示できる。
また、昇圧時間帯及び降圧時間帯それぞれが1画面を表示する時間に相当する場合、ミラー構造部の往復揺動により2画面を高精細に表示できる。
また、本実施形態の光偏向器の駆動方法は、反射面を有するミラー構造部と、該ミラー構造部に接続された、複数の梁が蛇行するように連続する蛇行部302と複数の梁に個別に設けられた複数の圧電部材303とを含む支持構造体と、を備える光偏向器117の駆動方法であって、隣り合う2つの梁に個別に設けられた2つの圧電部材303に異なる2つの周期波形の電圧を並行して(例えば同時に)個別に印加する工程を含み、該印加する工程は、電圧を上昇させる昇圧工程(定昇圧工程)と、電圧を下降させる降圧工程(定降圧工程)と、昇圧工程と降圧工程との間に行われる定電圧維持工程と、を含む。
この場合、ミラー構造部の揺動速度の変動を抑制しつつミラー構造部の振れ角を所望の振れ角に維持することができる。
また、定電圧維持工程は、昇圧工程後かつ降圧工程前の高定電圧維持工程、及び降圧工程後かつ昇圧工程前の低定電圧維持工程を含むため、昇圧から降圧に移行する際及び降圧から昇圧に移行する際のいずれにおいても、高調波成分の発生を抑制できる。
なお、光偏向器の構成は、上記実施形態で説明したものに限らず、適宜変更可能である。上記実施形態の光偏向器117は、ミラー103を互いに直交する二(第1軸及び第2軸)周りに独立に駆動しているが、例えばミラー103を一軸周りにのみ駆動しても良い。具体的には、図13に示される変形例1のように、非共振駆動による1次元光走査用の光偏向器にも適用可能である。図13における支持構造部は、上記実施形態の支持構造部と同様の構成を有している。この場合、光偏向器を2つ組み合わせて、2つのミラーを互いに直交する二軸周りにそれぞれ駆動するようにしても良い。変形例1の光偏向器でも、上記実施形態と同じ駆動方法で駆動することで、上記実施形態と同様の効果が得られる。
また、上記実施形態及び変形例1では、画像形成装置の一例として、プロジェクタ11を採用しているが、これに限らず、例えば、プリンタ、複写機等を採用しても良い。具体的には、例えば、図13に示される1次元走査用の光偏向器で偏向されたレーザ光により像担持体(例えば感光体ドラム)の表面を走査して静電潜像を形成し、該静電潜像にトナーを付着させて現像し、得られたトナー画像を媒体に転写し、画像を形成しても良い。
また、上記実施形態では、画像形成装置としてのプロジェクタ11に光偏向装置100が配備されているが、これに限らず、例えば図14に示される変形例2の画像表示装置としてのヘッドアップディスプレイ7に光偏向装置100が配備されても良い。ヘッドアップディスプレイ7は、例えば車両、航空機、船舶等の移動体に搭載される。そこで、移動体と該移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイ7とを備える移動体装置を提供することもできる。
詳述すると、ヘッドアップディスプレイ7は、一例として図14に示されるように、プロジェクタ11における投射レンズ119を透過スクリーンに置き換えた構成を有している。ヘッドアップディスプレイ7では、レンズ114を介した光(合成光)を光偏向器117で偏向し、透過スクリーンを介して透過反射部材に入射させる。
この際、光偏向器117による第1軸及び第2軸周りのミラー103の偏向動作に伴い光により透過スクリーンが2次元走査され、透過スクリーン上に中間像(画像)が形成される。そして、透過スクリーン上で中間像を形成した光の一部が透過反射部材で反射される。この結果、観察者は、透過反射部材を介して中間像の拡大された虚像を視認することができる。すなわち、ヘッドアップディスプレイ7は、透過スクリーンと、該透過スクリーンに中間像(画像)を形成する光偏向器117を含む画像形成装置と、を備え、該中間像を形成した光を透過反射部材に入射させる画像表示装置である。
なお、透過スクリーンとしては、例えば光透過性を有する平板、拡散板、2次元配列された複数のマイクロレンズを含むマイクロレンズアレイ等を用いることができる。マイクロレンズアレイを用いると、該マイクロレンズアレイ上で中間像を形成した光が拡散されるため、所謂スペックルノイズを低減できる。
