JP2016088223A - 車両用灯具システム - Google Patents

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幸紀 佐伯
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Abstract

【課題】ADBモードにおいて前方車両の運転者に与えるグレアを抑制する技術を提供する。
【解決手段】本発明のある態様の車両用灯具システム1は、車両用灯具210と、前方車両を周期的に検知する検知部の検知結果に基づいて、前方車両の左右方向の移動を予測する移動予測部102と、検知部の検知結果に基づいて、複数の配光パターンのうち形成すべき配光パターンを選択する選択部104と、選択部104が選択する配光パターンを形成するよう車両用灯具を制御する制御部106とを備える。選択部104は、移動予測部により前方車両が左又は右方向に移動すると予測された場合に、前方車両が左右方向に移動しないと予測された場合に形成すべき配光パターンが有する非照射領域よりも、予測された移動方向にずれた非照射領域、又は予測された移動方向に広い非照射領域を有する配光パターンを選択する。
【選択図】図4

Description

本発明は、車両用灯具システムに関し、特に自動車などの車両に用いられる車両用灯具システムに関する。
従来、車両前方の先行車や対向車(以下、これらを適宜「前方車両」と称する)の存否に基づいて配光パターンを変化させる構成とした車両用灯具システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような、前方車両の存否に応じて自動で配光を変化させる制御は、ADB(Adaptive Driving Beam)モードと称される。
特開2008−37240号公報
本発明者は、上述したADBモードを実行する車両用灯具システムについて鋭意研究を重ねた結果、従来のシステムでは前方車両の運転者に与えるグレアを抑制する上で、改善の余地があることを認識するに至った。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ADBモードにおいて前方車両の運転者に与えるグレアを抑制する技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様は車両用灯具システムである。当該車両用灯具システムは、互いに異なる非照射領域を有する複数の配光パターンを形成可能な車両用灯具と、前方車両を周期的に検知する検知部の検知結果に基づいて、前方車両の左右方向の移動を予測する移動予測部と、移動予測部の予測結果に基づいて、複数の配光パターンのうち形成すべき配光パターンを選択する選択部と、選択部が選択する配光パターンを形成するよう車両用灯具を制御する制御部と、を備える。選択部は、移動予測部により前方車両が左方向又は右方向に移動すると予測された場合に、前方車両が左右方向に移動しないと予測された場合に形成すべき配光パターンが有する非照射領域よりも、予測された移動方向にずれた非照射領域、又は予測された移動方向に広い非照射領域を有する配光パターンを選択する。この態様によれば、ADBモードにおいて前方車両の運転者に与えるグレアを抑制することができる。
上記態様において、移動予測部は、前方車両の移動方向に加えて移動速度を予測し、選択部は、移動予測部により予測される移動速度が第1速度である場合に、第1配光パターンを選択し、移動速度が第1速度よりも速い第2速度である場合に、第1配光パターンの非照射領域よりも、予測された移動方向にずれた非照射領域、又は予測された移動方向に広い非照射領域を有する第2配光パターンを選択してもよい。この態様によれば、前方車両の運転者に与えるグレアをより一層抑制することができる。
本発明によれば、ADBモードにおいて前方車両の運転者に与えるグレアを抑制する技術を提供することができる。
実施の形態に係る車両用灯具システムの制御対象である車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。 回転シェードの概略構造を示す斜視図である。 図3(A)〜図3(F)は、車両用灯具によって形成可能な配光パターンを模式的に示す図である。 実施の形態に係る車両用灯具システムの構成を説明するための機能ブロック図である。 図5(A)〜図5(C)は、選択部による配光パターンの選択の一例を説明するための模式図である。 図6(A)〜図6(D)は、選択部による配光パターンの選択の他の例を説明するための模式図である。 視差補正部による車両用灯具の照射方向の補正制御を説明するための模式図である。 実施の形態に係る車両用灯具システムが実行する制御の一例を示すフローチャートである。 変形例に係る車両用灯具システムの制御対象である車両用灯具の概略構造を示す水平断面図である。 光源ユニットの概略構造を示す斜視図である。 前照灯ユニットによって形成される配光パターンを模式的に示す図である。 変形例に係る車両用灯具システムの構成を説明するための機能ブロック図である。
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
図1は、実施の形態に係る車両用灯具システムの制御対象である車両用灯具の概略構造を示す鉛直断面図である。車両用灯具210は、左右対称に形成された一対の前照灯ユニットが車両の車幅方向の左右に1つずつ配置された構造を有する。右側の前照灯ユニット210R及び左側の前照灯ユニット210Lは実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rを例にとり、車両用灯具210の構造を説明する。車両用灯具210は、車両前方側に開口部を有するランプボディ212と、この開口部を覆う透光カバー214とを有する。ランプボディ212は、車両後方側に着脱カバー212aを有する。ランプボディ212と透光カバー214とによって灯室216が形成される。灯室216には灯具ユニット10が収納される。
