本発明の実施の形態のコンテナは、直方体状の本体部と、この本体部に追加された追加部とを有する輸送容器と、前記輸送容器の前記本体部内に組み立てられた状態で収納された、分解、展開、および折り畳みのうち少なくともいずれか一つが可能で、直方体の形状の保冷保温容器と、を備えた、航空コンテナである。
上記の実施の形態の航空コンテナを用いた貨物の輸送方法は、直方体状の本体部と、この本体部に追加された追加部とを有する輸送容器と、前記輸送容器の本体部内に組み立てられた状態で収納された、分解、展開、および折り畳みのうち少なくともいずれか一つが可能で、直方体の形状の保冷保温容器と、を備えた航空コンテナと、前記航空コンテナの前記保冷保温容器内に収納された、温度管理が要求される貨物とを、空路で輸送する第1のステップと、組み立てられた状態の前記保冷保温容器が収納されていない、前記輸送容器を備えた航空コンテナと、前記航空コンテナの前記輸送容器内に収納された、温度管理が要求されない貨物とを、空路で輸送する第2のステップと、を備えた、航空コンテナを用いた貨物の輸送方法である。
上述のように本実施の形態によれば、航空輸送容器内に分解、展開、および折り畳みのうち少なくともいずれか一つが可能な保冷保温容器を収納するので、品質を保持するために温度管理が要求される貨物を輸送する場合には、貨物を保冷保温容器内に収納して、航空機による空路を使って高速に輸送することができるので、貨物の品質を適切に管理することができる。もっとも、温度管理が要求されない貨物を輸送する場合には、貨物を輸送容器内に直接収納することによって、航空コンテナの狭い内部スペースを有効に利用することができる。このとき、不使用時の保冷保温容器は、分解、展開、および折り畳みのうち少なくともいずれか一つによって潰されて、コンパクトに保管や輸送することができる。
さらに、実施の形態では、輸送容器は直方体状の本体部と、この本体部に追加された追加部とを有する。このように輸送容器は直方体状の本体部と、追加部とを有し、直方体から飛び出す追加部が追加された形状であるにもかかわらず、保冷保温容器は直方体の形状である。通常の観点であれば、航空コンテナの狭い内部スペースを有効に利用するために、保冷保温容器の形状は、輸送容器の形状、すなわち上記の特殊な形状に沿った形状とすると考えられる。
しかしながら、航空機輸送では、航空機の利用効率を上げることが重要であり、そのために地上における作業時間は可能な限り削減することが要請される。保冷保温容器を直方体の形状とすることによって、輸送容器の飛び出し部がデッドスペースになってしまい積載可能な貨物量は減ってしまうが、輸送容器の飛び出し部の内壁に沿うように保冷保温容器を収納させるのに必要な作業時間が節約できるので、総合的に見れば、輸送費用を効率化することができる。もっとも、本実施の形態によれば、分解、展開、および折り畳みのうち少なくともいずれか一つが可能な保冷保温容器を用いるので、温度管理が要求されない貨物を輸送する場合には、輸送容器の追加部の内部にも貨物を収納することができるので、貨物の積載効率の低下を抑制することができる。また、仮に、分解、展開、および折り畳みのうち少なくともいずれか一つが可能な保冷保温容器を複雑な形状とした場合は、部品数が増えて管理負担が増加するおそれや、組み立て時に接合が不十分な箇所が発生して断熱性が不十分になるおそれが生じる。保冷保温容器をシンプルな直方体の形状とすることによって、これらを防ぐことができる。
さらに、保冷保温容器で用いられる断熱性部材が、真空断熱材である場合、真空断熱材は破損によって大幅に性能が低下するので、本実施の形態のコンテナの輸送方法は特に効果的である。また、高さ、幅、および奥行きが各1m以上である大型容器では、発泡断熱材を用いると、その重量が重くなってしまう可能性がある。それに対して、真空断熱材は、単位厚み当りの断熱性能が発泡断熱材よりも大幅に高いので、保冷保温容器で真空断熱材を用いることで、所望の保冷保温機能を確保しつつ、保冷保温容器の軽量化や省スペース化を図ることができる。さらに、本実施の形態の輸送方法では、保冷保温容器で真空断熱材を用いて軽量化することによって、組み立てる作業や分解等する作業が容易になる。ただし、組み立てる作業、分解等する作業、あるいは貨物の出し入れ作業のときに、作業者が踏み付けて破損してしまうことを防ぐために、保冷保温容器の底面には真空断熱材を含まないようにすることが好ましい。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について具体例を説明する。
