JP2016069254A - ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子 - Google Patents
ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】質量%表示で、SiO2とB2O3との合計含有量が20〜35%、La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の合計含有量が50〜70%、La2O3含有量が37〜69%、Gd2O3含有量が0〜3%、Y2O3含有量が3〜30%、Yb2O3含有量が0%以上2%未満、ZrO2含有量が2〜15%、TiO2、Nb2O5およびTa2O5の合計含有量が1〜6%、ZnO含有量が0〜4%、WO3含有量が0〜2%、であり、質量比ZnO/Nb2O5が0〜1.0の範囲であり、ただしNb2O5を必須成分として含み、屈折率ndが1.790〜1.830の範囲であり、かつアッベ数νdが45〜48の範囲であるガラス。
【選択図】なし
Description
SiO2とB2O3との合計含有量が20〜35%、
La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の合計含有量が50〜70%、
La2O3含有量が37〜69%、
Gd2O3含有量が0〜3%、
Y2O3含有量が3〜30%、
Yb2O3含有量が0%以上2%未満、
ZrO2含有量が2〜15%、
TiO2、Nb2O5およびTa2O5の合計含有量が1〜6%、
ZnO含有量が0〜4%、
WO3含有量が0〜2%、
であり、
質量比ZnO/Nb2O5が0〜1.0の範囲であり、ただしNb2O5を必須成分として含み、
屈折率ndが1.790〜1.830の範囲であり、かつアッベ数νdが45〜48の範囲であるガラス(以下、「ガラスA」と記載する。)、
に関する。
SiO2とB2O3との合計含有量が20〜35%、
La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の合計含有量が50〜70%、
La2O3含有量が37〜69%、
Gd2O3含有量が0〜3%、
Y2O3含有量が3%以上12%未満、
Yb2O3が0%以上2%未満、
ZrO2含有量が2〜15%、
TiO2、Nb2O5およびTa2O5の合計含有量が1〜6%、
ZnO含有量が0〜4%、
WO3含有量が0〜2%、
であり、
質量比ZnO/Nb2O5が0〜5.0の範囲であり、ただしNb2O5を必須成分として含み、
屈折率ndが1.790〜1.830の範囲であり、かつアッベ数νdが45〜48の範囲であるガラス(以下、「ガラスB」と記載する。)、
に関する。
本発明の一態様にかかるガラスは、上述のガラスAおよびBを包含する。以下、それらの詳細について説明する。特記しない限り、下記記載は、ガラスAおよびBの両ガラスに適用される。
本発明におけるガラス組成は、例えばICP−AES(Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry)などの方法により定量することができる。ICP−AESにより求められる分析値は、分析値の±5%程度の測定誤差を含んでいることがある。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%または含まないもしくは導入しないとは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分の含有量が不純物レベル程度以下であることを指す。
ガラスA、Bでは、Nb2O5含有量に対するZnO含有量の質量比ZnO/Nb2O5がそれぞれ上記範囲である。以下、質量比ZnO/Nb2O5を規定する理由を説明する。
ZnOはアッベ数νdを変化させることができ、所望の光学特性(屈折率nd、アッベ数νd)を得るためには有用な成分である。ただし、ZnOの含有量を増やしていくと、ガラスの熱的安定性が低下する傾向を示す。
一方、Nb2O5はZnO同様、アッベvdを変化させることができ、更にガラスの熱的安定性を向上させ、ガラスを失透しにくくすることができる成分である。
そこで、質量比ZnO/Nb2O5を調整することにより、所望の光学特性を得つつ熱的安定性を維持することが可能になる。ガラスの熱的安定性は、質量比ZnO/Nb2O5を小さくするほうが向上する、すなわち、失透しにくくなる傾向がある。ただし、ガラスの熱的安定性についてはY2O3の含有量も考慮すべきである。Y2O3含有量は、ガラスAにおいて3〜30%の範囲であり、一方、ガラスBにおいては3%以上12%未満とガラスAよりも上限値が低い。Y2O3の導入によりガラスの熱的安定性を向上させることができるが、多量の導入によりガラスの熱的安定性は低下傾向を示す。したがって、Y2O3含有量の上限値がガラスBよりも高いガラスAにおいては、ガラスの熱的安定性を維持すべく質量比ZnO/Nb2O5の上限値はガラスBよりも低い。詳しくは、ガラスAにおける質量比ZnO/Nb2O5は、0〜1.0の範囲である。これに対し、Y2O3含有量の上限値がガラスAよりも低いガラスBにおいては、質量比ZnO/Nb2O5の上限値はガラスAよりも高い。詳しくは、ガラスBにおける質量比ZnO/Nb2O5は、0〜5.0の範囲である。