灯具ユニット10には、灯具ユニット10の上下左右方向の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が接続される。ランプブラケット218は、ランプボディ212に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合する。灯具ユニット10の下面には、スイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定される。スイブルアクチュエータ222は、前方車両と自車の相対位置の関係等に基づいて灯具ユニット10をピボット機構218aを中心に進行方向に旋回(スイブル:swivel)させる。この結果、灯具ユニット10の照射範囲が前方車両と重なることを回避することができ、前方車両の運転者に与えるグレアを抑制することができる。
スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定される。ユニットブラケット224には、レベリングアクチュエータ226が接続される。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成される。灯具ユニット10は、ロッド226aが矢印M,N方向に伸縮することで後傾姿勢、前傾姿勢となり、これにより灯具ユニット10の光軸Oのピッチ角度を下方、上方に向けるレベリング調整を実行することができる。
灯具ユニット10は、回転シェード12を含むシェード機構18と、光源14と、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17と、投影レンズ20とを備える。光源14としては、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどを使用可能である。リフレクタ16は、少なくとも一部が楕円球面状であり、光源14から放射された光を反射する。光源14からの光及びリフレクタ16で反射した光は、一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へ導かれる。投影レンズ20は、平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
図2は、回転シェードの概略構造を示す斜視図である。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒形状の部材である。また、回転シェード12は軸方向に一部が切り欠かれた切欠部22を有し、当該切欠部22以外の外周面12b上に板状のシェードプレート24を複数保持する。回転シェード12は、その回転角度に応じて投影レンズ20の後方焦点を含む後方焦点面の位置に切欠部22、又は複数のシェードプレート24のいずれか1つを移動させることができる。そして、光軸O上に位置するシェードプレート24の稜線部の形状に従う配光パターンを形成することができる。また、光軸O上に切欠部22を移動させてハイビーム用配光パターンを形成することができる。なお、回転シェード12は、シェードプレート24に代えて、切り欠き形状の異なる複数の切欠部を有してもよい。回転シェード12は、シェードモータ228(図4参照)により回転可能である。
図3(A)〜図3(F)に示すように、車両用灯具210は、互いに異なる非照射領域を有する複数の配光パターンを形成可能である。図3(A)〜図3(F)は、車両用灯具によって形成可能な配光パターンを模式的に示す図である。図3(A)〜図3(F)では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示している。また、図3(A)〜図3(F)に示す配光パターンは、前照灯ユニット210R及び前照灯ユニット210Lそれぞれで形成する配光パターンを重畳させることで得られる合成配光パターンである。
図3(A)は、ロービーム用配光パターンを示している。ロービーム用配光パターンは、交通法規が左側通行の地域において、市街地走行等の走行で前方車両の運転者にグレアを与えないように配慮した配光パターンである。
図3(B)は、ハイビーム用配光パターンを示している。ハイビーム用配光パターンは、前方の広範囲及び遠方を照明する配光パターンであり、例えば、前方車両の運転者へのグレアを配慮する必要のない場合に形成される。
図3(C)は、左片ハイ用配光パターンを示している。左片ハイ用配光パターンは、交通法規が左側通行の地域で自車線側を遠方まで照射する配光パターンであり、ハイビーム用配光パターンの、対向車線側で且つロービーム用配光パターンのカットオフラインよりも上方の領域を遮光した形状に相当する。左片ハイ用配光パターンは、例えば、左側の灯具ユニット10で形成する左片ハイ用配光パターンと右側の灯具ユニット10で形成するロービーム用配光パターンとの合成によって形成することができる。左片ハイ用配光パターンは、自車線側に先行車が存在せず、対向車線側に対向車が存在する場合に適した配光であり、運転者の前方視認性を向上させつつ、対向車の運転者にグレアを与えないように配慮した配光パターンである。
図3(D)は、右片ハイ用配光パターンを示している。右片ハイ用配光パターンは、交通法規が左側通行の地域で対向車線側を遠方まで照射する配光パターンであり、ハイビーム用配光パターンの、自車線側で且つロービーム用配光パターンのカットオフラインよりも上方の領域を遮光した形状に相当する。右片ハイ用配光パターンは、例えば、右側の灯具ユニット10で形成する右片ハイ用配光パターンと左側の灯具ユニット10で形成するロービーム用配光パターンとの合成によって形成することができる。右片ハイ用配光パターンは、自車線側に先行車が存在し、対向車線側に対向車が存在しない場合に適した配光であり、運転者の前方視認性を向上させつつ、先行車の運転者にグレアを与えないように配慮した配光パターンである。
図3(E)は、Vビーム用配光パターンを示している。Vビーム用配光パターンは、ロービーム用配光パターンの変形パターンであり、仮想鉛直スクリーン上の鉛直線Vと水平線Hの交点近傍に対する光の照射を抑制した配光パターンである。Vビーム用配光パターンは、例えば以下のようにして形成することができる。すなわち、左側の灯具ユニット10により図3(A)に示すロービーム用配光パターンを形成する。一方、右側の灯具ユニット10により、交通法規が右側通行の地域で使用するロービーム用配光パターン、すなわち、図3(A)に示すロービーム用配光パターンを鉛直線Vに関して線対称にした配光パターンを形成する。この2つ異なる配光パターンを重畳することにより、Vビーム用配光パターンを形成することができる。Vビーム用配光パターンは、遠方に位置する前方車両に対するグレアを抑制しつつ、自車線側や対向車線側の路肩の障害物等を運転者に認識させ易くできる配光パターンである。
