JP2016086112A - 六方晶フェライト複合磁性体、及びこれを用いた高周波磁性部品 - Google Patents

六方晶フェライト複合磁性体、及びこれを用いた高周波磁性部品 Download PDF

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Abstract

【課題】GHz帯を含む高周波において低tanδμと高μ´を備える六方晶フェライト複合磁性体、及びこれを用いた高周波磁性部品を提供する。【解決手段】六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体であって、複合磁性体に占める粉末の体積比率が50vol%以上80vol%以下であり、粉末の平均粒子径が5μm以上150μm以下、平均結晶粒径が0.5μm以上60μm以下、格子ひずみが0.010以上10以下である。また、M型六方晶フェライトであることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、数GHzの高周波での使用に適した六方晶フェライト複合磁性体、及びこの六方晶フェライト複合磁性体を用いたアンテナ、インダクタ、フィルタなどの高周波磁性部品に関する。
近年、携帯電話機や携帯情報端末等の無線通信機器に利用される周波数帯の高周波化が進行し、例えば無線LAN等で使用される2.4GHz帯など、使用される無線信号周波数はGHz帯となっている。そのため、そのようなGHz帯の高周波で使用される電子部品、例えば、インダクタ、電子機器の高周波ノイズ対策用として用いられるEMIフィルタ、無線通信機器に用いられるアンテナなどに対して、特性の改善や寸法の小型化を図る目的で、高透磁率、且つ低磁気損失な磁性材料を適用する試みがなされている。
特に小型化が求められる上記の電子部品に磁性材料を適用する場合、該磁性材料は、小型、且つ複雑形状に対応可能なスクリーン印刷、射出成形、押出し成形などのプロセスで作製できることが好ましい。この場合、磁性材料の形態としては、焼結体よりも、磁性粉末と樹脂を混合して作製される複合磁性体が適している。
GHz帯を含む高周波領域で使用可能な複合磁性体として、例えば、特許文献1には、絶縁材料で被覆されている扁平状の微粒子を含有することを特徴とする複合磁性材料、及びその製造方法について記載されている。
特許文献1によると、平均粒径0.25μmのパーマロイ磁性粉末をポリオレフィン樹脂中に分散させた複合材料において、1GHzでの比透磁率μが2.71、磁気損失tanδμが0.027となるとされている。
しかし、特許文献1は、パーマロイ粉末を樹脂中に均一に分散させることで、パーマロイ粉末の接触を抑制して、渦電流損失を低減させたものであるが、1GHzよりも高い周波数についてはtanδμの値は過大な値を取り、例えば2GHzにおいては0.1以上の値となるため、低磁気損失な軟磁性材料の適用という見地からは好ましくない。
また、特許文献2には、本出願人によりCo置換型W型六方晶フェライトを主相とする磁性酸化物が樹脂中に分散されて複合化されたことを特徴とする複合磁性材料及びアンテナ、並びに無線通信機器について記載されている。
この特許文献2によると、磁性酸化物としてスピネルフェライトよりも自然共鳴周波数が高周波となる六方晶フェライトを用い、さらに該磁性酸化物の粒子径を1μm以下の単磁区粒子とすることで、2GHzにおけるtanδμの値が0.01となるとしている。
しかし、特許文献2では、2GHzにおけるtanδμの値は小さいものの、複素透磁率の実部μ´は1.4程度であり、高透磁率な磁性材料の適用という見地から、μ´としてより高い値が望まれる。
特開2009−249673号公報 特開2010−238748号公報
そこで、本発明はかかる事情に鑑み、GHz帯を含む高周波において低tanδμと高μ´を備える六方晶フェライト複合磁性体、及びこれを用いた高周波磁性部品を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の六方晶フェライト複合磁性体は、六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体であって、該複合磁性体に占める前記粉末の体積比率が50vol%以上80vol%以下であり、前記粉末の平均粒子径が5μm以上150μm以下、平均結晶粒径が0.5μm以上60μm以下、格子ひずみが0.010以上10以下であることを特徴とする六方晶フェライト複合磁性体とする。
また、本発明の上記六方晶フェライトは、M型六方晶フェライトであることが好ましい。M型六方晶フェライトは他の六方晶フェライトと比較して六方晶のc軸方向の異方性磁界Hが大きいため、f=γH/2π(γはジャイロ磁気定数)で表される自然共鳴周波数fが高周波化し、高周波の磁気損失がより低減される。