このようにガラスA、Bはいずれも、質量比ZnO/Nb2O5とY2O3含有量の調整により所望の光学特性と熱的安定性の改善との両立を可能としたガラスである。
ガラスA、Bにおける質量比ZnO/Nb2O5、Y2O3含有量の好ましい範囲等の詳細は、後述する。
アッベ数を減少させずに、高屈折率を維持する上で、SiO2とB2O3との合計含有量に対するSiO2の含有量の質量比(SiO2/(SiO2+B2O3))が0.90以下であることが好ましく、0.89以下であることが好ましく、0.88以下であることがさらに好ましい。質量比(SiO2/(SiO2+B2O3))を上記範囲にすることにより、熔融ガラスを成形するときの粘度を高め、成形しやすくすることもできる。
一方、ガラスの熱的安定性、熔融性を維持する上で、質量比(SiO2/(SiO2+B2O3))を0.4以上にすることが好ましく、0.5以上にすることがより好ましく、0.6以上にすることがさらに好ましい。
また、Gd2O3の含有量を、La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の含有量の合計(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)に対するGd2O3の含有量の質量比(Gd2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))により定めることもできる。GdはYbとともに、LaやYよりも原子量が大きく、ガラスの比重を増加させやすい。また、ガラスを安定的に供給する上でも、Gdの含有量は削減すべきである。以上の観点から、質量比(Gd2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を0〜0.05にすることが好ましく、0〜0.03にすることがより好ましく、0〜0.02にすることがさらに好ましく、0〜0.01にすることが一層好ましい。質量比(Gd2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を0にすることもできる。
そこでガラスA、Bでは、Gd2O3の含有量を上記範囲に抑えつつ、ガラスの熱的安定性を維持し、所望の光学特性を得るために、La2O3含有量を37%以上にする。またガラスの熱的安定性を維持する上で、La2O3含有量を69%以下とする。したがって、ガラスA、Bにおいて、La2O3含有量の範囲を37〜69%とする。La2O3の含有量の好ましい下限は40%、より好ましい下限は41%、さらに好ましい下限は42%、一層好ましい下限は43%であり、好ましい上限は60%、より好ましい上限は55%、さらに好ましい上限は50%である。
La2O3の含有量を、La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の含有量の合計(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)に対するLa2O3の含有量の質量比(La2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))によって定めることもできる。上記の理由から、質量比(La2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を0.55以上にすることが好ましい。一方、La2O3、Gd2O3、Y2O3、Yb2O3のうち、La2O3のみを含有するガラスは、熱的安定性が低下しやすい。したがって、熱的安定性を維持するために、質量比(La2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を0.95以下にすることが好ましい。上記の理由より、質量比(La2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))のより好ましい下限は0.60であり、さらに好ましい下限は0.65であり、一層好ましい下限は0.70であり、より一層好ましい下限は0.75である。また、質量比(La2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))のより好ましい上限は0.91、さらに好ましい上限は0.88、一層好ましい上限は0.85である。質量比(La2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を上記好ましい範囲にすることにより、近赤外線領域に吸収を有するYb2O3の含有量が制限され、近赤外線領域においても高い透過率を有するガラスを得ることができる。
