JP2015148249A - 焼結軸受 - Google Patents

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洋介 須貝
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Abstract

【課題】高強度で、軸受面の摺動性および耐久性に優れた焼結軸受を低コストに提供する。【解決手段】円筒状の焼結体からなり、支持すべき軸を支持する軸受面Aを有する焼結軸受1であって、焼結体が、Fe、Cu、CおよびCuよりも低融点の金属を主成分とするベース層3と、ベース層3に接した状態でベース層3と共に焼結され、合金元素を含むFe、CuおよびCを主成分とする軸受層2とを備える。軸受層2は、軸方向と直交する断面において有端状に形成され、かつ軸受面Aを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、焼結軸受に関する。
例えば、油圧ショベル車やブルドーザ等の建設機械のアーム(ブームやバケット等を含む)同士を回転(揺動)可能に連結する関節部に用いられる軸受では、軸受面に非常に大きな面圧が作用する。そのため、この種の用途で用いられる軸受としては、鋳造合金を切削加工することで得られる軸受や、軸受面に黒鉛片を斑点状に埋め込んだ軸受のように、軸受面の耐摩耗性に優れた軸受が使用されている。また、これらの代わりに、成形性に優れ、製造コストの低廉化を図り得る焼結軸受(焼結金属製の軸受)を使用することが検討されている。例えば、下記の特許文献1には、建設機械用の焼結軸受として、マルテンサイト組織を含んだ鉄−炭素系合金に銅を斑点状に分散させた焼結軸受が開示されている。この焼結軸受は、焼結後に焼入れ(油焼入れ)および焼戻しされた焼結体の表層部を切削して所定寸法・形状に仕上げられている。
この他、下記の特許文献2には、焼結軸受の内径側と外径側とで異なる要求特性を同時に満足するために、内径側と外径側とで材質(金属組成)を異ならせた二層構造の圧粉体を成形する手法が記載されている。このような方法であれば、例えば、外径側が高強度の第1粉末で形成され、内径側が耐摩耗性に優れた(摩擦係数の小さい)第2粉末で形成された圧粉体を得ることができる。従って、この圧粉体を焼結すれば、外径側が高強度で、かつ内周面(軸受面)の耐摩耗性に優れた焼結体、ひいては焼結軸受を得ることができる。
特開2003−222133号公報 特開2005−95979号公報
特許文献2に記載の二層構造焼結体(焼結軸受)において、軸受面の摺動特性を高めるためには、軸受面に、銅が豊富に存在する銅リッチ層を形成する必要がある。その一方で二層構造焼結体の外径側に、建設機械のアームの関節部に使用される軸受に求められるような高い強度を確保するには、焼結体の外径側の組織を鉄−炭素を主体とした組織(パーライト組織)とする必要がある。この場合、圧粉体は、パーライト組織を得るために1130℃以上の高温で焼結することになる。
しかしながら、上記のような高温で圧粉体を焼結した場合、軸受面の銅リッチ層に含まれる銅が完全に溶融する。溶融した銅は、外径側の銅濃度の低い層に引き込まれるため、軸受面に十分な銅組織を形成することができない。その一方で、単に焼結温度を下げるだけでは焼結体の外径側で必要とされる強度を確保することができない。従って、このままでは、二層構造焼結体の本来の目的を達成することができない。
また、軸受面の摺動特性を高めるためには、上述のように軸受面に銅リッチ層を形成する必要があるが、内周面全域に銅リッチ層を形成した場合、高価な銅の使用量が増して焼結軸受の高コスト化を招来する。そのため、焼結軸受を採用することによるコストメリットを十分に享受することができないおそれがある。
このような実情に鑑み、本発明は、全体として必要な強度が確保されると共に、軸受面に必要とされる摺動性と耐摩耗性が確保された焼結軸受を低コストに提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために創案された本発明は、焼結体で形成され、支持すべき軸を支持する軸受面を有する焼結軸受であって、焼結体が、Fe、Cu、CおよびCuよりも低融点の金属を主成分とするベース層と、ベース層に接した状態でベース層と共に焼結され、合金元素を含むFe、CuおよびCを主成分とする軸受層とを備え、軸受層が、軸方向と直交する断面において有端状に形成され、かつ上記軸受面を有することを特徴とする。
上記のように、焼結体を構成するベース層がCuとCuよりも低融点の金属(以下、単に「低融点金属」という)とを含んでいる場合、焼結時には、まず、ベース層(厳密には、圧粉体のうち焼結に伴ってベース層となる部分)に含まれる低融点金属が溶融し、その溶融液が毛細管現象によりFe粒子の内部深く拡散する。また、低融点金属の溶融液がCu粒子の表面を濡らすため、Cu粒子がその融点を下回る温度で溶融し、溶融したCuと低融点金属とがFe粒子に浸透してFe粒子内部まで拡散する。これにより、Fe粒子同士が強固に結合された高強度のベース層を得ることができるので、焼結温度をCuの融点よりも低い温度に設定しても所望の軸受強度を確保することができる。また、焼結温度をCuの融点よりも低くすれば、軸受層(厳密には、圧粉体のうち焼結に伴って軸受層となる部分)に含まれるCu粒子が焼結により溶融せずに固体の状態を保持する。そのため、軸受層に含まれるCuがベース層に引き込まれず、軸受面に狙い量のCu組織を分布させることができるので、軸受面に銅リッチ層を形成することができる。以上から、焼結体の高強度化と軸受面の摺動性確保とを同時に実現することができる。
