JP2016088755A - シート状モルタル、および、シート状モルタルの施工方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このようなコークス炉は、多数のれんがを積み上げて、炭化室と燃焼室とを隔離する側壁を形成し、築炉したものである。
コークス炉は1000℃を超える高温状態に保たれる。そのため、側壁には、高温での体積変化が比較的小さく、その上熱伝導性が良く、且つ機械的強度が大きい珪石(SiO2)れんがが多く用いられている。
モルタルの塗布は、流動性のある混練物であるモルタルを、作業者が鏝を用いてれんがに塗布して仕上げる。したがって、作業者の熟練度によって、仕上げレベルや作業時間が大きく異なるという問題があった。
また、特許文献2では、耐火粘土1〜15wt%および粒径150μm以下のろう石超微粉0.5〜20wt%を含む耐火性配合物100wt%と結合剤よりなる耐火性シートモルタルが記載されており、焼結アルミナを主成分とした材料が開示されている。
また、特許文献3には、耐火性原料と耐火性繊維との耐火性混合原料92〜97重量%と鱗状黒鉛3〜8重量%との混合物、及び、混合物に対し外配で、平均粒径5μm以下のシリカヒューム0.5〜3重量%と熱硬化性樹脂/脂肪族多価アルコールの重量比が1.5〜2.0の熱硬化性樹脂・脂肪族多価アルコール混合物27〜32重量%を含有する耐火性モルタル材をシート状に形成することが記載されており、耐火性原料として、アルミナを主成分とし、シリカ、鱗状黒鉛およびシリカヒュームを含む材料が開示されている。
しかしながら、上記のシート状モルタルは、コークス炉用途のものではなく、1000℃を超える高温状態で、長期にわたり温度サイクルがかかるコークス炉へは適用できない。
すなわち、以下の構成により上記目的を達成することができることを見出した。
(2) 粉末状の耐火性原料に対する、水および接着剤の混合率が、質量比で20%〜40%である(1)に記載のシート状モルタル。
(3) 粉末状の耐火性原料の最大粒径が2mm以下であり、粉末状の耐火性原料に含まれる粒径1mm超の粒子の比率が5質量%以下である(1)または(2)に記載のシート状モルタル。
(4) 接着剤が、有機系接着剤である(1)〜(3)のいずれかに記載のシート状モルタル。
(5) シート状モルタルの接着強度が、250℃において、0.5MPa以下である(1)〜(4)のいずれかに記載のシート状モルタル。
(6) SiO2を90%以上含むれんが同士の間、SiO2を90%以上含むプレキャストブロック同士の間、あるいは、れんがとプレキャストブロックとの間に配置され、れんが同士、プレキャストブロック同士、あるいは、れんがとプレキャストブロックとを接合するものである(1)〜(5)のいずれかに記載のシート状モルタル。
(7) れんが、あるいは、プレキャストブロックの形状に対応した形状に形成される(1)〜(6)のいずれかに記載のシート状モルタル。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載のシート状モルタルを、SiO2を90%以上含むれんが同士の間、SiO2を90%以上含むプレキャストブロック同士の間、あるいは、れんがとプレキャストブロックとの間に挟んで配置する工程と、
シート状モルタルを加熱して、れんが同士、プレキャストブロック同士、あるいは、れんがとプレキャストブロックとを接合する工程とを有するシート状モルタルの施工方法。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
図1に示すように、SiO2は、コークス炉の操業温度域である500℃〜1300℃において、線膨張率の変化が少なくなる。すなわち、熱膨張による体積の変動がほとんどなくなる。
本発明のシート状モルタルでは、耐火性原料として、SiO2を質量比で85%以上含む粉末(粒子)を用いることにより、コークス炉の操業温度域である500℃〜1300℃において長期にわたり温度サイクルがかかった場合でも、モルタルの熱膨張や熱収縮の量が小さいので、モルタルの強度が低下したり、れんがとの間に隙間が生じてガスリークが生じたりすることを防止できる。従って、コークス炉の築炉に利用されるモルタルとして好適に用いることができる。
