JP2016074950A - 銅合金及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】600MPa以上の引張強度と70%IACS以上の電気伝導率とを兼ね備え、工業的生産が容易なCu−Ti系の銅合金及びその製造方法を提供する。
【解決手段】銅合金は、1.0〜5.0質量%のTiと0.40〜1.3質量%のCとを含有し、残部がCuおよび不可避的不純物で構成され、平均粒径が3nm以上300nm以下のTiC化合物4と、Cuの含有率が99.5質量%以上で粒径サイズが500nm以上1500nm以下である高純度Cu領域6とを含んでおり、電気伝導率が70%IACS以上で、引張強度が600MPa以上である。銅合金の製造方法は、Ti粉末とC粉末とCu粉末とを機械的に混合する工程と、該混合粉末を非酸化雰囲気中で30MPa以上の加圧力、850℃以上の温度で加圧加熱処理を行う工程と、還元雰囲気中で900℃以上の温度で時効処理する工程とを備えている。
【選択図】図3

Description

本発明は、電子機器のリードフレーム、コネクタ端子等の電気伝導部品、および電気機器の配線、リード線等の電線などに用いられる銅合金、及びその製造方法に関するものである。
近年、電子機器の小型化や多機能化、実装面密度の高密度化に伴い、リードフレーム、コネクタ端子などの電気伝導部品には、さらなる小型化・薄肉化が求められている。これらの電気伝導部品は、小型・薄肉に伴って部品の断面積が小さくなるため、これらに用いられる銅合金にはよりいっそうの高強度化、高電気伝導率化が求められている。
また、自動車や工作機械等では、小型化・軽量化の要求が強く、電気機器の配線やリード線等の電線には、さらなる軽量化が求められている。軽量化に伴って電線の断面積が小さくなるため、これらに用いられる銅合金にはよりいっそうの高強度化、高電気伝導率化が求められている。
このような背景から、上述の電子機器の電気伝導部品や電線に用いられる銅合金には、600MPa(メガパスカル)以上の引張強度と70%IACS(International Annealed Cuppor Standard:1.7241× 10-2μΩm)以上の電気伝導率を有することが望まれている。
Cuにチタン(Ti)を添加したCu−Ti合金は、800MPa以上の引張強度を有する高強度銅合金として知られており、世の中では電子機器の電気伝導部品用として工業生産されている。しかし、TiはCuに比べて電気伝導率が低く、しかもCuに固溶しやすいので、Cu−Ti合金中のCuに多くのTiが固溶して電気伝導率の低下を招いてしまい、Cu−Ti合金の電気伝導率は、一般的に10%IACS台と低い(例えば、非特許文献1参照)。
そのため、Cu−Ti合金では電気伝導率の向上が課題となっており、これまでに様々な検討が行われてきた。例えば、適当な圧延加工条件と時効処理条件とを組み合わせることで、電気伝導率を高める工夫が行われており、その結果、20%IACS台の電気伝導率が得られるようになってきている(例えば、特許文献1または2参照)。
また、近年、Cu中のTiに炭素(C)を反応させてTiC化合物を形成し、Cu中にTiC化合物を微細に析出分散させた形態とすることで、高強度と高電気伝導率とを両立させる研究も行われている。Cu粉末、Ti粉末、C粉末をメカニカルアロイング法により20時間かけて機械的に合金化し、800℃で1時間の加熱処理を行うことで、Cu中にTiC化合物が微細に析出分散したCu−Ti−C合金粉(TiC化合物含有率:2.5体積%)が得られることが示されている。この合金粉を800℃で熱間押出し成形することで、657MPaの引張強度と67%IACSの電気伝導率とが得られ、さらに900℃の時効処理を加えることで、電気伝導率がさらに改善され、70%IACS台の値が得られることが示されている(例えば、非特許文献2参照)。また、微量のチタン粉末とカーボンナノチューブとした微量の炭素とを銅に複合添加し、CuTiとTiCとを結晶粒界に沿って分散した銅合金は、65%IACS以上の高電気伝導率を示しているが、チタンおよび炭素の含有量が少ないことが原因で、引張強度は300MPa程度である(例えば、特許文献3参照)。
