JP2013091816A - 銅合金素材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Tiを含む化合物を析出させて強度向上と高電気伝導率の両立を図ることである。
【解決手段】銅合金素材は、0.2〜0.7質量%のチタンと、0.08〜0.4質量%の炭素とを含み、残部が銅及び不可避的不純物からなる、銅合金素材。
【選択図】図2

Description

この発明は、優れた電気伝導性と高強度とを兼ね備えた銅合金素材及びその製造方法に関するものであり、特に微量のチタンと炭素とを含む銅合金素材に関するものである。
銅及び銅合金は、電気を通す性質、いわゆる電気伝導性に優れており、電気機器、電子機器、モータ、ロボットなどの広い範囲で使用される素材である。具体的な用途としては、例えば、モーターコイル、リードワイヤー、リードフレーム、マグネットコイル、電線、ケーブルなどを列挙することができる。
近年、これらの機器及び機材等の小型化、薄型化、軽量化のニーズが高まっており、このニーズに応えるために電気伝導性に優れた高強度銅合金素材の開発が重要となっている。電気伝導率は、IACS(International Annealed Copper Standard)による標準焼き鈍し銅線を100%とした場合において、対象試料の電気伝導率の割合を%表示した値である。
これまでの研究結果によれば、銅合金の強度と電気伝導率とはトレードオフの関係にあることが認められる。高電気伝導性銅合金は一般的に強度が低く、他方、高強度銅合金は電気伝導率が低くなる傾向にある。銅合金の強度向上の手法として、結晶粒の微細化や、銅素地中に原子を固溶する固溶強化が主に利用されている。一般に、結晶粒界では電子の移動が阻害される。結晶粒を微細化すると、電子が通過すべき粒界長さが増加するので、銅の電気伝導率は減少する。また、銅原子の間に別の原子が固溶すると、固溶した原子の周りに歪が生じ、これにより電子の移動が妨げられて電気伝導率が低下する。
例えば、純銅の線材では、電気伝度率は100%に近いものの、引張強さは200〜400MPa程度と低い。また、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)などを添加した銅合金製線材であっても、引張強さは400〜800MPa程度であり、電気伝導率は50%にまで低下する。
上記のような課題を解決すべく、これまでに次のような研究開発が実施されている。
ベリリウム(Be)を含む銅合金製線材では、引張強さは900〜1500MPa程度とこれまでの銅合金と比較して顕著に高く、電気伝導率は40〜50%を確保している。このように高い強度と電気伝導性を兼ね備えたCu−Be合金は、従来、コネクタ材料として利用されている。しかしながら、Beはそれ自身が高価な元素であると共に、人体に対するアレルギー反応を引き起こすとの報告もあり、Cu−Be合金を代替する材料の開発が進められている。
独立行政法人物質・材料研究機構は、溶解法により作製した1〜6質量%の銀(Ag)を含む銅合金鋳塊を準備し、冷間線引き加工と熱処理を繰り返して施すことで、銅素地中に固溶しているAg原子を最大限に析出させている。これにより素地を構成する銅を100%再結晶させることで高い電気伝導率を得ることができる。例えば、Cu−2質量%Ag合金の引張強度は1200MPa、電気伝導率は81.7%IACS、Cu−3質量%Ag合金の引張強度は1400MPa、電気伝導率は76.4%IACSといった特性を開示している。しかしながら、銀は高価であるため、広範囲での電子・電気機器への適用を考えると、経済性の点において大きな課題を有する。また、銀は錆び易いので、リードフレーム等に使用された場合、錆びに起因した強度劣化が生じるおそれがある。
金属原子の固溶強化による銅の高強度化を考えた場合、1原子当りの固溶による強化量が最も大きいチタン(Ti)の利用は有効である。Cu−Ti合金の強度および電気伝導率の関係に関する研究が、以下の文献に開示されている。
