JP2016086700A - 醤油様調味液およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微生物による汚染がなく、風味と機能性に優れた無塩又は低塩の醤油様調味液およびその製造方法を提供すること。【解決手段】大豆又は小麦を主原料とする穀物原料に麹菌を接種して調製した固体麹に、無塩又は低塩の仕込み水を加えて諸味を調製し、この諸味を殺菌後、危害微生物の混入を抑制できる容器で酵母発酵を行うことにより、風味と機能性に優れた無塩又は低塩の醤油様調味液を得る。【選択図】なし

Description

本発明は、無塩又は低塩の醤油様調味液およびその製造方法に関する。
日本の伝統的な醤油は、蒸煮した大豆と炒った小麦の混合物に麹菌を接種して醤油麹とし、これを高濃度の食塩水とともに仕込み、諸味とし、数ヶ月〜1年という長期間をかけて発酵、熟成して製造される。高濃度の食塩水は、主に腐敗菌の増殖抑制のために用いられているが、近年、食塩の過剰摂取と高血圧症、腎臓病などとの関連性が指摘されてきていることから、醤油について低塩化(低ナトリウム化)を求める声が高まっている。
無塩又は低塩醤油の製造法に関しては、微生物汚染を防ぐために、従来通り高濃度の食塩水で醤油麹を仕込み、発酵・熟成後にイオン交換膜などの膜処理により食塩を脱塩する間接製造法(例えば、特許文献1参照)が報告されている。しかしながら、この間接製造法により得られる調味液は、長時間脱塩することによるコストの上昇と苦味やえぐ味といった風味への悪影響が課題となっている。
一方、pHや温度のコントロール、高窒素仕込み、アルコール仕込みなどを組み合わせて無塩又は低塩下で仕込みを行う直接製造法(例えば、特許文献2〜4参照)も報告されている。しかしながら、低pH条件での無塩仕込みのみでは、微生物による腐造を完全に防止できない点が問題であり、高窒素仕込みではろ過性の悪化、高温仕込みでは酵母発酵不良や温醸臭・苦味の付与などといった問題点がある。また、アルコール仕込みでは、微生物の繁殖は抑えられるものの、添加したアルコールが酵母発酵や風味に影響を及ぼす、といった問題点がある。
また、炭水化物原料、蛋白質原料またはこれらの混合物を2%(w/v)未満の塩濃度で消化するにあたり、初期諸味のpHを4〜6に調整し、さらにアルコール産生能を有する酵母を添加して、諸味の消化とアルコール発酵を同時に行うことにより得られる低塩調味液も報告されている(特許文献5参照)。しかしながら、この手法においても、発酵初期段階の諸味中の微生物増殖抑制が十分であるとはいえず、しばしば汚染を招くという欠点を有する。
また、醤油麹と70〜80℃の熱水を混和し、品温50〜57℃の諸味を調製し、品温を保持しつつ間欠的または連続的に撹拌することで、食塩濃度0〜5%(w/v)で諸味の腐造を防止しつつ、分解時間を短縮する調味液も報告されている(特許文献6参照)。しかしながら、この手法では低食塩濃度の諸味は製造できるものの、乳酸発酵や酵母発酵以降の工程では加塩が必須であり、このため低塩の醤油様調味液を得ることは困難である。
このように、無塩又は低塩の醤油様調味液は従来より多く報告されているものの、実用性を鑑みるといまだ不十分であり、製造時に微生物汚染のない、風味に優れた無塩又は低塩の醤油様調味液が望まれている。
特公昭45−020887号公報 特公昭62−062143号公報 特開平5−219915号公報 特開2009−165377号公報 特許第3065695号公報 