本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお以下の説明で、前後、左右および上下は、荒地走行用四輪駆動車両に乗車した乗員から見た方向を言うものとする。
先ず図1〜図3において、四輪車両である荒地走行用四輪駆動車の車体フレームFの前部には左右一対の前輪WFが懸架されており、前記車体フレームFの後部には左右一対の後輪WRが懸架される。
前記車体フレームFは、前後方向に延びる左右一対のロアフレーム11と、それらのロアフレーム11の前後方向中間部から上方に立ち上がる左右一対のセンター起立フレーム12と、それらのセンター起立フレーム12の上端から前方に延びるとともに途中から前下がりに延びて前記ロアフレーム11の前部に連設される左右一対のフロントサイドフレーム13と、前記センター起立フレーム12の上端から後方に延びるとともに途中から下方に延びて前記ロアフレーム11の後部に連設される左右一対のリヤサイドフレーム14と、左右一対のセンター起立フレーム12の上端部間を連結するセンタークロスメンバー15と、左右一対のフロントサイドフレーム13の中間屈曲部間を連結するフロントクロスメンバー16と、左右一対のリヤサイドフレーム14の中間屈曲部間を連結する上部リヤクロスメンバー17と、左右一対のリヤサイドフレーム14の下部間を連結する下部リヤクロスメンバー18とを備える。
左右一対の前記センター起立フレーム12および左右一対の前記フロントサイドフレーム13は、運転者および助手用の前部乗車空間FSの外郭を構成するものであり、運転者および助手が乗ることを可能として前記センター起立フレーム12の前方に配置されるフロントフロア19が前記車体フレームFの前部に支持される。また左右一対の前記センター起立フレーム12および左右一対の前記リヤサイドフレーム14は、同乗者用の後部乗車空間RSの外郭を構成するものであり、同乗者が乗ることを可能として前記センター起立フレーム12の後方に配置されるリヤフロア20が前記車体フレームFの後部に支持される。
前記運転者および助手用の前部乗車空間FSには、左右一対の前輪WFを操向する操向ハンドル25の後方に配置される運転者席21と、その運転者席21の左右一側(この実施の形態では右側)に配置される助手席22とが車幅方向に離間して配置される。
前記運転者席21および前記助手席22は、座部21a,22aと、該座部21a,22aの後部から上方に立ち上がる背もたれ部21b,22bとをそれぞれ備える。また前記運転者席21および前記助手席22の前記背もたれ部21b,22bよりも前方に変位した背もたれ部23bを有するとともに、前記運転者席21および前記助手席22の座部21a,22a間に配置される座部23aを有する第2の助手席23が、前記運転者席21および前記助手席22間に設けられる。一方、前記同乗者用の後部乗車空間RSには、左右一対の同乗者席24,24が設けられる。
ところで、前記車体フレームFの前部はフロントカバー27で覆われており、前記前部乗車空間FSの後側下部を側方から覆うフロントサイドカバー28と、前記後部乗車空間RSの前側下部を側方から覆う左右一対のセンターサイドカバー29と、前記後部乗車空間RSの後側下部を側方から覆う左右一対のリヤサイドカバー30とが車体フレームFに取付けられる。また前記フロントカバー27の左右後部には、前記フロントサイドカバー28および前記フロントカバー27間にそれぞれ形成される前部出入り口31を開閉可能な左右一対の前部ドア33が上下一対のヒンジ部35で回動可能にそれぞれ支持され、前記リヤサイドカバー30の前部には、前記センターサイドカバー29および前記リヤサイドカバー30間にそれぞれ形成される後部出入り口32を開閉可能な後部ドア34が上下一対のヒンジ部36で回動可能にそれぞれ支持される。
前記車体フレームFには、左右一対の前輪WFおよび左右一対の後輪WRを回転駆動する動力を発揮する2気筒の内燃機関Eが平面視で車両の前後方向の略中央に配置されるようにして搭載されており、この内燃機関Eの機関本体38は、クランク軸39の軸線を前後方向に沿わせた縦置きにしつつシリンダ軸線Cを車幅方向で前記助手席22側に傾斜させた姿勢で前記車体フレームFに搭載され、車幅方向中央で前記運転者席21および前記助手席22の下方に配置される。
前記内燃機関Eの吸気装置40は、前記機関本体38のシリンダヘッド54に各気筒毎に接続されるスロットルボディ41と、平面視で前記運転者席21および前記助手席22間に配置されるエアクリーナ42と、前記スロットルボディ41およびエアクリーナ42間を結ぶ一対のコネクティングチューブ43と、前記エアクリーナ42に空気を導く単一の吸気ダクト44とを備える。
ところで前記運転者席21および前記助手席22間に設けられる第2の助手席23の背もたれ部23bは、運転者席21および助手席22の背もたれ部21b,22bに一体に連なってそれらの背もたれ部21b,22bよりも前方に変位しており、運転者席21、助手席22および第2の助手席23の背もたれ部21b,22b,23bが平面視で前方側に凹んだ凹部45を形成することになり、その凹部45に前記エアクリーナ42が配置される。
前記エアクリーナ42の右側部には、前記助手席22の座部22bの後方で車体の右側部まで延びる前記吸気ダクト44の下流端が接続され、この吸気ダクト44の複数箇所には、レゾネータ46,47,48が接続される。
前記機関本体38のシリンダヘッド54の下部側壁に接続される一対の排気管50は、前記車体フレームFの後縁に沿って車幅方向に延びるように配置されて車体フレームFに支持される排気マフラー51に接続される。
図4および図5を併せて参照して、前記機関本体38は、車両前後方向に延びるクランク軸39を回転自在に支持するクランクケース52と、傾斜した前記シリンダ軸線Cを有して前記クランクケース52に結合されるシリンダブロック53と、該シリンダブロック53の上部に結合される前記シリンダヘッド54とを有し、前記クランクケース52は、前記シリンダ軸線Cと直交する平面VL1に沿う結合面で相互に結合される上ケース部52aと、下ケース部材52bとから成り、前記上ケース部52aおよび前記シリンダブロック53は一体に形成される。また前記クランク軸39は、その軸線が前記平面VL1上で前記シリンダ軸線Cと直交するようにして、前記上ケース部52aおよび前記下ケース部材52b間に回転自在に支持される。
