JP2016070380A - 摺動部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼結体の強度を確保しつつ、摺動面の摺動性および耐久性を向上させることができる摺動部材を提供する。【解決手段】摺動部材1を焼結体で形成する。この焼結体は、Fe系組織を主体として、1.0〜5.0wt%のCu、Cuよりも低融点の金属、およびCを含有するベース層3と、ベース層3と接した状態でベース層と共に焼結され、摺動面Aを有する摺動層2とからなる。摺動層2は、Ni、Mo、Mn、およびCrの中から選択される少なくとも1種の合金元素を含むFe系組織をベースとし、さらにCuおよびCを含有し、Cuの含有量がベース層よりも多くなっている。【選択図】図1

Description

本発明は、他部材と摺動する摺動面を有する摺動部材およびその製造方法に関する。
例えば建設機械のアームの関節部に用いられる軸受は、軸受面に非常に大きな面圧が加わるため、優れた耐摩耗性が要求される。この種の軸受として、例えば鋳鋼合金を切削加工したものや、摺動面に黒鉛片を斑点状に埋め込んだものがあるが、何れも製造コストが高いことが問題となっている。そこで、これらの代わりに、成形性に優れた焼結金属からなる焼結軸受が提案されている。例えば特許文献1には、建設機械用の軸受として、マルテンサイト組織を含んだ鉄炭素系合金に銅を分散させた焼結軸受が示されている。この焼結軸受では、焼結後に焼結体全体を焼入れし、その後、内外周面および端面を切削および研削して所定寸法に仕上げることとしている。
この他、焼結体における各部位ごとで材質を異ならせ、これら各部位ごとでその機能を異ならせるために、焼結体の内周面側と外周面側とで材質を異ならせる2層構造の圧粉体を成形する手法が特許文献2に記載されている。具体的には、圧粉体の外周面側を高強度の第1粉末で形成すると共に、内周面側を低摩擦性に優れた第2粉末で形成し、その後、この圧粉体を焼結することとしている。
特開2003−222133号公報 特開2005−95979号公報
特許文献2に記載される2層構造焼結体において、内周面を低摩擦係数にするためには、焼結体の内周面に銅リッチ層を形成する必要がある。その一方で2層構造焼結体の外周面側を高強度、特に特許文献1に記載される、建設機械のアームの関節部に設けられる軸受に求められるような高い強度を確保するためには、焼結体の外周面側を鉄−炭素を主体とした組織(パーライト組織)で形成する必要がある。この場合、圧粉体は、銅の融点(1083℃)を大きく超える温度で焼結することになる。
しかしながら、このように圧紛体を高温で焼結した場合、内周面の銅リッチ層に含まれる銅が完全に溶融する。溶融した銅は外周面側の銅濃度の低い層に引き込まれるため、焼結後の内周面に十分な銅組織が形成されない。その一方で、単に焼結温度を下げるだけでは焼結体の外周面側で必要とされる強度を確保することができない。従って、このままでは、高強度化と摺動性を両立するという二層構造焼結体の本来の目的を達成できない。
そこで、本発明は、焼結体の強度を確保しつつ、摺動面の摺動性や耐久性を向上させることができる摺動部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、焼結体で形成され、他部材と摺動する摺動面を有する摺動部材であって、Fe系組織を主体とし、1.0〜5.0wt%のCu、Cuよりも低融点の金属、およびCを含有するベース層と、ベース層と接した状態でベース層と共に焼結され、前記摺動面を有し、合金元素を含むFe系組織、およびCu系組織を主体とし、さらにCを含有し、Cuの含有量がベース層よりも多い摺動層とを備え、摺動層に含まれる前記合金元素を全てFe系組織と合金化させたことを特徴とするものである。
Fe系組織(Feを主成分とする組織)を主体とするベース層にCuとCuよりも低融点の金属とを含有させることで、焼結時には先ずベース層に含まれる低融点金属が溶融し、低融点金属の溶融液がCu粒子の表面を濡らす。そのため、Cuがその融点を下回るような温度で溶融し、溶融したCuと低融点金属がFe粒子に浸透してFe粒子内部まで拡散する。これにより、Fe粒子同士が強固に結合され、ベース層の強度が向上するため、鉄系焼結体の場合より焼結温度を下げても軸受強度を確保することが可能となる。焼結温度を下げることで、摺動層に含まれるCu粒子の多くが焼結中も溶融せずに、固体の状態を保持する。そのため、摺動層からベース層に引き込まれるCu粒子の量が少なくなり、摺動面に狙い量のCu系組織(Cuを主成分とする組織)を分布させることが可能となる。焼結時に摺動層のCu粒子が一部溶融しても、鉄系焼結体の焼結温度(通常は1130℃以上)よりも焼結温度を低く(例えば1070℃〜1120℃)することで、Cu粒子の溶融量を少なくすることができる。以上から、摺動面での摺動性と焼結体の強度とを両立することが可能となる。
また、摺動層に含まれる合金元素を全てFe系組織と合金化させることで、焼結後の残留オーステナイトが減少する。そのため、摺動面の硬度および強度を向上させることができる。