図3(F)は、スプリット配光パターンを示している。スプリット配光パターンは、水平線Hよりも上方に、非照射領域Xと、この非照射領域Xの水平方向両側に配置されるハイビーム領域(光照射領域)とを有する配光パターンである。スプリット配光パターンは、例えば左側の灯具ユニット10で形成される左片ハイ用配光パターンと、右側の灯具ユニット10で形成される右片ハイ用配光パターンとの合成によって形成することができる。スプリット配光パターンの非照射領域Xは、左右の灯具ユニット10の少なくとも一方をスイブルさせて、左片ハイ用配光パターンの非照射領域と右片ハイ用配光パターンの非照射領域とを重ね合わせることで形成することができる。スプリット配光パターンは、運転者の前方視認性を向上させつつ、前方車両の運転者にグレアを与えないように配慮した配光パターンである。
スプリット配光パターンの非照射領域Xは、左及び/又は右の灯具ユニット10をスイブルさせることで、水平方向の位置あるいは範囲を変化させることができる。これにより、前方車両の存在位置に合わせて非照射領域Xの位置あるいは範囲を変化させることができる。このようなスプリット配光パターンの変形は、本実施の形態に係る車両用灯具システムによって以下のようにして実施される。
図4は、実施の形態に係る車両用灯具システムの構成を説明するための機能ブロック図である。なお、配光制御ECU100や車両制御部120等は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図4では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
本実施の形態に係る車両用灯具システム1は、車両用灯具210と、配光制御ECU100とを備える。配光制御ECU100は、例えば車両300内に配置される。車両用灯具システム1は、車両300に搭載される点灯スイッチ110の運転者による操作に応じて、配光パターンの形成/非形成、形成する配光パターンの種類を切り替え可能である。また、配光制御ECU100は、このような運転者が手動で配光パターンを制御するモードとは別に、車両周囲の状況を各種センサで検出して、車両周囲状況に最適な配光パターンを形成する自動配光制御モード、いわゆるADBモードを実行することができる。ADBモードは、例えば、点灯スイッチ110からADBモードの実行指示がなされた場合に実行される。
ADBモードにおいて、例えば配光制御ECU100は、車両300に搭載されるカメラ112によって前方車両が検知された場合、シェードモータ228を駆動させてスプリット配光パターンを形成するよう制御する。また、スプリット配光パターンの形成とともに、前方車両の存在位置にスプリット配光パターンの非照射領域Xが重なるよう、スイブルアクチュエータ222を駆動させてスプリット配光パターンを変形させる。
カメラ112は、ステレオカメラ等で構成され、前方車両を周期的に検知する検知部として機能する。カメラ112は、所定の撮像周期で車両前方を撮像し、撮像した画像データの画像解析を行って、撮像範囲内の前方車両を検知する。そして、前方車両の位置データを示す信号を配光制御ECU100に送信する。配光制御ECU100は、取得した前方車両の位置データに基づいて、スプリット配光パターンの非照射領域Xの範囲を決定する。前方車両を検知する検知部としては、カメラ112に代えて例えばミリ波レータや赤外線レーダなど他の検知装置が用いられてもよく、またそれらが組み合わされてもよい。
ところで、カメラ112による前方車両の位置検出には誤差が含まれる場合がある。このため、前方車両の運転者に与えるグレアをより確実に抑制するためには、前方車両の存在範囲に対して、スプリット配光パターンの非照射領域Xの幅にマージンを持たせることが望ましい。配光制御ECU100は、受信した前方車両の位置データに所定のマージンを加えた遮光範囲データを作成し、この遮光範囲データに基づいて、形成すべきスプリット配光パターンを選択する。
ここで、カメラ112及び配光制御ECU100の演算時間や、カメラ112と配光制御ECU100との間の通信遅延等のために、カメラ112が車両前方を撮像してから、配光制御ECU100が最適な非照射領域Xを有するスプリット配光パターンを選択するまで、さらには実際にスプリット配光パターンが形成されるまで、ある程度の時間を要する。このため、選択あるいは形成されたスプリット配光パターンの非照射領域Xと、実際の前方車両の位置とがずれるおそれがある。特に、前方車両が左右に大きく移動すると、このずれが大きくなりやすい。これに対し、配光制御ECU100は、前方車両の位置データをもとに前方車両の左右方向への移動を予測し、この予測に基づいて形成すべきスプリット配光パターンを選択する。
具体的には、配光制御ECU100は、前方車両の移動を予測する移動予測部102と、カメラ112の検知結果及び移動予測部102の予測結果に基づいて、複数の配光パターンのうち形成すべき配光パターンを選択する選択部104と、選択部104が選択する配光パターンを形成するよう車両用灯具210を制御する制御部106とを備える。移動予測部102は、カメラ112の検知結果に基づいて、前方車両の左右方向の移動を予測する。例えば移動予測部102は、カメラ112から取得する前方車両の位置データを用いて、前方車両の左右位置の変化量を算出する。前方車両の左右位置の変化量は、移動予測部102が取得する位置データの最新値と前回値との差分をとることで算出することができる。これにより、移動予測部102は、前方車両の左右方向への移動を予測することができる。移動予測部102は、例えば予め定められた変化量のしきい値以上となったときに、前方車両が移動すると予測する。
選択部104は、移動予測部102により前方車両が左方向又は右方向に移動すると予測された場合に、前方車両が左右方向に移動しないと予測された場合に形成すべきスプリット配光パターンが有する非照射領域Xよりも、予測された移動方向にずれた非照射領域X、又は予測された移動方向に広い非照射領域Xを有するスプリット配光パターンを選択する。
