JP2016056739A - 強制空冷式内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1羽板101、第2羽板102、第3羽板103は、第1回転軸111、第2回転軸112、第3回転軸113の一側方に配置されてファンカバー61の内部に入り込むことが可能な負圧側羽板としての羽部101A,102A,103Aと、第1回転軸111、第2回転軸112、第3回転軸113の他側方に配置されてファンカバー61の外部に向けて突出することが可能な大気圧側羽板としての羽部101B,103Bとから構成され、負圧側羽板である羽部101Aの面積が、大気圧側羽板である羽部101Bの面積よりも大きく形成され、第2羽板102では羽部102Aのみ設けられる。
【選択図】図4
Description
羽板の動力源は、感温アクチュエータであり、羽板と感温アクチュエータとは、リンク部材を介して連結され、動力が伝達される。この従来技術では、内燃機関の始動時や冷間時は、羽板を閉じて冷却風の取込みを抑制して暖機促進を図りつつ、内燃機関の始動後の熱間時は、羽板を開いて冷却風を取込めるようにしている。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、ファンカバーの羽板へ動力が伝達されなくなった場合でも羽板を開くことが可能となって温度上昇が抑制される強制空冷式内燃機関を提供することを目的としている。
また、上記構成において、前記負圧側羽板(101A,102A,103A)の面積は、内燃機関(E)がアイドル回転数にある状態の負圧で前記羽板(101,102,103)が回動するように設定されるようにしても良い。
また、上記構成において、前記羽板(101,102,103)は、複数設けられ、前記リンク機構(105)は、複数の前記羽板(101,102,103)同士を連動させる連動部材(125)を有し、複数の前記羽板(101,102,103)における前記負圧側羽板(101A,102A)の総面積が前記大気圧側羽板(101B)の総面積よりも大きく形成されるようにしても良い。
また、上記構成において、前記ファンカバー(61)に、前記第1羽板(101)、前記第2羽板(102)、前記第3羽板(103)を車幅方向外側から覆うルーバー部材(64)が取付けられ、当該ルーバー部材(64)には、前記第1羽板(101)が全開のときに前記第1羽板(101)における前記大気圧側羽板(101B)が当接する当接部(64C4)が形成され、前記切欠き部(101C)は、前記当接部(64C4)の形成箇所を避けて形成されるようにしても良い。
また、負圧側羽板の面積は、内燃機関がアイドル回転数にある状態の負圧で羽板が回動するように設定されるので、アイドル回転数にある状態の負圧で羽板が回動するため、リンク部材とアクチュエータとが非連結状態となる事象が生じた場合であっても、内燃機関のアイドル回転数で負圧が発生すれば、素早く羽板を回動させることができ、内燃機関の温度上昇を抑制することができる。
図1は、自動二輪車1の右側面図である。
この自動二輪車1は、ユニットスイング式内燃機関のパワーユニット20を搭載し、乗員がシート3(乗員用シート)に跨って着座する鞍乗り型のスクータ型小型車両である。
この自動二輪車1の車体フレームFは、後上がりに傾斜する筒状のヘッドパイプ11と、該ヘッドパイプ11から後下がりに延びるダウンチューブ12と、ダウンチューブ12の後部にクロスメンバ13を介して連結される左右一対のメインパイプ14とを備える。ヘッドパイプ11は、前輪15を軸支するフロントフォーク16ならびに該フロントフォーク16に連結される操向ハンドル17を操向可能に支持する。ダウンチューブ12は、下方に延びた後に屈曲して後方に水平に延び、シート3前方に、左右に開放する足置き空間4を形成する。
パワーユニット20の後部には後輪軸21が設けられ、この後輪軸21に後輪22(駆動輪)が軸支される、また、パワーユニット20の後部とメインパイプ14との間にはリヤクッション23が装着され、このリヤクッション23によりパワーユニット20及び後輪22が懸架される。このパワーユニット20上方、且つ、左右一対のメインパイプ14間には、ヘルメットなどの荷物を収容する収容部25や燃料タンク26等が前後に間隔を空けて支持される。
