JP2007050673A - 液体噴射ヘッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 液滴吐出特性の低下を防止できる液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】 液滴を吐出するノズル開口が設けられたノズルプレートと、このノズル開口に連通する圧力発生室が形成され前記ノズルプレートと接着剤により接合されている流路形成基板と、該流路形成基板の前記圧力発生室に対応する領域に振動板を介して設けられて前記圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を付与する圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記ノズルプレート20の前記流路形成基板10と前記接着剤15により接合される接合部側の、少なくとも当該接合部に連続する前記圧力発生室12に対向する領域を親水処理した後、当該ノズルプレート20と前記流路形成基板10とを接着剤15により接合する。
【選択図】 図6
【解決手段】 液滴を吐出するノズル開口が設けられたノズルプレートと、このノズル開口に連通する圧力発生室が形成され前記ノズルプレートと接着剤により接合されている流路形成基板と、該流路形成基板の前記圧力発生室に対応する領域に振動板を介して設けられて前記圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を付与する圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記ノズルプレート20の前記流路形成基板10と前記接着剤15により接合される接合部側の、少なくとも当該接合部に連続する前記圧力発生室12に対向する領域を親水処理した後、当該ノズルプレート20と前記流路形成基板10とを接着剤15により接合する。
【選択図】 図6
Description
本発明は、液滴を噴射する液体噴射ヘッドの製造方法に関し、特に、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を介して圧電素子を設けて、圧電素子の変位によりインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドの製造方法に関する。
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。そして、たわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、一般的に、圧力発生室が形成された流路形成基板に、インク滴を吐出するための複数のノズル開口が設けられたノズルプレートを接着剤によって接合された構造となっている。
このため、圧力発生室の形成された流路形成基板とノズルプレートを接着剤により接着した際に、圧力発生室とノズルプレートの接合部から接着剤が圧力発生室内に流れ出し、インク吐出に悪影響を及ぼすという問題がある。例えば、流路形成基板として結晶面方位(110)のシリコン単結晶基板を用いて、圧力発生室を異方性エッチング加工により形成すると、圧力発生室の長手方向両端部は、圧力発生室内に向かって傾斜した傾斜面で形成されるため、接着剤が圧力発生室の長手方向端部の傾斜面を伝って振動板まで流出し、振動板に付着した接着剤によって圧電素子の変位特性が低下してしまいインク滴吐出特性が低下してしまうという問題がある。
ここで、流路形成基板のノズルプレートとの接合面に溝を形成し、この溝内に余分な接着剤を流出させて、余分な接着剤が圧力発生室内に流出しないようにした液体噴射ヘッドが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、異方性エッチングなどの方法では、このような溝等を所望の位置に設け難い場合もあり、形状面の対策のみでは接着剤の流れ出しの抑制が十分ではなかった。なお、このような問題は、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドだけでなく、液滴を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
本発明は、このような事情に鑑み、液滴吐出特性の低下を防止できる液体噴射ヘッドの製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、液滴を吐出するノズル開口が設けられたノズルプレートと、このノズル開口に連通する圧力発生室が形成され前記ノズルプレートと接着剤により接合されている流路形成基板と、該流路形成基板の前記圧力発生室に対応する領域に振動板を介して設けられて前記圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を付与する圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記ノズルプレートの前記流路形成基板と前記接着剤により接合される接合部側の、少なくとも当該接合部に連続する前記圧力発生室に対向する領域を親水処理した後、当該ノズルプレートと前記流路形成基板とを接着剤により接合することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第1の態様では、ノズルプレートと流路形成基板とを接合する接着剤は、親水処理されたノズルプレート側へ多く流れるため、流路形成基板側への接着剤の流れ込みが低減され、接着剤の振動板への付着が抑制される。したがって、振動板の変位特性の低下を防止することができるので、液滴吐出特性が向上した液体噴射ヘッドが得られる。
かかる第1の態様では、ノズルプレートと流路形成基板とを接合する接着剤は、親水処理されたノズルプレート側へ多く流れるため、流路形成基板側への接着剤の流れ込みが低減され、接着剤の振動板への付着が抑制される。したがって、振動板の変位特性の低下を防止することができるので、液滴吐出特性が向上した液体噴射ヘッドが得られる。