特許第3827300号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、危害微生物による汚染がなく、かつ、風味と機能性に優れた無塩又は低塩の醤油様調味液およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、大豆又は小麦を主原料とする穀物原料に麹菌を接種して調製した固体麹に、無塩又は低塩の仕込み水を加えて諸味を調製し、この諸味を殺菌後、危害微生物の混入を抑制できる容器で汚染を防止しながら酵母発酵を行うことにより、危害微生物による汚染がなく、風味と機能性に優れた無塩又は低塩の醤油様調味液が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)食塩濃度が4%(w/v)未満であり、全窒素濃度1.0%(w/v)あたり、イソアミルアルコール濃度が20ppm(w/v)以上、2−フェニルエタノール濃度が6ppm(w/v)以上、イソブチルアルコール濃度が9ppm(w/v)以上、およびHEMF濃度が10ppm(w/v)以上である醤油様調味液、
(2)ナトリウムイオン濃度が50ppm(w/v)以下である前記(1)に記載の醤油様調味液、
(3)下記の工程を含むことを特徴とする前記(1)または(2)のいずれかに記載の醤油様調味液の製造方法。
工程1:大豆又は小麦を主原料とした穀物原料に、麹菌を接種して固体麹を調製し、水又は食塩水を加えて食塩濃度4%(w/v)未満の諸味を加温分解する工程
工程2:工程1の諸味を殺菌する工程
工程3:工程2の殺菌諸味に酵母を接種して危害微生物の混入を抑制できる容器で酵母発酵を行う工程、
に関する。
本発明によれば、危害微生物による汚染がなく、味や香りに優れた無塩又は低塩の醤油様調味液を提供することができる。
また、本発明で得られた無塩調味液は、ナトリウムイオン濃度が極めて低く、かつ風味も優れていることから、高血圧症や腎臓疾患等の患者用に適した醤油様調味液として提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、まず穀物原料より調製した固体麹に水又は食塩水を混和し、食塩濃度4%(w/v)未満の醤油諸味を調製し、25〜57℃で0〜48時間加温分解する。好ましくは、特許第3827300号記載のように、70〜80℃の熱水又は食塩水を固体麹と混和し、50〜57℃に諸味温度を保持したまま、タンク内で間欠的又は連続的に撹拌し、15〜30時間酵素分解することが望ましい。
ここで、穀物原料とは、例えば丸大豆、脱脂大豆、大豆タンパク、小麦グルテン、えんどう豆、そら豆、小豆等に代表される蛋白質原料と、小麦、大麦、ライ麦、フスマ、米、米ぬか、とうもろこし、澱粉粕等に代表される澱粉質原料を指す。これらは単独で、または組み合わせて用いることができる。
ここで用いられる固体麹は、常法により原料処理された蛋白質原料又はこれに澱粉質原料を混合したものに、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)に代表される麹菌を接種し、2〜3日固体培養(製麹)することで得られる。
蛋白質原料に澱粉質原料を混合する場合、配合割合は特に限定するものではないが、例えば通常の醤油に近い調味液を得ようとする場合、重量比で1:0.25〜4とすることが好ましい。
仕込みに用いる水又は食塩水は、麹が十分浸る程度であればよく、一般には、麹重量に対し1〜4容量倍(v/w)とすることが好ましい。また、加温分解時に、防ばい性や分解効率の向上、風味向上のために後述する食用の酸や酵素剤、活性炭を添加してもよい。さらに、酵母発酵時の泡立ちを抑えるため、エマルジョン型のシリコーン消泡剤を終濃度0.01〜0.5%(w/v)となるよう添加してもよい。
加温分解時には、諸味の分解促進のため、酵素剤を終濃度が0.001〜1%(w/v)となるように添加してもよい。酵素剤としては、例えば、プロテアーゼ(エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ)、セルラーゼ、ペクチナーゼ等を挙げることができる。