サイドカバー35上には、前後に延びて2人乗車可能なシート3が設けられ、このシート3によって収容部25と燃料タンク26とが上方から覆われる。
パワーユニット20は、内燃機関Eと、内燃機関Eおよび後輪22(図1参照)のそれぞれの間に設けられるVベルト式変速機(無段変速機)(不図示)とを備える。内燃機関Eは、クランクケース41からシリンダブロック42、シリンダヘッド43及びシリンダヘッドカバー44が水平に近い状態にまで前傾するように設けられた水平エンジンに形成されている。このクランクケース41からシリンダヘッドカバー44に至る部分が内燃機関Eの機関本体45を構成する。
クランクケース41の下部には、前方に突出するブラケット46が設けられ、このブラケット46がリンク部材19を介して車体フレームF(図1参照)に連結される。このリンク部材19を介してパワーユニット20が上下に揺動自在に支持される。
シリンダヘッド43の下面には排気管55が接続され、この排気管55は、パワーユニット20下方を後方に延びて、内燃機関Eの後部に支持ブラケット56を介して支持された排気マフラー57(消音装置とも言う)に連結される。
この場合、排気管55は、シリンダヘッド43から下方へ延びるとともに車体側方(右側)へ屈曲して後方に延び、車体右側に配置された排気マフラー57に連結されるため、クランクケース41の右側方に連結された後述するファンカバー61の下方を通るように配索される。排気マフラー57は、内燃機関Eの後方、後輪22の側方(右側方)、且つ、サイドカバー35(図1参照)の下方に配置され、パワーユニット20と一体に上下に揺動する。
パワーユニット20は、クランクケース41の右側面にファンカバー61を備えている。ファンカバー61は、クランクケース41内に配置された冷却ファン62(図5参照)の冷却風取入口63を形成するカバーであり、この冷却風取入口63はルーバー部材64によって覆われる。
図3〜図5を参照しながら、冷却ファン62をその周辺構造と共に説明する。
クランクケース41内には、車幅方向に延びるクランク軸71(図5参照)が複数の軸受72(図5参照)を介して回転自在に支持されており、内燃機関Eの4サイクル運転によりクランク軸71が回転駆動される。このクランク軸71は、クランクケース41内を左右に延び、左側軸部にVベルト式無段変速機の駆動プーリ(不図示)が設けられ、Vベルト式無段変速機を介して所定の変速比で後輪軸21(図1参照)が回転駆動される。
発電機74のアウターロータ74Aは、車幅方向内側に開放する円形椀状に形成され、その内側には、クランクケース41の円筒部41Aに固定されたインナーステータ74Bが配置される。このため、クランク軸71の回転によりアウターロータ74Aとインナーステータ74Bとの間で電磁誘導作用が生じ、発電電力が得られる。また、冷却ファン62がクランク軸71と一体に回転するので、ファンカバー61に設けられた冷却風取入口63から外気を吸い込むことができる。
ファンカバー61内に取込まれた外気は、図2に示したパワーユニット20のシリンダブロック42、シリンダヘッド43を冷却した後に不図示の冷却風排出口から外に排出される。これによってパワーユニット20を強制的に空冷することができる。なお、図5に示した冷却ファン62を含む空冷構造は、公知の構造を広く適用可能である。
図4及び図5に示すように、ファンカバー61は、車幅方向内側に開放して冷却ファン62を覆う略円形の椀状カバーに形成され、樹脂材料を用いて一体成形により製作されている。なお、樹脂材料以外の材料を用いて製作しても良い。
このファンカバー61は、冷却ファン62の外周を覆う外周覆い部61Aと、外周覆い部61Aの車幅方向外側にて縮径する縮径部61Bと、縮径部61Bから車幅方向外側に延出する筒部61Cとを一体に備えている。
筒部61Cは、冷却ファン62の車幅方向外側に冷却風取入口63を形成する部材であり、クランク軸線L1を中心とする真円断面の円筒形状に形成される。つまり、本構成の冷却風取入口63は真円の円形開口に形成されている。
このファンカバー61は、クランクケース41に固定された状態で筒部61Cの後方に連なるとともに外周覆い部61A及び縮径部61Bから車幅方向外側に突出する右側面視で矩形断面の枠部61G(収容部)を一体に備えている。