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記親水処理が、プライマ処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV照射または親水処理剤による処理であることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第2の態様では、接着剤は、プライマ処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV照射または親水処理剤による処理によって親水処理されたノズルプレート側へ多く流れ込むため、流路形成基板側への接着剤の流れ込みが低減され、接着剤の振動板への付着を抑制することができる。
かかる第2の態様では、接着剤は、プライマ処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV照射または親水処理剤による処理によって親水処理されたノズルプレート側へ多く流れ込むため、流路形成基板側への接着剤の流れ込みが低減され、接着剤の振動板への付着を抑制することができる。
本発明の第3の態様は、第1または2の態様において、前記流路形成基板の少なくとも前記接合部に連続する前記圧力発生室内の側面を撥水処理した後、当該流路形成基板と前記ノズルプレートとを接着剤により接合することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第3の態様では、接着剤は、撥水処理された流路形成基板側へ流れ込み難くなるため、振動板への接着剤の付着が確実に抑制される。
かかる第3の態様では、接着剤は、撥水処理された流路形成基板側へ流れ込み難くなるため、振動板への接着剤の付着が確実に抑制される。
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記撥水処理が、フッ素樹脂コーティング、金(Au)膜のコーティングまたは撥水処理剤による処理であることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第4の態様では、接着剤は、フッ素樹脂コーティング、金(Au)膜のコーティングまたは撥水処理剤による処理によって撥水処理された流路形成基板側へ流れ込み難くなるため、振動板への接着剤の付着が抑制される。
かかる第4の態様では、接着剤は、フッ素樹脂コーティング、金(Au)膜のコーティングまたは撥水処理剤による処理によって撥水処理された流路形成基板側へ流れ込み難くなるため、振動板への接着剤の付着が抑制される。
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記接着剤がエポキシ系接着剤であることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
かかる第5の態様では、エポキシ系接着剤を用いてノズルプレートと流路形成基板とを接着した際の、流路形成基板側への接着剤の流れ込みが抑制される。
かかる第5の態様では、エポキシ系接着剤を用いてノズルプレートと流路形成基板とを接着した際の、流路形成基板側への接着剤の流れ込みが抑制される。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る製造方法によって製造される液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。なお、連通部13は、後述する保護基板のリザーバ部と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る製造方法によって製造される液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及び断面図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。なお、連通部13は、後述する保護基板のリザーバ部と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤15により固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるステンレス鋼(SUS)、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又は不錆鋼などからなる。
詳しくは後述するが、このノズルプレート20は、流路形成基板10との接合部側の、当該接合部に連続し圧力発生室12に対向する領域が親水処理されている。これは、接着剤15で接合される際に、ノズルプレート20側に接着剤15が流れ込みやすくして、流路形成基板10側に接着剤15が流れ込み難くするためである。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの二酸化シリコン(SiO2)からなる弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55が形成されている。また、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。また、このような各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加されるようになっている。
なお、このような圧電素子300を構成する圧電体層70の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイッテルビウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。その組成は、圧電素子300の特性、用途等を考慮して適宜選択すればよいが、例えば、PbTiO3(PT)、PbZrO3(PZ)、Pb(ZrxTi1−x)O3(PZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PMN−PT)、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PZN−PT)、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PNN−PT)、Pb(In1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PIN−PT)、Pb(Sc1/2Ta1/2)O3−PbTiO3(PST−PT)、Pb(Sc1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PSN−PT)、BiScO3−PbTiO3(BS−PT)、BiYbO3−PbTiO3(BY−PT)等が挙げられる。
