JP2016089208A - 防錆組成物及びそれを用いた錆止め材 - Google Patents

防錆組成物及びそれを用いた錆止め材 Download PDF

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Abstract

【課題】防錆成分の気化を所望の速度に制御でき、高い防錆効果を持続して発現し、簡素な組成で、防錆効果を損なうことなく熱溶融加工が可能な防錆組成物及びそれを用いた錆止め材を提供する。
【解決手段】防錆組成物は、5〜400000mPa・sの5%水溶液粘度を有している水溶性樹脂のみからなるポリマーと、気化性化合物と緩衝性化合物と潮解性化合物とのうち、気化性化合物と緩衝性化合物と潮解性化合物とから選ばれる少なくとも2種、又は潮解性化合物の1種のみを含む防錆剤とを、含んでいるものであり、錆止め材は、この防錆組成物で任意の形状に成形されているもの、又はこの防錆組成物とこの防錆組成物で成形されたペレット等の少なくともいずれかが0.5〜9000g/m・24Hの透湿度を有する包装材によって包装されているものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、高い防錆効果を持続して発現する防錆組成物及びそれを用いた錆止め材に関するものである。
金属資材や金属部品のような金属製品は、袋や箱に収容されて梱包され、保管や輸送に供される。袋等は密封されているので、保管中や輸送中の環境変化によって袋等の内側面や金属製品の表面に結露が発生し、金属製品に錆や変色が発生することがある。このような錆や変色は、金属製品の商品価値を著しく損なってしまう。このため錆や変色の発生を防止すべく、錆止め材が金属製品と同梱される。
錆止め材として例えば、錆等の発生を防止する機能を有する吸湿剤や防錆剤が樹脂に分散されているものが知られている。このような錆止め材として特許文献1に、ポリビニルアルコールのような水溶性樹脂に、亜硝酸カリウムのような潮解性塩である吸湿性化合物を含有させた混合物[A]と、ポリエチレンのような非水溶性の熱可塑性樹脂に、安息香酸アンモニウムのような気化性化合物を含有させた混合物[B]とを、混合することなく共存させることにより、錆や変色の発生を防止する2成分系金属防錆剤が、記載されている。
特開平10−158645号公報
特許文献1に記載された2成分系金属防錆剤は、混合物[A]中の吸湿性化合物が袋内や箱内の水蒸気を吸収して除湿するとともに加水分解してアンモニアのような防錆成分を生成し、混合物[B]中の気化性化合物から防錆成分が気化することによって、金属製品に錆や変色が発生することを防止している。しかし、気化性化合物から防錆成分が気化した後、酸が生成することがあるため、袋や箱の内部は酸性雰囲気になり、金属製品への錆等の発生が促進されてしまう。
また、この2成分系金属防錆剤は、混合物[A]と混合物[B]とを分けて金属製品と同梱しなければならないものであるので、取扱いが煩わしく、梱包作業を煩雑化させる。混合物[A]と混合物[B]とを混合させると、混合物[B]中の気化性化合物から生成した酸によって、混合物[A]中の吸湿性化合物の加水分解反応が加速してしまう。このため、この2成分系金属防錆剤の混合物[A]と混合物[B]とを混合することができない。さらに2成分系金属防錆剤は、ポリエチレンのような熱可塑性樹脂が含まれているので、所望の形状に成形するのに比較的高い温度を必要とする。そのため、防錆剤が高温に曝されて分解し、防錆効果が損なわれてしまう。
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、高い防錆効果を持続して発現し、簡素な組成で、防錆効果を損なうことなく熱溶融加工が可能な防錆組成物及びそれを用いた錆止め材を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた本発明の防錆組成物は、5〜400000mPa・sの5%水溶液粘度を有している水溶性樹脂のみからなるポリマーと、気化性化合物と、緩衝性化合物と、潮解性化合物とのうち、前記気化性化合物と前記緩衝性化合物と前記潮解性化合物とから選ばれる少なくとも2種、又は前記潮解性化合物の1種のみを含む防錆剤とを、含んでいるものである。
防錆組成物は、前記水溶性樹脂が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ゼラチン、にかわ、コラーゲンタンパク、カゼイン、寒天、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸系樹脂、ポリエチレンイミン、アラビアゴム、及びこれらの変性物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
防錆組成物は、前記気化性化合物が、フタル酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、パルミチン酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アジピン酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム・ナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウム・リン酸塩、ジシクロヘキシルアンモニウム・カプリレート、ジイソプロピルアンモニウム・ナイトライト、ニトロナフタリンアンモニウム・ナイトライト、シクロヘキシルアミン安息香酸塩、ジシクロヘキシルアミン安息香酸塩、シクロヘキシルアミン・カーバメート、シクロヘキシルアミン・ラウレート、尿素、チオ尿素、ベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、テトラゾール、5−アミノテトラゾール、5−フェニル−1Hテトラゾール及び3−メチル−5−ピラゾロンから選ばれる少なくとも1種であってもよい。
