JP2016088690A - 後処理装置、およびそれを備えた画像形成システム - Google Patents
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Abstract
Description
後処理装置は一般に、シートの単体または束を自機の内部で複雑な経路に沿って搬送する。したがって、搬送中のシートには紙詰まりの危険性がある。「紙詰まり」(「ジャム(jam)」ともいう。)とは、シートが所定のタイミングでは搬送されないことを意味し、特にシートの搬送が不能なことも含む。
紙詰まりに起因する後処理の遅れを低減する工夫としては、たとえば特許文献1、2に開示された技術が知られている。特許文献2の技術は、紙詰まりが生じたシートのみをユーザーに除去させ、それ以外の搬送経路上のシートはそのままで残させる。それにより、後処理の速やかな再開が可能である。一方、特許文献1の技術は、シートの搬送中に紙詰まりが生じたとき後処理装置に、動作を中断させる前にまずそのシートの搬送をリトライさせる。紙詰まりの原因には、センサーがシートの位置または姿勢のずれを「紙詰まり」と誤認した場合があり、このずれにはリトライで直る可能性がある。したがって、リトライは一般に後処理の迅速な再開を可能にする。
まず、紙詰まりの原因は多様である。たとえば、シートの位置または姿勢のずれの他にも、シートの座屈(折れもしくは反り)またはシートの束の荷重超過が想定される。
したがって、シートの搬送を一定の態様(駆動力、速度、方向等)でリトライすることによっていずれの紙詰まりも解消可能である、とは考えにくい。実際、紙詰まりの原因がシートの座屈である場合、そのシートの搬送を単調に繰り返すだけではそのシートの座屈を助長する危険性がある。また、紙詰まりの原因がシートの束の荷重超過である場合、その束に一定の力を加え続けるだけではその束を動かすことはできない。
搬送部は、トレイに収容されたシートの搬送方向における先端に接触してそのシートを搬送方向へ先導する先端搬送部材と、そのシートの搬送方向における後端に接触してそのシートを搬送方向へ押し進める後端搬送部材とを含み、通常時の態様では先端搬送部材と後端搬送部材との両方が協働してシートを搬送し、リトライ時の別の態様では先端搬送部材が利用されず、後端搬送部材のみがシートを搬送してもよい。この場合、検出部が紙詰まりを検出したとき、リトライ制御部は搬送部に、後端搬送部材のみでそのシートを搬送させる前に先端搬送部材でそのシートを搬送方向とは逆方向に押し戻させてもよい。先端搬送部材は、そのシートの先端を把持するための把持部を含んでいてもよい。先端搬送部材は、トレイに収容されたシートの整合にも利用されてもよい。
本発明の1つの観点における画像形成システムは、シートに画像を形成する画像形成部と、その画像形成部によって画像が形成されたシートを排紙する排紙部とを有する画像形成装置と、その排紙部から排紙されたシートに対して後処理を行う上記の後処理装置とを備えている。
[画像形成システムの外観]
図1の(a)は、本発明の実施形態による画像形成システムの外観を示す斜視図である。この画像形成システムは画像形成装置として複合機(multi-function peripheral:MFP)100を備えている。さらに、このMFP100の筐体内には後処理装置150が組み込まれ、MFP100と一体化されている。
図2は、MFP100の内部構造を模式的に示す正面図である。図2にはMFP100の内部の要素が、あたかも筐体の前面を透かして見えているように描かれている。図2を参照するにMFP100は画像形成部を内蔵している。画像形成部は画像データに基づいてシートにトナー像を形成する要素であり、給送部10、作像部20、定着部30、および排紙部40を含む。
作像部20は、給送部10から送られたシートSH2の上にトナー像を形成する。具体的には、4つの作像ユニット21Y、21M、21C、21Kのそれぞれがまず、露光部26からのレーザー光を利用して感光体ドラム25Y、25M、25C、25Kの表面を画像データに基づいたパターンで露光し、その表面に静電潜像を作成する。各作像ユニット21Y、…は次にその静電潜像を、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(K)の各色のトナーで現像する。得られた4色のトナー像は1次転写ローラー22Y、22M、22C、22Kと感光体ドラム25Y、…との間の電界によって感光体ドラム25Y、…の表面から順番に、中間転写ベルト23の表面上の同じ位置へ転写される。こうしてその位置に1つのカラートナー像が構成され、さらに中間転写ベルト23と2次転写ローラー24との間の電界により、給送部10から両者23、24の間のニップへ通紙されたシートSH2の表面へ転写される。その後、2次転写ローラー24はそのシートSH2を定着部30へ送り出す。