この摺動部材において、摺動層に含まれる合金元素として、焼入れ性を向上させる元素(Ni,Mo,Mn,およびCrの中から選択される少なくとも1種)を含有させれば、浸炭焼入れ等の熱処理を行うことなく、焼結後の冷却過程で摺動層に含まれるFe系組織の少なくとも一部をマルテンサイト変態およびベイナイト変態させることができる(シンターハードニング)。これにより、摺動面を含む摺動層が高硬度化されるので、摺動面の耐摩耗性を向上させることができる。また、これと併せて、ベース層内でのCuと低融点金属のFe粒子への拡散によりベース層の強度アップが達成されているので、焼結体全体の強度が向上する。従って、衝撃荷重が頻繁に作用し、高面圧下で使用される摺動部材、例えば建設機械のアームの関節部に使用される軸受として用いることも可能となる。
その一方で、焼結体の大部分を占めるベース層が基本的に上記の合金元素を含有していないので、ベース層のFe系組織ではマルテンサイト変態やベイナイト変態を生じない。このように摺動層だけに焼入れ性を向上させる合金元素を配合することで、高価な合金元素の使用量を削減して低コスト化を図ることができる。また、ベース層が摺動層と比べて軟質なものとなるので、焼結体の寸法矯正をサイジング(金型内で焼結体を圧縮整形する工程)で行うことが可能となる。特許文献1の構成では、焼結後の焼入れで焼結体全体を硬化させているため、焼結体の寸法矯正は切削・研削等の機械加工で行わざるを得ないが、本発明の摺動部材はサイジングによる寸法矯正が可能であり、機械加工が不要となる。また、焼結後の焼入れ工程も不要である。このように焼結後の焼入れ工程および機械加工工程を省略できるので、特許文献1に記載された発明と比べて摺動部材をさらに低コスト化することができる。
摺動層のCu系組織は、70〜100%を粒径45μm未満とする銅粉によって形成するのが好ましい。このように銅粉を小粒径化することにより、焼結中に摺動層に含まれる銅粉の一部が溶融してベース層に逃げた際に摺動層に形成される空孔が小さくなるため、摺動面の強度を高めて衝撃荷重等による摺動面の変形を防止することができる。また、銅粒子がFe粒子に拡散し易くなるため、摺動層のFe粒子間の結合強度を高めて、摺動面の強度をさらに高めることができる。
また、摺動層には、さらにCuよりも低融点の金属を含有させるのが好ましい。これにより、焼結時に摺動層に含まれるCuがFe粒子中に拡散し易くなり、Fe粒子同士の結合強度が高まるため、摺動層、さらには摺動部材全体の機械的強度を向上させることができる。
ベース層に含まれる低融点の金属としてはリン(P)を使用するのが好ましい。また、ベース層における、Feに対する低融点金属の含有量は0.1〜0.6wt%とするのが好ましい。
摺動層のCuの含有量を10wt%以上、30wt%以下にすることで、摺動面の摺動性を確保しつつ銅の過剰使用による高コスト化を防止することができる。ベース層のFe粒子を結合させるためにベース層にもCuを含有させる必要があるが、その際にベース層のCu含有量を摺動層のCu含有量よりも小さくすることで、高価な銅の使用量を抑えて低コスト化を図ることができる。
以上に述べた摺動部材は、Fe系粉末を主体として、1.0〜5.0wt%のCu、Cuよりも低融点の金属、およびCをさらに含む第一粉末を調製し、合金元素を含むFe系粉末を主体として、CuおよびCをさらに含み、Cuの含有量が第一粉末よりも多く、かつ前記合金元素の単体粉を含まない第二粉末を調製し、金型内に仕切り部材を配置して第一粉末充填部と第二粉末充填部とを形成し、第一粉末充填部に第一粉末を充填すると共に、第二粉末充填部に第二粉末を充填し、金型内の第一粉末および第二粉末を、仕切り部材を取り外した状態で同時に圧縮して圧粉体を形成し、圧粉体を焼結して、第一粉末に対応した組成のベース層と、第二粉末に対応した組成の摺動層とを一体に形成し、その後、得られた焼結体の少なくとも摺動面にサイジングを施すことで得ることができる。
この場合、合金元素としてNi,Mo,Mn,およびCrの中から選択される少なくとも1種を使用するのが好ましい。また、圧紛体を焼結させる際に1070℃〜1120℃で焼結するのが好ましい。さらに、第二粉末のCuとして、70〜100%が粒径45μm未満の銅粉を用いるのが好ましい。加えて、第二粉末にさらにCuよりも低融点の金属を含有させることもできる。
第一粉末および第二粉末を同時圧縮して圧粉体を成形する際には、両粉末の見かけ密度の差が大きいと圧粉体の成形に支障を来す。これに対し、ベース層の厚さを摺動層の厚さよりも大きくし、かつ第一粉末の見かけ密度を第二粉末の見かけ密度よりも小さくすることで、圧粉体の成形が可能となる。すなわち第一粉末と第二粉末の見かけ密度に多少の差があっても、圧粉体を容易に成形することが可能となる。
以上のように、本発明によれば、焼結体の強度を確保しつつ、摺動面の摺動性と耐久性を向上させることができる。
本発明の焼結軸受を組み込んだ関節部の断面図である。 上記焼結軸受の正面図である。 上記焼結軸受の圧縮成形工程において、第一粉末を充填した状態を示す断面図である。 上記圧縮成形工程において、第二粉末を充填した状態を示す断面図である。 上記圧縮成形工程において、仕切部材を下降させた状態を示す断面図である。 上記圧縮成形工程において、余分な粉末を除去した状態を示す断面図である。 上記圧縮成形工程において、上パンチで混合粉末を圧縮した状態を示す断面図である。 上記圧縮成形工程において、圧粉体を金型から取り出した状態を示す断面図である。 上記焼結軸受のサイジング工程で使用する金型を示す断面図である。 圧縮成形工程以降の製造工程を示す断面図である。 焼入れ性を向上させる合金元素の濃度勾配を示すグラフである。 図12(a)は摺動層のミクロ組織を表す図で、図12(b)はベース層のミクロ組織を表す図である。 各試験片の顕微鏡写真を示す図である。 確認試験の結果を示す表である。 他の実施形態に係る焼結軸受の断面図である。
