(第1実施形態)
以下、本発明に関するレーザ加工装置を、レーザ加工装置1に具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
(レーザ加工装置の概略構成)
先ず、第1実施形態に関するレーザ加工装置1の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、第1実施形態に関するレーザ加工装置1は、レーザ加工装置本体部2と、レーザコントローラ5と、電源ユニット6と、から構成されている。
レーザ加工装置本体部2は、パルスレーザLを加工対象物Wの加工面WA上を2次元走査してレーザ加工を行う。レーザコントローラ5は、コンピュータで構成され、PC7と双方向通信可能に接続されると共に、レーザ加工装置本体部2及び電源ユニット6と電気的に接続されている。PC7は、パーソナルコンピュータ等から構成され、印字データの作成等に用いられる。そして、レーザコントローラ5は、PC7から送信された印字データ、制御パラメータ、各種指示情報等に基づいてレーザ加工装置本体部2及び電源ユニット6を駆動制御する。尚、図1は、レーザ加工装置1の概略構成を示すものであるため、レーザ加工装置本体部2を模式的に示している。従って、当該レーザ加工装置本体部2の具体的な構成については、後述する。
(レーザ加工装置本体部の概略構成)
次に、レーザ加工装置本体部2の概略構成について、図1、図2に基づいて説明する。尚、レーザ加工装置本体部2の説明において、図1の左方向、右方向、上方向、下方向が、それぞれレーザ加工装置本体部2の前方向、後方向、上方向、下方向である。従って、レーザ発振器21からレーザ光として出射されるパルスレーザLの出射方向が前方向である。本体ベース11平面に対して垂直な方向が上下方向である。そして、レーザ加工装置本体部2の上下方向及び前後方向に直交する方向が、レーザ加工装置本体部2の左右方向である。
図1、図2に示すように、レーザ加工装置本体部2は、パルスレーザLと可視レーザ光M(図2参照)をfθレンズ20から同軸上に出射するレーザヘッド部3と、レーザヘッド部3が上面に固定される略箱体状の加工容器とから構成されており、加工容器内に設置された加工対象物Wの加工面WAに対して、パルスレーザL及び可視レーザ光Mを用いて、レーザ加工を行い得る。
図2に示すように、レーザヘッド部3は、本体ベース11と、パルスレーザLを出射するレーザ発振ユニット12と、光シャッター部13と、光ダンパー14と、ハーフミラー15と、ガイド光部16と、反射ミラー17と、光センサ18と、ガルバノスキャナ19と、fθレンズ20等から構成され、略直方体形状の筐体カバー(図示せず)で覆われている。
レーザ発振ユニット12は、レーザ発振器21と、ビームエキスパンダ22と、取付台23とから構成されている。レーザ発振器21は、ファイバコネクタと、集光レンズと、反射鏡と、レーザ媒質と、受動Qスイッチと、出力カプラーと、ウィンドウとをケーシング内に有している。ファイバコネクタには、光ファイバFが接続されており、電源ユニット6を構成する励起用半導体レーザ部40から出射された励起光が、光ファイバFを介して入射される。
集光レンズは、ファイバコネクタから入射された励起光を集光する。反射鏡は、集光レンズによって集光された励起光を透過すると共に、レーザ媒質から出射されたレーザ光を高効率で反射する。レーザ媒質は、励起用半導体レーザ部40から出射された励起光によって励起されてレーザ光を発振する。レーザ媒質としては、例えば、レーザ活性イオンとしてネオジウム(Nd)が添加されたネオジウム添加ガドリニウムバナデイト(Nd:GdVO4)結晶や、ネオジウム添加イットリウムバナデイト(Nd:YVO4)結晶や、Nd:YAG結晶等を用いることができる。
受動Qスイッチは、内部に蓄えられた光エネルギーがある一定値を超えたとき、透過率が80%〜90%になるという性質持った結晶である。従って、受動Qスイッチは、レーザ媒質によって発振されたレーザ光を、パルス状のパルスレーザLとして発振するQスイッチとして機能する。受動Qスイッチとしては、例えば、クロームYAG(Cr:YAG)結晶やCr:MgSiO4結晶等を用いることができる。
出力カプラーは、反射鏡とレーザ共振器を構成する。出力カプラーは、例えば、表面に誘電体層膜をコーティングした凹面鏡により構成された部分反射鏡で、波長1063nmでの反射率は、80%〜95%である。ウィンドウは、合成石英等から形成され、出力カプラーから出射されたレーザ光を外部へ透過させる。従って、レーザ発振器21は、受動Qスイッチを介してパルスレーザを発振し、加工対象物Wの加工面WAにレーザ加工を行うためのパルスレーザLを出力する。
