JP2016089264A - 内燃機関の断熱膜の製造方法 - Google Patents

内燃機関の断熱膜の製造方法 Download PDF

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英男 山下
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英男 山下
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Abstract

【課題】陽極酸化被膜の断熱性を向上できる内燃機関の断熱膜の製造方法の提供。
【解決手段】燃焼室に臨む壁面の一部もしくは全部に陽極酸化被膜を含む断熱膜が形成される内燃機関の断熱膜の製造方法で、製造方法は、燃焼室に臨む壁面の一部もしくは全部の表面に陽極酸化被膜12を形成する陽極酸化被膜形成ステップ(a)と、陽極酸化被膜形成ステップ(a)によって形成された陽極酸化被膜12に、陽極酸化被膜12が有する空孔14を封孔する封孔材22との親和性が低く、かつ、封孔材22よりも比重が大きい溶媒24を含浸させる溶媒含浸ステップ(b)と、溶媒24が含浸された陽極酸化被膜12に封孔材22を塗布する封孔材塗布ステップ(c)と、封孔材塗布ステップ(c)によって封孔材22が塗布された陽極酸化被膜12を乾燥させて、封孔材22を被膜するとともに溶媒24を揮発させて除去する断熱膜乾燥ステップ(d)と、を備える断熱膜の製造方法。
【選択図】図1