防錆組成物は、前記緩衝性化合物が、p-tertブチル安息香酸ナトリウム、p-tertブチル安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、B-SiO-MOホウケイ酸系焼結生成物(Mはナトリウム又はカリウム)、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム及びモリブデン酸カリウムから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
防錆組成物は、前記潮解性化合物が、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸マグネシウム、炭酸カリウム、及び炭酸カリウム2水和物から選ばれる少なくとも1種であってもよい。
防錆組成物は、前記防錆剤が0.01〜89重量%含まれているものであってもよい。
防錆組成物は、前記潮解性化合物が80%RH未満の臨界湿度を有しているものであってもよい。
防錆組成物は、前記ポリマーが粉体であるものであることが好ましい。
本発明の錆止め材は、前記防錆組成物を有するものである。
錆止め材は、前記防錆組成物と、前記防錆組成物で成形されたペレット、シート、フィルム、ストランド、キューブ、平板、及び/又は錠剤との少なくともいずれかが0.5〜9000g/m・24Hの透湿度を有する包装材によって包装されているものであることが好ましい。
本発明の防錆組成物は、5〜400000mPa・sの5%水溶液粘度を有する水溶性樹脂のみからなるポリマーと、防錆剤とを、含んでいることにより、ポリマーが防錆剤に含まれる防錆成分の気化速度を制御して防錆効果を持続できるので、長期にわたって金属製品に錆や変色を発生させない。しかも種類が異なる防錆剤ごとに小分けにして容器に収容する必要がないので取扱いが簡便である。
この防錆組成物は、気化性化合物、緩衝性化合物、及び潮解性化合物が含まれているものであると、ポリマーである水溶性樹脂に含まれている水分が、気化性化合物と潮解性化合物とに加水分解を開始させるトリガーの役割を果たし、緩衝性化合物の緩衝作用によって緩やかに加水分解された潮解性化合物から、防錆成分が徐々に気化するので、持続的な防錆効果を発現する。また、防錆組成物中の潮解性化合物によって梱包内が除湿されるので、金属製品だけでなく、光学機械、革製品、及び布製品のように高湿雰囲気を避けるべき被梱包品の輸送・保管に使用することができる。
この防錆組成物に含まれているポリマーは、水溶性樹脂のみであり、ポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリエステル系樹脂、アイオノマー樹脂、及びエラストマー系樹脂のような非水溶性樹脂を含まないので、防錆剤を、高い含有率で均一に分散させて防錆組成物中に含ませることができる。また防錆組成物は、比較的低い温度で加工できるものであると、熱加工の過程で防錆剤が溶融したり分解したりせず、所望の形状に加工しても防錆効果が損なわれない。さらに防錆組成物は、加工性に優れるので、シート形状への加工や造粒を簡便に行うことができる。
本発明の錆止め材は上記の防錆組成物を有するものであるので、防錆効果に優れるうえ、持続性に優れる。この錆止め材は、上記の防錆組成物で、ペレット、シート、フィルム、ストランド、キューブ、平板又は錠剤の形状に成形されていてもよく、それによって成形品として用いることが可能である。この錆止め材はペレットやシートの形状に成形されていると、簡便に被梱包品に同梱させることができる。また、シリカゲルや塩化物のような乾燥剤に比較して、10分の1〜300分の1という僅かな量であっても十分な防錆効果が得られ、しかも防錆成分の気化や吸湿によって大きな体積変化を生じないので、錆止め材を収容するのに、大きなスペースを梱包内に設けることを要しない。
この錆止め材は、防錆組成物と、防錆組成物で成形されたペレット等との少なくともいずれかが0.5〜9000g/m・24Hの透湿度を有する包装材によって包装されていたり、防錆組成物が担体に塗布又は含浸されたりしているものであると、高い防錆効果を維持しながら、被梱包品の梱包時や開梱時において良好な取扱性を有している。
本発明を適用する防錆組成物を金属製品と同梱した実施例の試験終了後の外観と、防錆組成物を同梱しない比較例の試験終了後の外観とを、撮影した写真である。 本発明を適用する防錆組成物を金属製品と同梱した実施例の梱包内の温湿度変化を示すグラフである。 防錆組成物を同梱しない比較例の梱包内の温湿度変化を示すグラフである。
以下本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
本発明の防錆組成物は、水溶性樹脂のみからなるポリマーと、気化性化合物、緩衝性化合物、及び潮解性化合物を含む防錆剤とを、含んでいるものである。
防錆組成物に含まれるポリマーの水溶性樹脂は、水蒸気を緩やかに取り込んで梱包内を除湿したり、防錆剤の気化速度を制御したりするものである。この水溶性樹脂として、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ゼラチン、にかわ、コラーゲンタンパク、カゼイン、寒天、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸系樹脂、ポリエチレンイミン及びアラビアゴム、又はこれらの変性物を挙げることができる。水溶性樹脂として、これらのうちの1種又は複数種が選択されて用いられる。なかでもポリエチレンオキサイド及びその変性物が好ましい。ポリエチレンオキサイドの変性物として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びアリルグリシジルエーテルのランダム共重合体を挙げることができる。