本発明の摺動部材の一例として焼結軸受を挙げ、以下にその実施形態を説明する。
この焼結軸受は、油圧ショベル車やブルドーザ等の建設機械のアーム(ブームやバケット等も含む)同士を結合する関節部での使用に適合するものである。図1は、このような関節部の概略構造を図示している。図1に示すように、この関節部では、二股状に形成された第一アーム6の内側に第二アーム7の先端が挿入されている。第二アーム7の先端には取り付け孔7aが設けられ、この取り付け孔7aに焼結体からなる焼結軸受1の外周面3aが圧入等の適宜の取り付け手段を用いて固定されている。第一アーム6の二股部分のそれぞれに設けたピン穴6aおよび焼結軸受1の内周面1aにピン4を挿入することで、第一アーム6と第二アーム7が相対回転可能に連結される。ピン4は第一アーム6に固定されており、そのために第一アーム6と第二アーム7とを相対的な揺動させると、ピン4が軸受1の内周面1aに対して相対回転する。符号8は、ピン4の抜けを規制する抜け止めである。この関節部では、ピン4の頭部4aもしくは抜け止め8をピン4の軸部から取り外し、ピン4を抜き取ることで第一アーム6と第二アーム7を分離し、軸受1やピン4のメンテナンスを行えるようになっている。
[焼結軸受の基本的構成]
図1、さらには図2に示すように、焼結軸受1は、円筒状の焼結体からなり、内径側の摺動層2と外径側のベース層3とを互いに接触させた状態で一体に有する。図示例では、焼結軸受1が摺動層2およびベース層3のみからなり、何れの層も筒状、特に円筒状を成している。焼結軸受1の内周面1aを構成する摺動層2の内周面は、軸方向にストレートな断面真円状をなし、内周に挿入されるピン4の軸部(以下、軸4と称する)を相対回転自在に支持する摺動面A(軸受面)を構成する。焼結軸受1の外周面1b(本実施形態ではベース層3の外周面)は、軸方向にストレートな断面真円状をなし、第二アーム7等の他部材に取り付けられる取り付け面Bを構成する。焼結軸受1の軸方向両端面は、軸方向と直交する方向に延びる平坦面である。焼結軸受1の軸方向両端面と内周面2aおよび外周面3aとの間には、それぞれ面取りが設けられている。
上記の関節部で使用する場合、焼結軸受1は、例えば内径が直径30〜100mm、半径方向の肉厚が5〜50mmとなるように形成される。摺動層2の半径方向の肉厚は、焼結軸受1の半径方向の肉厚の1〜20%程度(好ましくは2〜10%程度)とし、その実際の肉厚寸法は例えば0.3〜2mm程度とする。摺動層2が薄すぎると、成形時における原料粉末の充填性が悪化すると共に許容摩耗限界が低くなり、摺動層2が厚すぎると、後述する、焼き入れ性を向上させるための元素や銅の使用量が増えてコスト高を招くためである。多孔質をなす焼結軸受1の微細空孔には潤滑油が含浸されている。摺動面Aと軸4の相対回転時には、焼結軸受1の内部の微細空孔に保持された潤滑油が摺動面Aの表面開孔から滲み出し、摺動面Aと軸4との間の潤滑が行われる。
本発明の焼結軸受1は、摺動層2およびベース層3で金属組成が異なる二層構造をなしている。この二層構造の焼結軸受1は、以下に述べる圧縮成形工程、焼結工程、サイジング工程、および含油工程を順次経ることで製造される。
圧縮成形工程では、摺動層2の材料とベース層3の材料を同一の成形金型に供給して同時に成形する、いわゆる二色成形の手法を採用している。この二色成形は、成形金型内の外径側と内径側に二つの空間状の粉末充填部を形成して、各粉末充填部にそれぞれ粉末を充填するもので、例えば図3に示す金型を用いて行われる。この金型は、ダイ11と、ダイ11の内周に配されたコアピン12と、ダイ11の内周面11aとコアピン12の外周面12aとの間に配された外側下パンチ13と、仕切部材14と、内側下パンチ15と、上パンチ16(図7参照)とを有する。外側下パンチ13、仕切部材14、および内側下パンチ15は、同心の円筒形状をなし、それぞれ独立して昇降可能とされる。
まず、図3に示すように、仕切板14および内側下パンチ15を上端位置まで上昇させると共に、外側下パンチ13を下端位置まで下降させ、ダイ11の内周面11aと、仕切板14の外周面14aと、外側下パンチ13の端面13aとで外径側の第一粉末充填部17を形成する。この第一粉末充填部17に、ベース層3に対応する第一粉末M1を充填する。第一粉末M1の組成は後述する。
次に、図4に示すように内側下パンチ15を下端位置まで下降させ、仕切板14の内周面14bと、コアピン12の外周面12aと、内側下パンチ15の端面15aとで内径側の第二粉末充填部18を形成する。この第二粉末充填部18は第一粉末充填部17から隔絶された状態で形成され、この第二粉末充填部18に摺動層2に対応する第二粉末M2が充填される。このとき、第二粉末M2を内側粉末充填部18から溢れさせ、仕切板14の上方を覆うようにする。第二粉末M2の組成は後述する。
