[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図5を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド(以下、単に磁気ヘッドと記す。)の構成について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドは、垂直磁気記録用である。図1は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける記録ヘッド部を示す断面図である。図2は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成を示す断面図である。なお、図1および図2は媒体対向面および基板の上面に垂直な断面を示している。図2において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図3は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図4は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける第2のコイルを示す平面図である。図5は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける第1のコイルを示す平面図である。図3ないし図5において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、回転する記録媒体100(図2参照)の表面から浮上するスライダの形態を有している。記録媒体100が回転すると、記録媒体100とスライダとの間を通過する空気流によって、スライダに揚力が生じる。スライダは、この揚力によって記録媒体100の表面から浮上するようになっている。
図2に示したように、磁気ヘッドは、記録媒体100に対向する媒体対向面90を備えている。ここで、X方向、Y方向、Z方向を以下のように定義する。X方向は、トラック幅方向TWに平行な方向である。Y方向は、媒体対向面90に垂直な方向である。Z方向は、スライダから見た記録媒体100の進行方向である。X方向、Y方向、Z方向は互いに直交している。
図2および図3に示したように、磁気ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al2O3・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層71と、この絶縁層71の上に配置されたヒーター72と、絶縁層71およびヒーター72を覆うように配置された絶縁材料よりなる絶縁層73とを備えている。絶縁層71,73は、例えばアルミナ(Al2O3)によって形成されている。ヒーター72は、媒体対向面90の一部を突出させるための熱を発生する。
磁気ヘッドは、更に、ヒーター72に対して記録媒体100の進行方向Tの前側(トレーリング端側)に配置された再生ヘッド部91を備えている。再生ヘッド部91は、絶縁層73の上に配置された磁性材料よりなる第1の再生シールド層3と、第1の再生シールド層3の周囲において絶縁層73の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層74と、第1の再生シールド層3および絶縁層74の上に配置された絶縁膜である第1の再生シールドギャップ膜4と、この第1の再生シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5に接続された図示しない2つのリードとを有している。
MR素子5の一端部は、媒体対向面90に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
再生ヘッド部91は、更に、MR素子5およびリードの上に配置された絶縁膜である第2の再生シールドギャップ膜6と、この第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなる第2の再生シールド層7と、第2の再生シールド層7の周囲において第2の再生シールドギャップ膜6の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層75とを有している。
磁気ヘッドは、更に、再生ヘッド部91に対して記録媒体100の進行方向Tの前側に配置された記録ヘッド部92と、再生ヘッド部91と記録ヘッド部92の間に配置された膨張層76、センサ77および非磁性部80とを備えている。非磁性部80は、非磁性材料によって形成されている。非磁性部80の材料としては、例えばアルミナを用いることができる。
非磁性部80は、非磁性層81,82,83,84を有している。非磁性層81は、第2の再生シールド層7および絶縁層75の上に配置されている。膨張層76は、非磁性層81の上に配置されている。非磁性層82は、膨張層76の周囲において非磁性層81の上に配置されている。非磁性層83は、膨張層76および非磁性層82の上に配置されている。センサ77は、非磁性層83の上に配置されている。非磁性層84は、センサ77を覆うように配置されている。
記録ヘッド部92は、第1のコイル20と、第2のコイル10と、磁路構成部M1とを備えている。第1のコイル20と第2のコイル10は、いずれも銅等の導電材料によって形成されている。図2および図4において、符号10Eは、第2のコイル10のうち、第1のコイル20に接続されるコイル接続部を示している。図2および図5おいて、符号20Sは、第1のコイル20のうち、第2のコイル10のコイル接続部10Eに接続されるコイル接続部を示している。
記録ヘッド部92は、更に、それぞれ導電材料よりなり、コイル接続部10Eの上に順に積層された接続層25,26,27を備えている。コイル接続部20Sは、接続層27の上に配置されている。
第1のコイル20および第2のコイル10は、記録媒体100に記録する情報に応じた磁界を発生する。磁路構成部M1は、磁性材料よりなり、第1のコイル20および第2のコイル10によって発生された磁界に対応する磁束を通過させる磁路を構成する。本実施の形態では、磁路構成部M1は、主磁極15と、帰磁路部R1とを有している。図3に示したように、主磁極15は、媒体対向面90に配置された第1の端面15aを有している。帰磁路部R1は、媒体対向面90に配置された第2の端面R1aを有している。図1および図2に示したように、帰磁路部R1は、主磁極15に接続されている。主磁極15および帰磁路部R1は磁路構成部M1の一部であることから、磁路構成部M1が第1の端面15aおよび第2の端面R1aを有しているとも言える。磁路構成部M1は、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体100に記録するための記録磁界を第1の端面15aから発生させる。図1および図2は、第1の端面15aと交差し、媒体対向面90および基板1の上面1aに垂直な断面(以下、主断面と言う。)を示している。
図3に示したように、帰磁路部R1の第2の端面R1aは、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daを含んでいる。第1の端面部分16Aaは、第1の端面15aに対して記録媒体100の進行方向Tの前側に配置されている。第2の端面部分16Baは、第1の端面15aに対して記録媒体100の進行方向Tの後側に配置されている。第3および第4の端面部分16Ca,16Daは、第1の端面15aに対してトラック幅方向TWの両側に配置されている。媒体対向面90において、第1ないし第4の端面部分16Aa,16Ba,16Ca,16Daは、第1の端面15aの周りを囲むように配置されている。
主磁極15の材料としては、例えば、NiFe、CoNiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。帰磁路部R1の材料としては、例えばCoFeN、CoNiFe、NiFe、CoFeのいずれかを用いることができる。
また、帰磁路部R1は、第2の端面R1aを有する記録シールド16と、コア部32,42と、磁性層31,33,34,41,43,44とを含んでいる。磁性層31は、非磁性層84の上に配置されている。コア部32と磁性層33は、いずれも磁性層31の上に配置され、磁性層31によって連結されている。コア部32は、媒体対向面90から離れた位置に配置されている。磁性層33は、コア部32に対して間隔を開けてコア部32と媒体対向面90の間に配置されている。磁性層31,33は、それぞれ、媒体対向面90に配置された端面を有している。
記録ヘッド部92は、更に、磁性層31の周囲において非磁性層84の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層51を備えている。絶縁層51は、例えばアルミナによって形成されている。
図1、図2および図4に示したように、第2のコイル10は、帰磁路部R1の一部であるコア部32の周りに1回以上巻かれている。記録ヘッド部92は、更に、第2のコイル10を磁性層31,33およびコア部32に対して絶縁する絶縁材料よりなる第2の絶縁膜52と、第2のコイル10の巻線間ならびに第2のコイル10および磁性層33の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層53とを備えている。第2のコイル10、コア部32、磁性層33、第2の絶縁膜52および絶縁層53の上面は平坦化されている。第2の絶縁膜52および絶縁層53は、例えばアルミナによって形成されている。
図3に示したように、記録シールド16は、第1のシールド16Aと、第2のシールド16Bと、2つのサイドシールド16C,16Dとを有している。第1のシールド16Aは、主磁極15に対して記録媒体100の進行方向Tの前側に配置されている。第2のシールド16Bは、主磁極15に対して記録媒体100の進行方向Tの後側に配置されている。2つのサイドシールド16C,16Dは、主磁極15に対してトラック幅方向TWの両側に配置されて、第1のシールド16Aと第2のシールド16Bを磁気的に連結している。
図3に示したように、第1のシールド16Aは、第1の端面部分16Aaを有している。第2のシールド16Bは、第2の端面部分16Baを有している。サイドシールド16Cは、第3の端面部分16Caを有している。サイドシールド16Dは、第4の端面部分16Daを有している。
第2のシールド16Bは、磁性層33の上に配置されている。磁性層34は、コア部32の上に配置されている。接続層25は、第2のコイル10のコイル接続部10Eの上に配置されている。記録ヘッド部92は、更に、絶縁材料よりなる絶縁層54を備えている。絶縁層54は、第2のシールド16B、磁性層34および接続層25の周囲において、磁性層33の上面の一部、ならびに、第2のコイル10、第2の絶縁膜52および絶縁層53の上面の上に配置されている。絶縁層54は、例えばアルミナによって形成されている。
主磁極15は、記録媒体100の進行方向Tの前側の端に位置する面である上面15T(図1参照)と、この上面15Tとは反対側の下端部15L(図1参照)と、トラック幅方向TWの両側に配置された第1および第2の側部(図3参照)とを有している。サイドシールド16Cは、主磁極15の第1の側部に対向する第1の側壁を有している。サイドシールド16Dは、主磁極15の第2の側部に対向する第2の側壁を有している。
サイドシールド16C,16Dは、第2のシールド16Bの上に配置され、第2のシールド16Bの上面に接している。記録ヘッド部92は、更に、非磁性材料よりなり、主磁極15と第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dとの間に配置された第2のギャップ層18を備えている。第2のギャップ層18は、サイドシールド16C,16Dの側壁、第2のシールド16Bおよび絶縁層54の上面に沿って配置されている。第2のギャップ層18の材料は、アルミナ等の絶縁材料でもよいし、導電材料でもよい。第2のギャップ層18には、磁性層34の上面を露出させる開口部と、接続層25の上面を露出させる開口部とが形成されている。
主磁極15は、第2のシールド16Bおよび絶縁層54の上面と主磁極15との間に第2のギャップ層18が介在するように、第2のシールド16Bおよび絶縁層54の上に配置されている。また、図3に示したように、媒体対向面90において、主磁極15とサイドシールド16C,16Dとの間にも、第2のギャップ層18が介在している。主磁極15の下端部15Lのうちの媒体対向面90から離れた部分は、磁性層34の上面に接している。主磁極15の形状については、後で詳しく説明する。
接続層26は、接続層25の上に配置されている。記録ヘッド部92は、更に、主磁極15および接続層26の周囲に配置された非磁性材料よりなる非磁性層55を備えている。非磁性層55は、例えばアルミナによって形成されている。
記録ヘッド部92は、更に、主磁極15の上面15Tのうちの媒体対向面90から離れた第1の部分の上に配置された非磁性金属材料よりなる非磁性金属層58と、この非磁性金属層58の上面の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層59とを備えている。非磁性金属層58は、例えばRu、NiCrまたはNiCuによって形成されている。絶縁層59は、例えばアルミナによって形成されている。