図1aは、本発明の一実施の形態によるコンテナを示す斜視図であって便宜的に輸送容器の扉を取外した状態を示す図である。図1bは、図1aのコンテナにおいて、保冷保温容器が分解されて積載されている状態を示す斜視図であって便宜的に輸送容器の扉を取外した状態を示す図である。図1cは、図1aのコンテナの保冷保温容器(本発明の一実施の形態による保冷保温容器)を拡大して示す斜視図である。図1dは輸送容器を示す外観図である。図2は、図1cの保冷保温容器の内部平面図である。図3は、図1cの保冷保温容器の内部正面図である。
本実施の形態による航空コンテナ1は、直方体状の本体部2Aと、この本体部2Aから飛び出すよう追加された追加部2Bとを有する航空輸送容器(以下、輸送容器ともいう)2と、この航空輸送容器2内に収納された、分解、展開、および折り畳みのうち少なくともいずれか一つが可能な直方体の形状の保冷保温容器10とを備えている。このうち保冷保温容器10は、例えば航空輸送容器2(図1cでは不図示)の保温性または保冷性を向上させる用途に用いることができる。すなわち、保冷保温容器10の各辺の長さは輸送容器2の本体部2A(図1cでは図示せず)の内部空間の各辺の長さに対応するように設計されている。分解された状態の保冷保温容器10は、輸送容器2内で組み立てられた後、その内部に保冷あるいは保温すべき貨物が収納され、輸送容器2とともにコンテナ1として輸送される。また、不使用時には、保冷保温容器10は、輸送容器2内において分解されて折り畳まれた後、輸送容器2内で保管される。なお、分解された状態の保冷保温容器10は、それを収納してる輸送容器2に常に収納される必要はなく、それを収納している輸送容器2とは異なる他の輸送容器2に、その他の輸送容器が収納している分解された状態の保冷保温容器10と一緒にまとめて収納されてもよい。それによって、各コンテナ1の積載効率を向上させることができ、効率的な輸送が可能になる。
図1c、図2、および図3に示すように、本実施の形態による保冷保温容器10は、天面パネル11と、正面パネル12、左面パネル13、奥面パネル14、および右面パネル15(下記では、これらのパネル12、13、14、15の共通名称として「側面用パネル」と言う場合がある。)と、底面パネル16と、を備えている。
このうち側面用パネル12、13、14、15は、図2に示すように、連結部31を介して互いに折り曲げ可能に連結されることによって、側面パネル17を構成している。また、図1cに示すように、正面パネル12は、中央付近に設けられた分離部33を介して開閉可能となっている。
図5は、図3の保冷保温容器10において符号Aが付された一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す断面図である。図6は、図3の保冷保温容器10において符号Bが付された一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す断面図である。
図5に示すように、本実施の形態では、天面パネル11は、天井部と、天井部の底面に積層され天井部より各辺が小さい嵌合部と、からなる2層構造を有しており、天井部の底面が左面パネル13の端面に当接されて支持されるとともに、嵌合部の端面が左面パネル13の上端部の内面に当接されている。図示されていないが、同様に、天井部の別の底面が奥面パネル14の端面に当接されて支持されるとともに、嵌合部の別の端面が奥面パネル14の上端部の内面に当接されており、天井部のさらに別の底面が右面パネル15の端面に当接されて支持されるとともに、嵌合部のさらに別の端面が右面パネル15の上端部の内面に当接されている。なお、本明細書において「内面」とは、保冷保温容器10の内側を向く面を意味し、「外面」とは、保冷保温容器10の外側を向く面を意味する。
また、図6に示すように、底面パネル16の端面は左面パネル13の下端部の内面に当接されている。図示されていないが、同様に、底面パネル16の別の端面は奥面パネル14の下端部の内面に当接されており、底面パネル16のさらに別の端面は右面パネル15の下端部の内面に当接されている。