次に、図5に示すように仕切板14を下降させる。これにより、仕切部材14の分のスペースに、第二粉末M2が入り込み、第一粉末M1と第二粉末M2とが接触する。これにより、ダイ11の内周面11a、外側下パンチ13の端面13a、仕切板14の端面14c、内側下パンチ15の端面15a、およびコアピン12の外周面12aで形成される粉末充填部19に、第一粉末M1および第二粉末M2が二層状態で満たされた状態となる。そして、粉末充填部19から溢れ出た余分な第二粉末M2が除去される(図6参照)。
このように金型から仕切り部材14を取り外した状態で、図7に示すように、上パンチ16を下降させ、上パンチ16の端面16aを粉末M1,M2に押し当てて、上パンチ16、下パンチ13,15、仕切り部材14、およびダイ11で粉末充填部19に充填された粉末M1,M2を圧縮し、圧粉体Mを成形する。そして、図8に示すように、外側下パンチ13、仕切板14、および内側下パンチ15を上昇させ、圧粉体Mを金型から取り出す。
ここでベース層3に対応する第一粉末M1は、Fe系粉末を主体とし、銅(Cu)、Cuよりも低融点の金属、および炭素(C)をさらに含むものとする。具体的には、鉄粉、銅粉、黒鉛粉を主成分として、その他にCuよりも低融点の金属を含有させたものを第一粉末M1として用いる。
鉄粉としては、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉等が使用可能であるが、含油性に優れる多孔質状の還元鉄粉を使用するのが好ましい。銅粉としては、電解銅粉やアトマイズ銅粉を使用することができるが、粒子全体として樹枝形状をなす電解銅粉を使用すれば、圧粉体強度を高めることができ、かつ焼結時に銅がFe粒子に拡散し易くなるので、より好ましい。また、低融点金属としては、融点が銅よりも低い金属、具体的には700℃以下の融点を有する金属、例えば錫(Sn)、亜鉛(Zn)、リン(P)等が使用可能である。低融点金属の中でもリンは、焼結時に溶融して鉄と銅の粒子に浸透し、Cu−Feの焼結を促進する。つまり、鉄および銅の双方に対して相性が良い。そのため、低融点金属としてリンを使用することが好ましい。例えば鉄−リン合金粉(Fe3P)を銅粉および黒鉛粉と混合すれば、第一粉末M1の混合・成形が容易となり、かつ安全性も高い、という利点が得られる。この場合、Fe系粉末として鉄−リン合金粉と純鉄粉を混合したものを使用することもできる。リン以外の他の低融点金属(例えばSn)を使用する場合には、鉄粉等と合金化したものではなく、低融点金属の単体粉を添加することもできる。
第一粉末M1における各粉末の配合量は、例えば銅粉:1.0〜5.0wt%(好ま しくは2.0〜3.0wt%)、黒鉛粉:0.5〜0.8wt%とし、残りを鉄粉およ び鉄−リンの合金鋼粉とする。銅粉は、その配合量が少なすぎるとベース層3の強度低 下を招き、多すぎると炭素の拡散を阻害して焼結体の強度・硬さを低下させてしまうの で上記の範囲とする。鉄に対するリンの割合は0.1〜0.6wt%(好ましくは0. 3〜0.5wt%)とし、この値が得られるように合金鋼粉と鉄粉の配合割合を任意に 調節する。鉄粉に対する合金鋼粉の配合割合は、重量比(合金鋼粉/鉄粉)で、例えば 1/30〜1/20程度とすることができる。低融点金属であるリンは、銅の鉄粒子へ の拡散の促進を通じて焼結体の強度を高めるために配合されており、これが少なすぎる とかかる効果が不十分となり、多すぎると低融点金属が偏析し、焼結体が脆くなって強 度低下を招くので、上記の範囲とする。また、黒鉛粉は、焼結時に鉄と炭素を反応させ て硬いパーライト相を形成するために配合されており、これが少ないとベース層の強度 を確保できず、多すぎると鉄がセメンタイト組織になり、脆くなって強度低下を招くの で、上記の範囲とする。
一方、摺動層2に対応する第二粉末M2は、焼入れ性を向上させる合金元素を含むFe系粉末を主体として、CuおよびCをさらに含むものとする。具体的には、合金元素を含む合金鋼粉、銅粉、および黒鉛粉を混合したものを第二粉末M2として用いる。第二粉末M2におけるCuの含有量は、第一粉末M1のCu含有量よりも多くする。
焼入れ性を向上させる合金元素として、ニッケル(Ni),モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、およびクロム(Cr)の中から選択される何れか1種または2種以上が使用される。本実施形態では、NiおよびMoを選択して、Ni、Mo、および鉄の合金鋼粉(Fe−Ni−Mo系合金鋼粉)を使用している。焼き入れ性を向上させる合金元素は、後述のようにマルテンサイト変態およびベイナイト変態を生じさせてシンターハードニングを行うために添加されるが、NiおよびMoは、焼入れ性の向上効果が特に優れるために好ましい。第二粉末M2の合金鋼粉として完全合金粉が好ましい。銅粉は、電解銅粉が好ましいがアトマイズ銅粉を使用しても構わない。
第二粉末M2における各粉末の配合量は、銅粉10〜30wt%(好ましくは15〜20wt%)、黒鉛粉0.5〜2.0wt%とし、残りを合金鋼粉とするのが好ましい。また、第二粉末M2中のNiの割合が1.0〜4.0wt%、Moの割合が0.5〜1.5wt%の範囲となるように合金鋼粉の種類および量を選定する。NiおよびMoの配合量は、成形性と焼入れ性の向上効果から定められる。銅の配合量は、これが少なすぎると、摺動面2aの摺動性が低下し、多すぎると軸受面が柔らかくなりすぎて耐摩耗性に問題が生じるので上記の範囲とする。第二粉末M2の黒鉛粉は、焼結時に鉄と炭素を反応させて主にマルテンサイト相およびベイナイト相を形成するため、さらには固体潤滑剤として機能させるために配合され、その配合割合の上限および下限は、第一粉末M1で黒鉛粉の配合割合を定めた理由と同じ理由から定められる。