図5(A)〜図5(C)は、選択部による配光パターンの選択の一例を説明するための模式図である。なお、図5(B)及び図5(C)では、一例として前方車両80が右方向に移動する様子を示している。図5(A)に示すように、選択部104は、移動予測部102により前方車両80が左右方向に移動しないと予測された場合、受信した位置データにおける前方車両80の存在範囲Wに所定のマージンを加えた遮光領域aを設定する。そして、遮光領域aと重なる非照射領域Xを有するスプリット配光パターンを選択する。前方車両80の存在範囲Wは、例えば前方車両80の左側灯具における車幅方向外側の端部から右側灯具における車幅方向外側の端部までの範囲である。
一方、図5(B)に示すように、選択部104は、移動予測部102により前方車両80が左右方向に移動すると予測された場合、前方車両80が移動しないと予測された場合の遮光領域aよりも、予測された移動方向にずれた遮光領域bを設定する。そして、遮光領域bと重なる非照射領域Xを有するスプリット配光パターンを選択する。例えば、カメラ112から得られる前方車両80の位置データは、車両前後方向に延びるカメラ112の中心線と、カメラ112の中心と前方車両80の車幅方向の端部位置とを結ぶ線とがなす角度で表される。選択部104は、カメラ112から得られる当該角度に、前方車両80の移動方向側については所定のマージンを加算し、移動方向と反対側については所定のマージンを減算して、遮光領域bを設定する。
あるいは、図5(C)に示すように、選択部104は、移動予測部102により前方車両80が左右方向に移動すると予測された場合、前方車両80が移動しないと予測された場合の遮光領域aよりも、予測された移動方向に広い遮光領域cを設定する。そして、遮光領域cと重なる非照射領域Xを有するスプリット配光パターンを選択する。例えば、選択部104は、前方車両80の位置データとしての上述した角度に、前方車両80の移動方向側については所定のマージンを加算し、移動方向と反対側についてはマージンを加減算しないことで、遮光領域cを設定する。
図5(B)に示すように前方車両80の移動方向にずれた遮光領域bを設定する場合は、図5(C)に示すように前方車両80の移動方向に拡がった遮光領域cを設定する場合に比べて、スプリット配光パターンの光照射領域を増大させることができる。このため、前方車両80の運転者に与えるグレアを抑制しながら、自車両の運転者の視認性をより向上させることができる。一方、遮光領域cを設定する場合は、遮光領域bを設定する場合に比べて、前方車両80の運転者に与えるグレアをより一層抑制することができる。
また、選択部104は、次のようにしてスプリット配光パターンを選択してもよい。図6(A)〜図6(D)は、選択部による配光パターンの選択の他の例を説明するための模式図である。なお、図6(A)〜図6(D)では、一例として前方車両80が右方向に移動する様子を示している。
まず、移動予測部102は、算出した前方車両80の左右位置の変化量から、単位時間当たりの変化量、すなわち前方車両80の左右方向への移動速度を算出する。これにより、移動予測部102は、前方車両80の移動方向に加えて移動速度を予測する。移動予測部102は、変化量の大きさから移動速度を予測してもよい。そして、選択部104は、移動予測部102により予測される移動速度が第1速度である場合に、第1のスプリット配光パターンを選択し、移動速度が第1速度よりも速い第2速度である場合に、第1のスプリット配光パターンの非照射領域Xよりも、予測された移動方向にずれた非照射領域X、又は予測された移動方向に広い非照射領域Xを有する第2のスプリット配光パターンを選択する。
すなわち、図6(A)に示すように、選択部104は、移動予測部102により前方車両80が相対的に低速の第1速度Vで左右方向に移動すると予測された場合、前方車両80が移動しないと予測された場合の遮光領域aよりも、第1のずれ量mだけ予測された移動方向にずれた遮光領域bを設定する。そして、遮光領域bと重なる非照射領域Xを有する第1のスプリット配光パターンを選択する。
一方、図6(B)に示すように、選択部104は、移動予測部102により前方車両80が相対的に高速の第2速度Vで左右方向に移動すると予測された場合、遮光領域bよりも予測された移動方向にずれた遮光領域dを設定する。遮光領域aに対する遮光領域dのずれ量nは、遮光領域bの第1のずれ量mよりも大きい。そして、選択部104は、遮光領域dと重なる非照射領域Xを有する第2のスプリット配光パターンを選択する。
あるいは、図6(C)に示すように、選択部104は、移動予測部102により前方車両80が相対的に低速の第1速度Vで左右方向に移動すると予測された場合、前方車両80が移動しないと予測された場合の遮光領域aよりも、第1の拡大量pだけ予測された移動方向に広い遮光領域cを設定する。そして、遮光領域cと重なる非照射領域Xを有する第1のスプリット配光パターンを選択する。
一方、図6(D)に示すように、選択部104は、移動予測部102により前方車両80が相対的に高速の第2速度Vで左右方向に移動すると予測された場合、遮光領域cよりも予測された移動方向に広い遮光領域eを設定する。遮光領域aに対する遮光領域eの拡大量qは、遮光領域cの第1の拡大量pよりも大きい。そして、選択部104は、遮光領域eと重なる非照射領域Xを有する第2のスプリット配光パターンを選択する。
このように、選択部104は、前方車両80の左右位置の移動速度あるいは変化量が小さければ、マージンを小さく設定し、前方車両80の左右位置の移動速度あるいは変化量が大きければ、形成する非照射領域Xのマージンを大きく設定する。これにより、前方車両80の運転者に与えるグレアをより一層抑制することができる。
なお、カメラ112から送信されるデータの送信間隔や、カメラ112の分解能によっては、検出される角度の値が階段状になり得る。このため、配光制御ECU100は、前処理としてローパスフィルタによる処理を実施したのち、形成する配光パターンを選択してもよい。これにより、カメラ112から送信される位置データの微小変化をカットすることができるため、無駄な配光パターンの変化を抑制することができ、運転者の視認性の低下を抑制することができる。