また、軸受面を有する軸受層が、軸方向と直交する断面において有端状に形成されている関係上、銅リッチ層を形成することが望まれる軸受面は、焼結体(焼結軸受)の周方向全域ではなく、一部領域にのみ形成される。これにより、焼結体の周方向全域に軸受面を有する軸受層を設ける場合に比べ、高価な銅の使用量を抑えて焼結軸受の低コスト化を図ることができる。なお、例えば建設機械のアームの関節部で使用される軸受においては、内周面全域に大きな面圧が作用することは少なく、大きな面圧は、内周面の一部領域に作用する場合が比較的多い。そのため、軸受面の配置態様を考慮して焼結軸受を被取付け部材に対して取り付け固定しさえすれば、内周面に高面圧が作用する環境下においても、支持すべき軸を長期間に亘って安定的に支持することができる。
軸受層に含める合金元素として、焼入れ性を向上させる元素(Ni,Mo,MnおよびCrの中から選択される少なくとも一種)を選択すれば、浸炭焼入れ等の熱処理を行うことなく、焼結後の冷却過程で軸受層のFe組織の少なくとも一部をマルテンサイト変態およびベイナイト変態させることができる(シンターハードニング)。これにより、軸受層が高硬度化されるので、軸受面の耐摩耗性を向上することができる。また、上述したとおり、焼結に伴ってベース層の高強度化が実現されるので、焼結体全体を高強度化することができる。このような観点からも、本発明に係る焼結軸受は、例えば建設機械のアームの関節部のように、軸受面に高面圧が作用する環境下での使用に適合したものとなる。
その一方で、ベース層が基本的に上記の合金元素を含有していないので、冷却後もベース層の大部分はシンターハードニングされず、従って、ベース層のFe組織はマルテンサイト変態やベイナイト変態を生じない。このように、軸受層だけに焼入れ性を向上させる元素を配合することで、高価な該元素の使用量を低減し、焼結軸受の低コスト化を図ることができる。また、ベース層が軸受層と比べて軟質となるので、焼結体の寸法矯正を簡便なサイジング(金型を用いて焼結体を圧縮整形する手法)で行うことが可能となる。特許文献1では、焼結後の油焼入れで焼結体全体を硬化させているため、焼結体の寸法矯正は切削・研削等の機械加工で行わざるを得ないが、本発明の焼結軸受は、上述のとおりサイジングによる寸法矯正が可能(機械加工は不要)であり、さらに、サイジングであれば加工硬化による強度向上も実現されるので焼結後の焼入れ工程も不要となる。このように、焼結後の焼入れ工程を省略できることに加え、寸法矯正工程を簡略化できるので、高精度かつ高強度の焼結軸受を低コストに得ることができる。
ベース層に含める低融点金属としてはリン(P)が好ましい。また、ベース層における低融点金属の濃度は0.1〜0.6質量%の範囲内とするのが好ましい。
軸受層のCu濃度を10〜30質量%の範囲内とすることで、軸受面の摺動性を確保しつつ銅の過剰使用による高コスト化および強度低下を可及的に防止することができる。ベース層のFe粒子同士を結合させるためにベース層もCuを含んでいるが、ベース層のCu濃度を軸受層のCu濃度よりも小さくすることで、高価な銅の使用量を抑えて焼結軸受の低コスト化を図ることができる。
ベース層と軸受層との界面には、上記合金元素の濃度勾配を生じさせることができる。このとき、上記合金元素としてNi等の焼入れ性を向上させる元素を選択すれば、ベース層と軸受層の界面付近に焼入れ性を向上させる元素を含む層が形成されるため、ベース層と軸受層の界面の強度、ひいてはベース層と軸受層の結合強度が高められる。なお、上記のような濃度勾配は、例えば、ベース層の形成用粉末と軸受層の形成用粉末とを同一の金型に供給して同時に圧縮成形するいわゆる二色成形法を採用して圧粉体を作製し、その後、この圧粉体を焼結することで得ることができる。
以上から、本発明によれば、全体として必要な強度が確保されると共に、軸受面に必要とされる摺動性、さらには耐摩耗性が確保された焼結軸受を低コストに提供することができる。
