JP2016064667A - フィルムインサート成型用加飾フィルム及びその製造方法 - Google Patents

フィルムインサート成型用加飾フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成型時に凹凸模様が押し潰されることがなく、深絞りを施してもひび割れが生じないフィルムインサート成型用加飾フィルム及びその製造方法を提供する。【解決手段】 フィルムインサート成型において成形品の表面に凹凸模様を付与するための樹脂製の加飾フィルムであって、凹凸模様が設けられた賦形層フィルムと、該凹凸模様に密着した保護層フィルムからなり、前記賦形層フィルムが熱可塑性樹脂からなり、前記保護層フィルムがアイオノマーを含有する熱可塑性樹脂からなり、前記賦形層フィルムと前記保護層フィルムが、JIS−Z0237 10.粘着力測定 10.4.1試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準拠した測定方法で0.01〜10N/25mmの接着力で接着されていることを特徴とするフィルムインサート成型用加飾フィルム、及びその製造方法である。【選択図】図1

Description

本発明は、成形品の表面に凹凸模様を付すためのフィルムインサート成型用加飾フィルム及びその製造方法に係り、詳しくは、成型時に凹凸模様が押し潰されることがなく、深絞りを施してもひび割れが生じないフィルムインサート成型用加飾フィルム及びその製造方法に関する。
従来より、家電製品や通信機器の筐体など、樹脂からなる成型体の表面を装飾するため、金型内に加飾フィルムを配置した後、樹脂を金型内に充填することにより、加飾フィルムで成形体の表面を覆う、所謂フィルムインサート成型が行われている(特許文献1参照)。しかしながら、このフィルムインサート成型に用いる加飾フィルムは熱可塑性樹脂からなる基材層の片面に着色層(絵柄層)を施し、必要に応じバインダー層(接着層)を設けたものであり、平面的な着色模様でウェルドラインを隠したり、成形体の表面に装飾を施すように構成されているため、立体的な装飾に比べるとその装飾性には限界がある。
一方、近年では微細な凹凸模様による表面装飾も行われてきている。
しかしながら、上記のような熱可塑性樹脂からなる加飾フィルムの表面に凹凸模様を設けてフィルムインサート成型を行った場合、金型内に流し込む樹脂の温度と圧力によって凹凸模様が変形してしまい、甚だしき場合は凹凸模様が完全に押し潰されてしまうこともあるので、この方法では意図した凹凸模様を付けるのが極めて困難である。
金型内に流し込む樹脂の温度と圧力によって凹凸模様が押し潰されない加飾フィルムとしては、基材層の上に電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を設け、この表面保護層と賦形用型に設けた凹凸模様とを対向するように配置し、表面保護層表面に凹凸模様を賦形した後、電離放射線を照射して硬化させる方法がある(特許文献2参照)。しかしながら、この方法では操作が煩雑であるばかりでなく、このような加飾フィルムは深絞り等によりフィルムの一部が引き伸ばされた場合に、電離放射線硬化型樹脂からなる賦形層がひび割れたり破れたりしてしまうため、用途が限定されてしまい、汎用性に欠ける。
特開平8−183064号公報 特開2004−42409号公報
本発明はかかる実情に鑑み、上記の従来技術の問題点を解消し、成型時に凹凸模様が押し潰されることがなく、深絞りを施してもひび割れが生じないフィルムインサート成型用加飾フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の特徴の第1は、フィルムインサート成型において成形品の表面に凹凸模様を付与するための樹脂製の加飾フィルムであって、
凹凸模様が設けられた賦形層フィルムと、該凹凸模様に密着した保護層フィルムからなり、
前記賦形層フィルムが熱可塑性樹脂からなり、
前記保護層フィルムがアイオノマーを含有する熱可塑性樹脂からなり、
前記賦形層フィルムと前記保護層フィルムが、JIS−Z0237 10.粘着力測定 10.4.1試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準拠した測定方法で0.01〜10N/25mmの接着力で接着されていることを特徴とするフィルムインサート成型用加飾フィルムを内容とする。
本発明の特徴の第2は、賦形層フィルムがポリカーボネートを含有してなる上記記載のフィルムインサート成型用加飾フィルムを内容とする。