記録ヘッド部92は、更に、非磁性材料よりなり、主磁極15と第1のシールド16Aとの間に配置された第1のギャップ層19を備えている。第1のギャップ層19は、主磁極15、非磁性金属層58および絶縁層59を覆うように配置されている。第1のギャップ層19の材料は、アルミナ等の絶縁材料でもよいし、導電材料でもよい。
第1のシールド16Aは、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上に配置され、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上面に接している。媒体対向面90において、第1のシールド16Aの第1の端面部分16Aaの一部は、主磁極15の第1の端面15aに対して、第1のギャップ層19の厚みによる所定の間隔を開けて配置されている。第1のギャップ層19の厚みは、5〜60nmの範囲内であることが好ましく、例えば30〜60nmの範囲内である。主磁極15の第1の端面15aは、第1のギャップ層19に隣接する辺を有し、この辺はトラック幅を規定している。
磁性層41は、主磁極15の上面15Tのうちの媒体対向面90から離れた第2の部分の上に配置されている。上面15Tの第2の部分は、上面15Tの第1の部分に対して、媒体対向面90からより遠い位置にある。接続層27は、接続層26の上に配置されている。記録ヘッド部92は、更に、第1のシールド16A、磁性層41および接続層27の周囲に配置された非磁性層61を備えている。非磁性層61は、例えば無機絶縁材料によって形成されている。この無機絶縁材料としては、例えばアルミナまたはシリコン酸化物が用いられる。第1のシールド16A、磁性層41、接続層27および非磁性層61の上面は平坦化されている。
コア部42は、磁性層41の上に配置されている。磁性層43は、第1のシールド16Aおよび非磁性層61の上に配置されている。また、コア部42は、媒体対向面90から離れた位置に配置されている。磁性層43は、コア部42に対して間隔を開けてコア部42と媒体対向面90の間に配置されている。また、磁性層43は、媒体対向面90に配置された端面を有している。
図1、図2および図5に示したように、第1のコイル20は、帰磁路部R1の一部であるコア部42の周りに1回以上巻かれている。記録ヘッド部92は、更に、第1のコイル20を磁性層41,43、コア部42および非磁性層61に対して絶縁する絶縁材料よりなる第1の絶縁膜62と、第1のコイル20の巻線間ならびに第1のコイル20および磁性層43の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層63と、第1のコイル20および絶縁層63の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層64とを備えている。第1のコイル20のコイル接続部20Sは、接続層27の上に配置されている。第1のコイル20、コア部42、磁性層43、第1の絶縁膜62および絶縁層63の上面は平坦化されている。第1の絶縁膜62および絶縁層63,64は、例えばアルミナによって形成されている。
磁性層44は、コア部42、磁性層43および絶縁層64の上に配置されコア部42と磁性層43を連結している。図1に示したように、磁性層44は、媒体対向面90に向いた端面44aを有している。この端面44aにおける任意の位置の媒体対向面90からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aから離れるに従って大きくなっている。記録ヘッド部92は、更に、磁性層44の周囲を覆うように配置された非磁性材料よりなる非磁性層65を備えている。磁性層44および非磁性層65の上面は平坦化されている。非磁性層65は、例えばアルミナによって形成されている。
記録ヘッド部92は、更に、磁性層44および非磁性層65の上に配置されたストッパ層85を有している。ストッパ層85は、熱伝導率が大きく、線熱膨張係数が小さく、且つ硬い非磁性材料によって形成されている。ストッパ層85を構成する材料は、アルミナに比べて、熱伝導率が大きく、線熱膨張係数が小さく、且つビッカース硬度が大きい材料であることが好ましい。このような材料としては、SiCがある。ストッパ層85がない場合には、磁性層43,44が、第1のコイル20によって発生された熱を受けて膨張して、媒体対向面90の一部を突出させる可能性がある。ストッパ層85は、第1のコイル20によって発生された熱を吸熱すると共に、磁性層43,44の媒体対向面90側への膨張を抑制する。これにより、第1のコイル20によって発生された熱によって、媒体対向面90の一部が突出することが抑制される。
磁気ヘッドは、更に、非磁性材料よりなり、記録ヘッド部92を覆うように配置された保護層70を備えている。保護層70は、例えば、アルミナ等の無機絶縁材料によって形成されている。
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドは、媒体対向面90と再生ヘッド部91と記録ヘッド部92とを備えている。再生ヘッド部91と記録ヘッド部92は、基板1の上に積層されている。記録ヘッド部92は、再生ヘッド部91に対して、記録媒体100の進行方向Tの前側(トレーリング端側)に配置されている。
記録ヘッド部92は、第1のコイル20と、第2のコイル10と、磁路構成部M1と、第1の絶縁膜62と、第2の絶縁膜52とを備えている。磁路構成部M1は、主磁極15と、帰磁路部R1とを有している。帰磁路部R1は、記録シールド16と、コア部32,42と、磁性層31,33,34,41,43,44とを含んでいる。
帰磁路部R1は、記録シールド16から主磁極15に至る第1の磁路および第2の磁路を構成する。第1の磁路は、磁性層41,43,44およびコア部42によって構成されている。第1の磁路は、主磁極15に対して記録媒体100の進行方向Tの前側に配置されて、主磁極15、記録シールド16および第1の磁路(磁性層41,43,44およびコア部42)によって囲まれた第1の空間S1が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面90から離れた部分と記録シールド16とを接続している。第1のコイル20は、第1の空間S1を通過している。
第2の磁路は、磁性層31,33,34およびコア部32によって構成されている。第2の磁路は、主磁極15に対して記録媒体100の進行方向Tの後側(リーディング端側)に配置されて、主磁極15、記録シールド16および第2の磁路(磁性層31,33,34およびコア部32)によって囲まれた第2の空間S2が形成されるように、主磁極15のうちの媒体対向面90から離れた部分と記録シールド16とを接続している。第2のコイル10は、第2の空間S2を通過している。
第1の絶縁膜62は、第1のコイル20を、磁路構成部M1の一部である磁性層41,43およびコア部42に対して絶縁する。第2の絶縁膜52は、第2のコイル10を、磁路構成部M1の一部である磁性層31,33およびコア部32に対して絶縁する。
記録シールド16は、磁気ヘッドの外部から磁気ヘッドに印加された外乱磁界を取り込む。これにより、外乱磁界が主磁極15に集中して取り込まれることによって記録媒体100に対して誤った記録が行なわれることを防止することができる。また、記録シールド16は、主磁極15の第1の端面15aより発生されて記録媒体100の面に垂直な方向以外の方向に広がる磁束を取り込んで、この磁束が記録媒体100に達することを阻止する機能を有している。また、帰磁路部R1は、主磁極15の第1の端面15aより発生されて、記録媒体100を磁化した磁束を還流させる機能を有している。
磁気ヘッドは、更に、ヒーター72、膨張層76およびセンサ77を備えている。ヒーター72および膨張層76は、再生ヘッド部91および記録ヘッド部92と記録媒体100の表面との間の距離を小さくするために、媒体対向面90の一部を突出させるためのものである。ヒーター72は、通電されることによって、媒体対向面90の一部を突出させるための熱を発生する。膨張層76は、ヒーター72によって発生された熱を受けて膨張して、媒体対向面90の一部を突出させる。これにより、再生ヘッド部91および記録ヘッド部92と記録媒体100の表面との間の距離が小さくなる。
非磁性部80は、膨張層76およびセンサ77の周囲に配置されている。膨張層76は、非磁性部80に比べて、熱伝導率および線熱膨張係数が大きい材料によって形成されている。膨張層76の材料としては、金属材料を用いることができる。
センサ77は、媒体対向面90の一部が記録媒体100に接触したことを検出するためのものである。センサ77は、媒体対向面90の一部が記録媒体100に接触したときに自身の温度変化によって抵抗値が変化する抵抗体である。センサ77に接続された図示しない2つのリードを介してセンサ77の抵抗値を測定することによって、媒体対向面90の一部が記録媒体100に接触したことを検出することができる。センサ77の材料としては、温度変化に対する抵抗値の変化の割合、すなわち抵抗の温度係数がある程度大きい金属材料や半導体材料が用いられる。
次に、図1、図4および図5を参照して、磁路構成部M1と、第1のコイル20および第2のコイル10について詳しく説明する。磁路構成部M1は、第1および第2の組の第1の磁性体部、第2の磁性体部および連結部を含んでいる。各組において、第1の磁性体部は、媒体対向面90から離れた位置に配置され、第2の磁性体部は、第1の磁性体部に対して間隔を開けて第1の磁性体部と媒体対向面90の間に配置され、連結部は、第1の磁性体部と第2の磁性体部を連結している。
第1の組の第1の磁性体部、第2の磁性体部および連結部は、それぞれ、コア部42、磁性層43および磁性層44によって構成されている。以下、コア部42、磁性層43および磁性層44を、それぞれ、第1の磁性体部42、第2の磁性体部43および連結部44とも記す。
第2の組の第1の磁性体部、第2の磁性体部および連結部は、それぞれ、コア部32、磁性層33および磁性層31によって構成されている。以下、コア部32、磁性層33および磁性層31を、それぞれ、第1の磁性体部32、第2の磁性体部33および連結部31とも記す。
本実施の形態では、コア部32,42および磁性層31,33,43,44は帰磁路部R1の一部であることから、帰磁路部R1が第1および第2の組の第1の磁性体部、第2の磁性体部および連結部を含んでいるとも言える。
以下、図1および図5を参照して、第1のコイル20の構成、ならびに、第1の組の第1の磁性体部42、第2の磁性体部43および連結部44と、第1のコイル20との位置関係について説明する。図5は、第1のコイル20を示す平面図である。第1のコイル20は、帰磁路部R1の一部である第1の磁性体部42の周りに1回以上巻かれている。また、第1のコイル20は、第1の磁性体部42と第2の磁性体部43の間に位置する1つ以上のコイル要素を含んでいる。なお、コイル要素とは、コイルの巻線の一部である。本実施の形態では、特に、第1のコイル20は、第1の磁性体部42の周りに約2回巻かれ、1つ以上のコイル要素として、第1のコイル要素20Aと第2のコイル要素20Bを含んでいる。第1および第2のコイル要素20A,20Bは、媒体対向面90側から20B,20Aの順に、媒体対向面90に垂直な方向に並んでいる。また、図1に示したように、第1および第2のコイル要素20A,20Bは、連結部44に対して記録媒体100の進行方向Tの後側に配置されている。
図1および図5に示したように、第1の磁性体部42は、第1のコイル20の1つ以上のコイル要素に向いた第1の側壁42aを有している。第2の磁性体部43は、第1のコイル20の1つ以上のコイル要素に向いた第2の側壁43aを有している。第1のコイル20の1つ以上のコイル要素は、第1の側壁42aに対向する第1の側面と、第2の側壁43aに対向する第2の側面とを有している。本実施の形態では、第1のコイル要素20Aが上記第1の側面を有し、第2のコイル要素20Bが上記第2の側面を有している。以下、第1のコイル要素20Aの第1の側面を符号20Aaで表し、第2のコイル要素20Bの第2の側面を符号20Baで表す。
図1に示したように、第1の絶縁膜62は、第1の側壁42aと第1の側面20Aaの間に介在する第1の介在部62Aと、第2の側壁43aと第2の側面20Baの間に介在する第2の介在部62Bと、第1および第2の介在部62A,62Bに連続する下地部62Cとを含んでいる。第1のコイル20の1つ以上のコイル要素、すなわち第1および第2のコイル要素20A,20Bは、下地部62Cの上に配置されている。
第1の側壁42aと第1の側面20Aaとの最小間隔と、第2の側壁43aと第2の側面20Baとの最小間隔は、いずれも、例えば50〜200nmの範囲内である。第1の側壁42aと第1の側面20Aaとの最小間隔は、第1の介在部62Aの厚みと等しい。また、第2の側壁43aと第2の側面20Baとの最小間隔は、第2の介在部62Bの厚みと等しい。
図1および図5に示したように、第1のコイル20の1つ以上のコイル要素の数が2つの場合、第1の磁性体部42と媒体対向面90の最短距離は、例えば1.4〜4.0μmの範囲内である。なお、図5に示したように、本実施の形態では、第1の磁性体部42の第1の側壁42aは、前記主断面と交差する部分において媒体対向面90に最も近づくように、媒体対向面90に向けて突出した凸形状を有している。従って、本実施の形態では、前記主断面における第1の磁性体部42と媒体対向面90との間の距離が、第1の磁性体部42と媒体対向面90の最短距離になる。