また、流路形成基板10上の圧電素子300側の面には、圧電素子300に対向する領域にその運動を阻害しない程度の空間を確保可能な圧電素子保持部31を有する保護基板30が接合されている。圧電素子300は、この圧電素子保持部31内に形成されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。さらに、保護基板30には、流路形成基板10の連通部13に対応する領域にリザーバ部32が設けられている。このリザーバ部32は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の並設方向に沿って設けられており、上述したように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。
また、保護基板30の圧電素子保持部31とリザーバ部32との間の領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられ、この貫通孔33内に下電極膜60の一部及びリード電極90の先端部が露出され、これら下電極膜60及びリード電極90には、図示しないが、駆動ICから延設される接続配線の一端が接続される。
なお、保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることがより好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部32の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない駆動ICからの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
ここで、このようなインクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図3〜図5を参照して説明する。なお、図3〜図5は、圧力発生室12の長手方向の断面図である。まず、図3(a)に示すように、シリコンウェハからなり流路形成基板10が形成される流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜51を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板10として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
次に、図3(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、スパッタ法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。
次いで、図3(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとを絶縁体膜55上に積層することにより下電極膜60を形成した後、この下電極膜60を所定形状にパターニングする。
その後、図3(d)に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属有機物を触媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛に限定されず、例えば、リラクサ強誘電体(例えば、PMN−PT、PZN-PT、PNN-PT等)の他の圧電材料を用いてもよい。また、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。
次に、図4(a)に示すように、例えば、イリジウムからなる上電極膜80を流路形成基板用ウェハ110の全面に形成する。次いで、図4(b)に示すように、圧電体層70及び上電極膜80を、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして圧電素子300を形成する。次に、リード電極90を形成する。具体的には、図4(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなる金属層91を形成する。その後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して金属層91を各圧電素子300毎にパターニングすることでリード電極90が形成される。
次に、図4(d)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300側に、シリコンウェハであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハ130を接合する。なお、この保護基板用ウェハ130は、例えば、400μm程度の厚さを有するため、保護基板用ウェハ130を接合することによって流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。
次いで、図5(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、更に弗化硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにする。例えば、本実施形態では、約70μm厚になるように流路形成基板用ウェハ110をエッチング加工した。次いで、図示しないマスク膜を介して、流路形成基板用ウェハ110を異方性エッチングすることにより、図5(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110に圧力発生室12、連通部13及びインク供給路14等を形成する。