図1c、図2、および図3に示すように、本実施の形態では、天面パネル11、正面パネル12、左面パネル13、奥面パネル14、右面パネル15、および底面パネル16は、それぞれ、一対の部分パネル11a、11b、部分パネル12a、12b、部分パネル13a、13b、部分パネル14a、14b、部分パネル15a、15b、および部分パネル16a、16bを有している。
このうち、正面パネル12の一対の部分パネル12a、12bは、分離可能となっており、保冷保温容器10の両開き扉を構成するようになっている。
また、各側面用パネル12、13、14、15は、その全高方向に延びる連結部31の折曲線を介して折曲可能となるように互いに連結されており、細長状に延びる側面パネル17を構成している。
図4に示すように、本実施の形態による保冷保温容器10では、天面パネル11と、側面パネル17と、底面パネル16とは互いに分離可能となっている。
また、図4に示すように、側面パネル17は、2つのM字状体17a、17bを有している。より詳しくは、正面パネル12と奥面パネル14の中央付近にはそれぞれ分離部33が設けられており、左面パネル13と右面パネル15の中央付近にはそれぞれ折曲部32が設けられている。それによって、正面パネル12の一方の部分パネル12aと、左面パネル13の一対の部分パネル13a、13bと、奥面パネル14の一方の部分パネル14aとは一体に構成されていて、後述のようにM字状に折り畳み可能な1つのM字状体17aを構成している(図10(a)参照)。同様に、正面パネル12の他方の部分パネル12bと、右面パネル15の一対の部分パネル15a、15bと、奥面パネル14の他方の部分パネル14bとは一体に構成されていて、後述のようにM字状に折り畳み可能なもう1つのM字状体17bを構成している(図10(b)参照)。各M字状体17a、17bは、それぞれ、M字状に折り畳まれた状態で自立可能である。
図4に示すように、2つのM字状体17a、17bは、適宜の連結手段、例えば面ファスナにより互いに連結されるようになっている。なお、点ファスナ、線ファスナ、留め金、ねじなどを用いることもできる。より詳しくは、一方のM字状体17aの一端部の内面には、全高方向に延びる雌型面ファスナ54が取り付けられており、その外面には、上下2箇所に雄型面ファスナ付フラップ55が取り付けられている。また、他方のM字状体17bの一端部の内面には、全高方向に延びる雄型面ファスナ付フラップ53が取り付けられており、その外面には、上下2箇所に雌型面ファスナ(不図示)が取り付けられている。そして、M字状体17a、17bの内面において雄型面ファスナ付フラップ55が雌型面ファスナ54に当接されるとともに、その外面において雄型面ファスナ付フラップ53が雌型面ファスナ(不図示)に当接されることで、2つのM字状体17a、17bは互いに連結されるようになっている。
さらに、天面パネル11は、左面パネル13、奥面パネル14、および右面パネル15に適宜の締結手段、例えば面ファスナにより連結されるようになっている。より詳しくは、左面パネル13、奥面パネル14、および右面パネル15の上端部の内面には、それぞれ、左右2箇所に雌型面ファスナ52が取り付けられている。また、天面パネル11の嵌合部の3つの端面には、左面パネル13、奥面パネル14、および右面パネル15の雌型面ファスナ52に対応するように雄型面ファスナ付フラップ51が取り付けられている。
そして、各雄型面ファスナ付フラップ51が雌型面ファスナ52に当接されることで、天面パネル11は左面パネル13、奥面パネル14、および右面パネル15に連結されるようになっている。
本実施の形態では、図4に示すように、各側面用パネル12、13、14、15の内面には、それぞれ、保冷材または保温材を収納するポケット状の収納部41が設けられている。このようなポケット状の収納部41は、必ずしも各側面用パネル12、13、14、15の内面に設ける必要は無く、天面パネル11の内面、あるいは底面パネル16の内面にポケット状の収納部41が設けられてもよい。なお、図4では、正面パネル12が重くなり開閉を妨げるおそれを防ぐために収納部41は設けられていないが、特段の問題が生じなければ、正面パネル12に収納部41を設けてもよい。
次に、天面パネル11および側面用パネル12、13、14、15の構造について詳しく説明する。
図5に示すように、天面パネル11および側面用パネル12、13、14、15は、いずれも、真空断熱材21を含む断熱性部材20と、この断熱性部材20を覆う断熱性の外装袋25と、を有する板状の外装袋付断熱性部材20Aからなっている。