なお、熱膨張や熱収縮の量をより小さくできる点から、粉末状の耐火性原料は、SiO2を質量比で90%以上含むのが好ましく、94%以上含むのがより好ましい。
なお、珪砂はやや熱膨張が大きいため、熱膨張や熱収縮の量をより小さくできる観点から、珪石れんがや溶融シリカの粉砕物を用いるのがより好ましい。
例えば、コークス炉のれんがとして用いた使用済みの珪石れんがの粉砕物を好適に用いることができる。使用済みの珪石れんがの粉砕物を用いることで、珪石れんがとシート状モルタルとの膨張特性を合わせることができる点でより好適である。
上記観点から、耐火性原料の粉末の最大粒径は、1.4mm以下がより好ましく、1.0mm以下が特に好ましい。また、上記観点から、耐火性原料の粉末の粒度分布は、0.7mm超えの粒子が5質量%以下であるのがより好ましく、0.5mm超えの粒子が5質量%以下であるのが特に好ましい。
また、耐火性原料の粉末は、粒径0.01mm以下の微粉の含有割合が、50質量%以下であるのが好ましい。粒径0.01mm以下の微粉が多いと水との混合量が多くなり、乾燥収縮による亀裂が発生しやすくなるためである。
また、耐火性原料の粉末中の、粒径0.01mm以下の微粉の割合は、上記ふるい分け試験で篩い分けた粒径0.125mm以下の試料について、さらにレーザー回折式粒度分布測定装置により測定した値から求めた値である。
粉末状の耐火性原料に、珪石モルタル以外の一般的な耐火性モルタルに含まれるようなSiO2−Al2O3系の粘土質物質を多量に配合すると、接着剤を使用しないでも湿潤状態で可塑性を有する特性を実現できる可能性はある。しかしながら、このような場合には、熱膨張特性が珪石れんがと大幅に異なることとなり、高温での温度サイクルによって接着強度が大幅に低下するおそれがある。また、長期間の使用において目地損耗を助長するおそれもあるので、耐火性原料の粉末はSiO2を質量比で85%以上含むことが必要である。
なかでも、耐火性を有しない有機系の接着剤を用いるのが好ましい。耐火性を有しない接着剤を用いることにより、モルタル施工後の昇温過程において、燃焼して消滅するので、昇温後に接着剤が残存して耐火性原料と反応する等の悪影響を及ぼさないようにすることができる。また、無機系接着剤を用いる場合も、使用環境の高温下で耐火性原料と反応せず、影響を及ぼさない接着剤を用いるのが好ましい。
コークス炉の施工に好適に用いられる珪石れんがは、図1に示すように、250℃付近での膨張(体積変化量)が大きくなる。その際、モルタル自身の強度(引張強度)あるいは接着強度が0.5MPa以下であれば、モルタル部分で応力が緩和されて、れんが積み構造そのものには過大な応力が生じないので、れんがの膨張による悪影響を防止できる。また、接着剤として、250℃以下で化学反応により気体化、揮発する材料を用いることで、接着剤の気体化、揮発により、モルタル中に気孔が形成されるので、250℃付近で珪石れんがが膨張しても、形成された気孔で珪石れんがの膨張を吸収することができる。
一方、接着剤が気体化、揮発して形成される気孔が多すぎると、モルタルの強度が低下したり、気密性が低下するおそれがある。そのため、水および接着剤の混合率は、質量比で40%以下が好ましく、35%以下がより好ましい。
例えば、接着剤として、澱粉を用いる場合には、水と接着剤との混合比は、2:1〜10:1とするのが好ましい。
また、モルタルをスラリー状態や塑性状態で、シート状に保持できる観点から、耐火性原料の固形分を除いた水と接着剤とを混合した水溶液の粘度は、0.1Pa・s以上、より望ましくは1Pa・s以上とするのが好ましい。
本発明においては、SiO2を85%以上含む粉末状の耐火性原料と、水および接着剤とを含むモルタルをシート状に形成することにより、コークス炉の新炉建設や、既存の積替え補修の際に、モルタルを塗布する作業工程を大幅に低減することができ、作業効率を向上することができる。また、モルタルをコテ塗りするという特殊技能が不要となるため、作業者の技能レベルの影響を無くし、施工品の品質を安定化することができる。また、作業効率を向上して品質を安定化できるので、作業者の人数削減にもつながる。