次に、図1および図4を参照して、第2のコイル10の構成、ならびに、第2の組の第1の磁性体部32、第2の磁性体部33および連結部31と、第2のコイル10との位置関係について説明する。図4は、第2のコイル10を示す平面図である。第2のコイル10は、帰磁路部R1の一部である第1の磁性体部32の周りに1回以上巻かれている。また、第2のコイル10は、第1の磁性体部32と第2の磁性体部33の間に位置する1つ以上のコイル要素を含んでいる。本実施の形態では、特に、第2のコイル10は、第1の磁性体部32の周りに約2回巻かれ、1つ以上のコイル要素として、第1のコイル要素10Aと第2のコイル要素10Bを含んでいる。第1および第2のコイル要素10A,10Bは、媒体対向面90側から10B,10Aの順に、媒体対向面90に垂直な方向に並んでいる。また、図1に示したように、第1および第2のコイル要素10A,10Bは、連結部31に対して記録媒体100の進行方向Tの前側に配置されている。
また、図1および図4に示したように、第1の磁性体部32は、第2のコイル10の1つ以上のコイル要素に向いた第1の側壁32aを有している。第2の磁性体部33は、第2のコイル10の1つ以上のコイル要素に向いた第2の側壁33aを有している。第2のコイル10の1つ以上のコイル要素は、第1の側壁32aに対向する第1の側面と、第2の側壁33aに対向する第2の側面とを有している。本実施の形態では、第1のコイル要素10Aが上記第1の側面を有し、第2のコイル要素10Bが上記第2の側面を有している。以下、第1のコイル要素10Aの第1の側面を符号10Aaで表し、第2のコイル要素10Bの第2の側面を符号10Baで表す。
図1に示したように、第2の絶縁膜52は、第1の側壁32aと第1の側面10Aaの間に介在する第1の介在部52Aと、第2の側壁33aと第2の側面10Baの間に介在する第2の介在部52Bと、第1および第2の介在部52A,52Bに連続する下地部52Cとを含んでいる。第2のコイル10の1つ以上のコイル要素、すなわち第1および第2のコイル要素10A,10Bは、下地部52Cの上に配置されている。
第1の側壁32aと第1の側面10Aaとの最小間隔と、第2の側壁33aと第2の側面10Baとの最小間隔は、いずれも、例えば50〜200nmの範囲内である。第1の側壁32aと第1の側面10Aaとの最小間隔は、第1の介在部52Aの厚みと等しい。また、第2の側壁33aと第2の側面10Baとの最小間隔は、第2の介在部52Bの厚みと等しい。
図1および図4に示したように、第2のコイル10の1つ以上のコイル要素の数が2つの場合、第1の磁性体部32と媒体対向面90の最短距離は、例えば1.4〜4.0μmの範囲内である。なお、図4に示したように、本実施の形態では、第1の磁性体部32の第1の側壁32aは、前記主断面と交差する部分において媒体対向面90に最も近づくように、媒体対向面90に向けて突出した凸形状を有している。従って、本実施の形態では、前記主断面における第1の磁性体部32と媒体対向面90との間の距離が、第1の磁性体部32と媒体対向面90の最短距離になる。
次に、コイル10,20の内部構造の特徴と、コイル10,20の相互接続関係について説明する。図1に示したように、第1のコイル20は、導電材料よりなるシード層21と、このシード層21の上に配置された導電材料よりなる主要部分22とを含んでいる。後で詳しく説明するように、シード層21は、第1のコイル20(特に主要部分22)を構成するための導電層をめっき法で形成する際にシードおよび陰極として用いられる。また、第2のコイル10は、導電材料よりなるシード層11と、このシード層11の上に配置された導電材料よりなる主要部分12とを含んでいる。後で詳しく説明するように、シード層11は、第2のコイル10(特に主要部分12)を構成するための導電層をめっき法で形成する際にシードおよび陰極として用いられる。なお、図2では、シード層11,21を省略している。
第1のコイル20のコイル接続部20Sは、図2に示した接続層25〜27を介して第2のコイル10のコイル接続部10Eに電気的に接続されている。図2、図4および図5に示した例では、第1のコイル20と第2のコイル10は、直列に接続されている。
次に、図1、図3ないし図5を参照して、主磁極15の形状について詳しく説明する。図4および図5に示したように、主磁極15は、第1の端面15aとその反対側の端部とを有する細幅部15Aと、細幅部15Aの端部に接続された幅広部15Bとを含んでいる。また、主磁極15は、前記の上面15T、下端部15L、第1の側部および第2の側部を有している。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、細幅部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅よりも大きい。
細幅部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、媒体対向面90からの距離によらずにほぼ一定である。幅広部15Bにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅は、例えば、細幅部15Aとの境界位置では細幅部15Aにおける上面15Tのトラック幅方向TWの幅と等しく、媒体対向面90から離れるに従って、徐々に大きくなった後、一定の大きさになっている。ここで、媒体対向面90に垂直な方向についての細幅部15Aの長さをネックハイトと呼ぶ。ネックハイトは、例えば0〜0.3μmの範囲内である。ネックハイトが0の場合は、細幅部15Aがなく、幅広部15Bが第1の端面15aを有する。
上面15Tは、媒体対向面90に近い順に、連続するように配置された第1の傾斜部、第2の傾斜部および第1の平坦部を含んでいる。第1の傾斜部は、媒体対向面90に配置された端部を有している。第1および第2の傾斜部における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面90から離れるに従って大きくなっている。媒体対向面90に垂直な方向に対する第2の傾斜部の傾斜角度は、同方向に対する第1の傾斜部の傾斜角度よりも大きい。第1の平坦部は、実質的に媒体対向面90に垂直な方向に延在している。
下端部15Lは、媒体対向面90に近い順に、連続するように配置された第3の傾斜部、第4の傾斜部および第2の平坦部を含んでいる。第3の傾斜部は、媒体対向面90に配置された端部を有している。第3および第4の傾斜部は、2つの面が交わってできるエッジでもよいし、2つの面を連結する面でもよい。第3および第4の傾斜部における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面90から離れるに従って小さくなっている。媒体対向面90に垂直な方向に対する第4の傾斜部の傾斜角度は、同方向に対する第3の傾斜部の傾斜角度よりも大きい。第2の平坦部は、実質的に媒体対向面90に垂直な方向に延在する面になっている。
主磁極15の第1の端面15aは、第1のギャップ層19に隣接する第1の辺と、第1の辺の一端部に接続された第2の辺と、第1の辺の他端部に接続された第3の辺とを有している。第1の辺はトラック幅を規定する。記録媒体100に記録される記録ビットの端部の位置は、第1の辺の位置によって決まる。主磁極15の第1の端面15aのトラック幅方向TWの幅は、第1の辺から離れるに従って、すなわち基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。第2の辺と第3の辺がそれぞれ基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)に対してなす角度は、例えば7°〜17°の範囲内であり、10°〜15°の範囲内であることが好ましい。第1の辺の長さは、例えば0.05〜0.20μmの範囲内である。
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、まず、図2および図3に示したように、基板1の上に、絶縁層71、ヒーター72、絶縁層73、第1の再生シールド層3、絶縁層74、第1の再生シールドギャップ膜4を順に形成する。次に、第1の再生シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、このMR素子5に接続された図示しない2つのリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを覆うように第2の再生シールドギャップ膜6を形成する。次に、第2の再生シールドギャップ膜6の上に第2の再生シールド層7および絶縁層75を形成する。次に、第2の再生シールド層7および絶縁層75の上に、非磁性層81、膨張層76、非磁性層82,83、センサ77および非磁性層84を順に形成する。
次に、例えばフレームめっき法によって、非磁性層84の上に連結部31(磁性層31)を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層51を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、連結部31が露出するまで、絶縁層51を研磨して、連結部31および絶縁層51の上面を平坦化する。
次に、例えばフレームめっき法によって、連結部31の上に第1の磁性体部32(コア部32)および第2の磁性体部33(磁性層33)を形成する。次に、例えば原子層堆積法によって、連結部31、第1の磁性体部32、第2の磁性体部33および絶縁層51を覆うように、第2の絶縁膜52を形成する。第2の絶縁膜52の厚みは、例えば50〜200nmの範囲内である。
次に、自己整合的に第2のコイル10を形成する。なお、第2のコイル10を形成する工程は、基本的には、後で説明する第1のコイル20を形成する工程と同様である。ここでは、第2のコイル10を形成する工程について簡単に説明し、後で、第1のコイル20を形成する工程について詳しく説明する。
第2のコイル10を形成する工程では、まず、第2の絶縁膜52の上に、図示しない第1のマスクを形成する。第1のマスクは、第1および第2の磁性体部32,33を覆い、第2の絶縁膜52の下地部52C(図1参照)の少なくとも一部(以下、露出部と言う。)を露出させる。後に、露出部の上にはシード層11が形成され、更に、このシード層11の上に第2のコイル10(特に主要部分12)を構成するための導電層が形成される。
第1のマスクは、第1の磁性体部32を覆う第1の部分と、第2の磁性体部33を覆う第2の部分とを含んでいる。第1の部分は、第2の絶縁膜52の第1の介在部52Aをわずかに覆う第1の被覆部を含んでいる。第2の部分は、第2の絶縁膜52の第2の介在部52Bをわずかに覆う第2の被覆部を含んでいる。
第1のマスクは、以下のようにして形成される。まず、積層体の上面全体の上に、ポジ型のフォトレジストよりなるフォトレジスト層を形成する。次に、フォトマスクを用いて、フォトレジスト層を選択的に露光する。このフォトマスクは、露光用の光を通過させる透光部と、露光用の光を遮断する遮光部とを有している。フォトマスクの透光部は、後に形成される第1のマスクの開口部の平面形状に対応した形状を有している。次に、露光後のフォトレジスト層を現像する。露光後は、フォトレジスト層のうち、フォトマスクの透光部を通過した光が照射された部分は現像液に対して可溶性となり、他の部分は現像液に対して不溶性のままである。現像後に残ったフォトレジスト層が第1のマスクとなる。
このように、第1のマスクを形成する工程では、パターン化前のフォトレジスト層に、フォトマスクによって規定される所定のパターンの光を照射して、フォトレジスト層を露光する。なお、これ以降の工程で形成される、フォトレジスト層をパターニングして形成する他のマスクも、この第1のマスクと同様の方法で形成される。
次に、第1のマスクを用いて、下地部52Cの上に選択的に、シード層11を形成する。具体的には、第1のマスクを残したまま、例えばイオンビームデポジション法によって、積層体の上面全体の上に、シード層11となる導電膜を形成する。この導電膜のうち、下地部52Cの露出部の上に形成された部分がシード層11となる。導電膜のうち、第1のマスクの上に形成された部分は、シード層11ではなく、後に除去される不要導電膜となる。次に、第1のマスクとその上の不要導電膜を除去する。
上述のように、シード層11の形成後に第1のマスクを除去すると、前記第1の被覆部と第2の被覆部が除去されることによって、シード層11と、第2の絶縁膜52の第1および第2の介在部52A,52Bの各々との間に間隙が生じる。
次に、シード層11および第2の絶縁膜52の上に、図示しない第2のマスクを形成する。第2のマスクは、第2のコイル10を構成するための導電層を収容する予定の開口部を有している。この開口部の縁の一部は、第1および第2の磁性体部32,33の上方に配置されている。第2のマスクは、例えば、フォトリソグラフィを用いてフォトレジスト層をパターニングして形成する。