次に加温分解を行った食塩濃度4%(w/v)未満の醤油諸味の加熱殺菌を行う。ここで加熱殺菌方法は、特に限定されず、UHT、HTST、レトルト、加圧タンク、スチームインジェクション、スチームインフュージョン、オートクレーブ、プレートヒーター、表面かきとり式、ジュール式熱交換、チューブラー式殺菌等の殺菌方法のいずれを用いてもよいが、好ましくは加圧タンクやチューブラー式殺菌機を用いるのがよい。例えば、諸味を加圧タンクに入れ、均一に撹拌しながら加圧加温することなどで殺菌することができる。殺菌温度が低すぎる、もしくは殺菌時間が短すぎると雑菌の殺菌が不十分となるため好ましくない。逆に、殺菌温度が高すぎる、もしくは殺菌時間が長すぎると、調味液の風味が劣化するために好ましくない。選択する殺菌方法により最適条件は異なるが、例えば、80℃では2分以上180分以下、121℃では5秒以上15分以下、130℃では1秒以上30秒以下が好ましい。
調製した諸味は、防ばい性の向上や味の調整のために、pH調整を行ってもよい。調整後のpHは、防ばい性と酵母の発酵性の観点から、3.0〜7.0、好ましくは4.0〜5.5にすることが望ましい。pH調整のタイミングとしては、加温分解時、諸味の加熱殺菌前、諸味の加熱殺菌後のいずれでもよい。pH調整剤としての食用の酸としては、例えば、乳酸、酢酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アジピン酸等が挙げられるが、風味の点から、乳酸が好ましい。
諸味には酵母発酵を円滑に行うため、糖質を0〜20%(w/v)添加してもよい。例えば、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトース、マンノース、グリセロール等、酵母が資化できる糖質が利用できるが、資化効率を考えるとグルコースの使用が望ましい。加えて、リボースやキシロースなどのペントースを利用すると、無塩又は低塩であっても、特開2001−120293号公報記載のように、醤油中に含まれる重要な香気成分であるHEMFを増加させることができる。これらは単独で用いることができるが、組み合わせて用いることもできる。また、これらの糖を含む食品素材、例えば、砂糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、三温糖、糖蜜などを用いてもよい。
また、酵母発酵の前にも、諸味の分解促進や圧搾性の向上のため、酵素剤を終濃度が0.001〜1%(w/v)となるように添加してもよい。酵素剤としては、例えば、プロテアーゼ(エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ)、セルラーゼ、ペクチナーゼ等を挙げることができる。
また、酵母発酵の前に、苦味を除去して風味を向上させるため、諸味に活性炭を添加してもよい。活性炭は粉末であることが好ましく、平均粒子径が10〜100μmのものを使用することがより好ましい。活性炭の添加量は、諸味原料に対し0.1〜5%(w/w)であることが好ましい。活性炭の種類は用途に応じて適宜選択することができ、例えば、苦味除去、悪臭除去、味の調整、色の調整またはこれらの機能を有する活性炭を組み合わせて使用することができる。
本発明で使用する酵母は、特に制限されず、例えばサッカロマイセス・ セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)やジゴサッカロマイセス・ルキシー(Zygosaccharomyces rouxii)、クリュイベロマイセス・マルシアヌス(Kluyveromyces marxianus)などの酵母が用いられる。本発明の諸味は無塩又は低塩であるがゆえに、これら以外にも、耐塩性の弱いワイン酵母やビール酵母、焼酎酵母なども用いることができる。酵母の添加濃度は、諸味1gあたり1×10個以上、好ましくは1×10〜1×10個となるように添加するのが好ましい。
諸味は危害微生物の混入を抑制できる容器に入れ、酵母発酵を行う。ここで、危害微生物の混入を抑制できる容器とは、容器内部と外気を遮断できる構造を持つものであればよく、実験的にはポリプロピレン製の滅菌済み広口瓶やガラス製のメディアボトルなどが使用でき、工業的には容器内に除菌された空気を供給できる機能を持つジャーファーメンターや加圧式の発酵タンクなどを使用することができる。また、空気の除菌には、0.3μm以上の塵を99.97%以上集塵できるフィルター、例えばHEPAフィルターなどを用いることができる。
