JP2016076517A - 磁心用粉末および圧粉磁心 - Google Patents

磁心用粉末および圧粉磁心 Download PDF

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洸 荒木
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哲隆 加古
大平 晃也
Akinari Ohira
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Abstract

【課題】軟磁性金属粉に対する絶縁被膜の被着性向上を図り、磁気特性に優れ、多種多様な用途に適用する圧粉磁心を提供する。
【解決手段】軟磁性金属粉2及びその表面を被覆する絶縁被膜3からなる磁性粉1を主体とし、絶縁被膜3が、膨潤性層状粘土鉱物をへき開させてなる結晶4の集合体で形成された磁心用粉末であって、軟磁性金属粉2として、ビッカース硬さでHV98以上のものを使用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁心用粉末および圧粉磁心に関する。
圧粉磁心とは、表面を絶縁被膜で被覆した無数の軟磁性金属粉(以下「磁性粉」という)を主体とする原料粉末(以下「磁心用粉末」という)を圧縮成形して得られる電磁部品である。このような圧粉磁心は、形状自由度が高く、小型化や複雑形状化の要請に容易に対応し得ることから近年重用されている。
ところで、磁心の磁気特性を高めるには、磁心の保磁力を小さくするのが有効である。保磁力が小さくなれば、透磁率が増大する一方でヒステリシス損(鉄損)が低下するからである。圧粉磁心の保磁力は、軟磁性金属粉の粒径、不純物含有量および歪量などによって左右され、圧粉磁心の保磁力を小さくするには、磁心用粉末の生成時や圧粉体の圧縮成形時等に軟磁性金属粉に蓄積された歪を除去するのが有効である。上記の歪を適切に除去するには磁心用粉末の圧粉体を所定温度で加熱するのが有効であり、例えば軟磁性金属粉として純鉄粉を採用した場合には、圧粉体を600℃以上、好ましくは650℃以上で加熱(焼鈍)する。従って、軟磁性金属粉の表面を被覆する絶縁被膜には、高い耐熱性が要求される。絶縁被膜の耐熱性が不十分であると、加熱処理(焼鈍処理)に伴って絶縁被膜が損傷,分解,剥離等することから、軟磁性金属粉に蓄積された歪を適当に除去し得るような高温での焼鈍処理が実行できなくなるからである。
また、圧粉磁心の磁気特性(特に磁束密度)を高めるには、磁心用粉末の圧粉体を高密度化するのが有効であり、高密度の圧粉体を得るには、絶縁被膜の膜厚を薄くするのが有効である。
絶縁被膜に求められる上記の特性を同時に満足すべく、本出願人は、膨潤性層状粘土鉱物等の層状酸化物をへき開させてなる結晶の集合体で絶縁被膜を形成することを提案している(特許文献1を参照)。すなわち、上記結晶は、その体積抵抗および分解温度のそれぞれが、概ね1012Ω・cm以上および700℃以上と高く、かつその厚さが1〜数nm程度で安定しているので、上記結晶の集合体で絶縁被膜を形成すれば、膜厚が薄くても高い耐熱性、さらには絶縁性を有する絶縁被膜を得ることができる。
特開2014−116537号公報
しかしながら、本発明者らが検証したところ、特許文献1の構成において軟磁性金属粉が比較的軟質の場合には、圧粉体の圧縮成形時に絶縁被膜が損傷等し易いことが判明した。これは、被覆対象である軟磁性金属粉が比較的軟質であると、金属粉の表面に無数に析出・堆積した上記の結晶が、圧粉体の圧縮成形時に生じる軟磁性金属粉の変形(塑性変形)に追従することができないためであると考えられる。そして、絶縁被膜が損傷等すると、軟磁性金属粉同士が接触し易くなるため、圧粉磁心の鉄損(特に渦電流損)が増大する可能性が高まる。要するに、軟磁性金属粉の選択を誤ると、上記結晶の集合体からなる絶縁被膜自体は必要とされる耐熱性等を十分に具備しているにも関わらず、所望の磁気特性を有する圧粉磁心を得ることが難しくなる。
また、磁心の鉄損に占める渦電流損の割合は高周波になるほど増大し、概ね3kHz以上の周波数帯域では鉄損に占める渦電流損の割合が支配的となる。そのため、絶縁被膜が損傷等する可能性が高い磁性粉(およびこれを主体とした磁心用粉末)は、概ね3kHz以上の周波数帯域で使用される圧粉磁心用として不向きであり、用途が限定されてしまうことになる。
以上の実情に鑑み、本発明の目的は、上記結晶の集合体からなる絶縁被膜の軟磁性金属粉に対する被着性向上を図り、もって磁気特性に優れ、しかも多種多様な用途に適用することのできる圧粉磁心を提供可能とすることにある。
上記の目的を達成するために創案された本発明に係る磁心用粉末は、軟磁性金属粉およびその表面を被覆する絶縁被膜からなる磁性粉を主体とし、絶縁被膜が膨潤性層状粘土鉱物をへき開させてなる結晶の集合体で形成された磁心用粉末であって、軟磁性金属粉がビッカース硬さでHV98以上であることを特徴とする。なお、本発明でいう「膨潤性層状粘土鉱物をへき開させてなる結晶」とは、「膨潤性層状粘土鉱物(膨潤性層状粘土鉱物粉)を構成する結晶であって、この膨潤性層状粘土鉱物からへき開(分離)した結晶」と同義である。また、本発明でいうビッカース硬さは、無数の軟磁性金属粉を樹脂で結合した試験片を作製してから、その表面を研磨して金属粉(粒子)の断面を露出させ、この露出断面の硬度をマイクロビッカース硬さ試験機(例えば、明石製作所製MVK−G3)で測定した値をいう。
本願発明者らが鋭意研究を重ねた結果、磁性粉の母材(絶縁被膜の被覆対象)である軟磁性金属粉が、ビッカース硬さでHV98以上、より好ましくはHV150以上のものであれば、圧粉体の圧縮成形時に個々の磁性粉に加圧力が作用しても、軟磁性金属粉の変形(塑性変形)が抑制されることが判明した。このように、圧粉体の圧縮成形時における軟磁性金属粉の変形が抑制されれば、その表面に析出・堆積した結晶が剥離等し、その結果、上記結晶の集合体からなる絶縁被膜が破損等するのを可及的に防止することができる。従って、本発明によれば、上記結晶の集合体からなる絶縁被膜の軟磁性金属粉に対する被着性に優れた磁性粉、ひいてはこれを主体とする磁心用粉末を得ることができる。
軟磁性金属粉の粒径(個数平均粒径)が小さ過ぎると、成形金型内での流動性、ひいては圧粉体の成形性に悪影響が及び、高密度の圧粉体(高磁束密度の圧粉磁心)を得ることが難しくなるばかりでなく、圧粉磁心のヒステリシス損(鉄損)が大きくなる。一方、軟磁性金属粉の粒径が大き過ぎると、特に圧粉磁心を高周波帯域で使用する場合に渦電流損(鉄損)が大きくなる。従って、高い磁束密度を有すると共に、鉄損が少ない圧粉磁心を得る観点から、軟磁性金属粉は、その粒径が0.1μm以上200μm以下のものを使用するのが好ましい。
