JP2016060127A - 転写フィルム、それを用いたポリイミド積層体の製造方法及びポリイミド積層体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成されたイミド化率が45%以下のポリイミド前駆体層とを備える転写フィルム。
【選択図】なし
Description
例えば、屈曲性、可撓性、耐衝撃性および外観に優れる透明基板を得るために、溶剤透過性を有する支持基材上に形成させた溶剤を含む熱可塑性樹脂からなる塗布層と無機ガラスとを接着剤組成物を介して貼り合わせて得られた積層体に熱処理を施し、塗布層中の残存溶剤量を所定量まで減少させて、その後、当該積層体から支持基材を剥離して、再度、熱処理を行い塗布層を乾燥させ、熱可塑性樹脂層を無機ガラス上に形成する方法が提案されている(特許文献1)。
いる。また、特許文献2には、樹脂層とガラスを積層する方法として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にポリアミド酸溶液を塗布、熱処理して耐熱性ポリイミドフィルムを作製し、プラズマ処理を施し、シランカップリング処理したガラス基板上に上記プラズマ処理後のポリイミドフィルムを金属ローラを用いて圧着する方法が開示されている。また、ガラス基板と耐熱性ポリイミドフィルムの間に熱可塑性フィルムをセットし、加熱プレスしてガラス/樹脂積層体を得る方法も開示されている。また、ガラス基板上に樹脂層を直接形成する方法として、シランカップリング処理後のガラス基板上にポリアミド酸溶液を塗布し、熱処理を施す方法が開示されている。
また、離型材上にポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を含有する樹脂層を形成した転写シートも提案されている。例えば、離型材上に感光性ポリアミック酸樹脂からなる感光層を形成し、その上に接着性ポリアミック酸樹脂からなる接着層を形成してなる転写シートが開発されている(特許文献3)。また、ポリエステルからなる離型材上に感光性ポリアミック酸を含む樹脂層が形成された樹脂転写材の製造方法も提案されている(特許文献4)。特許文献3及び4に開示されている樹脂転写材は、ガラス板に熱転写した後に、パターン形成し、電子部品などの回路基板の絶縁層や各種電子部品の接着剤層の形成に用いられる転写シートである。
特許文献5には、特定の構成成分からなるポリイミド前駆体溶液を金属箔上に直接塗布し、硬化させ、多孔性ポリイミド層を含有するポリイミド層と金属箔層が積層されたプリント配線用基板の製造方法が開示されている。
また、ポリイミド前駆体溶液を基材表面に直接塗布する方法では、溶媒乾燥のために長い乾燥ラインを通すことになり、薄板化されたガラス基板を用いる場合には、ライン上でガラス基板が破損する懸念がある。
そこで、本発明の主たる目的は、転写後において、有機ELパネル等の電子デバイス用基板として好適に使用できる高い耐熱性、ハンドリング性を有するポリイミド積層体を提供できる、低温でラミネート可能な転写フィルム、それを用いたポリイミド積層体の製造方法及びポリイミド積層体を提供することにある。
すなわち本発明は以下の通りである。
[2] 前記ポリイミド前駆体層の厚みが1μm〜50μmである、[1]に記載の転写フィルム。
[3] 前記ポリイミド前駆体を焼成して得られるポリイミドのガラス転移温度が200℃以上又はガラス転移温度を有しない、[1]又は[2]に記載の転写フィルム。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載の転写フィルムを巻いてなるロール状物。
[5] ガラス又は金属からなる基材の少なくとも片面に、[1]〜[4]のいずれかに記載の転写フィルムを、前記ポリイミド前駆体層が前記基材側と対向するように積層し、
転写させる転写ステップ、
前記ステップで得られた積層体から前記基材フィルムを剥離する剥離ステップ、及び
前記ポリイミド前駆体層を焼成する焼成ステップ、を含むポリイミド積層体の製造方法。
[6] 前記転写ステップの転写温度が、ポリイミド前駆体を焼成して得られるポリイミドがガラス転移温度を有する場合は該ポリイミドのガラス転移温度以下の温度である、又はポリイミド前駆体を焼成して得られるポリイミドがガラス転移温度を有しない場合は200℃以下である[5]に記載のポリイミド積層体の製造方法。
[7] [5]又は[6]に記載の製造方法により得られるポリイミド積層体。
[8] [7]記載のポリイミド積層体を巻いてなるロール状物。
本発明の転写フィルムは、基材フィルム上にイミド化率が45%以下のポリイミド前駆体層を備えた構成を有する転写フィルムである。以下、転写フィルムを構成する基材フィルム、ポリイミド前駆体層について説明する。
基材フィルムは、転写フィルムにおいてポリイミド前駆体層を支持する支持体であり、また、他の部材に転写フィルムを積層させて樹脂層を転写した後、積層体から剥離する離型フィルムである。