また、この枠部61Gの車幅方向内側は、上記ボルト締結部61Fを一体に備える内壁61GCが設けられ、この内壁61GCによって、枠部61Gの車幅方向内側の開口は閉塞される。この構成により、車幅方向内側から枠部61G内への雨水等の浸入を防止できるとともに、ファンカバー61自体の剛性を高めることができる。
このルーバー部材64は、図3に示すように、ファンカバー61の筒部61Cに連なる円筒枠形状を有するルーバー本体部64Aと、ファンカバー61に設けられた枠部61Gの車幅方向外側の開口を覆うカバー部64Bとを一体に備えている。ルーバー本体部64Aは、ルーバー本体部64Aの開口内で互いに直交する固定ルーバー(横ルーバー64C及び縦ルーバー64D)を一体に備え、外気を取入れ可能にしつつ内部の冷却ファン62等を保護する。
また、図3に示すように、ルーバー部材64には、ルーバー本体部64Aの周方向に間隔を空けて複数(本例では3個)のボルト締結部64Eが設けられ、これらボルト締結部64Eが、締結ボルト82を介してファンカバー61の右側面に固定されるように構成されている。
これら回転軸111〜113は、上下に間隔を空けて前後方向に指向している。なお、図4の状態は、乗員が乗車していないため、回転軸111〜113の軸線が前上がりとなっているが、乗員が乗車し、乗員の体重の影響によりパワーユニット20が右側面視で時計回り方向に揺動した場合に、各回転軸111〜113の軸線が前後方向、且つ、水平方向に指向するように配置されている。
これら軸上ルーバー64C1〜64C3により、第1〜第3回転軸111〜113を外部の飛散物から保護するとともに、第1〜第3回転軸111〜113の車幅方向外側へのずれ等を抑制することができる。
軸間ルーバー64C4,64C5は、冷却風取入口63を外部の飛散物から保護するとともに、第1及び第3羽板101,103が全開したときに第1及び第3羽板101,103が当接する位置に設けられ、第1及び第3羽板101,103の全開位置を位置決めする当接部としても機能している。
一方の羽部101Aは、第1回転軸111と第2回転軸112との間の冷却風取入口63の開口形状に相当する板形状に形成されている。また、他方の羽部101Bは、第1回転軸111を基準にした羽部101Aと軸対照な形状に対して、切欠き部101Cが形成されている。即ち、羽部101Bは、第1回転軸111と第3回転軸113との間の冷却風取入口63の開口形状に相当する板形状に対して、切欠き部101Cで切り欠かれた形状に形成されている。
また、第3羽板103は、第3回転軸113を基準として第1羽板101が配置される側と反対側(上方)に形成された羽部103Bと、第3回転軸113を基準として第1羽板101が配置される側に形成されて第1羽板101の切欠き部101Cの縁部に重なる羽部103Aとを有している。より具体的には、羽部103Bは、第3回転軸113と冷却風取入口63の外縁との間にできる上方凸の開口形状に相当する板形状に形成され、羽部103Aは、切欠き部101Cを塞ぐ形状に形成されている。
図6に示すように、第2及び第3回転軸112,113には、冷却風取入口63を閉じた状態のときに、第1羽板101の羽部101A,101Bの先端が重合して当接する凹溝部112M,113Mが設けられている。
図6において詳述すると、第2回転軸112の凹溝部112Mは、車幅方向外側かつ下方に凹んだ凹溝に形成され、第1羽板101の羽部101Aの下端が、冷却風取入口63を閉じる向きである車幅方向外側に向かって回動した際に当接し、第1羽板101を閉じた状態に位置決めする。この凹溝部112Mは、図4に示すように、第2回転軸112における冷却風取入口63の範囲全体に渡って形成されており、この凹溝部112Mに第1羽板101の羽部101Aが当接した状態にすることにより、第2回転軸112と第1羽板101との間の隙間全体を閉塞することができる。
凹溝部113Mは、図4に示すように、羽部103Aの両側の第3回転軸113上に二カ所形成され、羽部101Bの先端の二カ所が当接することにより、第3回転軸113と第1羽板101との間の隙間全体を閉塞することができる。
以上により、第1羽板101は、第2及び第3回転軸112,113の凹溝部112M,113Mによって閉じた状態に位置決めされる。
また、上述した羽部101Bの上端は、軸線111Cに対して、車幅方向外側にオフセットして形成されるので、この上端が当接する凹溝部(第3回転軸113の凹溝部113M)の車幅方向内側への深さをオフセットの分だけ浅くすることができ、第3回転軸113の剛性も確保し易くなる。
