JP2016068281A - 液体吐出装置の製造方法、及び、液体吐出装置 - Google Patents

液体吐出装置の製造方法、及び、液体吐出装置 Download PDF

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Abstract

【課題】流路基板となる単結晶基板を研磨した後に、その研磨面に対して異方性エッチングを行う際のエッチング精度の低下を抑制すること、及び、エッチング後の研磨面と別の流路部材との良好な接着性を確保すること。
【解決手段】流路基板20となるシリコン単結晶基板70の研磨面61に生成された変質層60を、フッ素を含む除去媒体を用いて除去する。ここで、シリコン単結晶基板70の研磨面61のうちの、圧力室26が形成される領域A1の変質層60は除去するが、ノズルプレート21と接合される領域A2の変質層60は残す。
【選択図】図7

Description

本発明は、液体を吐出する液体吐出装置に関する。
特許文献1には、液体吐出装置として、インクジェットヘッドが開示されている。このインクジェットヘッドは、シリコン単結晶基板からなる流路形成基板と、流路形成基板に接合されたノズルプレートと、流路形成基板のノズルプレートとは反対側に設けられた複数の圧電素子を有する。流路形成基板には、複数の圧力室等のインク流路が形成されており、複数の圧力室は弾性膜によって覆われている。ノズルプレートには、複数の圧力室とそれぞれ連通する複数のノズルが形成されている。複数の圧電素子は、流路形成基板の弾性膜の上に、複数の圧力室に対応して配置されている。各圧電素子は、圧電膜と、圧電膜に対して流路形成基板側(下側)に配置された下電極膜と、圧電膜に対して流路形成基板と反対側(上側)に配置された上電極膜を含む。
このインクジェットヘッドは、以下の工程で製造される。まず、流路形成基板となるシリコン単結晶基板を熱酸化させて、酸化シリコンからなる弾性膜を形成する。この弾性膜の上に、圧電素子の下電極膜、圧電膜、上電極膜をそれぞれ成膜により形成する。次に、シリコン単結晶基板の、圧電素子が配置された弾性膜とは反対側の面を研磨し、さらに、その研磨面をフッ硝酸でウェットエッチングして、基板を所定の厚みにする。その後、シリコン単結晶基板に対して、研磨面側から異方性エッチングを行うことにより、基板に複数の圧力室等の流路を形成する。最後に、基板の研磨面に、複数のノズルが形成されたノズルプレートを接合する。
特開2008−1038号公報
特許文献1のインクジェットヘッドでは、シリコン単結晶基板への流路形成時に、単結晶基板に対して異方性エッチングを行っている。この異方性エッチングでは、シリコン単結晶基板の特定の方向に沿ってシリコンのエッチングを進行させることにより、所望の形状の流路を形成する。この異方性エッチングを行うためには、シリコン単結晶基板の、エッチングを行う面における結晶方位が特定の方向(例えば(110))であることが必要である。
しかし、シリコン単結晶基板を機械的に研磨した場合、その研磨面近傍の結晶構造が乱れて、研磨面には、原子配列が不規則になった変質層が形成される。そして、研磨された面に対して異方性エッチングを行う場合、研磨面に上記の変質層が残っていると、変質層においては、等方的にエッチングが進行してしまう。これにより、エッチング精度が低下し、所望の形状の流路を形成することが難しくなる。
この点に関し、特許文献1では、シリコン単結晶基板を研磨した後に、さらに、フッ硝酸によるウェットエッチングを行っている。このフッ硝酸によるエッチングによって、研磨時に生成された上記の変質層を除去することができる。しかしながら、フッ硝酸のエッチングによって、研磨面にはフッ化物の層が形成されて撥液性が高くなってしまう。撥液性が高くなると、その後に、接着剤でノズルプレートを接合する際に、接着面において接着剤が均一に広がりにくくなるため、接着性が悪くなる。
本発明の目的は、流路基板となる単結晶基板を研磨した後に、その研磨面に対して異方性エッチングを行う際のエッチング精度の低下を抑制すること、及び、エッチング後の研磨面と別の流路部材との良好な接着性を確保することである。
課題を解決するための手段及び発明の効果
第1の発明の液体吐出装置の製造方法は、単結晶基板からなり、第1流路が形成された第1流路部材と、前記第1流路に連通する第2流路が形成され、前記第1流路部材に接合される第2流路部材と、前記第1流路部材の前記第2流路部材とは反対側に配置され、成膜によって形成された第1電極、圧電膜、及び、第2電極とを備えた圧電素子と、を備えた液体吐出装置の製造方法であって、
前記第1流路部材となる前記単結晶基板の、前記圧電素子とは反対側の面を研磨する、研磨工程と、前記研磨工程によって、前記単結晶基板の研磨された研磨面に生成された変質層を、フッ素を含む除去媒体を用いて除去する、変質層除去工程と、前記変質層除去工程の後に、前記単結晶基板の前記研磨面から異方性エッチングを行って、前記単結晶基板に前記第1流路を形成する、流路形成工程と、前記流路形成工程の後に、前記第1流路部材の前記研磨面に前記第2流路部材を接着剤で接合する接合工程と、を備え、
前記変質層除去工程において、前記単結晶基板の前記研磨面のうちの、前記流路形成工程でエッチングされる第1領域の前記変質層は除去し、前記単結晶基板の前記研磨面のうちの、前記第2流路部材と接合される第2領域の少なくとも一部の前記変質層を残すことを特徴とするものである。