ベース層3に対応する第一粉末M1と、摺動層2に対応する第二粉末M2の見かけ密度は何れも1.0〜4.0g/cm3となる。両粉末の組成の相違から両粉末の見かけ密度にはどうしても差を生じ、この差から圧縮成形工程において、第一粉体M1と第二粉体M2を同時成形する際に、圧粉体Mが崩れる等して成形が困難となることが予想される。しかしながら、本実施形態のように摺動層2の肉厚がベース層3の肉厚よりも十分に小さく(上記のように摺動層2の肉厚は焼結軸受の肉厚の1〜20%、好ましくは2〜10%である)、しかも第一粉末M1の見かけ密度が第二粉末M2の見かけ密度よりも低い状態で、その密度差が0.5g/cm3以下であれば、第一粉体M1と第二粉体M2を同時成形しても圧粉体Mを成形することができる。従って、第一粉体M1の見かけ密度は第二粉体M1の見かけ密度よりも小さくし、かつその密度差を0.5g/cm3以下に抑えるのが好ましい。
図10に示すように、圧縮成形工程を経た圧粉体Mを、焼結工程で焼結することで焼結体M'が得られる。この時、ベース層3が摺動層2に接した状態で摺動層2と共に焼結されるため、焼結後は摺動層2とベース層3とを一体化することができる。焼結で使用する雰囲気ガスとしてはCOを含むものを使用する。焼結温度は鉄と炭素が反応を開始する温度(900℃程度)よりも高くなるように設定するが、銅の融点(1083℃)は大幅に超えないようにする。理想的には、焼結体M’中の全組織の温度が銅の融点を超えないような温度で焼結するのが望ましいが、実際にはそのような温度制御は困難であるので、焼結温度は、銅の融点付近となる例えば1070℃〜1120℃に設定する。この温度は、鉄系焼結体を焼結する際の一般的な炉内温度(1130℃以上)よりも低い。
焼結工程を経た焼結体M’は、サイジング工程に移送されて寸法矯正(整形)が行われる。本実施形態では、図9に示すように、ダイ23、コアロッド24、および上下のパンチ25,26を有するサイジング金型を用いて焼結体M’の内周面、外周面、および両端面を圧迫することにより、焼結体M’にサイジングを行う。その後、含油工程にて焼結体M’の内部気孔に潤滑剤を含浸することにより、焼結軸受1が完成する。焼結体M’の残留オーステナイトを除去するため、焼結後に焼結体M’の焼き戻しを行ってしてもよい。特に必要がなければ、焼結体M’に潤滑剤を含浸させずに使用することもできる。
焼結工程における焼結時には、先ず、第一粉末M1に含まれるリンが溶融する。リンの溶融液がCu粒子の表面を濡らすことで、Cuがその融点を下回るような温度で溶融するようになり、溶融したCuとリンがFe粒子に浸透してFe粒子内部まで拡散する。これにより、Fe粒子同士が強固に結合され、ベース層3の強度が向上する。また、鉄と炭素の反応開始温度よりも高い温度で焼結するので、Fe組織には硬いパーライト相が形成される(一部はフェライト相)。以上の焼結過程を経ることで、ベース層3の強度が確保されるため、焼結温度を一般的な鉄系焼結品の焼結温度よりも下げた場合でも、ベース層3に必要とされる強度を確保することができる。焼結温度を鉄系焼結品の焼結温度よりも下げることで、摺動層2を構成する第二粉末M2に含まれる多くの銅が溶融せずに、固体の状態を保持する。そのため、摺動層2、特に摺動面Aに存在する銅がベース層3に引き込まれず、摺動面Aに狙い量の銅を分布させることが可能となる(摺動面Aにおける銅の分布量は面積比で10〜30%とする)。従って、摺動面Aの摺動性と焼結体M’の強度とを両立することができる。
また、摺動層2にNi,Mo等の焼入れ性向上元素を含有させているので、浸炭焼入れ等の熱処理を別途行うことなく、連続焼結炉の冷却ゾーンを通過させる間に、摺動層2のFe系組織にマルテンサイト変態およびベイナイト変態を生じさせて高硬度化させることができる(シンターハードニング)。これにより、摺動面Aを高硬度化してその耐摩耗性を向上させることができる。また、これと併せて、ベース層3内のリンによりベース層3の強度アップが達成されているので、焼結体全体の強度(圧環強度等)が向上する。従って、衝撃荷重が頻繁に作用し、高面圧下で使用される建設機械のアームの関節部における軸受としての使用にも耐え得るものとなる。
その一方で、焼結体M’の大部分を占めるベース層3には焼入れ性を向上させる合金元素が添加されていないので、高価な該元素の軸受全体での使用量を削減することができ、軸受の低コスト化を図ることができる。また、ベース層3ではシンターハードニングが行われず、マルテンサイト変態やベイナイト変態も生じないので、ベース層3が摺動層2に比べて軟質となる。そのため、焼結体M’の寸法矯正をサイジング工程で行うことが可能となる。上述した特許文献1の構成では、焼結後の焼入れで焼結体全体を硬化させているため、焼結体の寸法矯正は切削・研削等の機械加工で行わざるを得ないが、本発明の焼結体M’はサイジングによる寸法矯正が可能であり、機械加工による後加工が不要である。また、焼結後の焼入れを行わなくても、必要とされる十分な強度(例えば500MPa以上の圧環強度)を確保することができる。このように焼結後の焼入れ工程および機械加工工程を省略できるので、特許文献1に記載された発明と比べて焼結軸受1をさらに低コスト化することができる。