本発明に係る磁心用粉末では、磁性粉の母材として比較的高硬度で塑性変形し難い軟磁性金属粉を使用することから、磁気特性に優れた圧粉磁心を得る上で有利となる反面、圧粉体の機械的強度(特に耐欠け性)を確保することが難しく、圧粉体の取り扱い性等に悪影響が及ぶ。また、磁心用粉末が微細な磁性粉(例えば、粒径が0.1μm以上30μm以下の軟磁性金属粉を母材とした磁性粉)を含む場合、圧粉体の成形金型内での磁心用粉末の流動性が悪く、高密度・高精度の圧粉体を得るのが難しくなるという懸念もある。これらの問題は、例えば、磁心用粉末に、磁性粉同士がバインダーを介して結合された造粒粉を含めておくことで同時に解消することができる。
膨潤性層状粘土鉱物を構成する結晶は、通常、その端部に微弱な正の電荷を有している。そして、絶縁被膜は、端部のヒドロキシル基(−OH基)の少なくとも一部がフルオロ基(−F基)に置換された結晶を含むものとすることができる。フルオロ基はヒドロキシル基に比べて電気陰性度が高いので、端部のヒドロキシル基の少なくとも一部がフルオロ基に置換された結晶は、その端部(端面)における正の電荷が弱められる。そのため、このような結晶であれば、隣接する結晶同士の反発力を抑えることができるので、隣接する結晶間の隙間が小さい緻密な絶縁被膜を形成し易くなる。なお、このような作用効果は、珪素含有量を1molとしたとき、ヒドロキシル基のフルオロ基への置換量が0.05mol以上0.3mol以下とされた結晶を用いることで適切に享受することができる。
絶縁被膜は、最大長さを厚さで除して算出されるアスペクト比が相互に異なる二種以上の結晶を含むものとすることができる。このようにすれば、絶縁被膜を隙間の少ない緻密構造にすることができるので、絶縁性能を高めることができる。また、圧粉体の圧縮成形時に生じる軟磁性金属粉の変形(塑性変形)に対する絶縁被膜の追従性が向上する。これは、例えば軟磁性金属粉の組成変形に伴って相対的に高アスペクト比の結晶が移動することにより絶縁被膜の一部が損傷等しても、この損傷部を相対的に低アスペクト比の結晶が補完するためであると考えられる。
本発明に係る磁心用粉末には、固体潤滑剤を含めても良い。このようにすれば、磁性粉同士の摩擦力、さらには磁性粉と圧粉体の成形金型との摩擦力を低減することができるので、高密度の圧粉体を得易くなる他、成形金型の長寿命化を図ることができる。但し、固体潤滑剤の配合割合を高めるほど磁性粉の配合割合が低下するため、高密度の圧粉体、ひいては圧粉磁心を得ることが難しくなる。そのため、固体潤滑剤の配合割合は、1質量%以下とするのが好ましい。
以上で述べた磁心用粉末の圧粉体は、その大半を占める磁性粉の絶縁被膜が耐熱性に優れた結晶の集合体で形成されることから、この圧粉体に対し、軟磁性金属粉に蓄積した歪を適当に除去し得るだけの高温で焼鈍処理を実行しても、絶縁被膜が損傷等することがない。そのため、本発明に係る磁心用粉末の圧粉体を加熱してなる圧粉磁心は磁気特性に優れる。また、絶縁被膜を構成する結晶は、所定の温度以上で加熱すると、縮合反応により、隣接する結晶と結合する。従って、圧粉体を適当な温度以上で加熱すれば、磁気特性のみならず各種強度(機械的強度や耐欠け性等)に優れた圧粉磁心を得ることができる。
本発明に係る磁心用粉末は、特に圧粉体の圧縮成形時に絶縁被膜が損傷等する可能性を効果的に低減できる。従って、本発明に係る磁心用粉末を用いて作製される圧粉磁心は、3kHz以上の周波数帯域でも問題なく使用できる。
以上に示すように、本発明によれば、軟磁性金属粉に対する絶縁被膜の被着性向上を図ることができる。そのため、この磁性粉を主体とした磁心用粉末は、磁気特性に優れ、しかも多種多様な用途に適用することのできる圧粉磁心を作製するのに適したものとなる。
(a)図は、本発明に係る磁心用粉末を模式的に示す図、(b)図は(a)図に示す磁心用粉末の生成工程を模式的に示す図、(c)図は絶縁被膜が形成される様子を模式的に示す図である。 (a)(b)図共に、圧縮成形工程の要部を模式的に示す図である。 (a)図は圧縮成形工程を経て得られる圧粉体の一部を模式的に示す図、(b)図は加熱工程を経て得られる圧粉磁心の組織構造を模式的に示す図である。 圧粉磁心の一例であるチョークコイル用コアの概略斜視図である。 絶縁被膜の変形例を模式的に示す図である。 (a)図は本発明に係る磁心用粉末に含め得る造粒粉を模式的に示す図であり、(b)図は(a)図に示す造粒粉を含む磁心用粉末の圧粉体の組織を模式的に示す図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る磁心用粉末A[図2(a)参照]は、例えばチョークコイル用のコア20(図4参照)のような電磁部品(圧粉磁心)を得るための原料粉末として用いられる。磁心用粉末Aは、図1(a)に示す磁性粉1を主体(主成分)としており、磁性粉1は、軟磁性金属粉2およびその表面を被覆する絶縁被膜3からなる。絶縁被膜3は、膨潤性層状粘土鉱物を構成する結晶であって、この膨潤性層状粘土鉱物からへき開(分離)した結晶4の集合体で形成される[図1(c)参照]。圧粉磁心6[図3(b)参照]は、主に、磁性粉1を生成する磁性粉生成工程と、磁性粉1を主成分とした磁心用粉末Aを得る混合工程と、磁心用粉末Aの圧粉体5[図2(b)参照]を得る圧縮成形工程と、圧粉体5に焼鈍処理を施す加熱工程とを順に経て製造される。以下、各工程について詳述する。
図1(b)は、図1(a)に示す磁性粉1を生成するための生成工程で用いられる装置概要図である。この工程では、例えば、容器10中に満たされた絶縁被膜3の形成材料を含む溶液11に無数の軟磁性金属粉2を浸漬した後、軟磁性金属粉2の表面に付着した溶液11の液体成分を除去する乾燥処理を施すことにより、軟磁性金属粉2およびその表面を被覆する絶縁被膜3からなる磁性粉1を得る。絶縁被膜3の膜厚は、これが厚くなるほど高密度の圧粉体5、ひいては高い磁気特性(特に透磁率)を有する圧粉磁心6を得ることが難しくなる。一方、絶縁被膜3の膜厚が薄過ぎると、圧縮成形工程で磁心用粉末を圧縮する際に絶縁被膜3が破損等し易くなり、隣接する磁性粉1(軟磁性金属粉2)間で渦電流が流れるおそれがある。そのため、絶縁被膜3の膜厚は、軟磁性金属粉2の粒径によっても左右されるが、1nm以上500nmとするのが好ましく、1nm以上100nm以下とするのが一層好ましく、1nm以上20nm以下とするのがより一層好ましい。