切換板41は、定着部30の上部から送り出されたシートを後処理装置150に収容するときは排紙口42への通路を形成し、そのシートを一旦待機させた後に反転させて作像部20へ戻すときには反転口44への通路を形成する。排紙口42と反転口44とはいずれも、排紙空間130に面したMFP100の筐体部分に開いている水平方向に細長いスリットである。排紙ローラー43は排紙口42の内側に配置され、回転しながらその周面で、切換板41に沿って移動してきたシートSH3を排紙口42から排紙空間130の下部へ送り出し、後処理装置150に収容する。反転ガイド板46は反転口44の外側から排紙空間130の天井131へ向けて延びて、その天井131から少し離れた位置に支持されており、その天井131との隙間に、両面印刷中のシートSH4を待機させる場所を確保する。
図3は、MFP100の電子制御系統の構成を示すブロック図である。図3を参照するに、この電子制御系統では画像形成部70に加え、操作部50、第1制御部60、および第1通信部80がバス90を通して互いに通信可能に接続されている。
操作部50はユーザーの操作または外部の電子機器との通信を通して印刷ジョブの要求と印刷対象の画像データとを受け付けて、それらを第1制御部60へ伝える。図3を参照するに操作部50は、操作パネル170、スキャナー120、および外部インタフェース(I/F)52を含む。操作パネル170は、図1の(a)に描かれているように、押しボタン、タッチパネル、およびディスプレイを含む。操作パネル170は、操作画面および各種パラメーターの入力画面等のGUI画面をディスプレイに表示する。操作パネル170はまた、ユーザーが操作した押しボタンまたはタッチパネルの位置を識別し、その識別に関する情報を操作情報として第1制御部60へ伝える。スキャナー120は、ADF110が自動的に取り込んだ原稿、またはユーザーがADF110の直下の原稿台に載せた原稿の表面に光を照射し、反射光の強度分布から、文字、図柄、または写真を読み取って画像データに変換する。外部I/F52は、USBポートもしくはメモリカードスロット等のメモリーインタフェース、または外部のネットワークに有線または無線で接続されるネットワークインタフェースを含み、それらを通して、USBメモリーもしくはハードディスクドライブ(HDD)等の外付けの記憶装置から直に印刷対象の画像データを取り込み、またはネットワークに接続された他の電子機器と通信して、印刷対象の画像データをそれらの電子機器から受信する。
[後処理装置の構造]
図4、図5は、後処理装置150の外観を示す斜視図である。図6の(a)は、図4に示されている線分VI(a)−VI(a)に沿った断面図であり、(b)は、図5に示されている線分VI(b)−VI(b)に沿った断面図である。図4−6を参照するに後処理装置150は、第1トレイ200、第2トレイ210、整合部材221、222、先端搬送部材231、後端搬送部材232、保持部材241、243、加工部250、251、押出部材260、およびガイド部材280を含む。
第2トレイ210は、図1に描かれている排紙トレイ160であり、排紙方向(FD方向)に対して垂直な方向(図4−6に示されているY軸方向であり、以下「CD方向」という。)において第1トレイ200と立壁211を隔てて隣接する。図4−6に示されているように、CD方向は実質的に水平である。
先端搬送部材231と後端搬送部材232とは第1トレイ200の上でFD方向においてシートの束を両側から挟んでFD方向へ搬送する。これらの部材231、232はその束を特に加工部250の直下まで搬送し、またはその束の全体を第1トレイ200の載置面に載せる。
加工部250、251は、第1トレイ200に収容されたシートを加工する。
押出部材260は第1トレイ200の上でCD方向に往復運動して、第1トレイ200に収容されたシートを第2トレイ210へ押し出す。
以下、これらの部材の詳細について説明する。
図4−6を参照するに、第1トレイ200は、FD方向の端部のうち、排紙口42から遠い方200A(以下、「第1トレイ200の上端部」という。)に支軸201を含む。この支軸201は第1トレイ200を揺動可能に後処理装置150の筐体202へ接続している。第1トレイ200はこの支軸201のまわりに揺動することにより、FD方向の端部のうち、排紙口42に近い方200B(以下、「第1トレイ200の下端部」という。)を上下に変位させてFD方向に対する載置面の傾きを変更する。具体的には、1部のシートの束がMFP100から第1トレイ200へ収容されるまでの期間では第1トレイ200は載置面を、図4、図6の(a)に示されているように水平方向から傾斜させてFD方向と平行に保つ。この期間中、第1トレイ200は、MFP100から排紙されたシートに対して整合等の後処理を行うための作業空間として利用される。一方、1部のシートの束が第1トレイ200から第2トレイ210へ押し出される期間では第1トレイ200は載置面を、図5、図6の(b)に示されているように水平に戻して保つ。これにより、第1トレイ200から排出されるシートは、その表面が実質的に水平な状態で第2トレイ210へ移動する。