酵母発酵は、酵母が生育できる温度、具体的には15〜45℃、好ましくは20〜30℃で1〜90日、好ましくは3〜28日行う。
本発明の醤油様調味液のアルコールは、発酵工程で添加する糖濃度や使用する酵母の種類や発酵条件によって0〜20%(w/v)と産生量が調整でき、また、発酵終了時にアルコールを添加してもよいが、醤油様調味液として、風味に醤油らしさを持たせるために、好ましくは8%(w/v)未満、より好ましくは2〜7%(w/v)とするのがよい。アルコール濃度は、例えばガスクロマトグラフィーや酵素法による測定キット等、公知の方法で測定することができる。
発酵が終了した諸味は圧搾、火入れ、清澄、濾過等の常法による製成を行うことで、風味と機能性に優れた食塩濃度4%(w/v)未満の醤油様調味液を得ることができる。食塩濃度は例えば電位差滴定法やモール法などの方法で測定することができる。
本発明の醤油様調味液は、公知の無塩又は低塩の醤油様調味液とは異なり、香気成分濃度が以下の条件を満足しており、より本来の醤油らしい風味を有することが特徴である。
(1)全窒素濃度1.0%(w/v)あたり、イソアミルアルコール濃度が20ppm(w/v)以上
(2)全窒素濃度1.0%(w/v)あたり、2−フェニルエタノール濃度が6ppm(w/v)以上
(3)全窒素濃度1.0%(w/v)あたり、イソブチルアルコール濃度が9ppm(w/v)以上
(4)全窒素濃度1.0%(w/v)あたり、HEMF濃度が10ppm(w/v)以上
イソアミルアルコールや2−フェニルエタノールは清酒の基調香として知られており、イソブチルアルコールとともに、醤油の風味を向上させる酵母発酵由来の香気成分であることが知られている。これらの香気成分濃度は例えばGC−MSやGC−FIDなどを用いて測定することができる。
HEMFは醤油中に含まれる重要な香気成分であるものの、これまで低塩下での醸造工程においては、その濃度が低減することが知られていた(J.Agric.Food Chem.Vol 44、3273−3275、1996)。本発明の醤油様調味液は、一般の醤油と同等のHEMF濃度となっており、醤油らしい風味を有することが特徴である。
また、前述の仕込み工程で、仕込み水に食塩を一切用いないで得られる本発明の無塩醤油様調味液は、ナトリウムイオン濃度が50ppm(w/v)以下となっている。この点で公知の無塩醤油様調味液とは異なり、いっそう低ナトリウム濃度であることを特徴とする。ナトリウムイオン濃度は例えば原子吸光分析法やICP発光分析法などの方法で測定することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
1.無塩調味液の製造
(醤油麹の作製)
脱脂加工大豆50%(w/w)と焙煎割砕小麦50%(w/w)の配合割合で醤油麹を作製した。なお、脱脂加工大豆は130%(w/w)撒水し蒸煮したものを用いた。この原料にAspergillus sojaeの種麹を接種し、常法により42時間製麹して醤油麹を得た。
(諸味の調製)
上記醤油麹100重量部に対し、200重量部の70℃に加温した熱水(食塩は含まない)を混和し、回転軸に撹拌翼を配置した保温ジャケット付きの分解タンク内で連続的に100rpmで撹拌し、55℃で24時間加温分解を行い、無塩の諸味を得た。
(諸味の殺菌処理)
上記無塩諸味300gを、表1の通り、乳酸によりpH4.0〜5.0となるよう調整し、実施例1−1〜1−4の4区分の諸味はガラス製のメディアボトルに入れ、121℃、5分のオートクレーブ殺菌を行った。次いで、各区分の諸味には、表1に示す通り、終濃度5%(w/v)となるように滅菌済みの50%(w/v)グルコースを添加した。
Figure 2016086700