さらに、本発明の上記M型六方晶フェライトは、MAαFe12−β(MB1−γMCγβ19(式中、MAはBa、Sr、及びCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、MBは、Ti、Zr及びSnからなる群より選択される少なくとも一種であり、MCはNi、Zn、Mn、Mg、Cu及びCoからなる群より選択される少なくとも一種であり、αは0.8以上1.2以下、βは1.5以上6.0以下、γは0.48以上0.55以下である)で表されるM型六方晶フェライトであることがより好ましい。該組成のM型六方晶フェライトを用いることで、MAFe1219で表される一般的なM型六方晶フェライトよりもHが減少してfが低周波されるものの、μ=4πM/H(Mは飽和磁化)で表される高周波での磁化回転に伴うμ´は高められる。そのため上記組成のMA、MBMCα、β、及びγを適宜調整することにより、低tanδμを維持しつつ、所望の周波数におけるμ´を最大限に高めることができる。
また、本発明による高周波磁性部品は、本発明による前述の六方晶フェライト複合磁性体を用いることを特徴とし、例えば、インダクタや、ノイズ対策用として用いられるEMIフィルタ、無線通信機器に用いられるアンテナとして電子機器あるいは無線通信機器内で使用される。
本発明によれば、GHz帯の高周波において、低磁気損失と高透磁率を備えた六方晶フェライト複合磁性体、及びこれを用いた高周波磁性部品を提供することができる。本発明の六方晶フェライト複合磁性体を高周波用のインダクタ、EMIフィルタ、アンテナなどの磁性材料として適用することにより、それら電子部品の小型化、高性能化を図ることが可能となる。
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
本実施形態の六方晶フェライト複合磁性体は、該複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%以上80vol%以下である。体積比率をそのような範囲に限定することで、六方晶フェライト複合磁性体のGHz帯の高周波における磁気特性を、高μ´、且つ低tanδμとすることが可能となる。体積比率が50vol%未満の場合、六方晶フェライトを主相とする粉末の備える磁気特性が十分に発揮されず、六方晶フェライト複合磁性体のμ´が小さくなる。一方、体積比率が80vol%よりも大きい場合、上記粉末と樹脂の混合が困難となり、複合磁性体中に空隙等の欠陥が発生するため、tanδμが増加する。
本実施形態の六方晶フェライトを主相とする粉末は、製造過程のばらつき等により、Fe等の異相が粉末に生成する場合があり得る。したがって、本実施形態に係る六方晶フェライトを主相とする粉末は、六方晶フェライトを主相とするが、上述したような異相を含むことも許容する。
ただし、異相の存在に伴ってGHz帯の高周波領域におけるtanδμが増加することを防ぐため、六方晶フェライトの比率は95%以上であることが好ましい。ここで六方晶フェライトの比率とは、本実施形態に係る六方晶フェライトを主相とする粉末を構成する各相のX線回折(XRD)測定におけるメインピーク(強度が最も強いピーク)の強度の合計に対する六方晶フェライトのメインピ−ク強度の合計の割合である。
本実施形態の六方晶フェライトを主相とする粉末は、平均粒子径が5μm以上150μm以下である。平均粒子径をそのような範囲内に限定することで、上記粉末を樹脂中に十分に混合、分散させることができるため、六方晶フェライト複合磁性体のGHz帯の高周波におけるtanδμを低い値とすることができる。平均粒子径が5μm未満の場合、上記粉末を樹脂中に混合する際の粘度が著しく増加して分散が不十分となるため、tanδμが大きくなる。一方、平均粒子径が150μmよりも大きい場合、上記粉末が樹脂中で沈降して分散が不十分となるため、tanδμが大きくなる。平均粒子径は、六方晶フェライト複合磁性体中の上記粉末の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、粒子と同一の面積を持つ円の直径の長さ(Heywood径)を求め、その平均値を平均粒子径とすることができる。
本実施形態の六方晶フェライトを主相とする粉末は、平均結晶粒径が0.5μm以上60μm以下である。平均結晶粒径をそのような範囲に限定することで、上記粉末のGHz帯の高周波における磁気特性を高μ´、且つ低tanδμとすることができるため、六方晶フェライト複合磁性体のGHz帯の高周波における磁気特性も高μ´、且つ低tanδμとすることが可能となる。平均結晶粒径が0.5μm未満の場合、粒界相の増加に伴って磁区及び磁壁も増加するため、磁壁共鳴に起因するtanδμが増加する。一方、平均結晶粒径が60μmよりも大きい場合、fのピークが低周波化してtanδμが増加する。平均結晶粒径は、六方晶フェライト複合磁性体中の上記粉末の結晶粒を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、結晶粒の面積と同一の面積を持つ円の直径の長さ(Heywood径)を求め、その平均値を平均結晶粒径とすることができる。
本実施形態の六方晶フェライトを主相とする粉末は、格子ひずみが0.010以上10以下である。格子ひずみをそのような範囲に限定することで、上記粉末のGHz帯の高周波における磁気特性を高μ´、且つ低tanδμとすることができ、六方晶フェライト複合磁性体のGHz帯の高周波における磁気特性も高μ´、且つ低tanδμとすることが可能となる。格子ひずみが0.010未満の場合、より高μ´とすることはできるものの、tanδμも増加する。通常格子ひずみの減少に伴い、格子欠陥が減少することでtanδμも減少することが予想される。ところが、このようにGHz帯の高周波においてtanδμが増加するのは、fピークが低周波化することが原因と考えられる。格子ひずみが10よりも大きい場合、透磁率に関係する磁化回転がひずみの影響を受けるため、tanδμは増加し、μ´は減少する。格子ひずみは、例えば、XRD測定の結果を基に、以下の[式1]で表されるHallの式を用いて測定される。