本発明の一実施形態に係る焼結軸受を組み込んだ建設機械のアームの関節部の概略断面図である。 図1中に示すX−X線矢視断面図である。 図1に示す焼結軸受に加工される圧粉体の成形金型装置に第1粉末を充填した状態を示す断面図である。 図3に示す成形金型装置の平面図である。 上記の成形金型装置に第2粉末を充填した状態を示す断面図である。 上記の成形金型装置において、仕切部材を下降させた状態を示す断面図である。 上記の成形金型装置において、余剰粉末を除去した状態を示す断面図である。 上記の成形金型装置で粉末を圧縮した状態を示す断面図である。 上記の成形金型装置から圧粉体を取り出した状態を示す断面図である。 圧粉体の焼結工程で使用する焼結炉の概略図である。 焼結体のサイジング工程を模式的に示す断面図である。 圧縮成形工程以降の製造手順を模式的に示す図である。 焼入れ性を向上させる合金元素の濃度勾配を示す図である。 (a)図は軸受層の組織を模式的に示す拡大図、(b)図はベース層の組織を模式的に示す拡大図である。 本発明の他の実施形態に係る焼結軸受の軸直交断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る焼結軸受は、例えば油圧ショベル車やブルドーザ等の建設機械のアーム(ブームやバケット等を含む)同士を回転(揺動)可能に連結する関節部での使用に適合するものであり、図1は、油圧ショベル車のアームの関節部の断面を概念的に示している。図1に示すように、この関節部では、相対的に車体(図示せず)に接近した側に配置される第1アーム6の先端に第2アーム7の基端が挿入されている。第2アーム7の基端部には円筒状の取り付け孔7aが設けられ、この取り付け孔7aに、全体として円筒状をなした焼結軸受1の外周面1b(ベース層3の外周面)が圧入等の適宜の手段で固定されている。両アーム6,7は、例えば、第1アーム6の先端の二股状部分のそれぞれに設けたピン穴6aに対して適当な締め代をもって嵌合固定されると共に、適当な半径方向すきま(図示せず)を介して焼結軸受1の内周に挿入されたピン4によって相対回転可能に連結されている。この関節部において、第2アーム7およびその先端に回転可能に装着された図示しないバケット等の荷重(重力荷重)は、焼結軸受1の内周面1aのうち、主にその下側領域で支持され、両アーム6,7の相対回転時には、主に焼結軸受1の内周面1aの下側領域に対してピン4が摺動する。
図示例のピン4は、その軸方向一端部に第1アーム6の二股状部分の何れか一方と係合する頭部4aを有し、ピン4の軸方向他端部にはピン4の抜けを規制する抜け止め8が固定される。そのため、図1に示す関節部では、抜け止め8を取り外してピン4を抜き取ると両アーム6,7が分離可能となり、焼結軸受1やピン4のメンテナンスを行うことができるようになっている。
図2にも示すように、焼結軸受1は、軸受面Aを有する軸受層2と、被取付け部材(第2アーム7)に対する取り付け面を有するベース層3とを互いに接触させた状態で一体に有する。軸受層2は、軸方向と直交する断面(横断面)で有端状をなして軸方向に延びており、本実施形態では横断面が半円状をなした半円筒状に形成されている。焼結軸受1が全体として円筒状をなし、かつ軸受層2が半円筒状をなしている関係上、ベース層3は、軸受層2の外径側に設けられ、径方向で相対的に薄肉の薄肉部31と、軸受層2の存在しない周方向領域に設けられ、径方向で相対的に厚肉の厚肉部32とで構成された略円筒状をなす。以上の構成から、軸受層2の内径面2aと、ベース層3を構成する厚肉部32の内径面とで焼結軸受1の内周面1aが構成され、ベース層3の外周面で焼結軸受1の外周面1b(被取付け部材に対する取り付け面)が構成される。上述のとおり、この関節部では、ピン4が第2アーム7等の荷重を受けることにより主に焼結軸受1の内周面1aの下側領域に対して摺動することから、焼結軸受1は、軸受層2(軸受面A)がピン4の下側領域を覆うようにして第2アーム7の取り付け孔7aに固定される。
この焼結軸受1の内部気孔には、潤滑材として、例えば鉱物油や合成油等の潤滑油が含浸される。このため、第1アーム6と第2アーム7の相対回転時には、焼結軸受1の内部気孔に保持された潤滑油が焼結軸受1の内周面1aの表面開孔から滲み出し、内周面1aとピン4との間に潤滑油の油膜が形成される。これにより、内周面1aの周方向一部領域に設けられた軸受面Aの摩耗が抑制あるいは防止される。焼結軸受1全体の含油率は、例えば10〜25vol%とし、好ましくは15〜25vol%とする。含油率が10vol%を下回ると、所望の潤滑特性を長期間に亘って安定的に維持・発揮することができず、含油率が25vol%を上回ると、内部気孔率が高まる関係上、焼結軸受1に必要とされる機械的強度を確保することができない可能性があるからである。
また、焼結軸受1の内部気孔に含浸させる潤滑油があまりに低粘度であると、潤滑油が軸受外部に流出し易くなる他、内周面1a(特に軸受面A)とピン4との間に所定強度の油膜を形成することができず軸受面Aが摩耗し易くなる。一方、潤滑油があまりに高粘度であると、内周面1aの表面開孔からの潤滑油の滲み出し量が不足し、軸受面Aの摩耗が促進されるおそれがある。かかる観点から、潤滑油としては、40℃における動粘度が、5mm2/s以上600mm2/s以下のものが好ましく、50mm2/s以上550mm2/s以下のものが一層好ましく、100mm2/s以上500mm2/s以下のものがより一層好ましい。
なお、焼結軸受1の内部気孔に含浸させる潤滑材として、上記の潤滑油に替えて液状グリースを選択することも可能である。液状グリースとしては、例えば、40℃における動粘度が上記範囲内にある潤滑油を基油とし、これにリチウム石けん等の石けん系増ちょう剤、あるいはウレア等の非石けん系増ちょう剤を添加したものを使用することができる。