(酵母発酵)
次いで、上記諸味に予め培養して得られた醤油酵母(Zygosaccharomyces rouxii)を1×10個/g諸味となるよう添加し、表1の通り、品温20〜30℃で14日間酵母発酵を行った。
(製成)
酵母発酵後の諸味を圧搾し、火入れ、オリ引きをして清澄な醤油様調味液を得た。得られた醤油様調味液の一般生菌数と成分分析値を表2に示す。
(一般生菌数の測定、成分分析)
一般生菌数の測定は、標準寒天培地パールコア(栄研化学社製)にナイスタチンを30μg/mlとなるよう加えた培地で培養し、生育したコロニーを計測した。なお、この方法で測定した一般生菌数には、酵母は含まれておらず、主に汚染菌を示している。また、全窒素(TN)濃度、アルコール濃度およびpHは、財団法人日本醤油研究所編集 しょうゆ試験法(昭和60年3月1日発行)に記載の方法により求めた。また、食塩濃度はモール法により、グルタミン酸濃度は、アミノ酸分析装置を用いて求めた。
Figure 2016086700
表2の比較例1−1〜1−3の結果から、初発諸味pHを4.0に下げても、諸味の殺菌工程が無い場合は、醸造過程中で腐敗してしまい、所望の醤油様調味液は得られなかった。一方、実施例1−1〜1−4のように殺菌工程がある場合は、アルコール濃度の低い実施例1−4においてでさえも醸造過程で腐敗することなく、醤油様調味液を得ることができた。さらに、アルコール濃度の面からも、酵母発酵が問題なく行われたと考えられる。また、酵母発酵や風味への影響から、発酵温度は20〜30℃で行うことが好ましいことも確認された。
2.無塩又は低塩の醤油様調味液製造法の改良
(醤油麹を増量した諸味の調製)
実施例1と同様に、醤油麹100重量部に対し、140重量部の70℃に加温した熱水、さらに実施例2−4および比較例2−1、2−2は終濃度が表3の食塩濃度となるよう食塩を混和し、さらに活性炭(くじゃくTK2:川北化学社製)を原料に対し1.5%(w/w)となるよう添加し、乳酸によりpHを4.8に調整した後、回転軸に撹拌翼を配置した保温ジャケット付きの分解タンク内で連続的に100rpmで撹拌し、55℃で24時間加温分解を行い、諸味を得た。この諸味は、実施例1の諸味よりも醤油麹の割合が増加している。
(醤油様調味液の製造)
上記諸味をジャーファーメンターで121℃、5分の殺菌処理を行い、終濃度5%(w/v)となるよう滅菌済み50%(w/v)グルコースを添加した。次いで、予め培養して得られた酵母(Zygosaccharomyces rouxii、Saccharomyces cerevisiae、Kluyveromyces marxianus)を1×10個/g諸味となるよう添加し、さらに、市販酵素剤(エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ)を終濃度0.1%(w/w)となるよう添加し、表3に示す通り、品温25℃または30℃で14日間酵母発酵を行った。
Figure 2016086700
(製成および風味評価)
酵母発酵後の諸味を圧搾し、火入れ、オリ引きをして清澄な醤油様調味液を得た。得られた調味液の成分分析値と風味評価の結果を表4に示す。なお、風味の評価は下記の基準に従った。
◎:非常に好ましい
○:好ましい
×:好ましくない
Figure 2016086700
諸味調製時に醤油麹を増量させ、さらに酵母発酵時に酵素剤を添加することで、最終的に全窒素濃度やグルタミン酸濃度の高い、風味の良い調味液を製造できることができた。また、実施例2−1や2−2の調味液のように、無塩で発酵させた調味液は、全体として甘く華やかな香りを有しており、風味良好であった。さらに、低食塩濃度(3%:w/v)で酵母発酵を行った実施例2−4の低塩調味液は、いっそう醤油らしい香りを有しており、風味も同様に良好であった。