伸銅品データブック(第2版)、358−365頁 粉体および粉末冶金、1992年、第39巻、第7号、529−538頁
特許第3740474号公報 特許第5084106号公報 特開2013−91816号公報
しかしながら、特許文献1および2においては、圧延加工条件と時効処理条件の工夫だけでは、Cu−Ti合金中のCuに電気伝導率の低いTiが固溶する状況を根本的に解決することができず、Cu−Ti合金の電気伝導率を大きく改善することができない。このため、Cu−Ti合金の電気伝導率は、最大でも22%IACS程度に留まっており、70%IACSを超える高電気伝導率を得ることはできないという課題があった。
また、非特許文献2においては、Cu中のTiにCを反応させてTiC化合物を形成することで、Cu中へのTiの固溶を抑制することができるので、Cu−Ti−C合金の電気伝導率はCu−Ti合金に比べて大幅に向上し、実験的に70%IACS台の値が得られることが確認されている。しかしながら、Cu中にTiC化合物を微細分散させるために、Cu、TiおよびCを機械的に合金化するメカニカルアロイング法を適用しており、この手法は少量の実験サンプルを取り扱う材料研究の手段としてよく用いられるが、製造効率が低いため、大量の合金を製造する工業的な生産には不都合であり、適用できないという課題があった。
このように、従来のCu−Ti合金では、600MPa以上の引張強度と70%IACS以上の電気伝導率とを兼ね備えた特性を実現することは困難であった。また、近年、研究されているCu−Ti−C合金では、600MPa以上の引張強度と70%IACS以上の電気伝導率とを実験的に実現することは可能であるが、研究的手法のため製造効率が低く、工業的に生産を行うことが困難であるという課題があった。
そこで、本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、600MPa以上の引張強度と70%IACS以上の電気伝導率とを兼ね備え、工業的生産が容易なCu−Ti系の銅合金及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係る銅合金は、1.0〜5.0質量%のTiと0.40〜1.3質量%のCとを含有し、残部がCuおよび不可避的不純物で構成される銅合金であって、平均粒径が3nm以上300nm以下のTiC化合物と、Cuの含有率が99.5質量%以上でサイズが500nm以上1500nm以下である高純度Cu組成領域とを、含むことを特徴とする。
また、本発明に係る他の銅合金は、1.0〜5.0質量%のTiと、0.40〜1.3質量%のCと、0.1〜1.0質量%のAgとを含有し、残部がCuおよび不可避的不純物で構成される銅合金であって、平均粒径が3nm以上300nm以下のTiC化合物と、CuおよびAgの含有率の合計が99.5質量%以上でサイズが500nm以上1500nm以下である高純度Cu−Ag組成領域とを、含むことを特徴とする。
また、本発明によれば、電気伝導率が70%IACS以上で、引張強度が600MPa以上、より好ましくは700MPa以上であることを特徴とする銅合金が得られる。
また、本発明に係る銅合金の製造方法は、1.0〜5.0質量%のTiと0.40〜1.3質量%のCとを含有し、残部がCuおよび不可避的不純物で構成される銅合金の製造方法であって、原料であるTi粉末とC粉末とCu粉末とを機械的に混合する工程と、該混合粉末を非酸化雰囲気中で30MPa以上の加圧力および850℃以上の温度で加圧加熱処理を行う工程と、還元雰囲気中で900℃以上の温度で時効処理する工程とを備えることを特徴とする。
更に、本発明に係る他の銅合金の製造方法は、1.0〜5.0質量%のTiと、0.40〜1.3質量%のCと、0.1〜1.0質量%のAgとを含有し、残部がCuおよび不可避的不純物で構成される銅合金の製造方法であって、Ti粉末とC粉末とAg粉末とCu粉末とを機械的に混合する工程と、該混合粉末を非酸化雰囲気中で30MPa以上の加圧力および850℃以上の温度で加圧加熱処理を行う工程と、還元雰囲気中で900℃以上の温度で時効処理する工程とを備えることを特徴とする。