特開2004−100042号公報(特許文献1)においては、以下の検討がなされている。Cr、Zr、Be、Ti、ホウ素(B)のうちのいずれかを第二元素として純銅母材に添加した鋳造インゴットを作製し、これを溶体化熱処理によって第二元素を銅素地中に固溶した後、時効熱処理を施して第二元素を析出する。続いて冷間線引き加工による歪の付与と時効熱処理を繰り返し与えながらTiをはじめとする添加した第二元素の析出強化を促進することで、高い強度と電気伝導率の両立を検討している。
特開2004−285408号公報(特許文献2)や特開2005−344143号公報(特許文献3)においては、Tiを含む銅合金鋳塊に対して熱間圧延、冷間圧延、溶体化熱処理、冷間圧延、時効熱処理を施すことでTi原子の析出強化を促し、同時に銅素地中のTi固溶量を極力減少させて高い電気伝導率の実現を提案している。
しかしながら、上記の3つの特許文献においては、電気伝導率はいずれも25%IACSを下回る低い値であり、従来のCu−Be合金の特性に匹敵するレベルではない。
S. Semboshiらによる「Journal of Materials Research 23 (2008) 473」(非特許文献1)には、チタンを3at%(原子%)含む銅合金を真空アーク溶解炉で作製し、得られた溶解試料に対して水素雰囲気中での熱処理と冷間線引き加工を施してCuTiおよびTiHの化合物を析出させることが開示されている。その結果、電気伝導率は65%IACSとなり、真空雰囲気で熱処理を施した場合に比べて約3倍の値を示すことが示されている。しかしながら、上述したCu−Be系合金やCu−Ag系合金の特性と比較して解るように、電気伝導率は低く、目的とする優れた電気伝導性と高強度を両立できる銅合金とは言い難い。
S. Nagarjunaらによる「Materials Science and Engineering A 259 (1999) 34-42)」(非特許文献2)には、以下の製法が開示されている。すなわち、1.5〜5.5質量%のTiを含む銅合金を真空高周波加熱炉で作製し、得られた銅合金鋳塊に対して熱間鍛造および熱間圧延加工を施した後、冷間線引き加工と熱処理を繰り返して施して線状試料を得ている。強度及び電気伝導率を見ると、Cu−5.4質量%Ti合金において、CuTi化合物の析出により、引張強さ1450MPa及び電気伝導率7%IACSを得ている。しかしながら、上述したCu−Be系合金やCu−Ag系合金の特性と比較すれば解るように、その電気伝導率は著しく低く、目的とする高電気伝導性と高強度を兼ね備える銅合金とは言い難い。
特開2008−075174号公報(特許文献4)は、Cu−Ti合金を水素(H)雰囲気中で時効熱処理することにより、銅中に固溶する硬質なTiをチタンハイドライト(TiH)として析出させている。これにより銅素地中のTi固溶量を減少させて高い電気伝導率と硬度の両立を図っている。しかしながら、強度向上に効果的なCuTi化合物を構成するTiもTiHとして析出するために、CuTi化合物の析出量が減少し、時効熱処理による高強度化の効果が低減する。TiHは脆いため、銅合金素材の線引き加工時に断線するおそれがある。
特開2010−222623号公報(特許文献5)は、CuTi化合物を減少させることなくTiHを析出するために、銅合金素材を500℃よりも低い温度の水素雰囲気中で時効熱処理を行う製法を提案している。この製法により銅合金の機械的特性の向上は確認されているものの、従来のCu−Be合金の特性に匹敵するレベルではない。
特開2004−100042号公報 特開2004−285408号公報 特開2005−344143号公報 特開2008−075174号公報 特開2010−222623号公報
S. Semboshiらによる「Journal of Materials Research 23 (2008) 473」 S. Nagarjunaらによる「Materials Science and Engineering A 259 (1999) 34-42)」
