JP2009185320A - 銅合金及びその製造方法 - Google Patents

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亮 丹治
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鉄也 桑原
Taichiro Nishikawa
太一郎 西川
Yoshihiro Nakai
由弘 中井
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Abstract

【課題】強度と導電率とをバランスよく具える銅合金、その製造方法、この銅合金からなる銅合金線、及びこの銅合金線からなる電線・ケーブル用導体を提供する。
【解決手段】Bを0.01〜5.0質量%、Nbを0.01〜5.0質量%含有し、残部が銅である溶融金属を冷却して凝固する。NbとBとを反応させて化合物を生成して、銅からなる母材中にこの化合物が分散した銅合金が得られる。この銅合金は、化合物の分散組織を有することで強度に優れ、母材中の固溶元素の存在による導電率の低下が少なく、導電率が高い。
【選択図】図1

Description

本発明は、銅の母材中に化合物粒子が分散した銅合金、この銅合金の製造方法、この銅合金からなる銅合金線、この銅合金線からなる電線・ケーブル用導体に関する。特に、強度と導電率とをバランスよく具える銅合金に関するものである。
従来より、電線・ケーブル用導体の材料に、導電率が高い銅や銅合金が用いられている。強度を向上させるために種々の研究がなされており、特許文献1は、母材中に硼素(B)を微細に析出させることで電気的特性及び機械的特性に優れる銅合金を開示している。特許文献2は、母材中に硼化ニオブ(NbB2)といったセラミックス粒子が存在する銅を開示している。
特開平8-27531号公報 特開平11-100625号公報
電線・ケーブル用導体は、導電率が高く、かつ高強度であることが望まれるが、昨今、この要求がより高くなってきている。特許文献2に記載される硼化ニオブが存在する銅は、ニオブ(Nb)の含有量が多く、強度に優れる反面、導電率が低く、上記要求を満足できない。
そこで、本発明の目的の一つは、導電率と強度とをバランスよく具える銅合金を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記銅合金を生産性よく製造することができる銅合金の製造方法を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、導電率と強度とをバランスよく具える銅合金線、及び電線・ケーブル用導体を提供することにある。
電線・ケーブル用導体の高強度化及び高導電率化には、銅の母材中に固溶元素が少なく、硬質な化合物を微細に分散させることが効果的である。本発明者らは、この化合物としてNbの硼化物が好ましく、母材中にこの化合物を存在させるためには、所定の範囲でNb及びBを含む銅合金が好ましいとの知見を得た。また、本発明者らは、銅の母材溶湯に化合物粒子をそのまま添加するのではなく、化合物の原料(Nb及びB)を母材原料と共に溶融した溶湯を用い、製造過程で化合物を生成することで、化合物を微細に分散させた銅合金を連続的に製造することができる、との知見を得た。本発明は、上記知見に基づくものである。
本発明銅合金は、Bを0.01〜5.0質量%、Nbを0.01〜5.0質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする。本発明銅合金の製造方法は、Bを0.01〜5.0質量%、Nbを0.01〜5.0質量%含有し、残部が銅である溶融金属を準備する工程と、この溶融金属を冷却して凝固する工程とを具えることを特徴とする。
本発明銅合金は、上記所定の範囲でNb及びBを含有することで、これらNb及びBを含む化合物の分散による強度の向上と、固溶元素の存在による導電率の低下の抑制とにより、強度と導電率とをバランスよく具えることができる。そのため、本発明銅合金は、電線・ケーブル用導体の材料(銅合金線)に好適に利用できる。特に、本発明銅合金は、細くしても強度に優れることから、軽量化のためなどで細径であることが望まれる電線・ケーブル用導体の材料に好適に利用できる。また、本発明銅合金の製造方法は、このような本発明銅合金を連続的に生産可能であることから、例えば、電線・ケーブル用導体の素材となる銅合金線といった長尺材を生産性よく製造することができる。以下、本発明をより詳細に説明する。
[銅合金]
<組成>