上記の関節部で使用する場合、焼結軸受1は、例えば、内径(直径寸法):30〜100mm、半径方向の肉厚:5〜50mmとなるように形成される。軸受層2の半径方向の肉厚は、焼結軸受1の半径方向の肉厚の1〜20%程度(好ましくは2〜10%程度)とする。軸受層2があまりに薄肉であると、成形金型に対する軸受層2の形成用粉末の充填性が悪化すると共に許容摩耗限界が低くなる、などといった問題があり、軸受層2があまりに厚肉であると、焼入れ性を向上させるための元素(詳細は後述する)や銅の使用量が増えてコスト高を招く、などといった問題があるからである。
以上で説明した焼結軸受1は、軸受層2とベース層3とで金属組成が異なっており、圧縮成形工程、焼結工程、サイジング工程および含油工程を順に経ることで製造される。以下、各工程の実施態様について詳細に述べる。
圧縮成形工程は、焼結軸受1の形状に概ね対応した円筒状の圧粉体M(図8,9参照)を得る工程であり、ここでは、ベース層3の形成用粉末である第1粉末M1と、軸受層2の形成用粉末である第2粉末M2とを同一の金型に供給して同時に圧縮成形するいわゆる二色成形法を採用して圧粉体Mを得る。この二色成形は、金型内に形成した2つのキャビティのそれぞれに粉末を充填してから両粉末を圧縮成形するものであり、例えば図3〜図9に示す成形金型装置10を用いて行われる。
図3および図4に基づき、成形金型装置10の具体的な構成を説明する。なお、図3は成形金型装置10の軸平行断面図(図4中のZ−Z線矢視断面図)であり、図4は成形金型装置10の概略平面図である。成形金型装置10は、圧粉体Mの外周面を成形するダイ11と、ダイ11の内周に配され、圧粉体Mの内周面を成形するコアピン12と、ダイ11とコアピン12との間に配されて圧粉体Mの一端面を成形する第1の下パンチ13、仕切部材14および第2の下パンチ15と、圧粉体Mの他端面を成形する上パンチ16(図8参照)とを備える。第1の下パンチ13、仕切部材14および第2の下パンチ15は、それぞれ独立して昇降可能とされる。
以上の構成を有する成形金型装置10において、まず、図3に示すように、仕切部材14および第2の下パンチ15を上死点まで上昇させると共に、第1の下パンチ13を下死点まで下降させ、ダイ11の内周面11a、コアピン12の外周面12a(の一部領域)、仕切部材14の外壁面14aおよび第1の下パンチ13の上端面13aで、横断面形状がベース層3の横断面形状に対応した第1キャビティ17を形成する(図4参照)。第1キャビティ17の形成後、この第1キャビティ17に第1粉末M1を充填する(図3参照)。第1粉末M1の組成は後述する。
次に、図5に示すように、第2の下パンチ15を下死点まで下降させ、仕切部材14の内壁面14b、コアピン12の外周面12a(の残りの領域)および第2の下パンチ15の上端面15aで、横断面形状が軸受層2の横断面形状に対応した第2キャビティ18を形成する。この第2キャビティ18は、仕切部材14の存在により、第1キャビティ17から隔絶された状態で形成される。以上のようにして第2キャビティ18を形成した後、この第2キャビティ18に第2粉末M2を充填する。このとき、第2粉末M2を第2キャビティ18から溢れさせ、仕切部材14の上方を覆うようにする。第2粉末M2の組成は後述する。
次に、図6に示すように仕切部材14を下降させると、仕切部材14が取り除かれることで形成されたスペースに、仕切部材14の上方を覆っていた第2粉末M2が充填され、第1粉末M1と第2粉末M2とが接触する。これにより、ダイ11の内周面11a、両下パンチ13,15の上端面13a,15a、仕切部材14の上端面14cおよびコアピン12の外周面12aで形成されるキャビティ19が、第1粉末M1および第2粉末M2で満たされた状態となる。そして、図7に示すように、キャビティ19から溢れ出た余分な第2粉末M2を除去する。
その後、図8に示すように、上パンチ16を下降させてキャビティ19に充填された第1および第2粉末M1,M2を圧縮し、第1および第2粉末M1,M2の圧粉体Mを成形する。圧粉体Mの成形後、図9に示すように、両下パンチ13,15および仕切部材14を上昇移動させ、圧粉体Mを成形金型10から取り出す。
ここで、第1粉末M1は、鉄粉、銅粉および黒鉛粉を主体とし、その他に低融点金属を含有させた混合粉末である。鉄粉としては、還元鉄粉やアトマイズ鉄粉等を使用可能であるが、含油性に優れる多孔質状の還元鉄粉を使用するのが好ましい。銅粉としては、電解銅粉やアトマイズ銅粉等を使用することができるが、圧粉体Mの強度を高めることができることに加え、焼結時におけるFe粒子への拡散性が良好で、ベース層3の高強度化を実現し易いなどといった利点があることから、粒子全体として樹枝形状をなす電解銅粉を使用するのが好ましい。また、低融点金属としては、銅よりも低融点の金属、具体的には700℃以下の融点を有する金属を使用可能であり、例えば、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、リン(P)等の中から選択される少なくとも一種が使用される。この低融点金属は、その単体粉を鉄粉、銅粉および黒鉛粉の混合粉中に添加することで第1粉末M1中に含有させても良いが、発火性が高く粉末混合時の安全性に問題があることから、鉄粉と合金化した粉末を使用することで第1粉末M1中に含有させるのが好ましい。上記の低融点金属のうち、リンは鉄への拡散が容易でFe粒子内部まで拡散でき、さらに銅の拡散も促進する。つまり、リンは鉄および銅の双方に対して相性が良い。そのため、低融点金属としてはリンを使用するのが好ましい。以上より、例えば、鉄とリンの合金鋼粉を銅粉(特に電解銅粉)および黒鉛粉と混合すれば、第1粉末M1の混合・成形が容易となり、かつ安全性も高い、という利点が得られる。