水溶性樹脂は、5%水溶液粘度特性に基いて選択される。それによれば防錆組成物に適度な除湿特性を付与したり、防錆剤の防錆成分を所望の速度で気化させたりすることができる。5%水溶液粘度が大きい場合、防錆剤の加水分解の速度が遅くなるので、防錆組成物の防錆効果に緩効性を付与できる。一方5%水溶液粘度が小さい場合、防錆効果に速効性を付与できる。
水溶性樹脂の5%水溶液粘度は、常温(25℃)において5〜400000mPa・sであることが好ましい。5%水溶液粘度とは、蒸留水に対して水溶性樹脂を5重量%溶解させた水溶液の粘度を意味し、JIS Z 8803に規定されている単一円筒型回転粘度計を用いて測定される。具体的に、ブルックフィールド回転粘度計による見掛け粘度をJIS K 7117−1に準拠し、B形粘度計のスピンドル番号2号、スピンドル回転数30pmの条件下で測定された数値に、スピンドルローターの係数を掛け合わせて得られる値である。5%水溶液粘度によれば、5〜400000mPa・sという非常に広範な粘度を、同一条件下で高精度に測定できる。そのため測定条件の違いの所為で水溶性樹脂の粘度を比較できないという不具合を生じず、単純に粘度を比較することができる。その結果、防錆成分を所望の速度で気化させることができる水溶性樹脂を、簡易にかつ確実に選択することができる。
5%水溶液粘度が5mPa・s未満であると、組成物の粘性が十分でなく、防錆剤が確りと保持されない。そのため防錆剤が容易に反応し、防錆成分が急速に気化して消失するので、防錆効果が持続しない。一方400000mPa・sを超えると、水溶性樹脂の吸湿速度が遅くなったり、吸水率が低下したりするため、水溶性樹脂の吸湿よりも防錆剤の反応が先行し、防錆成分の気化が急速に進んでしまう。
水溶性樹脂は、常温下で液体であってもよいが、防錆組成物の熱溶融加工のし易さの観点から、常温下で固体、特に粉体であることが好ましい。そのため、水溶性樹脂の5%水溶液粘度は、8〜200000mPa・sであるとより好ましい。
側鎖や末端基が反応基等に置換されることにより変性した水溶性樹脂の水溶液粘度は変動し易いので、変性した水溶性樹脂の粘度平均分子量を一つの値で特定することは困難である。このため粘度平均分子量を、数値範囲で特定することが好ましい。水溶性樹脂の粘度平均分子量の範囲は、1万〜150万であることが好ましく、5万〜65万であることがより好ましい。粘度平均分子量が1万未満であると、水溶性樹脂はゲル状や液状を呈するので、熱溶融加工時や成形時に取扱い難く、成形後にブリードを生じ易い。一方、粘度平均分子量が150万を超えると、熱溶融加工の際、均一に混練し難いので、防錆組成物をシートやフィルムに成形する場合、穴あきが生じやすい。なお粘度平均分子量(M)は、B形粘度計(12rpm)で測定された水溶性樹脂の5%水溶液粘度〔η〕を、マーク−フウィンク−桜田の式、〔η〕=KMαに代入することにより求めることができる。
防錆組成物に含まれる気化性化合物は、窒素含有化合物であることが好ましい。具体的に、フタル酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、パルミチン酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アジピン酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム・ナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウム・リン酸塩、ジシクロヘキシルアンモニウム・カプリレート、ジイソプロピルアンモニウム・ナイトライト、ニトロナフタリンアンモニウム・ナイトライト、シクロヘキシルアミン安息香酸塩、ジシクロヘキシルアミン安息香酸塩、シクロヘキシルアミン・カーバメート、シクロヘキシルアミン・ラウレート、尿素、チオ尿素、ベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、テトラゾール、5−アミノテトラゾール、5−フェニル−1Hテトラゾール及び3−メチル−5−ピラゾロンのようなアミン化合物を挙げることができる。
気化性化合物として、これらのうちの1種又は複数種が選択されて用いられる。気化性化合物からアンモニアのような防錆成分が気化して、金属製品の表面に吸着することにより、防錆効果が得られる。気化性化合物は、水溶性樹脂との相溶性に優れている。そのため気化性化合物は、水溶性樹脂中で偏在することなく均一に分散して存在することができる。その結果、防錆組成物の表層に存在している気化性化合物から順次防錆成分が気化するので、防錆組成物は持続的な防錆効果を発現する。深層に存在している気化性化合物の防錆成分は、水蒸気を取り込むことにより粘性を帯びた水溶性樹脂中で気泡となって、徐々に表層に移動した後に梱包内に拡散する。防錆成分の気泡の移動速度は水溶性樹脂の粘度に依存するため、水溶性樹脂の粘度を適宜設定することによって、防錆成分の気化速度を制御できる。例えば水溶性樹脂が高粘度を有している場合、防錆成分の気泡は、高粘度の水溶性樹脂の抵抗によって徐々に気化するので、防錆効果を長期にわたって持続させることができる。