次に、シード層11をシードおよび陰極として用いて、めっき法によって、第2のマスクの開口部内に収容されるように、第2のコイル10を構成するための導電層を形成する。この導電層は、第2の絶縁膜52の第1および第2の介在部52A,52B(図1参照)を介して第1の磁性体部32の第1の側壁32aと第2の磁性体部33の第2の側壁33aに接し且つその一部が第1および第2の磁性体部32,33に乗り上げるように形成される。次に、第2のマスクを除去する。
次に、シード層11のうちの上記導電層の下に存在する部分以外の不要部分を、エッチングによって除去する。このエッチングは、ウェットエッチングでもよいしドライエッチングでもよい。ドライエッチングの場合には、イオンビームエッチング(以下、IBEと記す。)を用いることが好ましい。次に、上記導電層、第1の磁性体部32、第2の磁性体部33を覆うように、積層体の上面全体の上に絶縁層53を形成する。次に、上記導電層のうち第1および第2の磁性体部32,33に乗り上げた部分が除去されるように、例えばCMPによって、上記導電層、第1の磁性体部32、第2の磁性体部33、第2の絶縁膜52および絶縁層53を研磨して、それらの上面を平坦化する。これにより、上記導電層は第2のコイル10の主要部分12となり、第2のコイル10が完成する。
次に、例えばフレームめっき法によって、第2の磁性体部33の上に第2のシールド16Bを形成し、第1の磁性体部32の上に磁性層34を形成し、第2のコイル10のコイル接続部10Eの上に接続層25を形成する。次に、積層体の上面全体の上に絶縁層54を形成する。次に、例えばCMPによって、第2のシールド16B、磁性層34および接続層25の上面が露出するまで絶縁層54を研磨して、第2のシールド16B、磁性層34、接続層25および絶縁層54の上面を平坦化する。次に、例えばフレームめっき法によって、第2のシールド16Bの上に2つのサイドシールド16C,16Dを形成する。
次に、第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dの上に、図示しないエッチングマスクを形成する。このエッチングマスクは、フォトリソグラフィを用いてフォトレジスト層をパターニングして形成する。次に、上記エッチングマスクを用いて、磁性層34、接続層25および絶縁層54をエッチングする。このエッチングは、エッチングによって形成される底部が、当初の絶縁層54の上面と下面の間の高さの位置に達するまで行う。また、このエッチングは、例えば反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)を用いて行われる。次に、エッチングマスクを除去する。次に、例えばIBEを用いて、媒体対向面90が形成される予定の位置の近傍において、第2のシールド16Bの上面の一部をエッチングする。これにより、第2のシールド16Bの上面の形状が決定される。
次に、第2のシールド16Bおよびサイドシールド16C,16Dを覆うように第2のギャップ層18を形成する。次に、第2のギャップ層18に、磁性層34の上面を露出させる開口部と、接続層25の上面を露出させる開口部とを形成する。次に、例えばフレームめっき法によって、第2のギャップ層18の上に、後に主磁極15になる予備主磁極を形成し、接続層25の上に接続層26を形成する。予備主磁極および接続層26は、その上面が、第2のギャップ層18のうち、サイドシールド16C,16Dの上に配置された部分よりも上方に配置されるように形成される。次に、積層体の上面全体の上に非磁性層55を形成する。次に、例えばCMPによって、サイドシールド16C,16Dの上面が露出するまで予備主磁極、接続層26および非磁性層55を研磨して、予備主磁極、サイドシールド16C,16D、接続層26および非磁性層55の上面を平坦化する。
次に、予備主磁極およびサイドシールド16C,16Dの上に、非磁性金属層58および絶縁層59を形成する。次に、非磁性金属層58および絶縁層59をエッチングマスクとして、例えばIBEによって、予備主磁極およびサイドシールド16C,16Dのそれぞれの一部をエッチングする。これにより、予備主磁極は主磁極15となる。このエッチングにより、主磁極15の上面15Tの形状が決定される。
次に、積層体の上面全体の上に、例えばスパッタ法または化学的気相成長法によって、第1のギャップ層19を形成する。次に、例えばIBEによって、主磁極15の上面15Tの一部およびサイドシールド16C,16Dの上面の一部が露出するように、第1のギャップ層19、非磁性金属層58および絶縁層59を選択的にエッチングする。次に、例えばフレームめっき法によって、サイドシールド16C,16Dおよび第1のギャップ層19の上に第1のシールド16Aを形成し、主磁極15の上に磁性層41を形成し、接続層26の上に接続層27を形成する。
次に、積層体の上面全体の上に非磁性層61を形成する。次に、例えばCMPによって、第1のシールド16A、磁性層41および接続層27が露出するまで、非磁性層61を研磨して、第1のシールド16A、磁性層41、接続層27および非磁性層61の上面を平坦化する。
次に、図6Aないし図20Bを参照して、上記の工程の後、連結部44(磁性層44)を形成する工程までの一連の工程について説明する。図6Aないし図20Bは、磁気ヘッドの製造過程における積層体の一部を示している。図nA(nは6以上20以下の整数)は、前記主断面に現れる積層体の一部の断面を示している。図nBは、上記積層体の一部の上面を示している。図nBにおいて、nA−nA線は、図nAの断面の位置を示している。図6Aないし図20Bにおいて、記号“ABS”は、媒体対向面90が形成される予定の位置を表している。
図6Aおよび図6Bは、非磁性層61を研磨した後の工程を示す。この工程では、まず、例えばフレームめっき法によって、磁性層41の上に第1の磁性体部42(コア部42)を形成し、第1のシールド16Aおよび非磁性層61の上に第2の磁性体部43(磁性層43)を形成する。次に、例えば原子層堆積法によって、磁性層41、第1の磁性体部42、第2の磁性体部43および非磁性層61を覆うように、第1の絶縁膜62を形成する。第1の絶縁膜62の厚みは、例えば50〜200nmの範囲内である。なお、図6Bでは、第1の絶縁膜62を省略している。次に、第1の絶縁膜62に、接続層27の上面を露出させる開口部を形成する。
図6Aおよび図6Bに示した工程において、上方から見たときの第2の磁性体部43の外縁は、第1ないし第6の端縁43E1,43E2,43E3,43E4,43E5,43E6を含んでいる。第1の端縁43E1は、直線状であって、第1の磁性体部42とは反対側の端に位置している。第2の端縁43E2は、弧状であって、第1の磁性体部42に向いている。第3および第4の端縁43E3,43E4は、トラック幅方向の両側の端に位置している。第5の端縁43E5は、第2の端縁43E2の一端と第3の端縁43E3の一端とを接続している。第6の端縁43E6は、第2の端縁43E2の他端と第4の端縁43E4の一端とを接続している。
次に、自己整合的に第1のコイル20を形成する。図7Aないし図14Bは、第1のコイル20を形成する工程を示している。第1のコイル20を形成する工程では、まず、図7Aおよび図7Bに示したように、第1の絶縁膜62の上に、第1のマスク101を形成する。第1のマスク101は、第1および第2の磁性体部42,43を覆い、第1の絶縁膜62の下地部62Cの少なくとも一部(以下、露出部62Caと言う。)を露出させる。後に、露出部62Caの上にはシード層21が形成され、更に、このシード層21の上に第1のコイル20(特に主要部分22)を構成するための導電層が形成される。第1のマスク101は、例えば、フォトリソグラフィを用いてフォトレジスト層をパターニングして形成する。
第1のマスク101は、第1の磁性体部42を覆う第1の部分101Aと、第2の磁性体部43を覆う第2の部分101Bとを含んでいる。第1の部分101Aは、第1の絶縁膜62の第1の介在部62Aをわずかに覆う第1の被覆部101Aaを含んでいる。第2の部分101Bは、第1の絶縁膜62の第2の介在部62Bをわずかに覆う第2の被覆部101Baを含んでいる。
上方から見たときの第2の部分101Bの外縁は、第2の磁性体部43の外縁における第1、第3および第4の端縁43E1,43E3,43E4にそれぞれ平行な3つの部分を含んでいる。これら3つの部分は、それぞれ、第1、第3および第4の端縁43E1,43E3,43E4から100μm以上離れた位置にあることが好ましい。その理由については、後で説明する。
図8Aおよび図8Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、第1のマスク101を用いて、下地部62Cの上に選択的に、シード層21を形成する。具体的には、第1のマスク101を残したまま、例えばイオンビームデポジション法によって、積層体の上面全体の上に、シード層21となる導電膜を形成する。この導電膜のうち、下地部62Cの露出部62Caの上に形成された部分がシード層21となる。導電膜のうち、第1のマスク101の上に形成された部分は、シード層21ではなく、後に除去される不要導電膜121となる。なお、図示しないが、シード層21は、接続層27の上にも形成される。次に、第1のマスク101とその上の不要導電膜121を除去する。
上述のように、シード層21の形成後に第1のマスク101を除去すると、図7Aに示した第1の被覆部101Aaと第2の被覆部101Baが除去されることによって、シード層21と、第1の絶縁膜62の第1および第2の介在部62A,62Bの各々との間に間隙が生じる。
図9Aおよび図9Bは、次の工程を示す。この工程では、積層体の上面全体の上に、フォトレジストよりなるフォトレジスト層102Pを形成する。
図10Aおよび図10Bは、次の工程を示す。この工程では、フォトリソグラフィを用いてフォトレジスト層102Pをパターニングすることによって、第2のマスク102を形成する。第2のマスク102は、第1のコイル20を構成するための導電層を収容する予定の開口部102aを有している。開口部102aの縁の一部は、第1および第2の磁性体部42,43に上方に配置されている。
図11Aおよび図11Bは、次の工程を示す。この工程では、シード層21をシードおよび陰極として用いて、めっき法によって、第2のマスク102の開口部102a内に収容されるように、第1のコイル20を構成するための導電層22Pを形成する。この導電層22Pは、第1の絶縁膜62の第1および第2の介在部62A,62Bを介して第1の磁性体部42の第1の側壁42aと第2の磁性体部43の第2の側壁43aに接し且つその一部が第1および第2の磁性体部42,43に乗り上げるように形成される。次に、図12Aおよび図12Bに示したように、第2のマスク102を除去する。
図13Aおよび図13Bは、次の工程を示す。この工程では、シード層21のうちの導電層22Pの下に存在する部分以外の不要部分を、エッチングによって除去する。このエッチングは、ウェットエッチングでもよいしドライエッチングでもよい。ドライエッチングの場合には、IBEを用いることが好ましい。
図14Aおよび図14Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、導電層22P、第1の磁性体部42および第2の磁性体部43を覆うように、積層体の上面全体の上に絶縁層63を形成する。次に、導電層22Pのうち第1および第2の磁性体部42,43に乗り上げた部分が除去されるように、例えばCMPによって、導電層22P、第1の磁性体部42、第2の磁性体部43、第1の絶縁膜62および絶縁層63を研磨して、それらの上面を平坦化する。これにより、導電層22Pは第1のコイル20の主要部分22となり、第1のコイル20が完成する。なお、図14Bでは、第1の絶縁膜62を省略している。
図15Aおよび図15Bは、第1のコイル20を形成した後の工程を示す。この工程では、積層体の上面全体の上に絶縁層64を形成する。次に、図16Aおよび図16Bに示したように、絶縁層64を選択的にエッチングして、絶縁層64に、第1の磁性体部42の上面を露出させる開口部と、第2の磁性体部43の上面を露出させる開口部を形成する。
図17Aおよび図17Bは、次の工程を示す。この工程では、例えばフレームめっき法によって、第1および第2の磁性体部42,43の上面ならびに絶縁層64の上面の一部の上に、後に連結部44となる予備連結部44Pを形成する。
図18Aおよび図18Bは、次の工程を示す。この工程では、積層体の上に、媒体対向面90が形成される予定の位置ABSの近傍に形成された開口部103aを有するエッチングマスク103を形成する。エッチングマスク103は、フォトリソグラフィを用いてフォトレジスト層をパターニングして形成する。
図19Aおよび図19Bは、次の工程を示す。この工程では、エッチングマスク103を用いて、例えばIBEによって、予備連結部44Pに前述の端面44aが形成されるように、予備連結部44Pをエッチングする。これにより、予備連結部44Pは連結部44となる。次に、図20Aおよび図20Bに示したように、エッチングマスク103を除去する。
以下、図2および図3を参照して、図20Aおよび図20Bに示した工程の後の工程について説明する。まず、積層体の上面全体の上に非磁性層65を形成する。次に、例えばCMPによって、連結部44が露出するまで、非磁性層65を研磨して、連結部44および非磁性層65の上面を平坦化する。次に、連結部44および非磁性層65の上にストッパ層85を形成する。