[式1]
Figure 2016086112
ここでθはブラッグ回折角、βは回折ピークの半値幅、λはX線波長、ηは格子ひずみ、Dは結晶子径であり、格子ひずみは、sinθ/λを横軸、βcosθ/λを縦軸としてXRD測定の結果をプロットし、直線近似することによって得られる勾配から計算される。本実施形態で用いる六方晶フェライトを主相とする粉末においては、Dは十分に大きいため1/D≒0とし、実際には[式1]を以下の[式2]で置き換えて算出されるηを格子ひずみとすることができる。
[式2]
Figure 2016086112
また、本実施形態の六方晶フェライトは、六方晶フェライトとしてM型六方晶フェライトを用いることが好ましい。M型六方晶フェライトはHが高い値を取るため、fが高周波化し、GHz帯のtanδμをより低い値にすることが可能となる。
さらに、本実施形態の六方晶フェライトは、MAαFe12−β(MB1−γMCγβ19(式中、MAはBa、Sr、及びCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、MBは、Ti、Zr及びSnからなる群より選択される少なくとも一種であり、MCはNi、Zn、Mn、Mg、Cu及びCoからなる群より選択される少なくとも一種であり、αは0.8以上1.2以下、βは1.5以上6.0以下、γは0.48以上0.55以下である)で表されるM型六方晶フェライトを用いることがより好ましい。そのような組成式で表されるM型六方晶フェライトにおいてはHが効果的に調整されてμ´が高められるため、低tanδμを維持しつつ、μ´をより高い値とすることが可能となる。
本実施形態の六方晶フェライト複合磁性体は、樹脂中に六方晶フェライトを主相とする粉末を混合することにより作製される。上記粉末の作製方法は焼結体を粉砕して作製する他、CVD法、メカノケミカル法、または水熱合成法や共沈法などの液相合成法などにより作製したものであってもよい。焼結体を粉砕して六方晶フェライトを主相とする粉末を作製する場合、例えば、次のようなプロセスで作製することが可能である。
まず、所望の組成となるように原料となる炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)等を秤量し、ボールミル等の混合手段によって所定の時間配合し、配合粉を得る。電気炉等を用いて配合粉を大気中で適宜の温度、且つ適宜の時間仮焼し、仮焼粉を得る。仮焼粉を振動ミルやボールミル等を用いて所定の時間粉砕する。得られた仮焼後の粉砕粉にPVAなどのバインダーを添加した後、スプレイドライヤー等によって造粒することにより造粒粉を得る。プレス機等を用いてこの造粒粉を所定の圧力で加圧することにより、所望の形状に成形した後、電気炉等を用いて適宜の温度、且つ適宜の時間焼成を行い焼結体を得る。焼結体を振動ミルやボールミル等を用いて所定の時間粉砕して粉末とすることで、六方晶フェライトを主相とする粉末が完成する。
上記粉末の平均粒子径は、焼結体の粉砕条件を適宜制御することにより、5μmから150μmの範囲に限定することができる。例えば、粉砕に用いる振動ミルやボールミル等のメディアの量を増やすほど、また粉砕時間を長くするほど、平均粒子径は小さくなる傾向がある。また、上記粉末の平均結晶粒径は、焼結体作製時の焼成条件を適宜制御することにより、0.5μmから60μmの範囲に限定することができる。例えば、焼成の処理温度を高くするほど、また、処理時間を長くするほど、平均結晶粒径が大きくなる傾向がある。なお、SiO、CaCO、及びBiなどの副成分を所定の量だけ添加すると、結晶成長はより促進され、且つ結晶粒径が均一化し易くなる傾向がある。さらに、上記粉末の格子ひずみは、焼結体の粉砕条件、及びアニール条件を適宜制御することにより、0.010から10の範囲に限定することができる。例えば、粉砕時間を短くするほど、またアニール温度を高く、アニール時間を長くするほど格子ひずみは小さくなる傾向がある。
本実施形態の六方晶フェライト複合磁性体は上記粉末を、樹脂中に混合させることにより得られる。樹脂としてはエポキシ樹脂を用いるのが好ましいが、樹脂の種類はこれに限定されるものではなく、その他アクリル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、合成ゴム、天然ゴム等を用いてもよい。また、必要に応じてカップリング剤、分散剤等の表面処理剤、熱安定剤、可塑剤等の添加剤等を用いてもよい。
本実施形態の六方晶フェライト複合磁性体は、焼結体とは異なり、材料作製時の形状の自由度が高いため、小型、且つ複雑形状に対応可能なスクリーン印刷、射出成形、押出し成形などのプロセスを用いて作製することができる。
本実施形態の高周波磁性部品は、磁性材料として上記六方晶フェライト複合磁性体を用いる。上記六方晶フェライト複合磁性体は、GHz帯を含む高周波において低tanδμ、且つ高μ´となることから、高周波で使用されるインダクタ、EMIフィルタ、アンテナ等の高周波磁性部品に好適である。