本実施の形態では、天面パネル11は、一対の部分パネル11a、11bに対応して一対の外装袋付断熱性部材20Aを有している。また、正面パネル12は、一対の部分パネル12a、12bに対応して一対の外装袋付断熱性部材20Aを有しており、同様に、左面パネル13は、一対の部分パネル13a、13bに対応して一対の外装袋付断熱性部材20Aを有し、奥面パネル14は、一対の部分パネル14a、14bに対応して一対の外装袋付断熱性部材20Aを有し、右面パネル15は、一対の部分パネル15a、15bに対応して一対の外装袋付断熱性部材20Aを有している。このとき、真空断熱材21は、部分パネルのそれぞれに配置されており、部分パネルどうしの間には配置されていない。
そのため、部分パネルどうしの間で、天面パネル11や側面用パネル12、13、14、15が折り曲げられたり分離される場合であっても、真空断熱材が破損するおそれがない。真空断熱材では真空が破れた場合に、断熱性が急激に低下してしまうので、真空断熱材が破損しないようにパネルに配置することは重要である。
図7(a)は、断熱性部材20を示す斜視図である。図7(b)は、断熱性部材20と外装袋25とを有する外装袋付断熱性部材20Aを示す斜視図である。
外装袋25は、断熱性の柔軟な可撓性材料からなり、容易に折り曲げることができるものである。
一方、図7(a)に示すように、断熱性部材20は、少なくとも真空断熱材21と、真空断熱材21を両面から挟持する一対の追加断熱材22と、一方の追加断熱材22上に積層された保護材23と、を有している。
図9(a)および図9(b)は、真空断熱材を示す断面図である。
図9(a)および図9(b)に示すように、真空断熱材21は、繊維状、発泡状または粒状体の素材のうちのいずれか一つを少なくとも含む芯材21aと、この芯材21aを覆うとともにガスバリア性を有する外被材21bと、を有し、外被材21b内を減圧して真空状態とすることにより得られる断熱材である。この場合、図9(a)に示すように、外被材21b内のうち芯材21aの両端に空間が形成されるが、図9(b)に示すように、外被材21bのうち芯材21aの両端に空間を形成することなく、外被材21bを密着させてもよい。
図8に示すように、一対の部分パネル11a、11bに対応する一対の外装袋付断熱性部材20Aは、折曲部32を介して互いに接合されている。より詳しくは、天面パネル11の一方の外装袋付断熱性部材20Aの長手方向に延びる稜線部が、他方の外装袋付断熱性部材20Aの長手方向に延びる稜線部に当接された状態で、外装袋25同士が接合されて(例えば、外装袋25同士が縫合されて)折曲部32を構成している。これにより、一方の外装袋付断熱性部材20Aと他方の外装袋付断熱性部材20Aとは、長手方向に延びる折曲部32の折曲線を介して折り曲げ可能となっている。
本実施の形態では、図11(a)に示すように、天面パネル11の一対の部分パネル11a、11bは、内面の互いに隣接する稜線部において折曲部32により連結されており、内面同士が向かい合うような向きで折曲部32を介して折り曲げ可能となっている。
また、図10(a)に示すように、一方のM字状体17aにおいて、部分パネル12aと部分パネル13aとは、内面の互いに隣接する稜線部において連結部31により連結されている。また、部分パネル13aと部分パネル13bとは、外面の互いに隣接する稜線部において折曲部32により連結されている。また、部分パネル13bと部分パネル14aとは、内面の互いに隣接する稜線部において連結部31により連結されている。これにより、一方のM字状体17aは、平面視においてM字状をなすように折り畳み可能となっている。
また、図10(b)に示すように、他方のM字状体17bにおいて、部分パネル12bと部分パネル15aとは、内面の互いに隣接する稜線部において連結部31により接合されている。また、部分パネル15aと部分パネル15bとは、外面の互いに隣接する稜線部において折曲部32により連結されている。また、部分パネル15bと部分パネル14bとは、内面の互いに隣接する稜線部において連結部31により連結されている。これにより、他方のM字状体17bも、平面視においてM字状をなすように折り畳み可能となっている。
次に、保冷保温容器10の底面パネル16の構造について詳しく説明する。