珪石れんがを用いる場合には、珪石れんがの膨張を吸収する観点から、3mm〜8mmとするのが好ましい。
シート状モルタルをれんがと同じ形状としておけば、作業者が施工現場において、シートを切断する手間が省けて、効率的に施工することができる。
例えば、上記の耐火性原料、水および接着剤を混錬して、スラリー状態や粘土のような塑性状態の混合物を調製し、この混合物をシート状に形成すればよい。
シート状に成形する方法にも特に限定はなく、種々の公知のシート状物の形成方法が利用可能である。
例えばスラリー状体の混合物を、フィルム上に薄く延ばしてシート状に成型するドクターブレード法が利用可能である。また、粘土のような塑性状態の混合物を所定の厚さに延ばしてシート状に形成する場合には、ロールによる圧延が利用可能である。
また、作製したシート状モルタルは、ビニールシート等で挟んでハンドリングするのが好ましい。
具体的には、コークス炉に用いられる珪石れんがは、SiO2を90%以上含むれんがであるのが好ましい。従って、シート状モルタルは、SiO2を90%以上含むれんが同士の間に配置されて、れんが同士を接合するのが好ましい。
本発明のシート状モルタルを、SiO2を90%以上含むれんがの接合に用いることにより、コークス炉の稼動温度において、れんがとシート状モルタルとが類似した熱膨張特性となり、シート状モルタルとれんがとの接着後の強度が維持される。
その後、加熱されて、シート状モルタル中の水や接着剤等が燃焼・分解し、耐火性原料が残存する。残存した耐火性原料がれんがと高温下で焼結して強固に接着する。
なお、加熱の方法は特に限定はないが、コークス炉の施工の場合には、築炉後の炉の昇温時に、シート状モルタルが加熱される構成としてもよい。
プレキャストブロックのSiO2の含有量も90%以上が好ましい。
本発明のシート状モルタルを、SiO2を90%以上含むプレキャストブロックの接合に用いることにより、コークス炉の稼動温度において、プレキャストブロックとシート状モルタルとが類似した熱膨張特性となり、シート状モルタルとプレキャストブロックとの接着後の強度が維持される。
なお、プレキャストブロックは加熱されて焼成され、れんがと同様の強度、密度を有するものとなる。
<シート状モルタルの作製>
実施例1として、厚さ5mm、大きさ40mm×40mmのシート状モルタルを作製した。
耐火性原料として、SiO2を85%、Al2O3を8.5%含有し、最大粒径が0.5mmの粉末を用いた。
なお、耐火性原料の成分は、JIS R 2212−2「耐火物製品の科学分析方法−第2部:けい石質耐火物」に準拠した方法で測定した。また、最大粒径は、JIS Z 8815 ふるい分け試験方法通則に準拠した方法で測定した。
接着剤としては、アルファ化澱粉を用いた。
耐火性原料に対する質量比で、接着剤の混合比は5%、水の混合比は30%とした。
上記の耐火性原料、水および接着剤を混錬してスラリー状の混合物を調製し、この混合物をドクターブレード法によって厚さ5mmのシート状に形成し、流動性が無くなる程度まで保持して安定させた後、一般的な打ち抜き加工装置を用いて、40mm×40mmの大きさに打ち抜いてシート状モルタルを作製した。
耐火性原料中のSiO2、Al2O3の含有量、最大粒径、水および接着剤の混合率をそれぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、シート状モルタルを作製した。
なお、実施例2〜5、7、9は、混合物が粘土状であったため、製麺機(株式会社大和製作所製SB1284AS)を用いて圧延により、厚さ5mmのシート状に形成し、40mm×40mmの大きさに打ち抜いた。
接着剤として酢酸ビニル樹脂エマルジョン(コニシ株式会社製CH5N)を用いた以外は、実施例3と同様にして、シート状モルタルを作製した。
耐火性原料中のSiO2、Al2O3の含有量をそれぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして、シート状モルタルを作製した。