また前記クランクケース52の背面には、機関本体28の一部を構成するスペーサプレート55が結合され、クラッチカバー56と、オイル貯留タンク57とが、前記クランクケース52から後方に突出するようにして前記スペーサプレート55を介して前記クランクケース52に結合される。また前記クランク軸39の軸線に関して前記オイル貯留タンク47とは反対側すなわち前記クランクケース52の前面側には副変速機ケース58が結合され、前記クランクケース52の下部にはオイルパン59が結合される。
図6を併せて参照して、前記内燃機関Eの前記クランク軸39と、ともに駆動輪である前輪WFおよび後輪WRとの間の動力伝達系の途中には、前記内燃機関EとともにパワーユニットPを構成する動力伝達装置Tが設けられており、前記動力伝達装置Tは、変速機60と、該変速機60および前記クランク軸39間に介設される第1および第2油圧クラッチ63,64とを備える。
前記パワーユニットPからの出力は、前後方向に延びる前輪用プロペラ軸65(図3参照)を介して左右の前輪WFに伝達されるとともに、前後方向に延びる後輪用プロペラ軸66(図3参照)を介して左右の後輪WRに伝達されるものであり、前記前輪用プロペラ軸65および前記後輪用プロペラ軸66は前記クランクケース52の右側方を通るように配置される。
前記変速機60は、前記クランクケース52内に収容される主変速機61と、前記副変速機ケース58内に収容される副変速機62とを備え、前記副変速機ケース58は、前記クランクケース52の前面に結合される第1ケース部材67と、第1ケース部材67を前記クランクケース52との間に挟む第2ケース部材68とから成る。
前記主変速機61は、変速機60への前記クランク軸39からの入力軸である第1メイン軸69および第2メイン軸70と、カウンタ軸71と、選択的に確立可能として第1メイン軸69および前記カウンタ軸71間に設けられる第1、第3および第5速用歯車列G1,G3,G5と、選択的に確立可能として第2メイン軸70および前記カウンタ軸71間に設けられる第2、第4および第6速用歯車列G2,G4,G6とを備える。
第1および第2メイン軸69,70は、第1メイン軸69の一部を第2メイン軸70が同軸に囲繞するようにして前記クランクケース52の上ケース部52aに相対回転自在に支持されており、前記クランク軸39と平行な軸線を有するようにして前記クランク軸39の右側方に配置される。また前記カウンタ軸71は、第1および第2メイン軸69,70と平行な軸線を有して前記クランクケース52の前記上ケース部52aに回転自在に支持される。
第1〜第6速用歯車列G1〜G6の選択的な確立は変速用電動モータ72の作動によって切替えられるものであり、この変速用電動モータ72は、図4で明示するように、前記クラッチカバー56から右側方に突出するようにして前記スペーサプレート55に設けられた側方突部55aに取付けられる。
前記第2メイン軸70にその軸方向後方側で隣接した位置で前記第1メイン軸69には、第1メイン軸69を同軸に囲繞する伝動筒軸73が、軸方向相対移動を不能としつつ相対回転自在に支持されており、第1油圧クラッチ63は、前記伝動筒軸73および第1メイン軸69間の動力断・接を切替え可能として第1メイン軸69上に設けられ、第2油圧クラッチ64は、前記伝動筒軸73および第2メイン軸70間の動力断・接を切換可能として伝動筒軸73および第2メイン軸70上に設けられる。
前記伝動筒軸73には、前記クランク軸39からの回転動力が一次減速装置74およびダンパばね75を介して伝達される。一次減速装置74は、前記クランク軸39とともに回転する一次駆動歯車76と、この一次駆動歯車76に噛合するようにして第1および第2メイン軸69,70と同軸に配置される一次被動歯車77とから成り、一次被動歯車77が前記ダンパばね75を介して前記伝動筒軸73に連結される。
第1油圧クラッチ63は、第1油圧室78を有して、一次減速装置74よりも軸方向外側に配置されており、第1油圧室78に油圧が作用していない状態では第1油圧クラッチ63は動力伝達を遮断したクラッチオフ状態にあり、第1油圧室78への油圧の作用時に第1油圧クラッチ63は、前記クランク軸39から前記一次減速装置74、前記ダンパばね75および前記伝動筒軸73を介して伝達される回転動力を第1メイン軸69に伝達するクラッチオン状態となる。
第2油圧クラッチ64は、第2油圧室79を有して、一次減速装置74を第1油圧クラッチ63との間に挟むようにして第1油圧クラッチ63よりも軸方向内側に配置されており、第2油圧室79に油圧が作用していない状態では動力伝達を遮断したクラッチオフ状態にあり、第2油圧室79への油圧の作用時に第2油圧クラッチ64は、前記クランク軸39から前記一次減速装置74、前記ダンパばね75および前記伝動筒軸73を介して伝達される回転動力を第2メイン軸70に伝達するクラッチオン状態となる。
第1メイン軸69には、相互に平行な第1および第2軸方向油路80,81が内端を閉じるとともに軸方向に延びるようにして設けられ、第1軸方向油路80は第1油圧室78に連通し、第2軸方向油路81は第2油圧室79に連通する。しかも第1軸方向油路80に通じる第1油路82と、第2軸方向油路81に通じる第2油路83とが前記クラッチカバー56に形成される。
前記副変速機62は、変速駆動軸85、アイドル軸86および駆動力出力軸87を備える。前記変速駆動軸85は、前記主変速機61の前記カウンタ軸71と同軸にして前後方向に延びるものであり、前記副変速機ケース58の第1および第2ケース部材67,68に回転自在に支持される。しかもこの変速駆動軸85の後端部は前記第1ケース部材67を回転自在に貫通して前記クランクケース52側に突出するものであり、前記クランクケース52を回転自在に貫通する前記カウンタ軸71の前端部が前記変速駆動軸85の後端部にダンパ機構88を介して同軸に連結される。すなわち前記カウンタ軸71の回転動力は前記ダンパ機構88を介して前記変速駆動軸85に伝達される。