ベース層3における黒鉛は全て炭素となってFeに拡散している。これに対し、摺動層2における黒鉛は焼結後も一部が粒子として残っており、摺動面Aには黒鉛組織33(黒鉛相)が形成されている。これは、摺動層2ではベース層3よりも銅の含有量が多く、鉄粒子の一部表面を銅粒子が覆うため、鉄と炭素が反応し難くなることによる。このように摺動層2にはベース層3と比べて多くの黒鉛相が存在するため、この黒鉛相を固体潤滑剤として機能させることができ、これによって摺動面Aの摺動性の向上を図ることができる。
なお、ベース層3に対応する第一粉末M1には焼入れ性を向上させる合金元素(本実施形態ではNiおよびMo)が含まれていないので、理論上はベース層3に該合金元素が含まれないことになるが、図3〜図8に示す成形工程の手順との関係で、実際には図11に示すように、摺動層2とベース層3との間の界面に合金元素の濃度勾配が生じる。これにより、界面付近に合金元素を含む領域が形成されるため、界面の強度、ひいては摺動層2とベース層3との結合強度が高められる。この場合、ベース層3のうち、摺動層2から十分に離隔した領域、例えば摺動層2と対向関係にある表面(本実施形態でいえばベース層3の外周面)には焼入れ性を向上させる元素が含まれないことになる。濃度勾配が生じている領域の半径方向寸法Rは0.1〜1.0mmの範囲内、好ましくは0.2〜0.5mmの範囲内であることが望ましい。濃度勾配が生じている領域の半径方向寸法Rは、二色成形金型の仕切部材14(図3参照)の半径方向厚さにより調整することができる。
以上の手順で製作された焼結軸受1のうち、摺動層2のミクロ組織を図12(a)に概略図示し、ベース層3のミクロ組織を図12(b)に概略図示する。
摺動層2は鉄を最も多く含む金属組織であり、Fe系組織とCu系組織を主体とし、かつ一部を黒鉛組織として形成される。具体的には、図12(a)に示すように、Fe系組織としてNiおよびMoを含むFe−C系合金相31を備え、Cu系組織としてCu相32を備えている。同図において、符号33は黒鉛相であり、符号34は空孔である。Fe−C系合金相31は、マルテンサイト相とベイナイト相を主体とし、一部にパーライト相を含む。面積比では、Fe系組織がCu系組織よりも大きく、黒鉛組織が最も小さい。この摺動層2は、第二粉末M2の配合比に倣い、主成分としてCu:10〜30wt%(好ましくは15〜20wt%)、C:0.5〜0.8wt%、Ni:1.0〜4.0wt%、Mo:0.5〜1.5wt%を含み、その残部がFeおよび不可避的不純物で構成されている。
また、ベース層3は鉄を最も多く含む金属組織であり、Fe系組織を主体として形成される。具体的には、図12(b)に示すように、Fe系組織としてFe−C系合金相35を備えている。このFe−C系合金相35は、フェライト36とセメンタイト37(Fe3C)が交互にならんだパーライトであって、その内部にはCuおよびPが拡散している。ベース層3の金属組織中に粒子としてのCuやPは存在せず、また、焼入れ組織および遊離黒鉛も存在しない。このベース層3は、第一粉末M1の配合比に倣い、主成分としてCu:1.0〜5.0wt%(好ましくは2.0〜3.0wt%)、C:0.5〜0.8wt%、およびPを含み、残部がFeおよび不可避的不純物で構成される。Pの含有量は、Feに対して0.1〜0.6wt%(好ましくは0.3〜0.5wt%)である。ベース層3のCuの含有量は摺動層2の銅の含有量よりも少ないので、軸受全体での銅の使用量を減じて低コスト化を図ることができる。
[基本的構成の改良]
以上に述べた基本的構成を有する焼結軸受1は、以下の対策(1)〜(3)をとることで改良することができる。
(1)合金元素単体粉の添加の省略
一般に合金鋼粉で鉄系焼結体を形成する場合、合金鋼粉に、焼入れ性を向上させる上記の合金元素(Ni,Mo,Mn,およびCrの中から選択される何れか1種または2種以上)だけを含む単体粉(合金元素単体粉)を添加する場合が多い。合金鋼粉は通常は硬質で圧縮性に劣るため、焼結体を高密度化することが困難となるが、合金鋼粉に合金元素単体粉を添加することで、より高密度の焼結体を得ることが可能となる。
その一方で、このように合金元素単体粉を添加すると、この単体粉がFe組織に十分に拡散できず、焼結後の金属組織に合金元素の粒子が残る場合がある。焼結軸受1にこのような粒子が残存すると、摺動層2、延いては焼結軸受1全体の機械的強度、特に圧環強さが低下する。これを防止するには、焼結時に1200℃以上の高温で8時間以上加熱させて全ての合金元素をFe組織中に拡散させる必要があり、量産に支障を来して大幅なコストアップを招く。
以上の観点から、焼結軸受1のように高密度化がそれほど必要とされない用途では、摺動層2を形成する第二粉末M2への合金元素単体粉の添加は行わないのが好ましい。すなわち、焼結体中の全ての焼入れ性を向上させる合金元素を合金鋼粉に包含されているもので賄う。これにより、焼結軸受1の焼結後は、組織中の合金元素が全てFe系組織と合金化したものとなる。これにより、残留オーステナイトを減少させて焼結軸受1の強度低下を回避することができる。