第1粉末M1における各粉末の配合量(配合割合)は、以下に述べる理由から、例えば、銅粉:2〜5質量%、黒鉛粉:0.5〜0.8質量%とし、残りを鉄−低融点金属の合金鋼粉とするのが好ましい。まず、銅粉は、圧粉体Mの焼結時に、鉄粉同士を結合するバインダーとして機能するものであることから、その配合量が少なすぎるとベース層3の強度低下を招く。しかしながら、銅粉の配合量が多すぎるとFe粒子への炭素の拡散を阻害して焼結体M’(図12参照)の強度および硬さを低下させてしまう。従って、銅粉の配合割合は上記の範囲とする。また、黒鉛粉は、圧粉体Mの焼結時に鉄と炭素を反応させて高硬度のパーライト相を形成するために配合されている。そのため、黒鉛粉の配合量が少なすぎるとベース層3の強度を確保できないが、黒鉛粉の配合量が多すぎると、鉄組織が脆弱なセメンタイト組織になってベース層3の強度低下を招く。従って、黒鉛粉の配合割合は上記の範囲とする。
さらに、第1粉末M1における低融点金属の配合割合は0.1〜0.6質量%とし、好ましくは0.3〜0.5質量%とする。低融点金属は、圧粉体Mの焼結時に、それ自身のFe粒子への拡散、さらに銅のFe粒子への拡散の促進を通じて焼結体M’の強度を高めるために配合されている。そのため、低融点金属の配合量が少なすぎると焼結体M’の強度を十分に高めることができないが、低融点金属の配合量が多すぎると、低融点金属の偏析により焼結体M’が脆くなる。従って、低融点金属の配合割合は上記の範囲とする。
一方、第2粉末M2は、焼入れ性を向上させる元素を含む鉄粉(合金鋼粉)、銅粉および黒鉛粉を混合した混合粉末である。焼入れ性を向上させる元素として、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)およびクロム(Cr)を挙げることができるが、本発明ではNiおよびMoを選択し、Fe、NiおよびMoの合金鋼粉(Fe−Ni−Mo系合金鋼粉)を使用している。焼入れ性を向上させる元素は、後述のように、マルテンサイト変態およびベイナイト変態を生じさせてシンターハードニングを行うために添加されるが、NiおよびMoは、焼入れ性の向上効果が特に優れるため好ましい。第2粉末M2を構成する合金鋼粉は、NiおよびMoが鉄と完全に合金化した完全合金粉が好ましい。また、第2粉末M2を構成する銅粉は、上述した理由により電解銅粉が好ましいが、アトマイズ銅粉を使用しても構わない。
第2粉末M2における各粉末の配合量(配合割合)は、銅粉:10〜30質量%(好ましくは15〜20質量%)、黒鉛粉:0.2〜1.0質量%(好ましくは0.3〜0.8質量%)とし、残りを合金鋼粉とするのが好ましい。また、第2粉末M2中のNiおよびMoの割合が、それぞれ、1〜4質量%(好ましくは1.5〜3.5質量%)および0.5〜2質量%(好ましくは0.5〜1.5質量%)の範囲となるように合金鋼粉の種類および量を選定する。NiおよびMoの配合割合は、成形性と焼入れ性の向上効果の観点から決定付けられる。銅の配合割合は、これが少なすぎると軸受面Aの摺動性が低下し、多すぎると軸受面Aの耐摩耗性に問題が生じるので上記の範囲とする。第2粉末M2の黒鉛粉は、圧粉体Mの焼結時に鉄と炭素を反応させて主にマルテンサイト相およびベイナイト相を形成するため、さらには固体潤滑剤として機能させるために配合され、その配合割合の上限および下限は、第1粉末M1で黒鉛粉の配合割合を定めた理由と同様の理由から定められる。
第1粉末M1と第2粉末M2の見かけ密度は何れも1.0〜4.0g/cm3の範囲内にあるが、両粉末M1,M2の組成の違いから両粉末M1,M2の見かけ密度にはどうしても差が生じ、両粉末M1,M2間の見かけ密度差は、両粉末M1,M2を同時に圧縮して圧粉体Mを成形する際に、圧粉体Mの一部が崩れるなどといった問題を生じさせる可能性がある。しかしながら、本実施形態のように形成すべき軸受層2がベース層3よりも十分に薄肉で、しかも第1粉末M1の見かけ密度が第2粉末M2の見かけ密度よりも低い状態(具体的には両粉末の密度差が0.5g/cm3以下)であれば、両粉末M1,M2を同時に圧縮しても圧粉体Mを精度良く成形することができる。従って、第1粉末M1の見かけ密度は第2粉末M2の見かけ密度よりも低くし、かつその密度差を0.5g/cm3以下に抑えるのが好ましい。