下方の凸部61Mは、第2羽板102の羽部102Aの下端が車幅方向外側に向かって回動した際に当接する段差形状に形成され、冷却風取入口63と羽部102Aの下端との間の全体に渡って形成され、羽部102Aと冷却風取入口63との間の隙間全体を閉塞する。なお、羽部102Aの下端についても、軸線112Cに対して、閉じる場合の回動方向と反対側にオフセットして形成される。
また、筒部61Cには、第1羽板101の前後の縁部が重合して当接する凸部(不図示)が設けられ、第1羽板101と冷却風取入口63との間の隙間全体を閉塞している。この凸部については、図12にて詳述する。
上記の閉塞構造により、第1〜第3羽板101〜103によって冷却風取入口63を隙間無く閉塞することができる。このように冷却風取入口63を閉塞することにより、冷却ファン62が回転した場合に、クランクケース41内を大気圧よりも低い状態(真空状態)に近付けることができ、空気抵抗を減らすことができる。これによって、クランク軸71の回転フリクションを低減することができ、燃費向上に有利となる。
図7に示すように、第1〜第3羽板101〜103は、後述する連結部材125によって、いずれも同方向(車体後面視で時計回り方向)に回動して開く。図7では、第1及び第3羽板101,103は時計回り方向に回動しており、第1羽板101の上側の羽部101B及び第3羽板103の羽部103Bの先端が、車幅方向外側に向かって回動し、ルーバー部材64に予め設けた軸間ルーバー64C4,64C5(当接部)に当接する位置まで開く。
つまり、図6に示すように、軸間ルーバー64C4は第1回転軸111よりも下方に設けられ、軸間ルーバー64C5は第3回転軸113よりも下方に設けられている。このため、第1及び第3羽板101,103が軸間ルーバー64C4,64C5に当接する位置まで開くと、第1及び第3羽板101,103は外側下向きに傾斜した状態となる。
これによって、ファンカバー61内に冷却風を十分に取り入れ可能にするとともに、雨水等が各羽板101〜103にかかっても各羽板101〜103の傾斜に沿わせて外に排出させることができ、ファンカバー61内への浸入を抑制することができる。
これにより、第2羽板102の車幅方向外側を覆うルーバー部材64については、第2回転軸112側(車幅方向内側)に寄せて配置することが可能になる。本実施形態では、ルーバー部材64の下部を第2羽板102に寄せるように傾斜部64Xを形成し、左右への車体バンク角をより稼ぐ形状にすることが可能である。
図4、図5及び図7において、第1羽板101の羽部101A、第2羽板102の羽部102A及び第3羽板103の羽部103Aは、車幅方向内側に向かって回動する。第1及び第3羽板101,103が閉じた状態で、アクチュエータ104と動力伝達機構105とが非連結状態となった場合は、クランク軸71の所定回転数以上の回転に伴い、冷却ファン62が回転すると、ファンカバー61内に発生する負圧によって羽部101A,102A,103Aが回動するため、羽部101A,102A,103Aを負圧側羽板とする。
また、第1羽板101の羽部101B及び第3羽板103の羽部103Bは、車幅方向外側に向かって回動する。ここでは、羽部101B,103Bを大気圧側羽板とする。
また、第2羽板102の羽部102Aと第3羽板103の羽部103Bとは、面積が等しい。
このように、第1〜第3羽板101〜103のうち、過半数の第1羽板101、第2羽板102で、負圧側羽板の面積が大気圧側羽板の面積よりも大きくなっている。
換言すれば、負圧側羽板(羽部101A,102A,103A)の総面積は、大気圧側羽板(羽部101B,103B)の総面積よりも大きい。
なお、第1〜第3回転軸111〜113を含む第1〜第3羽板101〜103は、樹脂材料を用いて一体成形により製作されているが、回転軸111〜113と羽板101〜103とを別体に製作しても良い。また、樹脂材料以外の材料を用いて製作しても良い。
図10は、動力伝達機構105をアクチュエータ104と共に示した斜視図である。
第1〜第3回転軸111〜113の一端(後端)には、環状の回動リンク部材121,122,123がそれぞれ回動自在に装着され、これら回動リンク部材121〜123は、単一の連結部材125を介して互いに連動して回動するように連結される。