本発明では、第1流路部材となる単結晶基板を研磨してから、その研磨面に生成された変質層を、フッ素を含む除去媒体を用いて除去する。但し、この変質層の除去工程では、単結晶基板の研磨面のうちの、その後の工程で異方性エッチングが行われる第1領域の変質層は除去するが、第2流路部材と接合される第2領域の変質層は除去せずに残す。第1領域の変質層を除去することにより、変質層が存在することによるエッチング精度の低下を防止する。一方で、第2流路部材と接合される第2領域の変質層は除去せずに残すことで、フッ素を含む除去媒体を用いた変質層の除去によって、第2領域の撥液性が高くなることを防止する。これにより、第1流路部材の第2領域と第2流路部材との間の接着性が良好なものとなる。
第2の発明の液体吐出装置の製造方法は、前記第1の発明において、前記変質層除去工程において、前記単結晶基板の前記研磨面の、前記流路形成工程でエッチングされる前記第1領域の前記変質層に加えて、前記第2領域のうちの、前記第1領域を取り囲む領域の前記変質層も除去することを特徴とするものである。
本発明では、単結晶基板の研磨面のうちの、エッチングされる第1領域だけでなく、第2領域のうちの第1領域を取り囲む部分の変質層も除去する。即ち、フッ素を含む除去媒体を用いて変質層を除去したときに、除去した領域の撥液性が高くなることを利用し、第1領域を取り囲む領域の撥液性を意図的に高める。これにより、研磨面に第2流路部材を接着剤で接合するときに、研磨面の第1領域に形成された第1流路に、接着剤が流れ込むことが抑制される。
第3の発明の液体吐出装置の製造方法は、前記第2の発明において、前記流路形成工程において、前記単結晶基板の前記研磨面からの異方性エッチングにより、前記第1流路として、前記圧電素子によって液体に吐出圧力を付与するための圧力室を、前記研磨面と平行な方向に沿って複数並べて形成し、前記変質層除去工程において、前記研磨面の前記第2領域のうちの、前記複数の圧力室が形成される複数の前記第1領域をそれぞれ取り囲む領域の、前記変質層を除去し、前記第1流路部材の前記研磨面の前記第2領域と、前記第2流路部材の前記第2領域との接合面の、少なくとも一方に、前記複数の圧力室と並び、且つ、前記圧力室の配列方向に沿って延びる接着剤逃がし溝を形成する、溝形成工程をさらに備えることを特徴とするものである。
本発明では、第1流路部材の第1流路が、所定方向に配列される圧力室であり、各圧力室に接着剤が流入しにくくなるように、圧力室となる第1領域の周囲の変質層を除去して撥液性を高める。また、圧力室内に接着剤を流入させないためには、周囲の撥液性を高めるだけでなく、さらに、余剰の接着剤を他へ逃がすことが好ましい。しかし、圧力室の配列ピッチを狭くしようとしたときに、圧力室の間に、ある程度の幅を持った接着剤逃がし溝を形成することは難しい。そこで、本発明では、1列の圧力室列内の隣接する圧力室間には逃がし溝を形成することまではせず、圧力室を取り囲む領域の変質層を除去して撥液性を高くするにとどめる。一方で、圧力室列の傍に接着剤逃がし溝を形成することで、この逃がし溝に余剰の接着剤を逃す構成としている。これにより、1列の圧力室列内の圧力室の間に逃がし溝を形成しなくても、余剰の接着剤の圧力室への流入量を許容量以下に抑えることが容易になる。
第4の発明の液体吐出装置は、単結晶基板からなり、第1流路が形成された第1流路部材と、前記第1流路に連通する第2流路が形成され、前記第1流路部材に接合される第2流路部材と、前記第1流路部材の前記第2流路部材とは反対側に配置され、成膜によって形成された第1電極、圧電膜、及び、第2電極とを備えた圧電素子と、を備え、
前記第1流路部材の、前記第2流路部材側の面は、前記単結晶基板が研磨されてなる研磨面であり、前記第1流路部材の前記研磨面のうちの、前記第2流路部材と接合される接合領域に、研磨時に生じた変質層が残されており、前記第1流路部材の前記接合領域のうち、少なくとも前記第1流路を取り囲む周囲領域の前記変質層は除去され、前記第1流路部材の前記接合領域のうちの、前記周囲領域の撥液性が、前記周囲領域以外の領域の撥液性よりも高くなっていることを特徴とするものである。
単結晶基板からなる第1流路部材の第2流路部材側の面は、前記基板が研磨されてなる研磨面であり、この研磨面には、単結晶基板とは結晶構造が異なる変質層が生成される。前記研磨面に、第1流路を形成するための異方性エッチングを行うには、研磨面に生成された上記変質層を除去するのがよい。しかし、研磨面全域において、フッ素を含む除去媒体で変質層を除去してしまうと、研磨面全体の撥液性が高くなってしまう。そこで、本発明では、第1流路部材の研磨面のうちの、第2流路部材との接合領域には変質層が残されている。これにより、第1流路部材の前記接合領域と第2流路部材との間で、接着剤が均一に広がりやすくなる。
さらに、第1流路部材の、第2流路部材との接合領域のうち、第1流路を取り囲む周囲領域においては変質層が除去されることによって、前記周囲領域の撥液性が意図的に高められている。第1流路部材の研磨面において、第1流路の周囲領域の撥液性が高くなることにより、第1流路部材と第2流路部材とを接着剤で接合する際に、余剰の接着剤が第1流路内に流入しにくくなる。
本実施形態に係るプリンタの概略的な平面図である。 インクジェットヘッドの1つのヘッドユニットの上面図である。 図2のA部拡大図である。 図3のIV-IV線断面図である。 流路基板の、図3、図4に示されている部分の下面図である。 インクジェットヘッドの製造工程の一部を説明する図であり、(a)振動膜成膜、(b)圧電アクチュエータの形成、(c)リザーバ形成部材の接合の、各工程を示す。 インクジェットヘッドの製造工程の一部を説明する図であり、(a)研磨工程、(b)変質層除去工程、(c)流路形成工程の、各工程を示す。 インクジェットヘッドの製造工程の一部を説明する図であり、(a)接着剤逃がし溝の形成工程、(b)ノズルプレートの接合工程の、各工程を示す。 変更形態のヘッドユニットの、図4相当の断面図である。 別の変更形態のヘッドユニットの、図4相当の断面図である。