ガラスAにおけるY2O3の含有量の好ましい下限は4%、より好ましい下限は5%、さらに好ましい下限は7%、一層好ましい下限は9%であり、好ましい上限は25%、より好ましい上限は20%、さらに好ましい上限は15%である。
ガラスBにおけるY2O3の含有量の好ましい下限は4%、より好ましい下限は5%、さらに好ましい下限は7%、一層好ましい下限は9%であり、好ましい上限は11.0%、より好ましい上限は10.5%、さらに好ましい上限は10.0%である。
Y2O3の含有量を、La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の含有量の合計(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)に対するY2O3の含有量の質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))により定めることができる。ガラスの熱的安定性を改善する上から、質量比(La2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を0.05以上にすることが好ましく、0.45以下にすることが好ましい。さらに、上記の理由から、質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))のより好ましい下限は0.09であり、さらに好ましい下限は0.15であり、一層好ましい下限は0.18であり、質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))のより好ましい上限は0.40、さらに好ましい上限は0.35、一層好ましい上限は0.30、より一層好ましい上限は0.25である。質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を上記好ましい範囲にすることにより、近赤外線領域に吸収を有するYb2O3の含有量が制限され、近赤外線領域においても高い透過率を有するガラスを得ることができる。
Yb2O3の含有量は、La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の含有量の合計(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)に対するYb2O3の含有量の質量比(Yb2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))によって定めることもできる。上記理由により、質量比(Yb2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))の好ましい範囲は0〜0.05、より好ましい範囲は0〜0.03、さらに好ましい範囲は0〜0.02、一層好ましい範囲は0〜0.01である。質量比(Yb2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を0としてもよい。
ガラスの熱的安定性を維持しつつ、所要の屈折率とアッベ数を有するガラスを作製する上で、SiO2とB2O3の合計含有量に対するLa2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の合計含有量の質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)/(SiO2+B2O3))が1.83以上であることが好ましく、1.84以上であることがより好ましく、1.85以上であることがさらに好ましい。ガラスの熱的安定性、熔融性を維持する上で、質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)/(SiO2+B2O3))が3.0以下であることが好ましく、2.7以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましい。
ガラスの熱的安定性を維持しつつ、所要の屈折率とアッベ数を有するガラスを作製する上で、SiO2とB2O3の合計含有量に対するLa2O3、Gd2O3、Y2O3、Yb2O3、TiO2、Nb2O5およびTa2O5の合計含有量の質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3+TiO2+Nb2O5+Ta2O5)/(SiO2+B2O3))が1.95以上であることが好ましく、1.96以上であることがより好ましく、1.97以上であることがさらに好ましい。ガラスの熱的安定性、熔融性を維持する上で、質量比((La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3+TiO2+Nb2O5+Ta2O5)/(SiO2+B2O3))が3以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましく、2.7以下であることがさらに好ましい。
また、環境影響に配慮し、As、Pb、U、Th、Te、Cdも導入しないことが好ましい。