軟磁性金属粉2としては、ビッカース硬さでHV98以上、より好ましくはHV150以上のものが使用される。このような硬度を満足し得るものとして、例えば、Fe−Si粉、Fe−Si−Al粉、Fe−Si−Cr粉、Fe−Ni粉、Fe−Ni−Mo粉、Fe−Co粉、Fe−Co−V粉、Fe−Cr粉、Fe基アモルファス粉、Co基アモルファス粉、各種金属ガラス粉等を挙げることができる。軟磁性金属粉2としては純鉄粉を使用することもできるが、純鉄粉は比較的軟質で、上記の硬度を満足しない場合がある。この場合、少なくとも粒子表層部に上記硬度を満たす硬化層を形成するための高硬度化処理を施せば、純鉄粉を本発明に係る磁性粉1の形成材料として使用することができる。上記の高硬度化処理としては、例えば、純鉄粉同士、あるいは純鉄粉とメディア(砥粒)を繰り返し衝突させる処理を採用することができる。
また、使用する軟磁性金属粉2は、どのような製法で製造されたものであっても構わない。具体的には、水アトマイズ粉、ガスアトマイズ粉、電解粉、還元粉、あるいはカルボニル粉等が使用可能である。
軟磁性金属粉2の粒径が小さ過ぎると、成形金型(キャビティ)内での流動性が低下するため高密度の圧粉体5、ひいては高磁束密度の圧粉磁心6を得難くなることに加え、圧粉磁心6のヒステリシス損(鉄損)が大きくなる。また、軟磁性金属粉2の粒径が大き過ぎると、圧粉磁心6の渦電流損(鉄損)が大きくなる。そのため、軟磁性金属粉2としては、その粒径が0.1μm以上200μm以下のものを使用するのが好ましく、1μm以上150μm以下のものを使用するのが一層好ましい。
絶縁被膜3の形成用材料を含む溶液11は、例えば、容器10中に充填した純水や有機溶媒等の適当な溶媒を撹拌しつつ、膨潤性層状粘土鉱物を凝集物が生じないように少量ずつ投入することで作製される。ここで、膨潤性層状粘土鉱物とは、負の電荷を有する珪酸塩の結晶がアルカリ金属カチオンあるいはアルカリ土類金属カチオンを介して積層したフィロ珪酸塩の一種であり、大気中、又は溶媒中で撹拌を加えない場合においては、結晶の負の電荷が結晶間に介在する金属カチオンで中和されることによって電荷のバランス、すなわち結晶の積層構造が安定状態で保たれている。一方、この膨潤性層状粘土鉱物を撹拌中の溶媒(流れのある溶媒)に投入すると、結晶が完全にへき開した状態で分散した溶液11が容易に作製される。すなわち、膨潤性層状粘土鉱物を流れのある溶媒中に投入すると、負の電荷を有する結晶と、正の電荷を有する金属カチオンとが完全に分離した状態で分散した溶液11が作製される。
溶液11における膨潤性層状粘土鉱物の濃度が0.1質量%を下回るような低濃度である場合、所定厚さの絶縁被膜3を得るのに長時間を要する懸念があり、上記濃度が2.0質量%を上回るような高濃度である場合、溶液11の粘度が不当に高くなり過ぎ、絶縁被膜3を精度良く形成するのが難しくなる。従って、溶液11における膨潤性層状粘土鉱物の濃度は0.1〜2.0質量%の範囲内に設定するのが好ましい。
膨潤性層状粘土鉱物としては、陽イオン交換型の膨潤性層状粘土鉱物である膨潤性スメクタイト族鉱物又は膨潤性雲母族鉱物を好ましく使用することができる。膨潤性スメクタイト族鉱物とは、シリカ四面体層の間にマグネシウム(又はアルミニウム)八面体層を挟んだサンドウィッチ型の三層構造を有する珪酸塩層が2以上積層して結晶化したフィロ珪酸塩の一種であり、代表的なものとして、ヘクトライト、モンモリロナイト、サポナイト、スチブンサイト、バイデライト、ノントロナイトおよびソーコナイト等を挙げることができる。また、膨潤性雲母族鉱物とは、対をなす四面体層(各四面体層は、同じ向きで6つ連なったシリカ四面体で構成される)の間にマグネシウム八面体層を挟んだ複合層が積層して結晶化したフィロ珪酸塩の一種であり、代表的なものとして、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライトおよびバーミキュライト等を挙げることができる。なお、膨潤性スメクタイト族鉱物や膨潤性雲母族鉱物以外にも、これらの類似構造を有する層状珪酸塩鉱物の他、これらの置換体、誘導体、変性体を使用することもできる。
スメクタイト族鉱物を構成する結晶は、その長さ(最大直径)を厚さで除して算出されるアスペクト比(=長さ/厚さ)が少なくとも25以上とされた平板状をなし、かつその厚さが1nm程度で安定している。また、雲母族鉱物を構成する結晶は、上記アスペクト比が少なくとも100以上とされた平板状をなし、かつその厚さが10nm程度で安定している。軟磁性金属粉末2の表面を被覆する絶縁被膜3は、その膜厚が薄いほど、またその構造が緻密であるほど、磁気特性に優れた圧粉磁心6を得易くなるため、絶縁被膜3を構成する結晶4は、その厚さおよび長さがそれぞれ1nm以下および50nm以下であるのが好ましい。かかる観点から、結晶4は、膨潤性スメクタイト族鉱物および膨潤性雲母族鉱物のうち、膨潤性スメクタイト族鉱物をへき開させたものが特に好ましく使用される。
そして、以上のようにして作製された溶液11中に軟磁性金属粉2を浸漬させると、軟磁性金属粉末2の表面には、図1(c)に示すように、溶液11中に完全にへき開した状態で分散した結晶4が順次析出・堆積する。
膨潤性層状粘土鉱物を構成する結晶はその体積抵抗が1012Ω・cm以上と高いことから、軟磁性金属粉2の表面に結晶4を析出・堆積させた後、軟磁性金属粉2を溶液11中から取り出して溶液11の液体成分を除去する乾燥処理を施せば、析出した結晶4の集合体で軟磁性金属粉2の表面を被覆する絶縁被膜3が形成される。また、結晶4の分解温度は、軟磁性金属粉2に蓄積された歪を適切に除去し得るような温度(概ね700℃)以上とされ、さらに上記のとおり、個々の結晶4は薄肉の平板状をなし、しかもその厚さが数nm〜10nm程度で安定している。そのため、膨潤性層状粘土鉱物をへき開させてなる結晶4の集合体で形成した絶縁被膜3は、その膜厚が薄くても高い耐熱性や絶縁性能を有するものとなる。従って、軟磁性金属粉2の表面が、膜厚が薄くても高い耐熱性や絶縁性を有する絶縁被膜3で被覆された磁性粉1を容易かつ低コストに形成することができる。
溶液11への軟磁性金属粉2の浸漬時間や溶液11の濃度等によっては、必要以上に多くの結晶4が軟磁性金属粉2の表面に析出し、絶縁被膜3の膜厚が過大となる可能性がある。このような場合でも、アルカリ金属やアルカリ土類金属等のカチオンとイオン結合した結晶4同士は、溶媒のある状態では容易にへき開するため、軟磁性金属粉2とイオン結合した結晶4と比較して容易に取り除くことができる。そのため、結晶4が必要以上に多く析出した場合には、例えばこれを流水に曝すだけで、積層した結晶4を層間剥離させて絶縁被膜3の膜厚を薄くすることができる。つまり、上記の磁性粉1であれば、絶縁被膜3の膜厚を簡便にかつ精度良くコントロールすることができるので、膜厚が薄く、しかも膜厚のばらつきが少ない絶縁被膜3を容易に得ることができるという利点もある。