選択部104により形成すべき配光パターンが選択されると、制御部106は、選択部104の選択結果に基づいて、車両用灯具210の灯具駆動部230への給電を指示する給電指示信号を車両制御部120に送信する。車両制御部120は、例えばボディーコントロールモジュール(BCM)で構成される。車両制御部120は、配光制御ECU100から給電指示信号を受信すると、車両300に搭載されるバッテリから供給される電力を灯具駆動部230に供給する。
また、配光制御ECU100は、灯具駆動部230から灯具ユニット10への給電を制御する駆動制御部232に、選択した配光パターンの形成を指示する形成指示信号を送信する。駆動制御部232は、形成指示信号を受信すると、灯具駆動部230から灯具ユニット10への給電を制御する。また、駆動制御部232は、灯具ユニット10への給電とともに、冷却用のファン11を駆動させる。これにより灯具ユニット10の光源14が冷却される。駆動制御部232は、例えば灯具駆動部230の内部に組み込まれるマイクロコントローラで構成され、車両用灯具210内に配置される。
さらに、配光制御ECU100は、選択部104の選択結果に基づいて、スイブルアクチュエータ222及びシェードモータ228に駆動を指示する信号を送信する。これらの結果、選択部104によって選択された、所定の非照射領域Xを有するスプリット配光パターンが形成される。
また、配光制御ECU100は、カメラ112により検知される前方車両80に関する情報や、車両に搭載される車高センサ114、及び図示しない車速センサ、操舵角センサ、ヨーレートセンサ、照度センサ、ナビゲーションシステム、イグニッションスイッチ、シフトレバー等から得られる、自車あるいは周囲環境に関する情報に基づいて、車両制御部120、駆動制御部232、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226及びシェードモータ228等に制御信号を送信する。これにより、上述したロービーム用配光パターン、ハイビーム用配光パターン、左右の片ハイ用配光パターン及びVビーム用配光パターンを形成することができる。
また、配光制御ECU100は、レベリングアクチュエータ226により灯具ユニット10の光軸Oを上方に変位させて、ロービーム用配光パターン等の所定の配光パターンを上方に変位させることで、高速走行時の遠方視認性を高める、いわゆるハイウェイモードあるいはモータウェイモードの配光パターンを形成することもできる。ハイウェイモードは、車速センサで検知される車両300の車速が所定速度以上である場合に実行され、配光制御ECU100からレベリングアクチュエータ226に制御信号が送信され、灯具ユニット10の光軸Oが制御される。また、配光制御ECU100は、車両300の車速が所定速度未満である場合に、いわゆるタウンモードを実行することができる。車両用灯具システム1は図示しない拡張ロービーム用灯具ユニットを備え、配光制御ECU100は、タウンモードにおいて拡張ロービーム用灯具ユニットの点灯を指示する信号を駆動制御部232に送信する。駆動制御部232は、拡張ロービーム用灯具ユニットの点灯指示信号を受信すると、拡張ロービーム用灯具ユニットへ給電するよう灯具駆動部230を制御する。拡張ロービーム用灯具ユニットが点灯すると、図3(A)に示すロービーム用配光パターンの車幅方向外側を照射する配光パターンが形成される。
また、配光制御ECU100は、カメラ112から自車周囲の状況が市街地であるか郊外であるかを示す情報を受けて、ADBモードの実行を制御することもできる。例えば配光制御ECU100は、自車周囲の状況が市街地である場合にADBモードの実行を回避し、郊外である場合にADBモードを実行する。また、配光制御ECU100は、車両300に設けられる所定の操作部から送信される、ADBモードのオン/オフ切り替え信号を受信することができる。配光制御ECU100は、当該操作部からADBモードのOFF信号を受信した場合には、点灯スイッチ110からADBモードの実行指示信号を受信しても、ADBモードを実行しない。
また、配光制御ECU100は、シフトポジションを示す信号を受信し、車両300が前進している場合にADBモードを実行し、車両300が後退している場合にADBモードの実行を回避することができる。また、車速センサの検知結果に基づいて車両300の走行状態を検知し、車両300が走行中はADBモードを実行し、車両300が停車中はADBモードの実行を回避することもできる。また、配光制御ECU100は、車両制御部120や駆動制御部232等を含む各部との間の信号線が断線していることを検知して、断線を示す信号を車両300に設けられる図示しないインジケータに送信することができる。さらに、配光制御ECU100は、車両用灯具システム1が使用される国や地域で定められた灯具の駆動に関する情報を受領することができる。このような情報は、例えばCAN(Controller Area Network)通信により外部から入力される。また、配光制御ECU100は、車速センサ、操舵角センサ、ヨーレートセンサ、あるいはナビゲーションシステム等からの情報に基づいて自車前方の道路の曲率を取得し、得られた曲率に基づいてスイブルアクチュエータ222に制御信号を送信することができる。これにより、灯具ユニット10の光軸Oを、自車前方の道路形状に合わせてスイブルさせることができる。
また、配光制御ECU100は、照度センサの検知結果に基づいて駆動制御部232に制御信号を送信することで、自車周囲の明るさに応じた配光パターンの形成制御を実行することができる。また、配光制御ECU100は、車高センサ114の検知結果に基づいてレベリングアクチュエータ226に制御信号を送信することで、車両300のピッチ角度に応じて灯具ユニット10の光軸Oを制御するオートレベリング制御を実行することができる。例えば、配光制御ECU100は、イグニッションスイッチがオン状態になったときにオートレベリング制御を実行し、灯具ユニット10の光軸Oをイグニッションオン時の車両300のピッチ角度に応じた角度に調整することができる。また、車両走行中のピッチ角度の変化に応じて光軸Oの角度を調整することもできる。