図6の(b)を参照するに、後処理装置150は第1トレイ200の下方の領域にリフトモーター204とカム機構205とを含む。リフトモーター204は後述の第2制御部からの駆動信号に応じてシャフトを回転させる。カム機構205はそのシャフトの回転力を第1トレイ200の揺動力に変換する。この揺動力により第1トレイ200は支軸201のまわりに揺動する。
図4、図5を参照するに、第2トレイ210の載置面は、第1トレイ200との間を仕切る立壁211からCD方向(Y軸方向)に対して斜め上方へ傾いている。第2トレイ210の載置面のこの傾斜により、第1トレイ200から押し出されたシートはその傾斜方向の下端が立壁211に接触する位置に揃う。こうして、第2トレイ210に積載されるシートはCD方向において整合される。
図4を参照するに、第1整合部材221と第2整合部材222とは第1トレイ200の載置面のCD方向(Y軸方向)における両側の縁部に設置されている。いずれの整合部材221、222も、第1トレイ200の載置面が水平方向に対して傾斜している間、その載置面の上をCD方向に往復運動可能である。
図4を参照するに、先端搬送部材231は第1トレイ200の上端部200Aに設置され、第1トレイ200の載置面が水平方向に対して傾斜している間、その載置面の上端部に刻まれたFD方向(X軸方向)の溝208から突出し、その溝208に沿って往復運動可能である。先端搬送部材231は、第1トレイ200に収容されたシートのFD方向における先端に接触してそのシートをFD方向へ先導する。以下、表記の簡単化を目的として、「先端搬送部材」を「先導部材」と称する。先導部材231は、FD方向への搬送中にシートがFD方向から斜めに逸れた方向へ移動し、もしくは傾き、またはシートの束が崩れることを防止する。
図4を参照するに、後端搬送部材232は第1トレイ200の下端部200Bに設置され、第1トレイ200の載置面が水平方向に対して傾斜している間、その載置面の下端部に刻まれたFD方向の溝209から突出し、その溝209に沿って往復運動可能である。後端搬送部材232は、第1トレイ200に収容されたシートのFD方向における後端に接触してそのシートをFD方向へ押し進める。以下、表記の簡単化を目的として、「後端搬送部材」を「押進部材」と称する。
押進部材232に駆動力を与えるFD搬送モーターとその駆動機構とは、後処理装置150のうち、図6に示されている第1トレイ200の下端部200Bの下方から排紙口42の下方にわたる領域に設置されている。(ただし、これらの要素自体は図6には示されていない。)FD搬送モーターはたとえばステッピングモーターであり、後述の第2制御部からの駆動信号のパルスに合わせてシャフトを断続的に回転させる。駆動機構はそのシャフトの回転力を押進部材232の往復運動の駆動力に変換する。こうして、押進部材232の移動は先導部材231の移動とは独立に行われる。特に押進部材232をシートの搬送後に退避位置HM2へ戻す際、FD搬送モーターのトルクは、押進部材232の速度が一定値に維持されるように設定される。
図4、図5を参照するに、第1保持部材241、242と第2保持部材243、244とは2つずつ第1トレイ200の下端部200Bに設置されている。いずれの保持部材も第1トレイ200の載置面の中に埋め込まれており、その先端部が載置面から突出可能である。図4−6は、保持部材241−244のすべてが載置面から突出したときの状態を示す。
図4、図5を参照するに、加工部250、251は第1トレイ200の支軸201の近傍に設置され、第1トレイ200の載置面の上方にクリンチャー(clincher)250を含み、それと対向する載置面の領域にステープラー251を含む。加工部はこれらの要素250、251を以下に示すとおりに利用する。クリンチャー250は載置面の法線方向に往復運動可能であり、対向するステープラー251に接触可能である。クリンチャー250は後述の第2制御部からの駆動信号に応じて、その下方に配置されたシートの束の角をステープラー251に押し付ける。それに応じてステープラー251はその角にステープルを打ち込む。クリンチャー250は、その角から突き出たステープルの先端を曲げて平坦にする。こうして、そのシートの束が綴じられる。