ビームエキスパンダ22は、パルスレーザLのビーム径を変更するものであり、レーザ発振器21と同軸に設けられている。取付台23は、レーザ発振器21がパルスレーザLの光軸を調整可能に取り付けられ、本体ベース11の前後方向中央位置よりも後側の上面に対して、各取付ネジ25によって固定されている。
光シャッター部13は、シャッターモータ26と、平板状のシャッター27とから構成されている。シャッターモータ26は、ステッピングモータ等で構成されている。シャッター27は、シャッターモータ26のモータ軸に取り付けられて同軸に回転する。シャッター27は、ビームエキスパンダ22から出射されたパルスレーザLの光路を遮る位置に回転された際には、パルスレーザLを光シャッター部13に対して右方向に設けられた光ダンパー14へ反射する。一方、シャッター27がビームエキスパンダ22から出射されたパルスレーザLの光路上に位置しないように回転された場合には、ビームエキスパンダ22から出射されたパルスレーザLは、光シャッター部13の前側に配置されたハーフミラー15に入射する。
光ダンパー14は、シャッター27で反射されたパルスレーザLを吸収する。尚、光ダンパー14の発熱は、本体ベース11に熱伝導されて冷却される。ハーフミラー15は、パルスレーザLの光路に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置される。ハーフミラー15は、後側から入射されたパルスレーザLのほぼ全部を透過する。また、ハーフミラー15は、後側から入射されたパルスレーザLの一部を、反射ミラー17へ45度の反射角で反射する。反射ミラー17は、ハーフミラー15のパルスレーザLが入射される後側面の略中央位置に対して左方向に配置される。
ガイド光部16は、可視レーザ光Mとしての赤色レーザ光を出射する可視半導体レーザ28と、可視半導体レーザ28から出射された可視レーザ光Mを平行光に収束するレンズ群(図示せず)とから構成されている。可視レーザ光Mは、レーザ発振器21から出射されるパルスレーザLと異なる波長である。ガイド光部16は、ハーフミラー15のパルスレーザLが出射される略中央位置に対して右方向に配置されている。この結果、可視レーザ光Mは、ハーフミラー15のパルスレーザLが出射される略中央位置に、ハーフミラー15の前側面である反射面に対して45度の入射角で入射され、45度の反射角でパルスレーザLの光路上に反射される。即ち、可視半導体レーザ28は、可視レーザ光MをパルスレーザLの光路上に出射する。
反射ミラー17は、パルスレーザLの光路に対して平行な前後方向に対して斜め左下方向に45度の角度を形成するように配置され、ハーフミラー15の後側面において反射されたパルスレーザLの一部が、反射面の略中央位置に対して45度の入射角で入射される。そして、反射ミラー17は、反射面に対して45度の入射角で入射されたパルスレーザLを45度の反射角で前側方向へ反射する。
光センサ18は、パルスレーザLの発光強度を検出するフォトディテクタ等で構成され、反射ミラー17のパルスレーザLが反射される略中央位置に対して、図2中、前側方向に配置されている。この結果、光センサ18は、反射ミラー17で反射されたパルスレーザLが入射され、この入射されたパルスレーザLの発光強度を検出する。従って、光センサ18を介してレーザ発振器21から出力されるパルスレーザLの発光強度を検出することができ、本発明における検出部を構成する。
ガルバノスキャナ19は、本体ベース11の前側端部に形成された貫通孔29の上側に取り付けられ、レーザ発振ユニット12から出射されたパルスレーザLと、ハーフミラー15で反射された可視レーザ光Mとを下方へ2次元走査するものである。ガルバノスキャナ19は、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32とが、それぞれのモータ軸が互いに直交するように外側からそれぞれの取付孔に嵌入されて本体部33に取り付けられて構成されている。従って、当該ガルバノスキャナ19においては、各モータ軸の先端部に取り付けられた走査ミラーが内側で互いに対向している。そして、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転をそれぞれ制御して、各走査ミラーを回転させることによって、パルスレーザLと可視レーザ光Mとを下方へ2次元走査する。この2次元走査方向は、前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)である。