前記副変速機ケース58内で、前記変速駆動軸85には、高速駆動歯車89、低速駆動歯車90およびリバース用駆動歯車91が、前方側から順に配置されるようにして相対回転可能に支持される。第2ケース部材68および高速駆動歯車89間で前記変速駆動軸85には、前記変速駆動軸85との相対回転を不能とした高速切替え用シフタ92が、前記高速駆動歯車89に係合する位置、ならびに前記高速駆動歯車89との係合を解除する中立位置を切替えるようにしてスライド可能に支持される。また前記低速駆動歯車90および前記リバース用駆動歯車91間で前記変速駆動軸85には、前記変速駆動軸85との相対回転を不能とした前後進切替え用シフタ93が、前記低速駆動歯車90に係合する位置、前記リバース用駆動歯車91に係合する位置、ならびに前記低速駆動歯車90および前記リバース用駆動歯車91のいずれにも係合しない中立位置を切替えるようにしてスライド可能に支持される。
前記アイドル軸86は、前記副変速機ケース58の第1および第2ケース部材67,68に回転自在に支持される支軸94を囲繞する円筒状に形成されており、この支軸94に相対回転可能に支持される。前記副変速機ケース58内で前記アイドル軸86の前部および後部には、小径アイドル歯車95および大径アイドル歯車96が一体に設けられており、前記大径アイドル歯車96が前記リバース用駆動歯車91に噛合される。
また前記駆動力出力軸87には、前記小径アイドル歯車95ならびに前記変速駆動軸85の前記高速駆動歯車89および前記低速駆動歯車90に対応した位置に配置されるようにして円筒状のボス97が固定される。このボス97には、ダンパばね98を介して小径被動歯車99が連結されるとともに、ダンパばね100を介して大径被動歯車101が連結されており、前記小径被動歯車99に前記高速駆動歯車89が噛合され、前記大径被動歯車101に前記低速駆動歯車90および前記小径アイドル歯車95が噛合される。
前記高速切替え用シフタ92を回転自在に抱持する第1のシフトフォーク102ならびに前記前後進切替え用シフタ93を回転自在に抱持する第2のシフトフォーク103は、前記変速駆動軸85と平行な軸線を有して副変速機ケース58の第1および第2ケース部材67,68に支持されるシフトフォーク軸104にスライド可能に支持される。また前記第1および第2ケース部材67,68には、前記シフトフォーク軸104と平行な軸線を有するシフトドラム105が回動可能に支持されており、このシフトドラム105の外周に設けられるガイド溝106,107に、第1および第2のシフトフォーク102,103が係合される。
前記シフトドラム105の回動に伴って前記第1および第2のシフトフォーク102,103が前記シフトフォーク軸104に沿って移動することにより、前記高速駆動歯車89、前記低速駆動歯車90および前記リバース用駆動歯車91が、前記変速駆動歯車軸85に選択的に相対回転不能に連結される。
図7および図8を併せて参照して、前記変速機60の入力軸である第1および第2メイン軸69,70を回転自在に支持するクランクケース52に前方から隣接して該クランクケース52の前面に結合される副変速機ケース58に、前記クランクケース52よりも右側方に突出する出力軸支持部110が形成されており、第1および第2メイン軸69,70とは軸方向にオフセットした前記駆動力出力軸87が前記出力軸支持部110に回転自在に支持される。前記駆動力出力軸87の後部は、前記第1ケース部材67側で前記出力軸支持部110との間に、ボールベアリング111と、そのボールベアリング111の外方に配置されるオイルシール112とを介在させて前記出力軸支持部110を回転自在に貫通して後方に突出し、この出力軸支持部110の後端部に、前記クランクケース52の右側方を通る前記後輪用プロペラ軸66が連結される。また前記駆動力出力軸87の前部は、前記第2ケース部材67側で前記出力軸支持部110との間に、ボールベアリング113と、そのボールベアリング113の外方に配置されるオイルシール114とを介在させて前記出力軸支持部110を回転自在に貫通して前方に突出し、この出力軸支持部110の前端部に、前記クランクケース52の右側方を通る前記前輪用プロペラ軸65が連結される。
前記副変速機ケース58は、前記機関本体38の前記クランクケース52に結合される第1ケース部材67と、第2ケース部材68とが、前記駆動力出力軸87の軸線方向に分割可能としてガスケット121を相互間に介在させつつ相互に結合されて成り、前記第1ケース部材67および前記第2ケース部材68間には、前記駆動力出力軸87の一端部の前記出力軸支持部110からの突出部、この実施の形態では後端部の前記出力軸支持部110からの突出部の上方に配置されるようにしたブリーザ室115が形成される。
ところで前記第2ケース部材67は、前記クランクケース52からの前記出力軸支持部110の突出方向すなわち右側方に臨む側壁67aと、該側壁67aから側方に一体に向けて突出するようにして一体に設けられる突設されて突出部67bとを有しており、前記突出部67bが、前記第2ケース部材68と協働して前記出力軸支持部110を構成する。
前記出力軸支持部110の上部に対応する部分で前記第1ケース部材67には、前記第2ケース部材68とは反対側すなわち後方に膨らんだ膨出部116が一体に設けられており、第2ケース部材68側に開放した凹部117を形成するようにして前記膨出部116の上部に設けられるブリーザ室形成壁部116aと、第1ケース部材67側に開放した凹部118を形成するようにして前記出力軸支持部110に対応した位置で前記第2ケース部材68の上部に設けられるブリーザ室形成壁部68aとが結合されることで、相互に連通した前記凹部117,118によって前記ブリーザ室115が形成される。しかも前記膨出部116は、前記第1ケース部材67の前記側壁67aに一体に連なるように形成される。
また前記副変速機ケース58における前記第2ケース部材68には、前記駆動力出力軸87を側方から覆うようにして該駆動力出力軸87の軸線方向に沿って前方に延びる筒状部68bが一体に形成される。
図9および図10を併せて参照して、前記ブリーザ室115内の流路をラビリンス状とするために、前記第1ケース部材67に複数の仕切り壁119が一体に突設されるとともに、前記第2ケース部材68に複数の仕切り壁120が一体に突設される。