(2)銅粉の小粒径化
摺動層2を構成する第二粉末M2に添加する銅粉としては、小粒径のものを使用するのが好ましい。これは、以下の理由による。
本発明では、焼結時の炉内温度が銅の融点に近いため、焼結中に摺動層2に含まれる銅粉の一部が溶融する場合がある。溶融した銅粉はベース層3に逃げ、これに伴って摺動層2に逃げた銅粉の大きさに相当する空孔を生じる。銅粉の粒径が大きい場合、摺動層2に粗大空孔が多数形成されるため、摺動面Aの強度が低下し、衝撃荷重等が作用した際に摺動面が変形するおそれがある。また、銅粉の粒径が大きいと、銅がFe粒子に拡散しにくくなる。そのため、摺動層2のFe粒子間の結合強度が低下し、摺動面Aの強度低下を招く。かかる観点から、摺動層2に対応する第二粉末M2に使用する銅粉としては、その全体の70〜100wt%が粒径45μm未満のものを使用する。
このように小粒径の銅粉を使用した第二粉末M2において、合金鋼粉の平均粒径(d1)に対する銅粉の平均粒径(d2)の比d2/d1は、1/5以上で1/2以下、好ましくは1/4以上で1/3以下とする。この比が上限値を上回ると、空孔の粗大化の問題を生じ、下限値を下回ると、粉末の流動度が低下して成形性が悪化する問題を生じるためである。また、合金鋼粉の配合量p1に対する銅粉の配合量p2の比(p2/p1)は、1/6以上で1/3以下、好ましくは1/5以上で1/4以下とする。この比が上限値を上回ると、強度低下の問題を生じ、下限値を下回ると、摺動性の低下の問題を生じるためである。
(3)低融点金属の添加
基本的構成の焼結軸受1では、摺動層2に低融点金属を包含させていないが、摺動層2を構成する第二粉末M2には、上述した何れかの低融点金属(例えばSn)を加えることもできる。これにより、焼結時に、第二粉末M2に含まれるCuがFe組織中に拡散し易くなり、Fe粒子同士の結合強度が高まるため、摺動層2、さらには焼結軸受1全体の機械的強度を向上させることができる。第二粉末M2における銅粉に対する低融点金属の割合は、0.5wt%以上で5.0wt%以下、好ましくは1.0wt%以上で3.0wt%以下とする。この比が上限値を上回ると、偏析の問題を生じ、下限値を下回ると、強度低下の問題を生じるためである。
[確認試験]
以上に述べた対策(1)〜(3)の効果を確認するため、以下の試験片No.1〜No.5を製作し、それぞれについてドライ密度、含油率、圧環強さ、ビッカース硬さ、ロックウェル硬さのそれぞれを測定した。なお、試験片No.1〜No.5は、第二粉末M2(摺動層2に対応)の組成のみが異なっており、第一粉末M1(ベース層3に対応)の組成、試験片の成形条件、および焼結条件は何れも同じである。なお、第一粉末M1の組成は、何れの試験片でも、銅粉:3.0wt%、黒鉛粉:0.8wt%とし、残りを鉄−リンの合金鋼粉および鉄粉としている。
各試験片の第二粉末M2は、ベース粉にNi単体粉やSn粉を下記の割合で添加したものである。ここで、ベース粉は、銅粉20wt%、黒鉛粉0.8wt%を配合し、Ni単体粉やSn粉を除いた残りをFe−Ni−Mo系合金鋼粉としたものである。なお、試験片No.4の第二粉末M2で使用した銅粉は、その全体の70〜100wt%が粒径45μm未満であるが、これ以外の試験片(No.1〜No.3、No.5)の第二粉末M2で使用した銅粉は、粒径45μm未満の割合が10〜30wt%である。つまり試験片No.4の第二粉末M2で使用する銅粉は、他の試験片の第二粉末M2で使用する銅粉よりも小粒径としている。
試験片No.1…ベース粉+Ni単体粉1.0wt%+Sn粉1.0wt%
試験片No.2…ベース粉+Ni単体粉1.0wt%+Sn粉0.8wt%
試験片No.3…ベース粉+Ni単体粉1.0wt%+Sn粉0.5wt%
試験片No.4…ベース粉のみ(Ni単体粉0%、Sn粉0%)
試験片No.5…ベース粉+Ni単体粉1.0wt%(Sn粉0%)
各試験片No.1〜No.5の顕微鏡写真を図13に示し、試験結果を図14に示す。両図から以下の傾向を読み取ることができる。
・試験片No.4と試験片No.5の対比から、Ni単体粉の添加を省略すれば、圧環強さが向上する。
・Cu組織と空孔の分散状態は試験片No.4が最も良好である。
・試験片No.1〜No.3と試験片No.5の対比から、Sn粉を添加すれば、圧環強さが向上する。ただし、その効果は、試験片No.4よりも劣る。
以上の分析結果から、圧環強さを向上させるためには、試験片No.4、すなわち摺動層2に対応する第二粉末M2にNi単体粉を添加せず(対策1)、かつ第二粉末M2の銅粉を小粒径としたもの(対策2)が最も効果的であることが理解できる。これによって550MPa以上、好ましくは600MPa以上の圧環強さを得ることができる。これらの対策に加えて第二粉末M2にSn粉を添加することで(対策3)、圧環強さをさらに向上できると考えられる。ちなみに試験片No.4における摺動面全体に対する空孔の割合は、面積比で20〜40%程度であった。図13の試験片No.1〜No.3と試験片No.5の対比から、第二粉末M2にSn粉を添加することで(対策3)、内部空孔を微細化できることも理解できる。
[他の実施形態]