基材フィルムを構成する材料としては特に限定されるものではなく、公知のものを任意に用いることができるが、耐熱性を有することが好ましい。すなわち、その表面に、溶媒に溶解されたポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液を塗布し、溶媒を乾燥することができ、また、ガラス又は金属からなる基材上に本転写フィルムを熱ラミネートできる程度に耐熱性を有することが好ましい。
このような基材フィルムを構成する材料としては、具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂及びポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、耐熱性や塗工性の観点からポリエステル系樹脂が好ましい。
中でも、透明性が高く、適度な伸びと強度を有する観点から、テレフタル酸とエチレングリコールを主とする共重合体(いわゆるポリエチレンテレフタレート)や、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを主とする共重合体(いわゆるポリエチレンナフタレート)が特に好ましい。また、これらの共重合体には、例えばイソフタル酸などの第三成分が共重合されていてもよい。
基材フィルムの厚みが20μm以上であれば、本転写フィルムのハンドリング性を向上させることが出来る一方、基材フィルムの厚みが150μm以下であれば、基材フィルムの曲げ弾性が大きくなり過ぎず、本転写フィルムをガラス又は金属からなる基材上に積層後、基材フィルムを剥離する際の剥離性が良好となる。
なお、平均面粗さは算術平均粗さ(Sa)であり、下記の測定方法にて算出できる。
(算術平均粗さ(Sa)の測定方法)
非接触表面・層断面計測システムVertScan2.0(株式会社菱化システム製)を用い基材フィルムの表面観察(観察視野:93.97μm×71.30μm)を実施し、基材フィルムの表面について、平均面粗さ(算術平均粗さSa)を算出する。
基材フィルムの樹脂層側表面の平均面粗さを調整する方法としては、平均面粗さが上記範囲のものを準備すればよく、既知の方法により平均面粗さを調整してもよく、当該範囲の市販品を購入してもよい。
一方で転写フィルムにおいては、転写フィルムを他の部材と積層し、樹脂層を他の部材に転写した後に基材フィルムを剥離する必要があることから、基材フィルムの樹脂層側表面は良好な離型性が要求される。そのため、通常は離型性を向上させるため、シリコーン系樹脂などの離型剤による表面処理が行われる。このような離型剤により表面処理を行うことで、表面の平均面粗さは大きくなる傾向にある。
具体的には、例えば、ポリイミド前駆体溶液の塗工性の向上を目的として、コロナ処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、フレーム処理及び紫外線照射処理により表面処理を施しても良いし、平滑化処理を施しても良い。また、塗工性の向上や、表面平滑化を目的として、熱又は光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いて樹脂層を設けても良い。また、接着性の向上を目的として、アンカーコート剤により処理を施してもよい。
一方、ポリイミド前駆体溶液の塗工性の観点から、ポリイミド前駆体溶液の塗布側表面をシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の離型剤で処理されていない基材フィルムを用いることが好ましい。転写フィルムの基材フィルムは転写後に剥離するものであるので、通常は優れた離型性を有するものが好適に用いられる。一方、上記のような離型剤で処理された基材フィルム表面は、ポリイミド前駆体溶液をはじきやすくなる。
本発明において、このような離型剤で処理された基材フィルムにポリイミド前駆体溶液を塗布しようとすると、塗工性を改良するためにポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を上げる必要がある。しかしながら、固形分濃度を上げると、例えば、塗布の際に気泡をかみ込むなどして、塗工ムラが発生してしまい、結果としてポリイミド前駆体層に外観上の欠陥が生じてしまう可能性が高くなる。
また、上述したように、離型剤により表面処理を行うことで、表面の平均面粗さは大きくなる傾向にあるため、ポリイミド積層体としたときのポリイミド層の表面が荒れてしまう場合がある。これらの理由のため、本発明においては、ポリイミド前駆体溶液の塗布側表面をシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の離型剤で処理されていない基材フィルムを用いることが好ましく、また、離型剤で処理されていない基材フィルムを用いることは、コスト面でも有利である。