気化性化合物から防錆成分が気化すると、酸が生成する場合がある。緩衝性化合物は水溶性樹脂に含まれる水分に溶解してこの酸と反応し、梱包内のpHを緩衝する。それにより、梱包内が酸性雰囲気にならないので、金属製品に錆や変色が発生することが、防止されている。この緩衝性化合物としてアルカリ金属含有水溶性化合物が好ましく、なかでもp-tertブチル安息香酸ナトリウム、p-tertブチル安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、B-SiO-MOホウケイ酸系焼結生成物(Mはナトリウム又はカリウム)、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム及びモリブデン酸カリウムを挙げることができる。緩衝性化合物は、これらのうちの1種又は複数種が選択されて用いられる。緩衝性化合物による緩衝作用は、酸及び共役塩基のモル濃度が高いほど、また酸/共役塩基のモル濃度比が1に近いほど大きい。そのため緩衝性化合物の含有量は、気化性化合物のモル濃度に応じて決定される。
防錆組成物は、さらに潮解性化合物を含んでいる。この潮解性化合物は、潮解性を有する金属塩であることが好ましい。具体的に、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸マグネシウム、炭酸カリウム、及び炭酸カリウム2水和物のような潮解性塩を挙げることができる。なかでも、亜硝酸ナトリウム(臨界湿度:72.8%RH(30℃))、及び炭酸カリウム2水和物(臨界湿度:43.5%RH(30℃))がより好ましい。
潮解性化合物は、梱包内の水蒸気を吸収して除湿効果を発現する。さらにこの水蒸気や水溶性樹脂に取り込まれた水により、潮解性化合物は加水分解されて、亜硝酸のような防錆成分を気化させるので、防錆効果をも発現する。一方、緩衝性化合物の緩衝作用によって防錆組成物中のpHの急激な変化が抑制されているため、気化性化合物由来の酸に起因する潮解性化合物の過度な加水分解は、生じない。そのため、潮解性化合物の防錆成分は緩やかに気化し、防錆効果が長期にわたって持続する。また潮解性化合物は、潮解して潮解液を生成する。この潮解液は、水溶性樹脂に取り込まれるので、防錆組成物の表面に滲み出し難くなる。潮解液の滲み出しを制御するのに、5%水溶液粘度が大きい水溶性樹脂を用いることが好ましい。さらに防錆組成物を包装材で包装することによって、金属製品が潮解液に接触して変色することを、確実に防止できる。
防錆組成物は、水溶性樹脂が11重量%以上含まれており、気化性化合物と緩衝性化合物と潮解性化合物とから選ばれる少なくとも2種、又は潮解性化合物の1種のみを含む防錆剤が0.01〜89重量%含まれているものであることが好ましい。気化性防錆剤等の防錆剤の含有率が0.01重量%未満であると、十分な防錆効果が得られない。一方89重量%を超えると、防錆剤の量に対して水溶性樹脂の量が不足する。そのため例えば、気化性化合物中の防錆成分が急速に気化してしまい、持続的な防錆効果が得られない。
防錆組成物を構成する水溶性樹脂と3種の防錆剤;気化性化合物、緩衝性化合物、及び潮解性化合物との含有比は、重量比で、水溶性樹脂:気化性化合物:緩衝性化合物:潮解性化合物=1.1〜9.99:0.01〜4.5:0.01〜4.5:0.01〜3であると好ましく、4〜9:0.7〜2:0.3〜2:0.1〜2であるとより好ましく、7.8:1:1:0.2であるとより一層好ましい。
潮解性化合物は、80%RH未満の臨界湿度を有していることが好ましい。臨界湿度とは、潮解性塩が空気中の水蒸気を吸収して潮解し始める湿度である。またRHは、相対湿度(relative humidity)を意味する。臨界湿度は、温度に殆ど依存しない。潮解性塩は、臨界湿度を超える高湿雰囲気で吸湿性を示し、臨界湿度未満の低湿雰囲気で放湿性を示す。潮解性塩の臨界湿度が80%RH以上であると、梱包内が高湿度雰囲気に維持され易くなり、金属製品に錆等が発生してしまう。
潮解性化合物は防錆組成物中、0.001〜89重量%含まれていることが好ましい。潮解性化合物の含有率が0.001重量%未満であると、十分な除湿効果及び防錆効果が得られない。一方89重量%を超えると、潮解性化合物に対して水溶性樹脂の含有率が低すぎるため、吸湿により生成する潮解液を水溶性樹脂が吸収しきれなくなって、防錆組成物から潮解液が滲み出してしまう。さらに潮解液で飽和状態の水溶性樹脂は、最早気化性化合物の気化速度を制御できない。
このように、水溶性樹脂が水蒸気を吸収して梱包内を除湿するとともに気化性化合物の防錆成分の気化速度を制御し、潮解性化合物が水蒸気を吸収して除湿効果を発現すると同時に加水分解して防錆成分を気化させて防錆効果をも発現し、さらに緩衝性化合物が気化性化合物由来の酸に反応して梱包内の酸性雰囲気化を防止するとともに潮解性化合物の過度な加水分解を抑制するので、防錆組成物は、優れた防錆効果を長期にわたって持続することができる。
防錆組成物の状態は、常温で液体又は粉体である。防錆組成物を熱溶融加工して、ペレット、シート、フィルム、ストランド、キューブ、平板、又は錠剤の形状に成形することによって錆止め材を得ることができる。これらの形状に加工する際、防錆組成物にバインダ等を混合してもよい。この場合、熱溶融加工のし易さの観点から防錆組成物の状態は、粉体であることが好ましい。粉体の防錆組成物を、バンバリーミキサー、リボンブレンダー、ミキシングロール、ニーダーのような撹拌機や混練機に投入し、二軸混練押出機やペレタイザーによって加熱しながら所望の形状を有する錆止め材に成形する。
例えば、錆止め材の形状がシート又はフィルムである場合、厚さが0.05〜2mmであることが好ましい。シート又はフィルムの形状は、防錆組成物単位重量当たりの表面積がその他の形状に比較して大きいので、使用初期に強い防錆効果を要する場合に適している。この場合、水溶性樹脂と防錆剤である気化性化合物・緩衝性化合物・潮解性化合物の夫々とが混合されたシートを作製し、それらを積層させた多層構成に成形してもよい。このとき水溶性樹脂は、同種のものであることが好ましい。