配光制御ECU100と、車両制御部120やカメラ112、その他のセンサ類との通信は、例えばCAN(Controller Area Network)通信で行われる。また、配光制御ECU100と駆動制御部232との間の通信は、例えばLIN(Local Interconnect Network)通信で行われる。なお、車高センサ114と配光制御ECU100とはCAN通信を介した通信ではなく、車高センサ114から車両300の車高に応じた電圧が配光制御ECU100に送られてもよい。
配光制御ECU100は、視差補正部を有してもよい。視差補正部は、カメラ112と車両用灯具210の車両300への設置位置が異なることに起因する、車両用灯具210の照射方向のずれを補正する。図7は、視差補正部による車両用灯具の照射方向の補正制御を説明するための模式図である。
カメラ112は、車両300の前部中心に設けられ、前照灯ユニット210L,210Rは、車両300の左右端にそれぞれ設けられる。また、図7において、カメラ112から前方車両80の左右端を見たときの方向が、それぞれ矢印B、Bで表される。左側の前照灯ユニット210Lから前方車両80の左端を見たときの方向が矢印Cで、右側の前照灯ユニット210Rから前方車両80の右端を見たときの方向が矢印Cで表される。
カメラ112から前方車両80を見たとき、左右端を見たときの方向B、Bが、両車の中心を結ぶ線(点線で表す)に対してそれぞれ角度θをなすとする。カメラ112の画像に基づき左右灯具の光軸方向を定めると、図7中に矢印D、Dでそれぞれ示すように、左側の前照灯ユニット210Lの光軸方向はθだけ左方向外側に、右側の前照灯ユニット210Rの光軸方向はθだけ右方向外側にそれぞれずれることになる。この結果、左片ハイ用配光パターンのハイビーム領域と非照射領域との境界(以下では適宜、鉛直カットオフラインと称する)と、前方車両80の左端との間に、また右片ハイ用配光パターンの鉛直カットオフラインと前方車両80の右端との間に、図7中に△で示す誤差がそれぞれ生じる。
したがって、視差補正部は、カメラ112によって測定される車間距離L(m)と前方車両80の存在範囲W(m)とを用いて、自車の中心と前方車両80の左右端とがなす角度θを算出すればよい。幾何的に以下の関係が導かれる。
θ≒tan−1{(W/2)/L} (1)
前方車両80の存在範囲Wについては、定数を使用してもよい。仮にW≒2(m)とすると、次式のようになる。
θ≒tan−1(1/L) (2)
このようにして算出されたθが、視差補正部から制御部106に与えられる。制御部106は、左側の前照灯ユニット210Lの光軸方向を、選択部104により選択された配光パターンの形成位置から、角度θだけ右側にずらす。また、右側の前照灯ユニット210Rの光軸方向を、選択部104により選択された配光パターンの形成位置から、角度θだけ左側にずらす。これにより、図7中の誤差△が解消され、左片ハイ用配光パターン及び右片ハイ用配光パターンの鉛直カットオフラインを、前方車両80の車端により近づけることができる。なお、図7における前方車両80の存在範囲Wは、遮光領域a〜eに置き換えることもできる。したがって、視差補正部を設けることで、遮光領域a〜eとより正確に重なる非照射領域Xを有するスプリット配光パターンを形成することができる。
図8は、実施の形態に係る車両用灯具システムが実行する制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、点灯スイッチ110によりADBモードの実行指示がなされると開始され、所定のタイミングで繰り返し実行される。
図8に示すように、まず配光制御ECU100は、カメラ112から前方車両80の位置データを取得する(S101)。配光制御ECU100は、位置データを取得すると、得られた位置データに基づいて自車前方の状況がスプリット配光パターンを形成すべき状況であるか判断する(S102)。スプリット配光パターンを形成すべき状況である場合(S102のY)、配光制御ECU100は、前回の位置データを保持しているか判断する(S103)。
前回の位置データがある場合(S103のY)、配光制御ECU100は、前回の位置データと今回の位置データとを比較して、前方車両80の左右方向の移動を予測する(S104)。そして、移動予測の結果に基づいて最適な遮光領域を設定し、設定した遮光領域と重なる非照射領域Xを有するスプリット配光パターンを選択する(S105)。前回の位置データがない場合(S103のN)、配光制御ECU100は、前方車両80の移動を予測することなく、例えば上述した遮光領域aに対応する非照射領域Xを有するスプリット配光パターンを選択する(S105)。
続いて、配光制御ECU100は、車両制御部120、駆動制御部232、スイブルアクチュエータ222及びシェードモータ228等に制御信号を送信し、選択したスプリット配光パターンの形成を指示して(S106)、本ルーチンを終了する。自車前方の状況がスプリット配光パターンを形成すべき状況でない場合(S102のN)、配光制御ECU100は、前方車両80の位置データに基づいて、スプリット配光パターン以外の配光パターンから最適な配光パターンを選択する(S107)。そして、配光制御ECU100は、車両制御部120、駆動制御部232、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226及びシェードモータ228等に制御信号を送信し、選択した配光パターンの形成を指示して(S108)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態に係る車両用灯具システム1において、移動予測部102は、カメラ112の検知結果に基づいて前方車両80の左右方向の移動を予測する。そして、選択部104は、前方車両80の移動が予測された場合に、前方車両80が移動しないと予測された場合に形成すべき配光パターンが有する非照射領域Xよりも、予測された移動方向にずれた非照射領域X、又は予測された移動方向に広い非照射領域Xを有する配光パターンを選択する。これにより、カメラ112及び点灯スイッチ110の演算時間や、カメラ112と点灯スイッチ110との間の通信遅延等に起因する、形成されるスプリット配光パターンの非照射領域Xと実際の前方車両80の位置とのずれを減少させることができる。このため、ADBモードにおいて前方車両80の運転者に与えるグレアを抑制することができる。