また、透過反射部材としては、例えば移動体の窓部材(例えばフロントガラス)や該窓部材とは別部材で構成されるコンバイナを用いることができる。コンバイナは、通常、観察者から見て、移動体の窓部材よりも手前に配置される。なお、コンバイナは、ヘッドアップディスプレイ7の構成要素であっても良いし、構成要素でなくても良い。
また、透過スクリーンと透過反射部材との間の光路上に例えば凹面鏡、凸面鏡、平面鏡等のミラーを設けても良い。
また、透過スクリーンに代えて、反射スクリーンを用いても良い。
以上説明した変形例2のヘッドアップディスプレイ7でも、上記実施形態のプロジェクタ11と同様の効果が得られる。
また、上記実施形態及び各変形例では、RGBの3原色に対応する3つのLDからの3つのレーザ光の合成光を光偏向装置で偏向して被走査面を2次元走査することによりカラー画像を形成するプロジェクタやヘッドアップディスプレイについて説明したが、これに限らず、例えば、1つのレーザダイオードからの1つレーザ光を光偏向装置で偏向して被走査面を2次元走査することによりモノクロ画像を形成するプロジェクタやヘッドアップディスプレイを提供しても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、駆動電圧の波形(駆動波形)として、台形波(厳密には等脚台形波)を用いているが、これに限らず、要は、等脚台形波以外の台形波などの少なくとも昇圧時間帯、降圧時間帯及び定電圧時間帯を含む周期波形であることが望ましい。そして、光偏向器117のデバイス特性に応じて波形を変えても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、各周期波形(駆動波形400、500)は、高定圧時間帯及び低定圧時間帯の双方を含むが、要は、高定圧時間帯及び低定圧時間帯の少なくとも一方を含んでいれば良い。各周期波形が高定電圧時間帯及び低定電圧時間帯の一方のみを含む場合には、定降圧時間帯と定昇圧時間帯とを連続させても良い。この場合であっても、昇圧から降圧に移行する際又は降圧から昇圧に移行する際に高調波成分の発生を抑制できる。この場合、各周期波形は、高定電圧時間帯及び低定電圧時間帯の一方と定昇圧時間帯と低降圧時間帯とを1周期に含むことになる。
また、上記実施形態及び各変形例では、各周期波形において、高定電圧時間帯と低定電圧時間帯の合計の1周期に対する割合は、1割〜3割とされているが、この範囲を逸脱しても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、定昇圧時間帯と低降圧時間帯は、略同一の時間に設定されているが、互いに異なる時間に設定されても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、昇圧時間帯及び降圧時間帯それぞれにおける電圧の時間に対する変化は一定とされているが、一定でなくても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、2つの周期波形(駆動波形400、500)は、位相が180°ずれた略同一の波形であるが、これに限られない。例えば、2つの周期波形は、位相差が180°以外(0°を含む)の略同一波形であっても良いし、位相差が0°〜180°の互いに相似の波形であっても良い。
また、上記実施形態及び各変形例における光偏向器の各構成部の配置、大きさ、形状、数、材質等は、適宜変更可能である。例えば、ミラー構造部において、カンチレバー及び圧電部材は、トーションバーの軸に直交する方向の一側にのみ設けられているが、他側にも設けても良い。例えば、ミラー構造部の各トーションバーを挟む両側に2つのカンチレバーを個別に配置し、各カンチレバーの自由端を該トーションバーに接続し、該カンチレバーの固定端を枠部301に接続しても良い。