図6に示すように、底面パネル16は、発泡断熱材26を含む底面用断熱性部材20’と、この底面用断熱性部材20’を覆う断熱性の外装袋25と、を有する外装袋付底面用断熱性部材20Bからなっている 。
本実施の形態では、底面パネル16は、一対の部分パネル16a、16bに対応して一対の外装袋付底面用断熱性部材20Bを有している。
外装袋付底面用断熱性部材20Bの外装袋25は、上述の外装袋付断熱性部材20Aの外装袋25と同じものであり、説明を省略する。
一方、底面用断熱性部材20’は、発泡断熱材26と、発泡断熱材26上に積層された底面用保護材27と、を有している。
次に、各部の構成材料について説明する。
(断熱性部材20)
まず、断熱性部材20の材料について説明する。断熱性部材20は、上述のように、真空断熱材21と、一対の追加断熱材22と、保護材23と、を有している。
このうち、真空断熱材21は、芯材21aと、芯材21aを覆うガスバリア性の外被材21bとからなる。
また、追加断熱材22としては、一般的な発泡材料を用いることができる。具体的には、押し出し発泡ポリスチレン、ビーズ法ポリスチレン、ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン、フェノールフォーム等の発泡プラスチック系断熱材等を挙げることができる。
また、保護材23は、以下のようなものである。すなわち、真空断熱材21は外傷等で亀裂やしわ、貫通が生じやすく、単独で用いると特に物流過程で損傷しやすく、いったん外装が破壊されると真空度が低下して十分な断熱性を維持できないおそれがある。そこで、本実施の形態では、追加断熱材22により真空断熱材21の表裏を被覆するとともに、保護材23により追加断熱材22の容器外側を被覆することで真空断熱材21を保護し、真空断熱材21の繰り返しの使用ができるようになっている。
保護材23としては、保護機能のある剛性を備えていれば特に限定されず、例えば合板、鋼板、発泡材、剛性樹脂板、エンボス樹脂シート、板紙等を用いても良いが、物流上、重量や体積が低減されることで輸送コストを軽減できることから、特に、いわゆる養生材やプラダン(プラスチックダンボール)、あるいはその複合材を用いることが、特にコスト、重量的に好ましい。
断熱性部材20を形成する材料の熱伝導率としては、所望の断熱性を示すことができれば特に限定されないが、例えば、100mW・m−1・K−1以下、なかでも50mW・m−1・K−1以下、特に35mW・m−1・K−1以下であることが好ましい。断熱性部材20の熱伝導率が大きいと、十分な断熱機能を発揮することが困難となるからである。
また、断熱性部材20を構成する材料の比熱としては、所望の断熱性を示すことができれば特に限定されないが、例えば、0.5kJ・g−1・K−1〜2.0kJ・g−1・K−1程度であり、なかでも0.8kJ・g−1・K−1〜1.5kJ・g−1・K−1の範囲内、特に1.0kJ・g−1・K−1〜1.4kJ・g−1・K−1の範囲内であることが好ましい。
断熱性部材20の厚さとしては、所望の断熱性を有することができれば特に限定されず、様々の用途に応じて適宜選択することができるが、物流に関しては体積を低減するこが物流コスト上、好ましく、例えば、0.1mm〜100mmの範囲内、なかでも1mm〜80mmの範囲内、特に3mm〜50mmの範囲内であることが好ましい。
断熱性部材20の厚さが厚すぎる場合は、断熱性部材20が重くなり、保冷保温容器10全体が重くなって、保冷保温容器10の取り扱いが困難となる可能性がある。一方、断熱性部材20の厚さが薄すぎると十分な断熱性を発揮することが困難となる場合や、断熱性部材20の真空断熱材21が破損等し易くなる可能性がある。また、本実施の形態においては、上述した数値範囲内において、断熱性部材20の厚さは薄いことがより好ましい。
本実施の形態による保冷保温容器10においては、保護材23の厚みを薄くすれば、計量化できるだけでなく、真空断熱材21の断熱機能をより発揮することができ、保冷保温容器10の重量や寸法を抑制できる。また、断熱性部材20全体としての厚さを薄くして、軽量化やコンパクト化を示すことができる。この場合、本実施の形態による保冷保温容器10を軽量なものとすることができることで、組み立て作業、および分解作業における作業者の負担を低減することができる。
(外装袋25)
次に、外装袋25の材料について述べる。