なお、絶縁被膜3は、以上で述べた方法の他にも、例えば転動流動装置(転動流動コーティング装置とも称される)を用いて形成することができる。図示は省略するが、転動流動装置を用いた場合、次のような手順で絶縁被膜3を形成することができる。まず、無数の軟磁性金属粉2を容器内部に投入してから、容器内部に気流を発生させる気流発生手段を駆動し、軟磁性金属粉2を容器内部で浮遊させた状態で攪拌・流動させる。この状態を維持したまま、上記の溶液11(負の電荷を有する結晶4と、正の電荷を有する金属カチオンとが完全に分離した状態で分散した溶液11)を容器内部にミスト状に噴射し、軟磁性金属粉2に付着させる。軟磁性金属粉2に付着した上記溶液11に含まれる溶媒等の液体成分は、上記気流(風)によって消失し、これに伴って上記溶液11に含まれる結晶4が軟磁性金属粉2の表面に析出・堆積する。この析出・堆積した結晶4により、絶縁被膜3が形成される。
このような方法(転動流動法)では、溶液11の濃度や、転動流動装置の運転時間などを調整することによって絶縁被膜3の膜厚を調整することができる。そのため、膜厚の薄い絶縁被膜3を精度良く形成することができ、しかも磁性粉1(軟磁性金属粉2)相互間で絶縁被膜3の膜厚にバラツキが生じるのを可及的に防止することができる。また、このような方法では、被覆と乾燥を同時進行させることができるので、絶縁被膜3を迅速に形成することができる。
以上のようにして得られた磁性粉1は、混合工程において固体潤滑剤(固体潤滑剤粉)と混合される。これにより、磁性粉1と固体潤滑剤とが混合されてなる磁心用粉末Aが得られる。なお、固体潤滑剤の配合割合を高めるほど磁心用粉末Aに占める磁性粉1の配合割合が低下するため、高密度の圧粉体5、ひいては高磁束密度の圧粉磁心6を得ることが難しくなる。そのため、固体潤滑剤の配合割合は、1質量%以下とするのが好ましく、0.8質量%以下とするのが一層好ましい。すなわち、磁心用粉末Aは、固体潤滑剤を1質量%以下(より好ましくは0.8質量%以下)含み、残部を磁性粉1としたものとする。このように、磁心用粉末Aに固体潤滑剤を含めておけば、圧粉体5の圧縮成形時に、磁性粉1同士の摩擦力、さらには磁性粉1と成形金型との摩擦力を低減することができるので、高密度の圧粉体5を得易くなることに加え、絶縁被膜3の損傷等も可及的に防止することができる。但し、磁心用粉末Aには、必ずしも固体潤滑剤を含める必要はなく、必要に応じて含めれば良い。
ここで、使用可能な固体潤滑剤に特段の制限はなく、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸鉄、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、モンタン酸アミド、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、スターチ、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素、ポリテトラフルオロエチレン、ラウロイルリシン、シアヌル酸メラミン等を使用することができる。以上で例示した固体潤滑剤は、一種のみを用いても良いし、二種以上を混合して用いても良い。
次に、図2(a)(b)に模式的に示す圧縮成形工程では、同軸配置されたダイ12およびパンチ13を有する成形金型を用いて、図3(a)に模式的に示すような圧粉体5を圧縮成形する。すなわち、図2(a)(b)に示すように、成形金型のキャビティに磁心用粉末Aを充填した後、パンチ13をダイ12に対して相対的に接近移動させて圧粉体5を圧縮成形する。成形圧力は、例えば600MPa以上、より好ましくは800MPa以上とする。これにより、図3(a)に模式的に示すように、磁性粉1同士が密着した高密度の圧粉体5が得られる。但し、成形圧力があまりに高過ぎる場合(例えば成形圧力が2000MPaを超える場合)、成形金型の耐久寿命が低下する他、絶縁被膜3が損傷等する可能性が高まる。従って、成形圧力は、600MPa以上2000MPa以下とするのが望ましい。
圧縮成形工程で得られた圧粉体5は加熱工程に移送される。この加熱工程では、適当な雰囲気下におかれた圧粉体5を、軟磁性金属粉2の再結晶温度以上融点以下で所定時間加熱する(焼鈍処理)。これにより、軟磁性金属粉2に蓄積した歪(結晶歪)が適当に除去された高磁束密度の圧粉磁心6[図3(b)参照]が得られる。なお、軟磁性金属粉2として純鉄粉を使用した場合の焼鈍処理温度は600〜700℃程度、Fe−Si粉、Fe−Si−Al粉、Fe−Si−Cr粉、Fe−Ni粉、Fe−Ni−Mo粉、Fe−Co粉、Fe−Co−V粉、Fe−Cr粉等を使用した場合の焼鈍処理温度は700〜850℃程度、Fe基アモルファス粉やCo基アモルファス粉を使用した場合の焼鈍処理温度は450〜550℃程度とする。また、圧粉体5の加熱時間は、圧粉体5の大きさにもよるが、圧粉体5の芯部まで十分に加熱できるような時間(例えば5〜120分程度)に設定する。圧粉体5を上記のような条件で加熱しても、絶縁被膜3を構成する結晶4は、基本的には上記温度範囲での焼鈍処理の実施によっても分解等しないだけの耐熱性を有し、仮に多少の分解が生じても、分解後の生成物は分解前の結晶4と同等の絶縁性を有する。そのため、圧粉体5に焼鈍処理を施すのに伴って絶縁被膜3の絶縁性が低下するような事態は可及的に防止される。
上記のような焼鈍処理を施すことで得られた圧粉磁心6は、軟磁性金属粉末2に蓄積した歪が適当に除去され、磁気特性に優れたものとなる。また、上記のような温度で焼鈍処理を実施すれば、軟磁性金属粉2に蓄積した歪が除去されるのと同時に、絶縁被膜3を構成する個々の結晶4は、縮合反応によって隣接する結晶4と結合する。そのため、機械的強度が高められた圧粉磁心6を得ることができる。
特に、本発明に係る磁心用粉末Aでは、磁性粉1の母材(絶縁被膜3の被覆対象)である軟磁性金属粉2が、ビッカース硬さでHV98以上、より好ましくはHV150以上のものとされる。この場合、圧粉体5の圧縮成形時に個々の磁性粉1に加圧力が作用しても、軟磁性金属粉2の変形(塑性変形)が抑制される。このように、圧粉体5の圧縮成形時における軟磁性金属粉2の変形が抑制されれば、その表面に析出・堆積した結晶4が剥離等し、その結果、結晶4の集合体からなる絶縁被膜3が部分的に破損等するのを可及的に防止することができる。そのため、本発明に係る磁心用粉末Aであれば、これを圧縮成形した場合でも隣接する軟磁性金属粉2同士が接触し難いため、渦電流損(鉄損)の小さい圧粉磁心6を得ることができる。また、渦電流損が小さくなれば、鉄損に占める渦電流損の割合が支配的となる概ね3kHz以上の周波数帯域においても、圧粉磁心6を問題なく使用することが可能となる。