本発明に係る銅合金及びその製造方法によれば、非酸化雰囲気中で30MPa以上の加圧力および850℃以上の温度で加圧加熱処理を行う工程、さらに還元雰囲気中で900℃以上の温度で時効処理する工程により、600MPaの高引張強度と70%IACS以上の高電気伝導率とを兼ね備えたCu−Ti系銅合金が得られるので、電子機器においてはリードフレーム、コネクタ端子などのさらなる小型化・薄肉化が可能となる。
また、自動車や工作機械等では、電気機器の配線やリード線等の電線などのさらなる小型化・軽量化が可能となる。
このように、本発明によれば、600MPa以上の引張強度と70%IACS以上の電気伝導率とを兼ね備え、工業的生産が容易なCu−Ti系の銅合金及びその製造方法を提供することができる。
従来のCu−2.5質量%Ti合金の内部組織の一例を模式的に示した断面図である。 従来のCu−2.5質量%Ti−0.7質量%C合金の内部組織の一例を模式的に示した断面図である。 本発明の実施の形態の銅合金である、Cu−2.5質量%Ti−0.7質量%C合金の内部組織の一例を模式的に示した断面図である。 本発明の実施の形態の銅合金である、Cu−2.5質量%Ti−0.7質量%C−0.5質量%Ag合金の内部組織の一例を模式的に示した断面図である。 本発明の実施の形態の銅合金の製造方法の、Ti粉末、C粉末、Cu粉末の混合後の状態を示す模式図である。 本発明の実施の形態の銅合金の製造方法の、Ti粉末、C粉末、Cu粉末の混合粉の加圧加熱処理における、CuとTiの合金化を示す模式図である。 本発明の実施の形態の銅合金の製造方法の、Ti粉末、C粉末、Cu粉末の混合粉の加圧加熱処理における、Cの合金内部への拡散状態を示す模式図である。 本発明の実施の形態の銅合金の製造方法の、Ti粉末、C粉末、Cu粉末の混合粉の加圧加熱処理後の、還元雰囲気中の時効処理における、構成元素の拡散・合金化の状態を示す模式図である。 本発明の実施の形態の銅合金である、Cu−2.5質量%Ti−0.7質量%C合金の内部組織を示す顕微鏡写真である。
以下に、図面を用いて従来技術と対比しながら本発明の実施の形態の銅合金及びその製造方法を詳細に説明する。
図1は、従来のCu−2.5質量%Ti合金の内部組織の一例を模式的に示したものである。Tiを含有させることで、図1に示すように、Cuの母相1中に粒径が数nmのCu4Ti化合物2が微細に析出分散した内部組織が得られ、800MPaを超える高強度が得られる。しかし、Cuの母相1に電気伝導率の低いTi元素3が多量に固溶しているため、電気伝導率は最大でも20%IACS程度の値しか得られない。
図2は、従来のCu−2.5質量%Ti−0.7質量%C合金の内部組織の一例を模式的に示したものである。メカニカルアロイング法により、Cu、TiおよびCを機械的に合金化した後、800℃で熱間押出し成形を行い、さらに900℃の時効処理を加えることで、図2に示すように、Cuの母相1中に粒径が数十nmのTiC化合物4が微細に析出分散した内部組織が得られる。これにより、700MPa台の引張強度と70%IACS台の電気伝導率とが得られるが、製造にメカニカルアロイング法を用いているため、製造効率が低く、工業的生産を行うことが困難である。なお、図2に示すように、Cuの母相1中には、僅かではあるが、TiC化合物にならずに残ったTi元素3とC元素5とがそれぞれ単独で存在しており、このうちTi元素3はCuの母相1に固溶状態で存在するため、高電気伝導率化の阻害要因が残留した状態となっている。