次に、上述した実施形態をより具体的に実施した実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。表1に、実施例、及び比較例に係るY型六方晶フェライト、W型六方晶フェライト、M型六方晶フェライト、金属、及びスピネルフェライトを粉末として用いた複合磁性体について、粉末の組成、体積比率、平均粒子径、平均結晶粒径、格子ひずみ、及び3GHzでのμ´とtanδμの評価結果を示す。
Figure 2016086112
(実施例1)
実施例1として、炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、及び酸化亜鉛(ZnO)を原料とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した。秤量後の原料を湿式ボールミルで水を媒体として16時間配合した後、大気中において1200℃で2時間仮焼した。得られた仮焼粉を振動ミルで10分間乾式粉砕した後、湿式ボールミルで水を媒体として24時間粉砕し、粉砕後の粉を150℃で24時間乾燥させて粉砕粉を得た。
次に、粉砕粉にバインダーとしてPVAを添加して造粒し、得られた造粒粉をプレス機により100MPaの圧力で成形して成形体とした。これを大気中1250℃で10時間保持する焼成を行い、焼結体を得た。この焼結体を瑪瑙乳鉢で適度に解砕した後、振動ミルで3分間乾式粉砕し、粉砕後の粉を850℃で1時間のアニール処理をして、表1の実施例1に示す組成のY型六方晶フェライトを主相とする粉末を得た。
上記粉末の平均粒子径は、上記焼結体の粉砕条件を適宜変えることにより調整することができる。例えば、振動ミルによる乾式粉砕に加えて、湿式ボールミル粉砕を行うことで平均粒子径をより細かくすることができ、粉砕時間を長くすることで平均粒子径をさらに細かくすることができる。また、上記粉末の平均結晶粒径は、焼成条件を適宜変えることにより調整することができる。例えば、焼成温度を高く、また焼成時間を長くすることで平均結晶粒径をより大きくすることができる。さらに、上記粉末の格子ひずみは、上記焼結体の粉砕条件及び粉砕後のアニール条件を適宜変えることにより調整することができる。例えば、乾式粉砕の時間を短くすることで格子ひずみの導入が抑制され、格子ひずみは小さくなる。また、アニール温度を高く、あるいはアニール時間を長くすることで格子ひずみは緩和され小さくなる。一方、振動ミルによる乾式粉砕に加えて湿式ボールミル粉砕を行い、さらにその粉砕時間を長くすることで格子ひずみの導入が促進され、格子ひずみは大きくなる。また、アニール温度が低く、アニール時間が短い場合は、格子ひずみは十分に緩和されず大きくなる。
次に、表1の実施例1に示す粉末の体積比率となるように上記粉末とビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を混合してペーストを作製した。得られたペーストを180℃で6時間保持して硬化させることにより、六方晶フェライト複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例1の六方晶フェライト複合磁性体は、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあるため、上記複合磁性体の3GHzでのμ´が1.50以上の大きい値であり、且つtanδμが0.010以下の小さい値となっている。
(実施例2)
実施例2では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、及び酸化コバルト(Co)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様の条件で、W型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例2の六方晶フェライト複合磁性体においても、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあるため、上記複合磁性体の3GHzでのμ´が1.50以上の大きい値であり、且つtanδμが0.010以下の小さい値となっている。
(実施例3)
実施例3では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、及び酸化スカンジウム(Sc)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例3の六方晶フェライト複合磁性体は、粉末がHの大きいM型六方晶フェライトであることから、fがより高められ、GHz帯のtanδμがより低減される。そのため、3GHzでのtanδμが0.005以下となっており、実施例1及び実施例2の値よりも小さい値となっている。
(実施例4)