図4を参照するに、第1トレイ200の載置面が水平方向に対して傾斜している間、押出部材260はこの載置面のCD方向(Y軸方向)における縁部の一方に位置して、第1整合部材221に接触している。押出部材260は更にこの状態を保ったまま、この載置面の上をCD方向に往復運動可能である。
図4−図6を参照するに、ガイド部材280は、後処理装置150のうち、第1トレイ200の下端部200Bよりも下側(X軸の負側)の領域に設置されている。ガイド部材280は、排紙口42に近い方の端部を軸として上面を揺動させることが可能である。図4、図6の(a)に示されているように、第1トレイ200が載置面を水平方向に対して傾斜させている間、ガイド部材280は上面をFD方向と平行にして第1トレイ200の載置面の延長部分と一致させる。これにより、排紙口42から排紙されたシートはガイド部材280の上面に沿って第1トレイ200の載置面へ移動する。一方、図5、図6の(b)に示されているように、第1トレイ200が載置面を水平に保つ間、ガイド部材280は上面をFD方向に対して傾斜させる。これにより、ガイド部材280は、排紙口42から排紙されたシートが第1トレイ200の下部へ侵入することを阻止する。
図7は、後処理装置150の電子制御系統の構成を示すブロック図である。図7を参照するに、この電子制御系統では第2制御部300がバス390を通して、駆動部310−360、シート後端センサー370、および第2通信部380へ通信可能に接続されている。
図7を参照するに駆動部は、整合部310、搬送部320、保持部330、加工部340、収容部350、および押出部360から成る。これらの駆動部はいずれも可動部材の動力源に対するドライバーであり、可動部材を動作させる際、第2制御部300からの駆動信号に応じてその可動部材の動力源を制御する。
−第2制御部−
第2制御部300は、後処理装置150の内部に設置された1枚の基板の上に実装された電子回路である。図7を参照するに、第2制御部300は、CPU301、RAM302、およびROM303を含む。CPU301はファームウェアに従って駆動部310−360を制御する。RAM302は、CPU301がファームウェアを実行する際の作業領域をCPU301に提供する。ROM303は書き込み不可の半導体メモリー装置と、EEPROM等の書き換え可能な半導体メモリー装置またはHDDとを含む。前者はファームウェアを格納し、後者はCPU301に環境変数等の保存領域を提供する。
第2制御部300は特にシート後端センサー370の反応から、先導部材231と押進部材232とが第1トレイ200の上でシートをFD方向に搬送する際の紙詰まり、すなわちその搬送のタイミングの遅れを検出する。紙詰まりの検出時、第2制御部300は搬送部320にシートの搬送を中断させて、そのシートの搬送をリトライさせる。このリトライに関する制御の詳細については後述する。
シート後端センサー370は、図4−6に示されている第1トレイ200の下端部200Bの近傍に埋め込まれた光学センサーである。このセンサー370は、各駆動部310−360の含む位置センサーと同様に発光部と受光部とを含み、発光部から出射した光を受光部で検出する。その発光部と受光部とは、第1トレイ200の下端部200Bを通過するシートが発光部の出射光を受光部に向けて反射するように(または、受光部の手前で遮るように)配置されている。シート後端センサー370は、発光部の出射光が一旦検出された後に途絶えたことを(または、一旦途絶えた後に再検出されたことを)受光部の出力が示すことから、シートの後端が第1トレイ200の下端部200Bを通過したことを検出する。このセンサー370の反応は第2制御部300へ通知される。
第2通信部380はMFP100の第1通信部80(図3参照)と有線または無線で通信する。第2通信部380は第1通信部80と協働して、特に第1制御部60と第2制御部300との間での情報交換を中継する。
[シートの搬送のリトライ制御]
図7を更に参照するに、CPU301は検出部304とリトライ制御部306とを含む。これらの機能部304、306は、CPU301がROM303から特定のファームウェアを読み出して実行することにより実現する。検出部304は、先導部材231と押進部材232とによって搬送されるシートを監視して紙詰まりを検出する。リトライ制御部306は搬送部320にシートの搬送を、通常時の態様とは別の態様でリトライさせる。
検出部304はまず紙詰まり検出用の閾値を設定する。この閾値は、先導部材231と押進部材232とが標準的な重さのシートの束を目標の速度まで加速して、筐体202の下端部の側面207から第1トレイ200の下端部200Bまで搬送するのに必要な時間を表す。
リトライ制御部306は起動したとき、まず搬送部320に先導部材231と押進部材232とを紙詰まり検出時の位置から退避位置HM1、HM2へ移動させる。リトライ制御部306は次に搬送部320に先導部材231でシートを押し戻させる。リトライ制御部306は続いて搬送部320にFD搬送モーターのトルクを増大させ、さらに先導部材231を退避位置HM1に待機させたまま、押進部材232のみでシートを搬送させる。