本発明の特徴の第3は、賦形層フィルムと保護層フィルムが、JIS−Z0237 10.粘着力測定 10.4.1試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準拠した測定方法で0.10〜0.17N/25mmの接着力で接着されている上記のフィルムインサート成型用加飾フィルムを内容とする。
本発明の特徴の第4は、凹凸模様が設けられた賦形層フィルムの裏面側に、更に、着色層及び/又はバインダー層が設けられている上記記載のフィルムインサート成型用加飾フィルムを内容とする。
本発明の特徴の第5は、フィルムインサート成型において成形品の表面に凹凸模様を付与するための樹脂製の加飾フィルムを製造するに際し、
熱可塑性樹脂Aにより凹凸模様を有する賦形層フィルムを形成する工程と、
前記賦形層の凹凸模様の上に、該凹凸模様を埋めるアイオノマーを含有する熱可塑性樹脂Bからなる保護層フィルムを積層する工程からなり、
前記賦形層フィルムと前記保護層フィルムが、JIS−Z0237 10.粘着力測定 10.4.1試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準拠した測定方法で0.01〜10N/25mmの接着力になるように樹脂Aと樹脂Bを選択するフィルムインサート成型用加飾フィルムの製造方法を内容とする。
本発明の特徴の第6は、熱可塑性樹脂Aからなる賦形層フィルムの凹凸模様の上に熱可塑性樹脂Bを溶融、押し出すことにより保護層フィルムを積層する上記記載のフィルムインサート成型用加飾フィルムの製造方法を内容とする。
本発明の特徴の第7は、熱可塑性樹脂Aからなる賦形層フィルムの凹凸模様の上に、熱可塑性樹脂Aよりも融点が低い熱可塑性樹脂Bからなるフィルムを重ねて、熱ラミネートにより熱可塑性樹脂Bを溶融させて保護層フィルムを積層する上記記載のフィルムインサート成型用加飾フィルムの製造方法を内容とする。
本発明の加飾フィルムよれば、賦形層フィルムの凹凸模様が保護層フィルムで密着保護されており、両フィルムは弱接着され、成型後に保護層フィルムを賦形層フィルムから剥離除去できるように構成されているので、成型時にこの凹凸模様が押し潰されるおそれがない。また、フィルムが引き伸ばされる際には凹凸模様も同じように引き伸ばされ、模様がひび割れたり不自然に千切れたりする恐れがないので、深絞り加工のような加飾フィルムの一部が引き伸ばされる用途にも使用することができ、汎用性に富む。
賦形層フィルムを構成する樹脂Aと保護層フィルムを構成する樹脂Bの間の接着力が、JIS−Z0237 10.粘着力測定 10.4.1試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準拠した測定方法で0.01〜50N/25mmの範囲とすることにより、フィルムインサート成型前又は成型中に保護層フィルムが不意に剥がれることもなく、また成型後に保護層フィルムを引き剥がす際に当該保護層フィルムが破れたり、賦形層フィルムの一部が同時に剥離するような不都合もない。
図1は本発明のフィルムインサート成型用加飾フィルムを示す概略断面図である。 図2は本発明のフィルムインサート成型用加飾フィルムの使用方法を示す概略断面図である。 図3は本発明のフィルムインサート成型用加飾フィルムの使用方法を示す概略断面図である。 図4(a)は加飾フィルムを予備成型するためのプレス金型の概形を示す断面図であり、(b)はフィルムインサート成型用の金型の概形を示す断面図である。
本発明における加飾フィルム1は、例えば図1に示すように、凹凸模様2aが設けられた賦形層フィルム2と、該凹凸模様2aに密着した保護層フィルム3からなり、賦形層フィルム2と保護層フィルム3が弱接着されていることを特徴とする。
なお、本発明において弱接着とは、積層された賦形層フィルム2と保護層フィルム3を比較的小さな力で容易に剥離することができる程度の接着力で接着されていることをいう。
本発明の加飾フィルム1はフィルムインサート成型において成形品の表面に凹凸模様を付与するための樹脂製の加飾フィルムであり、図2に示すように、フィルムインサート成型により、金型M内にインサートされた賦形層フィルム2が金型内に射出された溶融樹脂Pと接合する。脱型後は、図3に示すように、保護層フィルム3が賦形層フィルム2から剥離除去され、表面に凹凸模様2aが露出し、凹凸模様2aで加飾された成型体が得られる。