しかも前記ブリーザ室115は、車体フレームFに前記パワーユニットPが搭載された状態で前記機関本体38に近接するにつれて上方位置となるように形成されるものであり、このブリーザ室115の最下部に通じる導入口122が前記ブリーザ室形成壁部116aに設けられ、その導入口122から導入されたガスは、図9および図10の矢印で示すようにジグザグに流れることで気液分離をしながらブリーザ室115内を上方に流通し、前記ブリーザ室115の最上部に通じるようにして前記ブリーザ室形成壁116aに設けられた導出管123から導出される。
図11において、第1および第2油圧クラッチ63,64の断・接はクラッチアクチュエータ125で切替えられるものであり、このクラッチアクチュエータ125は、前記クラッチカバー56に配設される。ところで前記スペーサプレート55および前記オイル貯留タンク57間には、一時的にオイルを貯留するオイル溜め126が形成されるものであり、このオイル溜め126からオイルを吸い上げる第1オイルフィードポンプ127からのオイルが、第1オイルフィルタ130を介して前記クラッチアクチュエータ125に供給され、前記クラッチアクチュエータ125は、第1油圧クラッチ63の第1油圧室78に通じる第1油路82および第1軸方向通路80への油圧の作用および解放と、第2油圧クラッチ64の第2油圧室79に通じる第2油路83および第2軸方向通路81への油圧の作用および解放とを切替えるように作動し、それによって第1および第2油圧クラッチ63,64の断・接が切替えられる。また第1オイルフィードポンプ127からの余剰オイルは第1リリーフ弁133を介して前記オイル溜め126に戻される。
前記オイル溜め126には、第1オイルフィードポンプ127と共通にして第2オイルフィードポンプ128が接続されており、この第2オイルフィードポンプ128からのオイルは、パワーユニットPの複数の被潤滑部132に第2オイルフィルタ131を介して供給され、第2オイルフィードポンプ128からの余剰オイルは第2リリーフ弁134を介して前記オイル溜め126に戻される。
第2オイルフィードポンプ128の吐出容量は前記第1オイルフィードポンプ127の吐出容量よりも大きく設定されるものであり、したがって第2オイルフィルタ131は第1オイルフィルタ130よりも大型に構成される。
また前記オイルパン59内のオイルはストレーナ135を介してスカベンジポンプ129で吸い上げられるものであり、このスカベンジポンプ129から吐出されるオイルは、オイルクーラ136を経て前記オイル溜め126に供給される。
図12〜図14を併せて参照して、前記第1オイルフィードポンプ127、前記第2オイルフィードポンプ128および前記スカベンジポンプ129は、協働してポンプユニット138を構成するようにして前記スペーサプレート55に配設される。
図14に特に注目して、第1オイルフィードポンプ127は、前記スペーサプレート55と、そのスペーサプレート55の前記オイル貯留タンク57側の一面に締結される仕切り板140との間に形成されるポンプ室141に、前記クランク軸39と平行な軸線を有するオイルポンプ軸142に固定されるインナーロータ143と、そのインナーロータ143に噛合するアウターロータ144が収容されて成る。
また第2オイルフィードポンプ128は、前記仕切り板145と、該仕切り板145を前記スペーサプレート55との間に挟むポンプカバー146との間に形成されるポンプ室147に、前記オイルポンプ軸142に固定されるインナーロータ148と、そのインナーロータ148に噛合するアウターロータ149が収容されて成る。
前記仕切り板145および前記ポンプカバー146は、複数のボルト150による共締めで前記スペーサプレート55に締結される。
前記スカベンジポンプ129は、前記スペーサプレート55と、そのスペーサプレート55の前記クランクケース52側の他面に複数のボルト151で締結されるポンプカバー152との間に形成されるポンプ室153に、前記オイルポンプ軸142に固定されるインナーロータ154と、そのインナーロータ154に噛合するアウターロータ155が収容されて成る。
前記オイルポンプ軸142には、前記スペーサプレート55、前記仕切り板145、前記ポンプカバー146,152に、それら55,145,146,162を貫通して回転自在に支持されるものであり、このオイルポンプ軸142には、前記クランク軸39に連動して回転するバランサ軸156が同軸にかつ相対回転不能に連結される。
このようなポンプユニット138の前記スペーサプレート55への配設により、前記第1オイルフィードポンプ127、前記第2オイルフィードポンプ128および前記スカベンジポンプ129は、前記クランク軸39の軸線と平行な方向に並んで配置される。
前記第1オイルフィルタ130で浄化されるオイルを吐出する前記第1オイルフィードポンプ127と、前記第2オイルフィルタ131で浄化されるオイルを吐出する前記第2オイルフィードポンプ128とは、前記スペーサプレート55の一側(この実施の形態では前記オイル貯留タンク57側)に配置され、他のオイルポンプであるスカベンジポンプ129が前記スペーサプレート55の他側(この実施の形態では前記クランクケース52側)に配置され、前記オイル貯留タンク57内には、大型のオイルフィルタである第2オイルフィルタ131で浄化されるオイルを吐出するオイルポンプである第2オイルフィードポンプ128の少なくとも一部が配置されることになる。
しかも第2オイルフィードポンプ128を含む前記ポンプユニット138は、前記クランク軸39の軸線に沿う方向で、前記第1および第2オイルフィルタ130,131が取付けられる前記オイル貯留タンク57に近接した位置にある前記スペーサプレート55に配設されるので、第2オイルフィルタ131は、第2オイルフィードポンプ128に隣接して配置されることになる。
前記第1オイルフィードポンプ127および前記第2オイルフィードポンプ128は、前記オイル溜め126からオイルを吸入するのであるが、前記第1オイルフィードポンプ127のポンプ室141および前記第2オイルフィードポンプ128のポンプ室147に共通に通じるオイル吸入通路158が、前記スペーサプレート55に設けられる。