実施例4では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化コバルト(Co)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例4の六方晶フェライト複合磁性体は、粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであり、Hが効果的に調整されるため、GHz帯のμ´がより高められる。そのため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上となっており、実施例1から実施例3の値よりも大きい値となっている。
(実施例5)
実施例5では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化ジルコニウム(ZrO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例5の六方晶フェライト複合磁性体においても、粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであるため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上の大きい値となっている。
(実施例6から実施例11)
実施例6から実施例11では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例6から実施例11の六方晶フェライト複合磁性体においても、粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであるため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上の大きい値となっている。
(実施例12、実施例13)
実施例12、実施例13では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び粉末の体積比率をそれぞれ50vol%、80vol%に変更したこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例12、実施例13の六方晶フェライト複合磁性体においても、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあり、且つ粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであるため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上の大きい値となっている。
(実施例14)
実施例14では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼結体の粉砕条件を振動ミルで10分間乾式粉砕した後、湿式ボールミルで水を媒体として8時間粉砕としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例14の六方晶フェライト複合磁性体においても、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあり、且つ粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであるため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上の大きい値となっている。
(実施例15)
実施例15では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼結体の粉砕条件を振動ミルで1分間乾式粉砕としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例15の六方晶フェライト複合磁性体においても、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあり、且つ粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであるため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上の大きい値となっている。
(実施例16)
実施例16では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び仮焼粉の粉砕条件を振動ミルで10分間乾式粉砕した後、湿式ボールミルで水を媒体として40時間粉砕としたこと、さらに焼成条件を大気中1200℃で10時間保持としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例16の六方晶フェライト複合磁性体においても、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあり、且つ粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであるため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上の大きい値となっている。
(実施例17)