次に、積層体の上面全体を覆うように保護層70を形成する。次に、保護層70の上に配線や端子等を形成し、媒体対向面90が形成される予定の位置の近傍で基板1を切断し、この切断によって形成された面を研磨して媒体対向面90を形成し、更に浮上用レールの作製等を行って、磁気ヘッドが完成する。
以上説明したように、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、磁路構成部M1を形成する工程と、第1の絶縁膜62を形成する工程と、第2の絶縁膜52を形成する工程と、第1のコイル20を形成する工程と、第2のコイル10を形成する工程とを含んでいる。磁路構成部M1を形成する工程は、第1の組の第1の磁性体部42を形成する工程と、第1の組の第2の磁性体部43を形成する工程と、第2の組の第1の磁性体部32を形成する工程と、第2の組の第2の磁性体部33を形成する工程とを含んでいる。第1の絶縁膜62を形成する工程は、第1の組の第1および第2の磁性体部42,43を形成する工程の後で第1の絶縁膜62を形成する。第2の絶縁膜52を形成する工程は、第2の組の第1および第2の磁性体部32,33を形成する工程の後で第2の絶縁膜52を形成する。
以下、第1のコイル20を形成する工程を例にとって、本実施の形態の効果について説明する。本実施の形態では、要約すると以下のような方法で、自己整合的に第1のコイル20を形成している。まず、第1の絶縁膜62を形成する工程の後で、第1のマスク101を形成し、第1のマスク101を用いて、第1の絶縁膜62の下地部62Cの上に選択的に、シード層21を形成する。そして、第1のマスク101を除去した後、第2のマスク102を形成し、シード層21を用いてめっき法によって、第2のマスク102の開口部102a内に収容されるように、第1のコイル20を構成するための導電層22Pを形成する。そして、第2のマスク102を除去した後、シード層21のうちの前記不要部分を除去する。その後、導電層22P、第1の磁性体部42および第2の磁性体部43を覆う絶縁層63を形成し、導電層22P、第1の磁性体部42、第2の磁性体部43、第1の絶縁膜62および絶縁層63を研磨して、それらの上面を平坦化することにより、第1のコイル20が完成する。
本実施の形態によれば、第1のコイル要素20Aの第1の側面20Aaが、第1の絶縁膜62の第1の介在部62Aを介して第1の磁性体部42の第1の側壁42aに対向し、第2のコイル要素20Bの第2の側面20Baが、第1の絶縁膜62の第2の介在部62Bを介して第2の磁性体部43の第2の側壁43aに対向するように、第1のコイル20が形成される。これにより、容易に、第1の側壁42aと第1の側面20Aaとの最小間隔と、第2の側壁43aと第2の側面20Baとの最小間隔を小さくすることができる。その結果、容易に、記録シールド16から主磁極15に至る磁路のうち、第1および第2の磁性体部42,43を経由する第1の磁路の長さを短くすることが可能になる。これにより、本実施の形態によれば、主磁極15の第1の端面15aより発生される記録磁界の変化の速度の向上が可能になる。
次に、比較例の磁気ヘッドの製造方法と比較しながら、本実施の形態の効果について更に説明する。始めに、図21Aないし図24Bを参照して、比較例の磁気ヘッドの製造方法について説明する。図21Aないし図24Bは、磁気ヘッドの製造過程における積層体の一部を示している。図nA(nは21以上24以下の整数)は、前記主断面に現れる積層体の一部の断面を示している。図nBは、上記積層体の一部の上面を示している。図nBにおいて、nA−nA線は、図nAの断面の位置を示している。図21Aないし図24Bにおいて、記号“ABS”は、媒体対向面90が形成される予定の位置を表している。
比較例の磁気ヘッドの製造方法では、第1の絶縁膜62を形成する工程までは、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法と同じである。比較例では、次に、以下のような方法で、自己整合的に比較例のコイルを形成する。比較例のコイルを形成する工程では、図21Aおよび図21Bに示したように、まず、積層体の上面全体の上に、導電材料よりなるシード層221を形成する。このシード層221は、後に形成される比較例のコイルの主要部分をめっき法で形成する際にシードおよび陰極として用いられる。次に、積層体の上面全体の上に、フォトレジストよりなるフォトレジスト層104Pを形成する。
図22Aおよび図22Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、フォトリソグラフィを用いてフォトレジスト層104Pをパターニングすることによって、マスク104を形成する。このマスク104は、比較例のコイルを構成するための導電層を収容する予定の開口部104aを有している。次に、シード層221をシードおよび陰極として用いて、めっき法によって、マスク104の開口部104a内に収容されるように、比較例のコイルを構成するための導電層222Pを形成する。この導電層222Pは、第1の絶縁膜62の第1および第2の介在部62A,62Bを介して第1の磁性体部42の第1の側壁42aと第2の磁性体部43の第2の側壁43aに接し且つその一部が第1および第2の磁性体部42,43に乗り上げるように形成される。次に、マスク104を除去する。
図23Aおよび図23Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、シード層221のうちの導電層222Pの下に存在する部分以外の不要部分を、例えばウェットエッチングによって除去する。次に、導電層222P、第1の磁性体部42および第2の磁性体部43を覆うように、積層体の上面全体の上に絶縁層63を形成する。次に、導電層222Pのうち第1および第2の磁性体部42,43に乗り上げた部分が除去されるように、例えばCMPによって、導電層222P、シード層221、第1の磁性体部42、第2の磁性体部43、第1の絶縁膜62および絶縁層63を研磨して、それらの上面を平坦化する。これにより、比較例のコイル220が完成する。研磨後の導電層222Pは、コイル220の主要部分222となる。コイル220の形状および配置は、本実施の形態における第1のコイル20と同じである。
その後の工程は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法と同様である。図24Aおよび図24Bは、図19Aおよび図19Bに示した工程と同様に、連結部44を形成した後、図20Aおよび図20Bに示した工程と同様に、エッチングマスク103を除去した後の積層体を示している。
このように、比較例の磁気ヘッドの製造方法では、コイル220を形成する工程において、積層体の上面全体の上にシード層221を形成している。そのため、比較例では、シード層221に起因して、以下で説明する第1ないし第3の問題が発生する。
始めに、図25を参照して、第1の問題について説明する。図25は、第1の問題を説明するための説明図である。前述のように、比較例では、シード層221およびフォトレジスト層104Pを形成した後、フォトリソグラフィを用いてフォトレジスト層104Pをパターニングすることによって、マスク104を形成する。マスク104の形成方法は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法における、第2のコイル10を形成する工程で用いられる第1のマスクの形成方法と同様である。すなわち、マスク104を形成する工程では、パターン化前のフォトレジスト層104Pに所定のパターンの光を照射して、フォトレジスト層104Pを露光する。その際、露光用の光が、シード層221のうちの第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分によって反射されて、不要な反射光が生じる。図25において、破線の矢印は露光用の光を表し、実線の矢印は反射光を表している。不要な反射光が生じると、フォトレジスト層104Pのうち、本来は光が照射されるべきではない部分に不要な反射光が照射され得る。その結果、マスク104のパターンの精度が低下して、マスク104を形成する工程のマージンが小さくなる。これが第1の問題である。
これに対し、本実施の形態では、シード層21は、第1の絶縁膜62のうちの下地部62Cの上に選択的に形成され、第1の絶縁膜62のうちの第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分の上には形成されない。これにより、本実施の形態によれば、不要な反射光が生じることを防止することができ、その結果、第1の問題が発生することを防止することができる。
また、比較例では、シード層221のうちの第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分が、不要な反射光を発生させたり、露光用の光を吸収したりすることによって、露光用の光のエネルギーが減少して、露光用の光のエネルギーがフォトレジスト層104Pの底部まで到達しにくくなる。すると、フォトレジスト層104Pの現像後に、フォトレジスト層104Pの底部近傍において、シード層221のうちの第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分に沿って、本来は除去されるべきフォトレジスト層104Pの一部(以下、残存部分と言う。)104bが残ることがある。残存部分104bは、例えばアッシングによって除去することは可能である。しかし、そうすると、マスク104の一部も除去されてしまい、マスク104の厚みが小さくなる。比較例では、これによっても、マスク104を形成する工程のマージンが小さくなる。
また、比較例では、残存部分104bが生じないように、露光用の光のエネルギーを大きくすると、不要な反射光のエネルギーも大きくなる。そのため、比較例では、露光用の光のエネルギーを大きくすることは難しい。
これに対し、本実施の形態によれば、不要な反射光が生じることを防止することができることから、露光用の光のエネルギーがフォトレジスト層102Pの底部まで到達しやすくなる。また、本実施の形態では、露光用の光のエネルギーを大きくすることが可能である。これによっても、本実施の形態によれば、露光用の光のエネルギーがフォトレジスト層102Pの底部まで到達しやすくなる。また、図26は、本実施の形態の効果を説明するための説明図である。図26において、白抜きの矢印は、露光用の光を表している。図26に示したように、本実施の形態では、露光用の光は、第1の絶縁膜62のうちの第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分を透過する。これによっても、本実施の形態によれば、露光用の光のエネルギーを必要以上に大きくしなくても、露光用の光のエネルギーがフォトレジスト層102Pの底部まで到達しやすくなる。これらのことから、本実施の形態によれば、フォトレジスト層102Pの現像後に、不要な残存部分が生じることを防止することができると共に、この残存部分を除去する工程が不要になる。これにより、本実施の形態によれば、第2のマスク102を形成する工程のマージンを大きくすることができる。
また、本実施の形態によれば、比較例に比べて、第2のマスク102を精度よく形成することが可能である。すなわち、本実施の形態によれば、比較例に比べて、第1のコイル20の第1のコイル要素20Aと第2のコイル要素20B(図1および図5参照)の間隔が小さくなるような第2のマスク102を形成することが可能である。これにより、本実施の形態によれば、記録シールド16から主磁極15に至る磁路のうち、第1および第2の磁性体部42,43を経由する第1の磁路(図1および図2参照)の長さをより短くすることが可能になる。
次に、第2の問題について説明する。比較例では、めっき法によって導電層222Pを形成する工程において、シード層221のうち、第1の磁性体部42と第2の磁性体部43との間に位置する部分だけではなく、シード層221のうち、第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分からも、導電層222Pが成長する。そのため、図22Aに示したように、導電層222Pのうち、第1および第2の磁性体部42,43に乗り上げる部分(以下、乗り上げ部と言う。)が厚くなる。導電層222Pのうち、第1の磁性体部42と第2の磁性体部43との間に位置する部分は、図23Aおよび図23Bに示した工程で研磨されて、比較例のコイル220の主要部分222になる。一方、導電層222Pの乗り上げ部は、不要な部分であり、導電層222Pを覆う絶縁層63と共に、図23Aおよび図23Bに示した工程で除去される。
コイル220の厚みを十分に大きくし、且つ研磨のマージンを十分に大きくしようすると、導電層222Pのうち、第1の磁性体部42と第2の磁性体部43との間に位置する部分をより厚くする必要がある。すると、導電層222Pの乗り上げ部もより厚くなる。この場合には、マスク104の開口部104a内に厚い導電層222Pを収容できるように、マスク104の厚みを大きくする必要がある。これにより、マスク104のパターンの精度が低下して、マスク104を形成する工程のマージンが小さくなる。また、導電層222Pの乗り上げ部が厚くなると、この部分を除去するために、導電層222Pおよび絶縁層63の研磨量が増加する。これにより、研磨工程の精度が低下して、研磨工程のマージンが小さくなる。このように、マスク104を形成する工程のマージンおよび研磨工程のマージンが小さくなることが第2の問題である。