本発明において、賦形層フィルム2は加飾フィルム1のうち成形品の表面を装飾する部分であり、凹凸模様2aが付されている。賦形層フィルム2の材質は保護層フィルム3との間で弱接着状態となり、フィルムインサート成型において金型内に射出される樹脂とは直接又はバインダー層(接着層)5を介して強固に接着し、成型体の表面材として十分な強度と安全性を備えている熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。具体的には、強度及び安全性の観点からはポリカーボネート(PC)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレン(PS)、アクリルニトリル−スチレン共重合体(AS)、メチルメタクリレートースチレン共重合体(MS)、環状ポリオレフィン(COP)、環状オレフィン・コポリマー(COC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリアミド(PA)等が単独で、若しくは2種以上を混合又は積層して使用され得る。射出される樹脂との接着性、保護層フィルム3との関係については後述する。
また、この樹脂は透明、半透明、不透明のいずれでもよく、着色されていてもよいが、賦形層フィルムの下に着色層(絵柄層)4を設ける場合は透明又は半透明とする。
本発明において賦形層フィルム2には凹凸模様2aが付されている。凹凸模様2aの形状は特に限定されず、線画、浮き彫り模様、エンボス等どのような形状を設けてもよい。また凹凸模様の高さ(深さ)も特に限定されず、肉眼で認識でき且つ賦形層フィルム2を突き抜けない程度であればよく、具体的には0.1〜300μm程度の範囲が例示される。
本発明において保護層フィルム3は賦形層フィルム2の凹凸模様2aを埋め、当該凹凸模様2aと密着することにより、成型時に当該凹凸模様2aが押し潰されるのを防ぐためのものであり、成型後には賦形層フィルム2から剥離除去される。保護層フィルム3の材質は賦形層フィルム2との間で弱接着状態となり、賦形層フィルム2から剥離除去する際に途中で破れない程度の強度及び柔軟性を有している熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メタアクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMMA)、エチレンーメチルアクリレート共重合(EMA)、アイオノマー(IO)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリブチレン(PB)が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合又は積層して使用され得る。賦形層フィルム2との関係については後述する。
保護層フィルム3の厚さも特に限定されず、賦形層フィルム2から剥離除去する際に破れにくく、且つ適当に屈曲し、必要に応じ折り返すことが出来る程度の厚さであればよい。
なお、賦形層フィルム2から剥離除去する際に破れないという観点からは、使用する樹脂によっても異なるが、概ね凹凸模様2aの高低差(凹凸模様の一番高い部分の高さと一番低い部分の深さの差の距離)に10μmを加えた値の厚さ以上、具体的には凹凸模様の高低差が50μmの場合は60μm以上とするのが好ましい。この厚さより薄いと使用する樹脂や凹凸模様の形状、成型体の立体形状等によっては保護層フィルム3を剥離除去する際に、この保護層フィルム3が破れやすくなる傾向が生じる。
また、保護層フィルム3を剥離除去する際に適当に屈曲するという観点からは、使用する樹脂によっても異なるが、概ね凹凸模様の高低差に100μmを加えた値の厚さ以下、具体的には凹凸模様の高低差が50μmの場合は150μm以下とするのが好ましい。この厚さを超えると使用する樹脂や凹凸模様の形状、成型体の立体形状等によっては保護層フィルム3を剥離除去する際に、この保護層フィルム3が十分屈曲せず、剥がしにくくなる傾向が生じる。
本発明では賦形層フィルム2の裏面側(成型時に溶融樹脂と接合する面の側)に着色層(絵柄層)4及び/又はバインダー層(接着層)5を設けることができる。
本発明において、着色層(絵柄層)4とは、賦形層フィルム2の表面に付された凹凸模様2aとは別途に、あるいは協働して成形品の表面を装飾する部分であり、凹凸模様がない従来の加飾フィルムにおいて設けられている着色層(絵柄層)と同様の構成である。
着色層(絵柄層)4を構成するインキは従来より着色層(絵柄層)の材質として使用されてきた着色料、染料、顔料等、市販品としては帝国インキ製造株式会社製のISXインキ、IPXインキ、INQインキ、十条ケミカル株式会社製のFMインキ等がすべて好適に使用でき、これらのインキの塗布方法も従来より着色層(絵柄層)を形成するために使用されてきた方法、例えばスクリーン印刷等がすべて好適に使用できる。