本発明銅合金は、純Cuを主成分(母材)とし、Bを0.01〜5.0質量%、Nbを0.01〜5.0質量%含有する。これらB及びNbの大部分又は全部は、B及びNbを含む化合物として母材中に存在する。特に、本発明製造方法により得られた本発明銅合金は、粒子状の化合物が母材中に分散した組織を有する。このような化合物分散組織であることで、従来の固溶強化型銅合金のように固溶元素の種類や含有量を多くすることなく、母材の強度の向上を図ることができる。また、本発明銅合金は、積極的には固溶元素が含有されないため、固溶元素の存在による導電率の低下を効果的に抑制できる。上記化合物は、実質的にBとNbとからなるもの、即ち、硼化ニオブ(NbB2)が挙げられる。NbB2中にBやNbをそのまま含有していることを許容する。また、B及びNbの一部がそれぞれ、母材中に固溶していたり、結晶粒界に析出していたりすることを許容する。B及びNbの含有量は、化合物中に含有するもの、母材中に固溶及び析出しているものの合計とする。
Bが0.01質量%未満では、母材中に化合物が十分に存在せず、化合物の分散による特性の向上効果が得られず、5.0質量%超では、B元素が単独で結晶粒界に大量に析出したり、又は粗大な化合物が生成されて、塑性加工時にこれらを起点とした割れなどが生じ易い。Bのより好ましい含有量は、0.1質量%以上1.0質量%以下である。
Nbが0.01質量%未満では、母材中に化合物が十分に存在せず、化合物の分散による特性の向上効果が得られず、5.0質量%超では、導電率が低下する。Nbのより好ましい含有量は、0.1質量%以上3.0質量%以下である。
銅合金中の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively
Coupled Plasma)発光分光分析やX線光電子分光法(XPS)により調べられる。銅合金中の化合物(硼化物)の存在は、例えば、X線回折(XRD)やエネルギー分散型X線分析(EDX)により調べられる。
<組織>
本発明製造方法により得られる本発明銅合金は、母材中に粗大な化合物が実質的に存在せず、微細な化合物が分散した組織である。具体的には、母材中に存在する化合物のうち、円相当径が5μm以下である化合物の粒子頻度(面積)が80%以上である。化合物は、球形状(断面円形状)、断面楕円状、断面矩形状などの種々の形状で存在する。そこで、銅合金の断面を光学顕微鏡(200倍)で観察し、この観察像を画像解析し、この断面における各化合物の面積をそれぞれ演算し、各面積に等しい円の直径をその化合物の円相当径とする。算出した円相当径を利用してこの断面における粒子頻度(面積)=(円相当径が5μm以下である化合物の合計面積)/(この断面における全化合物の合計面積)を演算する。そして、銅合金から任意の断面を5個採取し(n=5)、各断面における粒子頻度(面積)の平均を粒子頻度(面積)とする。後述する試験例もこの手法で粒子頻度(面積)を求める。本発明製造方法によれば、粒子頻度(面積)が90%以上、更に95%以上といった微細な化合物が分散した銅合金を製造可能である。このような微細な化合物は、本発明銅合金が凝固材の状態から圧延や伸線などの塑性加工を受けた塑性加工材(例えば、伸線材)の状態でも維持される。
[製造方法]
<溶融金属(溶湯)の準備>
本発明銅合金を製造するには、まず、原料を用意して溶融し、母材となる純Cuと、特定の量のNb及びBとが混合した溶湯を準備する。溶湯は、全ての原料を混合してから溶融してもよいし、先にCu溶湯を作製し、この溶湯にNbやBを添加して作製してもよい。Nb及びBは、それぞれ単体で添加してもよいし(B粒、Nb粒やNbフレーク)、各元素を含有する母合金(Cu-B合金,Cu-Nb合金)で添加してもよい。単体よりも合金で添加する方が歩留まりが高くなり、ばらつきも小さくなる傾向にある。NbやBを含有する合金や化合物を利用することもできるが、この場合、合金や化合物に含有される余分な元素(Cu,Nb,B以外の元素)が母材に固溶して導電率が低下するなどの問題が生じるため、単体や母合金を利用することが好ましい。B及びNb以外の元素が含まれる場合は、導電率の低下を防止するために、熱処理などを施して母材に析出させることが好ましい。
上記溶湯の作製は、大気雰囲気で行ってもよいが、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気で行うと、溶湯中にスラグ(酸化物)が発生することを抑制できる。上記不活性ガスに水素ガスを5〜15体積%加えた混合ガス雰囲気とすると、不可避的に存在する酸素を除去することができる。