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係るプリンタの概略的な平面図である。まず、図1を参照してインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。尚、図1に示す前後左右の各方向をプリンタの「前」「後」「左」「右」と定義する。また、紙面手前側を「上」、紙面向こう側を「下」とそれぞれ定義する。以下では、前後左右上下の各方向語を適宜使用して説明する。
(プリンタの概略構成)
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、プラテン2と、キャリッジ3と、インクジェットヘッド4と、搬送機構5と、制御装置6等を備えている。
プラテン2の上面には、被記録媒体である記録用紙100が載置される。キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10,11に沿って左右方向(以下、走査方向ともいう)に往復移動可能に構成されている。キャリッジ3には無端ベルト14が連結され、キャリッジ駆動モータ15によって無端ベルト14が駆動されることで、キャリッジ3は走査方向に移動する。
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3に取り付けられており、キャリッジ3とともに走査方向に移動する。インクジェットヘッド4は、走査方向に並ぶ4つのヘッドユニット16を備えている。4つのヘッドユニット16は、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクカートリッジ17が装着されるカートリッジホルダ7と、図示しないチューブによってそれぞれ接続されている。各ヘッドユニット16は、その下面(図1の紙面向こう側の面)に形成された複数のノズル24(図2〜図4参照)を有する。各ヘッドユニット16のノズル24は、インクカートリッジ17から供給されたインクを、プラテン2に載置された記録用紙100に向けて吐出する。
搬送機構5は、前後方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18,19を有する。搬送機構5は、2つの搬送ローラ18,19によって、プラテン2に載置された記録用紙100を前方(以下、搬送方向ともいう)に搬送する。
制御装置6は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、各種制御回路を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を備える。制御装置6は、ROMに格納されたプログラムに従い、ASICにより、記録用紙100への印刷等の各種処理を実行する。例えば、印刷処理においては、制御装置6は、PC等の外部装置から入力された印刷指令に基づいて、インクジェットヘッド4やキャリッジ駆動モータ15等を制御して、記録用紙100に画像等を印刷させる。具体的には、キャリッジ3とともにインクジェットヘッド4を走査方向に移動させながらインクを吐出させるインク吐出動作と、搬送ローラ18,19によって記録用紙100を搬送方向に所定量搬送する搬送動作とを、交互に行わせる。
(インクジェットヘッドの詳細)
次に、インクジェットヘッド4の詳細構成について説明する。図2は、インクジェットヘッド4の1つのヘッドユニット16の上面図である。尚、インクジェットヘッド4の4つのヘッドユニット16は、全て同じ構成であるため、そのうちの1つについて説明を行い、他のヘッドユニット16については説明を省略する。図3は、図2のA部拡大図である。図4は、図3のIV-IV線断面図である。
図2〜図4に示すように、ヘッドユニット16は、流路基板20、ノズルプレート21、圧電アクチュエータ22、及び、リザーバ形成部材23を備えている。尚、図2では、図面の簡素化のため、流路基板20及び圧電アクチュエータ22の上方に位置する、リザーバ形成部材23は、二点鎖線で外形のみ示されている。
(流路基板)
流路基板20は、結晶面方位が(110)であるシリコン単結晶の基板である。この流路基板20は、流路形成部27と、流路形成部27に一体的に設けられた振動膜30とを有する。流路基板20の大部分を占める流路形成部27には、複数の圧力室26が形成されている。図2、図3に示すように、各圧力室26は、走査方向に長い矩形の平面形状を有する。複数の圧力室26は搬送方向に配列されて、走査方向に並ぶ2列の圧力室列28a,28bを構成している。振動膜30は、シリコンの流路基板20の一部を酸化、又は、窒化することによって形成された、二酸化シリコン(SiO2)、あるいは、窒化シリコン(SiNx)からなる膜である。この振動膜30は、流路形成部27に、複数の圧力室26を覆うように設けられている。また、振動膜30には、後述するリザーバ形成部材23内の流路と、複数の圧力室26とをそれぞれ連通させる、複数の連通孔30aが形成されている。
(ノズルプレート)
ノズルプレート21は、流路基板20の下面に接着剤64によって接合されている。このノズルプレート21には、流路基板20の複数の圧力室26とそれぞれ連通する、複数のノズル24が形成されている。図2に示すように、複数のノズル24は、複数の圧力室26と同様に搬送方向に配列され、走査方向に並ぶ2列のノズル列25a,25bを構成している。2列のノズル列25a,25bの間では、搬送方向におけるノズル24の位置が、各ノズル列25の配列ピッチPの半分(P/2)だけずれている。尚、ノズルプレート21の材質は特に限定されない。例えば、ステンレス鋼等の金属材料、シリコン、あるいは、ポリイミド等の合成樹脂材料など、様々な材質のものを採用できる。