本発明において、バインダー層(接着層)5とは、賦形層フィルム2や着色層(絵柄層)4と金型内に射出される樹脂の接着を助けるための部分であり、凹凸模様がない従来の加飾フィルムにおいて設けられているバインダー層(接着層)と同様の構成である。なお、このバインダー層は賦形層フィルム2や着色層(絵柄層)4を構成する樹脂と金型内に射出される樹脂Pの接着性が高い場合には設ける必要がない。
バインダー層(接着層)5を設ける場合、その材質は、賦形層フィルム2や着色層(絵柄層)4を構成する樹脂と金型内に射出される樹脂Pの両方と相溶性が高い樹脂である限り特に限定されないが、例えば、着色層(絵柄層)4が設けられておらず、賦形層フィルム2を構成する樹脂がポリカーボネートで、金型内に射出される樹脂がアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の場合、使用できるバインダー層(接着層)5としては、帝国インキ製造株式会社製IMB−003(商品名)や十条ケミカル株式会社製IMDバインダーB−2(商品名)等が挙げられる。
本発明は、賦形層フィルム2と保護層フィルム3とが弱接着されていることを特徴とする。粘着力の強さは、保護層フィルム3を賦形層フィルム2から比較的小さな力で容易に剥ぐことができる程度であれば特に限定されず、また、使用する樹脂の引っ張り強さや、保護層フィルム3の厚さにもよっても適切な粘着力の強さは変化するが、概ね、JIS−Z0237 10.粘着力測定 10.4.1試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準拠した測定方法で好ましくは0.01〜50N/25mm、更に好ましくは0.02〜30N/25mm、特に好ましくは0.05〜10N/25mmであれば、保護層フィルム3を適切に賦形層フィルム2から引き剥がすことができる。
なお、接着力が0.01N/25mmより小さいと、フィルムインサート成型前あるいは成型中に不意に保護層フィルム3が賦形層フィルム2から剥がれてしまうことがあり、50N/25mmを超えると、保護層フィルム3の厚さや各樹脂の引張強度にもよるが、保護層フィルム3を引き剥がす際に該保護層フィルム3が破れてその一部が成形品側に残ったり、凹凸模様2aの一部が保護層フィルム3と共に引き剥がされて凹凸模様2aが潰れたり変形することがある。
賦形層フィルム2と保護層フィルム3の間の接着が弱接着であるか否かは、賦形層フィルム2を構成する樹脂(以下、樹脂Aと称することがある)と、保護層フィルム3を構成する樹脂(以下、樹脂Bと称することがある)との相溶性により定まると考えられる。即ち、樹脂Aと樹脂Bの組み合わせを好適に選択することにより、賦形層フィルム2と保護層フィルム3の接着を弱接着とすることができる。
例えば、樹脂Aとしてポリカーボネートを使用する場合、樹脂Bとしてポリエチレン、エチレンビニールアセテートを用いると、保護層フィルム3を賦形層フィルム2から容易に剥離除去することができる。
なお、本発明の加飾フィルム1の厚さは、金型内に配置される際に予備成型(フィルムインサート成型に先立ち、加飾フィルムを成型体の表面形状と同じ形に成型すること)し易い程度、具体的には500μm以下とするのが好ましい。500μmを超えると、予備成型を速やかに行うのが困難になり、作業性が悪化する傾向が生じる。
以下、本発明の加飾フィルムの製造方法について説明する。
本発明は、樹脂Aにより賦形層フィルムを製造する工程と、樹脂Bからなる保護層フィルムを賦形層フィルムの上に積層する工程からなり、前記賦形層フィルムと前記保護層フィルムが弱接着状態になるように樹脂Aと樹脂Bを選択することを特徴とする。但し、樹脂Aと樹脂Bの選択については前述した通りなので、説明を省略する。
本発明においては、まず樹脂Aを用いて凹凸模様2aが設けられた賦形層フィルム2を製造する。賦形層フィルム2を製造する方法としては、従来より熱可塑性樹脂を原料として片面に凹凸立体形状の凹凸模様が設けられたフィルムを製造するために用いられている方法が全て好適に利用できる。例えばフィルム状に押し出された樹脂を2つの金属製冷却ロールで挟圧する方法において、いずれか一方の金属製冷却ロールの表面に凹凸模様2aの雌型を刻設しておく方法、フィルム状に押し出された樹脂を金属製冷却ロールとゴムロールで挟圧する方法において、金属製冷却ロールの表面に凹凸模様2aの雌型を刻設する、又はゴムロール側に凹凸模様2aの雌型が転写された型フィルムを配置する方法等を挙げることができる。