以上のようにして得られた圧粉磁心6は、上記のとおり、磁気特性に加え、機械的強度に優れることから、自動車や鉄道車両等、高回転速度および高加速度で、しかも常時振動に曝される輸送機用モータの他、チョークコイル、パワーインダクタまたはリアクトル等の電源回路用部品の磁心(コア)として好ましく使用することができる。具体例を挙げると、本発明に係る磁心用粉末Aを用いて得られる圧粉磁心6は、図4に示すようなチョークコイル用のコア20として使用することができる。そして、円環状のコア20にコイルを巻き回せば、チョークコイルが得られる。なお、圧粉磁心6は、圧縮成形された圧粉体を加熱することで得られる関係上、形状自由度が高い。そのため、図4に示すような単純形状のコア20のみならず、複雑形状のコアであっても、容易に量産することができる。
以上、本発明の実施形態に係る磁心用粉末Aおよびこれを用いて作製した圧粉磁心6について説明を行ったが、これらには本発明の要旨を逸脱しない範囲で適当な変更を施すことが可能である。
例えば、軟磁性金属粉2の表面を被覆する絶縁被膜3は、膨潤性層状粘土鉱物をへき開させてなる結晶4であって、かつその端部(端面)のヒドロキシル基の少なくとも一部がフルオロ基に置換されたものの集合体で形成することができる。
フルオロ基はヒドロキシル基に比べて電気陰性度が高いので、上記のようにヒドロキシル基の少なくとも一部がフルオロ基に置換された結晶4は、その端部(端面)における正の電荷が弱められたものとなる。そのため、このような結晶4を軟磁性金属粉2の表面に析出させたときには、隣接する結晶4同士の反発力を抑えることが可能となり、隣接する結晶4,4間の隙間が小さい(結晶4が密集した)緻密な絶縁被膜3を形成し易くなる。絶縁被膜3が緻密化されれば、磁心用粉末Aの圧粉体5を圧縮成形する際に絶縁被膜3が損傷・剥離等し難くなるので、渦電流損の小さい圧粉磁心6を得る上で有利となる。
但し、フルオロ基はヒドロキシル基よりもイオン半径が大きいことから、ヒドロキシル基のフルオロ基への置換量が多過ぎると、立体障害の影響により絶縁被膜3の緻密化を実現することが難くなる。一方、上記の置換量が少な過ぎても、結晶端部の正の電荷を十分に弱めることができないので、結晶4が密集した緻密な絶縁被膜3を得ることが難しくなる。このような観点から、端部のヒドロキシル基の少なくとも一部をフルオロ基に置換してなる結晶4を用いる場合には、結晶内部の珪素含有量を1molとしたとき、ヒドロキシル基のフルオロ基への置換量が0.05mol以上0.3mol以下とされた結晶4を用いるのが好ましい。
また、ヒドロキシル基の少なくとも一部がフルオロ基に置換された結晶4は、絶縁被膜3の耐熱性向上、ひいては圧粉磁心6の磁気特性向上に寄与する。これは、圧粉体5に焼鈍処理を施した際に、脱水反応、ひいては結晶4の体積減少を引き起こすヒドロキシル基が減少するためである。つまり、絶縁被膜3を構成する結晶4端部のヒドロキシル基がフルオロ基に置換されていない場合に圧粉体5に焼鈍処理を施すと、各結晶4に体積減少に伴う収縮が生じ、この収縮部に形成された隙間を介して軟磁性金属粉2の表面が外部に露出する可能性が高まる。軟磁性金属粉2の表面が外部に露出すると、隣接する軟磁性金属粉2との接触により圧粉磁心6の渦電流損が増大する。これに対し、ヒドロキシル基の少なくとも一部がフルオロ基に置換された結晶4で絶縁被膜3を形成すれば、上記の問題発生を効果的に防止することができる。なお、端部のヒドロキシル基がフルオロ基に置換されていない結晶4の集合体で形成された絶縁被膜3であっても、歪除去に有効とされる焼鈍処理温度に対しては十分な耐熱性を有する。
また、絶縁被膜3は、膨潤性層状粘土鉱物のうち、特に膨潤性スメクタイト族鉱物をへき開させてなる結晶4であって、かつその端部(端面)のヒドロキシル基が金属アルコキシドと縮合された構造を有するものの集合体で形成することもできる。
このような結晶4であれば、これを軟磁性金属粉2の表面に析出させたとき、隣接する結晶4間に形成される隙間を小さくすることができるので、緻密構造の絶縁被膜3を得ることができる。そのため、このような絶縁被膜3を備えた磁性粉1であれば、隣接する粒子間で渦電流が流れるのを可及的に防止することが、すなわち渦電流損の少ない圧粉磁心6を得ることができる。使用可能な金属アルコキシドとしては、例えば、Si(OR)4、Al(OR)4、B(OR)4などを挙げることができる。
また、絶縁被膜3は、膨潤性層状粘土鉱物をへき開させてなる結晶4であって、かつその端部(端面)の少なくとも一部に陰イオンを結合させたものの集合体で形成することもできる。
膨潤性層状粘土鉱物を構成する結晶4は、通常、その端部に微弱な正の電荷を有しているので、結晶4端部の少なくとも一部に陰イオンを結合させれば、当該結晶の電気的な中性度が高まる。従って、このような結晶4であれば、これを軟磁性金属粉2の表面に析出させたとき、隣接する結晶4同士が反発するのを抑制することができるので、緻密な絶縁被膜3を形成し易くなる。結晶4端部に結合させ得る陰イオンとしては、硫化物イオン、硝酸イオン、テトラピロリン酸ナトリウムイオンおよび珪酸ナトリウムイオンの他、高濃度リン酸塩、グリコール、非イオン界面活性剤などを挙げることができる。
また、絶縁被膜3は、さらにジルコニウム化合物を含んで形成されたものとすることができる。このようにすれば、一層耐熱性に優れた絶縁被膜3を得ることができる。使用可能なジルコニウム化合物としては、ジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrSiO4)、ジルコニウム有機金属化合物等が挙げられる。
また、絶縁被膜3は、一種類の結晶4の集合体で形成することができる他、図5に示すように、アスペクト比(=長さ/厚さ)が互いに異なる二種以上(図示例では二種類)の結晶の集合体で形成することができる。詳細に説明すると、図5に示す絶縁被膜3は、アスペクト比が相対的に小さい第1の結晶4aと、アスペクト比が相対的に大きい第2の結晶4bとが混在したものである。第1の結晶4aとしては、例えば、膨潤性スメクタイト族鉱物の一種であるヘクトライトをへき開させたものを使用でき、第2の結晶4bとしては、例えば、ヘクトライトと同様に膨潤性スメクタイト族鉱物の一種であるサポナイトをへき開させたものが使用できる。すなわち、ヘクトライトを構成する結晶は、その長さおよび厚さが、それぞれ40nmおよび1nm(アスペクト比40)であり、サポナイトを構成する結晶は、その長さおよび厚さが、それぞれ50nmおよび1nm(アスペクト比50)である。この場合、アスペクト比が相対的に小さい第1の結晶4aは、アスペクト比が相対的に大きい第2の結晶4b,4b間の隙間を埋めるように配置され、その結果、第1および第2の結晶4a,4bは、図5に示すように、ある程度規則正しく配列すると考えられる。そのため、隣接する結晶間の隙間が小さい緻密構造の絶縁被膜3を得ることができる。