(線膨張係数)
実施例1〜11、ならびに、比較例1および2で作製したシート状モルタルについて、0.4MPaの荷重下における、500〜1300℃の線膨張率を測定した。
線膨張率は、JIS R 2658 耐火物の圧縮クリープの試験方法に準拠した方法により測定した。
実施例1〜11、ならびに、比較例1および2で作製したシート状モルタルについて、接着強度試験を行った。
まず、後述する形状に切断して成形したれんが試料2個の間にシート状モルタルを挟んで、大気雰囲気下において、接着面の方向に対して0.1MPaの圧縮荷重をかけながら、110℃で24時間の乾燥処理を行って、あるいは、110℃で24時間の乾燥処理の後、250℃または1100℃で5時間の加熱処理を行って、れんが12とシート状モルタル10とを接合し、常温まで冷却した。
ここで、実施例4で用いた溶融シリカからなるれんがは、熱間補修用のゼロ膨張れんがである。また、実施例5で用いたHRSれんがは、熱間補修用特殊れんがである。
また、れんがの大きさは、厚さ40mm×幅40mm×奥行60mmとした。
また、いずれのれんがもSiO2を90%以上含むれんがである。
また、加熱処理における昇温、降温速度は1℃/分とした。
支点間の幅は、70mmとした。
評価結果を表1に示す。
また、いずれの実施例においても250℃で熱処理した後の接着強度は0.5MPa以下と低位であったことから、れんがの熱膨張を吸収するための目地材として適正な特性と言える。
また、実施例3と実施例10との対比から、耐火性原料に対する、水および接着剤の混合率が、質量比で20%〜40%であるのが好ましいことがわかる。
すなわち、本発明の実施例であるシート状モルタルは、一般的な珪石モルタルと同様の線膨張係数、接着強度を発現することが分かる。
以上より本発明の効果は明らかである。
12 れんが
Claims (8)
- SiO2を質量比で85%以上含む粉末状の耐火性原料と、水および接着剤とを含みシート状に形成されてなることを特徴とするシート状モルタル。
- 前記粉末状の耐火性原料に対する、水および前記接着剤の混合率が、質量比で20%〜40%である請求項1に記載のシート状モルタル。
- 前記粉末状の耐火性原料の最大粒径が2mm以下であり、前記粉末状の耐火性原料に含まれる粒径1mm超の粒子の比率が5質量%以下である請求項1または2に記載のシート状モルタル。
- 前記接着剤が、有機系接着剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート状モルタル。
- 前記シート状モルタルの接着強度が、250℃において、0.5MPa以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート状モルタル。
- SiO2を90%以上含むれんが同士の間、SiO2を90%以上含むプレキャストブロック同士の間、あるいは、前記れんがと前記プレキャストブロックとの間に配置され、前記れんが同士、前記プレキャストブロック同士、あるいは、前記れんがと前記プレキャストブロックとを接合するものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のシート状モルタル。
- 前記れんが、あるいは、前記プレキャストブロックの形状に対応した形状に形成される請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート状モルタル。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート状モルタルを、SiO2を90%以上含むれんが同士の間、SiO2を90%以上含むプレキャストブロック同士の間、あるいは、前記れんがと前記プレキャストブロックとの間に挟んで配置する工程と、
前記シート状モルタルを加熱して、前記れんが同士、前記プレキャストブロック同士、あるいは、前記れんがと前記プレキャストブロックとを接合する工程とを有するシート状モルタルの施工方法。
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