さらに、ガラスの優れた光線透過性を活かす上から、Cu、Cr、V、Fe、Ni、Coなどの着色の要因となる物質を導入しないことが好ましい。
ガラスA、Bは、ともに光学ガラスとして好ましい。
(屈折率nd、アッベ数νd)
ガラスA、Bは、先に記載した光学系を構成する光学素子材料としての有用性、詳しくは、色収差補正、光学系の高機能化などの観点から、屈折率ndが1.790〜1.830の範囲である。屈折率ndの下限は、好ましくは1.795であり、より好ましくは1.800である。屈折率ndの上限は、好ましくは1.820であり、より好ましくは1.815である。
また、同様の観点から、ガラスA、Bのアッベ数νdは45〜48の範囲である。アッベ数νdの下限は、好ましくは45.5、より好ましくは46.0である。アッベ数νdの上限は、好ましくは47.0、より好ましくは46.8である。
nd>2.590−0.017×νd ・・・(1)
nd>2.585−0.017×νd ・・・(2)
nd>2.580−0.017×νd ・・・(3)
ガラスA、Bは、先に説明したガラス組成調整により、接合レンズの作製に好適な吸収特性を備えることができる。そのような吸収特性は、着色度λ5により評価することができる。着色度λ5とは、紫外域から可視域にかけて、厚さ10mmのガラスの分光透過率(表面反射損失を含む)が5%となる波長を表す。後述の実施例に示すλ5は、280〜700nmの波長域において測定された値である。分光透過率とは、例えばより詳しくは、10.0±0.1mmの厚さに研磨された互いに平行な面を有するガラス試料を用い、上記研磨された面に対して垂直方向から光を入射して得られる分光透過率、すなわち、上記ガラス試料に入射する光の強度をIin、上記ガラス試料を透過した光の強度をIoutとしたときのIout/Iinのことである。
着色度λ5によれば、分光透過率の短波長側の吸収端を定量的に評価することができる。前述の通り、接合レンズ作製のために光学素子同士を紫外線硬化型接着剤により接合する際、光学素子を通して接着剤に紫外線を照射し接着剤を硬化させることが行われる。効率よく紫外線硬化型接着剤の硬化を行う上から、分光透過率の短波長側の吸収端が短い波長域にあることが好ましい。この短波長側の吸収端を定量的に評価する指標として、着色度λ5を用いることができる。ガラスA、Bのλ5は、335nm以下であることが好ましく、333nm以下であることがより好ましく、330nm以下であることがさらに好ましく、325nm以下であることが一層好ましい。λ5の下限は、一例として、300nmを目安とすることができるが、低いほど好ましく特に限定されるものではない。
一方、ガラスの着色度の指標としては、着色度λ70も挙げられる。λ70は、λ5について記載した方法で測定される分光透過率が70%となる波長を表す。ガラスA、Bのλ70は、好ましくは390nm以下、より好ましくは380nm以下、さらに好ましくは375nm以下である。λ70の下限は、一例として、340nmを目安とすることができるが、低いほど好ましく特に限定されるものではない。
色収差補正の観点から、ガラスA、Bは、アッベ数νdを固定したとき、部分分散比が小さいガラスであることが好ましい。
ここで、部分分散比Pg,Fは、g線、F線、c線における各屈折率ng、nF、ncを用いて、(ng−nF)/(nF−nc)と表される。
高次の色収差補正に好適なガラスを提供する上から、ガラスA、Bの部分分散比Pg,fは、0.554以上であることが好ましく、0.555以上であることがより好ましく、0.566以下であることが好ましく、0.563以下であることがより好ましい。
ガラスA、Bをオートフォーカス機能を有するレンズに用いる場合など、レンズの質量が大きいと、フォーカシング時の消費電力が増加し、電池の消耗が早まる。レンズを軽量化するためには、ガラスの比重を低下させるか、レンズを薄肉化することが考えられる。レンズのパワーを維持しつつ、薄肉化するためには、ガラスの屈折率を高めればよい。しかし、単に屈折率を高めると、比重も増大してしまう。そのため、比重と屈折率の両方を考慮して、使用するガラスを選択することが好ましい。光学素子軽量化の指標としては、比重を屈折率ndで割った値(比重/nd)を用いることができる。ガラスA、Bは、例えば、好ましくは比重/ndを2.56以下にすることができる。比重/ndのより好ましい上限は2.53、さらに好ましい上限は2.50、いっそう好ましい上限は2.48である。一方、ガラス安定性の観点からは、比重/ndを2.00以上にすることが好ましい。
また、比重は、4.7以下であることが好ましく、4.6以下であることがより好ましく、4.5以下であることがさらに好ましい。また、比重を低くするほど後述する液相温度は低下する傾向がある。この点からは、比重は4.0以上であることが好ましく、 4.2以上であることがより好ましい。
アニール温度、プレス成形時のガラスの温度が高くなり過ぎると、アニール炉やプレス成形型の消耗を招く。アニール炉やプレス成形型への熱的負荷を軽減する上から、ガラス転移温度Tgは720℃以下であることが好ましく、710℃以下であることがより好ましい。