図5は、流路基板20の、図3、図4に示されている部分の下面図である。後でも説明するが、流路基板20の下面は、シリコン単結晶基板に対して機械的な研磨が施されることによって形成された研磨面61である。図4、図5に示すように、上記の研磨の際に、流路基板20の研磨面61には、流路基板20とは結晶構造が異なる変質層60が生成される。この変質層60は、圧力室26を異方性エッチングで形成する際に悪い影響を及ぼすため、特に、研磨面61のうちの、圧力室26が形成される領域については、エッチング前に変質層60が除去される。
その一方で、エッチング前に、研磨面61のうちの、ノズルプレート21と接合される領域A2についても変質層60を除去してしまうと、後でも説明するが、変質層60の除去によって領域A2の撥液性が高くなってしまい、接着剤64による接合の観点では好ましくない。そこで、本実施形態では、流路基板20の下面の領域A2については変質層60が残されている。但し、領域A2のうちの、圧力室26を取り囲む周囲領域A2aについては、変質層60が除去されている。そして、周囲領域A2aは、ノズルプレート21との接合領域A2のうちの、変質層60が残っている他の領域と比べて撥液性が高い、高撥液部63となっている。この撥液性の高い周囲領域A2aにより、ノズルプレート21の接着時に、余剰の接着剤64が圧力室26内へ流入することが抑制されるという効果が得られる。
また、図3〜図5に示すように、流路基板20の下面の、ノズルプレート21との接合領域A2には、圧力室列28に対して左右方向に並び、且つ、圧力室26の配列方向である搬送方向に沿って延びる、接着剤逃がし溝62が形成されている。より詳細には、流路基板20の下面のうちの、2列の圧力室列28a,28bの間と、2列の圧力室列28a,28bに対して左右両側に、接着剤逃がし溝62がそれぞれ形成されている。これらの接着剤逃がし溝62により、流路基板20とノズルプレート21とを接着剤64で接合したときの、余剰の接着剤64が逃されるようになっている。
尚、図3〜図5では、流路基板20の下面に接着剤逃がし溝62が形成されているが、流路基板20と接合されるノズルプレート21の上面に、接着剤逃がし溝が形成されてもよい。あるいは、流路基板20とノズルプレート21の両方に、接着剤逃がし溝が形成されてもよい。
(圧電アクチュエータ)
圧電アクチュエータ22は、複数の圧力室26内のインクに、それぞれノズル24から吐出させるための吐出圧力を付与するものである。圧電アクチュエータ22は、流路基板20の、ノズルプレート21とは反対側に位置する、振動膜30の上面の全域に配置されている。図2〜図4に示すように、圧電アクチュエータ22は、共通電極31、複数の圧電膜32、第1保護膜34、複数の個別電極33、複数の配線35、絶縁膜36、第2保護膜37等の複数の膜が積層された構造を有する。尚、図2では、圧電膜32を覆う第1保護膜34、配線35を覆う第2保護膜37の図示は省略されている。圧電アクチュエータ22を構成する前記複数の膜は、振動膜30の上面に、公知の半導体プロセス技術によって成膜、パターニングされることによって形成される。図2〜図4に示すように、圧電アクチュエータ22の、振動膜30の複数の連通孔30aとそれぞれ重なる位置には、複数の連通孔22aが形成されている。
共通電極31は、振動膜30の上面のほぼ全域に形成され、複数の圧力室26に跨って配置されている。共通電極31の材質は特に限定されないが、例えば、白金(Pt)等で形成することができる。
複数の圧電膜32は、共通電極31の上に、複数の圧力室26にそれぞれ対応して配置されている。図3に示すように、各圧電膜32は、圧力室26よりも一回り小さい、走査方向に長い矩形の平面形状を有する。各圧電膜32は、対応する圧力室26の中央部と対向するように配置されている。圧電膜32は、例えば、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料からなる。
尚、図2、図3では、1列の圧力室列28に対応する複数の圧電膜32が互いに分離した形態が示されているが、複数の圧電膜32は、互いに連結されていてもよい。また、その場合、複数の圧電膜32が一体化されてなる圧電材料層の、複数の圧電膜32の間の位置には、それぞれスリットが形成されていてもよい。
各個別電極33は、圧電膜32よりも一回り小さい、矩形の平面形状を有する。各個別電極33は、圧電膜32の中央部の上面に形成されている。個別電極33は、例えば、白金(Pt)やイリジウム(Ir)などで形成されている。
上記の圧電膜32は、その下側(振動膜30側)に配置された共通電極31と、上側(振動膜30と反対側)に配置された個別電極33とによって挟まれている。また、圧電膜32は、厚み方向において下向き、即ち、個別電極33から共通電極31に向かう方向に分極されている。尚、図4に示すように、個別電極33、共通電極31、及び、これら2種類の電極33,31によって挟まれた圧電膜32の部分(分極処理が施された部分)によって、1つの圧力室26内のインクに圧力を付与する、1つの圧電素子38が構成されている。
図3、図4に示すように、第1保護膜34は、共通電極31、及び、複数の圧電膜32を覆うように、振動膜30の上面のほぼ全域に形成されている。但し、第1保護膜34の、各圧電膜32の中央部と重なる領域には開口部34aが形成されている。この開口部34aによって、圧電膜32の上面に形成された個別電極33が、第1保護膜34から露出している。第1保護膜34は、空気中に含まれる水分の、圧電膜32への侵入を防止ための膜であり、この第1保護膜34は、アルミナ(Al23)などの耐水性を有する材料で形成されている。