なお、緻密な絶縁被膜3を得るためには、絶縁被膜3の形成材料(第1および第2の結晶4a,4b)を含む溶液11における、各結晶4a,4b(ヘクトライトおよびサポナイト)の配合割合が重要である。本実施形態の構成で言えば、ヘクトライトおよびサポナイトの配合割合を、それぞれ、25〜75質量%および75〜25%質量%とした溶液11を使用するのが好ましく、ヘクトライトおよびサポナイトの配合割合を等しくした溶液11(両者を50質量%ずつ含んだ溶液11)を使用するのが特に好ましい。
ところで、以上で説明した本発明に係る磁心用粉末Aは、HV98以上と比較的高硬度で、圧粉体5の圧縮成形時に塑性変形し難い軟磁性金属粉2を母材とした磁性粉1を主体とすることから、磁気特性に優れた圧粉磁心6を得る上で有利となる反面、圧粉体5を構成する磁性粉1同士の密着力が弱く、ハンドリング等を容易に実施し得るだけの機械的強度(特に耐欠け性)を有する圧粉体5を得ることが難しい。このような問題は、例えば、磁性粉1同士を簡易的に接着し得る粉末状のバインダーを添加・混合した磁心用粉末Aを用いて圧粉体5を圧縮成形することで可及的に解消し得る。すなわち、このような磁心用粉末Aを用いれば、磁性粉1同士の密着力(耐欠け性)が高く、取り扱い性に優れた圧粉体5を得ることができる。但し、磁心用粉末Aに対するバインダーの添加量が多過ぎると、高密度の圧粉体5、ひいては高磁束密度の圧粉磁心6を得る上での障害となることから、磁心用粉末Aに対するバインダーの添加量は1質量%以下とするのが好ましい。粉末状のバインダーは、そのまま磁心用粉末Aに添加しても良いし、適当な溶媒に分散させた状態で磁心用粉末Aに添加しても良い。
使用可能なバインダー(の材料)としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等の群から選択される少なくとも一種を用いることができる。なお、このようなバインダーを含む圧粉体5に焼鈍処理を施すと、使用するバインダーの種類によっては多少の残渣が生じるが、バインダーの大半は消失する。
また、磁心用粉末Aが、小粒径の磁性粉1(例えば、粒径が0.1μm以上30μm以下の軟磁性金属粉2を母材とした磁性粉1)を比較的多く含む場合には、圧粉体5の成形性等に悪影響が及ぶ可能性がある。そのため、磁心用粉末Aとしては、図6(a)に示すように、磁性粉1同士がバインダー7を介して結合され、粒径が10μm〜200μm程度にまで拡大された造粒粉1’を含むものを用いても良い。造粒粉1’は、例えば、無数の磁性粉1とバインダー7の溶液とを混合し、その後、上記溶液の溶媒(液体成分)を消失させることで作製することができる。磁心用粉末Aが上記の造粒粉1’を含んでいれば、成形金型内での磁心用粉末Aの流動性、ひいては圧粉体5の成形性を高めることができるので、高密度の圧粉体5を得易くなる。これは、図6(b)に模式的に示すように、大粒径の磁性粉1(又は造粒粉1’)の間に形成される隙間を埋めるように小粒径の磁性粉1(又は造粒粉1’)が配置されることにより、圧粉体5が緻密構造となるからである。
また、圧粉体5は、成形金型の内壁面(キャビティの画成面)にステアリン酸亜鉛等の潤滑剤を付着させる金型潤滑成形法、および成形金型を最大で150℃程度に加温する温間成形法の何れか一方又は双方を採用して圧縮成形しても良い。このようにすれば、一層高密度の圧粉体5を得易くなる。
軟磁性金属粉の硬度が圧粉磁心の磁気特性(特に電気抵抗率及び鉄損)に及ぼす影響を確認するため、第1の確認試験を実施した。当該試験の実施に際し、HV98以上の軟磁性金属粉を母材とする磁性粉を用いて作製されるリング状試験片(実施例1,2)と、HV98未満の軟磁性金属粉を母材とする磁性粉を用いて作製されるリング状試験片(比較例1,2)とを準備した。以下、実施例1,2及び比較例1,2に係る試験片の作製手順を述べる。
[実施例1]
(1−1)軟磁性金属粉として、個数平均粒径40μmで純度99.8%の水アトマイズ純鉄粉を準備し、この純鉄粉に対して日本コークス工業社製多目的混合粉砕機MP−5を用いて表面硬化処理を施すことにより、純鉄粉の硬度をHV108まで高めた。
(1−2)次に、上記の純鉄粉を株式会社パウレック製の転動流動コーティング装置MP−01内で流動させながら、未変性のヘクトライトの結晶が完全にへき開した状態で分散した溶液(ヘクトライトの配合割合:0.5質量%)をミスト状に噴射し、上記純鉄粉の表面を厚さ約50nmの絶縁被膜で被覆した磁性粉を得た。絶縁被膜は未変性のヘクトライトをへき開させてなる結晶の集合体であり、各結晶は、その長さ及び厚さがそれぞれ約30nm及び約1nmの板状結晶である。
(1−3)上記の磁性粉に対し、トルエンで希釈したバインダーとしてのメチル系シリコーン樹脂(固形分50%)を1質量%添加した上で造粒処理を行い、バインダーを介して磁性粉同士が結合した造粒粉を得た。
(1−4)固体潤滑剤としてのエチレンビスステアリン酸アミドを0.5質量%含み、残部を上記造粒粉とした磁心用粉末を得てから、この磁心用粉末の圧粉体を室温下で圧縮成形した。圧粉体の成形圧は1200MPaとした。
(1−5)上記圧粉体に対して窒素ガス雰囲気下で30分間焼鈍処理を施し、実施例1としてのリング状試験片(外径20mm×内径12mm×高さ6mm)を得た。焼鈍処理の処理温度は、550℃、600℃、650℃及び700℃の4つとした。すなわち、実施例1に係るリング状試験片としては、焼鈍処理の処理温度をそれぞれ異ならせた4種類を作製した(以下に述べる実施例2及び比較例1,2についても同様)。
[実施例2]
上記(1−1)の工程で純鉄粉の硬度をHV98にする以外は、実施例1と同様の手順を踏み、実施例2に係るリング状試験片を作製した。
[比較例1]
上記(1−1)の工程で純鉄粉の硬度をHV90にする以外は実施例1と同様の手順を踏み、比較例1に係るリング状試験片を作製した。
[比較例2]
上記(1−1)の工程で純鉄粉の硬度をHV82にする以外は実施例2と同様の手順を踏み、比較例2に係るリング状試験片を作製した。
以上のようにして作製した実施例1,2及び比較例1,2に係る試験片のそれぞれについて、試験片の寸法及び重量から密度を算出すると共に、試験片の電気抵抗率及び鉄損を測定したので、その結果を表1にまとめて示す。なお、電気抵抗率は、三菱化学アナリック社製の抵抗率計ロレスタAXを用いて測定し、鉄損は、岩通計測社製のB−HアナライザSY−8218を用いて10kHz、50mTの条件で測定した。
Figure 2016076517