ガラス転移温度Tgが低すぎると、研削や研磨などの機械加工における加工性が低下傾向を示す。したがって、加工性を維持する上から、ガラス転移温度Tgを640℃以上にすることが好ましく、650℃以上にすることがより好ましく、660℃以上にすることがさらに好ましい。
ガラスの熱的安定性の指標の一つに液相温度がある。ガラス製造時の結晶化、失透を抑制する上から、液相温度LTが1300℃以下であることが好ましく、1250℃以下であることがより好ましい。液相温度LTの下限は、一例として1100℃以上であるが、低いことが好ましく特に限定されるものではない。
ガラスA、Bは、目的のガラス組成が得られるように、原料である酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物などを秤量、調合し、十分に混合して混合バッチとし、熔融容器内で加熱、熔融し、脱泡、攪拌を行い均質かつ泡を含まない熔融ガラスを作り、これを成形することによって得ることができる。具体的には公知の熔融法を用いて作ることができる。ガラスA、Bは、上記光学特性を有する高屈折率低分散ガラスでありながら、熱的安定性が優れているため、公知の熔融法、成形法を用いて、安定的に製造することができる。
本発明の他の一態様は、
上述のガラスからなるプレス成形用ガラス素材;
上述のガラスからなる光学素子ブランク、
に関する。
上述のガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法;
上述のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法;
上述のガラスを光学素子ブランクに成形する工程を備える光学素子ブランクの製造方法、
も提供される。
本発明の他の一態様は、
上述のガラスからなる光学素子
に関する。
上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法、
も提供される。
表1に示す組成を有するガラスが得られるように、原料として炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物、ホウ酸などの原料粉末を適宜用いた。各原料粉末を秤量して十分混合し、調合原料とした。この調合原料を白金製坩堝に入れて1350〜1400℃で、2〜3時間、加熱、熔融し、清澄、撹拌して均質な熔融ガラスを得た。この熔融ガラスを予熱した鋳型に流し込んで急冷し、ガラス転移温度近傍の温度で2時間保持した後、徐冷して表1に示す組成を有する各ガラスを得た。いずれのガラス中にも結晶の析出は認められなかった。また、いずれのガラスとも均質であり、目視により着色は認められなかった。
(1)屈折率ndおよびアッベ数νd
1時間あたり30℃の降温速度で冷却したガラスについて測定した。
(2)ガラス転移温度Tg
示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、昇温速度10℃/分の条件下で測定した。
(3)液相温度LT
ガラスを所定温度に加熱された炉内に入れて2時間保持し、冷却後、ガラス内部を100倍の光学顕微鏡で観察し、結晶の有無から液相温度を決定した。
(4)比重
アルキメデス法により測定した。
(5)着色度λ5、λ70
互いに対向する2つの光学研磨された平面を有する厚さ10±0.1mmのガラス試料を用い、分光光度計により、研磨された面に対して垂直方向から強度Iinの光を入射し、ガラス試料を透過した光の強度Ioutを測定し、分光透過率Iout/Iinを算出し、分光透過率が5%になる波長をλ5、分光透過率が70%になる波長をλ70とした。
(6)部分分散比Pg,F
屈折率nF、nc、ngを測定し、測定結果から算出した。
実施例1で得られた各種ガラスからプレス成形用ガラス塊(ガラスゴブ)を作製した。このガラス塊を大気中で加熱、軟化し、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。
実施例1において作製した熔融ガラスを所望量、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。
実施例1において作製した熔融ガラスを固化して作製したガラス塊(光学素子ブランク)アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各種ガラスからなる球面レンズを作製した。
実施例2〜4において作製した球面レンズを、他種のガラスからなる球面レンズと貼り合せ、接合レンズを作製した。実施例2〜4において作製した球面レンズの接合面は凸面、他種のガラスからなる球面レンズの接合面は凹面であった。上記2つの接合面は、互いに曲率半径の絶対値が等しくなるように作製した。接合面に光学素子接合用の紫外線硬化型接着剤を塗布し、2つのレンズを接合面同士で貼り合せた。その後、実施例2〜4において作製した球面レンズを通して、接合面に塗布した接着剤に紫外線を照射し、接着剤を固化させた。