図8−図16は、後処理装置150が、MFP100から排紙されたシートに対して後処理を行う動作を工程順に示す図である。以下、これらの図面の順に後処理装置150の動作を説明する。
−整合動作−
MFP100から後処理装置150へ1部のシートの束が排紙されるとき、その排紙の予告がMFP100の第1制御部60から後処理装置150の第2制御部300へ通知される。その予告に応じて第2制御部300はまず整合部310に整合部材221、222と押出部材260とを、その束の最初のシートが排紙され始めるよりも前に所定の位置(以下、「初期位置」という。)へ移動させて、そこで待機させる。
図8は、第1トレイ200において、MFP100から排紙されたシートの束が整合されるときの外観を示す斜視図である。図8を参照するに、MFP100の排紙口42から排紙されたシートSHTは、排紙口42のすぐ外側で排紙ガイド板203によって下方へ移動し、更に第1トレイ200の載置面に沿って移動する。このシートSHTの移動は排紙ローラー43(図2参照)の回転力による。このシートSHTの後端が通過するまで排紙ローラー43は回転を継続してシートSHTを移動させ続ける。
−FD方向への搬送動作−
第1制御部60からの制御情報には、後処理を行うべきシートの1部あたりの枚数が規定されている。この枚数のシートが第1トレイ200に収容されたことを検知したとき、第2制御部300は搬送部320に先導部材231と押進部材232との移動を開始させる。
図10、図11の(a)を参照するに、第2制御部300は整合部310には、整合部材221、222と押出部材260とでシートの束STKを、CD方向の両側から保持された状態に維持させる。その一方で第2制御部300は搬送部320には、先導部材231でその束STKの先端を抑えさせたまま、押進部材232を退避位置HM2からFD方向(X軸の正方向)へ前進させる。これに連動して先導部材231の把持爪231Aが倒れて束STKの先端部を上から第1トレイ200の載置面に向けて押さえつける。押進部材232が筐体202の下端部の側面207へ到着したとき、第2制御部300は搬送部320に先導部材231をFD方向(X軸の正方向)へ、押進部材232と同じ速度で移動させる。
第1制御部60からの制御情報が、シートの束STKをステープラーで綴じる束ね加工の要求を示している場合、第2制御部300は、その束STKの角がクリンチャー250とステープラー251との間の領域に到達するまで、搬送部320に先導部材231と押進部材232とを移動させ続ける。具体的には、まず第2制御部300がその制御情報から、その束STKの含むシートのサイズと横置き/縦置きの別とを読み取り、それらに基づいて、その束STKの角を目標の領域に到達させるのに必要な先導部材231と押進部材232との移動距離を算定して搬送部320に指示する。搬送部320はその移動距離に基づいてFD整合モーターとFD搬送モーターとの駆動時間(具体的には駆動信号のパルス数または回転数等)を決める。図10に示されているようにシートの束STKの角がクリンチャー250とステープラー251との間の領域に到達したとき、第2制御部300は搬送部320に先導部材231と押進部材232とでその束STKを一旦、その領域に保持させる。その上で第2制御部300は加工部340にクリンチャー250とステープラー251とを駆動させて、その束STKを綴じさせる。
シートの束STKの全体が図12に示されているように第1トレイ200の載置面に載ったとき、押進部材232は図6の(b)に示されている範囲PRVに進入している。したがって、ガイド部材280の上面が揺動してFD方向に対して傾斜する。このとき、第2制御部300は保持部330に第1保持部材241、242、または第2保持部材243、244を突出させたまま、収容部350に第1トレイ200を支軸201まわりに揺動させてその載置面を水平にさせる。
図15を更に参照するに、第2トレイ210へ押し出されたシートの束STKは第2トレイ210の載置面の傾斜により、その傾斜方向の下端が立壁211に接触する位置に揃う。ここで、第1トレイ200の上では、第1保持部材241、242によって保持されていたシートの束と、第2保持部材243、244によって保持されていた束とはFD方向の位置が異なっていた。これにより、第2トレイ210の上では、これらの束の積載される位置が立壁211と平行な方向において異なる。こうして、シートが束ごとに仕分けられる。