図3は、本発明の実施の形態の銅合金である、Cu−2.5質量%Ti−0.7質量%C合金の内部組織の一例を模式的に示したものである。たとえ従来と同じ合金組成であっても、本発明の合金の内部組織は、図2に示したような従来のものとは異なり、図3に示すように、Cuの母相1中に粒径が数十nmのTiC化合物4が微細に析出分散した高強度領域と、TiC化合物をほとんど含まない高電気伝導領域の高純度Cu領域6とから構成される。なお、高純度Cu領域6におけるCuの含有率は99.5質量%以上であり、その領域の長径サイズは500nm〜1500nmである。このように、本発明によれば、TiC化合物4が微細に析出分散した領域は、高強度領域となって合金の必要強度を確保する役割を担い、一方、TiC化合物をほとんど含まない高純度Cu領域6は、高電気伝導領域となって合金の電気伝導率の向上に極めて有効に働く。このため、本発明では、600MPa以上の引張強度と70%IACS以上の高電気伝導率とを兼ね備えたCu−Ti系銅合金を得ることができる。なお、図3に示すようにCuの母相1中には、僅かではあるが、TiC化合物にならずに残ったTi元素3とC元素5とがそれぞれ単独で存在しており、このうちTi元素3はCuの母相1に固溶状態で存在するため、電気伝導率の改善の余地が残された状態となっている。
図4は、本発明の実施の形態の銅合金である、Cu−2.5質量%Ti−0.7質量%C−0.5質量%Ag合金の内部組織の一例を模式的に示したものである。本発明の合金の内部組織は、図4に示すように、Cu−Agの母相7中に粒径が数十nmのTiC化合物4が微細に析出分散した高強度領域と、TiC化合物をほとんど含まない高電気伝導領域の高純度Cu−Ag領域8とから構成される。なお、高純度Cu−Ag領域8のCuおよびAgの含有率は99.5質量%以上であり、その領域の長径サイズは500nm〜1500nmである。このように、本発明によれば、TiC化合物4が微細に析出分散した領域は、高強度領域となって合金の必要強度を確保する役割を担い、一方、TiC化合物をほとんど含まない高純度Cu領域6は、高電気伝導領域となって合金の電気伝導率の向上に極めて有効に働く。さらに本発明の合金は、母相がCu−Ag相であるため、母相がCu相である場合と比べて、Tiの固溶量を減少させることができる。その結果、図4に示すように、母相中に固溶したTi元素3はほとんど見られなくなり、その結果、電気伝導率が改善され、600MPa以上の引張強度で、80%IACS以上の電気伝導率を有するCu−Ti系銅合金を得ることができる。
次に、本発明の実施の形態の銅合金の製造方法を具体的に説明する。原料として、Ti粉末、C粉末、Cu粉末を用い、それぞれの粉末を所定の割合(たとえば、Ti粉末250g、C粉末70g、Cu粉末9680g)で配合し、ボールミルなどを使って機械的に数時間混合する。図5は、混合後の粉末の状態を示す模式図である。図5では、Cu粉末の周囲にTi粉末とC粉末とが均一に分散した状態となっている。この時、Cu粉末の粒径は1〜3μm程度、Ti粉末の粒径は0.2〜0.8μm程度、C粉末の粒径は0.1〜0.3μm程度である。次に、得られた混合粉末を成形型に投入し、加熱プレス装置などを使って30MPa以上の加圧力と850℃以上の温度で加圧加熱処理を行う。図6は、加圧加熱処理前後において、構成元素の拡散・合金化状態を模式的に示したものである。これにより、図6に示すように、混合粉末は押し固められて高密度の成形体に変化するとともに、850℃以上の高温に加熱されるので、Cu粉末とTi粉末との接触部分でCuとTiとが合金化し、Cu粉末の周囲にCu−Ti合金が形成される。一方、Cは、単独ではCuと合金化することがないため、C粉末とCu粉末との接触部で特に合金は形成されないが、Cu−Ti合金に対しては親和性が強いため、Cu粉末の周囲に形成されたCu−Ti合金部において、Cが合金内部へ拡散していく。図7は、Cu−Ti合金部において、Cが合金内部へ拡散していく模式図である。図7から、拡散したCが合金中のTiと化合してTiC化合物を形成し、Cu−Ti合金中に微細に析出するようになる。このようにして、本加熱加圧処理後には、Cu粉末が中核となって形成された高純度Cu領域と、その周囲に形成されたCu−Ti合金領域とから構成され、かつCu−Ti合金内部にはTiC化合物が微細に析出した構造が得られる。なお、本成形体の内部には、未だCuと合金化していないTi単体領域や、Ti−Cu合金中へ拡散していないC単体領域が一部、残留していても良い。また、加圧加熱処理の際には、成形型内部を窒素ガスなどの非酸化性ガスで満たして非酸化性雰囲気で処理を行えば、CuやTiの酸化が抑制され、酸素が成形体内部に不純物として取り込まれるのを抑制することができる。