本発明の目的は、上記の点を考慮して、Tiを含む化合物を析出させて強度向上と高電気伝導率の両立を図ることである。
本発明に従った銅合金素材は、0.2〜0.7質量%のチタンと、0.08〜0.4質量%の炭素とを含み、残部が銅及び不可避的不純物からなる。
好ましくは、銅とチタンの化合物であるCuTi及びチタンと炭素との化合物であるTiCが、結晶粒界に沿って分散している。好ましい実施形態では、銅合金素材の電気伝導率が65%IACS以上である。
上記の銅合金素材を得るための本発明に従った銅合金素材の製造方法は、急冷凝固法によってチタンを含む銅合金粉末を作製する工程と、炭素系粒子を銅合金粉末の表面に付着する工程と、炭素系粒子被覆銅合金粉末を圧粉成形して焼結する工程とを備える。
好ましい実施形態では、炭素系粒子は、カーボンナノチューブである。また、炭素系粒子を銅合金粉末表面に付着する工程は、カーボンナノチューブを孤立単分散状態に分散させている溶液を準備することと、溶液中に銅合金粉末を浸漬して混合することと、溶液を除去することによって銅合金粉末表面にカーボンナノチューブを付着することとを含む。
上記構成の意義及び作用効果等については、以下の項目で詳述する。
銅合金素材における炭素含有量(質量%)と電気伝導率(IACS%)との関係を示す図である。 銅合金素材における電気伝導率(IACS%)と0.2%耐力(MPa)との関係を示す図である。 チタンおよび炭素の分散状態を示す顕微鏡写真である。 チタン濃化層が存在している領域の顕微鏡写真である。 チタン濃化層が存在している領域の顕微鏡写真と成分分析結果とを並べて配置した図である。 焼結温度と電気伝導率との関係を示す図である。 各焼結体におけるCu、Ti、Cの元素分析結果を示す図である。
本発明の目的は、Tiを含む化合物を析出させて強度向上と高電気伝導率との両立を図ることであるが、従来技術との大きな違いとして、以下の点を指摘することができる。
まず第一に、出発原料として鋳造インゴットを使用するのではなく、急冷凝固法によって銅素地中に過飽和にTiが固溶したCu−Ti合金粉末を使用する点である。
次に、このようなTiを添加した銅合金粉末と炭素系粒子との混合体を焼結して固化することにより、銅素地中に固溶するTi原子をCuTi化合物として析出すると同時に、チタン原子と炭素系粒子との反応により極めて硬質なTiC微粒子を生成して分散させる点である。
さらに、好ましい炭素系粒子として、高強度及び高剛性を有するカーボンナノチューブ(CNT)を用いることにより、CNTが銅合金素地中に均一分散して素材の強度向上に大きく寄与するようにした点である。
上記のような新しい合金設計により、従来のCu−Be系合金及びCu−Ti系合金に比べて高い強度と優れた電気伝導率を両立できる銅合金を提供することができる。
本発明で使用する銅合金粉末は、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、回転ディスク法、回転ロール法などに代表される急冷凝固法によって作製されたものである。また炭素系粒子とは、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック粒子(CB)、黒鉛粒子、グラフェンなどである。これらの炭素系粒子の中で、特に銅合金の高強度化の点で、カーボンナノチューブ(CNT)を用いることがより望ましい。
本発明では、従来技術と同様に微量のチタンを添加するものの、急冷凝固法によってチタンを銅素地中に強制固溶することが従来技術と大きく異なっている。強制固溶したチタン原子は比較的低温での加熱によって銅素地中を拡散できるため、他の原子と反応して化合物を生成し易くなる。また、Cu−Ti合金に炭素系粒子を添加して分散させることも、従来技術では開示されていない新規な点である。
