JP2008184364A - 酸化物磁性材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 焼成は上限でも950℃以下にでき、高周波帯域でのコアロスを低値にできて少なくとも25〜80℃の温度範囲で十分な磁気特性を確保でき、透磁率を高く得られて積層チップ部品等の磁性体材料へ好ましく適用できる酸化物磁性材料を提供すること
【解決手段】 主成分はFe2O3が45〜50mol%,ZnOが10〜32mol%,CuOが5〜15mol%であり残部をNiOとし、副成分はMgOがNiの20%以下,TiO2が0.1〜0.5wt%含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換し、上限でも950℃以下の温度により焼成する。これによる焼結体は、混合した各材料の特質を相互に作用させたものとなり、材質特性は、周波数1000kHz,飽和磁束密度30mT,温度25℃でのコアロスは400kW/m3程度に小さくなり、温度80℃においてもコアロスは600kW/m3程度に抑え得るものとなる。
【選択図】 図1
【解決手段】 主成分はFe2O3が45〜50mol%,ZnOが10〜32mol%,CuOが5〜15mol%であり残部をNiOとし、副成分はMgOがNiの20%以下,TiO2が0.1〜0.5wt%含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換し、上限でも950℃以下の温度により焼成する。これによる焼結体は、混合した各材料の特質を相互に作用させたものとなり、材質特性は、周波数1000kHz,飽和磁束密度30mT,温度25℃でのコアロスは400kW/m3程度に小さくなり、温度80℃においてもコアロスは600kW/m3程度に抑え得るものとなる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、Fe,Ni,Znを含むNi系の酸化物磁性材料に関するもので、より具体的には、積層インダクタや積層コモンモードチョークコイル等の積層チップ部品に適用するためコアロスを低減するようにしたものにおける温度特性の改良に関する。
酸化物磁性材料に関して、Mn−Zn系フェライトやNi−Zn系フェライトがよく知られている。Mn−Zn系フェライトは、コアロスが小さく飽和磁束密度が高いことから、スイッチング電源などのコア材料に好んで使われているが、比抵抗が小さいため高周波での渦電流損失が大きくなる欠点があり、高周波帯域での用途には使用しない傾向にある。Ni−Zn系フェライトは、比抵抗が大きいという特徴から高周波帯域での渦電流損失を小さくでき、高周波用のコア材料に用いることが多く、いわゆる通信用の用途など例えば積層インダクタといった積層チップ部品の用途がある。
積層チップ部品の用途では、フェライト材料による磁性体膜と導体材料による導体パターンとを適宜な順に積層し、積層体は同時一体に焼成する製造方法を採っている。これは生産性の向上および小型化のためであるが、この場合、導体膜層の融点よりも低い温度で焼成を行う必要があり、比較的に低温度でも焼成が行えて焼結性が良好であることが求められる。導体材料にはAgあるいはAg化合物を用いることから、焼成は上限でも950℃以下の温度で行うことになり、これには組成および製造方法において調整,工夫が必要になる。例えば特許文献1などには低温化焼成の観点で技術の提案があり、MgCuZnフェライトについて組成の開示がある。
また、近年は電子機器の小型化,高性能化の要求から信号をますます高周波数化する傾向があり、このためフェライト材料にあっても、より高い周波数帯域において良好な磁気特性を示すもの、つまり、より高周波側についてコアロスが低値であり透磁率が高いものが求められている。この点の改善については、例えば特許文献2,3などに見られるような技術の提案があり、Niを含む組成においてTi,Cu等の添加を適宜に調整することにより磁気特性を改善するようにしている。
ところで、積層インダクタ等の積層チップ部品は、当然ながら他の電子部品とともに回路基板へ実装し、それらと同一環境において使用することになる。そして、近年は上述したように小型化,高性能化の要求から回路基板への実装は高密度化してきており、高効率化の動作設定を採るため発熱が大きく比較的に高温環境で働かせる傾向にある。
このため、フェライト材料は、高周波帯域での磁気特性が良好なことなもちろん、それらの温度特性が重要となり、高温でもコアロスが小さく、高温域に達して良好な磁気特性を示すものを必要としている。そこで、温度範囲は他の電子部品と少なくとも同等程度は確保したく、常温25℃から80℃程度の温度範囲でコアロスに悪化がなく、透磁率が十分に高く得られることが求められる。