詳述すると、これら回動リンク部材121〜123は、車幅方向内側に延びる腕部121A〜123Aを有し、これら腕部121A〜123Aが、棒状の連結部材125に回動自在に連結される。
つまり、連結部材125が上方へ移動すると、回動リンク部材121〜123が、矢印Aで示す方向に同じ回転角度だけ回動させる。
一方、連結部材125が下方へ移動すると、回動リンク部材121〜123が、矢印Aとは反対方向に同じ回転角度だけ回動させる。
このリンク部材127は、上記連結部材125と同様に、第1〜第3回転軸111〜113よりも車幅方向内側を上下方向に延びる棒状に部材に形成され、且つ、一端(上端)が連結部材125の連結用突出部125Aに回動自在に連結され、他端(下端)が増幅リンク126の一端に連結される。
一方の腕部126Aは、アクチュエータ104の可動部として機能するシリンダロッド104A(出力ロッド)の先端部104Bが摺動自在に嵌る凹形状のフォーク部(以下、フォーク部と言う)に形成され、先端部104Bを容易に挿脱可能である。他方の腕部126Bは、支軸61Jと平行なピン軸126Cを一体に備え、このピン軸126Cを介してリンク部材127の下端に設けられた孔部127Aに容易に嵌合可能である。
即ち、アクチュエータ104の駆動力は、増幅リンク126、リンク部材127、連結部材125及び回動リンク部材121,122,123を介して第1回転軸111、第2回転軸112及び第3回転軸113に順に伝達され、第1羽板101、第2羽板102及び第3羽板103が開閉される。
アクチュエータ104のシリンダロッド104Aが、矢印Bの向きに伸びると、第1羽板101、第2羽板102及び第3羽板103は、矢印Cの向きに回動して開く。また、シリンダロッド104Aが伸びた状態から矢印Bとは反対の向きに縮むと、第1羽板101、第2羽板102及び第3羽板103は、矢印Cとは反対の向きに回動して閉じる。
ここで、図5、図10に示すように、増幅リンク126は、回動支点(支軸61Jの軸線L2)からピン軸126Cまでの距離が、例えば、回動リンク部材123における回転中心(第3回転軸113の回転中心)から腕部123Aが連結部材125に連結される部位の中心123A’までの距離よりも長くなるように形成されている。なお、回動リンク部材121、122についても、回動リンク部材123と同一に形成されている。このため、増幅リンク126の回動角度θCよりも、回動リンク部材121〜123の回動角度θBを大きくすることができる。
これにより、アクチュエータ104のシリンダロッド104Aの伸縮量を抑えてアクチュエータ104を小型化しながら、回動リンク部材121〜123の回動角度θBを大きく確保できるように構成されている。
詳述すると、図10に示すように、回動リンク部材121〜123からは径方向外側に突出して前方に屈曲する係止部121K,122K,123Kが設けられ、第1〜第3回転軸111〜113からも径方向外側に突出して後方に屈曲する係止部111K,112K,113Kが設けられ、上記係止部121K〜123Kと径方向に重なる。
上記した係止部111K、係止部121K、ねじりコイルばね131の組合わせ、係止部112K、係止部122K、ねじりコイルばね131の組合わせ、係止部113K、係止部123K、ねじりコイルばね131の組合わせは、それぞれオーバーストローク吸収機構130を構成する。
つまり、本構成では、増幅リンク126を設けることによってアクチュエータ104のストローク量を抑えつつ第1〜第3羽板101〜103の回動量を稼ぎ、且つ、オーバーストローク吸収機構130を設けることによって第1〜第3羽板101〜103の過度な回動を防止し、過大な負荷が作用することを防止するとともに、ねじりコイルばね131の弾性力により第1〜第3羽板101〜103を、がたつきなく確実に開閉するようにしている。
このアクチュエータ104は、ステー部材85(図3も参照)を一体に備え、このステー部材85を介して締結ボルト86によりクランクケース41の下部に取付けられ、クランクケース41下部のオイルパン41P(オイルパン部)に貯留されるオイルの温度に応じてシリンダロッド104Aを車幅方向に進退させる。アクチュエータ104は、冷却ファン62の下方に配置され、その出力軸を構成するシリンダロッド104Aの軸線L3が、クランク軸71のクランク軸線L1と平行に配置される。また、アクチュエータ104の周囲(上下及び前後)はファンカバー61の第2収容部61GBによって囲われている。