上記のようにして接合レンズを作製した。接合レンズの接合強度は充分高く、光学性能も充分なレベルのものであった。
特許文献3(特開昭59−195553号公報)の実施例19として開示されているガラス(以下、ガラスIと呼ぶ。)を再現した。上記方法によりλ5を測定したところ、337nmであった。
ガラスIからなる球面レンズを作製し、実施例5と同様にして接合レンズの作製を試みた。接合面に塗布した紫外線硬化型接着剤に、ガラスIからなるレンズを通して紫外線を照射したが、ガラスIの紫外線透過率が低いため、接着剤を充分に硬化することができなかった。
特許文献4(特開昭55−116641号公報)の実施例11として開示されているガラスの再現を試みた。坩堝内で熔融物を冷却・攪拌中に粒状の結晶が析出し、ガラスを得ることができなかった。
特許文献5(特開昭56−005345号公報)の実施例3として開示されているガラスの再現を試みた。坩堝内で熔融物を冷却・攪拌中に結晶化し、ガラスを得ることができなかった。
特許文献6(特開2005−239544号公報)の実施例2として開示されているガラスの再現を試みた。坩堝内で熔融物を冷却・攪拌中に結晶化し、ガラスを得ることができなかった。
Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量が0〜5質量%の範囲である;
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が0〜5質量%の範囲である。
例えば、上述の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかるガラスを得ることができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。
SiO2とB2O3との合計含有量が20〜35%、
La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の合計含有量が50〜70%、
La2O3含有量が37〜69%、
Gd2O3含有量が0〜3%、
Y2O3含有量が3%以上12%未満、
Yb2O3 含有量が0%以上2%未満、
ZrO2含有量が2〜15%、
TiO2、Nb2O5およびTa2O5の合計含有量が1〜6%、
ZnO含有量が0〜4%、
WO3含有量が0〜2%、
であり、
質量比ZnO/Nb2O5が0〜5.0の範囲であり、ただしNb2O5を必須成分として含み、
屈折率ndが1.790〜1.830の範囲であり、かつアッベ数νdが45〜48の範囲であるガラス(以下、「ガラスB」と記載する。)、
に関する。
ガラスA、Bでは、Nb2O5含有量に対するZnO含有量の質量比ZnO/Nb2O5がそれぞれ上記範囲である。以下、質量比ZnO/Nb2O5を規定する理由を説明する。
ZnOはアッベ数νdを変化させることができ、所望の光学特性(屈折率nd、アッベ数νd)を得るためには有用な成分である。ただし、ZnOの含有量を増やしていくと、ガラスの熱的安定性が低下する傾向を示す。
一方、Nb2O5はZnO同様、アッベ数vdを変化させることができ、更にガラスの熱的安定性を向上させ、ガラスを失透しにくくすることができる成分である。
そこで、質量比ZnO/Nb2O5を調整することにより、所望の光学特性を得つつ熱的安定性を維持することが可能になる。ガラスの熱的安定性は、質量比ZnO/Nb2O5を小さくするほうが向上する、すなわち、失透しにくくなる傾向がある。ただし、ガラスの熱的安定性についてはY2O3の含有量も考慮すべきである。Y2O3含有量は、ガラスAにおいて3〜30%の範囲であり、一方、ガラスBにおいては3%以上12%未満とガラスAよりも上限値が低い。Y2O3の導入によりガラスの熱的安定性を向上させることができるが、多量の導入によりガラスの熱的安定性は低下傾向を示す。したがって、Y2O3含有量の上限値がガラスBよりも高いガラスAにおいては、ガラスの熱的安定性を維持すべく質量比ZnO/Nb2O5の上限値はガラスBよりも低い。詳しくは、ガラスAにおける質量比ZnO/Nb2O5は、0〜1.0の範囲である。これに対し、Y2O3含有量の上限値がガラスAよりも低いガラスBにおいては、質量比ZnO/Nb2O5の上限値はガラスAよりも高い。詳しくは、ガラスBにおける質量比ZnO/Nb2O5は、0〜5.0の範囲である。
このようにガラスA、Bはいずれも、質量比ZnO/Nb2O5とY2O3含有量の調整により所望の光学特性と熱的安定性の改善との両立を可能としたガラスである。
ガラスA、Bにおける質量比ZnO/Nb2O5、Y2O3含有量の好ましい範囲等の詳細は、後述する。
ガラスAにおけるY2O3の含有量の好ましい下限は4%、より好ましい下限は5%、さらに好ましい下限は7%、一層好ましい下限は9%であり、好ましい上限は25%、より好ましい上限は20%、さらに好ましい上限は15%である。
ガラスBにおけるY2O3の含有量の好ましい下限は4%、より好ましい下限は5%、さらに好ましい下限は7%、一層好ましい下限は9%であり、好ましい上限は11.0%、より好ましい上限は10.5%、さらに好ましい上限は10.0%である。