本発明では、上記の主たる2つの特徴を利用し、Cu−Ti合金粉末と炭素系粒子とを混合した状態で圧粉成形及び固相焼結を施すことにより、銅素地中でのチタンの固溶量を限りなく少なくして電気伝導率を向上させるとともに、同時に析出するチタン原子については、CuTi化合物、及び炭素系粒子との反応により生成する炭化チタン(TiC)として、銅合金中に分散させることで高強度化を実現するものである。
本発明では、急冷凝固法により作製するCu−Ti合金粉末を出発原料として用いるが、酸素含有量が多くなると電気伝導率の低下を招くことから、上記の銅合金粉末における酸素含有量は、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下となるような粉末製造方法を利用する。
炭素系粒子はチタンとの反応性が高いことから、焼結過程において、銅素地中に析出したチタン原子は炭素系粒子が存在する旧粉末粒界又は結晶粒界へと拡散して濃化する。その際、炭素系粒子の含有量が適正範囲を超えて多くなると、銅合金粉末間の焼結性を阻害して強度低下を招くと共に、旧粉末粒界において粗大なTiC粒子の生成量が増加して合金の強度及び延性を低下させてしまう。銅合金素材において高強度及び高電気伝導率を両立させるために、好ましくは、チタン含有量が0.2〜0.7質量%の範囲であり、炭素含有量が0.08〜0.4質量%の範囲である。最終的に得られる銅合金素材において、好ましくは、銅とチタンとの化合物であるCuTiおよびチタンと炭素との化合物であるTiCは、結晶粒界(旧粉末粒界を含む)に沿って分散している。また、銅合金素材の好ましい電気伝導率は、65%IACS以上である。
Cu−Ti合金粉末と炭素系粒子の大きさに関しては、炭素系粒子の均一分散性の観点から、炭素系粒子の直径または粒子径はCu−Ti合金粉末よりも小さいことが望ましい。粒状の炭素系粒子の場合、粒子径10μm以下である。カーボンナノチューブの場合、好ましくはその直径が数nmまたは数十nmである。
炭素系粒子の比重は、銅合金の比重に比べて1/4〜1/5と小さいため、従来技術で適用している溶解法または鋳造法では、比重差によって炭素系粒子が銅合金の溶湯表面に浮遊するので両者を均一に混合することができない。それゆえに、粉末冶金法を用いる場合においてのみ、Cu−Ti合金中に炭素系粒子を均一に分散することができ、その結果として上述したようなTiCの生成及び分散が可能となる。
本発明の製造方法では、急冷凝固法によってチタンを含む銅合金粉末を作製し、その後に炭素系粒子を銅合金粉末表面に付着し、さらにその後に炭素系粒子被覆銅合金粉末を圧粉成形して焼結している。焼結固化及び熱間塑性加工の好ましい温度は、800℃以上、より好ましくは950℃以上であり、銅合金の融点未満の固相状態を維持する温度である。一つの実施形態では、銅合金に対して熱間塑性加工及び/または冷間線引き加工を施すことにより、線状素材を得るようにしている。
本願発明の製造方法において、好ましくは、カーボンナノチューブ等の炭素系粒子を銅合金粉末表面に付着させるために、カーボンナノチューブ等を孤立単分散状態に分散させている溶液中に銅合金粉末を浸漬して混合し、その後に溶液を除去することによって銅合金粉末表面にカーボンナノチューブ等を付着させている。カーボンナノチューブ等を凝集させることなく個々のチューブを孤立して分散させるための溶液は、親水性及び疎水性を有する界面活性剤を含むものであり、国際公開公報WO2005/110594A1または国際公開公報WO2009/054309A1に詳しく記載されている。
(1)実施例1
水アトマイズ法を用いてTi含有量が異なるCu−Ti合金粉末として、Cu−0.03mass%Ti合金粉末(Cu−0.03Ti)、Cu−0.31mass%Ti合金粉末(Cu−0.3Ti)、Cu−0.54mass%Ti合金粉末(Cu−0.5Ti)の3種類を作製した(いずれも平均粒径は140〜150μm)。また炭素系粒子として、平均直径20nm、長さ1〜3μmの多層カーボンナノチューブ(CNT)を利用した。