fθレンズ20は、下方に配置された加工対象物Wの加工面WAに対して、ガルバノスキャナ19によって2次元走査されたパルスレーザLと可視レーザ光Mとを同軸に集光する。従って、ガルバノX軸モータ31、ガルバノY軸モータ32の回転を制御することによって、パルスレーザLと可視レーザ光Mが、加工対象物Wの加工面WA上において、所望の加工パターンで前後方向(X方向)と左右方向(Y方向)に2次元走査される。
(電源ユニットの概略構成)
次に、レーザ加工装置1における電源ユニット6の概略構成について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、電源ユニット6は、励起用半導体レーザ部40と、レーザドライバ51と、電源部52と、冷却ユニット53とを、ケーシング55内に有している。電源部52は、励起用半導体レーザ部40を駆動する駆動電流を、レーザドライバ51を介して、励起用半導体レーザ部40に供給する。レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力される駆動情報に基づいて、励起用半導体レーザ部40を直流駆動する。
励起用半導体レーザ部40は、光ファイバFによってレーザ発振器21に光学的に接続されている。励起用半導体レーザ部40は、レーザドライバ51から入力されるパルス状の駆動電流に対して、レーザ光を発生する閾値電流を超えた電流値に比例した出力の波長のレーザ光として、励起光を光ファイバF内に出射する。従って、レーザ発振器21には、励起用半導体レーザ部40からの励起光が光ファイバFを介して入射される。励起用半導体レーザ部40としては、例えば、GaAsを用いたレーザバーを用いることができる。尚、レーザバーとは、エミッターをモノリシックに一次元アレイ化したLDアレイである。
冷却ユニット53は、電源部52及び励起用半導体レーザ部40を、所定の温度範囲内に調整する為のユニットであり、例えば、電子冷却方式により冷却することで、励起用半導体レーザ部40の温度制御を行っており、励起用半導体レーザ部40の発振波長を微調整する。尚、冷却ユニット53は、水冷式の冷却ユニットや、空冷式の冷却ユニット等を用いるようにしてもよい。
(レーザ加工装置の制御系)
次に、レーザ加工装置1の制御系構成について、図面を参照しつつ説明する。図3に示すように、レーザ加工装置1は、レーザ加工装置1の全体を制御するレーザコントローラ5、レーザドライバ51、ガルバノコントローラ56、ガルバノドライバ57等から構成されている。レーザコントローラ5には、レーザドライバ51、ガルバノコントローラ56、光センサ18等が電気的に接続されている。
レーザコントローラ5は、レーザ加工装置1の全体の制御を行う演算装置及び制御装置としてのCPU61、RAM62、ROM63、時間を計測するタイマ64等を備えている。又、CPU61、RAM62、ROM63、タイマ64は、バス線(図示せず)により相互に電気的に接続されて、相互にデータのやり取りが行われる。
RAM62は、CPU61により演算された各種の演算結果や描画パターンのXY座標データ等を一時的に記憶させておくためのものである。ROM63は、各種のプログラムを記憶させておくものであり、PC7から送信された印字データに基づいて描画パターンのXY座標データを算出してRAM62に記憶する等の各種プログラムが記憶されている。ROM63には、フォントの種類別に、直線と楕円弧とで構成された各文字のフォントの始点、終点、焦点、曲率等のデータが記憶されている。ROM63には、後述するレーザ加工処理プログラム(図4、図6等)が記憶されている。
そして、CPU61は、かかるROM63に記憶されている各種のプログラムに基づいて各種の演算及び制御を行なうものである。例えば、CPU61は、PC7から入力された印字データに基づいて算出した描画パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等をガルバノコントローラ56に出力する。又、CPU61は、PC7から入力された印字データに基づいて設定した励起用半導体レーザ部40の励起光出力、励起光の出力期間等の励起用半導体レーザ部40の駆動情報をレーザドライバ51に出力する。又、CPU61は、描画パターンのXY座標データ、ガルバノスキャナ19のON・OFFを指示する制御信号等をガルバノコントローラ56に出力する。
レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力された励起用半導体レーザ部40の励起光出力、励起光の出力期間等のレーザ駆動情報等に基づいて、励起用半導体レーザ部40を駆動制御する。具体的には、レーザドライバ51は、レーザコントローラ5から入力されたレーザ駆動情報の励起光出力に比例した電流値のパルス状の駆動電流を発生し、レーザ駆動情報の励起光の出力期間に基づく期間、励起用半導体レーザ部40に出力する。これにより、励起用半導体レーザ部40は、励起光出力に対応する強度の励起光を出力期間の間、光ファイバF内に出射する。
ガルバノコントローラ56は、レーザコントローラ5から入力された描画パターンのXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32の駆動角度、回転速度等を算出して、駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報をガルバノドライバ57へ出力する。ガルバノドライバ57は、ガルバノコントローラ56から入力された駆動角度、回転速度を表すモータ駆動情報に基づいて、ガルバノX軸モータ31とガルバノY軸モータ32を駆動制御して、パルスレーザLを2次元走査する。
そして、レーザコントローラ5には、PC7が双方向通信可能に接続されており、PC7から送信された加工内容を示す印字データ、レーザ加工装置本体部2の制御パラメータ、ユーザからの各種指示情報等を受信可能に構成されている。又、PC7には、入出力インターフェース(図示せず)を介して、マウスやキーボード等から構成される入力操作部71、液晶ディスプレイ72等が電気的に接続されている。従って、PC7は、入力操作部71、液晶ディスプレイ72を用いて、印字データの作成や制御パラメータの設定等に利用される。
(レーザ加工処理プログラムの内容)
続いて、第1実施形態に関するレーザ加工処理プログラムの処理内容について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図4に示すレーザ加工処理プログラムは、レーザコントローラ5のROM63に記憶されており、加工対象物Wの加工面WAに対して、パルスレーザLによってレーザ加工を施す際に、CPU61によって実行される。具体的には、CPU61は、PC7から送信された印字データをレーザ加工装置1が受信した時点で、当該レーザ加工処理プログラムの実行を開始する。
図4に示すように、先ず、CPU61は、PC7から送信された印字データに基づいて、当該印字データの加工内容を構成する各点のXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等を含む描画データを生成する(S1)。生成した描画データをRAM62に格納した後、CPU61は、S2に処理を移行する。
S2では、CPU61は、生成した描画データから、当該描画データに基づくレーザ加工における加工開始位置のXY座標データを取得し、ガルバノスキャナ19によるパルスレーザLの照射位置を、加工開始位置に移動させる。加工開始位置へ移動させた後、CPU61は、S3に処理を移行する。
S3においては、CPU61は、描画データに基づくレーザ加工を開始する為に、レーザON信号を、レーザドライバ51に対して出力する。励起用半導体レーザ部40においては、このレーザON信号に基づいて、レーザドライバ51からパルス状の駆動電流が入力される為、閾値電流を超えた電流値に比例した出力の波長の励起光が光ファイバF内に出射される。光ファイバFを介して、励起光がレーザ発振器21に入射されると、レーザ発振器21は、当該励起光によってレーザ媒質が励起され、受動Qスイッチを介してパルスレーザLを発振する。レーザON信号を出力した後、CPU61は、S4に処理を移行する。
S4に移行すると、CPU61は、レーザON信号をレーザドライバ51に出力した時刻を、第1時刻TaとしてRAM62に記憶する。CPU61は、第1時刻TaをRAM62に記憶した後、S4に処理を移行する。
S5では、CPU61は、光センサ18からの検出信号の有無に基づいて、光センサ18がパルスレーザLを検出したか否かを判断する。上述したように、光センサ18は、レーザ発振ユニット12によって出射されたパルスレーザLの内、ハーフミラー15で分離され、反射ミラー17で反射された一部を検出する。光センサ18がパルスレーザLを検出した場合(S5:YES)、CPU61は、S6に処理を移行する。一方、光センサ18がパルスレーザLを検出していない場合(S5:NO)、CPU61は、光センサ18がパルスレーザLを検出するまで、処理を待機する。
S6においては、CPU61は、光センサ18がパルスレーザLを検出した時刻を、第2時刻Tbとして、RAM62に記憶する。第2時刻TbをRAM62に記憶した後、CPU61は、S7に処理を移行する。