次に、得られた成形体を水素ガスなどの還元性ガス雰囲気の加熱炉に投入し、還元雰囲気中で900℃以上の温度で時効処理を行う。これにより、成形体内部におけるCuやTiの酸化物が還元されるので、不純物である酸素が成形体から取り除かれて材料の純度が高まる。さらに、900℃以上の高温に加熱されるので、Cu−Ti合金中へのCの拡散がより促進される。図8は、時効処理によりCがすべてのCu−Ti合金領域に分散し、更に、合金中のTiと化合してTiC化合物となって、Cu−Ti合金領域全体に微細に析出するようになる模式図である。最終的に、Cu−Ti合金中のTiはすべてCと化合してTiC化合物に変化し、その結果、図8右図に示すように、Cu−Ti合金領域はCu−TiC複合化領域に変化する。図9は、本発明の実施の形態の銅合金である、Cu−2.5質量%Ti−0.7質量%C合金の時効処理後の内部組織の一例を示した顕微鏡写真である。図9に示すように、高純度Cu領域6の周囲に形成されていたCu−Ti合金領域がCu−TiC複合化領域に置き換わるので、最終的に高純度Cu領域6と、その周囲に部分的に形成されたCu−TiC複合化領域から構成される合金が得られる。なお、本時効処理前に残留していたTi単体領域は、本時効処理中にすべてCu−Ti合金へ変化するため、処理後にはTi単体領域の残留はない。一方、CはTiをすべてTiC化合物4に変化させるのに十分な量を含有しているため、必然的にTiと化合しない余剰分(C単体領域)が発生する場合があるが、その余剰量がC組成量の5%以下であれば、引張強度や電気伝導率への影響は無視できる。
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。
原料として、平均粒径0.5μmのTi粉末、平均粒径0.2μmのC粉末、平均粒径2μmのCu粉末を用い、それぞれの粉末を所定の割合で配合し、合計1Kgの配合粉末を得た。Tiの配合割合は1.0〜5.0質量%の範囲、Cの配合割合は0.40〜1.3質量%の範囲とした。配合粉末を、ボールミルを使って4時間混合した後、得られた混合粉末から所定量を量りとって成形型に投入し、加熱プレス装置で30MPaの加圧力と850℃の温度とで5分間の加圧加熱処理を行った後、水素ガス雰囲気中で900℃の温度で1時間時効処理を行なった。得られた外径15mm×厚さ5mmの成形体サンプルに対して、500℃の温度で熱間圧延加工を行って、厚さ1mmの平板サンプルを得た。渦電流方式の電気伝導率計測器を用いて、平板サンプルの電気伝導率を計測した。また、この平板サンプルから所定の形状の引張試験片を切り出して、引張試験機を使って引張強度を計測した。表1にこれらの計測結果を示す。表1に示すように、本実施例1−1〜6によれば、600MPa以上の引張強度かつ70%IACS以上の電気伝導率が得られている。図9には、本実施例1−3で得られた合金の内部組織写真を示す。この写真から、Cuの母相1中に粒径が数十nmのTiC化合物4が微細に析出分散した高強度領域と、TiC化合物をほとんど含まない高純度Cuの高電気伝導領域(高純度Cu領域6)とが構成されていることがわかる。高純度Cu領域6におけるCuの含有率は99.5質量%以上であり、その領域の長径サイズは500nm〜1500nmである。このように、本実施例では、TiC化合物4が微細に析出分散した領域は、高強度領域となって合金の必要強度を確保する役割を担い、一方、TiC化合物をほとんど含まない高純度Cu領域6は、高電気伝導領域となって合金の電気伝導率の向上に極めて有効に働く。このため、本実施例では、600MPa以上の引張強度と70%IACS以上の電気伝導率とを兼ね備えた性能を実現できたものと考えられる。