なお、その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接着剤15により接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
上述したインクジェット式記録ヘッドの製造方法では、ノズルプレート20と流路形成基板10を接着剤15で接合しているが、本発明では、以下のようにして接合する。
まず、ノズル開口21が穿設されたノズルプレート20の、流路形成基板10と接着剤15により接合される接合部側の、少なくとも当該接合部に連続する圧力発生室12に対向する領域を親水処理する。この親水処理によりノズルプレート20に親水処理部16が設けられた状態の断面図を図6(a)に示す。図6(a)に示すように、本実施形態では、ノズルプレート20の全面を親水処理し、ノズルプレート20の流路形成基板10との接合部に連続する領域だけでなく、流路形成基板10との接合部も含めて親水処理して親水処理部16を設けている。
次に、流路形成基板10の接合部となる領域に接着剤15を塗布し、親水処理部16が流路形成基板10側となるようにしてノズルプレート20をかぶせ、ノズルプレート20と流路形成基板10を接合する。これにより、流路形成基板10の振動板(弾性膜50)側とは反対側の面上には、接着剤15によってノズルプレート20が接合され、圧力発生室12は、ノズルプレート20で塞がれる(図6(b))。
本発明の製造方法では、ノズルプレート20の流路形成基板10との接合部に連続する領域を親水処理しており、親水処理した親水処理部16は、接着剤15の濡れ性が高くなっている。この親水処理部16は流路形成基板10との接合部に連続しているため、接合部に塗布された接着剤15は、親水処理されたノズルプレート20側へと流れ込みやすくなる。その結果、接着剤15はノズルプレート20側に導かれ、流路形成基板10側への接着剤15の流れ込みが抑制される。したがって、流路形成基板10の先に設けられた振動板(弾性膜50)への接着剤15の付着が抑制されるため、接着剤15による振動板の変位特性の低下を防止することができる。
図6(a)では、ノズルプレート20の全面を親水処理したが、接着剤15をノズルプレート20側へ流れ込みやすくすることができれば、ノズルプレート20全面ではなく接合部に連続する領域のみを親水処理してもよい。また、ノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を親水処理したが、親水処理した後にノズル開口21を穿設してもよい。
ここで、親水処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、UV照射または親水処理剤による処理が例示でき、本実施形態では、プライマ処理で親水処理した。また、接着剤15も特に限定されないが、本実施形態ではエポキシ系接着剤を用いた。エポキシ系接着剤は塗布性が良好で操作性がよいが、流路形成基板10側への流れ込み量が多くなってしまう傾向がある。しかしながら、本発明の製造方法でノズルプレート20と流路形成基板10を接合すると、エポキシ系接着剤の流路形成基板10への流れ込みを抑制することができる。
ここで、試験例に基づき、本実施形態についてさらに詳述する。
(実施例1)
振動板が表面に設けられた流路形成基板10(シリコン単結晶製)に、圧力発生室12を形成した。また、ノズルプレート20(ステンレス鋼製)の表面の全面を、プライマ処理により親水処理した。次に、流路形成基板10を振動板側とは反対の開口面側が上向きになるようにし、接合部となる領域にエポキシ系接着剤を塗布した後、親水処理した面が流路形成基板10側となるようにしてノズルプレート20を上からかぶせ、ノズルプレート20と流路形成基板10を接合した。
(比較例1)
ノズルプレート20を親水処理しない以外は、実施例と同じ操作を行った。
(比較例2)
流路形成基板10のノズルプレート20との接合部に連続する圧力発生室12内の側面及び振動板(弾性膜50)をプライマ処理により親水処理をした以外は、実施例と同じ操作を行った。
(比較例3)
ノズルプレート20を親水処理せず、流路形成基板10のノズルプレート20との接合部に連続する圧力発生室12内の側面及び振動板(弾性膜50)をプライマ処理により親水処理をした以外は、実施例と同じ操作を行った。
(実施例1)
振動板が表面に設けられた流路形成基板10(シリコン単結晶製)に、圧力発生室12を形成した。また、ノズルプレート20(ステンレス鋼製)の表面の全面を、プライマ処理により親水処理した。次に、流路形成基板10を振動板側とは反対の開口面側が上向きになるようにし、接合部となる領域にエポキシ系接着剤を塗布した後、親水処理した面が流路形成基板10側となるようにしてノズルプレート20を上からかぶせ、ノズルプレート20と流路形成基板10を接合した。
(比較例1)
ノズルプレート20を親水処理しない以外は、実施例と同じ操作を行った。
(比較例2)
流路形成基板10のノズルプレート20との接合部に連続する圧力発生室12内の側面及び振動板(弾性膜50)をプライマ処理により親水処理をした以外は、実施例と同じ操作を行った。
(比較例3)
ノズルプレート20を親水処理せず、流路形成基板10のノズルプレート20との接合部に連続する圧力発生室12内の側面及び振動板(弾性膜50)をプライマ処理により親水処理をした以外は、実施例と同じ操作を行った。
(試験例)
実施例及び比較例1〜3の接合体について、接着剤が硬化した後に、ノズルプレート20と流路形成基板10とを剥がし、振動板に付着した接着剤の、振動板の端部からの距離(接着剤流れ込み量)を測定した。結果を表1及び図7に示す。
実施例及び比較例1〜3の接合体について、接着剤が硬化した後に、ノズルプレート20と流路形成基板10とを剥がし、振動板に付着した接着剤の、振動板の端部からの距離(接着剤流れ込み量)を測定した。結果を表1及び図7に示す。
表1及び図7に示すように、ノズルプレートのみを親水処理した実施例では、ノズルプレートのエポキシ系接着剤の濡れ性が高くなり、ノズルプレートと流路形成基板の濡れ性の差が大きくなるため、接着剤がノズルプレート側へ多く流れ込み、比較例1〜3と比べて、流路形成基板側への接着剤の流れ込み量が大幅に抑制された。