本転写フィルムにおける、イミド化率が45%以下のポリイミド前駆体層は、ポリイミド前駆体を溶媒に溶解させたポリイミド前駆体溶液を基材フィルム上に塗布し、加熱処理により溶媒を乾燥することで形成される。すなわち、本発明のポリイミド前駆体層は、イミド化率が45%以下のポリイミド前駆体を含み、ポリイミド前駆体以外に溶媒なども含むものである。本転写フィルムにおけるポリイミド前駆体層は、イミド化率が45%以下であるため、ガラス又は金属からなる基材上に、当該ポリイミドのガラス転移温度(Tg)以下の温度で、接着層を使用しなくても容易に転写することができる。また、ポリイミド前駆体層を備える転写フィルムは柔軟性を有し、通常、ポリイミド前駆体層表面はブロッキングするような粘着性を有さないので、ロール状に巻いてなるロール状物としてもブロッキングし難く、ロール状物の状態で使用、保管することが出来る。
さらに、平均面粗さが小さい基材フィルムを用いることや、ポリイミド前駆体溶液を基材上に均一な厚さに塗布して塗工ムラを抑制することにより、本転写フィルムにおけるポリイミド前駆体層の外観上の欠陥を少なくすることができる。このような転写フィルムをガラス又は金属からなる基材に転写することにより、外観上の欠陥が少なく、平滑性に優れたポリイミド積層体を得ることが出来る。
なお、本発明において、弾性率は以下の方法により測定した値をいう。弾性率は、動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/min.の条件でシートの縦方向に測定した際の、転写温度における貯蔵弾性率(E’)で評価する。
また、熱ラミネート特性の観点から、ポリイミド前駆体層のイミド化率は43%以下であることが好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。また、熱ラミネート特性と残溶剤のバランスの観点から、ポリイミド前駆体層のイミド化率は3%以上が好ましく、5%以上がさらに好ましく、7%以上がより好ましく、10%以上が特に好ましい。
wt%以下であれば、ポリイミド前駆体層表面の粘着性が失われるので、ポリイミド前駆体層上に保護層を設けなくても、本転写フィルムをロール状に巻き取ることができる。なお、本転写フィルムのポリイミド前駆体層内の残溶媒量の測定方法は特に限定されない。例えば、一定温度一定時間加熱処理して加熱処理前後の重量の差から求める方法、ガスクロマトグラフ質量分析計で残留溶媒を揮発させて定量する方法等が挙げられる。
なお、焼成とは、ポリイミド前駆体の脱水・環化(イミド化)反応を進めるための加熱処理を意図している。
また、焼成ムラの発生している状態とは、焼成後のポリイミド表面に、ポリイミドの厚みの違いによって、色の濃い部分と薄い部分が発生している状態、すなわちムラになっている状態を意図している。
本発明のポリイミド前駆体層のポリイミド前駆体としては、ポリアミック酸が挙げられる。ポリアミック酸としては、汎用の基材フィルム上にポリイミド前駆体層を形成したときに、基材フィルムが溶融する温度以下で、ガラス又は金属からなる基材上に熱転写できるものであれば特に限定されるものではない。
本発明のポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応により得ることができる。
独で用いてもよいし、2種以上を混合物として併用してもよい。
これらの中でも、高耐熱性のポリイミド積層体を得る観点から、p−フェニレンジアミン、m−フェニルジアミン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテルを使用することが好ましい。
ポリアミック酸溶液は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、実質的に等モル、またはどちらかの成分を少し過剰にして、有機溶媒中で反応させ調製し、用いることができる。また、市販されているものをそのまま用いることもできるし、市販されているものを調製して用いることもできる。また、異なるイミド化率のポリアミック酸溶液を混合して用いることもできる。
市販されているポリアミック酸溶液としては、例えば、ユニチカ製「UイミドワニスAR」、「UイミドワニスBH」、「UイミドワニスCR」、宇部興産製「U−ワニス」などを好適に用いることができる。
ロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
具体的には、例えば、ガラス又は金属からなる基材表面との密着性の向上を目的として、シランカップリング剤を用いたシランカップリング処理、コロナ処理、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、フレーム処理及び紫外線照射処理により表面処理を施してもよいし、平滑化処理を施してもよい。