以上の実施形態では、焼結軸受1の内周面1aに摺動面Aが形成される場合を示したが、これに限らず、例えば図15に示すように、焼結軸受1の外周面1bに摺動面Aを形成し、内周面1aに取り付け面Bを形成することもできる。この場合、摺動層2が焼結軸受1の外径側に形成され、ベース層3が焼結軸受1の内径側に形成されることになる。摺動層2およびベース層3の構成および機能は、先に述べた実施形態での摺動層2およびベース層3と共通する。この他、図1において、焼結軸受1の端面が第一アーム6と高面圧で摺動する場合には、焼結軸受の端面に摺動面Aを形成することもできる。
また、焼結体M’や摺動面Aの形態も任意であり、摺動部材として球面ブッシュや平坦なパッド状部材(例えばブームパッド)に本発明を適用することができる。前者であれば摺動面Aが球面状となり、後者であれば摺動面Aが平坦面状となる。摺動面Aに一つあるいは複数の凹部(例えば溝状)を形成することもでき、これにより凹部を潤滑剤溜りとして活用することが可能となる。
また、上記の実施形態では、摺動層2とベース層3との界面が円筒面状である場合を示したが、これに限らず、界面の軸直交断面形状を非円形(例えば多角形状やスプライン状)とすることができる(図示省略)。これにより、摺動層2とベース層3との結合強度がさらに高められる。界面の形状は、圧縮成形工程における仕切部材14(図3等参照)の形状に倣うため、仕切部材14の形状を変更することで界面の形状を変更することができる。
また、上記の実施形態では、焼結軸受1を建設機械に適用した場合を例示したが、これに限らず、本発明の摺動部材は、摺動面に高面圧条件下で使用される種々の用途に好適に適用できる。
1 焼結軸受
1a 内周面
1b 外周面
2 摺動層
3 ベース層
4 ピン(軸)
6 第一アーム
7 第二アーム
20 焼結炉
31 Fe系組織(Fe−C合金相)
32 Cu系組織(Cu相)
33 黒鉛組織(黒鉛相)
34 空孔
35 Fe系組織(Fe−C合金相)
36 フェライト
37 セメンタイト
A 摺動面(軸受面)
B 取り付け面
M 圧粉体
M’ 焼結体
M1 第一粉末
M2 第二粉末

Claims (15)

  1. 焼結体で形成され、他部材と摺動する摺動面を有する摺動部材であって、
    Fe系組織を主体とし、1.0〜5.0wt%のCu、Cuよりも低融点の金属、およびCを含有するベース層と、
    ベース層と接した状態でベース層と共に焼結され、前記摺動面を有し、合金元素を含むFe系組織、およびCu系組織を主体とし、さらにCを含有し、Cuの含有量がベース層よりも多い摺動層とを備え、
    摺動層に含まれる前記合金元素を全てFe系組織と合金化させたことを特徴とする摺動部材。
  2. 前記合金元素としてNi,Mo,Mn,およびCrの中から選択される少なくとも1種を含む請求項1記載の摺動部材。
  3. 摺動層に含まれるFe系組織の少なくとも一部がマルテンサイト変態およびベイナイト変態している請求項2記載の摺動部材。
  4. 摺動層のCu系組織が、70〜100%を粒径45μm未満とする銅粉によって形成されている請求項1記載の摺動部材。
  5. 摺動層がさらにCuよりも低融点の金属を含む請求項1記載の摺動部材。
  6. ベース層に含まれる低融点の金属がPである請求項1記載の摺動部材。
  7. ベース層における、Feに対する低融点金属の含有量を0.1〜0.6wt%とした請求項1記載の摺動部材。
  8. 摺動層のCuの含有量を10〜30wt%とした請求項1記載の摺動部材。
  9. 建設機械のアームの関節部の軸受として使用される請求項1に記載の摺動部材。
  10. 摺動層およびベース層を備え、摺動層に他部材と摺動する摺動面が形成された摺動部材を製造するための方法であって、
    Fe系粉末を主体として、1.0〜5.0wt%のCu、Cuよりも低融点の金属、およびCをさらに含む第一粉末を調製し、
    合金元素を含むFe系粉末を主体として、CuおよびCをさらに含み、Cuの含有量が第一粉末よりも多く、かつ前記合金元素の単体粉を含まない第二粉末を調製し、
    金型内に仕切り部材を配置して第一粉末充填部と第二粉末充填部とを形成し、
    第一粉末充填部に第一粉末を充填すると共に、第二粉末充填部に第二粉末を充填し、
    金型内の第一粉末および第二粉末を、仕切り部材を取り外した状態で同時に圧縮して圧粉体を形成し、
    圧粉体を焼結して、第一粉末に対応した組成のベース層と、第二粉末に対応した組成の摺動層とを一体に形成し、
    その後、得られた焼結体の少なくとも摺動面にサイジングを施すことを特徴とする摺動部材の製造方法。
  11. 前記合金元素としてNi,Mo,Mn,およびCrの中から選択される少なくとも1種を含む請求項10記載の摺動部材の製造方法。
  12. 圧紛体を焼結する際に1070℃〜1120℃で焼結する請求項10記載の摺動部材の製造方法。
  13. 第二粉末中のCuとして、70〜100%が粒径45μm未満の銅粉を用いる請求項10記載の摺動部材の製造方法。
  14. 第二粉末にさらにCuよりも低融点の金属を含有させる請求項10記載の摺動部材。
  15. ベース層の厚さを摺動層の厚さよりも大きくし、かつ第一粉末の見かけ密度を第二粉末の見かけ密度よりも小さくする請求項10記載の摺動部材の製造方法。
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