これに対し、本実施の形態では、前述のように、シード層21は、第1の絶縁膜62のうちの第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分の上には形成されない。そのため、本実施の形態では、図11Aに示したように、導電層22Pのうち、第1および第2の磁性体部42,43の上に乗り上げる部分の厚みは、比較例における導電層222Pの乗り上げ部の厚みよりも小さくなる。これにより、本実施の形態によれば、比較例に比べて、第2のマスク102の厚みを小さくすることができ、その結果、第2のマスク102を形成する工程のマージンを大きくすることができる。また、本実施の形態によれば、比較例に比べて、導電層22Pおよび絶縁層63の研磨量を少なくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、研磨工程のマージンを大きくすることができる。このように、本実施の形態によれば、第2の問題が発生することを防止することができる。
なお、比較例において、第2の問題によって、コイル220の厚みを十分に大きくすることができない場合には、コイル220の抵抗値が大きくなる。これに対し、本実施の形態では、第2の問題が発生することを防止しながら、第1のコイル20の厚みを十分に大きくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、第1のコイル20の抵抗値を小さくすることができる。
次に、第3の問題について説明する。第3の問題は、以下のように、シード層221の不要部分の除去に関係する問題である。比較例では、シード層221の不要部分は、シード層221のうちの第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分を含んで、広範囲に存在している。比較例では、この不要部分を例えばウェットエッチングによって除去するが、その際に、導電層222Pもエッチングされてコイル220の巻線の幅が小さくなったり、コイル220の内部にボイドが発生したりするという問題が発生する。この問題が発生することを防止するために、エッチング時間を短くすると、不要部分を完全に除去しきれずに、残った不要部分によって、本来は絶縁されるべき磁路構成部M1とコイル220の間や、コイル220の複数のコイル要素の間で短絡が生じる場合があるという問題が発生する。
また、比較例では、シード層221の不要部分の除去を、ウェットエッチングの代わりに、IBE等のドライエッチングによって行うと、以下のような問題が発生する。すなわち、この場合には、不要部分を除去する工程において、エッチングによって飛散した物質が、第1の絶縁膜62のうちの第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分の上に堆積して、導電性の再付着膜が形成される場合がある。そして、この再付着膜によって、本来は絶縁されるべき磁路構成部M1とコイル220の間で短絡が生じる場合があるという問題が発生する。
また、シード層221の不要部分のうち、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)に延在する部分は、IBEでは除去しにくい。比較例では、IBEで除去しきれずに残った不要部分によっても、本来は絶縁されるべき磁路構成部M1とコイル220の間で短絡が生じ得る。
以下、図23Aないし図24Bを参照して、磁路構成部M1とコイル220の間で短絡が生じる場合について詳しく説明する。以下、再付着膜または除去しきれずに残った不要部分を、不要導体部と言う。図23Aないし図24Bにおいて、符号221A,221Bは、不要導体部を示している。不要導体部221Aは、第1の絶縁膜62のうちの第2の磁性体部43を覆う部分に付着している。不要導体部221Bは、第1の絶縁膜62のうちの第1の磁性体部42を覆う部分に付着している。不要導体部221A,221Bは、いずれも、基板1の上面1aに垂直な方向(Z方向)に延在している。図23Aおよび図23Bに示した工程において、不要導体部221A,221Bは、コイル220の主要部分222と導通し得る。図23Bにおいて符号C1,C2を付した円は、不要導体部221Aと主要部分222の導通が生じる箇所を示している。
不要導体部221Aは、図23Aおよび図23Bに示した工程の後、絶縁層64によって覆われる。その後、エッチングによって予備連結部44Pに端面44aを形成する工程が行われると、絶縁層64がエッチングされて、不要導体部221Aのうち、第2の磁性体部43の外縁における第1、第3および第4の端縁43E1,43E3,43E4(図6B参照)に沿って形成された部分が露出する。また、この工程では、エッチングによって連結部44の端面44aの近傍にバリが発生したり、エッチングによって飛散した物質が、エッチングによって絶縁層63に形成された溝部の壁面に付着して、連結部44を構成する物質に起因する再付着膜が形成されたりする場合がある。そして、バリや再付着膜を介して、不要導体部221Aと連結部44とが導通する場合がある。図24Bにおいて符号C3,C4を付した円は、不要導体部221Aと連結部44の導通が生じる箇所を示している。このように、不要導体部221Aと連結部44の導通が生じると、不要導体部221Aを介して、本来は絶縁されるべき連結部44を含む磁路構成部M1とコイル220との間で短絡が生じる。
これに対し、本実施の形態では、前述のように、第1のマスク101を用いて、下地部62Cの上に選択的に、シード層21を形成する。すなわち、シード層21は、第1の絶縁膜62のうちの第1および第2の磁性体部42,43を覆う部分の上には形成されない。そのため、本実施の形態では、シード層21の不要部分の除去をIBEによって行っても、比較例においてシード層221の不要部分の除去をIBEによって行う場合に発生する問題は生じない。そして、本実施の形態によれば、不要導電膜121の除去をIBEによって行うことにより、第1のコイル20の巻線の幅が小さくなったり、第1のコイル20の内部にボイドが発生したりするという問題が発生することを防止することができる。
なお、シード層21の不要部分が第2の磁性体部43の近傍に存在していると、IBEによってシード層21の不要部分を除去する工程において、エッチングによって飛散した物質が、第1の絶縁膜62のうちの第2の磁性体部43を覆う部分の上に堆積して、導電性の再付着膜が形成される場合がある。この再付着膜が形成された場合には、図23Aないし図24Bを参照して説明した比較例の問題と同様の問題が発生するおそれがある。
上記の問題の発生を防止するためには、第1のマスク101の第2の部分101Bの外縁のうち、第2の磁性体部43の外縁における第1、第3および第4の端縁43E1,43E3,43E4にそれぞれ平行な3つの部分を、それぞれ、第1、第3および第4の端縁43E1,43E3,43E4から100μm以上離すことが有効である。すなわち、これにより、シード層21の不要部分は、第1、第3および第4の端縁43E1,43E3,43E4から十分に遠ざけられる。その結果、IBEによってシード層21の不要部分を除去する工程において、第1、第3および第4の端縁43E1,43E3,43E4に沿って再付着膜が形成されることを防止することができる。
以上のことから、本実施の形態によれば、シード層21に起因する問題の発生を防止しながら、自己整合的に第1のコイル20を形成することが可能になる。
なお、上述の第1のコイル20についての説明は、第2のコイル10についても当てはまる。本実施の形態によれば、シード層11に起因する問題の発生を防止しながら、自己整合的に第2のコイル10を形成することが可能になる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、第1のコイル20を形成する工程で用いられる第2のマスクの形成方法が、第1の実施の形態と異なっている。
以下、図27Aないし図29Bを参照して、本実施の形態における第2のマスクの形成方法について詳しく説明する。図27Aないし図29Bは、磁気ヘッドの製造過程における積層体の一部を示している。図nA(nは27以上29以下の整数)は、前記主断面に現れる積層体の一部の断面を示している。図nBは、上記積層体の一部の上面を示している。図nBにおいて、nA−nA線は、図nAの断面の位置を示している。図27Aないし図29Bにおいて、記号“ABS”は、媒体対向面90が形成される予定の位置を表している。
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法は、第1のマスク101を除去する工程(図8Aおよび図8B参照)までは、第1の実施の形態と同様である。図27Aおよび図27Bは、次の工程を示す。この工程では、まず、積層体の上面全体の上に、フォトレジストよりなるフォトレジスト層105Aを形成する。次に、フォトレジスト層105Aを加熱して硬化させる。
図28Aおよび図28Bは、次の工程を示す。この工程では、フォトレジスト層105Aの上に、エッチングマスク層105Bを形成する。エッチングマスク層105Bは、後に形成される第2のマスクの開口部の平面形状に対応した形状の開口部105Baを有している。開口部105Baの縁の一部は、第1および第2の磁性体部42,43の上方に配置されている。エッチングマスク層105Bは、例えば、アルミナや酸化ケイ素(SiO2)等の無機絶縁材料または金属材料によって形成されている。
図29Aおよび図29Bは、次の工程を示す。この工程では、エッチングマスク層105Bを用いて、RIEによって、フォトレジスト層105Aをエッチングして、フォトレジスト層105Aのうち、エッチングマスク層105Bの開口部105Baから露出する部分を除去する。これにより、フォトレジスト層105Aに、後に形成される第2のマスクの開口部の平面形状に対応した形状の開口部105Aaが形成される。フォトレジスト層105AをRIEによってエッチングする際のエッチングガスとしては、例えば、O2を含むガスまたはO2およびCF4を含むガスが用いられる。フォトレジスト層105Aに開口部105Aaが形成されることにより、第2のマスク105が完成する。第2のマスク105は、エッチング後のフォトレジスト層105Aとエッチングマスク層105Bによって構成されている。また、第2のマスク105は、導電層22Pを収容する予定の開口部105aを有している。開口部105aは、フォトレジスト層105Aの開口部105Aaとエッチングマスク層105Bの開口部105Baによって構成されている。
本実施の形態では、エッチングマスク層105Bを用いてフォトレジスト層105Aをエッチングすることにより、第2のマスク105を形成している。エッチングマスク層105Bは、第1の実施の形態における第2のマスク102に比べて、精度よく形成することが可能である。これにより、本実施の形態によれば、第1の実施の形態に比べて、第2のマスク105を精度よく形成することが可能である。すなわち、本実施の形態によれば、第1の実施の形態に比べて、第1のコイル20の第1のコイル要素20Aと第2のコイル要素20B(図1および図5参照)の間隔がより小さくなるような第2のマスク105を形成することが可能である。これにより、本実施の形態によれば、記録シールド16から主磁極15に至る磁路のうち、第1および第2の磁性体部42,43を経由する第1の磁路(図1および図2参照)の長さをより短くすることが可能になる。
なお、第2のマスク105の形成方法は、第2のコイル10を形成する工程で用いられる第2のマスクの形成方法にも適用することができる。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、図30ないし図32を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図30は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける記録ヘッド部を示す断面図である。なお、図30は前記主断面を示している。図31は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける第2のコイルを示す平面図である。図32は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける第1のコイルを示す平面図である。図31および図32において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。
本実施の形態では、第1のコイル20および第2のコイル10の構成が、第1の実施の形態と異なっている。始めに、図30および図32を参照して、第1のコイル20の構成、ならびに、第1の組の第1の磁性体部42、第2の磁性体部43および連結部44と、第1のコイル20との位置関係について説明する。本実施の形態では、第1のコイル20は、第1の磁性体部42の周りに約3回巻かれている。また、第1のコイル20は、第1の磁性体部42と第2の磁性体部43の間に位置する1つ以上のコイル要素として、第1および第2のコイル要素20A,20Bに加えて、第3のコイル要素20Cを含んでいる。第1ないし第3のコイル要素20A,20B,20Cは、媒体対向面90側から20B,20C,20Aの順に、媒体対向面90に垂直な方向に並んでいる。また、図30に示したように、第1ないし第3のコイル要素20A,20B,20Cは、連結部44に対して記録媒体100の進行方向Tの後側に配置されている。