前記オイル吸入通路158は、上下方向に延びて前記スペーサプレート55に設けられる管状部157内に形成されるものであり、この管状部157の下部に、前記オイル溜め126を前記オイル吸入通路158に通じさせる連通孔159が設けられる。
前記スペーサプレート55の上部には、前記オイル溜め126から前記クランクケース52内にオイルをオーバーフローさせるオーバーフロー通路160が設けられており、このオーバーフロー通路160および前記オイル吸入通路158は、前記機関本体38の車両搭載状態での平面視で前記オーバーフロー通路160を前記オイル吸入通路158の一部に重ねるようにして、前記機関本体38の左右方向中央部に配置される。すなわちクランク軸39の軸線に直交する平面の投影図上で、前記オーバーフロー通路160の左右方向両端を通る一対の鉛直線間の幅W内に、前記オイル吸入通路158の一部が配置されるように、前記オーバーフロー通路160および前記オイル吸入通路158の相対位置が定められる。
図15を併せて参照して、前記オイル貯留タンク57は、前記クラッチカバー56の一部を収容する凹部161を有して前記クラッチカバー56に隣接配置される。また前記クランク軸39に関して前記変速機60と反対側すなわち前記クラッチカバー56と反対側で前記オイル貯留タンク57の外側壁57aに、第1および第2オイルフィルタ130,131が上下に並んで配置されるようにして取付けられる。
前記オイル貯留タンク57の前記外側壁57aの下半部は、上方に向かうにつれて前記変速機60から遠ざかるように傾斜した傾斜壁部57aaとして形成されており、大型のオイルフィルタである第2オイルフィルタ131が前記傾斜壁部57aaの上部に取付けられ、小型のオイルフィルタである第1オイルフィルタ130が前記傾斜壁部57aaの上下方向中間部に取付けられる。
第1オイルフィードポンプ127から吐出されるオイルは、前記スペーサプレート55に設けられた第1通路162(図12および図13参照)に導かれ、この第1通路162には、前記オイル貯留タンク57に設けられた第2通路163が、前記スペーサプレート55への前記オイル貯留タンク57の結合時に連通する。前記オイル貯留タンク57の前記外壁部57aにおける前記傾斜壁部57aaの上下方向中間部には、第1オイルフィルタ130を取付けるための有底の第1フィルタ装着孔167が設けられており、前記第2通路163は、前記第1フィルタ装着孔167に通じるようにして前記オイル貯留タンク57に形成される。
図16において、第1オイルフィルタ130で浄化されたオイルは、一端部を前記第1フィルタ装着孔167の内端部に同軸に開口させるとともに、他端部を前記スペーサプレート55との結合面に開口させるようにして前記オイル貯留タンク57に設けられた第3通路164に導かれる。一方、前記スペーサプレート55には、前記第3通路164の他端に一端を通じさせる長孔が設けられており、この長孔の前記オイル貯留タンク57とは反対側を閉じる蓋板168を前記スペーサプレート55に締結することで、前記スペーサプレート55内には、一端を前記第3通路164の他端に通じさせる第4通路165が形成される。
前記スペーサプレート55には、前記クラッチカバー56を締結するための無端状に連なるクラッチカバー取付け座168が形成されており、前記第4通路165の他端は前記クラッチカバー取付け座168に開口する。また前記クラッチカバー56には、前記クラッチアクチュエータ125に連なる第5通路166が前記第4通路165の他端に通じるようにして設けられる。
前記第3〜第5通路164〜166は、前記オイル貯留タンク57の下部の前記傾斜壁部57aaに取付けられた第1オイルフィルタ130から前記クラッチアクチュエータ125を介して第1および第2油圧クラッチ63,64側にオイルを供給するオイル通路170を構成するものであり、このオイル通路170は、前記オイル貯留タンク57、前記スペーサプレート55および前記クラッチカバー56に形成されることになる。
第2オイルフィードポンプ128から吐出されるオイルは、前記ポンプカバー146に設けられた第6通路171(図12および図13参照)に導かれ、この第6通路171には、前記オイル貯留タンク57に設けられた第7通路172が、前記スペーサプレート55への前記オイル貯留タンク57の結合時に連通する。前記オイル貯留タンク57の前記外壁部57aにおける前記傾斜壁部57aaの上部には、第2オイルフィルタ131を取付けるための有底の第2フィルタ装着孔175が設けられており、前記第7通路172は、前記第2フィルタ装着孔175に通じるようにして前記オイル貯留タンク57に形成される。
第2オイルフィルタ131で浄化されたオイルは、一端部を前記第2フィルタ装着孔175の内端部に同軸に開口させるとともに、他端部を前記スペーサプレート55側に開口させるようにして前記オイル貯留タンク57に設けられた第8通路173に導かれる。一方、前記スペーサプレート55には、前記第8通路173の他端に一端を通じさせる第9通路174が設けられており、この第9通路174は、前記スペーサプレート55の前記クランクケース52への結合時に、前記被潤滑部132に通じるようにして前記クランクケース52に設けられるオイル通路(図示せず)に連通する。
前記スカベンジポンプ129が備える前記ポンプカバー152には、前記ストレーナ135を介して前記オイルパン59内からオイルを吸い上げるための吸入孔176が設けられ、前記スペーサプレート55には、前記スカベンジポンプ129から吐出されるオイルを導く第10通路177がその一端を前記ポンプ室153に通じさせるようにして設けられる。また前記スペーサプレート55には、前記オイル貯留タンク57側に臨んで開口する通路形成凹部178が、上下方向中間部を屈曲させながら上下方向に延びるとともに上下両端部を閉じるようにして設けられており、前記第10通路177の他端は前記通路形成凹部178の下部に開口する。一方、前記オイル貯留タンク57には、前記スペーサプレート55との結合時に、前記通路形成凹部178と協働して第11通路180を構成する通路形成凹部179が前記通路形成凹部178に対応した形状を有するようにして設けられる。