一方、比較のため、比較例1−1として、Ti粉末の配合割合を0.5質量%、Cの配合割合を0.1質量%としたサンプルと、比較例1−2として、Ti粉末の配合割合を6質量%、Cの配合割合を1.5質量%としたサンプルも作製した。これらのサンプルは、配合割合が異なる他は、本実施例のサンプル作製条件と同じである。作製したサンプルに対して、本実施例と同様の手順で電気伝導率と引張強度を計測した。その結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1−1は引張強度が低くなってしまい、600MPaを下回る結果となった。また、比較例1−2は電気伝導率が低くなってしまい、70%IACSを下回る結果となった。よって、TiとCの含有量がそれぞれ1.0〜5.0質量%、0.40〜1.3質量%の範囲よりも下回ると、十分なTiC化合物が生成されなくなり、引張強度が低下して600MPa以上の引張強度が得られなくなる。また、TiとCの含有量がそれぞれ1.0〜5.0質量%、0.40〜1.3質量%の範囲よりも多くなると、Cu母相に対するTiの固溶の影響が強くなり、電気伝導率の低下が大きくなって70%IACS以上の電気伝導率が得られなくなる。
原料として、平均粒径0.5μmのTi粉末、平均粒径0.2μmのC粉末、平均粒径0.5μmのAg粉末、平均粒径2μmのCu粉末を用い、それぞれの粉末を所定の割合で配合し、合計1Kgの配合粉末を得た。Tiの配合割合は1.0〜5.0質量%の範囲、Cの配合割合は0.40〜1.3質量%、Agの配合割合は0.1〜1.0質量%の範囲とした。配合粉末を、ボールミルを使って4時間混合した後、得られた混合粉末から所定量を量りとって成形型に投入し、加熱プレス装置で30MPaの加圧力と850℃の温度とで5分間の加圧加熱処理を行った後、水素ガス雰囲気中で900℃の温度で1時間時効処理を行なった。得られた外径15mm×厚さ5mmの成形体サンプルに対して、500℃の温度で熱間圧延加工を行って、厚さ1mmの平板サンプルを得た。渦電流方式の電気伝導率計測器を用いて、平板サンプルの電気伝導率を計測した。また、この平板サンプルから所定の形状の引張試験片を切り出して、引張試験機を使って引張強度を計測した。表2にこれらの計測結果を示す。表2に示すように、本実施例2−1〜3、5、6、9では、600MPa以上の引張強度かつ80%IACS以上の電気伝導率が得られている。これは、本実施例では、母相がCu−Ag相であるため、母相がCu相である場合と比べて、Tiの固溶量を減少させることができる。そのため、より高い電気伝導率が得られるようになり、600MPa以上の引張強度で80%IACS以上の高電気伝導率を実現できたものと考えられる。
原料として、平均粒径0.5μmのTi粉末、平均粒径0.2μmのC粉末、平均粒径2μmのCu粉末を用い、それぞれの粉末を所定の割合で配合し、合計1Kgの配合粉末を得た。Tiの配合割合は1.0〜2.5質量%の範囲、Cの配合割合は0.40〜0.7質量%の範囲とした。配合粉末を、ボールミルを使って4時間混合した後、得られた混合粉末から所定量を量りとって成形型に投入し、加熱プレス装置で30MPaの加圧力と850℃の温度とで5分間の加圧加熱処理を行った。得られた外径15mm×厚さ5mmの成形体サンプルを還元雰囲気炉に入れて、900℃の温度で1時間の時効処理を行った。得られたサンプルに対して、500℃の温度で熱間圧延加工を行って、厚さ1mmの平板サンプルを得た。
次に、前記の原料粉末の配合時に、まずTi粉末とC粉末のみを配合し、ボールミルを使って4時間の混合を行い、次にTiとCの混合粉末に対してCu粉末を配合し、ボールミルを使ってさらに1時間の混合を行う、といった2段階のボールミル混合を行った。以後は前記と同じ工程を経てサンプルを作製した。
原料として、平均粒径0.5μmのTi粉末、平均粒径0.2μmのC粉末、平均粒径0.5μmのAg粉末、平均粒径2μmのCu粉末を用い、それぞれの粉末を所定の割合で配合し、合計1Kgの配合粉末を得た。Tiの配合割合は1.0〜2.5質量%の範囲、Cの配合割合は0.40〜0.7質量%の範囲、Agの配合割合は0.1〜1.0質量%の範囲とした。配合粉末を、ボールミルを使って4時間混合した後、得られた混合粉末から所定量を量りとって成形型に投入し、加熱プレス装置で30MPaの加圧力と850℃の温度とで5分間の加圧加熱処理を行った。得られた外径15mm×厚さ5mmの成形体サンプルを水素雰囲気炉に入れて、900℃の温度で1時間の時効処理を行った。得られたサンプルに対して、500℃の温度で熱間圧延加工を行って厚さ1mmの平板サンプルを得た。