図16は、第1トレイ200が載置面を初期の傾斜姿勢に戻したときの外観を示す斜視図である。図16を参照するに、押出部材260が第1トレイ200の載置面の縁まで後退した後、第2制御部300は収容部350に第1トレイ200を支軸201まわりに揺動させてその載置面を水平方向から、図8に示されている初期位置へ復帰させる。その動作と並行して第2制御部300は搬送部320に押進部材232を、図6の(b)に示されているように退避位置HM2へ移動させる。これにより押進部材232が図6の(b)に示されている範囲PRVから離脱するので、ガイド部材280の上面が揺動してFD方向と平行になり、第1トレイ200の載置面の延長部分と一致する。第2制御部300はその後、MFP100の第1制御部60から新たなシートSHTの排紙の予告を受け付けて、その予告に応じて、図8に示されている動作を整合部310に繰り返させる。
先導部材231と押進部材232とが第1トレイ200の上のシートをFD方向へ搬送する際にそのシートに生じ得る紙詰まりの原因は次の2種類に大別される:(1)シートの座屈、(2)搬送力不足。
「シートの座屈」とは、シートのFD方向における先端が何らかの構造物に引っ掛かった状態のまま移動し続けることによってシートに折れまたは反りが生じた状態をいう。その他に、先端の引っ掛かりに伴うシートのCD方向における位置のずれ、FD方向に対する姿勢のずれ、またはシートの束の歪みも含まれる。シートの先端が引っ掛かり得る構造物にはたとえば、図5、図9に示されている押出部材260を案内するための溝200C、200D、200E等、第1トレイ200の載置面に刻まれた溝と凹凸、第1トレイ200とステープラー251との隙間、および第1トレイ200と筐体202との隙間が含まれる。シートに座屈が生じた場合、先導部材231と押進部材232とからシートの束に加えられる力の一部がシートの単体もしくは束の変形に費やされ、またはその変形に伴って第1トレイ200の載置面以外の構造物との接触による摩擦力が増大する。その結果、先導部材231と押進部材232とがシートの束全体をFD方向へ移動させる力、すなわちその束に対する搬送力が損なわれるので、その束の移動が遅れて紙詰まりが生じる。
第1トレイ200の上をシートの束STKが、図10、図11に示されているようにFD方向(X軸方向)に搬送されている間、第2制御部300の検出部304がシート後端センサー370(図7参照。図10、図11には示されていない。)の出力を監視する。シート後端センサー370は、その束STKの後端REEが第1トレイ200の載置面の下端LEGを通過したときに反応する。押進部材232が退避位置HM2を出発した時点からの経過時間が閾値に達してもシート後端センサー370が反応しない場合、すなわちシートの束STKの後端REEが載置面の下端LEGに到達しない場合、検出部304は「紙詰まりが生じた」と見なしてリトライ制御部306を起動する。
図17の(a)は、紙詰まりが検出された時点での状態を示す。図17の(a)を参照するに、シートSHTの先端FREが第1トレイ200の載置面の溝等に引っ掛かったことに起因して、シートSHTの先端部に折れFLDが生じている。この場合は一般に、先導部材231がそのシートSHTの先端FREを把持爪231Aと基端部231Bの上面との間に上手く挟めないので、先導部材231はシートSHTの先端FREを十分な力で引っ張ることができない。一方、シートSHTの後端REEをFD方向(X軸方向)に押す力PSFがシートSHTの折れFLDに緩衝され、すなわちその折れFLDを元の形へ戻そうとするシートSHTの応力に妨げられるので、押進部材232はシートSHTの後端REEを十分な力で押すことができない。それらの結果、シートSHTに対する搬送力が損なわれるので、シートSHTの速度が目標値には到達しない。これにより、押進部材232が退避位置HM2を出発した時点からの経過時間が閾値に達しても束STKの後端REEが載置面の下端LEGには到達しない。
押進部材232が退避位置HM2を出発した時点からの経過時間が閾値に達してもシートの束STKの後端REEが載置面の下端LEGに到達しないとき、検出部304はリトライ制御部306を起動する。リトライ制御部306はまず搬送部320に、先導部材231と押進部材232とを紙詰まり検出時の位置JM1、JM2から退避位置HM1、HM2へ移動させる。
図17の(d)は、先導部材231が再び退避位置HM1へ戻った時点での状態を示す。図17の(d)を参照するに、シートSHTは紙詰まり検出時の位置からFD方向とは逆方向(X軸の負方向)に移動している。このとき、一般的には、そのシートSHTの先端FREの引っ掛かりは解除されており、そのシートSHTの折れFL2は、図17の(a)に示されている紙詰まり検出時での折れFLDよりも緩和されている。しかし、この折れFL2により、先導部材231はもはやそのシートSHTの先端FREを把持爪231Aと基端部231Bの上面との間に上手く挟めない可能性が高い。また、シートSHTの先端FREの位置は、そのシートSHTのサイズから推測される位置から外れている可能性が高い。それ故、リトライ制御部306は続いて搬送部320に、先導部材231を退避位置HM1に待機させたまま、押進部材232のみでシートSHTを搬送させる。