Description

この発明は、内燃機関の断熱膜の製造方法に関する。
従来、内燃機関の燃焼室の壁面を構成する部材に断熱膜を形成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、アルミニウムやその合金を母材とするピストンの頂面に陽極酸化被膜を形成する技術が開示されている。この技術では、まず、ピストンの頂面が電解処理されることで、ピストンの頂面に陽極酸化被膜が形成される。次に、この陽極酸化被膜に封孔材が塗布される。陽極酸化被膜に封孔材が塗布されることで、陽極酸化被膜の強度が向上する。
ところで、上記する陽極酸化被膜の表面には、多数の亀裂が存在している。さらに、陽極酸化被膜の内部には、これらの亀裂に通じる多数の空孔が存在している。これらの空孔は、寸法が1〜10μmの範囲程度の大きさのマクロ孔と、寸法が20〜200nmの範囲程度の大きさのナノ孔とに分類される。これらの空孔が存在することで、陽極酸化被膜の断熱性が維持される。
ここで、特許文献1に記載の技術では、陽極酸化被膜に封孔材を塗布する前に、加圧水蒸気や沸騰水、無機物または有機物を含有する溶媒によって、上記のナノ孔の表面に膜を形成させる。その後、上記のマクロ孔に封孔材を塗布する。これにより、ナノ孔に封孔材が含浸しなくなるため、陽極酸化被膜における空孔の割合を示す空孔率を高くすることができる。
特開2013−060620号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、マクロ孔に封孔材が含浸するため、この分空孔率が減少する。この結果、陽極酸化被膜の断熱性が低下する恐れがある。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、陽極酸化被膜の断熱性を向上させることができる内燃機関の断熱膜の製造方法を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、
燃焼室に臨む壁面の一部もしくは全部に陽極酸化被膜を含む断熱膜が形成される内燃機関の断熱膜の製造方法であって、
前記製造方法は、
前記燃焼室に臨む壁面の一部もしくは全部の表面に陽極酸化被膜を形成する陽極酸化被膜形成ステップと、
前記陽極酸化被膜形成ステップによって形成された陽極酸化被膜に、前記陽極酸化被膜が有する空孔を封孔する封孔材との親和性が低く、かつ、前記封孔材よりも比重が大きい溶媒を含浸させる溶媒含浸ステップと、
前記溶媒が含浸された陽極酸化被膜に前記封孔材を塗布する封孔材塗布ステップと、
前記封孔材塗布ステップによって前記封孔材が塗布された陽極酸化被膜を乾燥させて、前記封孔材を被膜するとともに前記溶媒を揮発させて除去する断熱膜乾燥ステップと、
を備えることを特徴とする。
第1の発明によれば、溶媒を含浸させた陽極酸化被膜の空孔に封孔材が塗布されることを防止できる。このため、陽極酸化被膜における空孔に封孔材を含浸させることなく断熱膜を形成することができる。この結果、断熱膜の断熱性を向上させることができる。
実施の形態1における断熱膜の形成方法について表した図である。 実施の形態1の断熱膜の形成方法について表した図である。 実施の形態1の比較例について説明するための図である。 加熱処理の工程について説明するための図である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における断熱膜の形成方法について表した図である。以下、図1に表される(a)、(b)、(c)、(d)の4工程に分けて、実施の形態1における断熱膜の形成方法について説明を行う。なお、実施の形態1では、断熱膜が形成される燃焼室に臨む壁面としてピストン10を例にあげて説明を行う。
図1(a)は、ピストン10の頂面に陽極酸化被膜12が形成される工程を示している。陽極酸化被膜12は、ピストン10の母材であるアルミニウム合金を陽極酸化処理することにより形成される多孔質皮膜である。陽極酸化被膜12の内部には、多数の空孔が存在する。これらの空孔は、寸法が1〜10μmの範囲程度の大きさのマクロ孔16と、寸法が20〜200nmの範囲程度の大きさのナノ孔14とに分類される。また、陽極酸化被膜12の表面には、マクロ孔16の存在に起因して数十μmサイズの凹凸が生じている。本明細書では、この凹凸の最下点を凹部18と称し、最上点を凸部20と称する。
図1(b)は、陽極酸化被膜12の空孔に溶媒を含浸させる工程を示している。図1(b)に示すように、ピストン10の頂面に陽極酸化被膜12が形成された後に、陽極酸化被膜12のナノ孔14とマクロ孔16とに溶媒として水24が満たされる。図1(b)に示すように、この工程では、水24が陽極酸化被膜12の凹部18の高さまで満たされる。また、水24の含浸方法は、例えばディッピング(浴槽内にどぶづけ)、スプレー塗布、刷毛塗りなどがある。
図1(c)は、陽極酸化被膜12に封孔材22が塗布される工程を示している。この工程では、空孔に水24が満たされた陽極酸化被膜12の表面に、封孔材22が塗布される。また、塗布された封孔材22は、水24が満たされている空孔部分には含浸しない。これは、封孔材22が水24との界面において、封孔材22が瞬時に二酸化ケイ素の膜を形成するためである。また、封孔材22の塗布方法は、スプレー塗布、刷毛塗り、スピンコートなどがある。これらの方法では、封孔材22を狙いの厚みにするために、塗布時間や塗布回数を調整する。
実施の形態1で用いられる封孔材22の例として、AZエレクトロニックマテリアル(株)社製のアクアミカ(登録商標)がある。アクアミカ(登録商標)の組成は、ジブチルエーテルが72%、パーヒドロポリシラザンが20%、アニソールが8%である。アクアミカ(登録商標)の比重は0.82であり、水24の比重の1.0の方が大きい。さらに、アクアミカ(登録商標)は、水24に対する親和性が低い。このため、アクアミカ(登録商標)は、水24に対して溶解せず、2層に分離する。
図1(d)は、断熱膜の加熱処理の工程を示している。図1(d)は、図1(c)における状態の断熱膜を加熱処理して乾燥させたものを示している。加熱処理によって水24が揮発して、封孔材22が二酸化ケイ素に変性している。そして、水24が揮発した部分が空孔になる。このため、陽極酸化被膜12におけるナノ孔14とマクロ孔16とが空孔として残存する。この結果、陽極酸化被膜12の断熱性が保持される。
上記加熱処理の工程では、封孔材22としてアクアミカ(登録商標)を使用した場合、大気乾燥炉では180℃で5時間、加熱水蒸気炉では180℃で1時間の処理をすることで、封孔材22の完全硬化と溶媒除去が実現される。
図2は、実施の形態1の断熱膜の形成方法について表した図である。図2(a)は、陽極酸化被膜12が形成されたピストン10が表されている。陽極酸化被膜12には、多数のナノ孔14とマクロ孔16とが存在している。
図2(b)は、陽極酸化被膜12に水24が含浸された様子を表している。溶媒の含浸量は、陽極酸化被膜12の表面の凹凸の凹部18を上限としている。これにより、ナノ孔14とマクロ孔16がマスキングされる。
図2(c)は、封孔材22が塗布された様子を表している。封孔材22は、陽極酸化被膜12の表面の凹凸の凸部20以下まで塗布される。これにより、陽極酸化被膜12の表面の凹凸が平滑化される。
図3は、実施の形態1の比較例について説明するための図である。図3は、陽極酸化被膜12を水24に含浸させずに封孔材22を塗布した比較例を示している。陽極酸化被膜12を水24に含浸させなかった場合、封孔材22が陽極酸化被膜12のナノ孔(図では見えない)及びマクロ孔16の内部まで含浸する。このまま加熱処理が行われて封孔材22が乾燥すると、陽極酸化被膜12の空孔すべてに二酸化ケイ素が形成される。この結果、実施の形態1と比べて、陽極酸化被膜12の空孔率が減少し、封孔材22が多量に必要になる。このように、実施の形態1では、比較例に比べて、封孔材22の使用量は少なくてすみ、コストを削減することができる。
図4は、加熱処理の工程について説明するための図である。図4(a)には、水24が含浸された陽極酸化被膜12に封孔材22を塗布した後の加熱処理の様子を示している。図4(a)に示すように、封孔材22を陽極酸化被膜12の表面にのみ塗布すれば、陽極酸化被膜12の側面から水蒸気を放出させることができる。より詳しくは、図4(a)のXが示すように、陽極酸化被膜12の柱状セルの隙間から水蒸気を放出させることができる。
対して、図4(b)が示すように、陽極酸化被膜12の側面にまで封孔材22を塗布してしまうと、水蒸気の逃げ場がなくなってしまう。より詳しくは、図4(b)のYが示すように、柱状セルの隙間も封孔材22で塞がれるため、水蒸気を放出させることができない。このため、実施の形態1では、封孔材22は陽極酸化被膜12の表面にのみ塗布される。
溶媒に用いる水は、80℃以上の熱水ではアルマイトと反応して水酸化アルミニウムを形成し空孔率が減少するため、常温であることが望ましい。また、封孔材22の含浸量を安定させるため、溶媒の水を含浸後に凍結させてもよい。
なお、陽極酸化被膜12に水を含浸させた後、空孔から放出される気泡が完全になくなるまで静置する。ここで、脱泡速度を速めるため、超音波振動を与えたり、減圧環境下で工程を進めてもしてもよい。
封孔材22の量を水面から陽極酸化被膜12の凸部20以上にすることで、陽極酸化被膜12の凹部18を全て二酸化ケイ素で埋めることができ、平滑化を実現することができる。なお、事前に水を含浸させているため、凹部18を全て封孔しても、また、封孔面を研磨してさらに平滑化してもよい。
溶媒の塗布部位は、直噴エンジンのピストンの場合、面粗度悪化の影響が大きいキャビティ内部のみであってもよい。ただし、ピストンの頂面全体に溶媒を塗布する場合、溶媒の塗布部位は断熱膜の表層のみとし、外周の断面部には塗布しない。
10 ピストン
12 陽極酸化被膜
14 ナノ孔
16 マクロ孔
22 封孔材
24 水(溶媒)