図3、図4に示すように、絶縁膜36は、流路基板20の左右方向の端部(図3、図4では右側端部)において、第1保護膜34の上に形成されている。また、この絶縁膜36の一部は、第1保護膜34を介して圧電膜32の上面に被さるように配置されている。絶縁膜36の上には、後述する複数の配線35が配置される。絶縁膜36は、複数の配線35と共通電極31との間を電気的に絶縁するためのものである。絶縁膜36の材質は特に限定されないが、例えば、二酸化シリコン(SiO2)で形成される。
絶縁膜36の上には、複数の個別電極33にそれぞれ接続された複数の配線35が形成されている。複数の配線35は、アルミニウム(Al)などの導電性材料で形成されている。図3、図4に示すように、各配線35の一端部は、第1保護膜34及び絶縁膜36を介して、圧電膜32の上面に被さるように配置され、個別電極33に接続されている。また、各配線35は、個別電極33から走査方向へ延びている。より詳細には、図2に示すように、左側に配列されている個別電極33に接続された配線35は、対応する個別電極33から左側へ延び、右側に配列された個別電極33に接続された配線35は、対応する個別電極33から右側へ延びている。
図2〜図4に示すように、流路基板20の左右両端部においては、絶縁膜36の上に、複数の駆動接点部40が搬送方向に並べて配置されている。図2に示すように、個別電極33から左方へ引き出された配線35は、流路基板20の左端部に位置する駆動接点部40と接続され、右方へ引き出された配線35は、流路基板20の右端部に位置する駆動接点部40と接続されている。また、流路基板20の左右両端部において、複数の駆動接点部40の、搬送方向における両側には、共通電極31と接続されている2つのグランド接点部41も配置されている。
第2保護膜37は、振動膜30から複数の圧電膜32にかけて、前記の複数の配線35を覆うように形成されている。この第2保護膜37は、複数の配線35の保護、及び、複数の配線35間の絶縁確保等の目的で設けられている。図3、図4に示すように、第2保護膜37は、各配線35の、個別電極33との接続部分から駆動接点部40との接続部分までを覆うように形成されている。尚、複数の駆動接点部40及びグランド接点部41は、第2保護膜37から露出している。第2保護膜37は、例えば、窒化シリコン(SiNx)等で形成されている。
図2に示すように、上述した圧電アクチュエータ22の左端部の上面、及び、右端部の上面には、配線部材である2枚のCOF(Chip On Film)50がそれぞれ接合されている。そして、図4に示すように、各COF50に形成された複数の配線55が、複数の駆動接点部40と、それぞれ電気的に接続されている。各COF50の、駆動接点部40との接続端部とは反対側の端部は、プリンタ1の制御装置6(図1参照)に接続されている。また、
各COF50にはドライバIC51が実装されている。ドライバIC51は、制御装置6から送られてきた制御信号に基づいて、圧電アクチュエータ22を駆動するための駆動信号を生成して出力する。ドライバIC51から出力された駆動信号は、COF50の配線55を介して駆動接点部40に入力され、さらに、圧電アクチュエータ22の配線35を介して各個別電極33に供給される。駆動信号が供給された個別電極33の電位は、所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。また、COF50には、グランド配線(図示省略)も形成されており、グランド配線が、圧電アクチュエータ22のグランド接点部41と電気的に接続される。これにより、グランド接点部41と接続されている共通電極31の電位は、常にグランド電位に維持される。
ドライバIC51から駆動信号が供給されたときの、圧電アクチュエータ22の動作について説明する。駆動信号が供給されていない状態では、個別電極33の電位はグランド電位となっており、共通電極31と同電位である。この状態から、ある個別電極33に駆動信号が供給されて、個別電極33に駆動電位が印加されると、その個別電極33と共通電極31との電位差により、圧電膜32に、その厚み方向に平行な電界が作用する。ここで、圧電膜32の分極方向と電界の方向とが一致するために、圧電膜32はその分極方向である厚み方向に伸びて面方向に収縮する。この圧電膜32の収縮変形に伴って、振動膜30が圧力室26側に凸となるように撓む。これにより、圧力室26の容積が減少して圧力室26内に圧力波が発生することで、圧力室26に連通するノズル24からインクの液滴が吐出される。
(リザーバ形成部材)
図4に示すように、リザーバ形成部材23は、圧電アクチュエータ22を挟んで、流路基板20と反対側(上側)に配置され、圧電アクチュエータ22の上面に接着剤で接合されている。リザーバ形成部材23は、例えば、流路基板20と同様、シリコン基板であってもよいが、金属材料や合成樹脂材料で形成された部材であってもよい。
リザーバ形成部材23の上半部には、圧力室26の配列方向(図4の紙面垂直方向)に延びるリザーバ52が形成されている。このリザーバ52は、インクカートリッジ17が装着されるカートリッジホルダ7(図1参照)と、図示しないチューブでそれぞれ接続されている。