錆止め材の形状がペレット、キューブ又は錠剤である場合、最も長い辺又は径が、2〜15mmであることが好ましい。この場合、気化性化合物由来の防錆成分のように気化し易い成分が防錆組成物中に留まり易く、防錆効果が一層長期に持続する。このように防錆組成物は、多様な形状の錆止め材に成形でき、形状に応じて防錆効果の高低や持続性が異なるものである。その結果防錆組成物を、金属製品の輸送・保管の環境や期間の長短に適した防錆効果を発現できる形状に成形することによって、所望の防錆効果が得られる。
防錆組成物に含まれている水溶性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂のような非水溶性樹脂に比較して低い温度で溶融するものがある。そのため防錆組成物に熱溶融加工を施す場合、熱溶融加工時の加熱やせん断発熱に起因する熱によって、融点や分解温度が低いアンモニウム化合物やアミン化合物を含む気化性化合物が溶融・分解したり、緩衝性化合物や潮解性化合物と反応したりしない。その結果、防錆効果や吸湿効果が損なわれることなく維持されたまま、防錆組成物を熱溶融加工することができる。水溶性樹脂として、溶融温度が50〜70℃と特に低いポリエチレンオキサイド、又はその変性樹脂を用いることが好ましい。なお、防錆組成物は、水溶性樹脂と防錆剤とが、熱溶融及び/又はブレンドされた状態で、使用されてもよい。
防錆組成物には、必要に応じて紫外線吸収剤、熱安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、非水溶性吸水性樹脂、顔料、染料、アンチブロッキング剤、粘土鉱物、難燃剤、耐候剤及び/又は離型剤のような添加剤を添加してもよい。また成形後に、コロナ放電処理や電子線架橋を施したり、印刷や着色を施したりしてもよい。防錆組成物がシート形状に成形されている場合、透明性が要求されていなければ、エンボス加工を施してもよい。
防錆組成物に含まれる防錆剤は、被梱包品の種類、被梱包品の輸送・保管の期間、及び被梱包品が置かれる環境等に応じて、潮解性化合物のみからなっていてもよく、気化性化合物、緩衝性化合物、及び潮解性化合物のうち、2種の組み合わせからなっていてもよい。
防錆剤が潮解性化合物のみからなる場合、防錆組成物中、水溶性樹脂:潮解性化合物の含有比は、重量比で、1.1〜9.99:0.01〜8.9であると好ましく、6〜9.8:0.05〜4であるとより好ましく、7.5〜9.5:0.1〜2.5であるとより一層好ましい。
防錆剤が気化性化合物及び緩衝性化合物からなる場合、防錆組成物中、水溶性樹脂:気化性化合物:緩衝性化合物の含有比は、重量比で、1.1〜9.99:0.007〜4.5:0.003〜4.4であると好ましく、5〜8.8:1〜3.5:0.05〜3.5であるとより好ましく、6〜8:1.5〜3:0.1〜3であるとより一層好ましい。
防錆剤が気化性化合物及び潮解性化合物からなる場合、防錆組成物中、水溶性樹脂:気化性化合物:潮解性化合物の含有比は、重量比で、4.9〜9.99:0.008〜4.1:0.002〜3であると好ましく、6〜9.2:0.7〜2:0.02〜2であるとより好ましく、7〜8.2:1.78〜1.9:0.1〜1.1であるとより一層好ましい。
防錆剤が緩衝性化合物及び潮解性化合物からなる場合、防錆組成物中、水溶性樹脂:緩衝性化合物:潮解性化合物の含有比は、重量比で、5〜9.99:0.008〜3:0.002〜2であると好ましく、7〜9:0.95〜2:0.05〜1であるとより好ましく、7.5〜8.9:1〜1.8:0.1〜0.7であるとより一層好ましい。
防錆組成物や、この防錆組成物で成形されたペレット等は、包装材によって包装された錆止め材として用いることができる。例えば縦5×横5cmの小袋に、防錆組成物で成形されたペレットが入れられた錆止め材を挙げることができる。このような錆止め材によれば、取扱いが簡便であるので、金属製品とともに梱包し易く、防錆組成物が直接金属表面に付着せず、金属製品を開梱する際に除去し易い。錆止め材の包装材は、0.5〜9000g/m・24Hの透湿度を有していることが好ましい。このような包装材として、透湿フィルム、紙、不織布、スポンジ、クロス、及びヤーンを挙げることができる。この範囲の透湿度を有する包装材で包装されていることにより、防錆組成物は金属製品の輸送・保管の環境や期間の長短に応じて防錆効果を発現できる。また潮解性防錆剤から生成される潮解液が滲み出て、金属製品に接触してしまうことを防止できる。なお、包装材の透湿度は、JIS L 1099に規定されているA−1法(40℃、90%RH)に準拠した値である。
錆止め材は、防錆組成物及び防錆組成物で成形されたペレット等のいずれかが包装されているものであってもよく、これらの両方が包装されているものであってもよい。
錆止め材は、防錆組成物が担体に塗布又は含浸されているものであってもよい。このような錆止め材は、防錆組成物が液体である場合に適している。防錆組成物が塗布される担体の材料として、紙、クロス、フォーム、及び不織布を挙げることができる。担体は、ペレット、シート、フィルム、ストランド、キューブ、平板、及び錠剤の形状に成形されていてもよい。防錆組成物の塗布方法として、刷毛塗り法、ローラーブラシ塗り法、スプレー塗り法、浸漬塗り法、及びカーテンコーター法を挙げることができる。また、防錆組成物の含浸方法として、浸漬法、真空含浸法、担体に防錆組成物を注入するディスペンサ法、防錆組成物を加圧して担体に含浸させる圧送含浸法、及び真空差圧法を挙げることができる。
防錆組成物に酸化カルシウムが含まれていてもよい。それによって錆止め材の使用初期に除湿効果を、一層向上させることができる。さらに防錆組成物に吸収された水分を除去できるので、熱溶融加工の過程で、この水分に起因する発泡を防止できる。この場合、酸化カルシウムの含有率は、0.01〜10重量%であることが好ましい。酸化カルシウムの含有率が0.01重量%未満であると、酸化カルシウムを添加したことによる効果が得られない。一方、酸化カルシウムの含有率が10重量%を超えると、吸湿によって水酸化カルシウムが生成される。この水酸化カルシウムの再凝集塊が粉として析出したり、梱包内のpHが大きく上昇したりして、金属製品に変色を生じさせてしまう。