一般的に、CNTは凝集し易いため、金属粉末とCNTとを混合する方法として、両性イオン界面活性剤を含む蒸留水に対して3mass%のCNTを添加した後、超音波振動攪拌装置を用いてCNTの凝集体を解消して溶液中にCNTが孤立状態で均一に分散する水溶液を作製した。
上述の3種類のCu−Ti合金粉末に対してCNT分散水溶液を添加し、混合・攪拌処理を施した後に、電気炉内で100℃にて2時間の乾燥熱処理を行って、粉末に含まれる水分を蒸発・除去した。こうして、Cu−Ti合金粉末の表面をCNTが均一に被覆した複合粉末を得た。Cu−Ti合金粉末とCNT分散水溶液との混合比率を変えることでCu−Ti合金粉末表面のCNT量を調整する方法、あるいはCNT水溶液中のCNT濃度を変えることでCu−Ti合金粉末表面のCNT量を調整する方法があるが、本実施例では後者を用いて蒸留水により希釈したCNT分散液を準備して銅合金粉末表面のCNT被覆量を調整した。
合金粉末表面には界面イオン活性剤の固形成分が付着しており、さらに水溶液中での酸化による表面酸化皮膜も形成されていることから、活性剤成分の除去ならびに水溶液由来の酸化物の除去を同時に行なうために、CNT被覆銅合金粉末に対して水素2.2L/分、Ar0.8L/分の混合ガス雰囲気下にて600℃熱処理を施した。これによりCNTのみが表面に付着したCu−Ti合金粉末が得られる。
上記のCu−Ti合金粉末に対して、放電プラズマ焼結(SPS)装置を用いて焼結温度950℃、保持時間30分、加圧力30MPaの条件にて焼結処理を行った。CNTを含むCu−Ti合金粉末焼結体を、赤外線急速加熱炉内でAr雰囲気下にて800℃まで60℃/分で昇温し、同温度にて5分間保持した後、直ちに200tプレス機にて押出加工して、直径12mmの棒状銅合金素材を得た。
CNT分散水溶液の濃度(CNT含有量)を変えることにより、異なった量のCNTが表面に付着したCu−Ti合金粉末を得た。CNT含有量を調整することにより、焼結後の焼結体全体に対する炭素含有量(質量%)を調整できる。
CNT分散Cu−Ti合金粉末押出材における炭素量、酸素量、引張試験結果(耐力0.2%YS、引張強さUTS、破断伸び)、微小硬さ、電気伝導率の測定結果を表1に示す。また、炭素含有量と電気伝導率の関係を図1に示す。
図1に示すように、純銅粉末を出発原料として上記と同様の製法を用いて純銅粉末押出材を作製した際の電気伝導率はほぼ100%IACSとなり、溶解・鋳造法で得られる純銅と同等の特性であることから、本実施例における試料作製条件は適切であるといえる。
Cu−0.3mass%Ti合金粉末およびCu−0.5mass%Ti合金粉末を用いた場合、押出材において炭素含有量の増加に伴い電気伝導率が増加する傾向にあり、最大で80〜83%IACSに達している。この値は、Cu−Be合金を遥かに凌ぐ特性であり、しかもCu−Ag合金と同等である。
一方、Cu−0.03mass%Ti合金粉末を用いた場合には、炭素の含有量に対して電気伝導率は僅かに低下する傾向にあるが、その値は85〜95%IACSと高い値となった。しかしながら、この押出材の強度特性は、純銅粉末を用いた場合と同等の低い値を示しており、高い電気伝導率と高強度を両立することは困難である。
各押出材における電気伝導率と0.2%引張耐力の関係を図2に示す。従来の銅合金と同様に電気伝導率と耐力はトレードオフの関係を示しているが、Cu−0.3mass%Ti合金粉末およびCu−0.5mass%Ti合金粉末を用いた押出材は、いずれも純銅よりも顕著に高い強度特性を示している。なかでも炭素を0.19mass%含むCu−0.5mass%Ti合金粉末押出材では、純銅の2倍以上となる176MPaの耐力を有するとともに、83.5%IACSといった高い電気伝導率を有することが認められる。この銅合金押出材は、高い強度と優れた電気伝導性能とを兼ね備えたものである。