また、ファンカバー61の車幅方向外側の開口はルーバー部材64によって覆われるので、このルーバー部材64によってもアクチュエータ104を飛散物から保護できるとともに外部の熱影響を回避することができる。
また、オイル温度の上昇に応じてアクチュエータ104のシリンダロッド104Aが車幅方向外側に突出するので、第1〜第3羽板101〜103が回動して冷却風取入口63が徐々に開口する。これにより、冷却ファン62の回転により外気が吸い込まれ、開口面積に応じた風量でパワーユニット20を空冷できる。これによって、オイル温度に比例した冷却が可能になり、適切な冷却が可能になる。
これらにより、本構成では、冷却風取入時の整流効果の向上と、第1〜第3羽板101〜103の円滑な回動とを両立することが可能になる。
また、上記連結部材125は、第1回転軸111及び第2回転軸112よりも車幅方向内側に配置されるので、連結部材125が車幅方向外側へ出っ張って配置されることを防ぐことができ、これによっても車体バンク角を確保し易くなる。
この構成によれば、ファンカバー61に設けた第2収容部61GBでアクチュエータ104の下方を覆うにあたってファンカバー61の下方への膨出を防ぐことができる上、車幅方向外側からクランクケース41にファンカバー61を取付ける際に、ファンカバー61とアクチュエータ104とが干渉しにくくなり、ファンカバー61の取付け、及び、第2収容部61GBへのアクチュエータ104の収容を容易に行うことができる。しかも、アクチュエータ104の少なくとも下方をファンカバー61で覆うので、飛び石等はもちろんのこと、排気管55の熱害からアクチュエータ104を保護することができ、アクチュエータ104の作動精度の向上も図ることができる。
また、第1羽板101が当接する軸間ルーバー64C4は第1回転軸111よりも下方に設けられるので、暖気後に全開又は全開に近い状態になると、全ての羽板101〜103が外側下向きに保持されることになり、雨水等が各羽板101〜103にかかっても外に排出させ、ファンカバー61内への浸入を抑制することができる。
ファンカバー61の筒部61Cには、半径方向内側に突出する円弧状の凸部61M,61N,61S,61T,61U,61Vが一体に形成されている。
凸部61Mは、第2羽板102の下端(羽部102Aの下端)である円弧状の縁部102Dが当接する部分であり、凸部61Nは、第3羽板103の上端(羽部103Bの上端)である円弧状の縁部103Dが当接する部分である。
凸部61S,61T,61U,61Vは、第1羽板101の長手方向(第1回転軸111に沿う方向)の縁部である円弧状の縁部101E,101F,101G,101Hが当接する部分である。詳しくは、凸部61S,61Tは、第1羽板101の羽部101Aの縁部101E,101Fが当接し、凸部61U,61Vは、第1羽板101の羽部101Bの縁部101G,101Hが当接する部分である。
第1回転軸111より下方に設けられる凸部61M,61S,61Tは、第2羽板102及び第1羽板101に対して車幅方向外側(図の手前側)に位置する。第1回転軸111より上方に設けられる凸部61N,61U,61Vは、第3羽板103及び第1羽板101に対して車幅方向内側(図の奥側)に位置する。
凸部61M,61N,61S,61T,61U,61Vのそれぞれの間には、第1回転軸111、第2回転軸112、第3回転軸113が通される。
枠部61Gの下部には、アクチュエータ104に連結される増幅リンク126が配置されている。図は、増幅リンク126を組付ける前の状態を示している。
枠部61Gの下部の前後の側壁61W,61Wには、増幅リンク126を組立時に載せておくリンク載置部61X,61Xが形成され、各リンク載置部61Xの上部には増幅リンク126に形成された筒状の軸部126E,126Eを受ける凹溝61Y,61Yが形成されている。
側壁61W,61W及びリンク載置部61X,61Xには、前後方向に貫通する支軸挿通穴61Z,61Zが開けられている。支軸挿通穴61Z,61Zには、増幅リンク126の軸部126E,126E間を貫通する支軸挿通穴126Fと共に、支軸61Jが通される。なお、符号133は、支軸61Jの先端に形成された環状溝に嵌められる止め輪であり、止め輪133によって、支軸挿通穴61Z,61Zからの支軸61Jの抜けが防止される。