また、実施例2−2は清酒酵母S.cerevisiae、実施例2−3は耐熱性酵母K.marxianusを用いているが、これらの酵母は、実施例2−1の醤油酵母(Z.rouxii)よりも発酵速度が速く、アルコール生産量も多い傾向にあり、防ばい性面で優れているといえる。しかしこれらの酵母は非耐塩性酵母であるため、比較例2−1や比較例2−2のように、高食塩濃度下では生育不良となり、アルコール産生ができず、このため、従来の一般的な醤油醸造では用いることができなかった。本発明の無塩又は低塩発酵では、これらの非耐塩性の微生物を使用できることも大きな利点である。
3.醤油感を向上させた無塩調味液の製造
(ペントース添加型醤油様調味液の製造)
実施例2と同様に製造した殺菌無塩諸味に滅菌済み50%(w/v)グルコース溶液およびリボース又はキシロースを表5の終濃度(w/v)となるよう添加した。実施例2−1と同様に醤油酵母Z.rouxiiを添加し、さらに、市販酵素剤(エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼ)を終濃度0.1%(w/w)となるよう添加し、品温25℃で14日間発酵を行った。酵母発酵後の諸味を圧搾し、火入れ、オリ引きをして清澄な醤油様調味液を得た。
Figure 2016086700
表6に得られた醤油様調味液の成分分析値と風味評価の結果を示す。リボース又はキシロースを添加して発酵することにより、一般成分分析値はほとんど変化が無いものの、醤油らしい香りが増加し、品質が向上することが風味評価で確認された。このことから、無塩醤油様調味液のさらなる醤油感向上のためには、ペントース添加が有効であることが示唆された。
Figure 2016086700
4.脱塩醤油、市販濃口しょうゆ、市販無塩しょうゆとの比較
(脱塩醤油の調製)
蒸煮変性した脱脂大豆と割砕した焙煎小麦とを等量混合し、これに種麹を接種し、42時間通風製麹して醤油麹を得、これを食塩水に仕込み、25〜30℃で、適宜攪拌しながら150日間常法通りの諸味管理を行い、発酵熟成させた後、圧搾濾過して食塩濃度約18%(w/v)、全窒素濃度約1.7%(w/v)の生醤油を得た。
この生醤油を80℃で1時間火入れした後、清澄濾過した。さらに得られた醤油を電気透析装置(アストム社製)にて脱塩処理し、食塩濃度0.1%(w/v)、全窒素濃度約1.6%(w/v)、グルタミン酸濃度約0.9%(w/v)、pH4.7の脱塩醤油を得た。
(香気成分分析)
イソアミルアルコール、2−フェニルエタノール、イソブチルアルコール、およびHEMFの各濃度は、J.Agric.Food Chem.Vol.39,934,1991記載の定量分析法により実施した。より具体的には、ガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジーズ社製6890N)による分析を行い、標準物質を用いた検量線法により、各種香気成分含有量を決定した。
表7に各実施例区分(実施例1−4、2−1、2−2、2−4、3−1、3−2)の調味液と脱塩醤油、市販濃口しょうゆ(キッコーマン社製)、市販のアルコール仕込み醤油様調味液(市販無塩しょうゆ)の香気成分分析結果を示す。本発明の醤油様調味液はいずれも、全窒素濃度1%(w/v)あたりのイソアミルアルコール、2−フェニルエタノール、イソブチルアルコール濃度が、脱塩醤油や市販醤油よりも高い傾向にあり、それぞれ20ppm(w/v)、6ppm(w/v)、9ppm(w/v)以上の濃度を有する、風味の良好な無塩又は低塩の調味液であることが分かった。また、HEMF濃度に関しても、実施例2−1、2−2、2−4の調味液では、脱塩醤油や市販濃口しょうゆと同等の値となっており、醤油らしい風味もあわせ持っていることが確認された。
また、実施例3−1や3−2のようにペントースを添加して調製した無塩調味液では、HEMF濃度がさらに増加することが確認され、本発明の実施時にペントースを用いることで、醤油らしさを増大した調味液を得ることができることを確認した。
Figure 2016086700
(金属イオン濃度分析)