以上に述べた圧縮成形工程で得られた圧粉体Mは、焼結工程において所定の条件で加熱・焼結され、これにより、焼結体M’(図10〜12参照)が得られる。圧粉体Mの焼結時、第1粉末M1の圧粉体は、第2粉末M2の圧粉体に接した状態で第2粉末M2の圧粉体と共に焼結されるため、圧粉体Mを焼結すると、ベース層3となる部分M1’と軸受層2となる部分M2’とが一体化された焼結体M’を得ることができる。焼結工程は、図10に示すように、ヒータ21が設置された焼結ゾーン20aと、自然放熱を行う冷却ゾーン20bとを連続的に有する連続焼結炉20を用いて実施することができ、圧粉体Mの焼結は、COを含むガス雰囲気下で実施される。焼結温度(焼結組織内の温度)は、銅の融点(1083℃)よりも低く、かつ鉄と炭素が反応を開始する温度(900℃)よりも高くなるように設定される。この焼結温度を得るため、連続焼結炉20の炉内温度は、例えば1000〜1100℃に設定される。この温度は、鉄系焼結体を得る際の一般的な炉内温度(1130℃以上)よりも低い。
焼結工程で得られた焼結体M’は、サイジング工程で寸法矯正が行われる。これにより、焼結体M’が完成品形状に仕上げられる。本実施形態では、図11に示すように、同軸配置されたダイ23、コアロッド24および上下のパンチ25,26を有する金型装置を用いて焼結体M’の内周面、外周面および両端面を圧迫することにより、焼結体M’がサイジングされ、完成品形状に仕上げられる。その後、含油工程で焼結体M’の内部気孔に潤滑剤(上述した潤滑油あるいは液状グリース)を含浸させると、図1,2および図12等に示す焼結軸受1が完成する。なお、焼結体M’の残留オーステナイトを除去するため、焼結工程後に焼結体M’の焼き戻しを行っても良い。
図10に示す焼結工程における焼結時には、圧粉体Mのうち、まず、第1粉末M1の圧粉体に含まれる低融点金属(リン)が溶融する。リンの溶融液は毛細管現象によりFe粒子の内部深くにまで拡散する。また、リンの溶融液がCu粒子の表面を濡らすため、Cuがその融点を下回るような温度で溶融し、溶融したCuがFe粒子に浸透してFe粒子内部まで拡散する。これにより、Fe粒子同士が強固に結合される結果、高強度のベース層3を得ることができる。また、上述のように、焼結温度を、鉄と炭素の反応開始温度よりも高い温度に設定したので、ベース層3を構成するFe組織には高硬度のパーライト相が形成される(一部はフェライト相)。従って、上記のように、圧粉体Mの焼結温度を一般的な鉄系焼結品の焼結温度よりも下げた場合でも、ベース層3に必要とされる強度を確保することができる。焼結温度を銅の融点よりも低い温度まで低下させることで、第2粉末M2の圧粉体に含まれる銅粉が焼結中も溶融せずに固体の状態を保持する。そのため、軸受層2に存在する銅がベース層3に引き込まれず、軸受面Aに、銅が多量に分布した銅リッチ層を形成することができる。以上より、軸受面Aに良好な摺動性を確保しつつ、焼結体M’、ひいては焼結軸受1に必要な強度を確保することができる。
また、軸受面Aを有する軸受層2が、軸方向と直交する断面において有端状に形成される関係上、銅リッチ層を形成することが望まれる軸受面Aは、焼結体M’(焼結軸受1)内周面の全域ではなく、周方向の一部領域にのみ形成される。これにより、高価な銅の使用量を抑えて焼結軸受1の低コスト化を図ることができる。なお、図1に示す形態の関節部では、焼結軸受1の内周面1a全域に大きな面圧が作用することはなく、大きな面圧は、内周面1aのうち、ピン4の下側に配置される領域に作用するに過ぎない。そのため、軸受面A(軸受層2)の配置態様を考慮した上で焼結軸受1を第2アーム7に取り付け固定すれば(具体的には、軸受面Aがピン4の外周面の下半分を覆うような姿勢で焼結軸受1を第2アーム7の取り付け孔7aに組み込めば)、上述の関節部のように軸受面Aに高面圧が作用する環境下においても、支持すべき軸としてのピン4を長期間に亘って安定的に支持することができる。
また、軸受層2(第2粉末M2の圧粉体)にNi,Mo等の焼入れ性向上元素が含まれているので、浸炭焼入れ等の熱処理を別途行うことなく、図10に示す連続焼結炉20の冷却ゾーン20bを通過させる間に、軸受層2の鉄組織にマルテンサイト変態およびベイナイト変態を生じさせて軸受層2を高硬度化することができる(シンターハードニング)。これにより、軸受面Aを高硬度化してその耐摩耗性を向上することができる。また、これと併せて、ベース層3内での銅とリンの拡散によりベース層3の強度アップが達成されているので、焼結体M’全体の強度(圧環強度等)が向上する。従って、高面圧下で使用される建設機械のアームの関節部における軸受としての使用にも耐え得るものとなる。
その一方で、焼結体M’の大部分を占めるベース層3には、焼入れ性を向上させる元素が含まれていないので、高価な該元素の使用量を減じて焼結軸受1の低コスト化を図ることができる。また、ベース層3ではシンターハードニングが行われず、マルテンサイト変態やベイナイト変態も生じないので、ベース層3は軸受層2に比べて軟質となる。そのため、焼結体M’の寸法矯正を、切削や研削等の機械加工ではなく、上述したサイジング(塑性加工)により行うことができるので、機械加工を選択した場合に追加的に必要となる切粉等の除去処理を不要とし、また歩留の低下を回避することができる。さらに、サイジングであれば、加工硬化による焼結体M’の強度向上も同時に実現できるので、焼結後の焼入れ工程を省略しても、必要十分の強度(例えば450MPa以上1000MPa以下の圧環強度)を確保することができる。