尚、止め輪133は必須ではなく、支軸61Jをファンカバー61に装着した状態で、当該支軸61Jの軸方向両端部の外側をルーバー部材64のカバー部64Bで覆うように形成して、このカバー部64Bで支軸61Jの抜け止めを行えば、止め輪133を廃止できる。
まず、図5に示したように、アクチュエータ104を複数の締結ボルト86によりクランクケース41に取付ける(第1工程)。次に、予めファンカバー61(図4参照)に、図10に示した第1〜第3羽板101〜103から増幅リンク126(第1リンク部材)に至るリンク部材(回動リンク部材121〜123(第3リンク部材)、連結部材125、リンク部材127(第2リンク部材)、ねじりコイルばね131(付勢部材))を組んで小組(サブアッセンブリー化とも言う)しておき、小組されたファンカバー61を、複数の締結ボルト81(図4参照)を用いてクランクケース41に取付ける(第2工程)。
以上の第1〜第3工程により、可動ルーバー機構100の組み付けが終了する。
可動ルーバー機構100を組み付けた後は、ルーバー部材64を、締結ボルト82(図3参照)を用いてファンカバー61に取付ける(第4工程)。これによって可動ルーバー機構100周りの組み立てが全て完了する。
また、負圧側羽板である羽部101A,102A,103Aの面積は、内燃機関Eがアイドル回転数にある状態の負圧で第1羽板101、第2羽板102、第3羽板103が回動するように設定されるので、アクチュエータ104と動力伝達機構105とが非連結状態となる事象が生じた場合であっても、内燃機関Eのアイドル回転数又はそれ以上の回転数でファンカバー61内に負圧が発生すれば、素早く第1羽板101、第2羽板102を回動させることができ、内燃機関Eの温度上昇を抑制することができる。
尚、連動部材125と第1羽板101、第2羽板102、第3羽板103とが非連結状態となるような事象が仮に生じた場合であっても、過半数の第1羽板101、第2羽板102を負圧で回動させることができるので、冷却風取入口63から冷却風を取込み、内燃機関Eを冷却することができる。
例えば、上述の実施形態では、3枚の羽板101〜103を有する可動ルーバー機構100に本発明を適用する場合を説明したが、これら羽板101〜103を含む複数の羽板(奇数枚数が望ましい)を有する可動ルーバー機構に本発明を適用しても良い。
また、上述の実施形態では、第2及び第3回転軸112,113の両方に、第1羽板101が全閉時に重合して密着する凹溝部112M,113Mを設ける場合を説明したが、いずれか一方の第2回転軸112又は第3回転軸113に設けても良く、要は、少なくとも一方の回転軸112又は113に凹溝部112M又は113Mを設けるようにすれば良い。
また、上述の実施形態では、ユニットスイング式内燃機関のパワーユニット20に適用される冷却装置に本発明を適用する場合を説明したが、公知の他の内燃機関の冷却装置に本発明を適用しても良い。また、上述した自動二輪車1に適用する冷却装置に限らず、自動二輪車以外も含む鞍乗り型車両等に搭載される内燃機関の冷却装置に本発明を適用しても良い。なお、鞍乗り型車両は、自動二輪車(原動機付き自転車も含む)のみならず、ATV(不整地走行車両)やトライクなどに分類される三輪車両や四輪車両を含む車両である。
61 ファンカバー
61C 筒部
62 冷却ファン
63 冷却風取入口
64 ルーバー部材
64C4 軸間ルーバー(当接部)
71 クランク軸
101 第1羽板(羽板)
101A,102A 羽部(負圧側羽板)
101B,103B 羽部(大気圧側羽板)
101C 切欠き部
102 第2羽板(羽板)
102D,103D 縁部
103 第3羽板(羽板)
103A 羽部(負圧側羽板、重合部)
104 アクチュエータ
105 動力伝達機構(リンク機構)
111 第1回転軸(第1の支軸)
112 第2回転軸(第2の支軸)
113 第3回転軸(第3の支軸)
125 連結部材(連動部材)
C1 円中心
E 内燃機関
Claims (7)
- クランクケース(41)に回転自在に支持されるクランク軸(71)と連動して回転し、外気を吸引する冷却ファン(62)と、
前記冷却ファン(62)を覆って前記クランクケース(41)に取付けられるとともに外気を取込む冷却風取入口(63)が形成されたファンカバー(61)と、