実施例17では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼成条件を大気中1350℃で10時間保持としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例17の六方晶フェライト複合磁性体においても、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあり、且つ粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであるため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上の大きい値となっている。
(実施例18)
実施例18では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼結体の粉砕条件を振動ミルで2分間乾式粉砕としたこと、さらに焼結体粉砕粉のアニール条件を1000℃で2時間としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例18の六方晶フェライト複合磁性体においても、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあり、且つ粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであるため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上の大きい値となっている。
(実施例19)
実施例19では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼結体の粉砕条件を振動ミルで10分間乾式粉砕としたこと、さらに焼結体粉砕粉のアニールを行わなかったこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた実施例19の六方晶フェライト複合磁性体においても、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあり、且つ粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであるため、3GHzでのtanδμが0.005以下の十分小さい値に維持されたまま、μ´が1.60以上の大きい値となっている。
(比較例1)
比較例1として、平均粒子径10μm、平均結晶粒径3μm、格子ひずみ0.033であるFe粉とビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を粉末の体積比率が70vol%となるように混合してペーストを作製した。得られたペーストを180℃で6時間保持して硬化させることにより、Fe粉と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた比較例1の複合磁性体は、複合磁性体に占める粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあるものの、粉末の組成が六方晶フェライトではないため、fが低い値となり、上記複合磁性体の3GHzでのμ´は1.50未満の小さい値であり、且つtanδμは0.010よりも大きい値となっている。
(比較例2)
比較例2として、酸化鉄(Fe)、及び酸化ニッケル(NiO)を原料とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量した。秤量後の原料を湿式ボールミルで水を媒体として16時間配合した後、大気中において900℃で3時間仮焼した。得られた仮焼粉を湿式ボールミルで水を媒体として16時間粉砕した後、150℃で24時間乾燥させて粉砕粉を得た。
次に、粉砕粉にバインダーとしてPVAを添加して造粒し、得られた造粒粉をプレス機により100MPaの圧力で成形して成形体とした。これを大気中において1200℃で3時間保持する焼成を行い焼結体を得た。この焼結体を瑪瑙乳鉢で適度に解砕した後、振動ミルで3分間乾式粉砕し、粉砕後の粉を850℃で1時間のアニール処理をして、表1の比較例2に示す組成のスピネル型フェライトを主相とする粉末を得た。
次に、表1の比較例2に示す粉末の体積比率となるように上記粉末とビスフェノールF型液状エポキシ樹脂を混合してペーストを作製した。得られたペーストを180℃で6時間保持して硬化させることにより、スピネル型フェライト複合磁性体を得た。このようにして得られた比較例2の複合磁性体は、複合磁性体に占める粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にあるものの、粉末の組成が六方晶フェライトではないため、fが低い値となり、上記複合磁性体の3GHzでのμ´は1.50未満の小さい値であり、且つtanδμは0.010よりも大きい値となっている。
(比較例3、比較例4)
比較例3、比較例4では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び粉末の体積比率をそれぞれ45vol%、85vol%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた比較例3、比較例4の六方晶フェライト複合磁性体は、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲に入っておらず、上記体積比率が50vol%よりも小さい比較例3においては、3GHzでのμ´が1.50よりも小さい値となり、上記体積比率が80vol%よりも大きい比較例4においては、3GHzでのtanδμが0.010よりも大きい値となっている。