シートSHTが移動する間、検出部304は、シートSHTの後端REEが第1トレイ200の載置面の下端LEGまで到達したか否かを監視する。押進部材232が退避位置HM2を出発した時点からの経過時間が閾値に達するまでにシートSHTの後端REEが載置面の下端LEGに到達すれば、検出部304は「シートSHTの搬送のリトライに成功した」と判断する。ただし、FD搬送モーターがステッピングモーターである場合、そのトルクを増大させることは、シートの速度の目標値を通常時よりも低減することに等しいので、閾値は通常時よりも大きく設定される。なお、この目標の速度の低減はシートの搬送をリトライする際に限られるので、後処理時間は十分に短く維持される。リトライに成功した場合、後処理装置150の制御は通常の動作に戻り、図13に示されているように第1トレイ200を水平にする動作から再開される。
図18は、図8−図17に示されている後処理のフローチャートである。この処理は、後処理装置150の第2制御部300がMFP100の第1制御部60から印刷ジョブの開始を通知されたときに開始される。
ステップS101では、第2制御部300はまず、第1制御部60から後処理に関する制御情報を取得し、その制御情報からその束のシートのサイズと姿勢とを読み取る。第2制御部300は次に、読み取った情報に基づいて、整合部材221、222、先導部材231、および押出部材260の初期位置を算定し、整合部310にそれらの部材221、222、231、260を、最初のシートが排紙され始めるよりも前に初期位置で待機させる。その後、動作はステップS102へ進む。
ステップS104では、図13−図15に示されている第1トレイ200から第2トレイ210へのシートの押出動作に関する処理と、図16に示されている第1トレイ200の初期位置への復帰動作に関する処理とが行われる。その後、処理はステップS105へ進む。
−搬送に関する処理のフローチャート−
図19は、図18に示されているステップS103のサブルーチン、すなわち後処理装置150がシートの束STKを第1トレイ200の載置面へ搬送する動作に関する処理のフローチャートである。
ステップS204では、押進部材232が退避位置HM2を出発した時点からの経過時間を検出部304が計測して閾値、すなわち先導部材231と押進部材232とがシートの束STKの後端REEを第1トレイ200の載置面の下端LEGまで搬送するのに必要な時間と比較する。その経過時間が閾値に達していなければ処理がステップS205へ進み、閾値以上に達していれば処理がステップS206へ進む。
−搬送のリトライに関する処理のフローチャート−
図20は、図19に示されているステップS206のサブルーチン、すなわち後処理装置150が先導部材231と押進部材232とにシートの搬送を、通常時の態様とは別の態様でリトライさせる動作に関する処理のフローチャートである。
ステップS302では、リトライ制御部306は搬送部320に先導部材231を、図17の(c)に示されているように紙詰まり検出時の位置JM1を押し戻し距離αだけ越えた位置まで前進させる。その後、処理がステップS303へ進む。
ステップS304では、リトライ制御部306は搬送部320にFD搬送モーターのトルクを増大させる。その後、動作がステップS305へ進む。
本発明の実施形態による後処理装置150では上記のとおり、FD方向に搬送されるシートSHTに生じた紙詰まりを検出部304が検出したとき、リトライ制御部306が搬送部320にそのシートSHTの搬送を、通常時の態様とは別の態様でリトライさせる。
この別の態様では、図17に示されているように、先導部材231がシートSHTの先端FREを距離αだけ押し戻した後、押進部材232のみが通常時の力NMFよりも強い力RTFでそのシートSHTの後端REEを押す。これにより、紙詰まりの原因が「シートの座屈」と「搬送力不足」とのいずれであってもリトライがその紙詰まりを解消させる可能性が増えるので、後処理装置150が処理を中断してユーザーに紙詰まりを解除させねばならない頻度が抑えられる。こうして、後処理装置150は紙詰まりに起因する処理の遅れを低減することができる。その結果、画像形成システムの生産性を向上させることができる。
(A)図1に示されている画像形成装置100はMFPである。本発明の実施形態による画像形成装置はその他に、レーザープリンター、インクジェットプリンター、ファクシミリ、またはコピー機等のいずれであってもよい。