また、配光制御ECU100が前方車両80の水平方向の移動を予測してスプリット配光パターンを形成するため、前方車両80の存在範囲Wに対して付加するマージンをより小さくすることができる。これにより、前方車両の運転者に与えるグレアを抑制しながら、自車両の運転者の視認性をより向上させることができる。
なお、本発明の他の態様としては、移動予測部102と、選択部104と、制御部106とを備える、車両用灯具の制御装置を挙げることができる。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのようなさらなる変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態と変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
上述した実施の形態では、選択部104は、移動予測部102の予測結果に基づいて、スプリット配光パターンの中から最適な非照射領域Xをスプリット配光パターンを選択している。しかしながら、特にこの構成に限定されず、移動予測部102の予測結果に基づいて選択部104が選択する配光パターンには、左右の片ハイ用配光パターン等の他の配光パターンが含まれてもよい。さらに、選択対象となる左右の片ハイ用配光パターンには、鉛直カットオフラインの水平方向が異なる複数種類の片ハイ用配光パターンが含まれてもよい。
また、上述した実施の形態では、車両用灯具210は、灯具ユニット10をスイブルさせてスプリット配光パターンの非照射領域の範囲を変化させているが、特にこの構成に限定されない。例えば、変形例に係る車両用灯具システム1では、車両用灯具が、いわゆるLEDアレイ等の複数の光源が配列された構造を有するハイビーム用灯具ユニット520Hを備える。この場合、配列された各光源の点消灯を切り替えることで、非照射領域Xの範囲及び/又は位置を変化させることができる。以下、変形例に係る車両用灯具システム1について説明する。
図9は、変形例に係る車両用灯具システムの制御対象である車両用灯具の概略構造を示す水平断面図である。前照灯ユニット510は、ランプボディ512と、ランプボディ512の前端開口部に取り付けられる透光カバー514とを有する。ランプボディ512と透光カバー514とで形成される灯室内には、ロービーム用灯具ユニット520L及び車両用灯具としてのハイビーム用灯具ユニット520Hとが収容される。ロービーム用灯具ユニット520L及びハイビーム用灯具ユニット520Hは、それぞれ図示しない支持部材によってランプボディ512に取り付けられる。また、これらの灯具ユニットの存在領域に開口部を有するエクステンション部材516が、ランプボディ512又は透光カバー514に固定され、ランプボディ512の前面開口部と灯具ユニットとの間の領域が覆われる。
ロービーム用灯具ユニット520Lは、いわゆる反射型の灯具であり、光源バルブ521とリフレクタ523とを有する。ロービーム用灯具ユニット520Lは、光源バルブ521から出射した光をリフレクタ523により灯具前方に反射させ、反射した光の一部を図示しない遮光板でカットして、ロービーム用の配光パターンを形成する。光源バルブ521の先端には光源バルブ521から直接前方に出射する光をカットするシェード525が設けられる。なお、ロービーム用灯具ユニット520Lの構造は特にこれに限定されず、後述するハイビーム用灯具ユニット520Hと同様にプロジェクタ型の灯具であってもよい。ロービーム用灯具ユニット520Lには、レベリングアクチュエータ226(図12参照)が接続される。
ハイビーム用灯具ユニット520Hは、いわゆるプロジェクタ型の灯具であり、投影レンズ522と、ハイビーム照射用の光源526を備えた光源ユニット524と、投影レンズ522及び光源ユニット524を保持するホルダ528とを有する。投影レンズ522は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであり、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置される。投影レンズ522は、その周縁部がホルダ528の前端側に保持される。
光源ユニット524は、光源526が光軸Ax方向前方を向くように配置されて、ホルダ528の後端側に保持される。後述するように、本変形例の光源ユニット524は、LEDアレイで構成される。ホルダ528は、図示しない支持部材を介してランプボディ512に取り付けられる。なお、ハイビーム用灯具ユニット520Hの構造は特にこれに限定されず、ロービーム用灯具ユニット520Lと同様に反射型の灯具であってもよい。ハイビーム用灯具ユニット520Hには、レベリングアクチュエータ226(図12参照)が接続される。
図10は、光源ユニットの概略構造を示す斜視図である。光源ユニット524は、光源526と、支持プレート530と、ヒートシンク532とを有する。光源526は、例えば発光ダイオード(LED)などの発光素子で構成される複数の個別光源526a〜526eを有する。個別光源526a〜526eは、水平一列に互いに隣接するように配置され、支持プレート530の前方側表面に固定される。個別光源526a〜526eは、ADBモードにおいて、駆動制御部232により互いに独立に光の照射が制御される。なお、個別光源の数や配置は特に限定されない。また、複数の発光素子によって、1つの個別光源が形成されてもよい。
ヒートシンク532は、光源526から発せられる熱を放散させるための部材であり、支持プレート530の車両後方側表面に保持される。光源ユニット524は、支持プレート530を介してホルダ528に固定される。
図11は、前照灯ユニットによって形成される配光パターンを模式的に示す図である。図11では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを示している。