本実施形態の転写フィルムは、特定のイミド化率を有するポリイミド前駆体層とすることで接着剤層を介さなくてもガラス又は金属からなる基材に好適に熱転写することができるが、接着剤層を更に有してもよい。接着剤層を有する場合、基材フィルム、樹脂層及び接着剤層の順に積層される。接着剤層を有することで、転写フィルムを転写する部材と樹脂層の接着性を向上させることができる。
接着剤層としては、本ポリイミド積層体の耐熱性の観点から、ポリイミドよりも耐熱性に劣る接着剤層でなければよく、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコ−ン樹脂、などがあげられる。
接着剤層の膜厚は特に限定されず、通常300nm以上、好ましくは500nm以上、また通常2μm以下、好ましくは1μm以下である。
接着剤層を形成する方法は特には限定されず、上記説明した塗工などの方法を用いることができる。
本実施形態の転写フィルムは、保護層を更に有してもよい。保護層を有する場合、基材フィルム、ポリイミド前駆体層、(接着剤層)及び保護層の順に積層される。保護層を有することで、ポリイミド前駆体層表面を汚染や損傷から防ぎ、転写フィルムを良好に保管することができる。また、接着剤層を有する場合、保護層を設けることで、接着剤層の粘着性によらずロール状物とすることができる。保護層は、転写フィルムの使用前に転写フィルムから剥離して使用する。
保護層としては、ポリイミド前駆体層又は接着剤層の形態を損なうことなく剥離できるものであれば特に限定されないが、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエステルフィルム等、これらのフィルムを紙材料の片面または両面にコートした離型紙等が挙げられる。
本転写フィルムは、基材フィルムの表面にポリイミド前駆体であるポリアミック酸の溶液を塗布し、乾燥させることで作製することができる。
乾燥条件としては、用いるポリイミド前駆体、目的とする厚みにもよるが、イミド化反応速度の観点から、通常、50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上、特に好ましくは80℃以上で行う。また、基材フィルムの耐熱性の観点から、通常、200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下、特に好ましくは150℃以下で行う。
乾燥時間としては、生産性の観点から、通常、1分以上、好ましくは3分以上で実施する。また、結晶化度制御の観点から、30分以下、好ましくは20分以下、より好ましくは10分以下で実施する。本実施態様においては、厚みの薄いポリイミド前駆体層を加熱処理するので、上記のような短時間で、ポリイミド前駆体層のイミド化率を目的とする範囲とすることができる。
また、一定温度で乾燥してもよいし、予温していた温度から10℃/min.程度で昇温させて乾燥してもよい。乾燥時の乾燥ムラを防ぐ観点から、乾燥温度は順次上昇させることが、好ましい。
また、乾燥は窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下や、空気等の活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、真空状態で行ってもよい。
このような加熱処理を行うことで、溶媒を乾燥させ、且つ、ポリイミド前駆体層のイミド化率を前述の範囲内に調整することができる。
また、ガラスやポリエステルフィルム上にポリイミド前駆体層を形成した後、形成したポリイミド前駆体層を基材フィルム上に転写させて、本発明の転写フィルムを製造することもできる。
本発明の別の実施形態は、ガラス又は金属からなる基材の少なくとも一方の面上にポリイミド層が積層されてなるポリイミド積層体である。本ポリイミド積層体は、本転写フィルムのポリイミド前駆体層側の面をガラス又は金属からなる基材と向き合うように熱ラミネートし、基材フィルムを剥離して、基材表面にポリイミド前駆体層を転写した後、好適な温度でポリイミド前駆体層を焼成しイミド化させてポリイミド層とすることで得られる。本ポリイミド積層体は、基材の片面にポリイミド層を有していてもよいし、両面に有していてもよい。
本実施形態に使用できるガラス基材は特に限定されない。具体的には、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどを例示することができる。このようなガ
ラスとしては、市販されているものを用いることができる。
本実施形態においてポリイミド積層体のポリイミド層は、ガラス又は金属からなる基材表面に、本転写フィルムから転写されたポリイミド前駆体層を焼成処理して形成される。ポリイミド層としては、本ポリイミド積層体の耐熱性の観点から、ガラス転移温度が200℃以上であるポリイミド、又はガラス転移温度を有しないポリイミドからなるものが好ましい。ガラス転移温度は300℃以上がさらに好ましく、350℃以上が特に好ましい。ポリイミド層の耐熱温度が200℃以上であれば、電子デバイスの基板として本ポリイミド積層体を使用することが可能であるので好ましい。ガラス転移温度の上限は限定されないが、通常、600℃以下である。