図4に示すように、リザーバ形成部材23の下半部には、リザーバ52から下方に延びる複数のインク供給流路53が形成されている。各インク供給流路53は、圧電アクチュエータ22の複数の連通孔22a、及び、振動膜30の複数の連通孔30aを介して、流路基板20の複数の圧力室26とそれぞれ連通している。これにより、リザーバ52から、複数のインク供給流路53を介して、複数の圧力室26にインクが供給される。また、リザーバ形成部材23の下半部には、保護カバー部54も形成されている。保護カバー部54の内側空間に圧電アクチュエータ22の複数の圧電膜32が収容され、複数の圧電膜32は保護カバー部54によって覆われている。
次に、上述したインクジェットヘッド4のヘッドユニット16の製造工程について説明する。図6〜図8は、それぞれ、インクジェットヘッド4の製造工程を説明する図である。
図6は、(a)振動膜成膜、(b)圧電アクチュエータの形成、(c)リザーバ形成部材の接合の、各工程を示す図である。
まず、図6(a)に示すように、流路基板20となるシリコン単結晶基板70の表面に、酸化シリコン、窒化シリコン等の振動膜30を成膜する。例えば、シリコン単結晶基板70の表面に熱酸化処理を施すことによって、酸化シリコンの振動膜30を成膜することができる。次に、図6(b)に示すように、振動膜30の上に、圧電アクチュエータ22を構成する、共通電極31、圧電膜32、個別電極33、第1保護膜34、絶縁膜36、配線35、及び、第2保護膜37を、順番に形成する。各膜の形成は、スパッタリング、CVD、あるいは、ALD等による成膜と、エッチング等によるパターニングによって行う。圧電アクチュエータ22の形成が終了したら、図6(c)に示すように、圧電アクチュエータ22に、リザーバ形成部材23を接着剤で接合する。
図7は、(a)研磨工程、(b)変質層除去工程、(c)流路形成工程の、各工程を示す図である。
次に、図7(a)に示すように、基板70を下面側から機械的に研磨することで、その厚みを、所定の厚みまで薄くする。シリコン単結晶基板70の元となるシリコンウェハーの厚みは、一般的に500μm〜700μm程度であるが、この研磨工程で、基板70の厚みを、例えば100μm程度まで薄くする。
尚、本実施形態では、研磨工程に先だって、流路基板20及び圧電アクチュエータ22に、リザーバ形成部材23を接合している。これにより、リザーバ形成部材23によって、流路基板20及び圧電アクチュエータ22の剛性が高められるため、研磨工程で流路基板20の厚みを薄くすることが容易となる。
ところで、シリコン単結晶基板70に研磨を行うと、基板70の研磨面61において結晶構造が乱れるため、基板70の研磨面61には、原子配列が不規則になった変質層60が形成される。この変質層60が残った状態で、シリコン単結晶基板70に対する異方性エッチングによって圧力室26の形成を行うと、変質層60においては、等方的にエッチングが進行してしまう。即ち、基板70の厚み方向に沿ってエッチングを進行させる必要があるところを、変質層60が存在する部分では、基板70の厚み方向に対して傾いた方向にもエッチングが進行してしまう。これにより、エッチング精度が低下し、圧力室26の、特に、下端部分が所望の形状に形成されなくなる。
そこで、本実施形態では、研磨面61に生成された変質層60を除去する。変質層60の除去は、フッ素を含む除去媒体を用いたエッチングによって行う。除去媒体としては、シリコン基板の洗浄等に一般的に用いられる、フッ硝酸を使用できる。フッ硝酸の他に、フッ化水素や、フッ化アンモニウム等を用いることも可能である。また、変質層60のエッチングは、ウェットエッチングでもドライエッチングでもよい。
但し、変質層60の除去に、上記のフッ素を含む除去媒体を用いると、変質層60を除去した領域にシリコンのフッ化物が生成されるため、変質層60を除去した領域に、撥液性が高くなった高撥液部63が生じる。従って、シリコン単結晶基板70の下面(研磨面61)の全面において変質層60を除去してしまうと、後で、ノズルプレート21と接着される領域A2の撥液性も高くなってしまう。これにより、後のノズルプレート21の接着時に、領域A2において接着剤が均一に広がりにくくなって、ノズルプレート21との接着性が悪くなる。
そこで、図7(b)に示すように、本実施形態では、まず、シリコン単結晶基板70の研磨面61のうちの、異方性エッチングで複数の圧力室26を形成する、複数の領域A1の変質層60は除去する。一方で、ノズルプレート21と接合される領域A2の変質層60は除去せずに残す。具体的には、基板70の研磨面61に、変質層60を残す領域A2を覆うようにマスク71を形成してから、マスク71で覆われていない複数の領域A1の変質層60を、フッ硝酸等によるエッチングによって除去する。
但し、本実施形態では、図7(b)に示すように、シリコン単結晶基板70の研磨面61の領域A2のうちの、複数の領域A1をそれぞれ取り囲む、複数の周囲領域A2aの変質層60も、領域A1の変質層60と一緒に除去する。これにより、圧力室26の周囲領域A2aに、領域A2の他の領域の撥液性よりも高い、高撥液部63を意図的に形成している(図5参照)。
次に、図7(c)に示すように、シリコン単結晶基板70の研磨面61の複数の領域A1のそれぞれにおいて、異方性エッチングを行うことにより、研磨面61に沿った方向に並ぶ複数の圧力室26を形成する。具体的には、まず、シリコン単結晶基板70の研磨面61に、複数の圧力室26がそれぞれ形成される複数の領域A1のみを露出させるように、マスク72を形成する。次に、マスク72で覆われていない複数の領域A1に対して、水酸化カリウム等を用いた異方性エッチングを行う。ここで、エッチングを行う領域A1においては変質層60が除去されているため、変質層60によってエッチングが等方的に進行することがなく、基板70の厚み方向に沿ってエッチングを進行させることができる。これにより、圧力室26を精度よく形成することができる。
図8は、(a)接着剤逃がし溝の形成工程、(b)ノズルプレートの接合工程の、各工程を示す図である。