(比較例5)
比較例5では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼結体の粉砕条件を振動ミルで10分間乾式粉砕した後、湿式ボールミルで水を媒体として12時間粉砕としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた比較例5の六方晶フェライト複合磁性体は、上記粉末の平均粒子径が5μmよりも小さい値となっており、上記平均粒子径が5μmから150μmの範囲に入っていないため、3GHzでのtanδμが0.010よりも大きい値となっている。
(比較例6)
比較例6では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼結体の粉砕条件を振動ミルで50秒間乾式粉砕としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた比較例6の六方晶フェライト複合磁性体は、上記粉末の平均粒子径が150μmよりも大きい値となっており、上記平均粒子径が5μmから150μmの範囲に入っていないため、3GHzでのtanδμが0.010よりも大きい値となっている。
(比較例7)
比較例7では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び仮焼粉の粉砕条件を振動ミルで10分間乾式粉砕した後、湿式ボールミルで水を媒体として48時間粉砕としたこと、さらに焼成条件を大気中1200℃で10時間保持としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた比較例7の六方晶フェライト複合磁性体は、上記粉末の平均結晶粒径が0.5μmよりも小さい値となっており、上記平均結晶粒径が0.5μmから60μmの範囲に入っていないため、3GHzでのtanδμが0.010よりも大きい値となっている。
(比較例8)
比較例8では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼成条件を大気中1380℃で12時間保持としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた比較例8の六方晶フェライト複合磁性体は、上記粉末の平均結晶粒径が60μmよりも大きい値となっており、上記平均結晶粒径が0.5μmから60μmの範囲に入っていないため、3GHzでのtanδμが0.010よりも大きい値となっている。
(比較例9)
比較例9では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼結体の粉砕条件を振動ミルで2分間乾式粉砕としたこと、さらに焼結体粉砕粉のアニール条件を1100℃で2時間としたこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた比較例9の六方晶フェライト複合磁性体は、上記粉末の格子ひずみが0.010よりも小さい値となっており、上記格子ひずみが0.010から10の範囲に入っていないため、3GHzでのtanδμが0.010よりも大きい値となっている。
(比較例10)
比較例10では、原料を炭酸バリウム(BaCO)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)、及び酸化マンガン(Mn)とし、これらを表1に示す所定の組成となるように秤量したこと、及び焼結体の粉砕条件を振動ミルで15分間乾式粉砕としたこと、さらに焼結体粉砕粉のアニールを行わなかったこと以外は実施例1と同様の条件で、M型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体を得た。このようにして得られた比較例10の六方晶フェライト複合磁性体は、上記粉末の格子ひずみが10よりも大きい値となっており、上記格子ひずみが0.010から10の範囲に入っていないため、3GHzでのtanδμが0.010よりも大きい値であり、且つμ′が1.50よりも小さい値となっている。
(平均粒子径、及び平均結晶粒径)
複合磁性体表面を研磨、フッ酸(濃度36%)エッチング後に走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)製、JSM−6340F)で観察し、N=100個の粒子径、及び結晶粒径をそれぞれ平均することにより、平均粒子径、及び平均結晶粒径を求めた。その際、各粒子、及び各結晶粒それぞれの面積と同一の面積を持つ円の直径の長さをそれぞれ粒子径、及び結晶粒径とした(Heywood径)。
(格子ひずみ)
複合磁性体のX線回折(XRD)測定((株)リガク製、RINT−2500)を行い、2θが20°から65°の範囲で観測される回折ピークについて、それぞれブラッグ回折角θ、回折ピークの半値幅βから、格子ひずみをη=β/(2tanθ)により求め、得られた値を平均して格子ひずみとした。
(複素透磁率の実部μ´、及び磁気損失tanδμ