外装袋25は、断熱性をもつ柔軟な可撓性材料からなり、PET・アルミ箔・ポリエチレンフォーム等、あるいはPET・アルミ箔・ペフ等で袋化したものを用いることができる。外装袋25として軟質の袋体を用いることで、収納された断熱性部材20の擦過傷等を予防し、商品寿命を延長することができる。
(底面用断熱性部材20’)
次に、底面用断熱性部材20’の材料について述べる。底面用断熱性部材20’は、上述のように、発泡断熱材26と、発泡断熱材26上に積層された底面用保護材27と、を有している。
発泡断熱材26としては、追加断熱材22と同様、一般的な発泡材料を用いることができる。具体的には、例えば、押し出し発泡ポリスチレン、ビーズ法ポリスチレン、ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン、フェノールフォーム等の発泡プラスチック系断熱材等を挙げることができる。
底面用保護材27としては、保護材23と同様、保護機能のある剛性を備えていれば特に限定されず、例えば合板、鋼板、発泡材、剛性樹脂板、エンボス樹脂シート、板紙等を用いても良いが、物流上、重量や体積が低減されることで輸送コストを軽減できることから、特に、いわゆる養生材やプラダン(プラスチックダンボール)、あるいはその複合材を用いることが、特にコスト、重量的に好ましい。
次に、図12(a)乃至図12(c)を参照して、以上のような構成からなる本実施の形態の作用について、説明する。
まず、折り畳まれた状態の側面パネル17が、例えば航空輸送用のアルミ製の輸送容器2の本体部2A(図1a、図1b、図1d参照)内に搬入される。本実施の形態では、少なくとも各側面用パネル12、13、14、15が真空断熱材を含んでいるため軽量であり、全高方向の長さが1m以上であっても、1人または少数の作業者により容易に搬入することができる。
ここでは、側面パネル17が2つのM字状体17a、17bに分離され、M字状に折り畳まれた状態のM字状体17a、17bが、輸送容器2の本体部2A内に搬入される。側面パネル17が2つのM字状体17a、17bに分離されることで、1体あたりの重量が半減するため、搬入作業における作業者の負担が低減する。また、各M字状体17a、17bは、M字状に折り畳まれた状態で自立可能であるため、搬入時に倒れないように支える必要がなく、作業者の負担が一層低減する。
次に、図12(a)に示すように、輸送容器(図示しない)内において、一方のM字状体17aの谷折りに折り曲げられた折曲部32が外側に押しやられることで、左面パネル13が平面状に広げられる。また、他方のM字状体17bの谷折りに折り曲げられた折曲部32も外側に押しやられることで、右面パネル15が平面状に広げられる。そして、各左面パネル13、右面パネル15の内面に取り付けられた不図示の雌型面ファスナに対して折曲部32を跨ぐように雄型面ファスナ付フラップ56が当接されることで、各左面パネル13、右面パネル15の折曲部32が固定される。
また、一方のM字状体17aの一端部と他方のM字状体の一端部とが、上述のように面ファスナ53、54、55によって連結される。
次に、正面パネル12の部分パネル12a、12bが開とされた状態で、平面状に広げられた状態の底面パネル16が、この部分パネル12a、12bを通って輸送容器(図示しない)内に搬入され、側面パネル17の端面が左面パネル13、奥面パネル14、および右面パネル15の下端部の内面に当接される。
次に、図12(b)に示すように、正面パネル12の部分パネル12a、12bが開とされた状態で、平面状に広げられた状態の天面パネル11が、この部分パネル12a、12bを通って輸送容器2の本体部2A内に搬入され、天面パネル11の天井部の底面が左面パネル13、奥面パネル14、および右面パネル15の端面に当接されるとともに、天面パネル11の嵌合部の端面が左面パネル13、奥面パネル14、および右面パネル15の上端部の内面に当接される。天面パネル11の嵌合部の端面と左面パネル13、奥面パネル14、および右面パネル15の上端部の内面とは、上述のように面ファスナ51、52によって連結される。
このようにして、図12(c)に示すように、輸送容器2の本体部2Aに収容され、組み立てられた保冷保温容器10が得られる。