防錆組成物が薄いシートやフィルムの形状に成形されているシート状錆止め材であると、金属製品と同梱しても、金属製品の梱包スペースを十分確保できる。この場合、潮解性化合物の潮解性塩から生じた潮解液がシート状錆止め材から滲み出して金属製品に接触し、これに変色等が生じないように、シート状錆止め材の少なくとも一面側に、潮解性塩の潮解液の滲み出しを防止する保護樹脂層が積層されていることが好ましい。
保護樹脂層は、錆止め材を形成している防錆組成物中の水溶性樹脂が吸収しきれない潮解液を保持できるものであればよく、非水溶性樹脂で形成してもよい。非水溶性樹脂のみで保護樹脂層が形成されていると、錆止め材に強度を付与できる。また錆止め材の吸湿速度及び防錆成分の気化速度が緩やかになる。そのため梱包内の温湿度変化が緩やかな輸送・保管環境下、より一層長期にわたって除湿・防錆効果を発現できる。このような保護樹脂層の厚さは、透湿性確保の観点から150μm以下であることが好ましい。
また保護樹脂層は、非水溶性樹脂と水溶性樹脂とが混合された樹脂によって形成されていてもよい。この場合、保護樹脂層が金属製品に接触したとしても、水溶性樹脂に吸収された潮解液が金属製品に付着しないように、水溶性樹脂の含有率は10重量%以下であることが好ましい。このような保護樹脂層の厚さは12〜200μm程度であることが好ましい。
保護樹脂層の表面は、細かい凹凸を有していることが好ましい。それによれば、梱包内で錆止め材に積層された保護樹脂層が金属製品に貼り付かないので、金属製品に変色が生じることを防止できる。このような凹凸は、保護樹脂層内に多数の空孔を形成することによって、形成することができる。保護樹脂層内の空孔は、熱膨張性有機マイクロバルーンの熱膨張で形成されたものであることが好ましい。熱膨張性有機マイクロバルーンは、例えばアクリル樹脂等の樹脂製のセル膜内に液状炭化水素が内包されている粒子径5〜20μm前後の超微粒子である。この熱膨張性有機マイクロバルーンは、シート又はフィルム成形時の熱によりセル膜が軟化し、内包されていた液状炭化水素が気化膨張して、その圧力で径が1.5倍〜50倍前後の大きさに膨張するものである。
このような熱膨張性有機マイクロバルーンとして、具体的に松本油脂製薬工業株式会社製のマツモトマイクロスフェアー(商品名)や日本フェライト株式会社製のエクスパンセル(商品名)を挙げることができる。防錆シートに強度を付与する観点から、保護樹脂層内の空孔の径は、50〜200μm程度であることが好ましい。一方、保護樹脂層の厚さが0.2mm以上であると、錆止め材に断熱性や衝撃を和らげる緩衝性を付与できる。
多数の空孔を有する保護樹脂層は、熱膨張性有機マイクロバルーンを含む非水溶性熱可塑性樹脂を溶融成形することにより得ることができる。熱膨張性有機マイクロバルーンの熱膨張径と保護樹脂層の厚さとの関係は、熱膨張性有機マイクロバルーンの熱膨張径が100であるとき、保護樹脂層の厚さが30〜100であることが好ましい。それによって、保護樹脂層の透湿性を確保しつつ、強度等の機械的特性を向上できる。また、この非水溶性樹脂として、密度が0.86〜0.95g/cmで且つメルトフローレート値が0.5〜20.0g/10分(190℃)であるものを用いることが好ましい。それにより、熱膨張性有機マイクロバルーンの膨張倍率を1.2〜20倍の範囲に制御することができるので、空孔径が比較的揃っている保護樹脂層をえることができる。
空孔を有する保護樹脂層は、空孔を有しない保護樹脂層に比較して1.1〜5倍程度の透湿度を有している。また保護樹脂層と錆止め材との境界面が、凹凸形に形成されるので、両者の接触面積が増大する。その結果、錆止め材に含まれる潮解性化合物の潮解性塩と、保護樹脂層を透過した水分との反応性が高められるので、より高い吸湿・防錆効果を得ることができる。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
水溶性樹脂であるポリエチレンオキサイド(住友精化株式会社製、商品名:PEO−1、5%水溶液粘度:125mPa・s)の樹脂粉体88重量%に対し、気化性化合物であるシクロヘキシルアミン・カーバメートが5重量%、緩衝性化合物であるp-tertブチル安息香酸ナトリウムが5重量%、及び潮解性化合物である亜硝酸ナトリウムが2重量%となるように加えて混合し、実施例1の防錆組成物を調製した。
(実施例2)
実施例1の防錆組成物を、二軸混練押出機を使用し110℃で溶融混練した。その後、空冷を施しながらペレタイザーを使用してペレット形状に成形した。さらにこのペレットを、110℃で加熱しながらプレス加工して、実施例2のシート状錆止め材を作製した。
(実施例3)
水溶性樹脂であるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合樹脂(明成化学工業株式会社製、商品名:EP−20、5%水溶液粘度:35000mPa・s)の樹脂粉体40重量%に対し、気化性化合物である安息香酸アンモニウムが30重量%、緩衝性化合物であるB−SiO−NaOを主成分とするホウケイ酸系焼結生成物が30重量%となるように、加えて混合し、実施例3の防錆組成物を調製した。
(実施例4)
実施例3の防錆組成物を6000g/m・24Hの透湿度を有する不織布の小袋に入れて、実施例4の錆止め材を作製した。
(実施例5)
水溶性樹脂であるポリビニルピロリドン(BASF SE製、商品名:Sokalan K85P、5%水溶液粘度:60mPa・s)の樹脂粉体94重量%に対し、気化性化合物である安息香酸アンモニウムが3重量%、潮解性化合物である亜硝酸カリウムが3重量%となるように加えて混合し、実施例5の防錆組成物を調製した。
(実施例6)