Claims (1)

  1. 燃焼室に臨む壁面の一部もしくは全部に陽極酸化被膜を含む断熱膜が形成される内燃機関の断熱膜の製造方法であって、
    前記製造方法は、
    前記燃焼室に臨む壁面の一部もしくは全部の表面に陽極酸化被膜を形成する陽極酸化被膜形成ステップと、
    前記陽極酸化被膜形成ステップによって形成された陽極酸化被膜に、前記陽極酸化被膜が有する空孔を封孔する封孔材との親和性が低く、かつ、前記封孔材よりも比重が大きい溶媒を含浸させる溶媒含浸ステップと、
    前記溶媒が含浸された陽極酸化被膜に前記封孔材を塗布する封孔材塗布ステップと、
    前記封孔材塗布ステップによって前記封孔材が塗布された陽極酸化被膜を乾燥させて、前記封孔材を被膜するとともに前記溶媒を揮発させて除去する断熱膜乾燥ステップと、
    を備えることを特徴とする内燃機関の断熱膜の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110520554A (zh) * 2017-05-05 2019-11-29 菲特尔莫古纽伦堡有限公司 用于铝质活塞的隔热涂层
CN113168852A (zh) * 2018-11-30 2021-07-23 纳沃科技私人有限公司 一种工件、工件加工方法及工件加工系统

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