また、上記実施形態及び各変形例における光源部の構成は、適宜変更可能である。例えば、光源部は、光の3原色に対応する3つのLDを有しているが、1つ又は4つ以上のLDを有していても良い。この場合、LDの数に応じて、コリメートレンズ、ダイクロイックミラーの数(0を含む)を変更しても良い。
また、上記実施形態及び各変形例では、発光素子として、レーザダイオード(端面発光レーザ)を用いているが、これに限られない。具体的には、面発光レーザを用いても良いし、レーザ以外の光源を用いても良い。
また、上記変形例2では、画像表示装置として、例えば車両、航空機、船舶等の移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイ7について説明したが、要は、物体(移動体を含む)に搭載される画像表示装置であれば良い。この場合、物体と、該物体に搭載された画像形成装置とを備える物体装置を提供でき、上記実施形態と同様の効果が得られる。画像表示装置は、透過反射部材を構成要素として備えていても良いし、備えていなくても良い。なお、「物体」は、移動体の他、恒常的に設置されるものや運搬可能なものを含む。
また、光偏向装置100を、人体に装着される画像表示装置としての、例えばヘッドマウントディスプレイに配備しても良い。
以下に、本発明の発明者らが上記実施形態を発案するに至った思考プロセスを説明する。
マイクロマシン技術(MEMS技術)を用いた光偏向器は、ポリゴンミラーや従来型のガルバノミラーに比べて省電力化、小型化や高速化の可能性があり、駆動部分の形成もシリコンウェハを素材として、半導体微細加工技術を用いて大量で安価に形成できる可能性があるため、その実用化が期待されている。
MEMS技術を用いた代表的な光偏向器では、ミラー部の両端に、一対のトーションバーが一直線をなす位置関係で個別に接続されている。各トーションバーには、該トーションバーの軸方向に直交する方向に延びるカンチレバーの自由端が接続され、該カンチレバーの固定端は枠部に接続されている。このカンチレバーの一面には、該カンチレバーの反り変形を生じさせる手段として圧電部材が設けられている。この圧電部材は、PZT等の圧電材料の層と上下電極とから成り、電極間に電圧を印加することにより圧電材料層がカンチレバーの長さ方向に伸縮して、カンチレバーの厚み方向の反りを生じさせる。このカンチレバーの反りはトーションバーの捻りに置き換えられ、該トーションバーの捻りがミラー揺動となる。さらに、上記枠部をトーションバーの軸方向と直交する軸周りに揺動させる、ミアンダ形状の梁群及び該梁群に設けられた圧電部材群によって、二軸周りのミラーの揺動を可能としている。
通常、画像表示装置に用いられる、光偏向器及びその駆動装置を含む光偏向装置の場合、画像を表示するフレームレートと画像の解像度により、光偏向器の主走査方向と副走査方向の駆動周波数が決定され、主走査方向では数十kHz、副走査方向では数十Hzの駆動周波数が選択される。この場合、主走査方向では高い周波数で広い振れ角が要求されるため、共振周波数に近い駆動周波数による駆動とすることが一般的であり、正弦波駆動や矩形波駆動が用いられる。実際にこれらの駆動波形で共振させた場合にはミラーは正弦波で振動することが常識である。一方、副走査方向におけるミラーの揺動は画像表示におけるフレームレートにより上記数十Hzの周波数となるため、共振周波数の駆動は困難であり、あえて共振周波数から離れた周波数での駆動とすることにより、駆動電圧と位相差を持たないミラーの振れ角が得られる。
副走査方向ミラー振れ角、つまりはミラーがトーションバーの軸方向と直交する軸周りに揺動するときのミラーの振れ角を共振周波数から離れた周波数で駆動し、かつ駆動電圧と位相差を持たないミラーの振れ角の駆動方式が、本実施形態の光偏向器の駆動方式の前提となる。
この場合、ミアンダ形状の梁群を、圧電部材群を用いて駆動させるには、通常1本おきの梁を並列に同時に駆動することが一般的であり、正弦波波形や三角波波形による駆動方法が一般的に考えられるが、上記比較例1及び2のような問題を有していて有効な駆動方法とは言えない。
そこで、発明者らは、このような問題を解消すべく、上記実施形態を発案するに至った。