なお、本結果から炭素含有量は0.4mass%を超えて添加しても電気伝導率の向上効果は認められないことがわかる。他方、炭素含有量の増加により材料内部に空隙(欠陥)が発生することで強度低下を招く。よって、好ましい炭素含有量は、銅合金素材全体に対して0.4mass%以下である。銅合金素材全体に対する炭素含有量の下限値に関しては、炭素含有量が0.08mass%を超えると電気伝導率に顕著な増加傾向が見られることから、0.08mass%以上が好ましい。
(2)実施例2
炭素を0.19mass%含むCu−0.5mass%Ti合金粉末押出材を対象に、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてチタンおよび炭素の分散状態を解析した。
図3に示すようにCu−Ti合金粉末表面を被覆するCNTと粉末との境界には、チタンの濃化層が存在する。その領域を透過型電子顕微鏡により詳細に観察した結果を図4および図5に示す。チタンの濃化層には、炭素も存在することが確認された。EDS元素分析により相同定を行ったところ、CNTに加えて、CuTiおよびTiCの生成が確認された。
さらに、波長分散型X線分析装置(WDS)を用いて、上記の押出材およびCNTを含まないCu−0.5mass%Ti合金粉末押出材(耐力;202MPa,電気伝導率;42.5%IACS)を対象に、銅合金素地中のチタン含有量を分析した。その結果、以下に示すように0.19mass%の炭素を含むCu−0.5mass%Ti合金粉末押出材の銅素地中のチタン含有量は0.025mass%と極めて少なく、チタンはほぼ固溶していないことが認められた。つまり、原料粉末の段階で銅素地中に固溶していたチタンは、焼結過程で銅と反応することでCuTiとして結晶粒界または旧粉末粒界に析出すると共に、CNTと反応してTiCとして同様に粒界に析出する。その結果、銅素地中のチタン固溶量が減少して電気伝導率が80%IACS以上に増加し、同時に硬質なCuTi化合物とTiC粒子の分散により引張耐力が増大した。
これに対して、CNTを含まないCu−0.5mass%Ti合金粉末押出材では0.224mass%のチタンが検出されており、添加したチタンの約1/2が銅素地中に固溶した状態で存在していることが認められる。その結果、上記の通り、電気伝導率は42.5%IACSと低い値を示した。
(3)実施例3
実施例1で作製した3%CNT分散水溶液(CNT:水=3:97)を用いて作製したCu−0.5mass%Ti合金粉末(炭素含有量;0.34mass%)を放電プラズマ焼結装置(SPS)により焼結固化する際の焼結温度と電気伝導率の関係を調査した。比較材として、CNTを含まないCu−0.5mass%Ti合金粉末についても同一条件で焼結固化を行い、電気伝導率を測定した。また溶解鋳造法で作製したCu−0.5mass%Ti合金インゴットに関しても、同様に電気伝導率を計測した。それらの結果を表2および図6に示す。CNTの有無に関係なく、焼結温度の増加に伴い、電気伝導率が増加することが認められる。
図7は、各焼結体におけるCu、Ti、C(炭素)の元素分析結果を示している。焼結温度が増加することで旧粉末粒界に存在するCNTの領域にチタン原子が徐々に濃化する傾向を示している。これは焼結過程において急冷凝固法によって銅素地中に過飽和に固溶したチタンが析出し、焼結温度の増加と共に、析出量が増大することで逆に固溶量が減少し、その結果として電気伝導率が増加したものと認められる。
焼結温度が800℃のCNT含有Cu−0.5mass%Ti合金焼結体では、溶解鋳造法で作製したインゴットと同等の電気伝導率を示し、また焼結温度が950℃のCNT含有Cu−0.5mass%Ti合金焼結体では、インゴット材よりも高い電気伝導率を示した。特に、0.34mass%の炭素を含む場合、電気伝導率は74.7%IACSに急増する。これは、前述の実施例2に示したようにチタンは炭素との反応性が高いため、容易にTiCを生成することから、CNTの存在によりTiの析出が促進され、その結果として銅素地中のチタン固溶量がさらに減少して電気伝導率が顕著に増大したものであると認められる。
(4)実施例4