S7に移行すると、CPU61は、RAM62に格納されている第1時刻Taと、第2時刻Tbを読み出し、第2時刻Tbから第1時刻Taを減算することでパルスレーザ検出周期Pを算出する。算出したパルスレーザ検出周期PをRAM62に格納した後、CPU61は、S8に処理を移行する。
S8では、CPU61は、パルスレーザ検出周期Pを算出した際の第1時刻Taの数値を、次回のパルスレーザ検出周期Pを算出する際の第2時刻Tbに代入する。その後、CPU61は、S9に処理を移行する。
S9においては、CPU61は、算出したパルスレーザ検出周期Pが所定の下限値Llより大きく、且つ、所定の上限値Ulよりも小さいか否かを判断する。又、当該S9では、パルスレーザ検出周期Pが所定の数値範囲内であるか否かを判断していると換言することができる。この場合における所定の下限値Ll及び上限値Ulは、パルスレーザLが加工可能な状態で安定的に出力される場合における当該パルスレーザLの周波数によって定められ、前記パルスレーザの出力周期の変化率が所定値よりも小さい状態を示す。
具体的に、パルスレーザLが加工可能な状態で安定的に出力される場合におけるパルスレーザLの周波数が、25kHz〜35kHzの範囲である場合を挙げて、下限値Ll及び上限値Ulについて説明する。この場合、前記下限値Llは、上記範囲の最大周波数である35kHzに基づいて算出され、28.6usecに定められる。又、上限値Ulは、上記範囲の最小周波数である25kHzに基づいて算出され、40usecに定められる。
パルスレーザ検出周期Pが所定の下限値Llより大きく、且つ所定の上限値Ulより小さい場合(S9:YES)、CPU61は、S10に処理を移行する。一方、パルスレーザ検出周期Pが所定の下限値Ll以下若しくは所定の上限値Ul以上の何れかである場合(S9:NO)、CPU61は、S5に処理を戻し、再度、パルスレーザ検出周期Pの算出に関する処理(S5〜S8)を実行する。
S10に移行すると、CPU61は、パルスレーザ検出周期Pが所定の下限値Llより大きく、且つ所定の上限値Ulより小さいことから、パルスレーザが加工可能な状態で安定的に出力されていると判断し、ガルバノコントローラ56に対して、ガルバノスキャナ19の駆動開始を意味する制御指令を出力する。ガルバノコントローラ56に制御指令が入力された段階で、ガルバノスキャナ19は、前記加工対象物Wのレーザ加工の開始を伴うパルスレーザLの走査を開始する。その後、CPU61は、S11に処理を移行する。
S11では、CPU61は、S1で生成した描画データに含まれるXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、加工対象物Wの加工面WAに対して、PC7からの印字データに定められた加工内容で、パルスレーザLによるレーザ加工を施す。その後、CPU61は、S12に処理を移行する。
S12においては、CPU61は、PC7から送信された印字データの加工内容に基づくレーザ加工を完了したか否かを判断する。印字データに基づくレーザ加工を全て完了している場合(S12:YES)、CPU61は、当該レーザ加工処理プログラム(図4参照)を終了する。一方、印字データに基づくレーザ加工を全て完了していない場合(S12:NO)、CPU61は、S11に処理を戻し、印字データに基づくレーザ加工を継続する。
(レーザ加工に関する制御信号の時系列変化)
続いて、第1実施形態に係るレーザ加工処理プログラムを実行している場合において、レーザ加工に関する制御信号の時系列変化について図面を参照して説明する。
上述したように、第1実施形態に関するレーザ加工装置1においては、レーザON信号を、レーザドライバ51に出力した後(S3)、第1時刻Ta、第2時刻Tbを測定し、これらを用いて、パルスレーザ検出周期Pを算出する(S7)。
図5に示すように、加工対象物Wに対して出射されるパルスレーザLのレーザ強度は、パルスレーザ検出周期Pを3回算出した段階で、レーザ加工を安定して行うことができる加工閾値Ipを超え、その後、加工閾値Ipを超える強度で安定する。尚、金属加工の場合、加工閾値Ipは、20kWであり、検出閾値Idは、0.1W程度である。ここで、図5に示す場合、1回目〜3回目までのパルスレーザ検出周期Pは、所定の下限値Ll以下若しくは所定の上限値Ul以上の何れかに該当し(S9:NO)、ガルバノスキャナ19の走査が開始されることはない。