この発明は上述した課題を解決するもので、その目的は、焼成は上限でも950℃以下の温度で行うことができ、高周波帯域においてコアロスを低値にできて少なくとも25〜80℃の温度範囲で十分な磁気特性を確保することができ、透磁率を高く得ることができ、積層チップ部品等の磁性体材料へ好ましく適用できる酸化物磁性材料を提供することにある。
上述した目的を達成するために、本発明に係る酸化物磁性材料は、Ni,Cu,Znを含むNiCuZn系の酸化物磁性材料であって、主成分は
Fe2O3が45〜50mol%,
ZnOが10〜32mol%,
CuOが5〜15mol%であり
残部をNiOとし、副成分は
MgOがNiの20%以下,
TiO2が0.1〜0.5wt%
含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換し、上限でも950℃以下の温度により焼成する。
Fe2O3が45〜50mol%,
ZnOが10〜32mol%,
CuOが5〜15mol%であり
残部をNiOとし、副成分は
MgOがNiの20%以下,
TiO2が0.1〜0.5wt%
含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換し、上限でも950℃以下の温度により焼成する。
また、低温での焼結性を上げる添加剤として、導体材料のAgあるいはAg化合物等とは化学反応を比較的に起こしにくい元素であってLi,Mo,B,Vなどを添加するように構成するとよい。
本発明では、Fe2O3,ZnO,CuO,NiOおよびMgO,TiOを上述した所定の配合比とすることにより、得られた焼結体は、高周波でのコアロスが小さくなり、広い温度範囲において透磁率を高く得ることができる。上述した本発明に係る組成は実験から見いだした結果であるが、MgによるNiの置換により透磁率を増大でき、Tiの添加によりコアロスの悪化を補正できる作用がある。焼結体の材質特性は、周波数1000kHz,飽和磁束密度30mT,温度25℃でのコアロスは400kW/m3程度に小さくなり、温度80℃においてもコアロスは600kW/m3程度に抑え得ることを確認した。
すなわち、本発明に係る組成にあっては、Niを含むフェライト組成に対してMg,Tiの添加がきわめて適正値となっており、混合した各材料の特質を相互に作用させることができ、磁気特性を良好に得ることができる。
本発明に係る酸化物磁性材料では、主成分はFe2O3が45〜50mol%,ZnOが10〜32mol%,CuOが5〜15mol%であり残部をNiOとし、副成分はMgOがNiの20%以下,TiO2が0.1〜0.5wt%含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換するので、これによる焼結体(酸化物磁性材料)は、混合した各材料の特質を相互に作用させたものとなる。
焼結体の材質特性は、周波数1000kHz,飽和磁束密度30mT,温度25℃でのコアロスは400kW/m3程度に小さくなり、温度80℃においてもコアロスは600kW/m3程度に抑え得るものとなる。したがって、高周波帯域においてコアロスを低値にできて少なくとも25〜80℃の温度範囲で十分な磁気特性を確保することができ、透磁率を高く得ることができる。この場合、焼成は上限でも950℃以下の温度で行うことができ、その結果、積層チップ部品等の磁性体材料へ好ましく適用できる。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。本発明に係る酸化物磁性材料は、酸化第二鉄(Fe2O3),酸化亜鉛(ZnO),酸化銅(CuO),酸化ニッケル(NiO)等を主成分とし、Fe,Ni,Znを含むNi系フェライトの組成になっている。具体的には、主成分は
Fe2O3が45〜50mol%,
ZnOが10〜32mol%,
CuOが5〜15mol%であり
残部をNiOとし、副成分は
MgOがNiの20%以下,
TiO2が0.1〜0.5wt%
含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換するようになっている。
Fe2O3が45〜50mol%,
ZnOが10〜32mol%,
CuOが5〜15mol%であり
残部をNiOとし、副成分は
MgOがNiの20%以下,
TiO2が0.1〜0.5wt%
含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換するようになっている。