なお、本発明において、ガラス転移温度は以下の方法により測定した値をいう。
(ガラス転移温度の測定方法)
ガラス転移温度は、動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、歪み0.1%、昇温速度3℃/min.の条件でシートの縦方向に測定した際の、損失弾性率(E”)のピーク温度で評価する。なお、損失弾性率(E”)のピーク温度が複数ある場合には、最も高い温度をガラス転移温度とする。また、ピークを示さない場合、ガラス転移温度を有しないものとする。
nm以下であることが好ましく、0.001nm以上、10nm以下であることがさらに好ましく、0.001nm以上、2nm以下であることが特に好ましい。平均面粗さが0.001nm以上、100nm以下であれば、本ポリイミド積層体を電子デバイスの基板として使用することが可能であるので好ましい。
なお、平均面粗さ(算術平均粗さ(Sa))は、下記測定方法にて算出できる。
(算術平均粗さ(Sa)の測定方法)
非接触表面・層断面計測システムVertScan2.0(株式会社菱化システム製)を用いポリイミド層の表面観察を観察視野(測定領域):93.97μm×71.30μmにて実施し、ポリイミド層の表面について、平均面粗さ(算術平均粗さSa)を算出する。
尚、ポリイミド前駆体層と、焼成処理して得られるポリイミド層の厚みは、ほぼ同じとなる。
本実施形態に係る積層体の製造方法は、本転写フィルムをガラス又は金属からなる基材上に転写して製造する方法であれば、特に限定されない。
まず、ガラス又は金属からなる基材を準備し、その少なくとも一方の面に、本転写フィルムのポリイミド前駆体層が基材と対向するように積層、転写し、その後、基材フィルムを剥離することで、ポリイミド前駆体層を有する積層体が得られる。このポリイミド前駆体層を有する積層体を焼成することで、ポリイミド前駆体層がイミド化し、ポリイミド層とガラス又は金属からなる基材が積層された、ポリイミド積層体を作製することができる。以下、ポリイミド積層体の製造方法の一実施形態をより詳しく説明する。
転写フィルムは、ガラス又は金属からなる基材のどちらか一方の面にのみ積層させてもよく、両面に積層させてもよい。
熱ラミネートは、ガラス又は金属からなる基材の片面又は両面に、ポリイミド前駆体層
を基材表面へ対向するようにした状態で本転写フィルムを積層し、所定温度に加熱したニップロール間を通過させることにより行うことができる。
また、本発明のポリイミド前駆体層は、イミド化率が前述の範囲内であることによって、転写ステップの転写温度がポリイミド前駆体層のガラス転移温度以上であれば、ポリイミド前駆体層の弾性率が転写に好ましい範囲になるため、ガラス又は金属からなる基材上に、ポリイミド前駆体層を良好に転写することができる。ここで、転写温度とは、転写ステップにおいて、ガラス又は金属からなる基材と本転写フィルムを挟み込む部材、例えばニップロールの制御温度である。
ラミネート時のニップロール圧は、ガラス又は金属からなる基材とポリイミド層の密着性の観点から、ラミネートロールの単位長さ当たりの圧力として、0.1MPa・cm以上、5MPa・cm以下が好ましい。この範囲のロール圧でラミネートすることで、基材として上述した厚みの薄いガラスを用いても、破損し難く、ポリイミド積層体としたときに、基材とポリイミドとの間に十分な密着性が得られる。このように、本発明においては、特定のイミド化率とすることにより、ニップロール圧を低くしても好適に転写できるため、より薄いガラス基材を用いることができる。また、ラミネート速度は、残留溶媒に起因する発泡を抑制する観点から、0.1m/min.以上、良好にラミネート加工する観点から、50m/min.以下であることが好ましい。
ができ、また、ハンドリング性に優れるポリイミド積層体が得られる。
なお、実施例における測定・評価は以下の方法・基準で行った。
<測定・評価>
(1)イミド化率
赤外分光光度計を用い、全反射吸光分光法(ATR法)により、イミドの吸光度(1380cm-1)とベンゼン環の吸光度(1510cm-1)より、その吸光度比から式(a)よりイミド化率を求めた。
なお、測定は、転写フィルムのポリイミド前駆体層表面側から行った。
イミド化率%=(1380cm-1の吸光度)/(1510cm-1の吸光度)×100・・・
式(a)
転写フィルム上のポリイミド前駆体の範囲10cm2に、1mm2以上の大きさの欠陥(未塗工部分、空隙、凹部分)があるかどうかを目視で確認した。
×:1個以上ある
△:測定箇所によって、欠陥が有る箇所と無い箇所が存在する
○:なし
ガラス又は金属からなる基材に転写フィルムを熱ラミネートし、基材フィルムを剥離した。ガラス又は金属からなる基材にポリイミド前駆体層がラミネートされているかを目視で確認した。