一方、4回目のパルスレーザ検出周期Pは、所定の下限値Llより大きく、且つ所定の上限値Ulより小さくなる為(S9:YES)、このタイミングStの時点をもって、ガルバノスキャナ19の走査が開始される。この時、パルスレーザLの強度は、加工閾値Ipを超えた強度で安定している為、当該レーザ加工装置1によれば、加工対象物Wの走査を開始した時点で、パルスレーザLの強度が不足して加工不良を生じることはない。又、当該レーザ加工装置1によれば、パルスレーザLを光センサ18で実際に検出した結果を用いて、パルスレーザ検出周期Pを算出し、ガルバノスキャナ19の走査開始時期を決定している為、加工可能なパルスレーザLの出力タイミングが変動した場合であっても、その影響を受けることはない。
以上説明したように、第1実施形態に関するレーザ加工装置1は、レーザ発振ユニット12及び励起用半導体レーザ部40と、ガルバノスキャナ19と、レーザコントローラ5と、光センサ18とを備えており、レーザコントローラ5による制御によって、レーザ発振ユニット12から出射されたパルスレーザLを用いて加工対象物Wを加工することが可能である。そして、パルスレーザLは、レーザ媒質を有するレーザ発振器21を有するレーザ発振ユニット12と、励起用半導体レーザ部40が協働し、レーザ媒質が励起用半導体レーザ部40からの前記励起光を受光して励起すると、自動的に出射するように構成されている。従って、当該レーザ加工装置1によれば、加工可能なレベルのパルスレーザLが出射されるタイミングがレーザ加工装置1の使用環境又は経年劣化等の影響により変動する可能性がある。
当該レーザ加工装置1によれば、レーザコントローラ5が、光センサ18によって検出されたパルスレーザLの出力時刻に基づくパルスレーザ検出周期Pを算出し(S7)、算出されたパルスレーザ検出周期Pが所定周期以下であるか否かを判断する為(S9)、光センサ18によるパルスレーザLの実際の検出結果に基づいて、当該パルスレーザLの出力状態が加工対象物Wを加工可能な状態であるか否かを判断することができ、もって、加工可能なパルスレーザLの出力タイミングが変動することに対応することができる。そして、当該レーザ加工装置1によれば、パルスレーザ検出周期Pが所定周期以下であると判断した場合(S9:YES)に、前記加工対象物Wの加工開始を伴うガルバノスキャナ19の走査を開始する為(S10)、加工可能な状態のパルスレーザLを用いて、当該加工対象物Wの加工を開始することができる。
このように、当該レーザ加工装置1によれば、加工可能な強度のパルスレーザLの出力タイミングが変動した場合であっても、加工可能なパルスレーザを出力可能な状態で、加工対象物Wの加工を開始することができるので、パルスレーザの強度不足に起因する加工が不十分な箇所等を生じさせることはなく、もって、加工品質を高く維持することができる。
又、パルスレーザ検出周期Pの判定に用いられる上限値Ul及び下限値Llは、パルスレーザが加工可能な状態で安定的に出力される場合における当該パルスレーザLの周波数によって定められ、パルスレーザの出力周期の変化率が所定値よりも小さい状態を示すものであり、前記パルスレーザの出力が安定した際の周期である。ここで、当該所定値の具体例について説明する。パルスレーザLの出力が安定した状態であっても、パルスレーザLの周期の変動は、実測値において、平均±2usec程度である。パルスレーザLの出力周期を40usecとした場合に、変化率が5%以内であれば、パルスレーザLの出力が安定した状態ということができる。つまり、この場合の所定値は、5%となる。従って、当該レーザ加工装置1によれば、加工可能なパルスレーザLの出力タイミングが変動した場合であっても、出力が安定した状態のパルスレーザLを用いて加工対象物Wの加工を行うことができ、より確実に加工品質を維持することができる。
(第2実施形態)
次に、上述した第1実施形態と異なる実施形態(第2実施形態)について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、第2実施形態に関するレーザ加工装置1は、上述した第1実施形態に関するレーザ加工装置1と同一の基本的構成を有しており、レーザ加工処理プログラムの処理内容が相違する。従って、第1実施形態と同一の構成、処理内容に関する説明は省略する。
(レーザ加工処理プログラムの内容)
第2実施形態においても、レーザ加工処理プログラムは、第1実施形態と同様に、レーザコントローラ5のROM63に記憶されており、加工対象物Wの加工面WAに対して、パルスレーザLによってレーザ加工を施す際に、CPU61によって実行される。
図6に示すように、S21では、CPU61は、第1実施形態におけるS1と同様に、PC7から送信された印字データに基づいて、描画データを生成する(S21)。描画データをRAM62に格納した後、CPU61は、S22に処理を移行する。