(B)後処理装置150の各可動部材に対する駆動源として、リフトモーター204、CD整合モーター、FD整合モーター、CD搬送モーター、およびFD搬送モーターは互いに独立である。しかし、これらの一部またはすべてが共通であってもよい。
また、先導部材231によるシートSHTの押し戻しは必須ではない。すなわち、先導部材231の接触または把持爪231Aでの把持が解除されるだけでも、シートSHTの先端FREの引っ掛かりには解除される可能性がある。したがって、この押し戻しは省略されてもよい。逆に、この押し戻しがリトライ1回あたりに複数回繰り返されてもよい。
たとえば、紙詰まりの原因として上記2種類とは別のものを想定した上で、その別の原因にも対応可能なように「別の態様」を修正してもよい。具体的には、シートの反り等によってその後端が第1トレイ200の載置面から押進部材232よりも高く浮き上がる状態を、紙詰まりの別の原因として想定してもよい。実際、この状態では押進部材232がシートの後端に接触できないので搬送力が不足し、そのシートの搬送が遅れて紙詰まりが生じ得る。この場合、「別の態様」を次のように修正してもよい。まず、第1トレイ200に収容されたシートの後端部を上から押さえて平坦に戻すための部材(仮に「押さえ部材」という。)を後処理装置150に実装する。次に、シートの搬送をリトライする際にのみ、押進部材232がシートの後端を押すことができるように、搬送部320にその押さえ部材でシートの後端部を平坦に戻させる。
42 排紙口
150 後処理装置
200 第1トレイ
210 第2トレイ
221 第1整合部材
222 第2整合部材
231 先導部材
232 押進部材
241、242 第1保持部材
243、244 第2保持部材
250 加工部
260 押出部材
280 ガイド部材
Claims (8)
- 画像形成装置から排紙されたシートに対して後処理を行う後処理装置であり、
前記画像形成装置から排紙されたシートが収容されるトレイと、
前記トレイに収容されたシートを前記トレイの上で搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送されるシートの紙詰まりを検出する検出部と、
前記検出部が紙詰まりを検出したとき、前記搬送部に当該シートの搬送を通常時の態様とは別の態様でリトライさせるリトライ制御部と、
を備えた後処理装置。 - 前記検出部は、前記搬送部によって搬送されるシートが所定時間内に目標位置まで到達するか否かを監視し、到達しなかったことを紙詰まりとして検出することを特徴とする請求項1に記載の後処理装置。
- 前記搬送部は、
前記トレイに収容されたシートの搬送方向における先端に接触して当該シートを搬送方向へ先導する先端搬送部材と、
当該シートの搬送方向における後端に接触して当該シートを搬送方向へ押し進める後端搬送部材と、
を含み、
前記通常時の態様では前記先端搬送部材と前記後端搬送部材との両方が協働してシートを搬送し、前記別の態様では前記先端搬送部材が利用されず、前記後端搬送部材のみがシートを搬送する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の後処理装置。 - 前記検出部が紙詰まりを検出したとき、前記リトライ制御部は前記搬送部に、前記後端搬送部材のみで当該シートを搬送させる前に前記先端搬送部材で当該シートを搬送方向とは逆方向に押し戻させることを特徴とする請求項3に記載の後処理装置。
- 前記先端搬送部材は、当該シートの先端を把持するための把持部を含む請求項3または請求項4に記載の後処理装置。
- 前記先端搬送部材は、前記トレイに収容されたシートの整合にも利用されることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の後処理装置。
- 前記搬送部は、
前記後端搬送部材を駆動するためのモーター
を更に備え、
前記検出部が紙詰まりを検出したとき、前記リトライ制御部は前記搬送部に当該シートの搬送をリトライさせる際、前記モーターのトルクを増大させる
ことを特徴とする請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の後処理装置。 - シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって画像が形成されたシートを排紙する排紙部と、
を有する画像形成装置と、
前記排紙部から排紙されたシートに対して後処理を行う、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の後処理装置と、
を備えた画像形成システム。
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