金属イオン濃度は、原子吸光光度計AA6300(島津製作所社製)を用い、Air−アセチレン炎による原子吸光分光分析によって行った。検量線は原子吸光分析用標準液(関東化学社製)を用いて作成した。
表8に実施例2−1の無塩醤油様調味液、4.で調製した脱塩醤油、市販無塩しょうゆの各金属イオン濃度を示す。本発明の無塩醤油様調味液は、他の醤油に比べ、極めてナトリウムイオン濃度が低かった。脱塩醤油は、カリウムイオン濃度は低いものの、電気透析の効率により、ナトリウムイオン濃度は比較的高い値であった。これらの結果から、本発明の無塩醤油様調味液は、従来の無塩又は低塩醤油様調味液よりもいっそうナトリウムイオン濃度が低く、食塩感受性高血圧の予防などの機能性に優れた調味液であることが示唆された。
Figure 2016086700
(官能評価)
官能評価は、訓練され、識別能力を有するパネリスト8名による評点法により実施した。すなわち、実施例1−4、2−1、2−2、3−1、3−2の各無塩調味液、実施例2−1のサンプルに終濃度8.5%(w/v)となるようアルコールを添加したサンプル、および市販無塩しょうゆについて、4.で調製した脱塩醤油と比較したときの、塩味強度、旨味強度、苦味強度、醤油感の強さ、嗜好性(好ましさ)について、強度が弱い/嗜好性が低いを1、やや強度が弱い/やや嗜好性が低いを2、強度が同じ/嗜好性が同じを3、やや強度が強い/やや嗜好性が高いを4、強度が強い/嗜好性が高いを5と評価した。
表9に各無塩調味液の官能評価試験の結果を示す。なお、表中の評点は8名のパネルの平均値である。本発明品である実施例2−1、2−2のサンプルは、脱塩醤油に比べ、旨味や嗜好性の向上が見られた。また、実施例3−1、3−2のサンプルでは、HEMFが増加したことによる醤油感の向上も併せて確認された。一方で、アルコールを添加したサンプルや市販無塩しょうゆはアルコール感が強く感じられ、好まれない傾向にあることが確認された。本発明品は全窒素やグルタミン酸濃度が高く、醤油らしい香りを有するとともに、アルコール濃度が通常の本醸造しょうゆ程度であることがさらに嗜好性を向上させる要因となっている。
Figure 2016086700
同様に、実施例2−4(食塩3%)、脱塩醤油に終濃度3%となるよう食塩を添加したサンプルで低塩調味液の官能評価を実施した(N=8)。結果を表10に示す。食塩濃度が3%である実施例2−4のサンプルでは、少量の食塩の存在により、塩味、旨味、醤油感、嗜好性が大幅に向上し、同濃度となるよう食塩を添加した脱塩醤油よりもバランスの良い調味液であるとの評価を得た。
Figure 2016086700
以上の結果より、本発明の醤油様調味液は、無塩又は低塩でありながら風味に優れており、脱塩醤油や市販無塩しょうゆ、脱塩醤油に食塩やアルコールを添加した醤油などよりも嗜好性が高いことが確認された。

Claims (3)

  1. 食塩濃度が4%(w/v)未満であり、全窒素濃度1.0%(w/v)あたり、イソアミルアルコール濃度が20ppm(w/v)以上、2−フェニルエタノール濃度が6ppm(w/v)以上、イソブチルアルコール濃度が9ppm(w/v)以上、およびHEMF濃度が10ppm(w/v)以上である醤油様調味液。
  2. ナトリウムイオン濃度が50ppm(w/v)以下である請求項1に記載の醤油様調味液。
  3. 下記の工程を含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の醤油様調味液の製造方法。
    工程1:大豆又は小麦を主原料とした穀物原料に、麹菌を接種して固体麹を調製し、水又は食塩水を加えて食塩濃度4%(w/v)未満の諸味を加温分解する工程
    工程2:工程1の諸味を殺菌する工程
    工程3:工程2の殺菌諸味に酵母を接種して危害微生物の混入を抑制できる容器で酵母発酵を行う工程
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