表1からも明らかなように、焼鈍温度を550℃及び600℃とした場合には、本発明の構成を有する実施例1,2と本発明の構成を有しない比較例1,2とで電気抵抗率及び鉄損の値に実質的な差はない。これに対し、焼鈍温度を650℃にまで高めた場合、比較例1,2の電気抵抗率は実施例1,2の電気抵抗率よりも小さく、また、比較例1,2の鉄損は実施例1,2の鉄損よりも大きい。これは、相対的に低硬度(軟質)の軟磁性金属粉を母材とした磁性粉を主体として作製される比較例1,2に係る試験片では、絶縁被膜を構成する結晶が圧粉体の圧縮成形時に生じる金属粉の塑性変形に十分に追従できず、絶縁被膜が部分的に破損等したためと考えられる。なお、焼鈍温度を700℃にまで高めた場合には、実施例1,2の電気抵抗率が焼鈍温度を650℃に設定した場合と比較して低下しているが、実施例1,2と比較例1,2の間における鉄損の値の差は一層拡大している。これは、主に、焼鈍温度を高めたことにより歪を十分に除去できたためであると推測される。
以上から、軟磁性金属粉およびその表面を被覆する絶縁被膜からなる磁性粉において、膨潤性層状粘土鉱物をへき開させてなる結晶の集合体で絶縁被膜を形成すると共に、HV98以上の硬度を有する軟磁性金属粉を使用すれば、低鉄損の圧粉磁心を得る上で有利となることがわかる。
膨潤性層状粘土鉱物をへき開させてなる結晶の集合体で絶縁被膜を形成すれば、絶縁性に優れた絶縁被膜を得ることができること、さらには、圧粉磁心の磁気特性向上(低鉄損化)に有利であることを実証するために、第2の確認試験を実施した。この試験の実施に際し、上記結晶の集合体で絶縁被膜を形成した磁性粉を用いて作製されるリング状試験片(実施例3)と、膨潤性層状粘土鉱物の粉末の集合体で絶縁被膜を形成した磁性粉を用いて作製されるリング状試験片(比較例3〜5)とを準備した。以下、実施例3及び比較例3〜5に係る試験片の作製手順について述べるが、実施例3及び比較例3〜5に係る試験片の作製に用いる軟磁性金属粉は、何れも、個数平均粒径5μmで硬度がHV538のガスアトマイズセンダスト(Fe−9.5Si−5.5Al)粉とした。
[実施例3]
(2−1)上記のセンダスト粉を株式会社パウレック製の転動流動コーティング装置MP−01内で流動させながら、未変性のヘクトライトの結晶が完全にへき開した状態で分散した溶液(ヘクトライトの配合割合:0.5質量%)をミスト状に噴射し、上記純鉄粉の表面が膜厚約50nmの絶縁被膜で被覆された磁性粉を得た。つまり、絶縁被膜は未変性のヘクトライトをへき開させてなる結晶の集合体であり、各結晶は、その長さ及び厚さがそれぞれ約50nm及び約1nmの板状結晶である。
(2−2)上記の磁性粉に対し、トルエンで希釈したバインダーとしてのメチル系シリコーン樹脂(固形分50%)を1質量%添加した上で造粒処理を行い、バインダーを介して磁性粉同士が結合した造粒粉を得た。
(2−3)固体潤滑剤としてのエチレンビスステアリン酸アミドを0.5質量%含み、残部を上記造粒粉とした磁心用粉末を得てから、この磁心用粉末の圧粉体を室温下で圧縮成形した。圧粉体の成形圧は1200MPaとした。
(2−4)上記圧粉体に対して窒素ガス雰囲気下で800℃×30分間焼鈍処理を施し、実施例3としてのリング状試験片(外径20mm×内径12mm×高さ6mm)を得た。
[比較例3]
実施例3に係る試験片を得るための上記(2−1)〜(2−4)の工程のうち、上記(2−1)の工程のみが大きく異なる。具体的には、粒径1〜20μm程度のヘクトライト粉と上記センダスト粉とを混合することにより、センダスト粉の表面がヘクトライト粉の集合体からなる絶縁被膜で被覆された磁性粉を得た。なお、センダスト粉に対するヘクトライト粉の配合割合は0.5質量%とした。
[比較例4]
比較例3と同様に、実施例3に係る試験片を得るための上記(2−1)〜(2−4)の工程のうち、上記(2−1)の工程のみが大きく異なる。具体的には、センダスト粉の表面をリン酸鉄被膜で被覆してから、このリン酸鉄被膜の表面を、比較例3と同様のヘクトライト粉の集合体からなる被膜で被覆した。すなわち、比較例4に係る試験片は、絶縁被膜がリン酸鉄被膜とヘクトライト粉の集合体被膜の二層構造とされた磁性粉を用いて作製した。
[比較例5]
比較例3,4と同様に、実施例3に係る試験片を得るための上記(2−1)〜(2−4)の工程のうち、上記(2−1)の工程のみが大きく異なる。具体的には、センダスト粉と0.5質量%の上記ヘクトライト粉との混合粉に対して5質量%の純水を加えて乳鉢で混練した後、乾燥処理を施すことにより、絶縁被膜を形成した。
以上のようにして作製した実施例3及び比較例3〜5に係る試験片のそれぞれについて、試験片の寸法及び重量から密度を算出すると共に、試験片の電気抵抗率、鉄損及び透磁率を測定したので、その結果を表2にまとめて示す。なお、電気抵抗率は、三菱化学アナリック社製の抵抗率計ロレスタAXを用いて測定し、鉄損及び透磁率は、岩通計測社製のB−HアナライザSY−8218を用いて100kHz、100mTの条件で測定した。
Figure 2016076517
表2に示す試験結果からも明らかなように、実施例3と比較例3〜5とを対比すると、本発明に係る磁心用粉末が、高密度で低鉄損の圧粉磁心を得る上で有利であることがわかる。なお、透磁率に着目すると、比較例3の透磁率の方が実施例3の透磁率よりも高くなっているが、比較例3の鉄損は実施例3のそれよりも著しく高いため、実使用するには難がある。
絶縁被膜をアスペクト比が相互に異なる二種以上の結晶の集合体で形成すれば、絶縁被膜の絶縁性向上、さらには、圧粉磁心の磁気特性向上(低鉄損化)に有利であることを実証するために、第3の確認試験を実施した。この試験の実施に際し、絶縁被膜の形成材料として4種類の膨潤性層状粘土鉱物、具体的には、ヘクトライト(結晶長さ:約30nm、結晶厚さ:約1nm)、スチブンサイト(結晶長さ:約40nm、結晶厚さ:約1nm)、
サポナイト(結晶長さ:約50nm、結晶厚さ:約1nm)、及びモンモリロナイト(結晶長さ:約60nm、結晶厚さ:約1nm)を準備した。そして、上記4種の膨潤性層状粘土鉱物の中から選択した2種類の膨潤性層状粘土鉱物を材料として絶縁被膜を形成し、この絶縁被膜を備えた磁性粉(厳密には、この磁性粉を主体とした磁心用粉末)を用いて以下に示す実施例4〜9に係るリング状試験片を作製した。なお、実施例4〜9に係るリング状試験片の作製手順は、絶縁被膜の形成材料を除き、上述した実施例3に係るリング状試験片の作製手順に準ずるので詳細な説明は省略する。
実施例4〜9に係るリング状試験片の作製に用いる磁性粉は、それぞれ、以下の膨潤性層状粘土鉱物を絶縁被膜の形成材料としている。また、実施例4〜9において、絶縁被膜の形成用溶液に対する二種類の膨潤性層状粘土鉱物の配合割合は0.25質量%ずつとした。