参考までに、サイジングの実施後における軸受層2(軸受面A)の表面硬度は、「JIS Z2245:2011」に規定のロックウェルFスケール(HRF)にて85以上、好ましくは90以上、より好ましくは95以上である。また、サイジングの実施後におけるベース層3の表面硬度は、ロックウェル硬さFスケールにて55〜85程度である。
ベース層3における黒鉛は焼結により分解し、基本的に全て炭素となって鉄と反応している。これに対し、軸受層2における黒鉛は、焼結後も一部が粒子として残っている。これは、軸受層2ではベース層3よりも銅の含有量が多く、鉄粒子の一部表面を銅粒子が覆うため、鉄と炭素が反応し難くなることによる。このように、軸受層2にはベース層3と比べて多くの黒鉛粒子が存在し、この黒鉛粒子は固体潤滑剤としても機能する。そのため、この点からも軸受面Aの摺動性向上が実現される。
なお、ベース層3形成用の第1粉末M1には焼入れ性を向上させる元素(本実施形態ではNiおよびMo)が含まれていないので、理論上はベース層3に該元素が含まれないことになるが、図3〜図9に示す圧縮成形工程の手順との関係で、実際には図13に示すように、軸受層2とベース層3との界面に該元素の濃度勾配が生じる。これにより、両層2,3の界面付近に焼入れ性を向上させる元素を含む層が形成されるため、両層2,3の界面の強度、ひいては軸受層2とベース層3の結合強度が高められる。圧粉体Mにおいて焼入れ性を向上させる元素の濃度勾配が生じている層の半径方向寸法Rは、成形金型装置10に設けた仕切部材14(図3等を参照)の厚さにより調整することができる。
同様に、軸受層2形成用の第2粉末M2には低融点金属(本実施形態ではリン)が含まれていないので、理論上は軸受層2に低融点金属が含まれないことになるが、上記同様の理由から、軸受層2とベース層3との界面には低融点金属の濃度勾配が生じることになる。軸受層2のうち、ベース層3から十分に離隔した領域(例えば、軸受層2の軸受面A)には低融点金属が含まれない。
ここで、焼結軸受1を構成する軸受層2およびベース層3の組織を図14(a)(b)にそれぞれ概念的に示す。
図14(a)に示すように、軸受層2は、Feを母体とするFe組織と、銅のみからなるCu組織と、黒鉛組織とを主体としており、Fe組織がCu組織よりも多く、黒鉛組織が最も少ない。Fe組織は、マルテンサイト相とベイナイト相とを主体として構成され、一部にパーライト相を含む焼入れ組織を有する。NiおよびMoは焼入れ組織中に拡散している。軸受層2は、第2粉末M2を構成する鉄粉末等の配合割合に倣い、主成分としてCu:10〜30質量%(好ましくは15〜20質量%)、C:0.5〜0.8質量%、Ni:1.5〜3.5質量%、Mo:0.5〜1.5質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鉄ベースの金属組織である。
一方、ベース層3は、図14(b)に示すように、Feを母体とするFe組織(パーライト相およびフェライト相)で構成される。このFe組織の内部にCuおよびPが拡散しており、ベース層3中にCu粒子は存在しない。また、焼入れ組織および黒鉛組織も存在しない。このベース層3は、第1粉末M1を構成する鉄粉末等の配合割合に倣い、主成分としてCu:2〜5質量%、P:0.1〜0.6質量%、C:0.5〜0.8質量%を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鉄ベースの金属組織である。このように、ベース層3の銅の含有量は軸受層2の銅の含有量よりも少なく、さらに、銅の含有量が多い軸受層2は周方向の一部領域にしか存在しないので、焼結軸受1全体での銅の使用量を減じて焼結軸受1の低コスト化を図ることができる。
以上、本発明の実施形態に係る焼結軸受1およびその製造方法、並びに焼結軸受1の具体的な使用態様について説明を行ったが、焼結軸受1には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を施すことができる。
例えば、軸受層2が横断面で有端状に形成されている限りにおいて、軸受層2の外径面の横断面形状は任意の形態とすることができる。すなわち、軸受層2の外径面の横断面形状は、例えば、凹部と凸部が周方向で交互に設けられた波形状としても良い(図示省略)。このようにすれば、軸受層2とベース層3の接触面積が拡大するので、両層2,3の結合強度を一層高めることができる。上述した製造方法を採用した場合、軸受層2の外径面の横断面形状は、圧縮成形工程で使用する仕切部材14(図3等参照)の内径面の横断面形状に倣うため、使用する仕切部材14の形状を変更するだけで軸受層2の外径面の横断面形状を変更することができる。
また、図示は省略するが、軸受層2の内径面2a(軸受面A)やベース層3を構成する厚肉部32の内径面には、例えば、軸方向に延びる一又は複数の凹部(軸方向溝)や、無数の微小な凹部を設けることができる。この場合、上記の各種凹部を潤滑油溜りとして活用することができるので、軸受面Aの摩耗を一層効果的に抑制することが可能となる。また、軸受面Aは、必ずしも軸受層2の内径面2aの軸方向全域に亘って設ける必要はなく、例えば、内径面2aの軸方向に離間した二箇所に設けることもできる。