次に、図30および図31を参照して、第2のコイル10の構成、ならびに、第2の組の第1の磁性体部32、第2の磁性体部33および連結部31と、第2のコイル10との位置関係について説明する。本実施の形態では、第2のコイル10は、第1の磁性体部32の周りに約3回巻かれている。また、第2のコイル10は、第1の磁性体部32と第2の磁性体部33の間に位置する1つ以上のコイル要素として、第1および第2のコイル要素10A,10Bに加えて、第3のコイル要素10Cを含んでいる。第1ないし第3のコイル要素10A,10B,10Cは、媒体対向面90側から10B,10C,10Aの順に、媒体対向面90に垂直な方向に並んでいる。また、図30に示したように、第1ないし第3のコイル要素10A,10B,10Cは、連結部31に対して記録媒体100の進行方向Tの前側に配置されている。
本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法では、第1の実施の形態と同様に、第1のコイル20を形成する工程において、第2のマスクの開口部内に収容されるように、第1のコイル20を構成するための導電層が形成される。上記導電層のうち、後に第3のコイル要素20Cとなる部分の厚みは、上記導電層のうち、後に第1および第2のコイル要素20A,20Bとなる部分の厚みよりも小さくなる。もし、第1の実施の形態で説明した比較例の磁気ヘッドの製造方法と同様の方法によって、本実施の形態における第1のコイル20を形成した場合には、第3のコイル要素20Cの厚みを十分に大きくし、且つ研磨のマージンを十分に大きくしようすると、導電層のうち、第1の磁性体部42と第2の磁性体部43に乗り上げる部分がより厚くなる。その結果、第1の実施の形態で説明した比較例における第2の問題が発生する。
これに対し、本実施の形態では、第3のコイル要素20Cの厚みを十分に大きくしても、第1の実施の形態で説明したように、比較例に比べて、導電層のうち、第1の磁性体部42と第2の磁性体部43に乗り上げる部分の厚みは小さくなる。これにより、本実施の形態によれば、上記第2の問題が発生することを防止することができる。
上述の第1のコイル20についての説明は、第2のコイル10についても当てはまる。
なお、本実施の形態において、第1のコイル20を形成する工程で用いられる第2のマスクの形成方法と、第2のコイル10を形成する工程で用いられる第2のマスクの形成方法は、第2の実施の形態における第2のマスク105の形成方法と同じであってもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
[第4の実施の形態]
次に、図33ないし図37を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る磁気ヘッドについて説明する。図33は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける記録ヘッド部を示す断面図である。図34は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの構成を示す断面図である。図34において記号Tで示す矢印は、記録媒体の進行方向を表している。図35は、本実施の形態に係る磁気ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。図36は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける第1のコイルを示す平面図である。図37は、本実施の形態に係る磁気ヘッドにおける第2のコイルを示す平面図である。図35ないし図37において記号TWで示す矢印は、トラック幅方向を表している。
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、熱アシスト磁気記録に用いられるものである。熱アシスト磁気記録では、保磁力の大きな記録媒体を使用し、情報の記録時には、記録媒体のうち情報が記録される部分に対して記録磁界と同時に熱も加えて、その部分の温度を上昇させ保磁力を低下させて情報の記録を行う。情報が記録された部分は、その後、温度が低下して保磁力が大きくなり、磁化の熱安定性が高まる。
本実施の形態に係る磁気ヘッドは、第1の実施の形態における記録ヘッド部92の代わりに、記録ヘッド部192を備えている。記録ヘッド部192は、非磁性層84の上に配置されている。記録ヘッド部192は、第1のコイル126と、第2のコイル131と、磁路構成部M2とを備えている。図34および図36において、符号126Eは、第1のコイル126のうち、第2のコイル131に接続されるコイル接続部を示している。図34および図37おいて、符号131Sは、第2のコイル131のうち、第1のコイル126のコイル接続部126Eに接続されるコイル接続部を示している。
第1および第2のコイル126,131は、記録媒体100に記録する情報に応じた磁界を発生する。磁路構成部M2は、磁性材料よりなり、第1および第2のコイル126,131によって発生された磁界に対応する磁束を通過させる磁路を構成する。本実施の形態では、磁路構成部M2は、主磁極124と、帰磁路部R2とを有している。図33および図35に示したように、主磁極124は、媒体対向面90に配置された第1の端面124aを有している。帰磁路部R2は、媒体対向面90に配置された第2の端面R2aを有している。図33および図34に示したように、帰磁路部R2は、主磁極124に接続されている。主磁極124および帰磁路部R2は磁路構成部M2の一部であることから、磁路構成部M2が第1の端面124aおよび第2の端面R2aを有しているとも言える。磁路構成部M2は、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体100に記録するための記録磁界を第1の端面124aから発生させる。図33および図34は、第1の端面124aと交差し、媒体対向面90および基板1の上面1aに垂直な断面すなわち主断面を示している。
第1のコイル126、第2のコイル131、主磁極124および帰磁路部R2の材料は、第1の実施の形態における第1のコイル20、第2のコイル10、主磁極15および帰磁路部R1の材料と同じである。
帰磁路部R2は、第2の端面R2aを有するシールド層113と、コア部125,130と、ヨーク層111と、連結部114,115と、連結層129,135とを含んでいる。ヨーク層111は、非磁性層84の上に配置されている。記録ヘッド部192は、更に、非磁性層84の上においてヨーク層111の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層112を備えている。絶縁層112は、例えばアルミナによって形成されている。
シールド層113と連結部114,115は、いずれもヨーク層111の上に配置されている。連結部114,115は、それぞれ、第1層、第2層および第3層を有している。連結部114の第1層と連結部115の第1層は、トラック幅方向TW(X方向)に並ぶように配置されている。
記録ヘッド部192は、更に、導波路を備えている。導波路は、光を伝搬させるコア117と、コア117の周囲に配置されたクラッドとを有している。クラッドは、クラッド層116,118,119を含んでいる。クラッド層116は、ヨーク層111、絶縁層112およびシールド層113を覆うように配置されている。コア117は、クラッド層116の上に配置されている。クラッド層118は、クラッド層116の上においてコア117の周囲に配置されている。クラッド層119は、コア117およびクラッド層118の上に配置されている。
コア117は、近接場光の発生に用いられるレーザ光を通過させる誘電体材料によって形成されている。コア117には、図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光が入射され、このレーザ光はコア117内を伝搬する。クラッド層116,118,119は、コア117の屈折率よりも小さい屈折率を有する誘電体材料によって形成されている。コア117の材料としては、例えば、Ta2O5等の酸化タンタルや酸窒化ケイ素(SiON)が用いられ、クラッド層116,118,119の材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)やアルミナが用いられる。
連結部114,115の第1層は、クラッド層116に埋め込まれている。連結部114,115の第2層は、クラッド層118に埋め込まれている。連結部114の第2層と連結部115の第2層は、コア117のトラック幅方向TW(X方向)の両側において、コア117に対して間隔をあけて配置されている。
記録ヘッド部192は、更に、媒体対向面90の近傍においてクラッド層119の上に配置されたプラズモンジェネレータ140と、クラッド層119の上においてプラズモンジェネレータ140の周囲に配置された誘電体層120とを備えている。プラズモンジェネレータ140は、後で説明する原理によって表面プラズモンが励起されるものである。プラズモンジェネレータ140は、例えば、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Rh、Irのいずれか、またはこれらのうちの複数の元素よりなる合金によって形成されている。誘電体層120は、例えば、クラッド層116,118,119と同じ材料によって形成されている。
記録ヘッド部192は、更に、プラズモンジェネレータ140および誘電体層120の上に配置された誘電体層122と、プラズモンジェネレータ140および誘電体層122を覆うように配置された誘電体層123とを備えている。誘電体層122は、媒体対向面90に最も近い端面を有している。誘電体層122の前記端面における任意の位置の媒体対向面90からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。誘電体層122は、例えば、クラッド層116,118,119と同じ材料によって形成されている。誘電体層123は、例えばアルミナによって形成されている。連結部114,115の第3層は、クラッド層119および誘電体層120,122,123に埋め込まれている。
主磁極124は、コア117との間にプラズモンジェネレータ140を挟むように誘電体層123の上に配置されている。主磁極124は、第1の端面124aとその反対側の端部とを有する細幅部と、この細幅部の端部に接続された幅広部とを含んでいてもよい。幅広部のトラック幅方向TW(X方向)の幅は、細幅部のトラック幅方向TW(X方向)の幅よりも大きい。
コア部125は、連結部114,115および誘電体層123の上に配置されている。また、コア部125は、媒体対向面90から離れた位置に配置されている。主磁極124は、コア部125に対して間隔を開けてコア部125と媒体対向面90の間に配置されている。
図33、図34および図36に示したように、第1のコイル126は、コア部125の周りに約2回巻かれている。記録ヘッド部192は、更に、第1のコイル126を主磁極124、コア部125および誘電体層123に対して絶縁する絶縁材料よりなる第1の絶縁膜127と、第1のコイル126の巻線間ならびに主磁極124および第1のコイル126の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層128とを備えている。第1の絶縁膜127および絶縁層128は、例えばアルミナによって形成されている。
連結層129は、主磁極124の上に配置されている。また、連結層129は、媒体対向面90に向いた端面を有している。この端面における任意の位置の媒体対向面90からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。
コア部130は、コア部125の上に配置されている。また、コア部130は、媒体対向面90から離れた位置に配置されている。連結層129は、コア部130に対して間隔を開けてコア部130と媒体対向面90の間に配置されている。
図33、図34および図37に示したように、第2のコイル131は、コア部130の周りに約2回巻かれている。記録ヘッド部192は、更に、第2のコイル131を第1のコイル126、連結層129およびコア部130に対して絶縁する絶縁材料よりなる第2の絶縁膜132と、第2のコイル131の巻線間ならびに連結層129および第2のコイル131の周囲に配置された絶縁材料よりなる絶縁層133と、第2のコイル131および絶縁層133の上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層134とを備えている。第2の絶縁膜132および絶縁層133,134は、例えばアルミナによって形成されている。
連結層135は、連結層129、コア部130および絶縁層134の上に配置され、連結層129とコア部130を連結している。連結層135は、媒体対向面90に向いた端面を有している。この端面における任意の位置の媒体対向面90からの距離は、任意の位置が基板1の上面1aに近づくに従って小さくなっている。また、連結層135の端面は、連結層129の端面に連続している。