次に、賦形層フィルム2の上に保護層フィルム3を積層する。保護層フィルム3の積層方法は賦形層フィルム2の凹凸模様2aが樹脂Bによって埋められ、保護層フィルム3が凹凸模様2aに密着するように積層する限り、特に限定されないが、賦形層フィルム2の凹凸模様2aの上に樹脂Bを溶融して押し出す、所謂、押し出しラミネート法や、賦形層フィルム2の凹凸模様2aの上に樹脂Aよりも融点が低い樹脂Bからなるフィルムを重ねて、樹脂Aが溶融、軟化せず、樹脂Bだけが溶融・軟化する程度の熱と圧力をかけて積層する、所謂、熱ラミネート法を用いて積層することができる。
以下、本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
賦形層フィルムの素材(樹脂A)として帝人化成株式会社製のポリカーボネートの透明樹脂「パンライトL−1225Y(商品名)」を選択し、これを樹脂温度300℃でTダイよりシート状に押し出し、押し出されたシート状溶融樹脂を、金属製の冷却ロールとゴムロールの間に狭圧する方法において、冷却ロールとして絹目調エンボスの雌型が刻設されたものを用いて絹目調エンボス(凹凸模様)が設けられた賦形層フィルムを製造した。得られた賦形層フィルムの厚さは125μm、エンボス深度は45μmであった。
一方、保護層フィルムの素材(樹脂B)として住友化学株式会社製の押し出しラミネート用の低密度ポリエチレン樹脂「スミカセンCE4009(商品名)」を選択し、これを樹脂温度280℃でTダイより上記の賦形層フィルムの凹凸模様の上にシート状に押し出し、押し出されたシート状溶融樹脂と賦形層フィルムの積層体を金属製の冷却ロールとゴムロールの間で狭圧して積層体を得た。得られた積層体のうち、保護層フィルムの厚さは100μm、積層体全体の厚さは180μm(125+100−45)であった。
得られた積層体の賦形層フィルム側の面に、帝国インキ製造株式会社製のインサート成型用インキ「IPXスクリーンインキ(商品名)」をスクリーン印刷により塗布し、80℃で30分間熱風乾燥させて着色層(絵柄層)を設けた。
更に、この着色層(絵柄層)の上に、帝国インキ製造株式会社製のインサート成型用バインダー「IMB−003バインダー(商品名)」をスクリーン印刷により塗布し、80℃で30分間熱風乾燥させてバインダー層(接着層)を設けた。
上記のようにして、外側から順に、保護層フィルム、賦形層フィルム、着色層(絵柄層)、バインダー層(接着層)が積層された4層構造のフィルムインサート成型用加飾フィルムを得た。
(実施例2)
保護層フィルムを賦形層フィルムの凹凸模様の上に積層する方法として、三井デュポンポリケミカル株式会社製EVA樹脂「エバフレックスP1007」を樹脂温度130℃で厚さ75μmに押出して得られたEVAフィルムを凹凸模様の上に載置して、熱ラミネート装置を用いて100℃で熱圧着することにより賦形層フィルムの凹凸模様を埋めた他は実施例1と同様にして、4層構造のフィルムインサート成型用加飾フィルムを得た。
(比較例1)
保護層フィルムを賦形層フィルム側の凹凸模様の上に積層する方法として、厚さ50μmのポリエチレン系フィルムに7μmの粘着層が設けられた株式会社サンエー化研製の保護粘着フィルム「サニテクトLP54M(商品名)」を凹凸模様の上に貼り付けた他は実施例1と同様にして、4層構造のフィルムインサート成型用加飾フィルムを得た。
なお、このフィルムインサート成型用加飾フィルムにおいて、保護層フィルムは凹凸模様の凸部の上端部だけで接着しており、凹凸模様は埋められてはいない。
(粘着力の測定)
上記のようにして得られた実施例1、2、比較例1の加飾フィルムからそれぞれ、幅25mm、長さ150mmの試験片を得た。この試験片の一端から25mm程度を手で剥がし、保護層フィルムをその背面が重なるように180°に折り返し、引張試験機の片方のチャックに賦形層フィルムを、もう片方のチャックに折り返した保護層フィルムを固定した。
この状態から、引張試験機を5mm/sで運転を開始し、引張試験開始の5秒後から15秒後までの粘着力測定値の平均値をそれぞれの加飾フィルムの接着力とした。
測定値はそれぞれ、0.10N/25mm(実施例1)、0.17N/25mm(実施例2)、0.18N/25mm(比較例1)であった。
(予備成型)
実施例1、2、比較例1の加飾フィルムを70℃に予備加熱した後、図4(a)に断面形状を示したような、半径90mm、突出高さ30mmの凸レンズ状の予備成型用のプレス金型を用いて予備成型した。
(フィルムインサート成型)