○:ガラス又は金属からなる基材にポリイミド前駆体層がラミネートされている。
×:ガラス又は金属からなる基材にポリイミド前駆体層がラミネートされておらず、基材フィルム上にある。
ポリイミド前駆体層をガラス又は金属からなる基材に転写後、基材フィルムを剥離し、イミド化のため、250℃で30分、450℃で30分、窒素雰囲気下で焼成を行い、焼成後のポリイミド層表面に、色の濃い部分と薄い部分が発生した状態を焼成ムラありとした。焼成ムラは目視で確認した。
○:焼成ムラなし
△:わずかに焼成ムラが見られるが、実用上問題なし
×:焼成ムラあり
固形分濃度18%のユニチカ製「UイミドワニスAR」を基材フィルム(ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルム(三菱樹脂株式会社製「T100−100」))にバーコーターで塗布、乾燥用オーブンにて100℃で5分間乾燥し、イミド化率36%、厚み22μmのポリイミド前駆体層を有する転写フィルムを得た。
次に、ガラス基材(日本電気硝子株式会社製「OA−10G」、厚み:100μm)を準備し、直径200mmの金属ロールと直径200mmのゴムロールを有したラミネータ
ーを用いて、線圧0.4MPa・cmで前記転写フィルムと150℃で熱ラミネートした。
基材フィルムを剥離した後、乾燥用オーブンにて、250℃で30分間、450℃で30分間窒素雰囲気下で焼成し、ポリイミド積層体を作製した。 得られた転写フィルムについて、上記記載の方法に従い、イミド化率、塗工ムラを評価した。また、得られたポリイミド積層体について、上記記載の方法に従い、熱ラミネート適正、焼成ムラを評価した。結果を表1に示す。
乾燥条件を80℃、4分間に変更し、イミド化率20%、厚み18μmのポリイミド前駆体層を形成した以外は実施例1と同様にして、ポリイミド積層体を作製した。
得られた転写フィルム及びポリイミド積層体について、実施例1と同様に評価を実施した結果を表1に示す。
ガラス基材の代わりに80μm熱延鋼板を使用した以外は実施例2と同様にして、ポリイミド積層体を作製した。
得られた転写フィルム及びポリイミド積層体について、実施例1と同様に評価を実施した。結果を表1に示す。
厚み40μmのポリイミド前駆体層を形成した以外は実施例2と同様にして、ポリイミド積層体を作成した。
得られた転写フィルム及びポリイミド積層体について、実施例1と同様に評価を実施した。結果を表1に示す。
基材フィルムとしてシリコーン離型処理フィルム(ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルム(三菱樹脂株式会社製「MRF−38」)を使用した以外は実施例1と同様にして、ポリイミド積層体を作製した。
得られた転写フィルム及びポリイミド積層体について、実施例1と同様に評価を実施した。結果を表1に示す。
乾燥条件を200℃、5分間に変更し、イミド化率48%のポリイミド前駆体層を形成した以外は実施例2と同様にして、ポリイミド積層体を作製した。
得られた転写フィルム及びポリイミド積層体について、実施例1と同様に評価を実施した。結果を表1に示す。
Claims (8)
- 基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成されたイミド化率が45%以下のポリイミド前駆体層とを備える転写フィルム。
- 前記ポリイミド前駆体層の厚みが1μm〜50μmである、請求項1に記載の転写フィルム。
- 前記ポリイミド前駆体を焼成して得られるポリイミドのガラス転移温度が200℃以上又はガラス転移温度を有しない、請求項1又は2に記載の転写フィルム。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の転写フィルムを巻いてなるロール状物。
- ガラス又は金属からなる基材の少なくとも片面に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の転写フィルムを、前記ポリイミド前駆体層が前記基材側と対向するように積層し、転写させる転写ステップ、
前記ステップで得られた積層体から前記基材フィルムを剥離する剥離ステップ、及び
前記ポリイミド前駆体層を焼成する焼成ステップ、を含むポリイミド積層体の製造方法。 - 前記転写ステップの転写温度が、ポリイミド前駆体を焼成して得られるポリイミドがガラス転移温度を有する場合は該ポリイミドのガラス転移温度以下の温度である、又はポリイミド前駆体を焼成して得られるポリイミドがガラス転移温度を有しない場合は200℃以下である請求項5に記載のポリイミド積層体の製造方法。
- 請求項5又は6に記載の製造方法により得られるポリイミド積層体。
- 請求項7記載のポリイミド積層体を巻いてなるロール状物。
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