原料が十分に溶融可能な温度に加熱して原料を完全に溶解させた上記溶湯は、NbとBとが反応することで、化合物(硼化物)を形成できる。但し、形成される化合物の粒成長による粗大化を防止するため、溶湯の温度は、形成される化合物の融点を超えないことが好ましい。
溶湯は、上記加熱と共に、撹拌フィンなどで撹拌すると、BとNbとの反応を促進できると共に、溶湯中に形成された化合物を母材中に均一的に分散させ、化合物の粒子が母材中に均一的に分散された本発明銅合金を製造できる。
<溶融金属の凝固>
準備した溶融金属を凝固させて凝固材を作製する。凝固時の冷却速度を速くして急冷する、具体的には100℃/sec以上、特に150℃/sec以上とすることで、生成された化合物の粒成長を抑制して粗大な粒子の出現を低減し、化合物を微細にできる。かつ、急冷することで、撹拌などにより化合物が均一的に分散した状態の溶湯をほぼそのままの状態で凝固することができる。従って、微細な化合物が均一的に分散した組織を有する銅合金が得られる。上記冷却速度を満たす急冷は、強制冷却、例えば、水冷、冷風の吹き付けなどを行ったり、急冷凝固に適した溶解炉を利用したりすることで実現できる。
<熱処理>
上記凝固工程以降において、適宜熱処理を行ってもよい。例えば、凝固材、この凝固材に伸線といった塑性加工を施した塑性加工材(伸線後の伸線材、又は伸線途中の加工材)に熱処理を施す。凝固後伸線前、多パスの伸線加工を行う場合は伸線途中、及び伸線後のいずれかにおいて少なくとも1回の熱処理を行うことで、以下の(1)〜(2)の効果が得られる。なお、得られた凝固材は、微細な化合物の粒子が母材中に均一的に分散している組織を有することで、凝固後や伸線途中、伸線後に熱処理を施した際、粒子のピン止め効果により母材を構成する結晶粒の粗大化を阻止でき、粗大な結晶粒が伸線時に割れや破断の起点となったり、粗大な結晶粒により伸線材の靭性が低下する、といった不具合を防止できる。
(1)凝固材中にBやNbが固溶している場合、熱処理により化合物の生成を促進して、分散強化に寄与する化合物を増加させることができる。
(2)伸線材や伸線途中の加工材に熱処理を施す場合、伸線加工による歪みを除去して、伸線材の伸びを回復させることができる。
熱処理の加熱温度は、250℃以上が好ましい。250℃未満では、加熱対象材中の原子の移動が僅かであり、上記効果が十分に得られない。より好ましくは、250〜650℃である。保持時間は、0.1〜10時間が好ましい。
[銅合金線]
本発明銅合金からなる凝固材に所望の形状及び大きさ(線径)となるように伸線加工を施すことで、本発明銅合金線が得られる。この合金線は、強度と導電率とのバランスに優れ、同じ加工度で作製された従来の固溶強化型銅合金線(例えば、Cu-Sn合金線)と比較して、強度及び導電率の双方に優れる。具体的には、本発明銅合金線は、引張強さ:520MPa以上、導電率:80%IACS以上である。NbやBの含有量、化合物の大きさや分散状態によって引張強さや導電率を変化させることができ、NbやBの含有量が多いと強度が高くなる傾向にあり、含有量が少ないと導電率が高くなる傾向にある。また、本発明銅合金線は、線径が1mm以下、特に0.2mm以下、更には10μm程度といった細径であっても強度に優れる。
[用途]
本発明銅合金線は、導電率が高く、高強度であることから、電線・ケーブル用導体の材料に好適に利用できる。この電線・ケーブル用導体は、例えば、ワイヤーハーネス用電線、ロボット用ケーブル、携帯機器用ケーブルなどの導体に利用できる。
本発明銅合金、この銅合金からなる銅合金線、及びこの銅合金線からなる電線・ケーブル用導体は、強度と導電率とをバランスよく具える。また、本発明銅合金の製造方法は、強度と導電率とをバランスよく具える本発明銅合金を生産性よく製造することができる。
[試験例]
NbとBとを含有する銅合金を作製し、組織及び特性を調べた。
<試料No.1,2,100>
純Cu(OFC)粒、Nb粒、Cu-B粒を用意して坩堝に入れ、アーク溶解炉で溶解した。溶融は、原料の酸化防止のため、アルゴン雰囲気(大気圧)で行った。得られた溶融金属(溶湯)を撹拌フィンで撹拌した。この溶湯を水冷銅製鋳型に鋳込み、100℃/sec以上の冷却速度(120℃/sec)で急冷して凝固し、幅45mm×厚さ25mm×長さ75mmの凝固材(鋳塊)を得た。上記Nb及びBの添加量を異ならせて、組成の異なる凝固材を得た(試料No.1,2,100)。得られた凝固材を表面切削して、直径φ12mm×長さ75mmの棒状体とし、この棒状体に直径φ6.4mmになるまでスウェージ加工を施した。得られた直径φ6.4mmの加工材を直径φ0.4mmになるまで伸線して銅合金線を得た。試料No.100は、スウェージ加工途中で棒状体が割れたため、伸線加工を断念した。