3GHzの複素透磁率の実部μ´、及び磁気損失tanδμは、1mm×1mm×80mmの棒状に加工した試験片を使用し、ネットワークアナライザ(アジレント・テクノロジー(株)製、HP8753D)と空洞共振器((株)関東電子応用開発製)を用いた摂動法により測定した。
表1の結果から分かるように、実施例1から実施例19に係る六方晶フェライト複合磁性体は、いずれも3GHzのtanδμが0.010以下であり、且つμ´が1.50以上となっている。これらの六方晶フェライト複合磁性体は全て、複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%から80vol%の範囲にあり、上記粉末の平均粒子径が5μmから150μm、平均結晶粒径が0.5μmから60μm、さらに格子ひずみが0.010から10の範囲にある。そのため、fが十分に高いことからGHz帯のtanδμが低められ、且つ六方晶フェライトを主相とする粉末が樹脂中に十分に含まれていることから、μ´が高められたと考えられる。
実施例3に係る六方晶フェライト複合磁性体は、tanδμが0.005以下の値となっており、実施例1及び実施例2に係る六方晶フェライト複合磁性体と比較して、より低いtanδμが達成されている。これは、この実施例に係る六方晶フェライト複合磁性体の粉末の組成がM型六方晶フェライトであるため、実施例1のY型六方晶フェライト及び実施例2のW型六方晶フェライトと比較してHがより大きいことから、fがより高められたことが原因であると考えられる。
実施例4から実施例19に係る六方晶フェライト複合磁性体は、μ´が1.60以上の値となっており、実施例1から実施例3に係る六方晶フェライト複合磁性体と比較して、より高いμ´が達成されている。これは、この実施例に係る六方晶フェライト複合磁性体の粉末がMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトであり、低いtanδμが維持されつつ、Hが効果的に調整されてμ´がより高められたことが原因であると考えられる。
比較例1、比較例2に係る金属、またはスピネルフェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体は、いずれも3GHzのtanδμが0.010よりも大きく、且つμ´が1.50未満となっている。これらの複合磁性体は、fが低い金属、またはスピネルフェライトが複合磁性体の粉末として用いられているため、3GHzまで低いtanδμと高いμ´を維持することができなかったと考えられる。
比較例3から比較例10に係るMAαFe12−β(MB1−γMCγβ19で表されるM型六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体は、いずれも3GHzでのtanδμが0.010よりも大きくなっているか、またはμ´が1.50未満となっている。これらは複合磁性体に占める六方晶フェライトを主相とする粉末の体積比率が50vol%未満であること、または80vol%よりも高いこと、上記粉末の平均粒子径が5μm未満であること、または150μmよりも大きいこと、平均結晶粒径が0.5μm未満であること、または60μmよりも大きいこと、あるいは格子ひずみが0.010未満であること、または10よりも大きいことなどを理由に、3GHzまで低いtanδμ、または高いμ´のいずれかを維持することができなかったと考えられる。
以上説明した通り、本発明の六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体は、3GHzの高い周波数で0.010以下の低いtanδμを維持しつつμ´を1.50以上とすることができる。そのため、本発明による複合磁性体を用いることにより、例えば、数GHzの高周波で使用可能なインダクタ、EMIフィルタ、アンテナなどを提供することができる。

Claims (4)

  1. 六方晶フェライトを主相とする粉末と樹脂を含む複合磁性体であって、該複合磁性体に占める前記粉末の体積比率が50vol%以上80vol%以下であり、前記粉末の平均粒子径が5μm以上150μm以下、平均結晶粒径が0.5μm以上60μm以下、格子ひずみが0.010以上10以下であることを特徴とする六方晶フェライト複合磁性体。
  2. 前記六方晶フェライトが、M型六方晶フェライトであることを特徴とする請求項1に記載の六方晶フェライト複合磁性体。
  3. 前記六方晶フェライトが、MAαFe12−β(MB1−γMCγβ19(式中、MAはBa、Sr、及びCaからなる群より選択される少なくとも一種であり、MBは、Ti、Zr及びSnからなる群より選択される少なくとも一種であり、MCはNi、Zn、Mn、Mg、Cu及びCoからなる群より選択される少なくとも一種であり、αは0.8以上1.2以下、βは1.5以上6.0以下、γは0.48以上0.55以下である)で表されるM型六方晶フェライトであることを特徴とする請求項1または2に記載の六方晶フェライト複合磁性体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の六方晶フェライト複合磁性体を用いることを特徴とする高周波磁性部品。
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