以上説明したように、ノズルプレートの流路形成基板と接着剤により接合される接合部側の、少なくとも接合部に連続する圧力発生室に対向する領域を親水処理した後、ノズルプレートと流路形成基板とを接着剤を介して接合するようにすると、流路形成基板側への接着剤の流出を抑制することができる。これにより、接着剤の振動板への付着が低減し、接着剤15による振動板の変形(変位)が抑制されるので、振動板の変位特性の低下を防止することができる。したがって、ヘッドのインク吐出特性の低下を防止することができ、ヘッドの信頼性を向上することができる。このように、本発明の製造方法によれば、プライマ処理等の表面処理により接着剤の流れ出しを抑制することができるため、接着剤の逃げ溝を設ける等形状面の対策をすることができない場合でも、良好に接着剤の流れ出しを抑制することができる。
なお、流路形成基板10の接合部に連続する圧力発生室12内の側面を撥水処理してもよい。撥水処理により流路形成基板10に撥水処理部17が設けられた状態の断面図を図8に示す。図8では、流路形成基板10の接合部に連続する圧力発生室12内の側面の全面及び振動板(弾性膜50)に撥水処理部17を設けているが、少なくともノズルプレート20との接合部に連続する流路形成基板10の側面が撥水処理されていればよい。因みに、ノズルプレート20との接合部に撥水処理すると、接合強度が低くなるため、図8に示すように、接合部は撥水処理しないことが好ましい。
このように、流路形成基板10のノズルプレート20との接合部に連続する圧力発生室12内の側面を撥水処理すると、撥水処理した撥水処理部17は接着剤15の濡れ性が低下する。そのため、撥水処理した流路形成基板10側へは接着剤15が流れ難くなる。ここで、ノズルプレート20側は上述したように親水処理されているため、接着剤15が流れ込みやすい。その結果、流路形成基板10側への接着剤15の流れ込みがより抑制されるので、流路形成基板10の先に設けられた振動板への接着剤の付着が抑制できる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。また、上述した実施形態では、インクジェット式記録ヘッドを例示して本発明を説明したが、勿論、インク以外の液体を噴射するものにも適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。また、上述した実施形態では、インクジェット式記録ヘッドを例示して本発明を説明したが、勿論、インク以外の液体を噴射するものにも適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 接着剤、 16 親水処理部、 17 撥水処理部、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 圧電素子保持部、 32 リザーバ部、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 300 圧電素子
Claims (5)
- 液滴を吐出するノズル開口が設けられたノズルプレートと、このノズル開口に連通する圧力発生室が形成され前記ノズルプレートと接着剤により接合されている流路形成基板と、該流路形成基板の前記圧力発生室に対応する領域に振動板を介して設けられて前記圧力発生室内に液滴吐出のための圧力を付与する圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記ノズルプレートの前記流路形成基板と前記接着剤により接合される接合部側の、少なくとも当該接合部に連続する前記圧力発生室に対向する領域を親水処理した後、当該ノズルプレートと前記流路形成基板とを接着剤により接合することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。 - 請求項1において、前記親水処理が、プライマ処理、コロナ処理、プラズマ処理、UV照射または親水処理剤による処理であることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項1または2において、前記流路形成基板の少なくとも前記接合部に連続する前記圧力発生室内の側面を撥水処理した後、当該流路形成基板と前記ノズルプレートとを接着剤により接合することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項3において、前記撥水処理が、フッ素樹脂コーティング、金(Au)膜のコーティングまたは撥水処理剤による処理であることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項4において、前記接着剤がエポキシ系接着剤であることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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JP2005239082A JP2007050673A (ja) | 2005-08-19 | 2005-08-19 | 液体噴射ヘッドの製造方法 |
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JP2009279830A (ja) * | 2008-05-22 | 2009-12-03 | Seiko Epson Corp | 液体噴射ヘッドおよびそれを備えた液体噴射装置 |
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JP2017061089A (ja) * | 2015-09-25 | 2017-03-30 | セイコーエプソン株式会社 | 電子デバイス、液体吐出ヘッド、および、電子デバイスの製造方法 |
-
2005
- 2005-08-19 JP JP2005239082A patent/JP2007050673A/ja active Pending
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