また、以上で説明した実施形態では、いわゆる二色成形法を採用して二層構造の圧粉体Mを得るようにしたが、圧粉体Mは、個別に圧縮成形した第1粉末M1の圧粉体と第2粉末M2の圧粉体とを適宜の手段で固定することで得ることも可能である。但し、この場合、基本的には軸受層2とベース層3との界面に焼入れ性を向上させる元素(NiやMo等)の濃度勾配(図13参照)が生じないので、二色成形法で得た圧粉体Mを用いる場合に比べて両層2,3間の結合強度が劣ることになる。従って、このような手法は、両層2,3間の界面に焼入れ性を向上させる元素の濃度勾配を生じさせずとも、両層2,3間に必要とされる結合強度が確保される場合に採用するのが好ましい。
また、以上で説明した実施形態では、焼結軸受1(焼結体M’)を互いに組成の異なる軸受層2とベース層3とで構成しているが、焼結軸受1は、図15に示すように、互いに組成が異なる3つの層で構成することも可能である。同図に示す焼結軸受1は、以上で説明した軸受層2およびベース層3に加え、軸受層2の設けられていない周方向領域で支持すべき軸(図示例ではピン4)の外周に配置され、軸受層2およびベース層3と共に焼結された内径側表面層5を備えている。そのため、この焼結軸受1では、その内周面1aが、それぞれが横断面で半円状に形成された軸受層2および内径側表面層5の内径面で構成され、ベース層3は、径方向の肉厚が周方向の各部で一定の円筒状に形成されている。
この焼結軸受1の使用態様から、内径側表面層5は、軸受層2(軸受面A)に求められるほどの摺動性を必要としないので軸受層2よりも銅の使用量を抑えることができ、しかもベース層3に求められるほどの強度を必要としない。そのため、内径側表面層5の組成(金属組成)は、比較的任意に設定することができる。また、内径側表面層5を設けたことにより、ベース層3が単純な円筒形態となるので、焼結後に生じる成形収縮量をベース層3の周方向各部で概ね一定とすることができる。従って、形状精度に優れた焼結軸受1を低コストに得ることができる。なお、このような焼結軸受1(焼結体M’)は、例えば、圧縮成形工程で使用する仕切部材14(図3等参照)を変更することで得ることができる。
以上で説明した実施形態では、支持すべき軸としてのピン4に作用する荷重の方向性等を考慮し、軸受層2(軸受面A)がピン4の下半分の領域を覆うように焼結軸受1を第2アーム7に組み込んでいるが、上記の焼結軸受1をその他の軸支用途に用いることももちろん可能である。例えば、鉛直方向上向きの荷重が連続的又は断続的に負荷される軸の支持用途に焼結軸受1を使用する場合には、軸の上方に軸受層2(軸受面A)が配置されるようにして焼結軸受1を被取付け部材に対して取り付ければ良い。つまり、本発明に係る焼結軸受1は、内周面の一部領域に高面圧が作用する種々の用途に用いることができる。
また、本発明に係る焼結軸受1は、建設機械のアームの関節部のように回転(揺動)する軸の支持用途のみならず、例えば、直線運動する軸の支持用途にも適用することができる。
1 焼結軸受
1a 内周面
2 軸受層
3 ベース層
4 ピン
6 第1アーム
7 第2アーム
10 成形金型装置
14 仕切部材
20 焼結炉
A 軸受面
M 圧粉体
M’ 焼結体
M1 第1粉末
M2 第2粉末

Claims (9)

  1. 焼結体で形成され、支持すべき軸を支持する軸受面を有する焼結軸受であって、
    前記焼結体が、Fe、Cu、CおよびCuよりも低融点の金属を主成分とするベース層と、ベース層に接した状態でベース層と共に焼結され、合金元素を含むFe、CuおよびCを主成分とする軸受層とを備え、軸受層が、軸方向と直交する断面において有端状に形成され、かつ前記軸受面を有することを特徴とする焼結軸受。
  2. 前記合金元素が、Ni、Mo、MnおよびCrの中から選択される少なくとも一種である請求項1記載の焼結軸受。
  3. 前記軸受層に含まれるFe組織の少なくとも一部がマルテンサイト変態およびベイナイト変態している請求項1又は2記載の焼結軸受。
  4. 前記低融点の金属がPである請求項1〜3の何れか一項に記載の焼結軸受。
  5. 前記ベース層における前記低融点の金属の濃度を0.1〜0.6質量%とした請求項1〜4の何れか一項に記載の焼結軸受。
  6. 前記軸受層のCu濃度を10〜30質量%とし、前記ベース層のCu濃度を前記軸受層のCu濃度よりも小さくした請求項1〜5の何れか一項に記載の焼結軸受。
  7. Cuの融点よりも低く、かつFeとCの反応開始温度よりも高い温度で前記ベース層を前記軸受層と共に焼結した請求項1〜6の何れか一項に記載の焼結軸受。
  8. 前記ベース層と前記軸受層の界面で前記合金元素の濃度勾配が生じている請求項1〜7の何れか一項に記載の焼結軸受。
  9. 建設機械のアームの関節部に使用される請求項1〜8の何れか一項に記載の焼結軸受。
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