焼成は上限でも950℃以下の温度により行い、低温での焼結性を上げる添加剤として、導体材料のAgあるいはAg化合物等とは化学反応を比較的に起こしにくい元素を選び、例えばLi,Mo,B,Vなどを添加する。低温化焼成のための添加剤は、AgあるいはAg化合物等とは反応が不活性な元素を選定しても焼成温度が低温では化学反応が進みがちになるので、むやみと量を増すことはできず、適切な添加量に調整することが好ましい。
製造には、まず上述した各原料成分を所定量秤量して湿式混合する。このとき、低温化焼成のための添加剤はまだ添加しない秤量とし、例えばボールミルで粉砕しつつ混ぜて混合紛体を製造し、これを乾燥させて解砕し、次に仮焼きする。仮焼きは、例えば電気炉を使用して大気中で温度を700℃程度とする。
次にボールミル等によりそれを再び粉砕し、粉砕は所定時間行う。この粉体に対して、上述した低温化焼成のための添加剤を所定に添加し、そしてボリビニルアルコール(PVA)を加えてスラリを形成し、スプレードライにより造粒して所定粒径の粉体を得る。
次に、造粒した紛体に成形のための圧力を加えて、例えばリング形状に成形し、この後、ガス炉等で焼成を行う。焼成は、例えば大気中で温度を上限でも950℃以下とし、所定時間の焼成により焼結体を製造する。得られた焼結体にバレル研磨等の仕上げ加工を施し、形状,寸法を所定に加工した酸化物磁性材料を得る。
この焼結体は、平均結晶粒子径が所定値となるように製造しており、これは各原料の均一化および高精度な秤量制御、焼成工程における高精度制御など、製造工程の全般についての精緻化により実現している。
Niを含むフェライト組成において、結晶粒子の多くはNiZnによるものとなるが、Mgを加えて置換することでは、粒界の一部にMgZnによる結晶粒子が存在する構造となる。MgZn結晶粒子は磁歪定数がNiZn結晶粒子よりも小さく透磁率が高くなり、このため焼結体の全体において透磁率を増大させることができる。このMg置換にあってはコアロスは増大する特性を示すことから補正が必要になり、補正のためにTiを添加している。
Tiを添加することでは、磁歪が正へ移動するのでコアロスを低減させることができる。しかし、Tiの添加量が増すと、より高温側でのコアロスが大きくなり、焼結性を悪化させる問題を起こす。焼結性を上げるためLi,Mo,B,V等の添加剤を添加するが、上述した理由からむやみと量を増すことはできなく、適切な添加量に調整することになる。
ここに本発明に係る組成にあっては、Niを含むフェライト組成に対してMg,Tiの添加がきわめて適正値となっており、混合した各材料の特質を相互に作用させることができ、磁気特性を良好に得ることができる。
具体的には後述する実施例に示すように、本発明に係る組成による焼結体は、材質特性が、周波数1000kHz,飽和磁束密度30mT,温度25℃でのコアロスは400kW/m3程度に小さくなり、温度80℃においてもコアロスは600kW/m3程度に抑え得るようになっている。したがって、高周波帯域においてコアロスを低値にできて少なくとも25〜80℃の温度範囲で十分な磁気特性を確保することができ、透磁率を高く得ることができる。この場合、焼成は上限でも950℃以下の温度で行うことができ、その結果、積層チップ部品等の磁性体材料へ好ましく適用できる。
上述した製造手順により試料を製造した。つまり、本発明の効果を実証するため、組成を変更して複数の試料を製造し、それら各試料についてコアロス,透磁率μ,密度,最大磁束密度(Bs)等の評価を行った。
試料は表1に示すように、組成を変更した22の試料とし、外形をリング形状(外径25mm,内径15mm,高さ5mm)のものとした。主成分の配合は、Fe2O3は45〜50mol%,ZnOは10〜32mol%,CuOは5〜15mol%の範囲内として残部はNiOとし、副成分にはMgO,TiO2を加えており、MgOはNiOに対して0〜25%の範囲で変更し、TiO2は0〜0.6wt%の範囲で変更し、そして、焼成温度を低温化するための添加剤として、リチウム(Li),バナジウム(V),モリブデン(Mo),ホウ素(B),ビスマス(Bi)をそれぞれ0.15wt%添加する設定とし、これらの組み合わせから少なくとも22以上の試料を用意した。
製造時の条件としては、仮焼きは大気中で700℃のトップ温度で行い、仮焼き後の粉砕はボールミルにより30時間の粉砕を行った。そして、リング形状の成形物に対して焼成は、大気中で900℃のトップ温度で行い、焼結体を得た。