<試料No.101>
比較として、Cu-Sn合金を作製した。純Cu(OFC)板、Sn粒を用意して坩堝に入れ、真空溶解炉で溶解した。得られた溶湯を撹拌フィンで撹拌した後、この溶湯を水冷SUS製鋳型に鋳込み、80℃/secの冷却速度で凝固して、直径φ30mm×長さ130mmの凝固材を得た。得られた凝固材を表面切削して直径φ24mm×長さ30mmの棒状体とし、この棒状体に直径φ8mmになるまでスウェージ加工を施し、得られた加工材を直径φ0.9mmになるまで伸線してCu-Sn合金線を得た。試料No.101における伸線時の加工度は、試料No.1,2の伸線時の加工度とほぼ同等である。
得られた各凝固材の組成をICP発光分光分析により調べた。その結果を表1に示す。
また、得られた各凝固材の断面を光学顕微鏡、及びEDX付属走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。図1は、試料No.1の凝固材の断面のSEM写真(3000倍)を示す。図1において粒状の部分は化合物(NbB2)であり、背景部分は母材(Cu)である。化合物の存在は、EDXにより確認した。図1に示すように試料No.1の凝固材は、母材に微細な化合物の粒子が均一的に分散していることが分かる。また、図1から、母材に含有するNb,Bは、実質的に化合物として存在することが分かる。なお、試料No.2も同様に母材に微細な化合物の粒子が均一的に分散していた。
更に、各凝固材の断面の光学顕微鏡(200倍)の観察像を用いて、円相当径が5μm以下である化合物の粒子頻度を測定した。その結果を表1に示す。
加えて、得られた合金線(試料No.1,2,101)の引張強さ(MPa)、及び導電率(%IACS)を調べた。その結果を表1に示す。
表1に示すように試料No.1,2は、汎用のCu-Sn合金と比較して、導電率及び引張強さが高いことが分かる。また、試料No.1,2は粒子頻度(面積)が高く、微細な粒子が分散していることが分かる。更に、表1から、NbやBの含有量が多いほど強度が高く、含有量が少ないほど導電率が高い傾向にあることが分かる。
このような結果となった理由は、試料No.1,2の銅合金線は、微細な化合物粒子が均一的に分散した組織が維持されているためと推測される。このように強度及び導電率をバランスよく具える試料No.1,2は、電線・ケーブル用導体に好適に利用することができると考えられる。なお、上記試験例では、試験のために短尺材を作製したが、連続鋳造により長尺材も作製可能である。
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、Nb,Bの含有量や伸線時の加工度を適宜変更することができる。
本発明銅合金及び銅合金線は、高強度で高導電率が望まれる電線用導体の材料に好適に利用することができる。本発明銅合金の製造方法は、上記高強度で高導電率の銅合金の製造に好適に利用することができる。本発明電線・ケーブル用導体は、例えば、ワイヤーハーネス用電線、ロボット用ケーブル、携帯機器用ケーブルなどの導体に好適に利用することができる。
本発明銅合金の断面の顕微鏡写真(SEM写真)である。

Claims (7)

  1. Bを0.01〜5.0質量%、Nbを0.01〜5.0質量%含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなることを特徴とする銅合金。
  2. B及びNbを含有する化合物が銅の母材中に存在することを特徴とする請求項1に記載の銅合金。
  3. 円相当径が5μm以下である前記化合物の粒子頻度(面積)が80%以上であることを特徴とする請求項2に記載の銅合金。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅合金からなり、引張強さが520MPa以上、導電率が80%IACS以上であることを特徴とする銅合金線。
  5. 請求項4に記載の銅合金線からなることを特徴とする電線・ケーブル用導体。
  6. Bを0.01〜5.0質量%、Nbを0.01〜5.0質量%含有し、残部が銅である溶融金属を準備する工程と、
    前記溶融金属を冷却して凝固する工程とを具えることを特徴とする銅合金の製造方法。
  7. 前記凝固工程は、前記溶融金属を100℃/sec以上の冷却速度で冷却することを特徴とする請求項6に記載の銅合金の製造方法。
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