水アトマイズ法を用いて異なるTi量を含むCu−Ti合金粉末を準備し、実施例1と同様にCNT分散水溶液と配合・撹拌処理を行い、CNT被覆Cu−Ti合金粉末を作製した。その後、各粉末に対して、水素とアルゴンの混合ガス雰囲気下にて600℃の熱処理を施すことで界面活性剤を分解した。
各粉末を、放電プラズマ焼結(SPS)装置を用いて焼結温度950℃、保持時間30分、加圧力30MPaの条件にて焼結した。CNTを含むCu−Ti合金粉末焼結体を、赤外線急速加熱炉内でAr雰囲気下にて800℃まで60℃/分の速度で昇温し、同温度にて5分間保持した後、直ちに200tプレス機にて押出加工を施して直径12mmの棒状銅合金素材を得た。各押出材について、電気伝導率の測定および引張試験を行った。その結果を表3に示す。
Cu−Ti合金焼結体においてTi含有量が0.7mass%を超えると、強度特性は増大するものの、電気伝導率が80%IACSを著しく下回る。他方、Ti含有量が0.2mass%未満の場合、押出材において電気伝導率は80%IACSを超えるものの、引張強さが100MPa未満となり、Cu−Be合金と同等の強度特性を得ることが困難である。以上の結果から、Cu−Ti合金焼結体に含まれるTi量の好ましい範囲は0.2〜0.7mass%であり、より好ましくは、0.3〜0.5mass%である。
(5)実施例5
実施例1で作製した以下の3つの押出材を対象に、冷間線引き加工および450℃での熱処理を繰り返して行い、最終素材として直径0.5mmの線材に加工した。
ア)0.19mass%の炭素を含むCu−0.5mass%Ti合金粉末押出材(No.005)
イ)0.17mass%の炭素を含むCu−0.3mass%Ti合金粉末押出材(No.009)
ウ)0.39mass%の炭素を含むCu−0.03mass%Ti合金粉末押出材(No.011)
エ)純銅粉末押出材(No.001)
得られた各線材について引張試験および電気伝導率を計測した結果を表4に示す。
ア)の素材(No.005)およびイ)の素材(No.009)では、線材において引張強さ1100MPaを超える高い強度と80%IACSを超える優れた電気伝導率を両立できていることが認められる。他方、比較材であるウ)の素材(No.011)では、電気伝導率は89.8%IACSと高い値を有するものの、引張強さは225MPaとなり、純銅と同等の特性であることが認められる。
本発明は、優れた電気伝導性と高強度とを兼ね備えた銅合金素材を得るのに有利に利用され得る。

Claims (5)

  1. 0.2〜0.7質量%のチタンと、0.08〜0.4質量%の炭素とを含み、残部が銅及び不可避的不純物からなる、銅合金素材。
  2. 銅とチタンの化合物であるCuTi及びチタンと炭素との化合物であるTiCが、結晶粒界に沿って分散している、請求項1に記載の銅合金素材。
  3. 電気伝導率が65%IACS以上である、請求項1または2に記載の銅合金素材。
  4. 0.2〜0.7質量%のチタンと、0.08〜0.4質量%の炭素とを含み、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金素材の製造方法であって、
    急冷凝固法によってチタンを含む銅合金粉末を作製する工程と、
    炭素系粒子を前記銅合金粉末の表面に付着する工程と、
    前記炭素系粒子被覆銅合金粉末を圧粉成形して焼結する工程とを備える、銅合金素材の製造方法。
  5. 前記炭素系粒子は、カーボンナノチューブであり、
    前記炭素系粒子を前記銅合金粉末表面に付着する工程は、
    前記カーボンナノチューブを孤立単分散状態に分散させている溶液を準備することと、
    前記溶液中に前記銅合金粉末を浸漬して混合することと、
    前記溶液を除去することによって前記銅合金粉末表面に前記カーボンナノチューブを付着することとを含む、請求項4に記載の銅合金素材の製造方法。
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