・実施例4:ヘクトライト及びスチブンサイト
・実施例5:ヘクトライト及びサポナイト
・実施例6:ヘクトライト及びモンモリロナイト
・実施例7:サポナイト及びスチブンサイト
・実施例8:サポナイト及びモンモリロナイト
・実施例9:スチブンサイト及びモンモリロナイト
実施例4〜9に係る試験片のそれぞれについて、試験片の寸法及び重量から密度を算出すると共に、試験片の電気抵抗率、鉄損及び透磁率を測定したので、その結果を表3にまとめて示す。なお、電気抵抗率、鉄損及び透磁率は、第2の確認試験と同様の装置を使用して測定した。
Figure 2016076517
表2に示した実施例3に係る試験片についてのパラメータの測定結果、および表3に示す実施例4〜9に係る試験片それぞれについてのパラメータの測定結果からも明らかなように、アスペクト比が相互に異なる二種以上の結晶の集合体で絶縁被膜を形成すれば、絶縁被膜の絶縁性向上、さらには圧粉磁心の磁気特性向上(低鉄損化)を図ることができる。特に、各実施例の鉄損に着目すると、アスペクト比が相互に異なる二種以上の結晶の集合体で絶縁被膜を形成すれば、単一種の結晶の集合体で絶縁被膜を形成する場合(表2にしめす実施例3を参照)に比べ、圧粉磁心の一層の低鉄損化に有利であることがわかる。
絶縁被膜の形成材料である膨潤性層状粘土鉱物として、これを構成する結晶の端面に存在するヒドロキシル基をフルオロ基に置換したものを使用した場合に、絶縁被膜の絶縁性、ひいては圧粉磁心の磁気特性に及ぼす影響を確認するために第4の確認試験を実施した。具体的には、各結晶の端面に存在するヒドロキシル基をフルオロ基に置換した膨潤性スメクタイト族鉱物のうち、ヘクトライト(結晶長さ:約30nm、結晶厚さ:約1nm)、スチブンサイト(結晶長さ:約40nm、結晶厚さ:約1nm)、およびサポナイト(結晶長さ:約50nm、結晶厚さ:約1nm)の三種類を準備し、各鉱物の結晶集合体で絶縁被膜を形成した磁性粉を用いて実施例10〜12に係るリング状試験片を作製した。なお、実施例10〜12に係るリング状試験片の作製手順は、絶縁被膜の形成用溶液に対する膨潤性層状粘土鉱物(膨潤性スメクタイト族鉱物)の配合割合を0.4質量%とした点を除き、上述した実施例3に係るリング状試験片の作製手順に準ずるので詳細な説明は省略する。
実施例10〜12に係る試験片のそれぞれについて、試験片の寸法及び重量から密度を算出すると共に、試験片の電気抵抗率、鉄損及び透磁率を測定したので、その結果を表4にまとめて示す。なお、電気抵抗率、鉄損及び透磁率は、第2の確認試験と同様の装置を用いて測定した。
Figure 2016076517
表4に示す測定結果からも明らかなように、実施例10〜12に係る試験片は、上述した実施例1〜9に係る試験片よりも高密度、低鉄損および高透磁率となった。これは、絶縁被膜の形成用溶液に対する膨潤性層状粘土鉱物の配合割合を低下させた分、絶縁被膜が薄肉化したこと、および、結晶端面に存在するヒドロキシル基をフルオロ基に置換した結晶の集合体で絶縁被膜を形成したため、焼鈍処理に伴う結晶の寸法変化(絶縁被膜の収縮)が抑制されたこと、に由来すると考えられる。逆に言えば、焼鈍処理に伴う絶縁被膜の収縮量が少ないため、絶縁被膜の形成用溶液に対する膨潤性層状粘土鉱物の配合割合を低下させても(絶縁被膜の膜厚を薄くしても)、絶縁被膜に必要とされる絶縁性を確保できる。
本発明に係る磁性粉(磁心用粉末)が、周波数3kHz以上の領域で使用される圧粉磁心に適したものであることを確認するために第5の確認試験を実施した。この確認試験の実施に際し、実施例13,14に係るリング状試験片を準備すると共に、比較対象として比較例2に係るリング状試験片(第1の確認試験で使用)を準備した。なお、実施例13に係るリング状試験片は、軟磁性金属粉として、個数平均粒径30μmで硬度がHV250のガスアトマイズ3%珪素鋼(Fe−3Si)粉を用いた点以外は、実施例3に係るリング状試験片(第2の確認試験で使用)と同様の手順・条件で作製したものである。また、実施例14に係るリング状試験片は、軟磁性金属粉として、個数平均粒径30μmで硬度がHV430のガスアトマイズ6.5%珪素鋼(Fe−6.5Si)粉を用いた点以外は、実施例3に係るリング状試験片と同様の手順・条件で作製したものである。
実施例13,14及び比較例2に係る試験片のそれぞれについて、試験片の寸法及び重量から密度を算出すると共に、試験片の電気抵抗率及び鉄損を測定したので、その結果を表5にまとめて示す。なお、電気抵抗率は、三菱化学アナリック社製の抵抗率計ロレスタAXを用いて測定し、鉄損は、岩通計測社製のB−HアナライザSY−8218を用いて1,3,5,7及び10kHz、50mTの条件で測定した。
Figure 2016076517
表5に示す測定結果からも明らかなように、周波数3kHz以上の環境下では、本発明の特徴的な構成を備えた実施例13,14に係る試験片の方が、本発明の特徴的な構成を有しない比較例2に係る試験片に比べて低鉄損であることがわかる。
以上で説明した確認試験の結果から、本発明に係る磁心用粉末は、磁気特性に優れ、しかも3kHz以上の周波数帯域で使用される圧粉磁心を作製する上でも適したものであることがわかる。
1 磁性粉
1’ 造粒粉
2 軟磁性金属粉
3 絶縁被膜
4 結晶
5 圧粉体
6 圧粉磁心
7 バインダー
20 コア

Claims (8)

  1. 軟磁性金属粉およびその表面を被覆する絶縁被膜からなる磁性粉を主体とし、絶縁被膜が膨潤性層状粘土鉱物をへき開させてなる結晶の集合体で形成された磁心用粉末であって、
    軟磁性金属粉がビッカース硬さでHV98以上であることを特徴とする磁心用粉末。
  2. 軟磁性金属粉の粒径が個数平均粒径で0.1μm以上200μm以下である請求項1に記載の磁心用粉末。
  3. バインダーを介して前記磁性粉同士が結合された造粒粉を含む請求項1又は2に記載の磁心用粉末。
  4. 絶縁被膜が、端部のヒドロキシル基の少なくとも一部がフルオロ基に置換された結晶を含む請求項1〜3の何れか一項に記載の磁心用粉末。
  5. 絶縁被膜は、最大長さを厚さで除して算出されるアスペクト比が相互に異なる二種以上の結晶を含む請求項1〜4の何れか一項に記載の磁心用粉末。
  6. 固体潤滑剤を1質量%以下含み、残部を前記磁性粉とした請求項1〜5の何れか一項に記載の磁心用粉末。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載の磁心用粉末の圧粉体を加熱することで形成された圧粉磁心。
  8. 3kHz以上の周波数帯域で使用される請求項7に記載の圧粉磁心。
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