Y2O3の含有量を、La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の含有量の合計(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)に対するY2O3の含有量の質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))により定めることができる。ガラスの熱的安定性を改善する上から、質量比(Y 2 O 3 /(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を0.05以上にすることが好ましく、0.45以下にすることが好ましい。さらに、上記の理由から、質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))のより好ましい下限は0.09であり、さらに好ましい下限は0.15であり、一層好ましい下限は0.18であり、質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))のより好ましい上限は0.40、さらに好ましい上限は0.35、一層好ましい上限は0.30、より一層好ましい上限は0.25である。質量比(Y2O3/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3))を上記好ましい範囲にすることにより、近赤外線領域に吸収を有するYb2O3の含有量が制限され、近赤外線領域においても高い透過率を有するガラスを得ることができる。
色収差補正の観点から、ガラスA、Bは、アッベ数νdを固定したとき、部分分散比が小さいガラスであることが好ましい。
ここで、部分分散比Pg,Fは、g線、F線、c線における各屈折率ng、nF、ncを用いて、(ng−nF)/(nF−nc)と表される。
高次の色収差補正に好適なガラスを提供する上から、ガラスA、Bの部分分散比Pg,Fは、0.554以上であることが好ましく、0.555以上であることがより好ましく、0.566以下であることが好ましく、0.563以下であることがより好ましい。
Claims (9)
- 質量%表示で、
SiO2とB2O3との合計含有量が20〜35%、
La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の合計含有量が50〜70%、
La2O3含有量が37〜69%、
Gd2O3含有量が0〜3%、
Y2O3含有量が3〜30%、
Yb2O3含有量が0%以上2%未満、
ZrO2含有量が2〜15%、
TiO2、Nb2O5およびTa2O5の合計含有量が1〜6%、
ZnO含有量が0〜4%、
WO3含有量が0〜2%、
であり、
質量比ZnO/Nb2O5が0〜1.0の範囲であり、ただしNb2O5を必須成分として含み、
屈折率ndが1.790〜1.830の範囲であり、かつアッベ数νdが45〜48の範囲であるガラス。 - 質量%表示で、
SiO2とB2O3との合計含有量が20〜35%、
La2O3、Gd2O3、Y2O3およびYb2O3の合計含有量が50〜70%、
La2O3含有量が37〜69%、
Gd2O3含有量が0〜3%、
Y2O3含有量が3%以上12%未満、
Yb2O3が0%以上2%未満、
ZrO2含有量が2〜15%、
TiO2、Nb2O5およびTa2O5の合計含有量が1〜6%、
ZnO含有量が0〜4%、
WO3含有量が0〜2%、
であり、
質量比ZnO/Nb2O5が0〜5.0の範囲であり、ただしNb2O5を必須成分として含み、
屈折率ndが1.790〜1.830の範囲であり、かつアッベ数νdが45〜48の範囲であるガラス。 - Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量が0〜5質量%の範囲である請求項1または2に記載のガラス。
- MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量が0〜5質量%の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス。
- 着色度λ5が335nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス。
- 比重を屈折率ndで除した値が2.00〜2.56の範囲である請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラスからなるプレス成形用ガラス素材。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子ブランク。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子。
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