流路基板20に圧力室26を形成したら、図8(a)に示すように、流路基板20の下面に、圧力室26の列に沿って延びる接着剤逃がし溝62を形成する。この接着剤逃がし溝62は、エッチングで形成することができる。尚、先にも触れたが、接着剤逃がし溝62を流路基板20に形成する必要は必ずしもなく、流路基板20と接合されるノズルプレート21の上面に形成してもよい。
流路基板20(あるいは、ノズルプレート21)に接着剤逃がし溝62を形成したら、図8(b)に示すように、流路基板20の下面にノズルプレート21を接着剤64で接合する。即ち、流路基板20の下面、あるいは、ノズルプレート21の上面に流動性を有する熱硬化性の接着剤64を塗布してから、流路基板20とノズルプレート21とを重ね合わせた後、両者を上下から押圧しつつ、ヒータで加熱して接着剤64を硬化させる。
ここで、流路基板20の、ノズルプレート21と接合される領域A2においては、変質層60が除去されずに残されているため、領域A2には高撥液部63が形成されない。そのため、領域A2において接着剤64が均一に広がりやすくなり、流路基板20とノズルプレート21との間の接着性が良好なものとなる。
また、本実施形態では、流路基板20の研磨面61の第2領域A2のうち、圧力室26が形成される領域A1を取り囲む、周囲領域A2aの変質層60も除去している。即ち、フッ素を含む除去媒体を用いて変質層60を除去したときに、その除去した領域の撥液性が高くなることを利用し、圧力室26を取り囲む周囲領域A2aの撥液性を意図的に高める。これにより、流路基板20の研磨面61に、ノズルプレート21を接着剤64で接合するときに、圧力室26の周囲領域A2aに形成された高撥液部63によって、圧力室26に余剰の接着剤64が流れ込むことが抑制される。
さらに、圧力室26へ接着剤64を極力流入させないようにするには、この圧力室26の周囲領域A2aの撥液性を高めるだけでなく、さらに、余剰の接着剤64を他へ逃がすことが好ましい。しかし、圧力室26の配列ピッチをできるだけ狭くしようとする場合には、それらの圧力室26の間に、ある程度の幅を持った接着剤逃がし溝を形成することは難しい。そこで、本実施形態では、1列の圧力室列28内で隣接する圧力室26の間においては接着剤64の逃がし溝を形成することまではせず、圧力室26の周囲領域の変質層60を除去して撥液性を高くするにとどめる。一方で、圧力室列28の傍に接着剤逃がし溝62を形成することで、圧力室26の周囲の高撥液部63によって弾かれた余剰の接着剤64を、接着剤逃がし溝62に逃す構成としている。これにより、1列の圧力室列28内の隣接する圧力室26の間に逃がし溝を形成しなくても、余剰の接着剤64の圧力室26への流入量を許容量以下に抑えることが容易になる。
尚、以上説明した実施形態において、インクジェットヘッド4のヘッドユニット16が、本発明の「液体吐出装置」に相当する。流路基板20が、本発明の「第1流路部材」に相当する。圧力室26が、本発明の「第1流路」に相当する。ノズルプレート21が、本発明の「第2流路部材」に相当する。ノズル24が、本発明の「第2流路」に相当する。共通電極31が、本発明の「第1電極」に相当し、個別電極33が、本発明の「第2電極」に相当する。流路基板20の研磨面61の、圧力室26が形成される領域A1が本発明の「第1領域」に相当し、ノズルプレート21と接合される領域A2が本発明の「第2領域」、「接合領域」に相当する。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]前記実施形態では、ノズルプレート21と接合される領域A2のうち、圧力室26が形成される領域A1の周囲領域A2aについても変質層60を除去している。これに対し、流路基板20の研磨面61の領域A2については、圧力室26が形成される領域A1の周囲領域A2aも含めて、変質層60を除去しないようにしてもよい。この場合は、領域A2全域で、撥液性が高くなる部分が生じないことから、接着剤64が均一に広がりやすくなって、流路基板20とノズルプレート21との間の、より良好な接着が期待できる。
2]前記実施形態では、流路基板20の研磨面61に、圧力室26を形成するために異方性エッチングを行っているが、異方性エッチングで形成される第1流路は、圧力室26には限られない。
例えば、図9では、流路基板20Aに、複数の圧力室26の配列方向(図9の紙面垂直方向)に沿って延びるマニホールド80が形成されている。このマニホールド80は、複数の絞り流路81によって、複数の圧力室26とそれぞれ連通している。尚、絞り流路81の幅(図9の紙面垂直方向における幅)は、圧力室26の幅よりも小さくなっている。リザーバ形成部材23のリザーバ52からマニホールド80に供給されたインクは、マニホールド80から複数の絞り流路81を介して、複数の圧力室26にそれぞれ送られる。
この流路基板20Aにおいては、研磨工程後に、研磨面61である下面側からの異方性エッチングによって、マニホールド80、複数の絞り流路81、及び、複数の圧力室26をそれぞれ形成することになる。即ち、マニホールド80、複数の絞り流路81、及び、複数の圧力室26が、本発明の「第1流路」に相当する。この場合は、異方性エッチングの前に、流路基板20の研磨面61の、異方性エッチングによって上記流路が形成される領域においては、変質層60を除去し、ノズルプレート21と接合される領域においては変質層60を残す。