コアロス(Pcv)の測定にはB−Hアナライザを使用し、周波数1000kHz,飽和磁束密度30mTの正弦波交流磁界を加えて励磁し、25℃から100℃の温度範囲について測定を行った。図1,2は、各試料についてコアロス(Pcv)の温度特性を示すグラフ図であり、図1はMg,Tiをパラメータにして成分調整した特性を示し、図2はLiをパラメータにして成分調整した特性を示している。
各試料についてコアロスを測定したところ、本発明に係る組成においては、各原料成分の特質を相互に作用させて好適な磁気特性を発現させることができ、良好な磁気特性が得られることを確認した。すなわち、主成分は
Fe2O3が45〜50mol%,
ZnOが10〜32mol%,
CuOが5〜15mol%であり
残部をNiOとし、副成分は
MgOがNiの20%以下,
TiO2が0.1〜0.5wt%
含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換し、トップ温度が900℃での焼成により得た焼結体では、周波数1000kHz,飽和磁束密度30mT,温度25℃でのコアロスは400kW/m3程度に小さくでき、温度80℃においてもコアロスは600kW/m3程度に抑えて良好な磁気特性が得られることを確認した。
Fe2O3が45〜50mol%,
ZnOが10〜32mol%,
CuOが5〜15mol%であり
残部をNiOとし、副成分は
MgOがNiの20%以下,
TiO2が0.1〜0.5wt%
含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換し、トップ温度が900℃での焼成により得た焼結体では、周波数1000kHz,飽和磁束密度30mT,温度25℃でのコアロスは400kW/m3程度に小さくでき、温度80℃においてもコアロスは600kW/m3程度に抑えて良好な磁気特性が得られることを確認した。
表2から明らかなように、Mgによる置換は量を増すほど透磁率μは高値を得ることができる。ただし、焼結体の密度,最大磁束密度BmはMg置換量を増すことに伴って低減し、密度が5.1×103kg/m3を下回るようでは強度不足となり、コア材料等へは使用が不可能になる。このため、Mg置換量は20%以下に設定することが好ましい。
Ti添加量に対して透磁率μの変化特性は、表3に示す結果となっている。図3はTi添加量と透磁率μとの関係を示すグラフ図であり、(a)はMg置換量が20%での特性、(b)はMg置換なしでの特性をそれぞれ示している。
表3,図3から明らかなように、Tiの添加では透磁率μは高くすることができ、しかし、添加量を増すことに伴い低下していく特性になっている。このため、Ti添加量は0.1〜0.5wt%に設定することが好ましい。
Claims (2)
- Fe,Ni,Znを含むNi系の酸化物磁性材料であって、主成分は
Fe2O3が45〜50mol%,
ZnOが10〜32mol%,
CuOが5〜15mol%であり
残部をNiOとし、副成分は
MgOがNiの20%以下,
TiO2が0.1〜0.5wt%
含有する組成としてNiの一部をMgO,TiO2により置換したことを特徴とする酸化物磁性材料。 - Li,Mo,B,V等の低温焼成材料を添加したことを特徴とする請求項1に記載の酸化物磁性材料。
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JP2007019566A JP2008184364A (ja) | 2007-01-30 | 2007-01-30 | 酸化物磁性材料 |
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---|---|---|---|---|
JP2013042040A (ja) * | 2011-08-18 | 2013-02-28 | Murata Mfg Co Ltd | コモンモードチョークコイルの製造方法及びコモンモードチョークコイル |
CN115180935A (zh) * | 2022-07-08 | 2022-10-14 | 西南应用磁学研究所(中国电子科技集团公司第九研究所) | 一种毫米波ltcf生瓷带制备方法 |
-
2007
- 2007-01-30 JP JP2007019566A patent/JP2008184364A/ja not_active Withdrawn
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CN115180935A (zh) * | 2022-07-08 | 2022-10-14 | 西南应用磁学研究所(中国电子科技集团公司第九研究所) | 一种毫米波ltcf生瓷带制备方法 |
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