水溶性樹脂であるポリビニルピロリドン(BASF SE製、商品名:Sokalan K85P、5%水溶液粘度:60mPa・s)の樹脂粉体90重量%に対し、潮解性化合物である亜硝酸ナトリウムが10重量%となるように加えて混合し、実施例6の防錆組成物を調製した。
(比較例1)
水溶性樹脂を用いることなく、気化性化合物であるシクロヘキシルアミン・カーバメートが40重量%、緩衝性化合物であるp-tertブチル安息香酸ナトリウムが40重量%、及び潮解性化合物である亜硝酸ナトリウムが20重量%となるように混合し、比較例1の粉体混合物を調製した。
(比較例2)
非水溶性樹脂である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(ダウ・ケミカル・カンパニー製、商品名:ダウレックス2045G、密度:0.920g/cm、メルトフローレート値:2.0g/10分)に対し、比較例1の粉体混合物を加え、二軸混練押出機を使用し190℃で溶融混練した。その後ペレット形状に成形した。このペレットを190℃で加熱しながらプレス加工して、比較例2のシートを作製した。加熱時、気化した防錆成分の臭気を確認した。また、作製したシートに変色を確認した。
(比較例3)
実施例3で用いた樹脂粉体70重量%に対し、気化性化合物である安息香酸アンモニウム30重量%のみを含んでいる粉体混合物を調製した。
(比較例4)
実施例3の防錆組成物を、透湿度0g/m・24Hであるアルミラミフィルムの小袋に入れて、比較例4の錆止め材を作製した。
(比較例5)
実施例3で用いた樹脂粉体90重量%と、炭酸カルシウム10重量%とを混合して、比較例5の粉体混合物を調製した。
(1.環境サイクル試験方法)
縦10cm×横15cm×高さ15cmのプラスチック製のかごの中心に、洗浄した試験片(鋳鉄:FC250)をかごの上部から吊るした。これを低密度ポリエチレン製ガゼット付き袋に入れ、さらに実施例1の防錆組成物1gと、データロガー(温湿度記録計)とを同梱し、袋の口をヒートシールで封をして梱包した。このサンプルを3個用意した。実施例2〜4、及び比較例1〜5についても実施例1と同様にサンプルを用意した。各サンプルを、環境サイクル試験として下記の条件に設定した恒温恒湿槽内に2.5日間載置した。その後、25℃,70%RH程の室内に2.5日間放置し、再び恒温恒湿槽内に10日間載置した。
環境サイクル試験条件(12時間/1サイクル)
50℃,95%RHへ移行(2時間)⇒50℃,95%RH維持(4時間)
⇒25℃,70%RHへ移行(2時間)⇒25℃,70%RH維持(4時間)
(2.除湿能力評価)
データロガーによって記録された値に基いて除湿能力を評価した。試験開始から2.5日後に、梱包内の湿度が露点に達していなかったものを◎、達していたものを×と評価した。
除湿能力評価の結果を表1に示す。実施例の梱包内は、環境サイクル試験の過酷な環境にもかかわらず、いずれも試験開始から2.5日間、露点に達しなかった。また、実施例1の梱包内における温湿度変化を示したグラフを図2に、防錆組成物を同梱しなかったサンプルの梱包内のグラフを図3に夫々示す。試験開始から2.5日間、実施例1の梱包内は徐々に高湿度に変化している。2.5日間の室内放置後、再度恒温恒湿槽内に載置された実施例1の梱包内は、試験開始直後と同様に、湿度が徐々に上昇している。2.5日間の室内放置の間に、防錆組成物が放湿したことによって、吸湿機能が再生したものと思われる。露点に達したのは、試験開始から9日目(14サイクル目)であった。一方、水溶性樹脂を含んでいない比較例2のシートが同梱された梱包内は、試験開始直後に露点に達し、室内放置後に再度恒温恒湿槽に載置されると、すぐにまた露点に達した。
(3.防錆能力評価)
環境サイクル試験終了後、袋を開封して試験片を取り出した。試験片の錆や変色等の発生状況を目視によって確認し、下記の基準で評価した。
錆、変色、異物の付着なし :◎
ごく僅かな点状の錆、変色、異物の付着発生 :○
試験片の表面の80%未満に錆、変色、異物の付着発生:×
防錆能力評価の結果を表1に示す。実施例のサンプルは、錆等が発生しなかった又はごく僅かに発生したにとどまったが、比較例のサンプルは試験片のほぼ全面に錆等が発生した。さらに試験終了後の実施例3の外観写真を図1(a)に、比較例3の外観写真を同図(b)に夫々示す。実施例3の防錆組成物(写真内の右下)に、多数の気泡が確認された。一方、比較例3の粉体混合物に気泡は生成していない。実施例3の気泡は、気化性化合物及び潮解性化合物に含まれる防錆成分の気化により水溶性樹脂が発泡したものである。この気泡の数は、試験開始から試験終了までの間、徐々に増加した。このことは、防錆組成物から防錆成分が徐々に気化することによって、防錆効果が長期にわたって維持されていることを示している。
(4.防錆成分濃度測定)
サイクル試験中、袋に小孔を開けてから、ガス検知管(株式会社ガステック製、商品名:3La(アンモニア用)、商品名:11L(窒素酸化物用))を梱包内に挿し込んで、梱包内における防錆成分の濃度を測定した。測定後小孔を粘着テープで速やかに塞いだ。測定の時機を、下記A〜C点の3点とした(図2及び3参照)。
A点:1サイクル目(1日目)の50℃,95%RH維持時
B点:7サイクル目(6日目)の50℃,95%RH維持時
C点:26サイクル目(15日目)の25℃,70%RH維持時
表1から明らかなように、実施例の防錆成分は、試験終了間際のC点まで梱包内に残留していた。このことは、防錆成分が徐々に気化したことを示している。これに対し、比較例1〜3の防錆成分は、A点からB点の間で急速に気化したため、C点で梱包内に全く残っていなかった。また比較例4は、透湿しない小袋の所為で、A〜C点のいずれにおいても防錆成分が検知されなかった。
本発明の防錆組成物及びそれを用いた錆止め材は、金属製品、光学機械、革製品、及び布製品のような被梱包品と同梱されて使用される。