次に、前記の原料粉末の配合時に、まずTi粉末とC粉末のみを配合し、ボールミルを使って4時間の混合を行い、次にTiとCの混合粉末に対してAg粉末とCu粉末を配合し、ボールミルを使ってさらに1時間の混合を行う、といった2段階のボールミル混合を行った。以後は前記と同じ工程を経てサンプルを作製した。
このようにして作製した各種平板サンプルに対し、渦電流方式の電気伝導率計測器を用いて平板サンプルの電気伝導率を計測した。また、平板サンプルから所定の形状の引張試験片を切り出して、引張試験機を使って引張強度を計測した。表3にこれらの計測結果を示す。表3に示すように、本実施例3−1、2、5、6によれば、実施例1−1、3、2−1、5に比べて電気伝導率がさらに向上していることがわかる。これは、水素雰囲気中で時効処理を行うことで、よりCu母相の純度が高まって電気伝導率が向上したものと考えられる。
また、本実施例3−3、4、7、8によれば、実施例3−1、2、5、6よりも引張強度がさらに向上していることがわかる。これは、原料粉末混合時にTi粉末とC粉末を先にボールミル混合することで、よりTiC化合物の生成が促進され、合金の高強度化をもたらしたものと考えられる。なお、比較例3−1〜4に示すように、原料粉末の混合にボールミルではなくV型混合機を用いた場合には、TiC粒径が粗大となってしまい、引張強度が大きく低下し、300MPa程度となってしまう。このことから、原料粉末の混合にはボールミルが適していると考えられる。
1:Cuの母相
2:Cu4Ti化合物
3:Ti元素
4:TiC化合物
5:C元素
6:高純度Cu領域
7:Cu−Agの母相
8:高純度Cu−Ag領域

Claims (5)

  1. 1.0〜5.0質量%のTiと0.40〜1.3質量%のCとを含有し、残部がCuおよび不可避的不純物で構成される銅合金であって、
    平均粒径が3nm以上300nm以下のTiC化合物と、
    Cuの含有率が99.5質量%以上で粒径サイズが500nm以上1500nm以下である高純度Cu組成領域とを、
    含むことを特徴とする銅合金。
  2. 1.0〜5.0質量%のTiと、0.40〜1.3質量%のCと、0.1〜1.0質量%のAgとを含有し、残部がCuおよび不可避的不純物で構成される銅合金であって、
    平均粒径が3nm以上300nm以下のTiC化合物と、
    CuおよびAgの含有率の合計が99.5質量%以上で粒径サイズが500nm以上1500nm以下である高純度Cu−Ag組成領域とを、
    含むことを特徴とする銅合金。
  3. 電気伝導率が70%IACS以上で、引張強度が600MPa以上であることを特徴とする請求項1または2記載の銅合金。
  4. 1.0〜5.0質量%のTiと0.40〜1.3質量%のCとを含有し、残部がCuおよび不可避的不純物で構成される銅合金の製造方法であって、
    Ti粉末とC粉末とCu粉末とを機械的に混合する工程と、
    該混合粉末を非酸化雰囲気中で30MPa以上の加圧力および850℃以上の温度で加圧加熱処理を行う工程と、
    還元雰囲気中で900℃以上の温度で時効処理する工程とを
    備えることを特徴とする銅合金の製造方法。
  5. 1.0〜5.0質量%のTiと、0.40〜1.3質量%のCと、0.1〜1.0質量%のAgとを含有し、残部がCuおよび不可避的不純物で構成される銅合金の製造方法であって、
    Ti粉末とC粉末とAg粉末とCu粉末とを機械的に混合する工程と、
    該混合粉末を非酸化雰囲気中で30MPa以上の加圧力および850℃以上の温度で加圧加熱処理を行う工程と、
    還元雰囲気中で900℃以上の温度で時効処理する工程とを
    備えることを特徴とする銅合金の製造方法。
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