S22では、CPU61は、第1実施形態におけるS2と同様に、生成した描画データ基づくレーザ加工における加工開始位置のXY座標データを取得し、ガルバノスキャナ19によるパルスレーザLの照射位置を、加工開始位置に移動させる。加工開始位置へ移動させた後、CPU61は、S23に処理を移行する。
S23においては、CPU61は、第1実施形態におけるS3と同様に、描画データに基づくレーザ加工を開始する為に、レーザON信号を、レーザドライバ51に対して出力する。レーザON信号を出力した後、CPU61は、S24に処理を移行する。
S24に移行すると、CPU61は、第1実施形態におけるS4と同様に、光センサ18からの検出信号の有無に基づいて、光センサ18がパルスレーザLを検出したか否かを判断する。光センサ18がパルスレーザLを検出した場合(S24:YES)、CPU61は、S25に処理を移行する。一方、光センサ18がパルスレーザLを検出していない場合(S24:NO)、CPU61は、光センサ18がパルスレーザLを検出するまで、処理を待機する。
S25では、CPU61は、光センサ18がパルスレーザLを検出したことを、パルス検出数iとして計数し、RAM62に形成したパルス検出数iのカウンタに1加算する。パルス検出数iのカウンタに1加算した後、CPU61は、S26に処理を移行する。
S26においては、CPU61は、RAM62に格納されているパルス検出数iの値が所定の目標値Nより大きいか否かを判断する。この場合における所定の目標値Nは、パルスレーザが加工可能な状態で安定的に出力されるまでの期間に対応し、パルスレーザの出力が加工閾値Ipより大きい状態となるまでに要する検出回数を示す。パルス検出数iが所定の目標値Nより大きい場合(S26:YES)、CPU61は、S27に処理を移行する。一方、パルス検出数iが所定の目標値N以下である場合(S26:NO)、S24に処理を戻し、再度、パルスレーザ検出周期Pの算出に関する処理(S24〜S25)を実行する。
S27に移行すると、CPU61は、パルス検出数iが所定の目標値Nより大きいことから、パルスレーザLが加工可能な状態で安定的に出力されていると判断し、第1実施形態におけるS10と同様に、ガルバノコントローラ56に対して、ガルバノスキャナ19の駆動開始を意味する制御指令を出力する。その後、CPU61は、S28に処理を移行する。
S28では、CPU61は、第1実施形態におけるS11と同様に、描画データに含まれるXY座標データ、ガルバノ走査速度情報等に基づいて、加工対象物Wの加工面WAに対して、パルスレーザLによるレーザ加工を施す。その後、CPU61は、S29に処理を移行する。
S29においては、CPU61は、第1実施形態におけるS12と同様に、PC7から送信された印字データの加工内容に基づくレーザ加工を完了したか否かを判断する。印字データに基づくレーザ加工を全て完了している場合(S29:YES)、CPU61は、当該レーザ加工処理プログラム(図6参照)を終了する。一方、印字データに基づくレーザ加工を全て完了していない場合(S29:NO)、CPU61は、S28に処理を戻し、印字データに基づくレーザ加工を継続する。
(レーザ加工に関する制御信号の時系列変化)
続いて、第2実施形態に係るレーザ加工処理プログラムを実行している場合において、レーザ加工に関する制御信号の時系列変化について図面を参照して説明する。
上述したように、第2実施形態に関するレーザ加工装置1においては、レーザON信号を、レーザドライバ51に出力した後(S23)、光センサ18によってパルスレーザLを検出する毎に、パルス検出数iを計算する(S25)。
図7に示すように、加工対象物Wに対して出射されるパルスレーザLのレーザ強度は、光センサ18によってパルスレーザLを検出する毎に強くなっていき、パルス検出数iが所定の目標値Nを超えた後は、レーザ加工を安定して行うことができる加工閾値Ipを超え、その後、加工閾値Ipを超える強度で安定する。即ち、第2実施形態におけるレーザ加工装置1では、パルス検出数iが目標値Nよりも小さい段階(S26:NO)では、パルスレーザの強度が加工閾値Ip未満若しくは不安定な状態である為、ガルバノスキャナ19の走査が開始されることはない。
ここで、当該目標値Nの具体例について説明する。試作した複数台のレーザ加工装置において、レーザON信号の出力からガルバノスキャナの動作開始までの遅延時間は、0〜2800usecの範囲であった。又、上述した具体例において、パルスレーザLの最も短い周期は、28.6usecであり、約28usecとなる。遅延時間の最大値を、パルスレーザLの最も短い周期で除算すれば、パルスレーザLの出力が加工可能な強度で安定した状態となるまでに要するパルス検出数iの最大値を求めることができる。つまり、この場合の目標値Nは、2800usecを、28usecで除算して得られる100となる。目標値Nを100とすることで、試作した複数台のレーザ加工装置のいずれにおいても、パルスレーザLの出力が加工可能な強度で安定した状態で、加工対象物Wの加工を開始することができる。