前記の目的を達成するためになされた本発明の防錆組成物は、5〜400000mPa・sの5%水溶液粘度を有し、水蒸気吸収性によって粘性を帯びる水溶性樹脂のみからなるポリマーと、pHを緩衝する緩衝性化合物と、気化性化合物及び潮解性化合物から選ばれる少なくとも1とを含む防錆剤と混合されているものである。
水溶性樹脂の5%水溶液粘度は、常温(25℃)において5〜400000mPa・sであることが好ましい。5%水溶液粘度とは、蒸留水に対して水溶性樹脂を5重量%溶解させた水溶液の粘度を意味し、JIS Z 8803に規定されている単一円筒型回転粘度計を用いて測定される。具体的に、ブルックフィールド回転粘度計による見掛け粘度をJIS K 7117−1に準拠し、例えば、B形粘度計のスピンドル番号2号、スピンドル回転数30pmの条件下で測定された数値に、スピンドルローターの係数を掛け合わせて得られる値である。5%水溶液粘度によれば、5〜400000mPa・sという非常に広範な粘度を、例えば、同一条件下で高精度に測定できる。そのため測定条件の違いの所為で水溶性樹脂の粘度を比較できないという不具合を生じず、単純に粘度を比較することができる。その結果、防錆成分を所望の速度で気化させることができる水溶性樹脂を、簡易にかつ確実に選択することができる。

Claims (10)

  1. 5〜400000mPa・sの5%水溶液粘度を有している水溶性樹脂のみからなるポリマーと、
    気化性化合物と、緩衝性化合物と、潮解性化合物とのうち、前記気化性化合物と前記緩衝性化合物と前記潮解性化合物とから選ばれる少なくとも2種、又は前記潮解性化合物の1種のみを含む防錆剤とを、
    含んでいることを特徴とする防錆組成物。
  2. 前記水溶性樹脂が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、キサンタンガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ゼラチン、にかわ、コラーゲンタンパク、カゼイン、寒天、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸系樹脂、ポリエチレンイミン、アラビアゴム、及びこれらの変性物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の防錆組成物。
  3. 前記気化性化合物が、フタル酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、パルミチン酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アジピン酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム・ナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウム・リン酸塩、ジシクロヘキシルアンモニウム・カプリレート、ジイソプロピルアンモニウム・ナイトライト、ニトロナフタリンアンモニウム・ナイトライト、シクロヘキシルアミン安息香酸塩、ジシクロヘキシルアミン安息香酸塩、シクロヘキシルアミン・カーバメート、シクロヘキシルアミン・ラウレート、尿素、チオ尿素、ベンゾトリアゾール、4−メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、テトラゾール、5−アミノテトラゾール、5−フェニル−1Hテトラゾール及び3−メチル−5−ピラゾロンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防錆組成物。
  4. 前記緩衝性化合物が、p-tertブチル安息香酸ナトリウム、p-tertブチル安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、B-SiO-MOホウケイ酸系焼結生成物(Mはナトリウム又はカリウム)、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、モリブデン酸ナトリウム及びモリブデン酸カリウムから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の防錆組成物。
  5. 前記潮解性化合物が、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸マグネシウム、炭酸カリウム、及び炭酸カリウム2水和物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の防錆組成物。
  6. 前記防錆剤が、0.01〜89重量%含まれていること特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の防錆組成物。
  7. 前記潮解性化合物が、80%RH未満の臨界湿度を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の防錆組成物。
  8. 前記ポリマーが、粉体であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の防錆組成物。
  9. 請求項1から8のいずれかに記載の防錆組成物を、有することを特徴とする錆止め材。
  10. 前記防錆組成物と、前記防錆組成物で成形されたペレット、シート、フィルム、ストランド、キューブ、平板、及び/又は錠剤との少なくともいずれかが、0.5〜9000g/m・24Hの透湿度を有する包装材によって包装されていることを特徴とする請求項9に記載の錆止め材。
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