次に、正面パネル12の部分パネル12a、12bが開となり、この部分パネル12a、12bから保冷保温容器10の内部に貨物が収納される。その後、この部分パネル12a、12bが閉とされる。この時、一方の部分パネル12aの端部に全高方向に延びるように取付られた雌型面ファスナ58に、他方の部分パネル12bの端部に全高方向に延びるように取付られた雄型面ファスナ付フラップ57が当接されることで、2つの部分パネル12a、12bがロックされる。その後、保冷保温容器10は、輸送容器2とともに輸送される。
次に、保冷保温容器10を使用しない場合、前述の工程が逆の順序で行われることにより、保冷保温容器10が天面パネル11、側面パネル17、および底面パネル16に分離される。また、側面パネル17は、2つのM字状体17a、17bに分離される。
そして、天面パネル11、2つのM字状体17a、17b、および底面パネル16は各々折り畳まれた状態で、輸送容器内に積み重ねて保管される。天面パネル11、2つのM字状体17a、17b、および底面パネル16は各々折り畳まれることで、作業者による搬出作業が容易になるとともに、保管スペースを縮小することができる。また、折り畳まれたM字状体17a、17bは、平面視においてM字状をなすため自立可能であり、立たせたまま保管することもできる。
以上のように本実施の形態によれば、少なくとも各側面用パネル12、13、14、15は真空断熱材21を含んでいるため軽量であり、かつ、作業者が開閉可能の正面パネル12から内側に入って作業することができるため、組み立て作業および分解作業を容易に行うことができる。
また、本実施の形態によれば、少なくとも各側面用パネル12、13、14、15には真空断熱材21が用いられているため、内部温度を良好に維持することができる。
また、本実施の形態によれば、天面パネル11、各側面用パネル12、13、14、15、および底面パネル16が各々折り畳み可能の一対の部分パネル11a、11b、部分パネル12a、12b、部分パネル13a、13b、部分パネル14a、14b、部分パネル15a、15b、および部分パネル16a、16bを有するため、天面パネル11、各側面用パネル12、13、14、15、底面パネル16をよりコンパクトに折り畳むことができる。これにより、不使用時における保管スペースを一層縮小できるとともに、作業者による持ち運びが容易となる。
また、本実施の形態によれば、開閉可能の正面パネル12は、中央付近で分離可能となる一対の部分パネル12a、12bを有するため、両開き扉を構成することができる。これにより、正面パネル12を開放する際に必要とされる前後方向(奥行方向)のスペースを縮小することができる。
また、本実施の形態によれば、左面パネル13、および右面パネル15が、その全高方向に延びる折曲部32を介して折り曲げ可能となる一対の部分パネル13a、13b、および分割パネル15a、15bを有するため、不使用時における保管スペースを一層縮小できる。
また、本実施の形態によれば、正面パネルおよび奥面パネル14が、その全高方向に延びる分離部33を介して分離可能となる一対の部分パネル12a、12b、および部分パネル14a、14bを有するため、側面パネル17が2つのM字状体17a、17bを有し、不使用時における保管スペースを一層縮小できる。
また本実施の形態によれば、輸送容器2の本体部2A内に直方体の形状の保冷保温容器10を組み立てて収納し、この保冷保温容器10内に温度管理が要求される貨物を収納して空路で輸送することができる。
さらに輸送容器2の本体部2A内の保冷保温容器10を分解、展開あるいは折畳むことにより、保冷保温容器10を分解し、輸送容器2内に保管し、あるいは輸送容器2から搬送することができる。この場合、輸送容器2の本体部2Aに温度管理が要求されない貨物を収納して空路で輸送することができる。
この場合、保冷保温容器10は、輸送容器2の本体部2A内部の形状に対応して直方体の形状をもつ。このため保冷保温容器10の構造を簡略化することができるため、保冷保温容器10の組立ておよび分解作業をきわめて短時間で行なうことができる。このことにより、航空コンテナへの貨物の積み込み、積み降し作業を効率的に行なうことができる。
他方、保冷保温容器10の構造を本体部2Aと追加部2Bとを有する輸送容器2に合わせて複雑な形状とした場合、部品数が増えて管理負担が増加したり、組み立て時に接合が不十分となり、断熱性が不十分となることも考えられる。
本実施の形態によれば、保冷保温容器10の構造を直方体状とすることにより、保冷保温容器10の組立ておよび分解作業を容易に行なうことができる。このことにより、また断熱性を高く維持することができる。