記録ヘッド部192は、更に、連結層129の端面と媒体対向面90との間および連結層135の周囲に配置された絶縁層136を備えている。絶縁層136は、例えばアルミナによって形成されている。
次に、図33、図36および図37を参照して、磁路構成部M2と、第1のコイル126および第2のコイル131について詳しく説明する。磁路構成部M2は、第1の実施の形態における磁路構成部M1と同様に、第1および第2の組の第1の磁性体部、第2の磁性体部および連結部を含んでいる。
第1の組の第1の磁性体部および第2の磁性体部は、それぞれ、コア部125および主磁極124によって構成されている。第1の組の連結部は、連結層129,135およびコア部130によって構成されている。以下、コア部125および主磁極124を、それぞれ、第1の磁性体部125および第2の磁性体部124とも記す。
第2の組の第1の磁性体部、第2の磁性体部および連結部は、それぞれ、コア部130、連結層129および連結層135によって構成されている。以下、コア部130および連結層129を、それぞれ、第1の磁性体部130および第2の磁性体部129とも記す。
本実施の形態では、コア部130および連結層129,135は帰磁路部R2の一部であることから、帰磁路部R2が、第2の組の第1の磁性体部、第2の磁性体部および連結部を含んでいるとも言える。
以下、図33および図36を参照して、第1のコイル126の構成、ならびに、第1の組の第1の磁性体部125、第2の磁性体部124および連結部と、第1のコイル126との位置関係について説明する。図36は、第1のコイル126を示す平面図である。第1のコイル126は、帰磁路部R2の一部である第1の磁性体部125の周りに約2回巻かれている。また、第1のコイル126は、第1の磁性体部125と第2の磁性体部124の間に位置する第1のコイル要素126Aおよび第2のコイル要素126Bを含んでいる。第1および第2のコイル要素126A,126Bは、媒体対向面90側から126B,126Aの順に、媒体対向面90に垂直な方向に並んでいる。また、図33に示したように、第1および第2のコイル要素126A,126Bは、連結部(連結層129,135およびコア部130)に対して記録媒体100の進行方向Tの後側に配置されている。
図33および図36に示したように、第1の磁性体部125は、第1のコイル126の第1および第2のコイル要素126A,126Bに向いた第1の側壁125aを有している。第2の磁性体部124は、第1のコイル126の第1および第2のコイル要素126A,126Bに向いた第2の側壁124bを有している。第1のコイル要素126Aは、第1の側壁125aに対向する第1の側面126Aaを有している。第2のコイル要素126Bは、第2の側壁124bに対向する第2の側面126Baを有している。
図33に示したように、第1の絶縁膜127は、第1の側壁125aと第1の側面126Aaの間に介在する第1の介在部127Aと、第2の側壁125bと第2の側面126Baの間に介在する第2の介在部127Bと、第1および第2の介在部127A,127Bに連続する下地部127Cとを含んでいる。第1および第2のコイル要素126A,126Bは、下地部127Cの上に配置されている。
第1の側壁125aと第1の側面126Aaとの最小間隔と、第2の側壁125bと第2の側面126Baとの最小間隔は、いずれも、例えば50〜200nmの範囲内である。第1の側壁125aと第1の側面126Aaとの最小間隔は、第1の介在部127Aの厚みと等しい。また、第2の側壁125bと第2の側面126Baとの最小間隔は、第2の介在部127Bの厚みと等しい。また、第1の磁性体部125と媒体対向面90の最短距離は、例えば1.4〜4.0μmの範囲内である。
次に、図33および図37を参照して、第2のコイル131の構成、ならびに、第2の組の第1の磁性体部130、第2の磁性体部129および連結部と、第2のコイル131との位置関係について説明する。図37は、第2のコイル131を示す平面図である。第2のコイル131は、帰磁路部R2の一部である第1の磁性体部130の周りに約2回巻かれている。また、第2のコイル131は、第1の磁性体部130と第2の磁性体部129の間に位置する第1のコイル要素131Aおよび第2のコイル要素131Bを含んでいる。第1および第2のコイル要素131A,131Bは、媒体対向面90側から131B,131Aの順に、媒体対向面90に垂直な方向に並んでいる。また、図33に示したように、第1および第2のコイル要素131A,131Bは、連結部(連結層135)に対して記録媒体100の進行方向Tの後側に配置されている。
また、図33および図37に示したように、第1の磁性体部130は、第2のコイル131の第1および第2のコイル要素131A,131Bに向いた第1の側壁130aを有している。第2の磁性体部129は、第2のコイル131の第1および第2のコイル要素131A,131Bに向いた第2の側壁129aを有している。第1のコイル要素131Aは、第1の側壁130aに対向する第1の側面131Aaを有している。第2のコイル要素131Bは、第2の側壁129aに対向する第2の側面131Baを有している。
図33に示したように、第2の絶縁膜132は、第1の側壁130aと第1の側面131Aaの間に介在する第1の介在部132Aと、第2の側壁129aと第2の側面131Baの間に介在する第2の介在部132Bと、第1および第2の介在部132A,132Bに連続する下地部132Cとを含んでいる。第1および第2のコイル要素131A,131Bは、下地部132Cの上に配置されている。
第1の側壁130aと第1の側面131Aaとの最小間隔と、第2の側壁129aと第2の側面131Baとの最小間隔は、いずれも、例えば50〜200nmの範囲内である。第1の側壁130aと第1の側面131Aaとの最小間隔は、第1の介在部132Aの厚みと等しい。また、第2の側壁129aと第2の側面131Baとの最小間隔は、第2の介在部132Bの厚みと等しい。また、第1の磁性体部130と媒体対向面90の最短距離は、例えば1.4〜4.0μmの範囲内である。
次に、コイル126,131の内部構造の特徴と、コイル126,131の相互接続関係について説明する。図33に示したように、第1のコイル126は、導電材料よりなるシード層1261と、このシード層1261の上に配置された導電材料よりなる主要部分1262とを含んでいる。シード層1261は、第1のコイル126(特に主要部分1262)を構成するための導電層をめっき法で形成する際にシードおよび陰極として用いられる。また、第2のコイル131は、導電材料よりなるシード層1311と、このシード層1311の上に配置された導電材料よりなる主要部分1312とを含んでいる。シード層1311は、第2のコイル131(特に主要部分1312)を構成するための導電層をめっき法で形成する際にシードおよび陰極として用いられる。なお、図34では、シード層1261,1311を省略している。
第2のコイル131のコイル接続部131Sは、第2の絶縁膜132を貫通して第1のコイル126のコイル接続部126Eに電気的に接続されている。図34、図36および図37に示した例では、第1のコイル126と第2のコイル131は、直列に接続されている。
次に、図33ないし図35を参照して、コア117およびプラズモンジェネレータ140の形状の一例について説明する。コア117は、媒体対向面90により近い端面117aと、上面であるエバネッセント光発生面117eと、下面117cと、2つの側面とを有している。端面117aは、媒体対向面90に配置されていてもよいし、媒体対向面90から離れた位置に配置されていてもよい。図33ないし図35には、端面117aが媒体対向面90に配置された例を示している。エバネッセント光発生面117eは、コア117を伝搬する光に基づいてエバネッセント光を発生する。
図33に示したように、プラズモンジェネレータ140は、下面であるプラズモン励起部140aと、上面140bと、媒体対向面90に配置された前端面140cと、その反対側の後端面140dとを有している。プラズモン励起部140aは、コア117のエバネッセント光発生面117eに対して所定の間隔をもって対向している。クラッド層119は、エバネッセント光発生面117eとプラズモン励起部140aとの間に介在している。上面140bは、媒体対向面90に近い順に配置された傾斜部と平坦部を含んでいる。傾斜部における任意の位置の基板1の上面1aからの距離は、任意の位置が媒体対向面90から離れるに従って大きくなっている。平坦部は、実質的に媒体対向面90に垂直な方向に延在している。媒体対向面90に平行なプラズモンジェネレータ140の断面の形状は、例えば矩形である。
前端面140cは、プラズモン励起部140aの前端に位置する近接場光発生部140gを有している。近接場光発生部140gは、主磁極124の第1の端面124aと帰磁路部R2の第2の端面R2aの間に配置されている。近接場光発生部140gは、後で説明する原理によって近接場光を発生する。
また、図示しないが、プラズモンジェネレータ140は、媒体対向面90の近傍に配置された細幅部と、この細幅部よりも媒体対向面90から遠い位置に配置された幅広部とを備えていてもよい。細幅部は、媒体対向面90に配置された前端面を有している。細幅部の前端面は、プラズモンジェネレータ140の前端面140cでもある。媒体対向面90および基板1の上面1aに平行な方向(X方向)についての細幅部の幅は、媒体対向面90からの距離によらずに一定であってもよいし、媒体対向面90に近づくに従って小さくなっていてもよい。幅広部は、細幅部に対して前端面140cとは反対側に位置して細幅部に連結されている。幅広部の幅は、細幅部との境界の位置では細幅部における幅と等しく、細幅部から離れるに従って大きくなっている。
前端面140cの幅(トラック幅方向TWの寸法)は、媒体対向面90における細幅部の幅によって規定される。前端面140cの幅は、例えば5〜40nmの範囲内である。また、前端面140cの高さ(Z方向の寸法)は、媒体対向面90における細幅部の高さによって規定される。前端面140cの高さは、例えば5〜40nmの範囲内である。
次に、本実施の形態における近接場光発生の原理と、近接場光を用いた熱アシスト磁気記録の原理について詳しく説明する。図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光はコア117に入射される。図34に示したように、レーザ光150は、コア117内を媒体対向面90に向けて伝搬して、プラズモンジェネレータ140の近傍に達する。コア117のエバネッセント光発生面117eは、コア117を伝搬するレーザ光150に基づいてエバネッセント光を発生する。すなわち、エバネッセント光発生面117eにおいてレーザ光150が全反射することによって、エバネッセント光発生面117eは、クラッド層119にしみ出すエバネッセント光を発生する。プラズモンジェネレータ140では、プラズモン励起部140aにおいて、上記エバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンが近接場光発生部140gに伝搬され、この表面プラズモンに基づいて近接場光発生部140gより近接場光を発生する。
近接場光発生部140gより発生された近接場光は、記録媒体100に向けて照射され、記録媒体100の表面に達し、記録媒体100の磁気記録層の一部を加熱する。これにより、その磁気記録層の一部の保磁力が低下する。熱アシスト磁気記録では、このようにして保磁力が低下した磁気記録層の一部に対して、主磁極124より発生される記録磁界を印加することによってデータの記録が行われる。
次に、本実施の形態に係る磁気ヘッドの製造方法について簡単に説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、基板1の上面1aの上に、絶縁層71から非磁性層84までの部分を順に形成した後、ヨーク層111および絶縁層112から保護層70までの部分を順に形成する。この製造方法は、磁路構成部M2を形成する工程と、第1の絶縁膜127を形成する工程と、第2の絶縁膜132を形成する工程と、第1のコイル126を形成する工程と、第2のコイル131を形成する工程とを含んでいる。
本実施の形態における第1のコイル126の形成方法と第2のコイル131の形成方法は、第1の実施の形態における第1のコイル20の形成方法または第2のコイル10の形成方法と同様である。なお、第1のコイル126を形成する工程で用いられる第2のマスクの形成方法と、第2のコイル131を形成する工程で用いられる第2のマスクの形成方法は、第2の実施の形態における第2のマスク105の形成方法と同じであってもよい。
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1または第2の実施の形態と同様である。
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、第1の磁性体部、第2の磁性体部、第1のマスク、第2のマスク、シード層および導電層の形状および配置と、コイル要素の数、形状および配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。