第11通路180の上端部は、前記第2オイルフィルタ131の上方に配置される前記オイルクーラ136を取付けるために、前記オイル貯留タンク57の上部の車両後方に臨む外面に形成されるオイルクーラ取付け座181の外周部に開口する。また前記オイル貯留タンク57には、前記オイルクーラ取付け座181の中央部に一端部が開口するとともに他端部が、前記オイル貯留タンク57および前記スペーサプレート55間に形成されるオイル溜め126の上部に開口する第12通路182が設けられる。すなわち前記スカベンジポンプ129から吐出されるオイルは、前記第10通路177および第11通路180を経て前記オイルクーラ136に導かれ、このオイルクーラ136で冷却されたオイルが第12通路182を経て前記オイル溜め126に供給されることになる。
ところで前記オイル貯留タンク57の左側の外側壁57aに取付けられた第1および第2オリフィス130,131は、前記パワーユニットPが車両に搭載された状態では、左側のリヤサイドカバー30に対応する位置に配置されることになり、図17で示すように、左側のリヤサイドカバー30を取り外した状態では外部から第1および第2オリフィス130,131を視認し得る状態となり、第1および第2オリフィス130,131のメンテナンス作業が容易となる。
図18において、前記機関本体38の前記クランクケース52には、前記クランク軸39と、前記ポンプユニット138のオイルポンプ軸142と同軸にして前記クランク軸39の左側方に配置されるバランサ軸156とが回転自在に支持されており、2気筒の内燃機関Eの各気筒毎のバランスウエイト184,185を有しつつ前記クランク軸39と平行な軸線を有する前記バランサ軸156と、前記クランク軸39との間には、前記クランク軸39に固定される駆動歯車186と、前記バランサ軸156に固定される被動歯車187とを含む歯車伝動機構188が設けられる。
前記クランクケース52から前方に突出した前記クランク軸39の突出端部には、アウターロータ208が固定され、このアウターロータ208と協働して発電機210を構成するインナーステ209が、前記副変速機ケース58の一部を構成する第2ケース部材68に固定される。また前記アウターロータ208には、図示しない始動用モータから回転動力が入力される始動用被動ギヤ211が一方向クラッチ212を介して連結される。また前記歯車伝動機構188は、前記クランクケース52および前記始動用被動ギヤ211間に配置されるようにして前記クランク軸39および前記バランサ軸156間に設けられる。
図19を併せて参照して、前記バランサ軸156は、前記クランクケース52にボールベアリング190,191を介して回転自在に支持される一対の軸受部156a,156bと、それらの軸受部156a,156bの一方156aに連なって前記クランクケース52の外側に配置されるとともに前記一方の軸受部156aから離反するにつれて小径となるテーパ状に形成される歯車支持部156cとを有するように形成される。
前記被動歯車187には、前記歯車支持部156cを嵌合させるようにしたテーパ状の取付け孔191を有する筒状のボス部187aが一体に設けられ、前記バランサ軸156の半径方向に沿う軸線を有して一端側半部が前記歯車支持部156cの大径端に嵌合されるピン191の他端側半部を嵌合される嵌合凹部193が、前記取付け孔191の大径端側で前記ボス部187aに設けられる。
また前記被動歯車187と協働してバックラッシュを吸収するためのサブ歯車194が、前記被動歯車187との間に弾性部材であるばね195を介在させて前記取付け孔191の小径端側で前記ボス部187aに装着される。
図20において、前記バランスウエイト184,185は、前記バランサ軸156の軸線を含む平面VL2の一方に集中するようにして前記バランサ軸156に設けられ、前記バランサ軸156の軸線を水平とした自然状態での前記バランサウエイト184,185の自重によって定まる回転位相で前記ピン191が上向きとなるように前記ピン191の前記歯車支持部165cへの嵌合位置が定められる。
前記歯車支持部156cには、前記ボス部187aの前記クランクケース52とは反対側の端部との間に押さえ板196を挟むボルト197がねじ込まれるものであり、このボルト197を締め付けることで、前記取付け孔191内に前記歯車支持部156cを嵌合する側に前記ボス部187aの端面が押されることになり、前記ピン191および前記ボルト197によって前記被動歯車187が前記歯車支持部156cに固定される。
ところで前記被動歯車187および前記サブ歯車194が取付けられた状態の前記バランサ軸156が前記クランクケース52の前記下ケース部材52bに小組みされた状態で、前記下ケース部材52bの前記上ケース部52aへの結合面を上向き水平とした状態で、前記被動歯車187および前記サブ歯車194に前記クランク軸39の前記駆動歯車186を噛合して前記歯車伝動機構188を組立てるにあたっては、前記サブ歯車194および前記駆動歯車186の側面に設けられた合わせマークを合わせるようにして組立てが行われる。
図20において、前記バランスウエイト184,185は、前記バランサ軸156の軸前記ボルト197には、第1の補機であるウォータポンプ198が備える回転軸としてのウォータポンプ軸199を相対回転不能に係合させる係合部197aが設けられる。
前記ウォータポンプ198は、前記副変速機ケース58の一部を構成する第2ケース部材68と、その第2ケース部材68に締結されるポンプカバー200との間に形成されるポンプ室201に収容されるインペラ202が、前記ウォータポンプ軸199に固定されて成る。
前記ボルト197の前記係合部197aは、該ボルト197の一直径線に沿って延びて前記ウォータポンプ軸199側に突出しており、前記ウォータポンプ軸199の前記ボルト197側端部に設けられる係止凹部203に前記係合部197aが係合することで、前記バランサ軸156に固定される前記ボルト197が前記ウォータポンプ軸199に同軸にかつ相対回転不能に連結されることになる。
また前記バランサ軸156の前記歯車支持部156cと反対側の端部には、第2の補機である前記ポンプユニット138のオイルポンプ軸142が同軸にかつ相対不能に連結される。すなわち前記バランサ軸156の前記歯車支持部156cと反対側の端部には、該バランサ軸156の一直径線に沿って延びる係止凹部204が形成され、前記オイルポンプ軸142の前記バランサ軸156側端部に突設される係合部142aが前記係止凹部204に係合される。