前照灯ユニット510では、ロービーム用灯具ユニット520Lの照射光により、ロービーム用配光パターンPLが形成される。ロービーム用配光パターンPLは、V−V線よりも右側に、H−H線と平行に延びる対向車線側カットオフラインCL1を、V−V線よりも左側に、対向車線側カットオフラインCL1よりも高い位置でH−H線と平行に延びる自車線側カットオフラインCL2を、そして対向車線側カットオフラインCL1と自車線側カットオフラインCL2との間に、両者をつなぐ斜めカットオフラインCL3をそれぞれ有する。なお、ロービーム用灯具ユニット520Lは、右側通行時に前走車や歩行者にグレアを与えないように配慮された配光パターンである、ドーバーロービーム用配光パターンを形成してもよい。
また、前照灯ユニット510では、ハイビーム用灯具ユニット520Hの照射光により、ハイビーム用配光パターンPHが形成される。ハイビーム用配光パターンPHは、ロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成される配光パターンである。ハイビーム用配光パターンPHは、ロービーム用配光パターンPLのカットオフラインよりも上方に照射領域が形成されるように、ロービーム用配光パターンPLに対して付加される。ハイビーム用配光パターンPHは、個別光源526a〜526eのそれぞれによって形成される部分パターンPHa〜PHeが合成されてなる配光パターンである。また、ハイビーム用灯具ユニット520Hは、ADBモードにおいて各部分パターンPHa〜PHeの形成/非形成の組み合わせにより、異なる非照射領域を有する複数の配光パターンを形成することができる。
図12は、変形例に係る車両用灯具システムの構成を説明するための機能ブロック図である。変形例に係る車両用灯具システム1では、配光制御ECU100が移動予測部102を有し、駆動制御部232が選択部104及び制御部106を有する。配光制御ECU100の移動予測部102は、上述した実施の形態と同様に、カメラ112から取得した前方車両の位置データに基づいて前方車両の左右方向の移動を予測する。そして、配光制御ECU100は、移動予測結果を示す信号を駆動制御部232に送信する。移動予測結果は、例えば、予測された移動が加味された前方車両の存在位置に対応する、車幅方向の角度値で構成される。すなわち、この角度値は、移動予測部102が取得する最新の位置データを予測された移動方向にずらした値、あるいは最新の位置データを予測された移動方向に拡げた値である。また、配光制御ECU100は、給電指示信号を車両制御部120に送信する。
駆動制御部232の選択部104は、移動予測結果を示す信号を受信すると、上述した実施の形態と同様に、前方車両が左右方向に移動しないと予測された場合に形成すべきスプリット配光パターンが有する非照射領域Xよりも、予測された移動方向にずれた非照射領域X、又は予測された移動方向に広い非照射領域Xを有するスプリット配光パターンを選択する。例えば選択部104は、移動予測結果として、予測した移動が加味された前方車両の存在位置の角度値を取得すると、この角度値に応じた非照射領域Xを形成する上で点灯すべき個別光源と消灯すべき個別光源とを判断する。この結果、形成すべき配光パターンが選択される。そして、制御部106は、選択部104の選択結果に基づいて、灯具駆動部230からハイビーム用灯具ユニット520Hの各個別光源526a〜526eへの給電と非給電とを制御する。これにより、選択部104により選択された配光パターンが形成される。
本変形例では、各個別光源526a〜526eの点消灯を切り替えることで、スイブルアクチュエータ222を用いることなく、非照射領域Xを水平方向に移動あるいは変形させることができる。
点灯スイッチ110によりロービーム用灯具ユニット520Lの点灯指示がなされると、配光制御ECU100は、車両制御部120から灯具駆動部230に供給される電力を、ロービーム用灯具ユニット520Lへ供給するよう駆動制御部232へ指示する。これにより、灯具駆動部230からロービーム用灯具ユニット520Lに供給され、ロービーム用配光パターンPLが形成される。なお、ロービーム用灯具ユニット520Lへの給電は、灯具駆動部230から、図示しないロービム用灯具駆動部を介して実施されてもよい。
また、配光制御ECU100は、上述した実施の形態と同様に、車高センサ114等の各種センサ等からの信号を受信して、自車や自車周囲の状況を判断する。そして、この判断結果を駆動制御部232に送る。駆動制御部232は、配光制御ECU100から判断結果を受領すると、当該判断結果に基づいて配光パターンの形成と非形成、及び形成すべき配光パターンを選択する。また、配光制御ECU100は、車速センサからの信号、市街地であるか郊外であるかを示す情報、シフトポジション、所定の操作部からのオン/オフ切り替え信号等を受けて、ADBモードのオン/オフ信号を駆動制御部232に送信することができる。
1 車両用灯具システム、 80 前方車両、 102 移動予測部、 104 選択部、 106 制御部、 210 車両用灯具、 X 非照射領域。

Claims (2)

  1. 互いに異なる非照射領域を有する複数の配光パターンを形成可能な車両用灯具と、
    前方車両を周期的に検知する検知部の検知結果に基づいて、前記前方車両の左右方向の移動を予測する移動予測部と、
    前記移動予測部の予測結果に基づいて、前記複数の配光パターンのうち形成すべき配光パターンを選択する選択部と、
    前記選択部が選択する配光パターンを形成するよう前記車両用灯具を制御する制御部と、を備え、
    前記選択部は、前記移動予測部により前記前方車両が左方向又は右方向に移動すると予測された場合に、前記前方車両が左右方向に移動しないと予測された場合に形成すべき配光パターンが有する非照射領域よりも、予測された移動方向にずれた非照射領域、又は予測された移動方向に広い非照射領域を有する配光パターンを選択することを特徴とする車両用灯具システム。
  2. 前記移動予測部は、前方車両の移動方向に加えて移動速度を予測し、
    前記選択部は、前記移動予測部により予測される前記移動速度が第1速度である場合に、第1配光パターンを選択し、前記移動速度が前記第1速度よりも速い第2速度である場合に、前記第1配光パターンの非照射領域よりも、予測された移動方向にずれた非照射領域、又は予測された移動方向に広い非照射領域を有する第2配光パターンを選択する請求項1に記載の車両用灯具システム。
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