3]前記実施形態では、流路基板20の研磨面61に接合される流路部材が、複数のノズル24が形成されたノズルプレート21であるが、流路基板20の研磨面61に、ノズルプレート21以外の流路部材が接合されてもよい。例えば、図10に示すように、流路基板20とノズルプレート21との間に流路プレート82が配置されていてもよい。この流路プレート82には、複数の圧力室26と複数のノズル24をそれぞれ連通させる、複数の連通孔83が形成されている。この場合は、流路基板20の研磨面61に流路プレート82が接着剤64で接合される。即ち、流路プレート82が、本発明の「第2流路部材」に相当し、連通孔83が、本発明の「第2流路」に相当する。
4]前記実施形態では、流路基板20の研磨前に、リザーバ形成部材23を流路基板20に接合しているが、研磨前に、リザーバ形成部材23とは別の部材を流路基板20に接合してもよい。
例えば、圧電アクチュエータ22の膜形成(成膜、パターニング)を途中まで行ってから、膜形成を一旦中断して流路基板20の研磨を行い、研磨工程後に膜形成を再開する場合がある。この場合、研磨工程前に、リザーバ形成部材23を流路基板20に接合してしまうと、後半の膜形成工程を行うことができなくなる。そこで、この場合は、前半の膜形成工程を行ってから、流路基板20に剥離可能な支持部材を取り付けて流路基板20の研磨を行う。流路基板20の研磨後には、支持部材を流路基板20から剥離させて、後半の膜形成工程を再開する。
以上説明した実施形態及びその変更形態は、本発明を、記録用紙にインクを吐出して画像等を印刷するインクジェットヘッドの圧電アクチュエータに適用したものであるが、画像等の印刷以外の様々な用途で使用される液体吐出装置においても本発明は適用されうる。例えば、基板に導電性の液体を吐出して、基板表面に導電パターンを形成する液体吐出装置にも、本発明を適用することは可能である。
4 インクジェットヘッド
16 ヘッドユニット
20,20A 流路基板
21 ノズルプレート
22 圧電アクチュエータ
24 ノズル
26 圧力室
31 共通電極
32 圧電膜
33 個別電極
38 圧電素子
60 変質層
61 研磨面
62 接着剤逃がし溝
63 高撥液部
64 接着剤
70 シリコン単結晶基板
80 マニホールド
81 絞り流路
82 流路プレート
83 連通孔
A1 領域
A2 領域
A2a 周囲領域

Claims (4)

  1. 単結晶基板からなり、第1流路が形成された第1流路部材と、前記第1流路に連通する第2流路が形成され、前記第1流路部材に接合される第2流路部材と、前記第1流路部材の前記第2流路部材とは反対側に配置され、成膜によって形成された第1電極、圧電膜、及び、第2電極とを備えた圧電素子と、を備えた液体吐出装置の製造方法であって、
    前記第1流路部材となる前記単結晶基板の、前記圧電素子とは反対側の面を研磨する、研磨工程と、
    前記研磨工程によって、前記単結晶基板の研磨された研磨面に生成された変質層を、フッ素を含む除去媒体を用いて除去する、変質層除去工程と、
    前記変質層除去工程の後に、前記単結晶基板の前記研磨面から異方性エッチングを行って、前記単結晶基板に前記第1流路を形成する、流路形成工程と、
    前記流路形成工程の後に、前記第1流路部材の前記研磨面に前記第2流路部材を接着剤で接合する接合工程と、を備え、
    前記変質層除去工程において、
    前記単結晶基板の前記研磨面のうちの、前記流路形成工程でエッチングされる第1領域の前記変質層は除去し、
    前記単結晶基板の前記研磨面のうちの、前記第2流路部材と接合される第2領域の少なくとも一部の前記変質層を残すことを特徴とする、液体吐出装置の製造方法。
  2. 前記変質層除去工程において、前記単結晶基板の前記研磨面の、前記流路形成工程でエッチングされる前記第1領域の前記変質層に加えて、前記第2領域のうちの、前記第1領域を取り囲む領域の前記変質層も除去することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置の製造方法。
  3. 前記流路形成工程において、前記単結晶基板の前記研磨面からの異方性エッチングにより、前記第1流路として、前記圧電素子によって液体に吐出圧力を付与するための圧力室を、前記研磨面と平行な方向に沿って複数並べて形成し、
    前記変質層除去工程において、前記研磨面の前記第2領域のうちの、前記複数の圧力室が形成される複数の前記第1領域をそれぞれ取り囲む領域の、前記変質層を除去し、
    前記第1流路部材の前記研磨面の前記第2領域と、前記第2流路部材の前記第2領域との接合面の、少なくとも一方に、前記複数の圧力室と並び、且つ、前記圧力室の配列方向に沿って延びる接着剤逃がし溝を形成する、溝形成工程をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置の製造方法。
  4. 単結晶基板からなり、第1流路が形成された第1流路部材と、
    前記第1流路に連通する第2流路が形成され、前記第1流路部材に接合される第2流路部材と、
    前記第1流路部材の前記第2流路部材とは反対側に配置され、成膜によって形成された第1電極、圧電膜、及び、第2電極とを備えた圧電素子と、を備え、
    前記第1流路部材の、前記第2流路部材側の面は、前記単結晶基板が研磨されてなる研磨面であり、
    前記第1流路部材の前記研磨面のうちの、前記第2流路部材と接合される接合領域に、研磨時に生じた変質層が残されており、
    前記第1流路部材の前記接合領域のうち、少なくとも前記第1流路を取り囲む周囲領域の前記変質層は除去され、
    前記第1流路部材の前記接合領域のうちの、前記周囲領域の撥液性が、前記周囲領域以外の領域の撥液性よりも高くなっていることを特徴とする液体吐出装置。
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