一方、第2実施形態においては、パルス検出数iが所定の目標値Nよりも大きくなっている(S26:YES)為、このタイミングStの時点で、ガルバノスキャナ19の走査が開始される。この時、図7に示すように、パルスレーザLの強度は加工閾値Ipを超えた強度で安定している為、当該レーザ加工装置1によれば、加工対象物Wの走査を開始した時点で、パルスレーザLの強度が不足して加工不良を生じることはない。又、当該レーザ加工装置1によれば、パルスレーザLを光センサ18で実際に検出した結果を用いて、ガルバノスキャナ19の走査開始時期を決定している為、加工可能なパルスレーザLの出力タイミングが変動した場合であっても、その影響を受けることはない。
以上説明したように、第2実施形態に関するレーザ加工装置1は、レーザ発振ユニット12及び励起用半導体レーザ部40と、ガルバノスキャナ19と、レーザコントローラ5と、光センサ18とを備えており、レーザコントローラ5による制御によって、レーザ発振ユニット12から出射されたパルスレーザLを用いて加工対象物Wを加工することが可能である。そして、パルスレーザLは、レーザ媒質を有するレーザ発振器21を有するレーザ発振ユニット12と、励起用半導体レーザ部40が協働し、レーザ媒質が励起用半導体レーザ部40からの前記励起光を受光して励起すると、自動的に出射するように構成されている。従って、当該レーザ加工装置1によれば、加工可能なレベルのパルスレーザLが出射されるタイミングがレーザ加工装置1の使用環境又は経年劣化等の影響により変動する可能性がある。
当該レーザ加工装置1によれば、レーザコントローラ5が、光センサ18によって検出されたパルス検出数iを計算し(S25)、算出されたパルス検出数iが所定の目標値Nより大きいか否かを判断する為(S26)、検出部によるパルスレーザLの実際の検出結果に基づいて、当該パルスレーザの出力状態が加工対象物Wを加工可能な状態であるか否かを判断することができ、もって、加工可能なパルスレーザLの出力タイミングが変動することに対応することができる。そして、当該レーザ加工装置1によれば、パルス検出数iが所定の目標値Nより大きいと判断した場合(S26:YES)に、前記加工対象物Wの加工開始を伴うガルバノスキャナ19の走査を開始する為(S27)、加工可能な状態のパルスレーザを用いて、当該加工対象物Wの加工を開始することができる。
このように、当該レーザ加工装置1によれば、加工可能なパルスレーザLの出力タイミングが変動した場合であっても、加工可能なパルスレーザLを出力可能な状態で、加工対象物Wの加工を開始することができるので、パルスレーザの強度不足に起因する加工が不十分な箇所等を生じさせることはなく、もって、加工品質を高く維持することができる。
又、パルス検出数iの判定に用いられる目標値Nは、パルスレーザが加工可能な状態で安定的に出力されるまでの期間に対応し、パルスレーザの出力が加工閾値より大きい状態となるまでに要する検出回数を示す。従って、当該レーザ加工装置1によれば、加工可能なパルスレーザLの出力タイミングが変動した場合であっても、出力が安定した状態のパルスレーザLを用いて加工対象物Wの加工を行うことができ、より確実に加工品質を維持することができる。
尚、上述した実施形態において、レーザ加工装置1は、本発明におけるレーザ加工装置の一例である。そして、レーザ発振ユニット12及び励起用半導体レーザ部40は、本発明における出射部の一例であり、ガルバノスキャナ19は、本発明における走査部の一例である。又、CPU61は、本発明における制御部の一例であり、光センサ18は、本発明における検出部の一例である。励起用半導体レーザ部40は、本発明における半導体レーザ部の一例であり、レーザ発振ユニット12は、本発明における発振器の一例である。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した実施形態においては、パルスレーザ検出周期Pを判定する際に、上限値Ul及び下限値Llを用い、パルス検出数iに関する判定をする際には、目標値Nを用いていたが、この態様に限定されるものではない。光センサ18によるパルスレーザの検出結果を用いて、パルスレーザLの強度が加工閾値Ipを超えて安定した状態となったことを特定することができれば、種々の態様を採用し得る。