次にこの実施の形態の作用について説明すると、機関本体38のクランクケース52には、クランク軸39と、該クランク軸39の左側方に配置されるバランサ軸156とが回転自在に支持されており、各気筒毎のバランスウエイト184,185を有しつつ前記クランク軸39と平行な軸線を有する前記バランサ軸156は、前記クランクケース52に回転自在に支承される一対の軸受部156a,156bと、それらの軸受部156a,156bの一方156aに連なってクランクケース52の外側に配置されるとともに前記一方の軸受部156aから離反するにつれて小径となるテーパ状に形成される歯車支持部156cとを有するように形成され、前記クランク軸39および前記バランサ軸156間に設けられる歯車伝動機構188の一部を構成する被動歯車187に、前記歯車支持部156cを嵌合させるようにしたテーパ状の取付け孔191を有する筒状のボス部187aが一体に設けられ、前記バランサ軸156の半径方向に沿う軸線を有して一端側半部が前記歯車支持部156cの大径端に嵌合されるピン192の他端側半部を嵌合させる嵌合凹部193が、前記取付け孔191の大径端側で前記ボス部187aに設けられる。
したがってキー溝を有しない構造でバランサ軸156および被動歯車187の軸線まわりの相対位置が定まることになり、歯車支持部156cの外周および取付け孔191の内周のテーパ面の連続性を確保して生産性の向上を図った上で、被動歯車187のボス部187aおよび歯車支持部156cの軸線まわりの位置決めを強固に果たすことができ、バランサ軸156の大型化を回避して伝達トルクの増大化を図ることができる。
また前記被動歯車187と協働してバックラッシュを吸収するためのサブ歯車194が、前記被動歯車187との間にばね195を介在させて前記取付け孔191の小径端側で前記ボス部187aに装着されるので、前記被動歯車187および前記歯車支持部156cの位置決めを果たす部分とのサブ歯車194の干渉の心配がなく、サブ歯車194の形状の自由度を確保することができるとともに、組付け性を高めることができる。
また前記バランスウエイト184,185が、前記バランサ軸156の軸線を含む平面VL2の一方に集中するようにして前記バランサ軸156に設けられ、前記バランサ軸156の軸線を水平とした自然状態での前記バランスウエイト184,185の自重によって定まる回転位相で前記ピン192が上向きとなるように前記ピン192の前記歯車支持部156cへの嵌合位置が定められるので、テーパ状の歯車支持部156cに被動歯車187のボス部187aを組み付ける際に前記被動歯車187の背面側となる位置に前記ピン192が設けられていても、前記被動歯車187に対するバランサ軸156の位相合わせ、ひいてはクランク軸39に対する位相合わせが容易となり、組立性が向上する。
また前記取付け孔191内に前記歯車支持部156cを嵌合する側に前記ボス部187aの端面を押すようにして前記歯車支持部156cにねじ込まれるボルト197に、ウォータポンプ198が備えるウォータポンプ軸199を相対回転不能に係合させる係合部197aが設けられるので、ウォータポンプ198によってバランサ軸156に作用する負荷の増加に対してもバランサ軸156の小型化を維持することができる。
また前記バランサ軸156の前記歯車支持部156cと反対側の端部に、ポンプユニット138が同軸にかつ相対不能に連結されるので、バランサ軸156に作用する負荷がさらに増加してもバランサ軸156の小型化を維持することができる。
また前記クランク軸39からの回転動力を変速するための変速機60の一部を構成して前記クランク軸39と平行に延びる第1メイン軸69、第2メイン軸70およびカウンタ軸71が、前記クランク軸39の右側方に配置されており、前記クランク軸39の軸方向一端側で前記クランクケース52にオイル貯留タンク57が結合され、前記クランク軸39に関して前記変速機60と反対側の前記オイル貯留タンク57の外側壁57aに、上下に並んで配置される第1および第2のオイルフィルタ130,131が取付けられるので、それらのオイルフィルタ30,31に同一方向(この実施の形態では車両の左側方)からアクセスすることを可能としてメンテナンス性を高めることができる。
またオイルを一時的に貯留するオイル溜め126を、前記クランクケース52に結合されるスペーサプレート55との間に形成する前記オイル貯留タンク57が、前記スペーサプレート55を介して前記クランクケース52に結合され、前記オイル貯留タンク57の前記外側壁57aの下半部が、上方に向かうにつれて前記変速機60から遠ざかるように傾斜した傾斜壁部57aaとして形成され、大型である第2のオイルフィルタ131が前記傾斜壁部57aaの上部に取付けられ、小型である第1のオイルフィルタ130が前記傾斜壁部57aaの上下方向中間部に取付けられるので、機関本体38の車両搭載状態で路面近くに配置される第1のオイルフィルタ30を小型のものとすることでオイル貯留タンク57の下部からの張出しを抑えてオイル溜め126の容量確保と、路面に近づく部位の面積を減らすことによる保護性との両立を図ることで、内燃機関Eの車両への搭載性を高めることができる。
また前記オイル貯留タンク57内に、大型である第2のオイルフィルタ131で浄化されるオイルを吐出する第2オイルフィードポンプ128の少なくとも一部が配置され、前記第2のオイルフィルタ131が前記クランク軸39の軸線に沿う方向で前記第2オイルフィードポンプ128に隣接して配置されるので、第2オイルフィードポンプ128から第2のオイルフィルタ128へのオイル通路を短くすることができる。
また前記第1オイルフィルタ130で浄化されるオイルを吐出する前記第1オイルフィードポンプ127と、前記第2オイルフィルタ131で浄化されるオイルを吐出する前記第2オイルフィードポンプ128とは、前記スペーサプレート55の一側に配置され、他のオイルポンプであるスカベンジポンプ129が前記スペーサプレート55の他側に配置され、前記第1オイルフィードポンプ127、前記第2オイルフィードポンプ128および前記スカベンジポンプ129は、前記クランク軸39の軸線と平行な方向に並んで配置されるので、前記第1オイルフィードポンプ127から第1オイルフィルタ30へのオイル通路ならびに前記第2オイルフィードポンプ128から第2オイルフィルタ31へのオイル通路を短くすることができる。