予備成型を施した加飾フィルムをそれぞれ図4(b)に断面形状を示したような、半径90mm、突出高さ30mmの凸レンズ状の金型内に配置してからポリカーボネート/アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体混合樹脂を金型内に射出して、射出した樹脂と加飾フィルムを一体化させ、脱型後に成形品表面の賦形層フィルムから保護層フィルムを剥離除去し、加飾された完成品を得た。
(評価)
実施例1、2の加飾フィルムを用いた成形品では賦形層フィルムの凹凸模様が何ら変形することなくそのままの形状を保持しており、意図した通り加飾されていたが、比較例1の加飾フィルムを用いた成形品では賦形層フィルムの凹凸模様が押し潰され、意図した外観が得られなかった。
叙上のとおり、本発明に係るフィルムインサート成型用加飾フィルムは、凹凸模様が設けられた賦形層フィルムと、該凹凸模様に密着した保護層フィルムからなり、賦形層フィルムと保護層フィルムが弱接着されているので、成型時には凹凸模様が保護層により保護されるので押し潰されることがなく、成型後には保護層を容易に剥離除去することができ、賦形層フィルムの凹凸模様が変形することなくそのまま加飾される。また、深絞りを施した場合でもひび割れが生じないので、フィルムインサート用加飾フィルムとして頗る有用である。
1 フィルムインサート成型用加飾フィルム
2 賦形層フィルム
2a 凹凸模様
3 保護層フィルム
4 着色層(絵柄層)
5 バインダー層(接着層)
M 金型
P 金型内に射出される樹脂

Claims (7)

  1. フィルムインサート成型において成形品の表面に凹凸模様を付与するための樹脂製の加飾フィルムであって、
    凹凸模様が設けられた賦形層フィルムと、該凹凸模様に密着した保護層フィルムからなり、
    前記賦形層フィルムが熱可塑性樹脂からなり、
    前記保護層フィルムがアイオノマーを含有する熱可塑性樹脂からなり、
    前記賦形層フィルムと前記保護層フィルムが、JIS−Z0237 10.粘着力測定 10.4.1試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準拠した測定方法で0.01〜10N/25mmの接着力で接着されていることを特徴とするフィルムインサート成型用加飾フィルム。
  2. 賦形層フィルムがポリカーボネートを含有してなることを特徴とする請求項1に記載のフィルムインサート成型用加飾フィルム。
  3. 賦形層フィルムと保護層フィルムが、JIS−Z0237 10.粘着力測定 10.4.1試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準拠した測定方法で0.10〜0.17N/25mmの接着力で接着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルムインサート成型用加飾フィルム。
  4. 凹凸模様が設けられた賦形層フィルムの裏面側に、更に、着色層及び/又はバインダー層が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムインサート成型用加飾フィルム。
  5. フィルムインサート成型において成形品の表面に凹凸模様を付与するための樹脂製の加飾フィルムを製造するに際し、
    熱可塑性樹脂Aにより凹凸模様を有する賦形層フィルムを形成する工程と、
    前記賦形層の凹凸模様の上に、該凹凸模様を埋めるアイオノマーを含有する熱可塑性樹脂Bからなる保護層フィルムを積層する工程からなり、
    前記賦形層フィルムと前記保護層フィルムが、JIS−Z0237 10.粘着力測定 10.4.1試験板に対する180°引き剥がし粘着力に準拠した測定方法で0.01〜10N/25mmの接着力になるように樹脂Aと樹脂Bを選択することを特徴とするフィルムインサート成型用加飾フィルムの製造方法。
  6. 熱可塑性樹脂Aからなる賦形層フィルムの凹凸模様の上に熱可塑性樹脂Bを溶融、押し出すことにより保護層フィルムを積層することを特徴とする請求項5に記載のフィルムインサート成型用加飾フィルムの製造方法。
  7. 熱可塑性樹脂Aからなる賦形層フィルムの凹凸模様の上に、熱可塑性樹脂Aよりも融点が低い熱可塑性樹脂Bからなるフィルムを重ねて、熱ラミネートにより熱可塑性樹脂Bを溶融させて保護層フィルムを積層することを特徴とする請求項5に記載のフィルムインサート成型用加飾フィルムの製造方法。
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