前記ファンカバー(61)に取付けられた支軸(111,112,113)を中心に前記冷却風取入口(63)を開閉自在に回動する羽板(101,102,103)と、
前記羽板(101,102,103)を回動させる動力源となるアクチュエータ(104)と、
前記アクチュエータ(104)から前記羽板(101,102,103)へ開閉のための動力を伝達するリンク機構(105)と、
を備えた強制空冷式内燃機関において、
前記羽板(101,102,103)は、前記支軸(111,112,113)の一側方に配置されて前記ファンカバー(61)の内部に入り込むことが可能な負圧側羽板(101A,102A,103A)と、前記支軸(111,112,113)の他側方に配置されて前記ファンカバー(61)の外部に向けて突出することが可能な大気圧側羽板(101B,103B)とから構成され、
前記負圧側羽板(101A,102A)の面積が、前記大気圧側羽板(101B)の面積よりも大きく形成されることを特徴とする強制空冷式内燃機関。 - 前記リンク機構(105)と前記アクチュエータ(104)とが非連結状態となったときに、前記羽板(101,102,103)が負圧によって回動することを特徴とする請求項1に記載の強制空冷式内燃機関。
- 前記負圧側羽板(101A,102A,103A)の面積は、内燃機関(E)がアイドル回転数にある状態の負圧で前記羽板(101,102,103)が回動するように設定されることを特徴とする請求項2に記載の強制空冷式内燃機関。
- 前記羽板(101,102,103)は、複数設けられ、前記リンク機構(105)は、複数の前記羽板(101,102,103)同士を連動させる連動部材(125)を有し、複数の前記羽板(101,102,103)における前記負圧側羽板(101A,102A)の総面積が前記大気圧側羽板(101B)の総面積よりも大きく形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の強制空冷式内燃機関。
- 前記冷却風取入口(63)は、円形開口に形成され、前記ファンカバー(61)は、前記冷却風取入口(63)の下流側に続く筒部(61C)を有し、
前記支軸(111,112,113)は、複数設けられ、
複数の前記羽板(101,102,103)は、前記冷却風取入口(63)の円中心(C1)を通る第1の支軸(111)に設けられる第1羽板(101)と、
前記第1の支軸(111)と平行で前記円中心から一方側へオフセットした第2の支軸(112)に設けられる第2羽板(102)と、
前記第1の支軸(111)と平行で前記円中心(C1)から他方側へオフセットした第3の支軸(113)に設けられる第3羽板(103)とを少なくとも含み、
前記第2羽板(102)は、前記冷却風取入口(63)と当接する縁部(102D)が、前記第2の支軸(112)を基準として、前記第1羽板(101)が配置される側と反対側のみに形成され、
前記第3羽板(103)は、前記冷却風取入口(63)と当接する縁部(103D)が、前記第3の支軸(113)を基準として、前記第1羽板(101)が配置される側と反対側のみに形成されることを特徴とする請求項4に記載の強制空冷式内燃機関。 - 前記第1羽板(101)における前記大気圧側羽板(101B)の前記冷却風取入口(63)と当接しない部位に切欠き部(101C)を形成することで、前記第1羽板(101)における前記負圧側羽板(101A)の面積を前記第1羽板(101)における前記大気圧側羽板(101B)の面積よりも大きく形成し、前記切欠き部(101C)に重合する重合部(103A)が、前記第2羽板(102)又は前記第3羽板(103)のいずれか一方に形成されることを特徴とする請求項5に記載の強制空冷式内燃機関。
- 前記ファンカバー(61)に、前記第1羽板(101)、前記第2羽板(102)、前記第3羽板(103)を車幅方向外側から覆うルーバー部材(64)が取付けられ、当該ルーバー部材(64)には、前記第1羽板(101)が全開のときに前記第1羽板(101)における前記大気圧側羽板(101B)が当接する当接部(64C4)が形成され、前記切欠き部(101C)は、前記当接部(64C4)の形成箇所を避けて形成されることを特徴とする請求項6に記載の強制空冷式内燃機関。
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