また前記スペーサプレート55には、前記オイル溜め126からオイルを吸入する第1および第2オイルフィードポンプ127,128がそれぞれ備えるポンプ室141,147に共通なオイル吸入通路158が、前記オイル溜め126に通じるようにして設けられるので、オイル吸入通路158の共通化による小型化を図ることができる。
また前記オイル溜め126から前記クランクケース52内にオイルをオーバーフローさせるオーバーフロー通路160が前記スペーサプレート55の上部に設けられ、前記オーバーフロー通路160および前記オイル吸入通路158が、前記機関本体38の車両搭載状態での平面視で前記オーバーフロー通路160を前記オイル吸入通路158の一部に重ねるようにして、前記機関本体38の左右方向中央部に配置されるので、第1および第2オイルフィードポンプ127,128のオイル吸入性能と、オイル溜め126からのオイル排出性能とのオイル溜め126内でのオイル流動による左右差を均等化し、車体の左右傾動によるばらつきを小さくすることができる。
また前記クランク軸39および前記変速機60間に介設される第1および第2油圧クラッチ63,64を覆うクラッチカバー56が、前記クランク軸39の軸方向一端側で前記スペーサプレート55に結合され、前記オイル貯留タンク57が、前記クラッチカバー56の一部を収容する凹部161を有して前記クラッチカバー56に隣接配置されるので、オイル貯留タンク57の外側壁のうちクランク軸39に関して変速機60と反対側の外側壁57aのクランク軸39からの距離を短くして機関本体38の大型化を回避することができる。しかも前記オイル貯留タンク57の下部に取付けられた第1のオイルフィルタ130から前記第1および第2油圧クラッチ63,64側にオイルを供給するオイル通路170が、前記オイル貯留タンク57、前記スペーサプレート55および前記クラッチカバー56に形成されるので、オイル通路170の短縮化を図ることができる。
また変速機60は、駆動力出力軸87と平行な軸線を有しつつ該駆動力出力軸87とは軸方向にオフセットした位置に配置されて内燃機関Eから回転動力が入力される第1および第2メイン軸69,70を備え、第1および第2メイン軸69,70を回転自在に支持するクランクケース52と、前記駆動力出力軸87を回転自在に支持する出力軸支持部110を有する副変速機ケース58とが、前記出力軸支持部110を前記クランクケース52よりも右側方に突出させるように隣接して配置され、前記副変速機ケース58を協働して構成する第1および第2ケース部材67,68間に、前記駆動力出力軸87の少なくとも一端部(この実施の形態では後端部)の前記出力軸支持部110からの突出部の上方に配置されるようにしたブリーザ室115が形成されるので、ブリーザ室115の形成によって第1および第2ケース部材67,68の結合部を補強することが可能であり、副変速機ケース58の機能集約による軽量化を図ることができる。しかも駆動力出力軸87の後端部の出力軸支持部110からの突出部の上方にブリーザ室115が配置されるので、駆動力出力軸87の後端部および前記出力軸支持部110間に設けられるオイルシール112側に、上方から落下した異物が侵入することを防止して、オイルシール112の保護を図ることができる。
また前記第2ケース部材67が、前記クランクケース52からの前記出力軸支持部110の突出方向すなわち右側方に臨む側壁67aと、該側壁67aから前記右側方に突出するようにして一体に突設されて前記出力軸支持部110を前記第2ケース部材68と協働して構成する突出部67bとを有し、前記ブリーザ室115の一部を形成するようにして前記第2ケース部材68と反対側に膨らんだ膨出部116が、前記側壁67aに一体に連なるようにして前記突出部67bに一体に設けられるので、前記側壁26aへの前記突出部26bの連設部を膨出部161で補強することができる。
また前記第1および前記第2ケース部材67,68が、前記駆動力出力軸87の軸線方向に分割可能として相互に結合され、前記第2ケース部材68に、前記駆動力出力軸87を側方から覆うようにして該駆動力出力軸87の軸線方向に延びる筒状部68bが一体に形成され、第1ケース部材67が内燃機関Eの機関本体38のクランクケース52に結合されるので、副変速機ケース58のうち駆動力出力軸87を支持するようにしてクランクケース52よりも側方に突出した部分を機関本体38から独立させた構造として、副変速機ケース58のうち駆動力出力軸87を支持する出力軸支持部110内での油面の安定化を図ることができ、しかも機関本体38から独立した副変速機ケース58をブリーザ室115の形成によって補強するので、副変速機ケース58を補強しつつ、駆動力出力軸87を機関本体38から離隔した位置に配置することができる。
また前記ブリーザ室115内の流路をラビリンス状とするための仕切り壁119,120が、前記第1および前記第2ケース部材67,68にそれぞれ一体に突設されるので、ブリーザ室115を複数の仕切り壁119,120で補強して、副変速機ケース58のブリーザ室115による補強効果をより高めることができる。
また前記クランクケース52で回転自在に支持されるクランク軸39を車両前後方向に指向させるとともに、前記クランクケース52の側方を通るプロペラ軸65,66に連結されるようにして前記駆動力出力軸87を車両前後方向に指向させた姿勢で、パワーユニットPの前記クランクケース52が4輪車両の前後方向中央部に搭載されるので、クランクケース52の小型化および分解組立が容易となる。
さらに前記4輪車両が前輪WFおよび後輪WRを駆動する4輪駆動車両であり、前記クランクケース52の側方を通る前輪用および後輪用プロペラ軸65,66に、前記駆動力出力軸87の両端部が連結されるので、パワーユニットPが前輪用および後輪用プロペラ軸65,66から受ける反力をより小さくし、パワーユニットPの振動を低減することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。